説明

冷却収納装置

【課題】商品の有無や商品の収納状態に関わらず、断熱収納庫をできるだけ短時間のうちに均一に所望の温度まで冷却すること。
【解決手段】温度調整した冷却空気を断熱収納庫11の内部に供給することにより、断熱収納庫11の内部を所望の温度に冷却するようにした冷却収納装置において、冷却空気の吹出角度が変化する態様で断熱収納庫11に配設した吹出ダクト21と、断熱収納庫11に対して吹出ダクト21の吹出角度を変化させる角度調整アクチュエータ24と、角度調整アクチュエータ24を介して吹出ダクト21からの冷却空気の吹出角度を制御する冷却制御部100とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品等の商品を冷却した状態で収納する冷却収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内外の食品流通分野では、商品である食品を低温状態で流通させる手法が主流となっている。この低温流通手段の実現には、商品を冷却した状態で収納しておく冷却収納装置が不可欠となる。冷却収納装置は、流通拠点に設けられる冷凍倉庫のみならず、車両に搭載される冷却収納コンテナ等のように、冷凍倉庫の間に商品を運搬するための用途にも用いられる。
【0003】
この種の冷却収納装置では、周囲を断熱材で覆うことによって断熱空間となる断熱収納庫を構成し、冷却ユニットによって温度調整した冷却空気を断熱収納庫の内部に供給することにより、断熱収納庫に収納した商品を低温状態に維持するようにしている。また、車両用の冷却収納装置では、冷却空気を吹き出すための吹出口の位置を断熱収納庫の中央部に形成し、冷却空気の流れを工夫することにより、断熱収納庫の内部に温度のバラ付きを生じさせないようにしたものも提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−156510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却した状態で収納する商品、特に食品の場合には、温度履歴を管理することが重要となる。例えば、冷凍食品においては、収納状態や運搬時の温度が、常に設定値以下となるように管理する必要がある。このため、こうした商品を収納した冷却収納装置には、断熱収納庫の内部温度が一時的にも設定値を超えることが許されず、できるだけ短時間のうちに断熱収納庫の内部を均一に冷却する機能が要求される。
【0006】
特許文献1に記載された装置の場合、収納される商品の状態が常に同じであれば、上述の要求に応えることが可能になる。しかしながら、冷却収納装置に収納される商品は、形や大きさが様々である場合が多く、また流通の状況に応じて収納する商品の量も変化するのが一般的であり、商品の高さや配置位置等の収納状態が常に同じになるとは限らない。このため、商品の収納状態が変わった場合には、冷却空気の流通状況も変化することになり、短時間のうちには断熱収納庫の内部を均一に冷却することができない恐れがある。
【0007】
さらに、車両用の冷却収納装置では、商品を収納する以前に冷却ユニットを運転して断熱収納庫の内部を予冷することが行われる。この予冷は、商品が冷凍食品の場合、断熱収納庫の内部を室温から−20℃まで冷却する必要がある。しかも、予冷が終了しなければ、断熱収納庫の内部に商品を収納することができないため、均一に冷却するまでに長時間を要したのでは商品の運搬効率に大きな影響を及ぼす。従って、冷却収納装置には、商品の無い断熱収納庫に対しても、できるだけ短時間のうちに均一に所望の温度まで冷却する機能が要求される。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、商品の有無や商品の収納状態に関わらず、断熱収納庫の内部をできるだけ短時間のうちに均一に所望の温度まで冷却することのできる冷却収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る冷却収納装置は、温度調整した冷却空気を断熱収納庫の内部に供給することにより、前記断熱収納庫の内部を所望の温度に冷却するようにした冷却収納装置において、冷却空気の吹出角度が変化する態様で前記断熱収納庫に配設した吹出通路と、前記断熱収納庫に対して前記吹出通路の吹出角度を変化させる角度調整アクチュエータと、前記角度調整アクチュエータを介して前記吹出通路からの冷却空気の吹出角度を制御する冷却制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、吹出角度を指示するための角度変更スイッチを備え、前記冷却制御手段は、前記角度変更スイッチから出力される指示信号に従って吹出角度を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記角度変更スイッチを有効にするか無効にするかを選択する選択スイッチをさらに備え、前記冷却制御手段は、前記選択スイッチによって前記角度変更スイッチが有効化された場合にのみ前記角度変更スイッチから出力される指示信号に従って吹出角度を変更することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、吹出角度を指示するための角度変更スイッチと、前記角度変更スイッチを有効にするか無効にするかを選択する選択スイッチをさらに備え、前記冷却制御手段は、前記選択スイッチによって前記角度変更スイッチが有効化された場合、前記角度変更スイッチから出力される指示信号に従って吹出角度を変更し、かつ前記選択スイッチによって前記角度変更スイッチが無効化された場合、前記断熱収納庫の内部温度に応じて吹出角度を変更することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記断熱収納庫は、車両に搭載されたコンテナであり、前記角度変更スイッチを運転席に配設したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記冷却制御手段は、前記断熱収納庫の内部温度が予め設定した温度を超えていた場合、吹出角度を変更しながら冷却空気を供給することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記冷却制御手段は、前記断熱収納庫の内部に温度のバラ付きがあると判断した場合、吹出角度を変更しながら冷却空気を供給することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記断熱収納庫の外部温度を検出する外部温度検出手段を備え、前記冷却制御手段は、前記外部温度検出手段の検出温度が高くなるに従って往復周期が短くなる態様で吹出角度を変更することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記冷却制御手段は、予め季節ごとに関連づけられた往復周期データを有したものであり、取得した現在の日付から対応する往復周期データを取得し、取得した往復周期データに従って吹出角度を変更することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記冷却制御手段は、前記断熱収納庫の商品に取り付けた内部温度検出手段を通じて前記断熱収納庫の内部温度を検出することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記断熱収納庫に収納した商品の3次元位置分布を検出する商品分布検出手段を備え、前記冷却制御手段は、前記商品分布検出手段によって検出した商品の3次元位置分布に応じて冷却空気の吹出角度を変更することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上述した冷却収納装置において、前記断熱収納庫に収納した商品の3次元位置分布を検出する商品分布検出手段を備え、前記冷却制御手段は、前記商品分布検出手段によって検出した商品の3次元位置分布に応じて冷却空気の吹出量を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、商品の有無や商品の収納状態に応じて断熱収納庫に対する吹出通路の吹出角度を変化させることができる。このため、断熱収納庫に商品があるか否かに関わらず、また商品が如何なる状態で収納されていたとしても、吹出通路からの冷却空気の吹出角度を調整することで、できるだけ短時間のうちに均一に所望の温度まで冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である冷却収納装置を示すブロック図である。
【図2−1】図2−1は、図1に示した冷却収納装置を適用する車両の側面図である。
【図2−2】図2−2は、図2−1に示した車両の背面図である。
【図3】図3は、図1に示した冷却収納装置に適用する吹出通路の要部拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2である冷却収納装置を示すブロック図である。
【図5−1】図5−1は、図4に示した冷却収納装置の断熱収納庫を概念的に示す斜視図である。
【図5−2】図5−2は、図5−1に示した断熱収納庫の側面図である。
【図6−1】図6−1は、図4に示した冷却収納装置による冷却空気の吹出状態を概念的に示す側面図である。
【図6−2】図6−2は、図4に示した冷却収納装置による冷却空気の吹出状態を概念的に示す側面図である。
【図6−3】図6−3は、図4に示した冷却収納装置による冷却空気の吹出状態を概念的に示す側面図である。
【図7】図7は、分布検出手段の第1変形例となる吹出通路を拡大したもので、(a)は延長上に商品が存在しない場合の断面側面図、(b)は延長上に商品が存在する場合の断面側面図である。
【図8】図8は、分布検出手段の第2変形例となるロードセルの配置態様を下方から示した断熱収納庫の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る冷却収納装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である冷却収納装置を示したもので、図2−1及び図2−2に示すように、車両に搭載される冷却収納装置を例示している。冷却収納装置の適用対象となる車両FTは、車体フレームFMの前方部にキャビンCBが設けられたもので、車体フレームFMにおいてキャビンCBよりも後方となる部位に冷却収納装置のコンテナ10を備えている。
【0025】
コンテナ10は、中空の直方体状に構成したもので、断熱材によって囲まれた内部に冷凍食品等の商品を収納するための断熱収納庫11を構成している。コンテナ10の前壁には、キャビンCBよりも上方となる位置にユニット筐体20が設けてある。ユニット筐体20は、吹出ダクト(吹出通路)21及び吸込孔22を通じてコンテナ10の内部に連通した箱体であり、内部に蒸発器23を収容している。蒸発器23は、図示せぬ圧縮機、凝縮器及び膨張弁と間に冷媒が循環供給される冷却ユニットを構成するものである。この蒸発器23は、吸込孔22を介してユニット筐体20に吸い込まれた空気が吹出ダクト21の吹出口21aを介してコンテナ10の内部に供給されるまでの空気の通過領域に配設してあり、通過する空気を所望の冷却温度まで冷却する機能を有している。
【0026】
吹出ダクト21は、図2−1、図2−2に示すように、コンテナ10の断熱収納庫11に対して横長の矩形状に開口したもので、図3に示すように、吹出口21aを介した冷却空気の吹出角度が上下に変化するように、水平軸21bを介してコンテナ10に回転可能に取り付けてある。この吹出ダクト21には、その内部に上下一対の仕切板21cを配設することにより、主流路21Aと、一対の副流路21Bとが構成してある。仕切板21cは、主流路21A及び一対の副流路21Bがそれぞれ一様の流路幅を有するように互いに平行に配設してある。
【0027】
また吹出ダクト21には、コンテナ10との間に角度調整アクチュエータ24が設けてある。角度調整アクチュエータ24は、後述する冷却制御部(冷却制御手段)100から与えられた指令信号に従って動作し、コンテナ10に対して吹出ダクト21の吹出口21aを上下に移動させるものである。
【0028】
一方、図1に示すように、冷却収納装置は、冷却制御部100を備えている。冷却制御部100は、内部温度センサ(内部温度検出手段)101、外部温度センサ(外部温度検出手段)102、角度変更スイッチ103、選択スイッチ104からの出力信号及び予めメモリ105に格納されたデータに基づいて角度調整アクチュエータ24の動作を制御するものである。内部温度センサ101は、コンテナ10の内部に配置され、断熱収納庫11の温度を検出するものである。本実施の形態1では、コンテナ10の内部複数箇所に内部温度センサ101を設けるようにしている。外部温度センサ102は、コンテナ10の外表面に配置され、外部雰囲気の温度を検出するものである。角度変更スイッチ103は、角度調整アクチュエータ24を動作させるための指令信号を出力するスイッチであり、選択スイッチ104は、角度変更スイッチ103を有効にするか無効にするかの選択信号を出力するスイッチである。これら角度変更スイッチ103及び選択スイッチ104は、キャビンCBにおいて運転者が操作できる位置に設けてある。
【0029】
冷却制御部100は、変更スイッチ監視部110、マニュアル角度設定部111、温度監視部112、自動角度設定部113、往復周期設定部114を有している。変更スイッチ監視部110は、選択スイッチ104からの指令信号を監視し、選択スイッチ104から角度変更スイッチ103を有効化する指令信号が出力された場合、その後、これを無効化する指令信号が出力されるまでの間、角度変更スイッチ103から出力された指令信号をマニュアル角度設定部111に出力する処理を行うものである。マニュアル角度設定部111は、角度変更スイッチ103から与えられる出力信号に従って冷却空気の吹出角度を設定し、吹出ダクト21の吹出口21aから吹き出される冷却空気が設定した吹出角度をなるように角度調整アクチュエータ24に指令信号を出力するものである。温度監視部112は、複数の内部温度センサ101の検出した温度に基づいて断熱収納庫11の熱負荷を判断し、その判断結果を出力するものである。本実施の形態1では、内部温度センサ101が検出した温度のいずれかが予め設定した温度閾値を超えていた場合に、温度監視部112から自動角度設定部113に対して高熱負荷状態である旨の信号が出力されるように設定してある。内部温度センサ101の検出した温度がすべて閾値以下であった場合、温度監視部112は、次に個々の検出温度の偏差を算出する。算出した温度偏差が予め設定した偏差閾値を超えていた場合にも、温度監視部112から自動角度設定部113に対して高熱負荷状態である旨の信号が出力されるように設定してある。内部温度センサ101の検出した温度がすべて閾値以下であり、かつ温度偏差が偏差閾値以下であった場合には、温度監視部112から自動角度設定部113に対して低負荷状態である旨の信号が出力される。自動角度設定部113は、高熱負荷状態である旨の信号が与えられた場合、予めメモリ105に格納した自動運転パターンデータ106を読み出し、この自動運転パターンデータ106に従って角度調整アクチュエータ24を動作させるための指令信号を出力する。本実施の形態1では、往復周期設定部114によって設定された周期で吹出ダクト21の吹出口21aが上下に往復移動するように角度調整アクチュエータ24に指令信号を出力する。往復周期設定部114は、外部温度センサ102が検出した温度に基づいて角度調整アクチュエータ24を往復動作させるための周期を設定するものである。本実施の形態1では、外部温度センサ102の検出した温度が高いほど短い周期を設定するように構成してある。
【0030】
以下、冷却制御部100の処理内容を説明し、併せて冷却収納装置の特徴部分について詳述する。まず、冷却制御部100は、変更スイッチ監視部110を介して選択スイッチ104及び角度変更スイッチ103からの指令信号を常時監視する。双方のスイッチ104,103から指令信号が出力されていない場合には、温度監視部112を通じて現在の断熱収納庫11の熱負荷が高熱負荷状態であるか低熱負荷状態であるかが演算される。
【0031】
温度監視部112によって断熱収納庫11の熱負荷が高熱負荷状態であると判断された場合には、自動角度設定部113を通じて自動運転パターンデータ106が読み出され、さらに往復周期設定部114を通じて角度調整アクチュエータ24を往復動作させるための周期が設定され、これらを含む指令信号が角度調整アクチュエータ24に出力される。この結果、断熱収納庫11の熱負荷が高熱負荷状態の場合には、往復周期設定部114で設定された周期で吹出ダクト21の吹出角度が上下に往復移動し、この状態で断熱収納庫11の内部に冷却空気が吹き出されることになる。吹出角度の上下移動は、外気温度が高いほど短い周期となる。さらには、吹出ダクト21として、冷却空気の直進性が高いものを適用しているため、断熱収納庫11の後方部まで確実に冷却空気が到達するようになる。従って、吹出ダクト21の吹出口21aから断熱収納庫11に対して満遍なく冷却空気が供給されるようになり、断熱収納庫11の内部が比較的高い温度状態であっても、あるいは断熱収納庫11の内部に温度のバラ付きがある場合にも、効率良く均一に所望の温度まで冷却することが可能となる。これにより、例えば冷凍商品を収納する以前に断熱収納庫11の内部を室温から−20℃まで予冷する必要があった場合にも、これを短時間で終了することができ、商品の運搬効率を向上することが可能となる。
【0032】
尚、温度監視部112によって断熱収納庫11の熱負荷が低負荷状態であると判断された場合には、自動角度設定部113から角度調整アクチュエータ24に対して吹出角度を一定に保つような指令信号が出力される。
【0033】
一方、選択スイッチ104から角度変更スイッチ103を有効化する指令信号が出力され、さらにこの状態から角度変更スイッチ103を通じて指令信号が出力されると、当該指令信号が変更スイッチ監視部110によってマニュアル角度設定部111に与えられる。この結果、マニュアル角度設定部111で設定された指令信号に従って角度調整アクチュエータ24が動作し、吹出ダクト21の吹出口21aが角度変更スイッチ103の指令した吹出角度に設定される。従って、特定の商品に対して強制的に冷却空気を供給できる等、運転者の判断によって冷却空気の供給先を任意に変更することも可能であり、利便性の点で有利となる。選択スイッチ104によって角度変更スイッチ103を無効化すれば、吹出ダクト21の吹出口21aが自動運転パターンデータ106に従って制御されることになる。
【0034】
尚、上述した実施の形態1では、外気温度に応じた周期で吹出ダクト21を往復移動させるようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、季節ごとに関連づけられた往復周期データを予めメモリ105に格納しておき、取得した現在の日付から対応する往復周期データを取得することで吹出角度の往復周期を設定することも可能である。
【0035】
また、実施の形態1では、コンテナ10の内部に内部温度センサ101を設けるようにしているが、例えば、収納する商品に対して内部温度センサ101を配設すれば、断熱収納庫11の温度分布をより正確に検出することが可能となる。
【0036】
さらに、実施の形態1では、吹出ダクト21から冷却空気を吹き出すものを例示しているが、必ずしもこれに限定されず、吹出孔に風向板を設け、風向板の向きを変化させることで冷却空気の吹出角度を変更するようにしたものにも適用することが可能である。
【0037】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2である冷却収納装置を示したもので、実施の形態1と同様、車両に搭載される冷却収納装置を例示している。上述したように、実施の形態1は、コンテナ10の内部に設けた断熱収納庫11の熱負荷を検出し、この熱負荷に応じて冷却空気の吹出角度を制御したものである。これに対して実施の形態2では、断熱収納庫に対する商品の3次元位置分布を検出し、検出した商品分布に応じて冷却空気の吹出角度を制御するようにしたものである。尚、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0038】
図5−1及び図5−2に示すように、実施の形態2の冷却収納装置では、コンテナ10の内部複数箇所に分布検出センサ201を配設し、商品Wに取り付けた被検出子202をこれらの分布検出センサ201で検出することにより商品Wの3次元位置分布を検出するようにしている。具体的に説明すると、商品Wの上面に取り付けた発信器を被検出子202とし、分布検出センサ201としては、発信器からの発信信号を受信する受信機によって構成することが可能である。本実施の形態2では、コンテナ10の上方四隅部にそれぞれ分布検出センサ201を配設するようにしている。個々の分布検出センサ201は、コンテナ10の全域が受信範囲となるように配置してあり、受信した発信信号から被検出子202の位置を特定することが可能である。尚、図には明示していないが、コンテナ10の前壁に蒸発器23を内蔵したユニット筐体20を備える点、ユニット筐体20が吹出ダクト21及び吸込孔22を通じてコンテナ10の内部に連通した点、吹出ダクト21が水平軸21bを介してコンテナ10に回転可能に取り付けてある点、吹出ダクト21とコンテナ10との間に角度調整アクチュエータ24が設けてある点は、それぞれ実施の形態1と同様である。
【0039】
図4に示すように、実施の形態2の冷却制御部(冷却制御手段)200は、分布検出センサ201の検出結果及び予めメモリ210に格納されたデータに基づいて角度調整アクチュエータ24の動作及び冷却ユニットに設けた送風ファン211の動作を制御するもので、分布検出部220、自動角度設定部221、吹出量設定部222を有している。
【0040】
分布検出部220は、分布検出センサ201の検出結果から断熱収納庫11に対する商品Wの3次元位置分布を検出するものである。具体的には、図5−1及び図5−2に示すように、個々の分布検出センサ201の受信した発信信号の受信距離を総合することにより平面上での被検出子202の位置を特定することができると共に、発信信号の受信可否を総合することで被検出子202の高さ方向の位置を特定することができるようになり、商品Wの3次元位置分布を検出することが可能となる。被検出子202を取り付ける位置は、最上位に位置する商品Wのみでも良いし、予めすべての商品Wに取り付けてあっても構わない。すべての商品Wに被検出子202を取り付ける場合には、被検出子202に光センサを付設しておくことが好ましい。すなわち、上方から照射した光を検出できた被検出子202からの発信信号のみを分布検出部220の検出対象とすれば、最上位置に位置する商品Wにのみ被検出子202を取り付ける手間を要しない。
【0041】
自動角度設定部221は、分布検出センサ201の検出した商品Wの3次元位置分布に応じて予めメモリ210に格納した自動運転パターンデータ223から最適となるパターンデータを読み出し、このパターンデータに従って角度調整アクチュエータ24を動作させるための指令信号を出力するものである。吹出量設定部222は、分布検出センサ201の検出した商品Wの3次元位置分布に応じて予めメモリ210に格納した自動運転パターンデータ223から最適となるパターンデータを読み出し、このパターンデータに従って送風ファン211を動作させるための指令信号を出力するものである。自動運転パターンデータ223は、例えば、実際の断熱収納庫11において商品Wの3次元位置分布を変更しながらシミュレーションを行い、商品Wを効率良く冷却することのできる冷却空気の吹出角度及び吹出量を、そのときの3次元位置分布を示す位置データに対応づけて設定すれば良い。自動角度設定部221が読み出す最適パターンデータは、例えば、検出した3次元位置分布に合致するパターンデータである。合致するパターンデータが存在しなかった場合には、もっとも近接するパターンデータを読み出せばよい。
【0042】
以下、冷却制御部200の処理内容を説明し、併せて冷却収納装置の特徴部分について詳述する。まず、冷却制御部200は、分布検出部220を通じて断熱収納庫11に対する商品Wの3次元位置分布を検出し、その検出結果を自動角度設定部221及び吹出量設定部222に出力する。商品Wの3次元位置分布が与えられた自動角度設定部221及び吹出量設定部222では、それぞれ自動運転パターンデータ223から最適となるパターンデータが読み出され、これに応じた指令信号が角度調整アクチュエータ24及び送風ファン211に出力される。
【0043】
具体的に例示すれば、図6−1に示すように、断熱収納庫11のほぼ全域に商品Wが満載されていると判断した場合には、冷却空気の吹出角度をほぼ水平に維持し、かつ冷却空気の吹出量が比較的大きくなるパターンデータが読み出され、これに応じた指令信号が角度調整アクチュエータ24及び送風ファン211に出力される。この結果、吹出ダクト21が水平に維持された状態で比較的大きい流速で冷却空気が断熱収納庫11に供給されることになる。これにより、満載時であっても、すべての商品Wに対して上方から冷却空気を均一、かつ確実に供給することができるようになる。
【0044】
また、図6−2に示すように、断熱収納庫11のほぼ全域に商品Wが半載されていると判断した場合には、冷却空気の吹出角度をほぼ水平に維持し、かつ冷却空気の吹出量が比較的小さくなるパターンデータが読み出され、これに応じた指令信号が角度調整アクチュエータ24及び送風ファン211に出力される。この結果、吹出ダクト21が水平に維持された状態で比較的小さい流速で冷却空気が断熱収納庫11に供給されることになる。これにより、すべての商品Wに対して上方から冷却空気を効率良く均一に供給することができるようになる。
【0045】
これに対して、図6−3に示すように、断熱収納庫11の前半部分にのみ商品Wが半載されていると判断した場合には、冷却空気の吹出角度を下方に向けた状態で吹出口21aを上下に往復移動させ、かつ冷却空気の吹出量が比較的小さくなるパターンデータが読み出され、これに応じた指令信号が角度調整アクチュエータ24及び送風ファン211に出力される。この結果、吹出ダクト21が下方に向けた状態で吹出口21aが往復移動しながら比較的小さい流速で冷却空気が断熱収納庫11に供給されることになる。これにより、断熱収納庫11の前半部分で冷却空気が循環するようになり、断熱収納庫11の前半部分にのみ半載された商品Wに対して冷却空気を効率良く均一に供給することができるようになる。
【0046】
尚、図5−1及び図5−2に示すように、商品Wの高さにバラ付きがある場合にも、このバラ付きに応じて最適となるパターンデータを予めメモリ210に格納しておくことで、冷却空気を効率良く均一に供給することが可能である。また、実施の形態1で示したように、断熱収納庫11を予冷するパターンデータを格納しておけば、商品Wを収容する以前の空の状態においても、断熱収納庫11の内部を短時間のうちにこれを行うことが可能となる。
【0047】
尚、上述した実施の形態2では、商品Wに取り付けた被検出子202の発進信号を分布検出センサ201で受信することによって商品Wの3次元位置分布を検出するようにしているが、本発明はこれに限定されない。
【0048】
例えば、図7に示す第1変形例のように、吹出ダクト21に静圧検出センサ201′を配設することによっても商品Wの3次元位置分布を検出することが可能である。すなわち、図7の(a)に示すように、吹出口21aの延長域に商品Wが存在する場合と、図7の(b)に示すように吹出口21aの延長域に商品Wが存在する場合とでは、静圧検出センサ201′の検出する静圧が後者の場合に大きな値となる。従って、吹出ダクト21の吹出角度を変更しながら都度静圧検出センサ201′によって静圧を検出すれば、商品Wの3次元位置分布を検出することが可能となる。
【0049】
また、図8に示す第2変形例のように、コンテナ10の下壁に対してマトリックス状にロードセル201″を配設し、各ロードセル201″の検出結果を総合することによっても商品Wの3次元位置分布を検出することが可能である。但し、ロードセル201″を用いる場合には、断熱収納庫11に収納する商品Wがすべて同じものであることが好ましい。
【0050】
さらに、図には明示していないが、コンテナ10の内部に超音波センサや画像センサを配設し、これら超音波センサや画像センサの検出結果からも商品Wの3次元位置分布を検出することは可能である。
【0051】
また、ICタグを備えた商品Wの場合には、ICタグを利用して商品Wの3次元位置分布を検出することができる。例えば、ICタグに内蔵されたコイルに対して共振周波数となる電磁波を照射する照射手段と、コイルの発振を検出する発振検出手段とをコンテナ10の内部に配設し、発振検出手段の検出結果に基づいて商品Wの3次元位置分布を検出する分布検出手段を構成しても良い。また、コンテナ10の下壁に電磁誘導装置及び電波受信装置を配設し、電波受信装置の受信する電波強度によって商品Wの3次元位置分布を検出する分布検出手段を構成することも可能である。
【0052】
尚、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、いずれも車両に搭載する冷却収納装置を例示しているが、必ずしも車両に搭載するものに限らない。
【符号の説明】
【0053】
10 コンテナ
11 断熱収納庫
21 吹出ダクト
23 蒸発器
24 角度調整アクチュエータ
100 冷却制御部
101 内部温度センサ
102 外部温度センサ
103 角度変更スイッチ
104 選択スイッチ
200 冷却制御部
201,201′,201″ 分布検出センサ
202 被検出子
FT 車両
W 商品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整した冷却空気を断熱収納庫の内部に供給することにより、前記断熱収納庫の内部を所望の温度に冷却するようにした冷却収納装置において、
冷却空気の吹出角度が変化する態様で前記断熱収納庫に配設した吹出通路と、
前記断熱収納庫に対して前記吹出通路の吹出角度を変化させる角度調整アクチュエータと、
前記角度調整アクチュエータを介して前記吹出通路からの冷却空気の吹出角度を制御する冷却制御手段と
を備えたことを特徴とする冷却収納装置。
【請求項2】
吹出角度を指示するための角度変更スイッチを備え、
前記冷却制御手段は、前記角度変更スイッチから出力される指示信号に従って吹出角度を変更することを特徴とする請求項1に記載の冷却収納装置。
【請求項3】
前記角度変更スイッチを有効にするか無効にするかを選択する選択スイッチをさらに備え、
前記冷却制御手段は、前記選択スイッチによって前記角度変更スイッチが有効化された場合にのみ前記角度変更スイッチから出力される指示信号に従って吹出角度を変更することを特徴とする請求項2に記載の冷却収納装置。
【請求項4】
吹出角度を指示するための角度変更スイッチと、
前記角度変更スイッチを有効にするか無効にするかを選択する選択スイッチをさらに備え、
前記冷却制御手段は、前記選択スイッチによって前記角度変更スイッチが有効化された場合、前記角度変更スイッチから出力される指示信号に従って吹出角度を変更し、かつ前記選択スイッチによって前記角度変更スイッチが無効化された場合、前記断熱収納庫の内部温度に応じて吹出角度を変更することを特徴とする請求項1に記載の冷却収納装置。
【請求項5】
前記断熱収納庫は、車両に搭載されたコンテナであり、
前記角度変更スイッチを運転席に配設したことを特徴とする請求項2または請求項4に記載の冷却収納装置。
【請求項6】
前記冷却制御手段は、前記断熱収納庫の内部温度が予め設定した温度を超えていた場合、吹出角度を変更しながら冷却空気を供給することを特徴とする請求項1または請求項4に記載の冷却収納装置。
【請求項7】
前記冷却制御手段は、前記断熱収納庫の内部に温度のバラ付きがあると判断した場合、吹出角度を変更しながら冷却空気を供給することを特徴とする請求項1または請求項4に記載の冷却収納装置。
【請求項8】
前記断熱収納庫の外部温度を検出する外部温度検出手段を備え、
前記冷却制御手段は、前記外部温度検出手段の検出温度が高くなるに従って往復周期が短くなる態様で吹出角度を変更することを特徴とする請求項1または請求項4に記載の冷却収納装置。
【請求項9】
前記冷却制御手段は、予め季節ごとに関連づけられた往復周期データを有したものであり、取得した現在の日付から対応する往復周期データを取得し、取得した往復周期データに従って吹出角度を変更することを特徴とする請求項1または請求項4に記載の冷却収納装置。
【請求項10】
前記冷却制御手段は、前記断熱収納庫の商品に取り付けた内部温度検出手段を通じて前記断熱収納庫の内部温度を検出することを特徴とする請求項1または請求項4または請求項6または請求項7に記載の冷却収納装置。
【請求項11】
前記断熱収納庫に収納した商品の3次元位置分布を検出する商品分布検出手段を備え、
前記冷却制御手段は、前記商品分布検出手段によって検出した商品の3次元位置分布に応じて冷却空気の吹出角度を変更することを特徴とする請求項1に記載の冷却収納装置。
【請求項12】
前記断熱収納庫に収納した商品の3次元位置分布を検出する商品分布検出手段を備え、
前記冷却制御手段は、前記商品分布検出手段によって検出した商品の3次元位置分布に応じて冷却空気の吹出量を変更することを特徴とする請求項1に記載の冷却収納装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113549(P2013−113549A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262293(P2011−262293)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】