説明

冷却流体流量を調節および分配するシステムおよび方法

本開示は、フローレギュレータを用いて、冷却板などの複数のヒートシンクを通して冷却流体を調節し分配するシステムおよび方法を提供し、フローレギュレータはオリフィス上流の流量のばらつきに関係なく個々の冷却板によって必要とされる流量をさらに分配し得る1つまたは複数の個々のオリフィスとともに総流量を設定する。オリフィスはオリフィスを支持する本体を含むオリフィスホルダーに結合することができ、冷却板の入口に結合(直接的または間接的に)されてもよい。一般に、フローレギュレータは、冷却流体が流れる複数のオリフィスおよび管路と結合される。関係するシステム構成部品は、モジュールとして組み立てられて、ポンプ、コンプレッサ、またはその他の冷却流体用圧力源など、他のシステム構成部品を含む冷却システムの中に設置され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年2月19日に出願された米国仮特許出願第60/890,555号明細書の優先権を主張するものであり、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、冷却流体流量および制御に関し、より具体的には、一群の電気装置冷却構成部品への冷却流体流量の均等な分配を確保する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの業界で、使用中に熱を発生する電子プロセッサおよびセンサを有するコンピュータサーバおよびその他の電子装置など、各種の電子装置が使用されている。電子装置は、電子装置を支持することができるラックに取り付けられることが多く、正しく使用するために熱を連続的に除去する必要がある。電子装置の小型化が進むにつれて、冷媒としての空気の使用では、無理なく得られる気流によって無理なく除去され得る熱の量が限界に達している。したがって、改良された冷却法では、当分野で使用される、構成部品自体または構成部品と接触する二次冷却ループの排熱板のいずれかと接する一般に「冷却板」として知られている1つまたは複数のヒートシンク内を流れる冷却流体の流れによる直接伝導冷却を採用している。
【0004】
冷却板では、空気式熱交換器のアプリケーションとさらに他の流体冷却アプリケーションにおいて以前に見られた流量よりも著しく低い流量で必要とする十分な冷却流体の流量が得られる。他のアプリケーションでは、市販のスプリング式フローレギュレータを使用することができる。しかし、多くの電子装置の冷却に必要な冷却板の代表的な性質、サイズ、および数を考慮すると、電子システムに関連するこのように重要ではあるものの低い熱負荷に対する必要な流量と流量許容範囲のスプリング式フローレギュレータは市販されていない。さらに、スプリング式フローレギュレータの商業的開発は経済的に現実味がなく、結果として得られる製品は不相応に広い性能許容範囲に難点があるものになることが予想される。
【0005】
したがって、これらの欠点に対処する冷却流体供給システムが必要となる。本開示は、一群の電気装置を冷却する冷却流体の流量を測定する改良されたシステムおよび方法を提供する。さらに、本明細書のシステムおよび方法は、個々の構成部品が標準的なフローレギュレータを用いて単独で適切に測定されない場合に、総流量が入力のばらつきに対する高い許容範囲によって電気装置の冷却構成部品の中で均等に分配されるようにするのに役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、本開示は、フローレギュレータを用いて、冷却板などの複数のヒートシンクを通して冷却流体を調整し分配するシステムおよび方法を提供し、フローレギュレータはオリフィスの上流と下流の両流量のばらつきに関係なく、個々の冷却板によって必要とされる流量をさらに分布し得る個々のオリフィスとともに総流量を設定する。オリフィスは、オリフィスを支持するための本体を含むオリフィスホルダーに結合することができ、冷却板の入口に結合(直接的または間接的に)されてもよい。オリフィスホルダーに加えて、流体流れの中にオリフィスを結合する他の方法が必要に応じて採用され得る。一般に、本明細書に記載されるフローレギュレータは、冷却流体が流れる複数のオリフィスおよび管路と結合される。また、関係するシステム構成部品は、モジュールとして組み立てられて、ポンプ、コンプレッサ、またはその他の冷却流体用圧力源など、他のシステム構成部品を含む冷却システムの中に設置されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様によれば、1つまたは複数の電子装置に結合された複数の冷却板を通る冷却流体流量を調節し分配するシステムが提供され、システムは、システム圧力源に流体結合されたフローレギュレータと、フローレギュレータに流体結合された分配ヘッダーと、分配ヘッダーに流体結合された複数の冷却流体配管と、オリフィスの各々がフローレギュレータおよび分配ヘッダーの下流にある冷却流体配管に結合されている、少なくとも2つのオリフィスと、オリフィスの下流にある複数の冷却流体配管に結合された複数の冷却板とを備える。
【0008】
本開示のある関連態様において、1つまたは複数の電子装置、あるいは冷却ラック内の同様の発熱アセンブリを結合している複数の冷却板を通して、1つまたは複数の冷却流体を調節し分配するシステムが提供され、システムは、流量調節手段と、流量調節手段に結合された流体流量分配手段と、複数の冷却流体供給手段と、流量調節手段および流体流量分配手段の下流にある冷却流体供給手段に関連する1つまたは複数のオリフィスと、オリフィスの下流にある複数の冷却流体配管に結合された複数の冷却板とを備える。
【0009】
本開示のさらに他の態様において、少なくとも1つのフローレギュレータと、複数のオリフィスと、1つまたは複数の電子装置に結合された複数の冷却板とを通って流れる冷却流体を調節し分配する方法が提供され、方法は、冷却流体を少なくとも1つのフローレギュレータを通して複数のオリフィスに流すステップと、流れ圧力を複数のオリフィスを通して第1の流体流れ圧力から第2の流体流れ圧力に減圧させるなど、流れ圧力を複数のオリフィスを通して減圧させるステップと、冷却板を冷却して1つまたは複数の電子装置から熱を吸収するために冷却板を通して減圧された冷却流体を流すステップとを備える。
【0010】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明の一部の態様をさらに明示するために含まれる。本発明は、1つまたは複数のこれらの図を本明細書で提示された具体的な実施形態の詳細な説明と合わせて参照することによってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フローレギュレータと複数の冷却板とを有するモジュールの例示的な実施形態を示し、各冷却板はオリフィスに結合された入口を含む。
【図2A】図1のモジュールを用いた例示的なシステムの概略図を示す。
【図2B】図1に示されるモジュールを用いた別の例示的なシステムの概略図を示す。
【図3】冷却モジュールの例示的な実施形態を示す一般的な配管概略図を示す。
【図4】例示的なオリフィスホルダーの断面図を示す。
【図5】図4に示される例示的なオリフィスホルダーの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において開示される本発明は、様々な変更形態および代替形態を容易にとることができるが、ほんのわずかな具体的な実施形態が例として図示されており、以下で詳しく記載される。これらの具体的な実施形態の図および詳細な説明は、本発明の概念あるいは添付の特許請求の範囲の幅または範囲をいかなる方法によっても制限するものではない。むしろ、図および記述説明は、本発明の概念を当業者に説明し、当業者が本発明の概念を実施して利用し得るように提供されるものである。
【0013】
上記の図と下記の具体的な構造およびプロセスの記述説明は、本出願人らの発明の範囲あるいはこれらの発明に関する保護範囲を制限するために提示されるものではない。むしろ、図および記述説明は、特許権の保護が求められる本発明を実施し利用する当業者に教示するために提供されるものである。本発明の商業的実施に関するすべての特徴が明確さと理解を期して記載され、あるいは示されているわけではないことを当業者は理解するであろう。また、本発明の態様を組み入れる実際の商業的実施形態の展開には、商業的実施形態に関する開発者の究極の目標を達成するために数多くの実施時固有の決断が必要であることを当業者は理解するであろう。このような実施時固有の決断として、具体的な実施、場所、および時期によって異なる可能性のあるシステム関連、事業関連、政府関連などその他の制約の順守を挙げることができるが、これらに限定されないものと思われる。開発者の作業は間違いなく煩雑で多大な時間を必要とするであろうが、このような作業は本開示の利益を得る当業者にとって日常的な仕事となる。本明細書において開示され教示される発明は、数多くの様々な変更形態および代替形態を容易にとることができる。最後に、単数表現の使用は品目数を制限するものではない。また、「最高部」、「最下部」、「左」、「右」、「上」、「下」、「下方」、「上方」、「側部」などの関係語は、特に図に関連して明確にするために本明細書において使用されており、本発明の範囲、すなわち、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。さらに、用語、「結合される」、「結合する」、「カプラー」、および同様の用語は、本明細書で広く使用され、中間要素、1個または複数個の部材と一緒に、例えば、機械的、磁気的、電気的、化学的、直接的、または間接的に固定する、留める、結合する、繋ぐ、取り付ける、連結する、内部に挿入する、表面または内部に形成する、連通する、あるいは関連させるための任意の方法または装置を含んでもよく、さらに、1つの機能部材を別の機能部材と一様に一体的に形成することを無制限に含んでもよい。結合は、回転を含めて、任意の方向に行なうことができる。
【0014】
一般に、出願人は、冷却流体流量の流れの中で流体結合された1つまたは複数のフローレギュレータをレギュレータの下流で流体結合された複数のオリフィスと組み合わせて用いて、1つまたは複数の冷却板を通して冷却流体を調節し均等に分配するシステムおよび方法を開発してきた。さらに、複数のオリフィスを各調節装置の下流に結合することができ、各オリフィスは1つまたは複数の冷却板に流体結合されている。「冷却流体」、「冷媒」、および類似の用語は、本明細書では、同じ意味で使用され、アンモニア、水、二酸化炭素、または冷却を提供できるその他の物質など、冷却を提供するために使用される物質を指す。本明細書に記載されるシステムおよび方法に採用するのに適した例示的な冷却流体、すなわち、冷媒として、液体水(非蒸発性または「相転移」冷却液とも呼ばれる)、水メタノール溶液、およびFREON(R)(商工業に使用される多くのフロンガス類のいずれかで、その多くはHFCおよびHCFCなど、少なくとも炭素とフッ素を含有する脂肪族有機化合物である)、SUVA(R)ブランド(デュポン)の冷媒、ビス(ジフルオロメチル)エーテル冷媒、気体状二酸化炭素、遷移臨界二酸化炭素(transcritical carbon dioxide)、液体COを含む二酸化炭素(CO)などのハイドロフルオロカーボン、またはLiebert XD(R)冷媒システム(Liebert Corporation,Columbus,OH)(この冷媒は大気温度および/または圧力において気体であるが、液体としてポンプで移送され得る)などのハイブリッドクーラントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「複数の」という用語は、本明細書では、少なくとも2つの、そして好ましくは2つを超え最大1000まで(1000を含む)の装置、装置などの数に言及するものである。さらに、「冷却板」という用語は、本明細書では、電子装置に結合されていて電子装置から熱を吸収することができる構成部品を含み、ヒートシンクおよび蒸発器を含む。本発明の種々の実施形態には、フローレギュレータ、質量流量フィードバック制御ハードウェアまたはソフトウェアを備えた流量コントローラ、絞り(metering)弁、あるいは本明細書において「フローレギュレータ」と一般に呼ばれる他の同様の装置など、総流量を設定する多くの装置を組み入れることができる。
【0016】
同様に、「オリフィス」という用語は、本明細書では、本明細書に記載されるシステムの1つまたは複数の部分の内部の様々な点において、特に圧力損失によって相対圧力を調整する開口または孔など、供給通路または供給手段に言及するものである。オリフィスは、複数の異なるサイズ、形状、型式、および制限経路のものであってもよく、直線孔オリフィス、鋭角オリフィス、ラウンドエッジオリフィス、テーパ孔オリフィス(入口から冷却板に、または冷却板から入口に外向きまたは内向きに延びるオリフィスなど)、多様な長さの蛇行経路のオリフィス、多様な長さの直線経路オリフィスなど、ならびに絞り弁、または特定制限に設定され、次いで、固定される可変制限手段など、固定制限および可変制限の装置および手段を含むが、これらに限定されない。一般的に言えば、オリフィスは、入口4と冷却板6との間など、本明細書に記載されたシステムの各区分内の2点、すなわち微細孔点間を延びる冷媒連通手段である。上述の通り、入口オリフィスおよび/または出口オリフィスは、ラック17または類似の構造物内に収納された電子装置への、あるいは電子装置からの冷却ガスまたは冷媒の流れを抑制するように作用し、所望の流量をシステムに供給し、そして所望の流量をシステムから供給することができ、オリフィスの直径または形態を変えることによって冷却対象の特定の構造物およびシステムを要求通りに調整することができる。
【0017】
ここで図を参照すると、図1は、フローレギュレータおよび複数の冷却板を有するモジュールの例示的な実施形態を示しており、各冷却板はオリフィスに結合された入口を含む。図2Aは、図1のモジュールを用いた例示的なシステムを示す概略図を示す。これらの図は互いに関連して説明されることになる。ポンプ、コンプレッサ、加圧シリンダ、またはその他の圧力源12などのシステム圧力源12は、供給配管18内の冷却流体を加圧するので、流体は冷却モジュール2を通って流れる。モジュール2は、フローレギュレータ10、複数の流体分配配管34を有する分配ヘッダー32、複数の入口4、および複数の冷却板6を備えてもよく、入口は複数の冷却板6に冷却流体流量をより均等に分配する1つまたは複数のオリフィス8を有する。オリフィス8a、8b(まとめて「オリフィス8」と呼ばれる)と市販のフローレギュレータ10とを組み合わせることによって特定の冷却板6a、6b(まとめて「冷却板6」と呼ばれる)に入る適切な流量の冷却流体が生成されるように、各入口4a、4b(まとめて「入口4」と呼ばれる)はオリフィス8に結合され得る。フローレギュレータ10は、ピストンのバランスを取るスプリングによってシステムを通る総流量を変調する市販のレギュレータであってもよい。多くのこのようなレギュレータは広く利用されているが、レギュレータ10は特定アプリケーション向けのオーダーメイドもされ得ることに当業者は容易に気付くであろう。冷却流体は、圧力源12から、フローレギュレータ10を通り、分配ヘッダー32を通り、複数の流体配管34を通り、入口4を通り、オリフィス8を通り、冷却板6を通って流れる。冷却流体は、冷却板6を通って流れ、冷却板6と流体接続され、あるいは冷却板6に関連させて取り付けられた除熱板15(図示せず)などを介して直接的または間接的に冷却板に結合された1つまたは複数の電気装置14から熱を吸収する。電気装置は、当業者には知られているように、ラック17もしくは類似の装置内に支持され、またはラック17もしくは類似の装置内に入れられ、あるいはその両方が行なわれ得る。その後、冷却板6を出た冷却流体は、再循環ループを流れてシステム圧力源または処理先に戻る。除熱板を使用しないときの電気装置14から冷却板6までの熱伝達/伝熱は、熱(熱伝達のみの)配管7、あるいは等価熱伝達構成によってもよい。また、冷却流体は、配管、バルブ、ポンプ、凝縮器、あるいは1つまたは複数の加圧冷却流体システムに共通の他の構成部品を含む、本明細書に必ずしも明示されていない様々なシステム構成部品を通って流れ得ることと、さらにこのような部品は詳細な説明に必要であるとは考えられないが現在記述されているシステムに含められ得ることに当業者は気付くであろう。
【0018】
図2Bは、1つまたは複数の除熱板15が含まれていることを示す、図1に示されるようなモジュールを用いた別の例示的なシステムの概略図を示す。図2Aにおける上記のシステムと同様に、冷却流体は、圧力源12から供給配管18を経由してフローレギュレータ10を通り、次いで、入口(図示せず)を経由して複数の流体配管を通る流体を分配する分配ヘッダー32を通り、成形オリフィス8を通り、1つまたは複数の冷却板6を通って流れる。冷却流体は、1つまたは複数の除熱板15と熱連通している1つまたは複数の冷却板6を通って流れ、冷却板6を出た冷却流体は再循環ループを流れ、必要に応じてシステム圧力源または処理先(図示せず)に戻る。除熱板15は、固体媒体、液体媒体、または気体媒体を介在させるなどして直接熱的接触または間接接触によって冷却板6に熱を放出する。除熱板15によって放出された熱は、個々の流体循環ループ19によって供給され、冷却流体はループ19を介してラック17内に含まれる1つまたは複数の電気装置14の中、周囲、または近くを循環することによって熱を得ている。除熱板15を通る冷却流体流量は、コンプレッサ、ポンプ、あるいはヒートパイプまたは類似の流体輸送型装置などの熱サイホン、あるいは関連部分において本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2007/0201210A1号明細書に記載されるものなど、同様に駆動される流れ手段(図示せず)によって駆動され得ることを当業者は認識することができる。あるいは、除熱板15は電気装置14に直接的に結合してもよく、必要に応じて、電気装置自体の直接的な一部であってもよい。さらに、同様に容認できることであるが、除熱板15およびシャーシ冷却板6は、2枚の板の中間に熱界面材110を含み、それによって空隙を実質的に排除して熱交換を改善してもよい。ただし、除熱板15および冷却板6は、分離可能な熱交換ユニットをやはり形成しており、システム内の流体輸送配管18のいずれを取り外さなくても1つまたは複数の冷却システムを分離し得るものであってもよい。
【0019】
冷却板6に関する所望の流量は、例えば、特定の冷却板6の特性によって決定されてもよく、フローレギュレータ10と、オリフィス8と、このような装置内および装置全体に関連する流体流れ圧力(P1、P2など)の適切な組合せによって達成されてもよい。本開示によれば、各オリフィス8の圧力損失は有効システム圧力差よりも小さく、有効システム圧力差は、例えば、システム圧力源12の圧力性能と冷却板6の下流圧力との差を測定することによって決定され得る。この決定は、例えば(そして制限なく)、供給配管18内の点P1における圧力と、「高温」冷媒をラック17内の電子装置14から取り出して運び去る戻り配管内の点P2における圧力との差を測定することによって行なわれ得る。さらに、本開示の一態様によれば、流体配管34および入口4から冷却板6までの各オリフィス8の圧力損失は、一般に、任意の流路の圧力損失のばらつきよりも少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、あるいは有利には約20%大きく、すなわち、約1%〜約20%の範囲内の任意パーセンテージとなる。本開示のさらなる態様によれば、流体配管34および/または入口4から冷却板6までの各オリフィス8の圧力損失は、約20%よりも大きくてもよく、任意の流路の圧力損失のばらつきよりも約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、約1000%、約2000%、約3000%、約4000%、および約5000%大きい圧力損失を含む、約20%〜約5000%の範囲にあってもよく、約20%〜約70%、または約50%〜約500%など、上記値の任意の2つの値の中間にあるパーセンテージを無制限に含んでもよい。より高いパーセンテージが使用され得るが、冷却システムの仕様によっては流量の効率が低下して圧力損失が大きくなり得る。本開示の一実施形態において、オリフィス8の各々にわたる圧力損失は、圧力損失のばらつきの約5倍である。流路の圧力損失のばらつきは、部品の製作公差、部品の高度差、流路管類のレイアウト、サイズ、構成部品、あるいは型式による圧力損失差、熱負荷のばらつきが誘発する圧力差、および調節対象となる構成部品の入口4において一般的に異なる圧力の要因となるその他の差に関連するすべての圧力損失のばらつきの和を含む。本開示の少なくとも一実施形態において、流路の圧力損失のばらつきは、オリフィス8を設置せずに測定されてもよく、この場合、圧力差は、例えば、点P3および点P4の間と点P5および点P6の間で測定されてもよく、これら2つの差が比較されてもよく、さらに冷却板を用いるなどされてもよい。その後、各オリフィス8の圧力損失が、例えば、最大流路圧力損失のばらつきよりも少なくとも5%大きくなるようにシステムは構成され得る。オリフィス8は、流体路抵抗の合計と様々なシステム構成部品の中の抵抗分布に対する影響によって総流量に若干の影響を及ぼすことがある。これらの影響は、さらに、所与の冷却アプリケーションに関する1つまたは複数の好ましい実施形態に影響を及ぼすことがある。有利には、適切なサイズのオリフィス8を使用すると、費用効果が高くなり、各冷却板6間の流量のばらつきが現在入手可能なフローレギュレータを使用した場合よりも小さくなる。
【0020】
圧力に関しては、対象となる例示的な6つの圧力(P1〜P6)が本明細書に記載されており、以下でさらに詳述されるが、圧力点と領域の数はシステム自体に直接関係しており、したがって、本開示によれば、必要に応じて、複数の圧力P1、P2、P3、P4、P5、P6、...Pnがあってもよい。各図において言及される圧力に関して、P1は「高い」圧力におけるシステムの出口圧力(ポンプなどからの)であるが、P1aは冷却板モジュール6に供給されるフローレギュレータからの出口圧力である。圧力P3およびP5は様々なモジュールへの出口圧力であり、これは、高度差、管類の寸法差、管類の長さの差などによって、これらの圧力値がわずかに異なることがある。圧力P3aおよびP5aは、オリフィス4を通って冷却板6に出た後の圧力であるが、圧力P4およびP6は冷却板を通って戻り配管に集まった後の圧力であり、高度、管類の寸法(幅、サイズ、形状、および長さ)差に起因してわずかに異なる。圧力P2は、システムへの戻り圧力であり、冷却流体がポンプに戻されるとき概して「低い」圧力にある。例示的な構成において、制限のない、複数の圧力P1〜Pnは、冷却システムおよび冷却の対象となる電子装置の全体的な設計および構成に応じて互いに相関のある多くの差圧関係を有することがある。例えば、図1に示された実施形態において、フローレギュレータ10は供給圧力をオリフィスの出口圧力近くまで減圧させるので、P1は一般にP1aよりも大きい。圧力P1aは、圧力P3およびP5にほぼ等しいこともあるが、高度差、管類のサイズ、形状、および寸法差などに起因して先に示唆したように異なる可能性があり、このような差は必然的な「流路のばらつき」の一部である。圧力P3aおよびP5aは、オリフィスの圧力損失に少なくとも部分的に起因して、圧力P3およびP5よりも一般に小さい。圧力P3aは、圧力P5aにほぼ等しいこともあるが、流路のばらつきに部分的に起因して異なることもある。圧力P4およびP6は、冷却板内および/または冷却板全体にわたる圧力損失に少なくとも部分的に起因して圧力P3aおよびP5aよりも一般に小さい。圧力P4は、圧力P6にほぼ等しいこともあるが、一般的な流路のばらつきの一部である冷却板の差、高度差、管類の寸法およびサイズの差などに部分的に起因して異なることもある。最後に、戻り圧力P2は、再循環するポンプなどに冷却流体を戻すためにP4およびP6よりも一般に小さい。
【0021】
図3は、本明細書に記載される冷却モジュールの例示的な実施形態を示す配管概略図を示す。冷却流体は、1つまたは複数の一次供給配管16を通ってシステムに入り、1つまたは複数の二次供給配管18を通って1つまたは複数のフローレギュレータ10に流れ続ける。フローレギュレータ10は、図1および図2A、図2Bに示されるように、冷却板6に入る1つまたは複数のオリフィス8によって入口4に向かう下流の流れを制御し、オリフィス8の下流で得られる流量は具体的なアプリケーションに従って選定された冷却板6に要求される流量となる。モジュール3a、3b、および3cの例示的な3つの実施形態は、本開示に従って採用される場合のフローレギュレータ10とオリフィス8との種々の比を示す。1つまたは複数のモジュールは、その設計がどのようなものであれ、個々の冷却ニーズに相応しいものとしてシステム全体に採用することができる。例えば、モジュール3aにおいて、1つのレギュレータ10は、ここでは1つのレギュレータと8つのオリフィスとの比、すなわち、1:8の比として示される複数の配管およびオリフィスに分配されるモジュールに対する冷却流体のシステムの流れを制御する。モジュール3bは、各々が4つのオリフィス8に対する冷却流体の流量を制御する2つのレギュレータ10および10’を含み、したがって、レギュレータとオリフィスとの比は1:4である。同様に、モジュール3cでは、4つのレギュレータ(10、10’、10’’、および10’’’)は各々が1:2の比の場合の2つのオリフィスに対する冷却流体流量を制御する。これらの実施形態は排他的ではなく、本明細書に記載されるシステムおよび方法を採用して実施され得る多数の組合せの一部を示す3つの非限定的な例である。例えば、フローレギュレータとオリフィスとの比は、1:15、1:12、1:10、1:6、1:5、1:3、およびこの比の範囲内の比を含む、1:20〜1:2の範囲(ただし、1:20〜1:2や1:8〜1:2などを含む)にあってもよいものと想定される。これらの比はアプリケーション特有のものであり本明細書で論じられる流体力学の原理および緒要因を用いて決定され得ることを本開示の恩恵にあずかる当業者は容易に理解するであろう。
【0022】
図4は、本開示のシステムとともに使用する例示的なオリフィス構造20の断面図を示す。図5は、図4に示される例示的なオリフィス構造20の斜視図を示す。これらの図は互いに関連して説明されることになる。オリフィス構造20は、一般に、オリフィス8および本体24を備える。オリフィス構造20、特に本体24は、販売代理店から提供されることもあり得るが、特定アプリケーションに合わせてオーダーメイドされることもあり得る。本体24の外面22は、オリフィス8を適切な方法で流体流路に結合し得るようにアプリケーションによって変えられ得る。非限定的な一般的な例として、ねじ込み面、圧入用の滑らかな面、および圧着用の切り欠き面が挙げられる。オリフィス8の正面28は、いったん取り付けられると流体路を塞ぐが、貫通孔30によって望ましい容積の流体がオリフィス8を通過し得る。さらに、オリフィスは、冷却板の入口の設計に直接組み入れられ得る。オリフィスは、本明細書では円形または円筒形として示されているが、代わりに、蛇行経路、または複数の蛇行流路、急激な伸縮などからなることを含めて、製作および流量調節を考察して望ましいと思われる他の形状に形成されてもよい。
【0023】
他の実施形態およびさらなる実施形態が、一般的な開示から逸脱することなく考案され得る。例えば、特定の冷却アプリケーションの要求に従って1つまたは複数の冷却板6の入口4で所望の流体特性を実現するために、任意数のレギュレータ10とオリフィス8とが組み合わせられ得る。さらに、開示された方法および実施形態の変形形態を生成するために、改良された流体システムの様々な方法および実施形態が互いに組み合わせて含められ得る。単一要素についての説明は複数要素を含んでもよく、逆もまた同様である。
【0024】
特に制限がない限り、ステップの順序には様々なシーケンスが存在し得る。本明細書に記載される様々なステップは、これを他のステップと組み合わせることも、これを定められたステップの間に差し挟むことも、これを複数のステップに分割することも、あるいはこれらを組み合わせて行なうこともできる。同様に、各要素は、機能的に記載されており、個別の部品として実施することもできるが、組み合わせて複数の機能を有する構成部品とすることもできる。
【0025】
本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態を念頭に置いて説明されており、本発明のすべての実施形態が説明されているわけではない。当業者は、記載された実施形態に対する明らかな修正および変更を利用し得る。開示された実施形態も開示されていない実施形態も、本出願人が着想した本発明の範囲または利用可能性を制限または限定するためのものではなく、本出願人は、特許法に準拠して、以下に記載する特許請求の範囲と等価の範囲に入るすべての修正および改良を完全に保護することを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の電子装置に結合された複数の冷却板を通る冷却流体流量を調節し分配するシステムであって、
システム圧力源に流体結合されたフローレギュレータと、
前記フローレギュレータに流体結合された分配ヘッダーと、
前記分配ヘッダーに流体結合された複数の冷却流体配管と、
オリフィスの各々が前記フローレギュレータおよび前記分配ヘッダーの下流の冷却流体配管に結合されている、少なくとも2つのオリフィスと、
前記オリフィス下流の前記複数の冷却流体配管に結合された複数の冷却板と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記少なくとも2つのオリフィス各々にわたる圧力損失は有効システム圧力差よりも小さい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つのオリフィス各々にわたる圧力損失は流路の圧力損失のばらつきよりも少なくとも1%大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記システム圧力源の下流に複数のフローレギュレータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記冷却板の下流に結合された戻り配管をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システム圧力源はコンプレッサまたはポンプを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数の電子装置に対して1つまたは複数の支持面を有するラックをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つのフローレギュレータ、複数のオリフィス、および1つまたは複数の電子装置に結合された複数の冷却板を通って流れる冷却流体を調節し分配する方法であって、
前記少なくとも1つのフローレギュレータを通る冷却流体を複数のオリフィスに流すステップと、
前記複数のオリフィスを通る流れ圧力を減圧させるステップと、
前記冷却板を冷却して前記1つまたは複数の電子装置から熱を吸収するために、前記減圧された冷却流体を、前記冷却板を通して流すステップと、
を備える方法。
【請求項9】
前記冷却流体の圧力源を用いて有効システム圧力差よりも小さい前記オリフィスの少なくとも2つの各々に圧力損失を発生させるステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
流路の圧力損失のばらつきよりも少なくとも1%大きい前記オリフィスの少なくとも2つの各々に圧力損失を発生させるステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
流路の圧力損失のばらつきよりも少なくとも1%大きい前記オリフィスの少なくとも2つの各々に圧力損失を発生させるステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記冷却流体を前記システム圧力源に戻して流すステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却流体を圧力源によって加圧するステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却流体を複数のフローレギュレータを通して流すステップをさらに備え、各フローレギュレータは複数のオリフィスに結合されている、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数のフローレギュレータ、複数のオリフィス、および1つまたは複数の電子装置に結合された複数の冷却板を通って流れる冷却流体を調節し分配する方法であって、
冷却流体を前記1つまたは複数のフローレギュレータを通して前記複数のオリフィスに流すステップと、
前記複数のオリフィスを通して第1の流体流れ圧力から第2の流体流れ圧力までの流れ圧力を減圧させるステップと、
前記冷却板を冷却して前記1つまたは複数の電子装置から熱を吸収するために、前記減圧された冷却流体を、前記冷却板を通して流すステップと、
を備える方法。
【請求項16】
前記流体流路において前記圧力損失のばらつきの少なくとも2倍の圧力損失を前記複数のオリフィスの各々にわたって発生させるステップをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フローレギュレータとオリフィスとの比が1:20〜1:2の範囲にある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
フローレギュレータとオリフィスとの比が1:8〜1:2の範囲にある、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
冷却ラック内で1つまたは複数の電子装置を結合している複数の冷却板を通して冷却流体を調節し分配するシステムであって、
流量調節手段と、
前記流量調節手段に結合された流体流量分配手段と、
複数の冷却流体供給手段と、
前記流量調節手段と前記流体流量分配手段との下流にある冷却流体供給手段に関連する1つまたは複数のオリフィスと、
前記オリフィスの下流にある複数の流体配管に結合された複数の冷却板と、
を備えるシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−519743(P2010−519743A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550171(P2009−550171)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/054293
【国際公開番号】WO2008/103667
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506188585)リーバート・コーポレイシヨン (11)
【Fターム(参考)】