説明

冷却装置

【課題】
硬質ポリウレタンフォーム中に硬質ポリウレタンフォームとは異なる補強材を含有した硬質ポリウレタンフォームを使用することにより、フォームの樹脂強度の向上、若しくはフォームの冷却速度を早めフォーム変形を抑制することにより外観の状態を向上させ且つ硬質ポリウレタンフォームの使用量の低減による原価低減を図ること。
【解決手段】
その硬質ポリウレタンフォーム中に硬質ポリウレタンフォーム以外の補強材を含有させ、その補強材が、針状,板状,球状を示す有機あるいは/及び無機材料から構成されており、発泡剤や助剤を含むウレタンフォーム総重量に対して、20〜40重量%含有させて、補強材の長さを300μm以下、断面の最も大きな長さを20μm以下としたものを含有させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に係り、特に硬質ポリウレタンフォームを充填した冷蔵庫,冷凍庫,冷蔵ショーケースおよび自動販売機などの冷却装置の断熱箱体および断熱扉に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷蔵庫の断熱箱体には外箱と内箱の空間に独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームを充填した断熱材が用いられている。この硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分を発泡剤,触媒,整泡剤の存在下で反応させることにより得られるものである。発泡剤としては、昨今の成層圏のオゾン層破壊や温室効果による地表の温度上昇を抑止するため、以前のフレオンから、特開平11−201628号公報や特開平11−248344号公報に示されているようなシクロペンタンと水の混合発泡剤を用いた硬質ポリウレタンフォームに変化してきている。
【0003】
しかし、シクロペンタンや水はフレオンに比較して、ガス自体の熱伝導率が大きいため、採用する冷凍冷蔵庫においては断熱性能上不利になる傾向であった。
【0004】
その後、硬質ポリウレタンフォームの原料処方の構成変更により、例えば特開2003−42653号公報に示されているように、熱伝導率は徐々に改善されてきているが、密度が上昇し、冷凍冷蔵庫への硬質ポリウレタンフォームの注入量は増加する傾向である。
【0005】
他方、建材分野では壁面用断熱ボードとして、発泡ポリウレタンが一部で使用されているが、強化材が用いられている例もある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−201628号公報
【特許文献2】特開平11−248344号公報
【特許文献3】特開2003−42653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、いずれの分野においても省エネルギー化は緊急の課題となっており、熱を効率的に利用するという観点から冷凍冷蔵庫においても、優れた断熱性能を有する硬質ポリウレタンフォームの採用が求められている。
【0008】
しかし近年、原油価格の高騰や全世界におけるウレタン原料の需要と供給のアンバランスから、世界的なウレタン原料の逼迫やウレタン原料価格の高騰が収まらず、冷蔵庫の製造原価の高騰が今後も継続する状況となっている。
【0009】
前述の高騰する冷蔵庫の製造原価の低減や、冷蔵庫生産に要するウレタン原料の確保には、ウレタン原料使用量の低減が有効である。即ち、硬質ポリウレタンフォームの注入量低減が課題となる。
【0010】
しかし、前項記載の通り硬質ポリウレタンフォームの性能向上の弊害としてフォームの密度が増加している傾向であり、注入量も増加傾向である。
【0011】
また、最近では冷蔵庫内の内容積を向上するために、真空断熱パネル等の高性能な他の断熱材を組み合わせて使用することで、冷蔵庫の壁厚を薄くする傾向が見られている。真空断熱パネルは一般的にはウレタンを注入する断熱空間と同一の空間に設置されるため、ウレタン樹脂が流動する空間が狭くなるため、ウレタン樹脂の流動性に欠けることから、このことも注入量増加の要因となっている。
【0012】
それにより、最近では低密度タイプの硬質ポリウレタンフォームが導入されてきているが、低密度化による弊害としてウレタン樹脂強度の低下が懸念される。
【0013】
硬質ポリウレタンフォームの樹脂強度の低下は、フォーム自体の収縮や反りに繋がり、接着している冷蔵庫の外板(鉄板)や内板(ポリスチレン樹脂やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)を伴った凹みや歪みを引き起こし、冷蔵庫の外観に影響を与える問題があった。
【0014】
しかし、本発明の冷却装置分野と建材分野では通常用いられる発泡ウレタンフォームの特徴が異なる傾向がある。例えば、断熱性能の指標となる熱伝導率は建材分野に比べ冷却装置分野では低い数値となっている。これは、建材分野では依然として熱伝導率が発泡ポリウレタンの約3倍と比較的高いグラスウールが主流となっているのに対し、冷却装置分野では熱伝導率が発泡ポリウレタンの約1割と云う非常に低い断熱性能に優れた真空断熱材が積極的に使用されてきている背景もあり、それらの接着体としても作用する発泡ポリウレタンについては低い熱伝導率が期待されており、ウレタン原料の構成に制約される条件も大きい。特に、熱伝導率を追究するウレタン処方においては、ウレタン反応性を向上させウレタン気泡径を細かくする必要があり、金型からフォームを取り外した後の膨張や、その後の収縮量が大きくなり、歪みが大きくなる傾向があった。また、冷却装置とりわけ冷蔵庫の断熱箱体においては、箱体の外側及び内側ウレタン両表面を鉄板やプラスチック樹脂等の線膨張係数の異なる面材でサンドイッチする形状であり、ウレタンフォームの収縮は鉄板やプラスチック樹脂面材の歪みにつながる。建材分野の発泡断熱ボードは、主として住宅壁面内に隠蔽されるためボード表面の状態については、それほど大きな制約は受けない。しかし、冷却装置については、両面材ともに製品の意匠面であり、その外観を損なうことは許容されない。
【0015】
つまり、冷却装置分野では建材分野と比較して、より高性能且つ高外観品質が達成され得るウレタン処方が必要となり、その中で強化材配合量の最適化を図る必要があった。
【0016】
本発明の目的は、硬質ポリウレタンフォームの樹脂強度を向上させ且つ、歪みや撓み等の外観の状態を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的を達成するための手段として本発明は、冷却装置特に冷凍冷蔵庫に使用する硬質ポリウレタンフォームにおいて、ポリエーテルポリオール,シクロペンタン・水などの発泡剤、また触媒・整泡剤などの助剤をプレミックスした液とイソシアネート液を衝突混合する際に補強材を高圧混合することにより、硬質ポリウレタンフォーム内に補強材を含有させ、硬質ポリウレタンフォームの強度物性を向上させることにある。これにより、硬質ポリウレタンフォームの樹脂強度を向上させることで外観状態を維持した低密度化の実現が可能となり、またそれによる硬質ポリウレタンフォームの注入量の低減が可能となった。
【0018】
冷却装置特に冷凍冷蔵庫の意匠面の歪みについては、断熱体であるポリウレタンフォームと、その両面にあり接着されている鉄板やプラスチック樹脂の線膨張係数の相違が原因として挙げられる。特に、発泡ポリウレタンは硬化型の断熱体であり、温度因子がそれぞれに与える影響が考えられる。歪みが発生するメカニズムとしては、中央に存在する発泡ポリウレタンが、接触しており温度が低い両面材側、つまり表皮側から硬化していき、フォーム中心部は反応が残り温度が高い状態となっている。冷却された表皮側から撓み変形が開始し、接着しているためバイメタルのような状態で面材も変形を始め、その後にフォーム中心部も冷却されて硬化されていく。即ち、表面部と中心部の冷却時間差が、フォームの収縮に影響を与えており、歪みに繋がると考えられる。
【0019】
ここで、本発明においては、強化材は強化材が無い状態、つまり発泡気泡内に存在しているシクロペンタン等の発泡剤と比較して熱伝導率が高い材料であり、それらが発泡ウレタンフォーム内に存在することにより、それぞれの強化材を熱が伝達しやすくなり、フォーム全体の系として熱伝達が良くなる傾向となる。これにより、発泡ウレタンフォームの表皮側(表面側)と中心部の冷却速度の差が小さくなり、温度差が少なくなる傾向になるのである。これにより、発泡ウレタンフォームの変形量も少なくなり、これが起因となる歪みが抑制される傾向になるのである。
【0020】
また、補強材の含有量の最適化によって、硬質ポリウレタンフォームの低熱伝導率を維持した高強度化によって、箱体や扉体の薄肉化が可能となる。このような薄肉化により冷蔵庫の庫内のスペースは大きくなることから、本発明によって冷蔵庫の外形寸法を維持したまま断熱性能を著しく悪化させることなく、冷蔵庫内容積を増加させることが可能となった。
【0021】
係る本発明の好ましい具体的な構成例は次の通りである。
【0022】
外箱と内箱との間に形成された空間に、ポリオール,イソシアネート、およびシクロペンタンと水の混合発泡剤を用いた硬質ポリウレタンフォームを充填してなる冷却装置において、
(1)断熱体の硬質ポリウレタンフォーム中に硬質ポリウレタンフォーム以外の補強材を含有していること。
(2)その補強材が、硬質ポリウレタンフォームより熱伝導率が大きく、針状,板状,球状を示す有機あるいは/及び無機材料から構成されること。
(3)その補強材を、発泡剤や助剤を含むウレタンフォーム総重量に対して、20〜40重量%含有させること。
(4)その補強材において、長さを300μm以下、断面の最も大きな長さを20μm以下としたものを含有させること。
【0023】
ここで補強材としては、針状のものとしては、ガラス繊維,アルミナ繊維,カーボンファイバー等の無機繊維や、ポリビニルアルコール系繊維,ポリアミド系繊維,ポリ塩化ビニリデン系繊維,ポリ塩化ビニル系繊維,ポリアクリル系繊維,ポリエステル系繊維等の合成化学繊維やコットン,ガンピ,ミツマタ,ケナフ麻,バナナ,パイナップル,ココヤシ,マニラ麻,サイザル麻,ジュート等の天然植物繊維等が好ましい。他に板状のものとしてマイカやガラスフレーク,球状のものとしてガラス球やガラス中空球、その他として炭酸カルシウムやタルク,木粉やゴムくず等を用いても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の硬質ポリウレタンフォームを用いれば、使用量を低減して原価低減を図れるとともに、冷蔵庫外観の向上が可能な冷凍冷蔵庫を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
本実施形態の冷凍冷蔵庫の製造方法は、外箱13及び内箱14からなる断熱箱体7を形成し、この断熱箱体7の外箱13と内箱14との間に形成される空間に真空断熱パネル12を配置した状態で硬質ポリウレタンフォーム11を充填して断熱箱体7を形成する。
【0027】
そして、本実施形態では、シクロペンタンや水などに代表される発泡剤や、触媒や整泡剤などの助剤を混合して構成されるポリオール成分とイソシアネート成分の2液による硬質ポリウレタンフォームの原料を用いる。
【0028】
ここで、本発明における補強材は、上記硬質ポリウレタンフォームの2液の原料に高圧状態で衝突混合させることにより、含有させる。
【0029】
本実施形態によれば、断熱箱体7、或いは真空断熱パネル12搭載の断熱箱体7において硬質ポリウレタンフォーム11の使用量を抑制することが可能であり、しかも冷蔵庫の外観の状態が向上した冷凍冷蔵庫を製造できる。かかる効果が得られる具体的な理由について以下に説明する。
【0030】
本実施形態の断熱箱体の製造方法では、図1に示すように、別々の容器に貯留したポリオール1とイソシアネート2の2液をミキシングヘッド3によって攪拌し、攪拌したウレタン原液5を注入ヘッド9より対象とする断熱箱体7内に注入する。
【0031】
金型の中に2液を攪拌したウレタン原液5を充填することにより、発泡させる工程の例を示したものである。ここで、発泡に用いる2液をポリオール1とイソシアネート2としたが、本発明はこれだけに限定されるものではなく、金型も任意の形状とできるものとする。
【0032】
断熱箱体7に注入する場合、図1に示すように、重力に従い下方へ落下した後、発泡により容積を増加させながら断熱箱体7内で上方に立ち上がり、断熱箱体7内全体へ流動して行き、外箱13または真空断熱パネル12と内箱14との間に硬質ポリウレタンフォーム11となって充填される。
【0033】
図2に扉体のウレタン発泡方法の一例を示す。扉の意匠鉄板側とライナー側を上下別体に保持できる発泡金型を用いるが、予め開放状態とした発泡金型のうち、下型となる意匠鉄板側にウレタン原液5を滴下注入し、注入終了後にライナーを保持した上型が閉じ、発泡により扉体内全体へ流動していくとともに、扉体の厚み方向の上方に立ち上がった硬質ポリウレタンフォーム11とライナーが最終的に接着し一体構造となり充填が完了する。
【0034】
ここで、箱体や扉体でのウレタン発泡挙動を簡易的に評価するために図2に示す金型を用いて作製された硬質ポリウレタンフォームの曲げ強度,曲げ弾性率,寸法変化率を測定した。
【0035】
本評価に用いる補強材として、ガラス繊維を粉砕しパウダー状に成形したものを用いた。ガラス繊維補強材については、繊維長を30〜350μmの範囲とし、繊維径を10〜50μmの範囲とした。また、ガラス繊維補強材の添加量はウレタン発泡原液総重量に対して、5〜50%の範囲とした。フィラーをこれ以上添加した場合も想定されるが、フィラー量が多すぎると液粘度が異常に上昇し、攪拌もままならないため検討から除外する。そもそも、ポリオール溶液の液粘度はイソシアネート液との反応時に大きな影響を与える。液粘度が高い場合、発泡剤との相溶性が低くなることから貯蔵安定性に欠け、ウレタン発泡効率や断熱性能にも影響するため、従来は貯蔵タンク内や配管内で攪拌ペラやスタティックミキサー等を設けて、より混合可能なように対応している背景がある。これらより、作製される硬質ウレタンフォームの性能や生産性を考慮すると、液粘度の大幅な増加は避けるべきであるが、一般的に異物を混入すると液粘度は上昇する傾向であるため、液粘度の上昇を可能な限り抑制する混合方法が必要である。
【0036】
上記の種々の条件で作製した補強材の硬質ポリウレタンフォームについて、JIS規格に準拠し曲げ弾性率を測定した。その際、補強材を用いないで作製した硬質ポリウレタンフォームの曲げ弾性率の値を100とした時との指数差で表した。また、同様に作製した硬質ポリウレタンフォームから、200×200×35に切り出したカットサンプルについて、熱伝導率測定機(英弘精機社製)にて測定した。その際、補強材を用いないで作製した硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率の値を100とした時との指数差で表した。
【0037】
ここで、補強材の長さを100μm、断面径を10μmに設定した際の曲げ弾性率および熱伝導率の補強材配合量との関係を図3に示す。
【0038】
図3より、曲げ弾性率については、補強材の配合量が多くなるにつれて曲げ弾性率も上昇することが分かる。特に、配合量が20wt%以上では曲げ弾性率が大きく向上していることが分かる。
【0039】
一方、熱伝導率については、補強材の配合量が少ない間は大きな悪化は見られないが、配合量が50wt%以上になると比較的大きく熱伝導率が悪化していることが分かる。これは、硬質ポリウレタンフォーム樹脂中に補強材である繊維量が増えたために、その繊維に沿って熱移動が多くなるためであると考えられる。
【0040】
以上から、曲げ弾性率と熱伝導率それぞれの因子についてバランス良く高性能化を図るには、その補強材の配合量は20〜40wt%が好ましいといえる。
【0041】
次に、補強材の配合量を先に見出した好ましい配合量域である30wt%に固定し、また補強材径を20μmに固定した際の、補強材の長さの曲げ弾性率とウレタン原料粘度との関係について図4に示す。
【0042】
ここでは、理論的に補強材の長さを大きくすれば曲げ弾性率が大きくなることは容易に推定できるが、それにつれてウレタン原料中における補強材率が大きくなり、ウレタン原料の粘度が上昇し、ウレタン硬化反応を引き起こさせる最初の衝突混合時において不具合を生じさせることが考えられる。ここでも、補強材を用いないで作製した硬質ポリウレタンフォームの曲げ弾性率の値とウレタン原料粘度の値を100として、それとの相関を指数として表している。
【0043】
図4より、強化材の長さが大きくなるにつれて、曲げ弾性率及びウレタン原料粘度が大きくなることが分かる。特に粘度指数については、強化材の長さが350μm以上において急激に大きくなっていることが分かる。また、曲げ弾性率については30μmにおいても300μmと極端に異なる値を示している傾向でもないため、ウレタン原料粘度との相関も考慮すると補強材の長さは300μm以下とすることが好ましい。
【0044】
本発明は冷凍冷蔵庫の断熱箱体および断熱扉体に適用することによりウレタン注入量の少ない或いは冷凍冷蔵庫の庫内スペースが大きい冷凍冷蔵庫が実現されるが、昨今の冷凍冷蔵庫においては、その断熱性能の向上,消費電力量の低減を目的として真空断熱材を用いることが多い。真空断熱材とは、無機や有機の繊維あるいは発泡樹脂により成形された芯材を、金属箔や樹脂層をラミネート成形した外包材の中に挿入し、外包材内を真空排気することにより成形されるものであるが、外包材は熱の回り込みを極めて少なくするために極限にまで薄いものとなっている。
【0045】
即ち、本発明の如く補強材を添加することにより、その補強材の長さや径があまりに大きいと、例えばポリウレタン流動時に真空断熱材の表面を補強材で傷つけてしまう可能性がある。外包材の表面が傷ついて穴が開いてしまい外包材内の真空度が大気圧となった真空断熱材の熱伝導率は、芯材本来の熱伝導率となってしまい、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率より悪くなってしまう。
【0046】
以上の観点からも、曲げ弾性率の向上だけでなく総括的に考慮して、補強材の長さは300μm以下が好ましいと言える。
【0047】
次に、補強材の配合量を先に見出した好ましい配合量域である30wt%に固定し、また補強材の長さを200μmに固定した際の、補強材の径の大きさに対する曲げ弾性率とウレタン注入量との関係について図5に示す。
【0048】
図5より、強化材の径が大きくなるにつれて、曲げ弾性率及びウレタン注入量が大きくなることが分かる。特に注入量指数については、強化材の径が20μmを境に急激に大きくなっていることが分かる。また、曲げ弾性率については20μmまでは急激に大きくなっているが、20μm以降は強度向上度は衰えつつあることが分かる。よって、曲げ弾性率とウレタン注入量の傾向から考慮すると補強材の径は20μm以下とすることが好ましい。
【0049】
こちらについても、先の考察と同様に、径が大きくなることにより真空断熱材表面の外包材への突き刺しや傷つけの影響が考えることから、不必要に補強材の径を大きくする必要は無い。
【0050】
また、先にも述べたが冷凍冷蔵庫分野では庫内の容積を大きくすることにトレンドしており、壁の厚さが薄くなってきている。その薄くなった断熱空間にさらに真空断熱材を搭載するために硬質ポリウレタンの流動領域は極めて薄くなっている。そのため、冷凍冷蔵庫の外側の鉄板や内側の成形樹脂あるいは真空断熱材との流動時の摩擦力を少なくしないとウレタン注入量が増えることにつながり、また硬質ポリウレタンフォームの成型状況も好ましくなく、本来保持するじゅうぶんな断熱特性を発揮できなくなる。
【0051】
以上の観点からも、曲げ弾性率の向上だけでなく総括的に考慮して、補強材の径は20μm以下が好ましいと言える。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一実施形態に係る断熱箱体に用いる2液混合による硬質ポリウレタンフォームの生成原理と充填状態を説明する模式図。
【図2】本実施形態の断熱扉体の硬質ポリウレタンフォームの充填状態を説明する模式図。
【図3】補強材の長さおよび径を一定にした際の補強材配合量と得られる補強フォームの曲げ弾性率指数と熱伝導率指数の関係。
【図4】補強材の長さと得られる補強フォームの曲げ弾性率指数とウレタン原料の粘度(補強材を混合後の)との関係を示す図。
【図5】補強材の径と得られる補強フォームの曲げ弾性率指数とウレタン注入量指数との関係を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1 ポリオール
2 イソシアネート
3 ミキシングヘッド
4 金型
5 ウレタン原液
5′ ウレタン原液の流れ
6 注入口
7 断熱箱体
8 冷蔵庫製品背面
9 注入ヘッド
10 硬質ポリウレタンフォームのカットサンプル
11 硬質ポリウレタンフォーム
12 真空断熱パネル
13 外箱
14 内箱
15 意匠鉄板
16 ライナー
17 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と内箱との間に形成された空間に、ポリオール,イソシアネート、およびシクロペンタンと水の混合発泡剤を用いた硬質ポリウレタンフォームを充填してなる断熱体を備えた冷却装置において、
前記断熱体の硬質ポリウレタンフォーム中に該硬質ポリウレタンフォーム以外の補強材を含有しかつ、その曲げ弾性率が15MPa〜25MPaであることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1において、前記硬質ポリウレタンフォーム以外の補強材として、前記硬質ポリウレタンフォームより熱伝導率が大きい、針状,板状,球状を示す有機あるいは/及び無機材料から構成することにより、前記硬質ポリウレタンフォームの冷却速度を向上させたフォーム変形量の少ない硬質ポリウレタンフォームを充填したことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1において、前記補強材を、発泡剤や助剤を含むウレタンフォーム総重量に対して、20〜40重量%含有する前記硬質ポリウレタンフォームを充填したことを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1において、前記補強材の長さを300μm以下、断面の最も大きな長さを20μm以下としたものを含有する前記硬質ポリウレタンフォームを充填したことを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−52857(P2009−52857A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221988(P2007−221988)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】