説明

冷却システム

【課題】熱交換器の放熱効率を向上させる技術を提供すること。
【解決手段】移動体用の冷却システムであって、第1の熱交換器と、第2の熱交換器と、第1の流路形成部と、第2の流路形成部と、ファンと、第1の連通路形成部と、を備え、第2の流路形成部は、第2の流路形成部の開口を開閉する第1の開閉部を備え、第1の連通路形成部は、一端が、第2の流路形成部の、第2の熱交換器と第1の開閉部との間に接続されると共に、他端が、第1の流路形成部の、第1の熱交換器よりも第1の流路形成部内を流通する空気の流れの下流に接続されていることを特徴とする冷却システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体用の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を備える車両では、従来、燃料電池用の熱交換器、空調用の熱交換器、電子部品(例えば、モータ、インバータ等)用の熱交換器を備えている。このように、複数の熱交換器を備える場合、従来、走行風の流れ方向に沿って直列に重ねて、これらの熱交換器を配置していた。
【0003】
このように、複数の熱交換器を重ねて配置すると、熱交換器内を流通する冷却媒体を冷却するための風が、1つの熱交換器を通過する度に、加熱されて空気の温度が上昇するため、風の下流側に配置された熱交換器の放熱効率が低下する。なお、このような問題は、車両に搭載される冷却システムに限らず、他の移動体に搭載される、熱交換器を複数備える冷却システムに共通する問題であった。
【0004】
そこで、例えば、燃料電池用の熱交換器と、空調用の熱交換器を、重ならないように配置すると共に、熱交換器に空気を通過させるためのファンの配置を工夫して、熱交換器の放熱効率を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−076380号公報
【特許文献2】特開2005−126029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱交換器を配置する空間の大きさや、熱交換器の大きさによっては、上記のような熱交換器の配置をとることができない場合がある。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、熱交換器の放熱効率を向上させる、他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 少なくとも第1の熱交換器と、第2の熱交換器と、を備える、移動体用の冷却システムであって、
前記移動体内に流入する空気を、前記第1の熱交換器を通過して流通させる第1の流路形成部と、
前記移動体内に流入する空気を、前記第2の熱交換器を通過して流通させる第2の流路形成部と、
前記第1の流路形成部内に、前記移動体外の空気を強制的に流入させるファンと、
前記第1の流路形成部と、前記第2の流路形成部と、を連通する第1の連通路形成部と、
を備え、
前記第2の流路形成部は、
前記第2の流路形成部の開口を開閉する第1の開閉部を備え、
前記第1の連通路形成部は、
一端が、前記第2の流路形成部の、前記第2の熱交換器と前記第1の開閉部との間に接続されると共に、他端が、前記第1の流路形成部の、前記第1の熱交換器よりも前記第1の流路形成部内を流通する空気の流れの下流に接続されていることを特徴とする冷却システム。
【0009】
適用例1の冷却システムによれば、第1の熱交換器と第2の熱交換器とを、重ねて配置していないため、各熱交換器の放熱効率を向上させることができる。また、第1の流路形成部と第2の流路形成部とが、第1の連通路形成部によって連通されており、かつ第2の流路形成部の開口を開閉できる開閉部を備えるため、第2の流路形成部の開口が閉塞されている場合には、1つのファンによって、外気を第1、2の流路形成部両方に流入させることができるため、コストアップを抑制することができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載の冷却システムにおいて、
前記ファンは、
前記第1の流路形成部内において、前記第1の連通路形成部の前記他端が接続されている箇所よりも、前記空気の流れの下流に配置されると共に、
前記第2の流路形成部内において、
前記第2の熱交換器は、前記第1の開閉部よりも前記第2の流路形成部内を流通する空気の流れの上流に配置されることを特徴とする冷却システム。
【0011】
適用例2の冷却システムでは、ファンが第1の熱交換器よりも、空気の流れの下流に配置されているため、外気を吸引することにより、容易に、一つのファンで、第1、2の流路形成部両方に、空気を流入させることができる。
【0012】
[適用例3] 適用例1または2に記載の冷却システムにおいて、
前記開閉部は、
前記移動体の外部から前記第2の流路形成部内に流入する空気の圧力により、前記空気の流路を開ける、ラム圧弁であることを特徴とする冷却システム。
【0013】
このようにすると、移動体の外部から前記第2の流路形成部内に流入する空気の圧力を利用して、第2の流路形成部を開口させることができるため、構成を簡単にすることができる。
【0014】
[適用例4] 適用例1ないし3のいずれか1つに記載の冷却システムにおいて、
前記第1の連通路形成部は、
前記第2の流路形成部が開口している場合には、前記第1の流路形成部と前記第2の流路形成部との連通を遮断する遮断部を備えることを特徴とする冷却システム。
【0015】
このようにすると、第2の流路形成部が開口している場合には、第1の連通路形成部が閉塞されるため、第1の連通路形成部が開いている場合に比べて、ファンによって第1の流通路形成部内に流入される空気の量を増やすことができる。したがって、第1の流路形成部内に配置される熱交換器の放熱効率をさらに向上させることができる。
【0016】
[適用例5] 適用例1ないし4のいずれか1つに記載の冷却システムにおいて、
前記移動体は、
燃料電池および前記燃料電池用の補機類を備え、
前記第1の熱交換器は、前記燃料電池用の熱交換器であり、
前記第2の熱交換器は、前記補機類用の熱交換器であることを特徴とする冷却システム。
【0017】
[適用例6] 適用例1ないし5のいずれか1つに記載の冷却システムにおいて、
第3の熱交換器をさらに備え、
前記第3の熱交換器は、前記第1の流路形成部内に配置されることを特徴とする冷却システム。
【0018】
このようにすると、1つのファンによって、第1〜3の熱交換器全てに空気を流通させることができる。
【0019】
[適用例7] 適用例6に記載の冷却システムにおいて、
前記移動体は、冷房システムを備え、
前記第3の熱交換器は、前記冷房システム用の熱交換器であることを特徴とする冷却システム。
【0020】
[適用例8] 適用例1ないし5のいずれかに記載の冷却システムにおいて、
第3の熱交換器と、
前記移動体内に流入する空気を、前記第3の熱交換器を通過して流通させる第3の流路形成部と、
前記第1の流路形成部と、前記第3の流路形成部と、を連通する第2の連通路形成部と、
をさらに備え、
前記第3の流路形成部は、
前記第3の流路形成部の開口を開閉する第2の開閉部を備え、
前記第2の連通路形成部は、
一端が、前記第3の流路形成部の、前記第3の熱交換器と前記第2の開閉部との間に接続されると共に、他端が、前記第1の流路形成部の、前記第1の熱交換器よりも前記第1の流路形成部内を流通する空気の流れの下流に接続されていることを特徴とする冷却システム。
【0021】
このようにすると、第1〜3の熱交換器それぞれが、互いに重ならないように配置され、かつ、1つのファンで、3つの熱交換器に空気を通過させることができるため、コストアップを抑えて、放熱効率を向上させることができる。
【0022】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、冷却システム、その冷却システムを備える燃料電池システム、その燃料電池システムを搭載した移動体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
A.第1の実施例:
A1.実施例の構成:
図1は、本発明の第1の実施例としての冷却システム100Aの構成を示す説明図である。本実施例において、冷却システム100Aは、燃料電池車1000に搭載されている。燃料電池車1000は、燃料電池(図示しない)を主電源、2次電池(図示しない)を補助電源として、モータ(図示しない)を駆動し、モータの駆動力によって走行する車両である。図1は、燃料電池車1000を上から見た図であり、車両の前側の一部が記載されている。以下、各部の配置を説明する場合には、車両内の運転者を基準にして「前」「後」「左」「右」という方向を示すものとする。燃料電池車1000には、図1において、破線で示すように、外気を車両内に流入させるための通風孔1020が設けられている。図示するように、走行中は、走行風が、自然に、通風孔1020を介して、車両内に流入する。
【0024】
図示するように、冷却システム100Aは、燃料電池ラジエータ10と、冷房用コンデンサ20と、補機類用ラジエータ30と、第1の流路形成部40と、第2の流路形成部50と、連通路形成部60と、ファン70と、を主に備える。燃料電池ラジエータ10は、燃料電池を冷却する冷却水を放熱させるものである。冷房用コンデンサ20は、冷房用の冷媒を凝縮させるものである。冷房用コンデンサ20には、冷媒を気化させるエバポレータ(図示しない)が配管によって接続され、冷房用コンデンサ20とエバポレータとを冷媒が循環し、気化・凝縮を繰り返すことによって、燃料電池車1000の車室内の熱を吸収し、車室外へ放出して車室内の冷房を行なう。
【0025】
補機類用ラジエータ30は、燃料電池の発電に用いる補機類、および燃料電池で発電された電力の駆動力への変換に用いる補機類を冷却する冷却水を、放熱させるものである。燃料電池の発電に用いる補機類とは、例えば、水素ポンプ(図示しない)、エアコンプレッサ(図示しない)等であり、駆動力への変換に用いる補機とは、例えば、PCU(パワーコントロールユニット)、モータ(図示しない)等である。
【0026】
ファン70は、第1の流路形成部40内へ、外気を強制的に導入する樹脂製のファンであり、図示しないモータによって回転駆動される。ファン70は、燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20、補機類用ラジエータ30の温度、および走行風の状態、燃料電池、冷房、補機類の状態等に応じて、その運転、停止等が、PCUの備えるECU(電子制御装置:図示しない)によって、制御されている。
【0027】
第1の流路形成部40は、樹脂製の空洞の部材であり、燃料電池車1000内に流入する外気を、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過して流通させるための流路を形成する。第1の流路形成部40内には、前方に冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10が、その順に配置され、後方に70が配置されている。
【0028】
第2の流路形成部50は、樹脂製の空洞の部材であり、燃料電池車1000内に流入する外気を、補機類用ラジエータ30を通過して流通させるための流路を形成する。第2の流路形成部50内には、前方に補機類用ラジエータ30が配置されている。
【0029】
第2の流路形成部50の後端の構成について、図2に基づいて説明する。図2は、図1におけるX部を拡大して示す拡大図である。図2では、第2の流路形成部50を左側から見た様子を示している。第2の流路形成部50は、図2に示すように、筒状を成す筒状部52と、筒状部52の後端を閉塞させるラム圧弁54と、を備える。ラム圧弁54は、弁部55と、弁部55を回転させるための軸部56と、を備える。燃料電池車1000が停止している間は、走行風がないため、弁部55は自重により、筒状部52の後端の開口を塞いでいる。燃料電池車1000が走行中は、通風孔1020を介して走行風が筒状部52に流入するため、走行風の圧力(いわゆる、ラム圧)により、弁部55が、軸部56を軸にして回転し(図2に、そのときの弁部55の位置を破線で示す。)筒状部52の後端が開口される。
【0030】
連通路形成部60は、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50とを連通する連通路を形成する樹脂製の部材である。連通路形成部60は、図1に示すように、その一端が、第1の流路形成部40における燃料電池ラジエータ10とファン70との間に接続され、他端が、第2の流路形成部50の補機類用ラジエータ30とラム圧弁54との間に接続されている。なお、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50、連通路形成部60は、一体的に形成されている。
【0031】
図3は、第2の流路形成部50と連通路形成部60の接続部付近を拡大して示す説明図である。図示するように、連通路形成部60は、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50との連通を遮断する遮断部62を備える。図示するように、遮断部62は、第2の流路形成部50と連通路形成部60の接続部分の開口を閉塞する弁部63と、弁部63を回転させる軸部64と、を備える。燃料電池車1000の走行中等、走行風がある場合には、遮断部62は、補機類用ラジエータ30を通過して流通する空気の流れによって、第2の流路形成部50と連通路形成部60との連通を遮断する。
【0032】
本実施例における冷房用コンデンサ20または燃料電池ラジエータ10が、請求項における第1の熱交換器に、補機類用ラジエータ30が、請求項における第2の熱交換器に、それぞれ相当する。また、本実施例における連通路形成部60が請求項における第1の連通路形成部に、ラム圧弁54が請求項における開閉部に、それぞれ、相当する。
【0033】
A2.実施例の動作:
次に、本実施例の冷却システム100Aにおける空気の流れについて、図1〜3に基づいて、説明する。燃料電池車1000の停止中、または、低速走行時、上記したように、走行風が第2の流路形成部50内に流入しないため、第2の流路形成部50の備えるラム圧弁54により、第2の流路形成部50の後端が閉塞されている(図1)。そのような場合、ファン70によって、外気が強制的に車両内に吸引されると、外気は、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過して、第1の流路形成部40内を流通すると共に、補機類用ラジエータ30を通過して、第2の流路形成部50から連通路形成部60を通って第1の流路形成部40に流入して、ファン70によって、第1の流路形成部40の外へ出される。
【0034】
このとき、図3(a)に示すように、ファン70によって吸引される空気の流れにより、連通路形成部60が備える遮断部62の、弁部63が軸部64を軸にして回転し、第2の流路形成部50から連通路形成部60への空気の流路が開かれる。すなわち、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50とが連通される。
【0035】
一方、燃料電池車1000の走行中は、上記したように、走行風が第2の流路形成部50内に流入するため、ラム圧によりラム圧弁54が開いている(図3(b))。そのため、走行風が補機類用ラジエータ30を通過し、第2の流路形成部50内を流通して、第2の流路形成部50から出ていく。このとき、ラム圧により、遮断部62の弁部63が軸部64を軸にして前記と逆に回転し、図3(b)に示すように、連通路形成部60を塞ぐ。
【0036】
連通路形成部60が塞がれていると、第2の流路形成部50から第1の流路形成部40へ、空気が流入しない。すなわち、ファン70により吸引される外気は、全て、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過して、第1の流路形成部40に導入されるため、連通路形成部60により第2の流路形成部50と第1の流路形成部40とが連通している場合に比べて、第1の流路形成部40内に導入される風量を増加させることができる。
【0037】
A3.実施例の効果:
本実施例の冷却システム100Aの効果を、従来の冷却システムと比較して説明する。図6、7は、従来の冷却システム100Pの構成を示す説明図である。冷却システム100Pは、第1の実施例と同様に燃料電池車1000に搭載されている。図6は、燃料電池車1000を上から見た図であり、車両の前側の一部が記載されている。図7は、燃料電池車1000を左側から見た図であり、車両の前側の一部が記載されている。
【0038】
従来の冷却システム100Pは、燃料電池ラジエータ10と、冷房用コンデンサ20と、補機類用ラジエータ30と、ファンシュラウド40Pと、ファン70と、を備える。従来の冷却システム100Pの構成のうち、第1の実施例と同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略する。冷却システム100Pでは、図6に示すように、燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20、補機類用ラジエータ30が車両の前後方向に重ねて配置されている。図7に示すように、補機類用ラジエータ30は、燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20に比べて小さいため、全てが重なってはいないが、一部では、燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20、補機類用ラジエータ30が重なっている。したがって、その部分においては、燃料電池車1000内に流入する外気は、補機類用ラジエータ30を通過する際に、温められ、また、冷房用コンデンサ20を通過する際に温められるため、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10における放熱効率が低下していた。
【0039】
これに対し、本実施例の冷却システム100Aでは、補機類用ラジエータ30が燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20の横に並べて配置されているため、補機類用ラジエータ30を通過することによる、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過する空気の温度上昇がない。したがって、放熱効率を向上させることができる。また、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50とが、連通路形成部60によって連通されているため、燃料電池車1000の停止中など、走行風が自然に燃料電池車1000内に流入しない場合でも、1つのファンによって、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50の両方に、外気を導入することができる。
【0040】
B.第2の実施例:
B1.実施例の構成:
図4は、本実施例の冷却システム100Bの構成を示す説明図である。冷却システム100Bの構成については、第1の実施例と異なる部分のみを説明し、第1の実施例と同様の構成については、第1の実施例と同じ符号を用い、その説明を省略する。本実施例において、冷却システム100Bは、第1の実施例と同様に、燃料電池車1000に搭載されている。
【0041】
図4に示すように、本実施例の冷却システム100Bは、冷却システム100Aの構成に加え、さらに、補機類用ラジエータ32と、第3の流路形成部80と、連通路形成部90と、を備える。すなわち、本実施例の冷却システムBは、補機類用ラジエータを、2つ備える。本実施例における補機類用ラジエータ32が、請求項における第3の熱交換器に、連通路形成部90が、請求項における第2の連通路形成部に、それぞれ、相当する。
【0042】
第3の流路形成部80は、第2の流路形成部50と同様に、樹脂製の空洞の部材であり、燃料電池車1000内に流入する外気を、補機類用ラジエータ32を通過して流通させるための流路を形成する。第3の流路形成部80内には、第2の流路形成部50と同様に、前方に補機類用ラジエータ32が配置され、後端には、ラム圧弁84を備える。ラム圧弁84の構成は、第2の流路形成部50の備えるラム圧弁54と同様である。
【0043】
連通路形成部90は、第1の流路形成部40と第3の流路形成部80とを連通する連通路を形成する樹脂製の部材である。連通路形成部90は、図4に示すように、その一端が、第1の流路形成部40における燃料電池ラジエータ10とファン70との間に接続され、他端が、第3の流路形成部80の補機類用ラジエータ32とラム圧弁84との間に接続されている。そして、連通路形成部90は、第1の流路形成部40と第3の流路形成部80との連通を遮断する遮断部(図示しない)を備える。連通路形成部90の備える遮断部の構成は、第1の実施例における連通路形成部60の備える遮断部62と同様である。なお、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50、連通路形成部60、第3の流路形成部80、連通路形成部90は、一体的に形成されている。
【0044】
B2.実施例の動作:
本実施例の冷却システム100Bにおける空気の流れについて、図4に基づいて説明する。第3の流路形成部80の備えるラム圧弁84の動きは、第1の実施例における第2の流路形成部50の備えるラム圧弁54と同様である。燃料電池車1000の停止中、または、低速走行時は、上記したように、走行風が第2の流路形成部50、第3の流路形成部80内に流入しないため、ラム圧弁54により、第2の流路形成部50の後端が閉塞されて、同様に、ラム圧弁84により、第3の流路形成部80の後端が閉塞されている(図4)。そのような場合、ファン70によって、外気が強制的に車両内に吸引されるため、外気は、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過して、第1の流路形成部40内を流通すると共に、補機類用ラジエータ30を通過して、第2の流路形成部50から連通路形成部60を通って第1の流路形成部40に流入し、また、補機類用ラジエータ32を通過して、第3の流路形成部80から連通路形成部90を通って第1の流路形成部40に流入する。そして、ファン70によって、第1の流路形成部40の外へ出される。
【0045】
このとき、ファン70によって吸引される空気の流れにより、連通路形成部90が備える遮断部が、第1の実施例における遮断部62と同様の動きをして、第2の流路形成部50から連通路形成部90への空気の流路が開かれる。すなわち、第1の流路形成部40と第3の流路形成部80とが連通される。
【0046】
一方、燃料電池車1000の走行中は、上記したように、走行風が第2の流路形成部50、第3の流路形成部80内に流入するため、ラム圧によりラム圧弁54、ラム圧弁84が開いている。そのため、走行風が補機類用ラジエータ30を通過し、第2の流路形成部50内を流通して、第2の流路形成部50から出ていく。同様に、走行風が補機類用ラジエータ32を通過し、第3の流路形成部80内を流通して、第3の流路形成部80から出ていく。このとき、第1の実施例と同様に、遮断部62が連通路形成部60を塞ぎ、遮断部が連通路形成部90を塞ぐ。
【0047】
連通路形成部60、90が塞がれていると、第2の流路形成部50および連通路形成部90から第1の流路形成部40へ、空気が流入しない。すなわち、ファン70により吸引される外気は、全て、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過して、第1の流路形成部40に導入されるため、連通路形成部60により第2の流路形成部50、第3の流路形成部80と第1の流路形成部40とが連通している場合に比べて、冷房用コンデンサ20および燃料電池ラジエータ10を通過する風量を、増加させることができる。
【0048】
B3.実施例の効果:
本実施例における冷却システム100Bでは、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50、第3の流路形成部80を、備えている。また、燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20が、第1の流路形成部40内に配置されており、補機類用ラジエータ30が第2の流路形成部50内に、補機類用ラジエータ32が第3の流路形成部80内に、それぞれ、配置されているため、補機類用ラジエータ30、32が燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20の横に並べて配置されており、燃料電池ラジエータ10、冷房用コンデンサ20、補機類用ラジエータ30、32が、重ねて配置されていないため、補機類用ラジエータ30、32を通過することによる、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10を通過する空気の温度上昇がない。したがって、第1の実施例と同様に、放熱効率を向上させることができる。
【0049】
また、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50、第1の流路形成部40と第3の流路形成部80が、それぞれ連通されているため、燃料電池車1000の停止中など、走行風が自然に燃料電池車1000内に流入しない場合でも、1つのファンによって、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50、第3の流路形成部80の全てに、外気を導入することができる。
【0050】
C.第3の実施例:
図5は、本実施例の冷却システム100Cの構成を示す説明図である。冷却システム100Cの構成については、第1の実施例と異なる部分のみを説明し、第1の実施例と同様の構成については、第1の実施例と同じ符号を用い、その説明を省略する。本実施例において、冷却システム100Cは、第1の実施例と同様に、燃料電池車1000に搭載されている。
【0051】
図5に示すように、本実施例の冷却システム100Cが第1の実施例の冷却システム100Aと異なる点は、ファン70が、第1の流路形成部40内において、冷房用コンデンサ20よりも前側に配置されていること、連通路形成部60が、ファン70と冷房用コンデンサ20の間で第1の流路形成部40に接続されていること、および第2の流路形成部50Cの構成が異なることである。
【0052】
第2の流路形成部50Cは、第1の実施例と同様に、樹脂製の空洞の部材であり、燃料電池車1000内に流入する外気を、補機類用ラジエータ30を通過して流通させるための流路を形成する。しかしながら、本実施例における第2の流路形成部50Cは、筒状部の前端を閉塞させるラム圧弁54を備えている。そして、第2の流路形成部50C内には、後方に補機類用ラジエータ30が配置されている。
【0053】
本実施例では、ファン70が、第1の流路形成部40内において、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10よりも前方に配置されているため、ファン70によって、外気を強制的に、第1の流路形成部40内に押し込む。燃料電池車1000が停車中など、ラム圧弁54により第2の流路形成部50の前端が閉塞されている場合には、ファン70によって、外気が強制的に、第1の流路形成部40内に押し込まれると、ファン70の後方は圧力が高いので、連通路形成部60を介して、外気が第2の流路形成部50内に流入し、補機類用ラジエータ30を通過する。したがって、第1の実施例と同様に、1つのファンによって、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50の両方に、外気を導入することができるため、コストアップを抑制しつつ、放熱効率を向上させることができる。
【0054】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0055】
(1)上記第1の実施例において、第1の流路形成部40内に、燃料電池ラジエータ10と、冷房用コンデンサ20とを重ねて配置し、連通路形成部60内に補機類用ラジエータ30を配置するものを示したが、熱交換器の配置は、この配置に限定されない。また、熱交換器の個数も、上記した実施例の個数に限定されない。複数の熱交換器を備える冷却システムにおいて、全ての熱交換器を重ねて配置するのではなく、複数のブロックに分けて、配置するようにすればよい。そのような場合には、各ブロックを覆う、流路形成部を形成し、それらの流路形成部を連通路形成部を介して連通させ、全ての流路形成部に連通する流路形成部内に、ファンを備えることにより、上記した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(2)また、上記第2の実施例において、燃料電池ラジエータ10と、冷房用コンデンサ20と、補機類用ラジエータ30、32を備えるものを示したが、例えば、第1の実施例と同様に、補機類用ラジエータ32を備えない場合に、冷房用コンデンサ20を、第3の流路形成部80内に配置してもよい。このようにすると、各流路形成部40、50、80内に、それぞれ、一つずつ、熱交換器が配置され、全ての熱交換器が重ならないため、第1の実施例より、さらに、放熱効率を向上させることができる。
【0057】
(3)上記第1の実施例において、連通路形成部60が、遮断部62を備えるものを示したが、遮断部62を備えない構成にしてもよい。このようにしても、従来の構成に比べて、放熱効率を上げることができ、1つのファンで、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50の両方に空気を流通させることができる。
【0058】
(4)上記第1の実施例において、ラム圧弁54は、ラム圧により、筒状部52の後端を開口しているが、ラム圧により、開閉させるものに限定されない。例えば、車速が速い場合には、筒状部52の後端を開口させ、車速が遅い(または、停止)場合には、筒状部52の後端を閉塞させるように、制御される開閉部を備えるようにしてもよい。このようにしても、上記した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0059】
(5)また、上記第1の実施例において、遮断部62は、第2の流路形成部50内の空気の流れにより、連通路形成部60を開閉させるものを示したが、車速に応じて開閉させるように制御するようにしてもよい。ファン70により、第2の流路形成部50内に空気を流通させる必要がある場合には、第1の流路形成部40と第2の流路形成部50とが連通され、必要がないときには、その連通を遮断するようにすればよい。
【0060】
(6)上記した第1の実施例において、冷却システム100Aが燃料電池車1000に搭載される場合を例示したが、ガソリンエンジン車等の他の動力源を搭載する車両、さらに、列車、船舶、航空機等、種々の移動体に搭載されるものでもよい。そのような移動体に搭載される冷却システムであっても、同様の効果を得ることができる。
【0061】
(7)上記した第3の実施例において、ファン70が、第1の流路形成部40内において、冷房用コンデンサ20よりも前側に配置されている構成の冷却システム100Cを示したが、ファン70が、第1の流路形成部40内において、冷房用コンデンサ20よりも前側に配置されている場合に、第2の流路形成部の構成および連通路形成部60の配置を、例えば、図8に示すようにしてもよい。図8は、第3の実施例の変形例の冷却システム100Dの構成を示す説明図である。変形例の冷却システム100Dは、第3の実施例における第2の流路形成部50Cの代わりに、第1の実施例における第2の流路形成部50を用い、連通路形成部60が、燃料電池ラジエータ10の後ろ側で第1の流路形成部40に接続されている。すなわち、第2の流路形成部50は、筒状部の後端を閉塞させるラム圧弁54を備えており、補機類用ラジエータ30は、第2の流路形成部50内の前方に配置されている。
【0062】
このようにすると、ファン70が、第1の流路形成部40内において、冷房用コンデンサ20、燃料電池ラジエータ10よりも前方に配置されているため、ファン70によって、外気を強制的に、第1の流路形成部40内に押し込む。燃料電池車1000が停車中など、ラム圧弁54により第2の流路形成部50の後端が閉塞されている場合には、ファン70によって、外気が強制的に、第1の流路形成部40内に押し込まれると、第1の流路形成部40内の燃料電池ラジエータ10よりも後ろ側が負圧になるため、外気が補機類用ラジエータ30を通過し、連通路形成部60を介して、第1の流路形成部40に流入する。したがって、第3の実施例と同様に、1つのファンによって、第1の流路形成部40、第2の流路形成部50の両方に、外気を導入することができるため、第3の実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施例としての冷却システム100Aの構成を示す説明図である。
【図2】図1におけるX部を拡大して示す拡大図である。
【図3】第2の流路形成部50と連通路形成部60の接続部付近を拡大して示す説明図である。
【図4】第2の実施例としての冷却システム100Bの構成を示す説明図である。
【図5】第3の実施例としての冷却システム100Cの構成を示す説明図である。
【図6】従来の冷却システム100Pの構成を示す説明図である。
【図7】従来の冷却システム100Pの構成を示す説明図である。
【図8】第3の実施例の変形例の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
10…燃料電池ラジエータ
20…冷房用コンデンサ
30…補機類用ラジエータ
32…補機類用ラジエータ
40…流路形成部
40…第1の流路形成部
40P…ファンシュラウド
50、50C…第2の流路形成部
52…筒状部
54…ラム圧弁
55…弁部
56…軸部
60…連通路形成部
62…遮断部
63…弁部
64…軸部
70…ファン
80…第3の流路形成部
84…ラム圧弁
90…連通路形成部
100A、100B、100C、100D、100P…冷却システム
1000…燃料電池車
1020…通風孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の熱交換器と、第2の熱交換器と、を備える、移動体用の冷却システムであって、
前記移動体内に流入する空気を、前記第1の熱交換器を通過して流通させる第1の流路形成部と、
前記移動体内に流入する空気を、前記第2の熱交換器を通過して流通させる第2の流路形成部と、
前記第1の流路形成部内に、前記移動体外の空気を強制的に流入させるファンと、
前記第1の流路形成部と、前記第2の流路形成部と、を連通する第1の連通路形成部と、
を備え、
前記第2の流路形成部は、
前記第2の流路形成部の開口を開閉する第1の開閉部を備え、
前記第1の連通路形成部は、
一端が、前記第2の流路形成部の、前記第2の熱交換器と前記第1の開閉部との間に接続されると共に、他端が、前記第1の流路形成部の、前記第1の熱交換器よりも前記第1の流路形成部内を流通する空気の流れの下流に接続されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記ファンは、
前記第1の流路形成部内において、前記第1の連通路形成部の前記他端が接続されている箇所よりも、前記空気の流れの下流に配置されると共に、
前記第2の流路形成部内において、
前記第2の熱交換器は、前記第1の開閉部よりも前記第2の流路形成部内を流通する空気の流れの上流に配置されることを特徴とする冷却システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却システムにおいて、
前記開閉部は、
前記移動体の外部から前記第2の流路形成部内に流入する空気の圧力により、前記第2の流路形成部を開口させる、ラム圧弁であることを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷却システムにおいて、
前記第1の連通路形成部は、
前記第2の流路形成部が開口している場合には、前記第1の流路形成部と前記第2の流路形成部との連通を遮断する遮断部を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の冷却システムにおいて、
前記移動体は、
燃料電池および前記燃料電池用の補機類を備え、
前記第1の熱交換器は、前記燃料電池用の熱交換器であり、
前記第2の熱交換器は、前記補機類用の熱交換器であることを特徴とする冷却システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷却システムにおいて、
第3の熱交換器をさらに備え、
前記第3の熱交換器は、前記第1の流路形成部内に配置されることを特徴とする冷却システム。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却システムにおいて、
前記移動体は、冷房システムを備え、
前記第3の熱交換器は、前記冷房システム用の熱交換器であることを特徴とする冷却システム。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載の冷却システムにおいて、
第3の熱交換器と、
前記移動体内に流入する空気を、前記第3の熱交換器を通過して流通させる第3の流路形成部と、
前記第1の流路形成部と、前記第3の流路形成部と、を連通する第2の連通路形成部と、
をさらに備え、
前記第3の流路形成部は、
前記第3の流路形成部の開口を開閉する第2の開閉部を備え、
前記第3の流路形成部内において、
前記第2の連通路形成部は、
一端が、前記第3の流路形成部の、前記第3の熱交換器と前記第2の開閉部との間に接続されると共に、他端が、前記第1の流路形成部の、前記第1の熱交換器よりも前記第1の流路形成部内を流通する空気の流れの下流に接続されていることを特徴とする冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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