説明

冷却装置

【課題】ヒートシンクの放熱フィンへの塵埃付着による目詰まりを防止し、長期に渡る十分な冷却効率を維持することのできる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置において、発熱素子に接するヒートシンク3と、ヒートシンク3上に実装される複数の放熱フィン4と、複数の放熱フィン4間の間隙に冷却風を導入するファン2と、ファン2からの冷却風の進入口にあたる放熱フィン4の上面部に実装され、複数の放熱フィン4間の間隙を移動可能な櫛状の塵埃除去部品5と、塵埃除去部品5と結合したラック6と、ボタン7と結合したラック8と、ラック6およびラック8とかみあわされる歯車9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の放熱フィンを有するヒートシンクに発熱素子からの熱を伝導させ、そのヒートシンク内に空気を流入させ冷却する冷却装置に関し、特に、放熱フィンへの塵埃付着による目詰まりの防止に有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの高速化によるCPUの性能向上に伴い、CPUの消費電力および発熱量の増加が著しいものとなっている。CPUのような高発熱体の冷却には、複数枚の放熱フィンを有するヒートシンクおよびその放熱フィン間に冷却風を流入させるためのファンが使用されている。
【0003】
一般的に、コンピュータの設置される環境には、空気中に塵埃が浮遊しており、放熱フィンに冷却風を当てると塵埃が付着してしまう。従来、放熱フィンの表面積を増加させ冷却性能を向上させるため、放熱フィンのピッチは高密度冷却設計に伴い、非常に狭くなってきている。
【0004】
そのため、ヒートシンクへの冷却風進入口の放熱フィン上に、塵埃による目詰まりが発生しやすくなり、放熱フィン間に流入する冷却風の風量が減少する。このため、長期に渡る十分な冷却効率を維持できない問題が発生していた。
【0005】
そこで、このような問題の解決のため、従来、例えば、特開平8−162787号公報(特許文献1)に記載のような、風速の高い領域の放熱フィンの間隔を広く、風速の低い領域の放熱フィンの間隔を狭くするようにしたファン付きヒートシンクの提案があった。
【0006】
また、特開2005−347450号公報(特許文献2)に記載のような、放熱動作時に空気の入口側となる隙間が出口側の隙間より狭く形成されたヒートシンクで、メンテナンス動作時には出口側に設けられたファンを逆回転させて逆方向に空気を流すことで、入口側に溜まった塵埃を外部に排出することのできる塵埃付着防止方法が考案されていた。
【特許文献1】特開平8−162787号公報
【特許文献2】特開2005−347450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、CPU等の発熱量の増大により、ファン付きヒートシンクの冷却効率を上げる必要があるが、特許文献1に記載のように、塵埃による目詰まりが発生しやすい箇所の放熱フィンの間隔を広くしてしまうと、冷却効率が低下してしまうという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に開示されている構造は、空気の入口側となる隙間が狭くなっているため、ヒートシンクに流入する冷却風の風量が減少し、冷却性能の低下を引き起こし、更に、空気の入口側に塵埃がより溜まりやすくなり、雪だるま式に大きくなった塵埃を外部へ排出することが困難となり、冷却性能を更に低下させてしまうという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ヒートシンクの放熱フィンへの塵埃付着による目詰まりを防止し、長期に渡る十分な冷却効率を維持することのできる冷却装置を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、代表的なものの概要は、ファンからの冷却風の進入口にあたる放熱フィンの上面部に実装され、複数の放熱フィン間の間隙を移動可能な櫛状の塵埃除去部品と、電子機器の外面に配置されたボタンの前後動作により、塵埃除去部品を移動させる移動部品とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、放熱フィンへの塵埃付着による目詰まりを防止することができ、冷却装置としての長期に渡る十分な冷却効率を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1〜図3により、本発明の一実施の形態に係る冷却装置の配置および構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の電子機器などにおける配置を示す図、図2は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の構成を示す構成図、図3は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去部分の構成を示す構成図であり、図3(a)、(b)は異なる方向からの斜視図を示している。
【0017】
図1において、冷却装置1は、電子機器100内において、例えばCPUなどを冷却するために配置されている。電子機器100の外面には、例えばボタン7が配置されており、冷却装置1はこのボタン7を押すことにより、冷却装置1内の塵埃などを除去するようになっている。
【0018】
ボタン7は、例えば、内部にバネなどが入っており、バネの力により、ボタンが押された後に元の状態に戻り、ボタンが前後動作するようになっている。
【0019】
図2において、冷却装置1は、銅やアルミニウム等の熱伝導性の良好な材料により形成され、CPUなどの発熱素子に接するヒートシンク3、ヒートシンク3上に突設される複数の放熱フィン4、放熱フィン4に集積された塵埃を除去する櫛状の塵埃除去部品5、塵埃除去部品5と結合したラック6、ボタン7と結合しているラック8、ラック6およびラック8とかみあわされた歯車9、放熱フィン4に風を導入するファン2から構成されている。歯車9は、大きさの異なる歯車91および歯車92から構成されている。
【0020】
ラック6、ラック8、歯車9で移動部品を構成している。
【0021】
図2の矢印で示すように、ファン2により、電子機器100の上方から外気を取り入れ、放熱フィン4方向に吸気風10を導入して、放熱フィン4間の間隙を通して排気風11となる。ヒートシンク3は発熱素子に接しており、吸気風10が放熱フィン4間を通過することにより、発熱素子の熱によって高温になったヒートシンク3の冷却が行われる。
【0022】
放熱フィン4間の隙間は、必要な冷却性能を確保するために、放熱フィン4の表面積、圧損の程度等を考慮して適宜決定されるものであり、本実施の形態においては、フィン間の隙間を変化させたときの冷却性能を考慮し、フィン間の隙間は1.5から2mm程度である。
【0023】
また、放熱フィン4の間に塵埃除去部品5が設置され、図3に示すように、塵埃除去部品5は薄い櫛状の形状をしているため、吸気風10が放熱フィン4間に導入される際の妨げにはならないようになっている。
【0024】
次に、図4および図5により、本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去動作について説明する。図4は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去動作を説明するための説明図であり、図4(a)は、ボタン7を押す前の状態、図4(b)はボタン7を押した後の状態を示している。図5は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去動作を説明するための説明図であり、図5(a)は塵埃除去開始前の正面図、図5(b)は塵埃除去開始前の側面図を示している。
【0025】
本実施の形態に対する従来の比較例においては、ファン2と放熱フィン4の間に塵埃除去部品5のような塵埃を除去する機構がない。そのため、外気に含有される塵埃は、ヒートシンク3の冷却風進入口にあたる放熱フィン4上面部に付着し、時間の経過と共に徐々に堆積する。堆積した塵埃は放熱フィン4上面からの冷却風の進入を阻害し、冷却効果が得られなくなる。
【0026】
本実施の形態においては、図4に示すように、ボタン7を押すたびにボタン7と結合されたラック8が前後にスライドする。歯車9はラック6側の歯車91とラック8側の歯車92の2つの歯車からなり、ラック6側の歯車91はラック8側の歯車92より大きいので、ボタン7の短いストロークを長いストロークとしてラック6に伝達することができる。
【0027】
図4(a)に示すボタン7を押す前の状態から、図4(b)に示すボタン7を押した後の状態までに、ラック6と結合した塵埃除去部品5は放熱フィン4の前後それぞれの端までスライドすることができる。
【0028】
図5に示すように、ファン2から吸入された外気は、放熱フィン4間に流入する際、含有されていた塵埃12が放熱フィン4に付着するが、放熱フィン4の間に実装された塵埃除去部品5が前後にスライドするので、放熱フィン4に付着した塵埃12は除去される。
【0029】
また、ボタン7を電源ボタンと共用すれば、電源ボタンを押下するたびに塵埃除去部品5が前後にスライドして塵埃12が除去される。
【0030】
本発明では、ボタン7と連動して動く塵埃除去部品5により、放熱フィン4に付着した塵埃を除去するようにしたので、放熱フィン4への塵埃付着による目詰まりを防止することができ、冷却装置としての長期に渡る十分な冷却効率を維持することができる。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、発熱素子の空気冷却を行う電子機器の冷却装置に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係る冷却装置の電子機器などにおける配置を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る冷却装置の構成を示す構成図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去部分の構成を示す構成図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去動作を説明するための説明図である。
【図5】(a)、(b)は本発明の一実施の形態に係る冷却装置の塵埃除去動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1…冷却装置、2…ファン、3…ヒートシンク、4…放熱フィン、5…塵埃除去部品、6,8…ラック、7…ボタン、9,91,92…歯車、10…吸気風、11…排気風、12…塵埃、100…電子機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器内において発熱素子を冷却する冷却装置であって、
前記発熱素子に接するヒートシンクと、
前記ヒートシンク上に実装される複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィン間の間隙に冷却風を導入するファンと、
前記ファンからの前記冷却風の進入口にあたる前記放熱フィンの上面部に実装され、前記複数の放熱フィン間の間隙を移動可能な櫛状の塵埃除去部品と、
前記電子機器の外面に配置されたボタンの前後動作により、前記塵埃除去部品を移動させる移動部品とを備えたことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の冷却装置において、
前記移動部品は、
前記塵埃除去部品と結合した第1のラックと、
前記ボタンと結合した第2のラックと、
前記第1のラックおよび前記第2のラックとかみあわされる歯車とを有することを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項2記載の冷却装置において、
前記歯車は、第1の歯車および第2の歯車を有し、
前記第1のラック側の第1の歯車は前記第2のラック側の第2の歯車より大きく、前記ボタンの短いストロークを前記塵埃除去部品の長いストロークに変換することを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の冷却装置において、
前記ボタンは、前記電子機器の電源ボタンであることを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−295826(P2009−295826A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148754(P2008−148754)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】