説明

冷凍装置

【課題】本発明の課題は、銅メッキ現象を十分に抑制することができる冷凍装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る冷凍装置1は、冷媒回路2を備える。冷媒回路には、冷媒及び銅不活性化剤が充填されている。冷媒には、50wt.ppm以上の水が含まれる。銅不活性化剤は、水のモル当量数の1/2モル当量数以上添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅メッキ現象を抑制することができる冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置の冷媒回路において圧縮機構や、蒸発器、膨張機構、凝縮器等は、現地での作業性等の観点から、銅管により接続されることが多い。そして、比較的水分量が多い冷媒、特に二酸化炭素がこのような冷媒回路に充填されると、下記化学反応式(1)〜(3)に示される反応が起こり、冷媒中に銅イオンが発生する。そして、この銅イオンが圧縮機構や膨張機構等の鉄製の構成部品に接触すると、下記化学反応式(4)に示される反応が起こり、その構成部品が銅メッキされるという現象(以下、銅メッキ現象という)が生じる(例えば、非特許文献1並びに特許文献1及び2等参照)。そして、例えば、このような銅メッキ現象がキャピラリー(膨張機構)内に生じると、キャピラリーが詰まるという問題が生じる。また、例えば、このような銅メッキ現象が圧縮機の摺動部品に対して生じると、その摺動部品の表面が粗くなり圧縮機の信頼性に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
【0003】

このような銅メッキ現象を抑制する方法として、例えば、エポキシ化合物により水分を捕捉させる方法(例えば、特許文献1等参照)や、基油粘度及びその基油中の水分含有量を規定する方法(例えば、特許文献2等参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平6−240279号公報
【特許文献2】特開2001−19989号公報
【特許文献3】特開2001−255030号公報
【非特許文献1】中尾英人、外3名,「冷媒圧縮機における銅の析出現象に及ぼす冷凍機油としゅう動材料の影響」,トライポロジスト,第50巻,第2号(2005),p187−192
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願発明者が実際に上記の方法を試しても銅メッキ現象を十分に抑制することはできなかった。
【0005】
本発明の課題は、銅メッキ現象を十分に抑制することができる冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る冷凍装置は、冷媒回路を備える。冷媒回路には、冷媒及び銅不活性化剤が充填されている。冷媒には、50wt.ppm以上の水が含まれる。銅不活性化剤は、水のモル当量数の1/2モル当量数以上添加される。なお、ここにいう「銅不活性化剤」とは、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物等であり、下記化式1で示されるものが特に好ましい。なお、化式1において、芳香核に結合する置換基(R)と窒素原子に結合する置換基(R)とは同一であってもよいし相互に異なっていてもよい。また、窒素原子に結合する2つの置換基(R)は、同一であってもよいし、相互に異なっていてもよい。なお、本発明に係る銅不活性化剤としては芳香核に結合する置換基がメチル基であり窒素原子に結合する2つの置換基が2−エチルヘキシル基であるものが好ましい。
【0007】
【化1】

【0008】
上記した化学反応式によれば、水2モルに対して1モルの銅イオンが発生している。このため、水のモル当量数の1/2モル当量数以上の銅不活性化剤が冷媒回路に添加されれば、冷媒回路内で生じる銅イオンを全て不活性化することができる。このため、この冷凍装置では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【0009】
第2発明に係る冷凍装置は、第1発明に係る冷凍装置であって、冷媒回路に潤滑油がさらに充填される。そして、銅不活性化剤は、潤滑油に混入されている。なお、ここにいう「潤滑油」とは、例えばポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(POE)、ナフテン油、パラフィン油、カーボネート油、及びアルキルベンゼン油等である。
【0010】
このため、この冷凍装置では、銅不活性化剤が潤滑油に溶解し、冷媒中の銅イオンと接触しやすくなる。したがって、この冷凍装置では、銅不活性化剤がその機能を発揮しやすくなる。
【0011】
第3発明に係る冷凍装置は、第2発明に係る冷凍装置であって、潤滑油は、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(POE)、ナフテン油、パラフィン油、カーボネート油、及びアルキルベンゼン油より成る群から選択される少なくとも1つの潤滑油である。
【0012】
このため、この冷凍装置では、従来の潤滑油を使用することができる。
【0013】
第4発明に係る冷凍装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る冷凍装置であって、冷媒は、フロン系冷媒、炭化水素系冷媒、及び二酸化炭素より成る群から選択される少なくとも1つの冷媒である。
【0014】
このため、この冷凍装置では、従来の冷媒を使用することができる。
【0015】
第5発明に係る冷凍装置は、第1発明から第4発明のいずれかに係る冷凍装置であって、冷媒回路には、酸捕捉剤がさらに充填される。
【0016】
このため、この冷凍装置では、銅イオンの発生を抑制することができる。したがって、この冷凍装置では、銅メッキ現象がさらに十分に抑制することができる。
【0017】
第6発明に係る冷凍装置は、冷媒回路を備える。冷媒回路には、二酸化炭素、ベンゾトリアゾール系化合物、ポリアルキレングリコール(PAG)及びエポキシ系化合物が充填されている。二酸化炭素には、50wt.ppm以上の水が含まれる。ベンゾトリアゾール系化合物は、水のモル当量数の1/2モル当量数以上添加される。
【0018】
上記した化学反応式によれば、水2モルに対して1モルの銅イオンが発生している。このため、水のモル当量数の1/2モル当量数以上のベンゾトリアゾール系化合物(銅不活性化剤)が冷媒回路に添加されれば、冷媒回路内で生じる銅イオンを全て不活性化することができる。また、この冷媒回路にはエポキシ系化合物も充填される。このため、この冷凍装置では、銅イオンの発生を抑制することができる。したがって、この冷凍装置では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【0019】
第7発明に係る冷凍装置は、冷媒回路を備える。冷媒回路には、フロン系冷媒、ベンゾトリアゾール系化合物、ポリビニルエーテル(PVE)及びエポキシ系化合物が充填されている。フロン系冷媒には、50wt.ppm以上の水が含まれる。ベンゾトリアゾール系化合物は、水のモル当量数の1/2モル当量数以上添加されている。
【0020】
上記した化学反応式によれば、水2モルに対して1モルの銅イオンが発生している。このため、水のモル当量数の1/2モル当量数以上のベンゾトリアゾール系化合物(銅不活性化剤)が冷媒回路に添加されれば、冷媒回路内で生じる銅イオンを全て不活性化することができる。また、この冷媒回路にはエポキシ系化合物も充填される。このため、この冷凍装置では、銅イオンの発生を抑制することができる。したがって、この冷凍装置では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【発明の効果】
【0021】
第1発明に係る冷凍装置では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【0022】
第2発明に係る冷凍装置では、銅不活性化剤が潤滑油に溶解し、冷媒中の銅イオンと接触しやすくなる。したがって、この冷凍装置では、銅不活性化剤がその機能を発揮しやすくなる。
【0023】
第3発明に係る冷凍装置では、従来の潤滑油を使用することができる。
【0024】
第4発明に係る冷凍装置では、従来の冷媒を使用することができる。
【0025】
第5発明に係る冷凍装置では、銅イオンの発生を抑制することができる。したがって、この冷凍装置では、銅メッキ現象がさらに十分に抑制することができる。
【0026】
第6発明に係る冷凍装置では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【0027】
第7発明に係る冷凍装置では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<空気調和装置の構成>
本発明の実施の形態に係る空気調和装置1の概略冷媒回路2を図1に示す。
【0029】
この空気調和装置1は、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和装置であって、主に冷媒回路2及び送風ファン26,32等から構成されている。なお、この冷媒回路2には、フロン系冷媒、炭化水素系冷媒、及び二酸化炭素より成る群から選択される少なくとも1つの冷媒が充填される。また、この冷媒には、50wt.ppm以上の水分が含まれる。
【0030】
冷媒回路2には主に、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、内部熱交換器14、第1電動膨張弁15、受液器16、第2電動膨張弁17及び室内熱交換器31が配備されており、各装置は、図1に示されるように、冷媒配管を介して接続されている。
【0031】
そして、本実施の形態において、空気調和装置1は、分離型の空気調和装置であって、室内熱交換器31及び室内ファン32を主に有する室内ユニット30と、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、内部熱交換器14、第1電動膨張弁15、受液器16及び第2電動膨張弁17を主に有する室外ユニット10と、室内ユニット30の冷媒液等配管と室外ユニット10の冷媒液等配管とを接続する第1連絡配管41と、室内ユニット30の冷媒ガス等配管と室外ユニット10の冷媒ガス等配管とを接続する第2連絡配管42とから構成されているともいえる。なお、室外ユニット10の冷媒液等配管と第1連絡配管41とは室外ユニット10の第1閉鎖弁18を介して、室外ユニット10の冷媒ガス等配管と第2連絡配管42とは室外ユニット10の第2閉鎖弁19を介してそれぞれ接続されている。
【0032】
(1)室内ユニット
室内ユニット30は、主に、室内熱交換器31及び室内ファン32等を有している。
【0033】
室内熱交換器31は、空調室内の空気である室内空気と冷媒との間で熱交換をさせるための熱交換器である。
【0034】
室内ファン32は、ユニット30内に空調室内の空気を取り込み、室内熱交換器31を介して冷媒と熱交換した後の空気である調和空気を再び空調室内への送り出すためファンである。
【0035】
そして、この室内ユニット30は、このような構成を採用することによって、冷房運転時には室内ファン32により内部に取り込んだ室内空気と室内熱交換器31を流れる液冷媒とを熱交換させて調和空気(冷気)を生成し、暖房運転時には室内ファン32により内部に取り込んだ室内空気と室内熱交換器31を流れる超臨界冷媒とを熱交換させて調和空気(暖気)を生成することが可能となっている。
【0036】
(2)室外ユニット
室外ユニット10は、主に、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、内部熱交換器14、第1電動膨張弁15、受液器16、第2電動膨張弁17及び室外ファン26等を有している。
【0037】
圧縮機11は、吸入管を流れる低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮して超臨界状態とした後、吐出管に吐出するための装置である。なお、この圧縮機11には、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(POE)、ナフテン油、パラフィン油、カーボネート油、及びアルキルベンゼン油より成る群から選択される少なくとも1つの潤滑油が注入されている。また、この潤滑油には、銅不活性化剤としてベンゾトリアゾール系化合物が添加され、酸捕捉剤としてエポキシ系化合物が添加されている。なお、この酸捕捉剤として利用されるエポキシ系化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド、α−オレフィンオキサイド及びエポキシ化大豆油等が挙げられる。また、これらのエポキシ系化合物の中でも、潤滑油との相溶性の点でフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド及びα−オレフィンオキサイドが好ましい。なお、アルキルグリシジルエーテルのアルキル基及びアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐鎖を有していてもよく、通常3〜30の炭素数を有し好ましくは4〜24の炭素数を有しさらに好ましくは6〜16の炭素数を有する。また、α−オレフィンオキサイドとしては、全炭素数が4〜30であるものが一般的であり、全炭素数が4〜24であるものが好ましく、全炭素数が6〜16のものがより好ましい。なお、本発明の実施の形態において酸捕捉剤としては、一種のみが用いられてもよく、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。また、潤滑油に対する酸捕捉剤の配合量は0.005wt%〜5wt%の範囲内であることが好ましい。この配合量が0.005wt%未満では十分な効果を得られないおそれがあり、また、配合量が5wt%を超えるとスラッジの発生要因となるおそれがあるからである。
【0038】
なお、冷媒が二酸化炭素である場合にはポリアルキレングリコール(PAG)を潤滑油として使用するのが好ましく、冷媒がフロン系冷媒である場合にはポリビニルエーテル(PVE)を潤滑油として使用するのが好ましい。また、ベンゾトリアゾール系化合物は、冷媒中の水分1モル当量数に対して1/2モル当量数以上添加される。
【0039】
四路切換弁12は、各運転に対応して、冷媒の流れ方向を切り換えるための弁であり、冷房運転時には圧縮機11の吐出側と室外熱交換器13の高温側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と室内熱交換器31のガス側とを内部熱交換器14を介して接続し、暖房運転時には圧縮機11の吐出側と第2閉鎖弁19とを内部熱交換器14を介して接続するとともに圧縮機11の吸入側と室外熱交換器13のガス側とを接続することが可能である。
【0040】
室外熱交換器13は、冷房運転時において圧縮機11から吐出された高圧の超臨界冷媒を空調室外の空気を熱源として冷却させることが可能であり、暖房運転時には室内熱交換器31から戻る液冷媒を蒸発させることが可能である。
【0041】
内部熱交換器14は、室外熱交換器13の低温側(あるいは液側)と第1電動膨張弁15とを接続する冷媒配管(以下、第10冷媒配管という)と、四路切換弁12と圧縮機11とを接続する冷媒配管(以下、第11冷媒配管という)とを近接配置することによって構成された熱交換器である。この内部熱交換器14では、冷房運転時において第10冷媒配管に流れる高温高圧の超臨界冷媒と第11冷媒配管に流れる低温低圧のガス冷媒との間で熱交換が行われる。
【0042】
第1電動膨張弁15は、室外熱交換器13の低温側から流出する超臨界冷媒(冷房運転時)あるいは受液器16を通って流入する液冷媒(暖房運転時)を減圧するためのものである。
【0043】
受液器16は、運転モードや空調負荷に応じて余剰となる冷媒を貯蔵しておくためのものである。
【0044】
第2電動膨張弁17は、受液器16を通って流入してくる液冷媒(冷房運転時)あるいは室内熱交換器31の低温側から流出する超臨界冷媒(暖房運転時)を減圧するためのものである。
【0045】
室外ファン26は、ユニット10内に室外の空気を取り込み、室外熱交換器13を介して冷媒と熱交換した後の空気を排気するためファンである。
【0046】
<空気調和装置の動作>
空気調和装置1の運転動作について、図1を用いて説明する。この空気調和装置1は、上述したように冷房運転及び暖房運転を行うことが可能である。
【0047】
(1)冷房運転
冷房運転時は、四路切換弁12が図1の実線で示される状態、すなわち、圧縮機11の吐出側が室外熱交換器13の高温側に接続され、かつ、圧縮機11の吸入側が内部熱交換器14を介して第2閉鎖弁19に接続された状態となる。また、このとき、第1閉鎖弁18及び第2閉鎖弁19は開状態とされる。
【0048】
この冷媒回路2の状態で、圧縮機11が起動されると、ガス冷媒が、圧縮機11に吸入され、圧縮されて超臨界状態となった後、四路切換弁12を経由して室外熱交換器13に送られ、室外熱交換器13において冷却される。
【0049】
そして、この冷却された超臨界冷媒は、内部熱交換器14を経由して第1電動膨張弁15に送られる。なお、このとき、この超臨界冷媒は、内部熱交換器14の第11冷媒配管に流れる低温のガス冷媒により冷却される。そして、第1電動膨張弁15に送られた超臨界冷媒は、減圧されて飽和状態とされた後に受液器16を経由して第2電動膨張弁17に送られる。第2電動膨張弁17に送られた飽和状態の冷媒は、減圧されて液冷媒となった後に第1閉鎖弁18を経由して室内熱交換器31に供給され、室内空気を冷却するとともに蒸発されてガス冷媒となる。
【0050】
そして、そのガス冷媒は、第2閉鎖弁19、内部熱交換器14、及び四路切換弁12を経由して、再び、圧縮機11に吸入される。なお、このとき、このガス冷媒は、内部熱交換器14の第10冷媒配管に流れる高温の超臨界冷媒により加熱される。このようにして、冷房運転が行われる。
【0051】
(2)暖房運転
暖房運転時は、四路切換弁12が図1の破線で示される状態、すなわち、圧縮機11の吐出側が第2閉鎖弁19に接続され、かつ、圧縮機11の吸入側が内部熱交換器14を介して室外熱交換器13のガス側に接続された状態となっている。また、このとき、第1閉鎖弁18及び第2閉鎖弁19は開状態とされる。
【0052】
この冷媒回路2の状態で、圧縮機11が起動されると、ガス冷媒が、圧縮機11に吸入され、圧縮されて超臨界状態となった後、四路切換弁12及び第2閉鎖弁19を経由して室内熱交換器31に供給される。
【0053】
そして、その超臨界冷媒は、室内熱交換器31において室内空気を加熱するとともに冷却される。冷却された超臨界冷媒は、第1閉鎖弁を通って第2電動膨張弁17に送られる。第2電動膨張弁17に送られた超臨界冷媒は、減圧されて飽和状態とされた後に受液器16を経由して第1電動膨張弁15に送られる。第1電動膨張弁15に送られた飽和状態の冷媒は、減圧されて液冷媒となった後に内熱交換器14を経由して室外熱交換器13に送られて、室外熱交換器13において蒸発されてガス冷媒となる。なお、このとき、このガス冷媒は、内部熱交換器14の第11冷媒配管に流れる高温の超臨界冷媒により加熱される。そして、このガス冷媒は、四路切換弁12を経由して、再び、圧縮機11に吸入される。このようにして、暖房運転が行われる。
【0054】
<銅メッキ現象の抑制>
以下、銅メッキ試験及びその結果を実施例及び比較例として示す。
【実施例1】
【0055】
内容積120mLのオートクレーブに、40gのポリアルキレングリコール(PAG)油、40gの二酸化炭素冷媒、4.0gのN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン(又はN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン)(チバスペシャリティケミカルズ社製Irgamet39)(下記化式2参照)、2.4gの水、鉄片、銅片及びアルミニウム片を添加した後、そのオートクレーブを密閉し摂氏175度で10日間放置した。なお、ここで、銅不活性化剤として機能するN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンは1モル当たり2モルの銅イオンを補足する能力を有する。したがって、本実施例では、銅不活性化剤は、水1モル当量数に対して1.55モル当量数添加されていることになる(水の分子量を18.01とし、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの分子量を386.62として計算した)。
【0056】
そして、その後、鉄片に銅メッキが形成がされているか否かを確認したところ、銅メッキは形成されていなかった(表1参照)。
【0057】
【化2】

【実施例2】
【0058】
ポリアルキレングリコール(PAG)油をポリビニルエーテル(PVE)油に代え、水の添加量を1.6gに代えた以外は、実施例1と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキは形成されていなかった(表1参照)。なお、本実施例では、銅不活性化剤は、水1モル当量数に対して2.33モル当量数添加されていることになる。
【実施例3】
【0059】
ポリアルキレングリコール(PAG)油をポリビニルエーテル(PVE)油に代え、二酸化炭素冷媒をHFC系冷媒に代え、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの添加量を2.4gに代え、水の添加量を0.8gに代えた以外は、実施例1と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキは形成されていなかった(表1参照)。なお、本実施例では、銅不活性化剤は、水1モル当量数に対して2.80モル当量数添加されていることになる。
【実施例4】
【0060】
ポリアルキレングリコール(PAG)油をポリアルファオレフィン(PAO)油に代え、二酸化炭素冷媒を炭化水素系冷媒に代え、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンの添加量を0.8gに代え、水の添加量を0.4gに代えた以外は、実施例1と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキは形成されていなかった(表1参照)。なお、本実施例では、銅不活性化剤は、水1モル当量数に対して1.86モル当量数添加されていることになる。
【0061】
(比較例1)
N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキが形成されていた(表1参照)。
【0062】
(比較例2)
N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキが形成されていた(表1参照)。
【0063】
(比較例3)
N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキが形成されていた(表1参照)。
【0064】
(比較例4)
N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンを添加しなかったこと以外は、実施例4と同様に銅メッキ試験を行った。この結果、鉄片に銅メッキが形成されていた(表1参照)。
【0065】
【表1】

【0066】
<空気調和装置の特徴>
本実施の形態に係る空気調和装置1では、冷媒に、水1モル当量数に対して1/2モル当量数の銅不活性化剤が添加される。このため、この空気調和装置1では、冷媒回路2内で生じる銅イオンを全て不活性化することができる。また、この空気調和装置1では、冷媒に、酸捕捉剤としてエポキシ化合物が添加される。このため、この空気調和装置1では、銅イオンの発生を抑制することができる。したがって、この空気調和装置1では、銅メッキ現象が十分に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る冷凍装置は、銅メッキ現象が十分に抑制されるという特徴を有し、更新需要向けの冷凍装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気調和装置の冷媒回路図である。
【符号の説明】
【0069】
1 空気調和装置(冷凍装置)
2 冷媒回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50wt.ppm以上の水を含む冷媒と、
前記水のモル当量数の1/2モル当量数以上の銅不活性化剤と
が充填される冷媒回路(2)を備える冷凍装置(1)。
【請求項2】
前記冷媒回路に潤滑油がさらに充填され、
前記銅不活性化剤は、前記潤滑油に混入されている
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記潤滑油は、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(POE)、ナフテン油、パラフィン油、カーボネート油、及びアルキルベンゼン油より成る群から選択される少なくとも1つの潤滑油である
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記冷媒は、フロン系冷媒、炭化水素系冷媒、及び二酸化炭素より成る群から選択される少なくとも1つの冷媒である
請求項1から3のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記冷媒回路には酸捕捉剤がさらに充填される
請求項1から4のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項6】
50wt.ppm以上の水を含む二酸化炭素と、
前記水のモル当量数の1/2モル当量数以上のベンゾトリアゾール系化合物と、
ポリアルキレングリコール(PAG)と、
エポキシ系化合物と
が充填される冷媒回路(2)を備える冷凍装置(1)。
【請求項7】
50wt.ppm以上の水を含むフロン系冷媒と、
前記水のモル当量数の1/2モル当量数以上のベンゾトリアゾール系化合物と、
ポリビニルエーテル(PVE)と、
エポキシ系化合物と
が充填される冷媒回路(2)を備える冷凍装置(1)。

【図1】
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【公開番号】特開2008−180426(P2008−180426A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13033(P2007−13033)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】