説明

冷却水循環用電動ポンプの取付構造

【課題】冷却水循環用電動ポンプの振動が車体を伝播して車室内に侵入し難くし、乗員に不快な振動を与えることなく、また乗員に不快な音として聞こえ難くする。
【解決手段】本発明に係る冷却水循環用電動ポンプの取付構造は、ラジエータコアサポート1を樹脂製とし、アッパメンバ6と連結メンバ8、9とが結合される上部結合部にフードリッジメンバ4、5の前端部4a、5aを取り付けると共に、前記上部結合部と、ロアメンバ7と連結メンバ8、9とが結合される下部結合部との中間部にフロントサイドメンバ2、3の前端部2a、3aを取り付ける。そして、ラジエータコアサポートを構成するアッパメンバ6、ロアメンバ7、連結メンバ8、9のうち、ロアメンバ7の車幅方向中央に冷却水循環用電動ポンプ14を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ラジエータコアサポートに取り付けられる冷却水循環用電動ポンプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、走行用駆動源となるエンジンや電動モータ等を冷却するために、車体前部に固定されたラジエータコアサポートにラジエータが取り付けられ、そのラジエータに冷却水を循環させるための電動ポンプを、該ラジエータに取り付けた構造が提案されている(例えば、特許文献1に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−250098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラジエータ等に電動ポンプを取り付けた場合、電動ポンプの振動が車体を伝播し、車室内に侵入して、乗員に不快な振動を与え或いは不快な音として乗員に聞こえる場合がある。このように、電動ポンプの取り付け位置によっては、ポンプ振動が車体を伝播して車室内に不快な振動或いは音として伝播するため、当該電動ポンプの取り付け位置を適切な位置に取り付けることが求められる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電動ポンプの振動が車体を伝播して車室内に侵入し難くし、乗員に不快な振動を与えることなく、また乗員に不快な音として聞こえ難くすることのできる冷却水循環用電動ポンプの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却水循環用電動ポンプの取付構造は、ラジエータコアサポートを樹脂製とし、その樹脂製のラジエータコアサポートには、アッパメンバと連結メンバとが結合される上部結合部にフードリッジメンバの前端部が取り付けられると共に、前記上部結合部と、前記ロアメンバと前記連結メンバとが結合される下部結合部との中間部にフロントサイドメンバの前端部が取り付けられた構造となっている。そして、ラジエータコアサポートを構成するアッパメンバ、ロアメンバ、連結メンバのうち、ロアメンバの車幅方向中央に冷却水循環用電動ポンプを取り付けている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る冷却水循環用電動ポンプの取付構造によれば、冷却水循環用電動ポンプのラジエータコアサポートに対する取り付け部位は、フードリッジメンバ及びフロントサイドメンバとラジエータコアサポートとの結合部から離れた遠い位置であるロアメンバの車幅方向中央であるため、冷却水循環用電動ポンプの取り付け部位から前記フードリッジメンバ及びフロントサイドメンバとラジエータコアサポートとの結合部までに至る振動伝播経路が長くなり、これらフードリッジメンバ及びフロントサイドメンバを伝って車室内に伝播する振動を小さくすることができる。これにより、乗員に不快な振動を与えることなく、また乗員に不快な音として聞こえ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はフードリッジメンバ及びフロントサイドメンバの前端部にラジエータコアサポートが取り付けられた車体前部の骨格構造を示す斜視図である。
【図2】図2はラジエータコアサポートに取り付けられた冷却水循環用電動ポンプ、ラジエータ、インバータ及びトランスミッションをホースで連結した冷却経路を示す図である。
【図3】図3は冷却水循環用電動ポンプが取り付けられたラジエータコアサポートを車両後方から車両前方に向けて見たときの平面図である。
【図4】図4は冷却水循環用電動ポンプを一部破断して示す斜視図である。
【図5】図5は図3の冷却経路を分解して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した冷却水循環用電動ポンプの取付構造について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、エンジンと電動モータの2つの動力源を持ったハイブリッド自動車に本発明を適用した例である。
【0010】
図1はフードリッジメンバ及びフロントサイドメンバの前端部にラジエータコアサポートが取り付けられた車体前部の骨格構造を示す斜視図、図2はラジエータコアサポートに取り付けられた冷却水循環用電動ポンプ、ラジエータ、インバータ及びトランスミッションをホースで連結した冷却経路を示す図、図3は冷却水循環用電動ポンプが取り付けられたラジエータコアサポートを車両後方から車両前方に向けて見たときの平面図、図4は冷却水循環用電動ポンプを一部破断して示す斜視図、図5は図3の冷却経路を分解して示す図である。なお、図1において、矢印Xは車両前後方向、矢印Yは車幅方向、矢印Zは車両高さ方向をそれぞれ表す。また、ラジエータコアサポートが取り付けられる側を車両前方、その反対側を車両後方とする。
【0011】
図1及び図2に示すように、ラジエータコアサポート1は、車両前後方向Xに延在し車幅方向Yに所定間隔を置いて配置された左右一対のフロントサイドメンバ2、3の前端部2a、3aに結合されて取り付けられている。また、ラジエータコアサポート1は、車両前後方向Xに延在しフロントサイドメンバ2、3の上方に設けられた左右一対のフードリッジメンバ4、5の前端部4a、5aに結合されて取り付けられている。
【0012】
ラジエータコアサポート1は、図3に示すように、車幅方向Yに延びるアッパメンバ6及びロアメンバ7と、アッパメンバ6及びロアメンバ7の車幅方向Y両端にそれぞれ結合して車両高さ方向に延びる一対の連結メンバ8、9とからなる。アッパメンバ6は、ロアメンバ7に対して車両上方に位置している。アッパメンバ6は、フードロック機構等が取り付けられることからその骨格強度が、ロアメンバ7に対して高くなっている。逆の見方をすれば、ロアメンバ7の骨格強度は、アッパメンバ6の骨格強度よりも小さくされている。
【0013】
前記ラジエータコアサポート1は、スチール(鉄など)製ではなく、例えばPPガラスなどの樹脂からなる、いわゆる樹脂製ラジエータコアサポートとされている。樹脂でラジエータコアサポート1を形成すれば、スチールなどで形成する場合に比べて一体成形可能となると共に軽量化にもなる。この他、樹脂は、スチールに比べて弾性変形し易いという性質を持つ。なお、樹脂製のラジエータコアサポート1を使用することの意義は、後述するものとする。
【0014】
前記ラジエータコアサポート1に対するフードリッジメンバ4、5の結合部位K2は、図3に示すように、アッパメンバ6と連結メンバ8、9とが結合される上部結合部と対応する位置とされている。この一方、前記ラジエータコアサポート1に対するフロントサイドメンバ2、3の結合部位K1は、同じく図3に示すように、前記上部結合部と、ロアメンバ7と連結メンバ8、9とが結合される下部結合部との中間部(例えば、連結メンバ8、9の高さ方向中央付近位置)とされている。
【0015】
なお、ラジエータコアサポート1に対するフロントサイドメンバ2、3の結合部位K1を、以後、フロントサイドメンバ結合部位K1という。同様に、ラジエータコアサポート1に対するフードリッジメンバ4、5の結合部位K2を、以後、フードリッジメンバ結合部位K2という。
【0016】
前記ラジエータコアサポート1には、トランスミッションケース10内に設けられた電動モータ(図示は省略する)と、この電動モータの回転を制御するためのインバータ11とを冷却するための熱交換器であるラジエータ12が取り付けられている。また、ラジエータコアサポート1には、前記ラジエータ12にリザーバタンク13内に満たした冷却水を循環させる冷却水循環用電動ポンプ14が取り付けられている。
【0017】
前記冷却水循環用電動ポンプ14は、前記ロアメンバ7の車幅方向中央に取り付けられている。具体的には、2つの電動ファン(図示は省略する)を取り付けるための左右のモータファン取付用開口15、16間に形成された縦桟部17の車両下端位置に、前記冷却水循環用電動ポンプ14が取り付けられている。縦桟部17は、モータールーム18内に面した側のアッパメンバ6とロアメンバ7間を車両高さ方向に連結するように形成されている。この縦桟部17は、アッパメンバ6及びロアメンバ7に比べて厚みが薄い壁となっている。
【0018】
前記冷却水循環用電動ポンプ14は、図4に示すように、ポンプ作動時の振動を減衰させるための振動吸収部材19を介して取付ブラケット20にて取り付けられている。振動吸収部材19は、冷却水循環用電動ポンプ14をその外周から取り囲むように形成された環状帯をなすゴム等の弾性部材からなる。取付ブラケット20は、振動吸収部材19に形成されたスリット21に差し込まれるモータ支持部22と、このモータ支持部22と一体化されたブラケット固定部23とからなる。
【0019】
モータ支持部22は、振動吸収部材19の幅方向における一端面19aから他端面19bに向かってその厚み部位に形成されたスリット21に差し込まれて前記冷却水循環用電動ポンプ14を支持する。一方、取付ブラケット20は、前記縦桟部17の前記ロアメンバ7との結合部(実際には、縦桟部17の下端部)にボルト26、27にて取り付けられる。そのため、取付ブラケット20には、2箇所にボルト取付孔23、24が形成されている。なお、冷却水循環用電動ポンプ14の取り付け位置は、実際には縦桟部17の下端部であるが、ロアメンバ7を取り付け位置とすることも含む。つまり、ロアメンバ7自体に冷却水循環用電動ポンプ14を取り付けることも本発明に含むとする。
【0020】
前記トランスミッションケース10内に設けられた電動モータ、及びインバータ11を冷却する冷却経路は、図2及び図5に示すように、冷却用連結パイプP1〜P9にてラジエータ12、冷却水循環用電動ポンプ14、電動モータ、インバータ11、リザーバタンク13が接続されて構成されている。
【0021】
トランスミッションケース10とリザーバタンク13は、第1冷却用連結パイプP1で接続されている。そして、リザーバタンク13と冷却水循環用電動ポンプ14は、第2冷却用連結パイプP2で接続されている。また、冷却水循環用電動ポンプ14とラジエータ12は、第3冷却用連結パイプP3及び第4冷却用連結パイプP4で接続されている。ラジエータ12とインバータ11は、第5冷却用連結パイプP5、第6冷却用連結パイプP6及び第7冷却用連結パイプP7で接続されている。そして、インバータ11とトランスミッションケース10は、第8冷却用連結パイプP8及び第9冷却用連結パイプP9で接続されている。
【0022】
冷却水循環用電動ポンプ14が作動すると、リザーバタンク13内に満たされた冷却水が第2冷却用連結パイプP2を通って当該冷却水循環用電動ポンプ14内に流入した後、第3冷却用連結パイプP3及び第4冷却用連結パイプP4を通ってラジエータ12へ流れる。このラジエータ12に当たる風及びラジエータ12の背面に取り付けられた電動ファンで引かれた風と当該ラジエータ12内を流れる暖まった冷却水とが熱交換される。ラジエータ12を流れ出た冷却水は、第5冷却用連結パイプP5、第6冷却用連結パイプP6及び第7冷却用連結パイプP7を通ってインバータ11へと流れ込む。
【0023】
インバータ11に形成されたウォータジャケットをラジエータ12で冷却した冷却水が流れることで、当該インバータ11が冷却される。インバータ11から出た冷却水は、第8冷却用連結パイプP8及び第9冷却用連結パイプP9を通ってトランスミッションケース10内に形成されたウォータジャケットを流れることで、当該トランスミッションケース10内の電動モータを冷却する。電動モータを冷却後の冷却水は、再び第1冷却用連結パイプP1を通ってリザーバタンク13へ戻される。このサイクルを繰り返すことで、電動モータとインバータ11を冷却することができる。
【0024】
本実施形態では、スチールではなく樹脂からなるラジエータコアサポート1を使用し、そのラジエータコアサポート1を構成するロアメンバ7の車幅方向中央に、冷却水循環用電動ポンプ14を取り付けている。そして、冷却水循環用電動ポンプ14の取り付け位置を、前記したフロントサイドメンバ結合部位K1及びフードリッジメンバ結合部位K2から遠く離れた位置としている。冷却水循環用電動ポンプ14の振動は、ポンプ取り付け部位からラジエータコアサポート1を伝播してフロントサイドメンバ2、3及びフードリッジメンバ4、5に伝わり、最終的に車室内に乗員に対して不快な振動及び音として伝播する。
【0025】
しかし、本実施形態では、ラジエータコアサポート1をスチールではなく樹脂で形成しているため、スチールに比べて樹脂の方が弾性変形し易いことから冷却水循環用電動ポンプ14の振動を前記樹脂の持つ弾性によって低減(減衰)することができる。これに加えて、冷却水循環用電動ポンプ14の取り付け位置を、フロントサイドメンバ結合部位K1及びフードリッジメンバ結合部位K2から遠く離れた位置であるロアメンバ7の車幅方向中央としているため、アッパメンバ6やフロントサイドメンバ結合部位K1及びフードリッジメンバ結合部位K2の近傍部に冷却水循環用電動ポンプ14を取り付けた場合に比べて、ポンプ取り付け部位から振動がフロントサイドメンバ結合部位K1及びフードリッジメンバ結合部位K2へ達するまでの振動伝播経路を長く取ることができる。その結果、フロントサイドメンバ2、3及びフードリッジメンバ4、5を伝播して車室内に侵入する振動及び音を軽減することができる。
【0026】
このように、本実施形態では、ラジエータコアサポート1を樹脂製とし、冷却水循環用電動ポンプ14の取り付け位置をフロントサイドメンバ結合部位K1及びフードリッジメンバ結合部位K2から遠く離れた位置とすることでポンプ振動を減衰することができるため、冷却水循環用電動ポンプ14に取り付けた振動吸収部材19を小型化することができる。その結果、冷却水循環用電動ポンプ14の搭載スペースを小さくできると共に、振動吸収部材19のコストを低下させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、冷却水循環用電動ポンプ14が取り付けられる部位を左右のモータファン取付用開口15、16間とし、且つ該冷却水循環用電動ポンプ14の取付部位のロアメンバ7の骨格強度がアッパメンバ6の骨格強度よりも低いので、この冷却水循環用電動ポンプ14の取付部位が弾性変位し易くなり、更にポンプ振動を減衰させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、冷却水循環用電動ポンプ14は振動吸収部材19を介してロアメンバ7に取り付けられているので、振動吸収部材19が冷却水循環用電動ポンプ14の振動を減衰させる。
【0029】
また、本実施形態では、冷却水循環用電動ポンプ14をラジエータコアサポート1のロアメンバ7に取り付けているため、アッパメンバ6に冷却水循環用電動ポンプ14を取り付ける場合に比べて、当該冷却水循環用電動ポンプ14がラジエータコアサポート1の下部にあることから冷却水内に泡が入り込み難くなり、注水性が良くなる。また、冷却水循環用電動ポンプ14をロアメンバ7に取り付けることで、重心を低くすることができるという効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ラジエータに冷却水を循環させる冷却水循環用電動ポンプをラジエータコアサポートに取り付けた車両に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…ラジエータコアサポート
2、3…フロントサイドメンバ
4、5…フードリッジメンバ
6…アッパメンバ
7…ロアメンバ
8、9…連結メンバ
10…トランスミッションケース
11…インバータ
12…ラジエータ
13…リザーバタンク
14…冷却水循環用電動ポンプ
15、16…モータファン取付用開口
19…振動吸収部材
20…取付ブラケット
K1…フロントサイドメンバ結合部位
K2…フードリッジメンバ結合部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるアッパメンバ及びロアメンバと、アッパメンバ及びロアメンバの車幅方向両端にそれぞれ連結して車両高さ方向に延びる一対の連結メンバとを有した樹脂製のラジエータコアサポートを備え、
前記ラジエータコアサポートには、前記アッパメンバと前記連結メンバとが結合される上部結合部にフードリッジメンバの前端部が取り付けられると共に、前記上部結合部と、前記ロアメンバと前記連結メンバとが結合される下部結合部との中間部にフロントサイドメンバの前端部が取り付けられており、
前記ロアメンバの車幅方向中央に、該ラジエータコアサポートに取り付けられたラジエータに冷却水を循環させる冷却水循環用電動ポンプを取り付けた
ことを特徴とする冷却水循環用電動ポンプの取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の冷却水循環用電動ポンプの取付構造であって、
前記冷却水循環用電動ポンプが取り付けられる部位は、左右のモータファン取付用開口間であり、且つ該冷却水循環用電動ポンプの取付部位の前記ロアメンバの骨格強度が前記アッパメンバの骨格強度よりも低い
ことを特徴とする冷却水循環用電動ポンプの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の冷却水循環用電動ポンプの取付構造であって、
前記冷却水循環用電動ポンプは、振動吸収部材を介して前記ロアメンバに取り付けられた
ことを特徴とする冷却水循環用電動ポンプの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66702(P2012−66702A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213270(P2010−213270)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】