冷却装置
【課題】装置のコスト低減と小型化とを達成できる、発熱源の冷却装置を提供する。
【解決手段】HV機器31を冷却する冷却装置1は、冷媒を循環させるための圧縮機12と、冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器14と、冷媒を減圧する膨張弁16と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する熱交換器18と、膨張弁16を経由して熱交換器12と熱交換器18との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いてHV機器31を冷却する冷却部30と、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと圧縮機12から熱交換器18へ向かう冷媒の流れとを切り換える四方弁28と、を備える。
【解決手段】HV機器31を冷却する冷却装置1は、冷媒を循環させるための圧縮機12と、冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器14と、冷媒を減圧する膨張弁16と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する熱交換器18と、膨張弁16を経由して熱交換器12と熱交換器18との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いてHV機器31を冷却する冷却部30と、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと圧縮機12から熱交換器18へ向かう冷媒の流れとを切り換える四方弁28と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して発熱源を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置に関し、たとえば特開平5−96940号公報(特許文献1)には、車室内空気熱交換器を備え、四方切換え弁によって暖房モード運転および冷房モード運転が可能な、空気調和装置が開示されている。
【0003】
近年、環境問題対策の一つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。このような車両において、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータおよびバッテリなどの電気機器は、電力の授受によって発熱する。そのため、これらの電気機器を冷却する必要がある。そこで、車両用空調装置として使用される蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、発熱体を冷却する技術が提案されている。
【0004】
たとえば特開2007−69733号公報(特許文献2)には、膨張弁から圧縮機へ至る冷媒通路に、空調用の空気と熱交換する熱交換器と、発熱体と熱交換する熱交換器と、を並列に配置し、空調装置用の冷媒を利用して発熱体を冷却するシステムが開示されている。特開2001−309506号公報(特許文献3)には、車両走行モータを駆動制御するインバータ回路部の冷却部材に車両空調用冷凍サイクル装置の冷媒を還流させ、空調空気流の冷却が不要な場合に車両空調用冷凍サイクル装置のエバポレータによる空調空気流の冷却を抑止する、冷却システムが開示されている。
【0005】
特開2000−198347号公報(特許文献4)には、モータからの排熱を冷却水で回収し、冷却水から冷媒に熱を移動させることで暖房能力を向上させる、ヒートポンプ式空気調和装置が開示されている。特開2005−90862号公報(特許文献5)には、空調用の冷凍サイクルの減圧器、蒸発器および圧縮機をバイパスするバイパス通路に、発熱体を冷却するための発熱体冷却手段を設けた、冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−96940号公報
【特許文献2】特開2007−69733号公報
【特許文献3】特開2001−309506号公報
【特許文献4】特開2000−198347号公報
【特許文献5】特開2005−90862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている冷却装置は、冷房運転時に使用される冷却用室内熱交換器と、暖房運転時に使用される加熱用室内熱交換器と、の両方を備える。冷却装置が二台の室内熱交換器を備えるので、冷却装置のコストが増大し、装置が大型化する問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、装置のコスト低減と小型化とを達成できる、発熱源の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却装置は、発熱源を冷却する冷却装置であって、冷媒を循環させるための圧縮機と、冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する第二熱交換器と、減圧器を経由して第一熱交換器と第二熱交換器との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いて発熱源を冷却する冷却部と、圧縮機から第一熱交換器へ向かう冷媒の流れと、圧縮機から第二熱交換器へ向かう冷媒の流れと、を切り換える四方弁と、を備える。
【0010】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部は、第一熱交換器と減圧器との間に設けられる。
【0011】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部と減圧器との間に設けられ、冷媒と外気との間で熱交換する第三熱交換器を備える。好ましくは、第一熱交換器は、冷媒から熱を放出させる放熱能力が第三熱交換器よりも高い。
【0012】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部に向けて流通する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器と、四方弁による冷媒の流れの切り換えに対応して、第一熱交換器と第三熱交換器とのいずれか一方から気液分離器への冷媒の流れを切り換える切換弁と、を備える。
【0013】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部は、第一熱交換器と第二熱交換器との間に直列に接続されている。
【0014】
上記冷却装置において好ましくは、第一熱交換器と第二熱交換器との間に並列に配置された第一通路および第二通路を備え、冷却部は、第二通路に設けられる。好ましくは、第一通路に配置され、第一通路を流れる冷媒の流量と第二通路を流れる冷媒の流量とを調節する、流量調整弁を備える。
【0015】
上記冷却装置において好ましくは、エンジンと、エンジンとの間で熱の受け渡しを行なうヒータコアと、を備え、ヒータコアは、第二熱交換器に対し空調用空気の下流側に配置されている。好ましくは、ヒータコアへ流れる空調用空気の流量を調節する流量調整部を備える。
【0016】
上記冷却装置において好ましくは、第二熱交換器に対し空調用空気の下流側に配置され、冷媒と空調用空気との間で熱交換する、第四熱交換器を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷却装置によると、装置のコスト低減と小型化とを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図3】四方弁を切り換えた状態の冷却装置を示す模式図である。
【図4】実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図5】実施の形態2の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図7】四方弁を切り換えた状態の実施の形態2の冷却装置を示す模式図である。
【図8】実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図9】実施の形態3の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図10】実施の形態4の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図11】四方弁を切り換えた状態の実施の形態4の冷却装置を示す模式図である。
【図12】第一の例の切換弁が第一の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。
【図13】第一の例の切換弁が第二の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。
【図14】第二の例の切換弁が第一の設定位置にある状態を示す斜視図である。
【図15】第二の例の切換弁が第二の設定位置にある状態を示す斜視図である。
【図16】実施の形態5の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図17】ダンパを移動した状態の実施の形態5の冷却装置を示す模式図である。
【図18】実施の形態6の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図19】実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図20】四方弁を切り換えた状態の実施の形態6の冷却装置を示す模式図である。
【図21】実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の冷却装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、冷却装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備える。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、たとえば、車両の車内の冷暖房を行なうために、車両に搭載される。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた暖房は、たとえば、暖房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも低い場合に行なわれる。
【0021】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第一熱交換器としての熱交換器14と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第二熱交換器としての熱交換器18と、を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、四方弁28を含む。四方弁28は、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと、圧縮機12から熱交換器18へ向かう冷媒の流れと、を切り換え可能に配置されている。
【0022】
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に流通する気相冷媒を吸入圧縮して、高温高圧の気相冷媒を吐出する。圧縮機12は、冷媒を吐出することで、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
【0023】
熱交換器14,18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器14,18の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器14,18は、車両の走行によって発生する自然の通風によって供給された空気流れ、またはファンによって供給された空気流れと、冷媒と、の間で熱交換を行なう。
【0024】
膨張弁16は、高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温
・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
【0025】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、冷媒通路21〜27を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器14、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜27によって連結されて構成される。
【0026】
冷媒通路21は、圧縮機12と四方弁28とを連通する。冷媒は、冷媒通路21を経由して、圧縮機12から四方弁28へ向かって流通する。冷媒通路22は、四方弁28と熱交換器14とを連通する。冷媒は、冷媒通路22を経由して、四方弁28と熱交換器14との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路23は、熱交換器14と後述する冷却部30とを連通する。冷媒は、冷媒通路23を経由して、熱交換器14と冷却部30との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路24は、冷却部30と膨張弁16とを連通する。冷媒は、冷媒通路24を経由して、冷却部30と膨張弁16との一方から他方へ向かって流通する。
【0027】
冷媒通路25は、膨張弁16と熱交換器18とを連通する。冷媒は、冷媒通路25を経由して、膨張弁16と熱交換器18との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路26は、熱交換器18と四方弁28とを連通する。冷媒は、冷媒通路26を経由して、熱交換器18と四方弁28との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路27は、四方弁28と圧縮機12とを連通する。冷媒は、冷媒通路27を経由して、四方弁28から圧縮機12へ向かって流通する。
【0028】
なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニアまたは水などを用いることができる。
【0029】
熱交換器14と膨張弁16との間を流通する冷媒の経路上には、冷却部30が設けられている。冷却部30が設けられるので、熱交換器14と膨張弁16との間の冷媒の経路は、冷却部30よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路23と、冷却部30よりも膨張弁16に近接する側の冷媒通路24と、に二分割されている。冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるHV(Hybrid Vehicle)機器31と、冷媒が流通する配管である冷却通路32とを含む。HV機器31は、発熱源の一例である。冷却通路32の一方の端部は、冷媒通路23に接続される。冷却通路32の他方の端部は、冷媒通路24に接続される。
【0030】
熱交換器14と膨張弁16との間を流通する冷媒は、冷却通路32を経由して流れる。冷媒は、冷却通路32内を流通するとき、HV機器31から熱を奪って、HV機器31を冷却させる。冷却部30は、冷却通路32によってHV機器31と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部30は、たとえば、HV機器31の筐体に冷却通路32の外周面が直接接触するように形成された冷却通路32を有する。冷却通路32は、HV機器31の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路32を流通する冷媒と、HV機器31との間で、熱交換が可能となる。
【0031】
HV機器31は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の熱交換器14から膨張弁16に至る冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31を冷却す
ることができる。
【0032】
代替的には、冷却部30は、HV機器31と冷却通路32との間に介在して配置された任意の公知のヒートパイプを備えてもよい。この場合HV機器31は、冷却通路32の外周面にヒートパイプを介して接続され、HV機器31から冷却通路32へヒートパイプを経由して熱伝達することにより、冷却される。HV機器31をヒートパイプの加熱部とし冷却通路32をヒートパイプの冷却部とすることで、冷却通路32とHV機器31との間の熱伝達効率が高められるので、HV機器31の冷却効率を向上できる。たとえばウィック式のヒートパイプを使用することができる。
【0033】
ヒートパイプによってHV機器31から冷却通路32へ確実に熱伝達することができるので、HV機器31と冷却通路32との間に距離があってもよく、HV機器31に冷却通路32を接触させるために冷却通路32を複雑に配置する必要がない。その結果、HV機器31の配置の自由度を向上することができる。
【0034】
HV機器31は、電力の授受によって発熱する電気機器を含む。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
【0035】
熱交換器18は、空気が流通するダクト40の内部に配置されている。熱交換器18は、冷媒とダクト40内を流通する空調用空気との間で熱交換して、空調用空気の温度を調節する。ダクト40は、ダクト40に空調用空気が流入する入口であるダクト入口41と、ダクト40から空調用空気が流出する出口であるダクト出口42と、を有する。ダクト40の内部の、ダクト入口41の近傍には、ファン43が配置されている。
【0036】
ファン43が駆動することにより、ダクト40内に空気が流通する。ファン43が稼働すると、ダクト入口41を経由してダクト40の内部へ空調用空気が流入する。ダクト40へ流入する空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。図1,3中の矢印45は、熱交換器18を経由して流通し、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒と熱交換する空調用空気の流れを示す。冷房運転時には、熱交換器18において空調用空気が冷却され、冷媒は空調用空気からの熱伝達を受けて加熱される。暖房運転時には、熱交換器18において空調用空気が加熱され、冷媒は空調用空気へ熱伝達することにより冷却される。矢印46は、熱交換器18で温度調節され、ダクト出口42を経由してダクト40から流出する、空調用空気の流れを示す。
【0037】
冷房運転時には、図1に示すA点、B点、C点、D点およびE点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器14と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0038】
図2は、実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図2中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図2中には、圧縮機12から熱交換器14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24から膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,C,D
およびE点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0039】
図2に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器14へと流れる。
【0040】
熱交換器14へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器14において外気と熱交換して冷却される。冷媒は、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(C点)。熱交換器14は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器14において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0041】
熱交換器14で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路23を経由して冷却部30へ流れ、HV機器31を冷却する。HV機器31との熱交換により、冷媒の過冷却度が小さくなる。つまり、過冷却液の状態の冷媒の温度が上昇し、液冷媒の飽和温度に近づく(D点)。その後冷媒は、冷媒通路24を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(E点)。
【0042】
膨張弁16から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路25を経由して熱交換器18へ流入する。熱交換器18のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して車両の室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって、等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。冷媒は、熱交換器18において周囲から吸熱し加熱される。気化した冷媒は、冷媒通路24を経由して圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器18から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0043】
なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
【0044】
冷房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気の熱を吸収する。熱交換器18は、膨張弁16によって減圧された冷媒を用いて、冷媒の湿り蒸気が蒸発して冷媒ガスとなる際の気化熱を、車両の室内へ流通する空調用空気から吸収して、車両の室内の冷房を行なう。熱が熱交換器18に吸収されることによって温度が低下した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の冷房が行なわれる。
【0045】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、熱交換器18において気化熱を車両の室内の空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。加えて、熱交換器14から出た高圧の液冷媒が冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。なお、HV機器31を冷却するために必要とされる温度は、少なくともHV機器31の温度範囲として目標となる温度範囲
の上限値よりも低い温度であることが望ましい。
【0046】
図3は、四方弁28を切り換えた状態の冷却装置1を示す模式図である。図1と図3とを比較して、四方弁28が90°回転することにより、圧縮機12出口から四方弁28へ流入した冷媒が四方弁28を出る経路が切り換えられている。図1に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器14へ向かって流れる。一方、図3に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器18へ向かって流れる。
【0047】
暖房運転時には、図3に示すA点、B点、E点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器14とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0048】
図4は、実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図4中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図4中には、圧縮機12から熱交換器18、膨張弁16を経由して冷媒通路24へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,E,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0049】
図4に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器18へと流れる。
【0050】
熱交換器18へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器18において冷却され、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(E点)。熱交換器18は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器18において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器18における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。冷媒は、熱交換器18において周囲へ放熱し冷却される。
【0051】
熱交換器18で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路25を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(D点)。膨張弁16において温度が下げられた冷媒は、冷媒通路24を経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、HV機器31を冷却する。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。HV機器31から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(C点)。
【0052】
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。気化した冷媒は、冷媒通路22を経由して
圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器14から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0053】
暖房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する冷媒蒸気が凝縮することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気へ熱を加える。熱交換器18は、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒を用いて、冷媒ガスが凝縮して冷媒の湿り蒸気となる際の凝縮熱を、車両の室内へ流通する空調用空気へ放出して、車両の室内の暖房を行なう。熱交換器18から熱を受け取ることによって温度が上昇した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の暖房が行なわれる。
【0054】
以上のように、本実施の形態の冷却装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れる方向を切り換える四方弁28を備える。冷房運転中に、熱交換器18において、膨張弁16で絞り膨張された低温低圧の冷媒が空調用空気から熱を吸収して、車室内の冷房を行なう。暖房運転中に、熱交換器18において、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒が空調用空気に熱を放出して、車室内の暖房を行なう。冷却装置1は、一台の熱交換器18を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方の場合に、車両の室内へ流通する空調用空気の温度を適切に調節できる。したがって、空調用空気と熱交換する熱交換器を二台配置する必要がないので、冷却装置1のコストを低減することができ、加えて、冷却装置1を小型化することができる。
【0055】
また冷媒は、冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。熱交換器18において空調用空気と熱交換することで車両の室内の冷暖房を行なうために設けられた蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31の冷却が行なわれる。
【0056】
HV機器31の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。そのため、HV機器31の冷却装置1のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純にできるので、冷却装置1の製造コストを低減することができる。加えて、HV機器31の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、HV機器31の冷却のための消費動力を低減することができる。
【0057】
HV機器31は、膨張弁16を経由して熱交換器14と熱交換器18との間を流通する冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31を冷却することができる。
【0058】
冷房運転時に冷媒は、熱交換器14において過冷却液になるまで冷却され、HV機器31から顕熱を受けて飽和温度をわずかに下回る温度にまで加熱される。その後膨張弁16を通過することで、冷媒は低温低圧の湿り蒸気になる。膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。熱交換器14は、冷媒を十分に冷却できる程度に、その放熱能力が定められている。
【0059】
膨張弁16を通過した後の低温低圧の冷媒をHV機器31の冷却に使用すると、熱交換器18における空調用空気の冷却能力が減少して、車室用の冷房能力が低下する。これに対し、本実施の形態の冷却装置1では、熱交換器14において冷媒を十分な過冷却状態に
まで冷却し、熱交換器14の出口の高圧の冷媒をHV機器31の冷却に使用する。そのため、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、HV機器31を冷却することができる。
【0060】
熱交換器14の仕様(すなわち、熱交換器14のサイズまたは熱交換性能)は、熱交換器14を通過した後の液相冷媒の温度が車室内の冷房のために必要とされる温度よりも低下するように、定められる。熱交換器14の仕様は、HV機器31を冷却しない場合の蒸気圧縮式冷凍サイクルの熱交換器よりも、冷媒がHV機器31から受け取ると想定される熱量分だけ大きい放熱量を有するように、定められる。このような仕様の熱交換器14を備える冷却装置1は、車両の室内の優れた冷房性能を維持しつつ、圧縮機12の動力を増加させることなく、HV機器31を適切に冷却できる。
【0061】
暖房運転時に冷媒は、冷却部30においてHV機器31から吸熱することにより加熱され、熱交換器14において外気から吸熱することによりさらに加熱される。冷却部30と熱交換器14との両方で冷媒を加熱することにより、熱交換器14の出口において冷媒を十分な過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、HV機器31を適切に冷却できる。冷却部30で冷媒が加熱され、HV機器31の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、成績係数が向上し、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
【0062】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態2の冷却装置1は、冷却部30と膨張弁16との間の冷媒の経路の一部を形成する冷媒通路24に、第三熱交換器としての熱交換器15が配置されている点で、実施の形態1と異なっている。熱交換器15が設けられるので、冷媒通路24は、熱交換器15よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路24aと、熱交換器15よりも膨張弁16に近接する側の冷媒通路24bと、に二分割されている。
【0063】
冷房運転時には、図5に示すA点、B点、C点、D点、F点およびE点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0064】
図6は、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図6中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図6中には、圧縮機12から熱交換器14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24aから熱交換器15を経由して冷媒通路24bへ流入し、膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,C,D,FおよびE点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0065】
実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、熱交換器14から膨張弁16へ至る系統を除いて、実施の形態1と同じである。つまり、図2に示すモリエル線図におけるD点からE点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、図6に示すモリエル線図におけるF点からE点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、B点からF点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0066】
圧縮機12によって断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒(B点)は、熱交換器14において冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になる(C点)。
【0067】
熱交換器14から流出した飽和液状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して冷却部30へ流れる。冷却部30において、熱交換器14を通過して凝縮された液冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、HV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気となる(D点)。
【0068】
その後冷媒は、熱交換器15に流入する。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において外気と熱交換することで再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却された過冷却液になる(F点)。その後膨張弁16を通過することで、冷媒は低温低圧の湿り蒸気になる(E点)。
【0069】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器14と熱交換器15との両方によって凝縮される。熱交換器15において十分に冷媒を冷却することにより、膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。そのため、熱交換器18において冷媒が蒸発するときに外部から受け取る熱量を十分に大きくすることができる。このように、冷媒を十分に冷却できる熱交換器15の放熱能力を定めることにより、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、HV機器31を冷却することができる。したがって、HV機器31の冷却能力と、車室用の冷房能力との両方を、確実に確保することができる。
【0070】
実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12と膨張弁16との間に熱交換器14が配置され、冷房運転時には、冷房とHV機器31冷却とに相当する分の熱交換を熱交換器14で行なう必要がある。そのため、熱交換器14において冷媒を飽和液の状態からさらに冷却し、冷媒が所定の過冷却度を有するまで冷却する必要があった。過冷却液の状態の冷媒を冷却すると、冷媒の温度が大気温度に近づき、冷媒の冷却効率が低下するので、熱交換器14の容量を増大させる必要がある。その結果、熱交換器14のサイズが増大し、車載用の冷却装置1として不利になるという問題がある。一方、車両へ搭載するために熱交換器14を小型化すると、熱交換器14の放熱能力も小さくなり、その結果、膨張弁16の出口における冷媒の温度を十分に低くできず、車室用の冷房能力が不足する虞がある。
【0071】
これに対し、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置し、HV機器31の冷却系である冷却部30が熱交換器14と熱交換器15との間に設けられる。熱交換器14では、図6に示すように、冷媒を飽和液の状態にまで冷却すればよい。HV機器31から蒸発潜熱を受け取り一部気化した湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15で再度冷却される。湿り蒸気状態の冷媒を凝縮させ完全に飽和液にするまで、冷媒は一定の温度で状態変化する。熱交換器15はさらに、車両の室内の冷房のために必要な程度の過冷却度にまで、冷媒を冷却する。そのため、実施の形態1と比較して、冷媒の過冷却度を大きくする必要がなく、熱交換器14,15の容量を低減することができる。したがって、熱交換器14,15のサイズを低減することができ、小型化され車載用に有利な冷却装置1を得ることができる。
【0072】
熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒は、HV機器31を冷却するときに、HV機器31から熱を受け取り加熱される。冷却部30において加熱された冷媒が気化すると、
冷媒とHV機器31との熱交換量が減少してHV機器31を効率よく冷却できなくなり、また冷媒が配管内を流れる際の圧力損失が増大する。そのため、HV機器31を冷却した後の冷媒を気化させない程度に、熱交換器14において十分に冷媒を冷却するのが望ましい。
【0073】
具体的には、熱交換器14の出口における冷媒の状態を飽和液に近づけ、典型的には熱交換器14の出口において冷媒が飽和液線上にある状態にする。このように冷媒を十分に冷却できる能力を熱交換器14が有する結果、熱交換器14の冷媒から熱を放出させる放熱能力は、熱交換器15の放熱能力よりも高くなる。放熱能力が相対的に大きい熱交換器14において冷媒を十分に冷却することにより、HV機器31から熱を受け取った冷媒を湿り蒸気の状態に留めることができ、冷媒とHV機器31との熱交換量の減少を回避できるので、HV機器31を十分に効率よく冷却することができる。HV機器31を冷却した後の湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15において効率よく再度冷却され、飽和温度をわずかに下回る程度の過冷却液の状態にまで冷却される。したがって、車室用の冷房能力とHV機器31の冷却能力との両方を確保した、冷却装置1を提供することができる。
【0074】
図7は、四方弁28を切り換えた状態の実施の形態2の冷却装置1を示す模式図である。図5と図7とを比較して、四方弁28が90°回転することにより、圧縮機12出口から四方弁28へ流入した冷媒が四方弁28を出る経路が切り換えられている。図5に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器14へ向かって流れる。一方、図7に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器18へ向かって流れる。
【0075】
暖房運転時には、図7に示すA点、B点、E点、F点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0076】
図8は、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図8中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図8中には、圧縮機12から熱交換器18、膨張弁16、熱交換器15を経由して冷媒通路24aへ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,E,F,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0077】
実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、膨張弁16から熱交換器14へ至る系統を除いて、実施の形態1と同じである。つまり、図4に示すモリエル線図におけるA点からB点、E点を経由してD点へ至る冷媒の状態と、図8に示すモリエル線図におけるA点からB点、E点を経由してF点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、F点からA点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0078】
膨張弁16において温度が下げられた冷媒(F点)は、冷媒通路24bを経由して熱交換器15へ流入する。熱交換器15のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。熱交換器15における外気との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。熱交換器15において潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(
D点)。
【0079】
熱交換器15から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路24aを経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、HV機器31を冷却する。冷却部30において、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気状態の冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。HV機器31から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合がさらに増加する(C点)。
【0080】
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。
【0081】
暖房運転時に冷媒は、熱交換器14,15の両方において外気から吸熱することにより加熱され、冷却部30においてHV機器31から吸熱することによりさらに加熱される。冷却部30と熱交換器14,15との両方で冷媒を加熱することにより、熱交換器14の出口において冷媒を十分な過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、HV機器31を適切に冷却できる。冷却部30で冷媒が加熱され、HV機器31の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
【0082】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態1,2では、冷却部30が熱交換器14と熱交換器15との間に直列に接続されていた。これに対し、実施の形態3の冷却装置1では、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路は、冷却部30を経由しない経路である冷媒通路29を含む。熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路は、第一通路としての冷媒通路29を含む。
【0083】
冷却装置1は、冷媒通路29と並列に配置された第二通路としての、他の冷媒の経路を備える。当該他の冷媒の経路は、冷媒通路23,24a(図5も併せて参照)と、冷却部30の冷却通路32とを含む。冷却部30は、第二通路に設けられている。冷媒通路23,24aを経由して流れる冷媒は、冷却部30を経由して流れ、発熱源としてのHV機器31から熱を奪って、HV機器31を冷却させる。冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14と冷却部30との間を流通し、冷媒通路24aを経由して冷却部30と冷媒通路24aとの間を流通する。熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路が分岐して、冷媒の一部が冷却部30へ流通する。
【0084】
熱交換器14と熱交換器15との間を冷媒が流通する経路として、冷却部30を通過する経路である冷媒通路23,24aおよび冷却通路32と、冷却部30を通過しない経路である冷媒通路29と、が並列に設けられる。そのため、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の一部のみが、冷却部30へ流れる。冷却部30においてHV機器31を冷却するために必要な量の冷媒を冷媒通路23,24aへ流通させ、HV機器31は適切に冷却される。したがって、HV機器31が過冷却されることを防止できる。全ての冷媒が冷却部30に流れないので、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失を低減することができ、それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
【0085】
冷媒通路29は、熱交換器14と熱交換器15との間に設けられている。冷媒通路23
,24aを含むHV機器31の冷却系は、冷媒通路29と並列に接続されている。熱交換器14と熱交換器15との間を冷却部30を経由せずに流れる冷媒の経路と、熱交換器14と熱交換器15との間を冷却部30を経由して流れる冷媒の経路と、を並列に設け、一部の冷媒のみを冷媒通路23,24aへ流通させることで、HV機器31の冷却系に冷媒が流れる際の圧力損失を低減することができる。
【0086】
冷却装置1はさらに、流量調整弁51を備える。流量調整弁51は、冷媒通路29に配置されている。流量調整弁51は、その弁開度を変動させ、冷媒通路29を流れる冷媒の圧力損失を増減させることにより、冷媒通路29を流れる冷媒の流量と、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32を流れる冷媒の流量と、を任意に調節する。
【0087】
たとえば、流量調整弁51を全閉にして弁開度を0%にすると、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の全量が冷媒通路23,24aおよび冷却通路32へ流入する。流量調整弁51の弁開度を大きくすれば、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒のうち、冷媒通路29を経由して流れる流量が大きくなり、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32を経由して流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁51の弁開度を小さくすれば、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒のうち、冷媒通路29を経由して流れる流量が小さくなり、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32を経由して冷却部30へ流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
【0088】
流量調整弁51の弁開度を大きくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなり、HV機器31の冷却能力が低下する。流量調整弁51の弁開度を小さくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなり、HV機器31の冷却能力が向上する。流量調整弁51を使用して、冷却部30に流れる冷媒の量を最適に調節できるので、HV機器31の過冷却を確実に防止することができ、加えて、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失および冷媒を循環させるための圧縮機12の消費電力を、確実に低減することができる。
【0089】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4の冷却装置1の構成を示す模式図である。図11は、四方弁28を切り換えた状態の実施の形態4の冷却装置1を示す模式図である。実施の形態4の冷却装置1は、冷却部30に向けて流通する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器60を備える点で、実施の形態1〜3と異なっている。
【0090】
図10には、冷房運転時の蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れが図示されている。熱交換器14と冷却部30との間を流通する冷媒の経路は、熱交換器14に近接する側の冷媒通路23aと、冷却部30に近接する側の冷媒通路23bと、を含む。冷房運転時に、気液分離器60は、熱交換器14から流出して冷媒通路23aを流通する冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離する。
【0091】
熱交換器14の出口側において冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器14から流出した冷媒は、冷媒通路23aを通って気液分離器60へ供給される。冷媒通路23aから気液分離器60へ流入する気液二相状態の冷媒は、気液分離器60の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器60は、熱交換器14によって凝縮された冷媒を液体状の冷媒液62とガス状の冷媒蒸気61とに分離して、一時的に蓄える。
【0092】
分離された冷媒液62は、冷媒通路23bを経由して、気液分離器60の外部へ流出する。気液分離器60内の液相中に配置された冷媒通路23bの端部は、液相冷媒の気液分
離器60からの流出口を形成する。気液分離器60の内部では、冷媒液62が下側、冷媒蒸気61が上側に溜まる。気液分離器60から冷媒液62を導出する冷媒通路23bの端部は、気液分離器60の底部の近傍に配置されている。冷媒通路23bの端部は、冷媒液62中に浸漬されており、冷媒通路23bを経由して気液分離器60の底側から冷媒液62のみが気液分離器60の外部へ送り出される。これにより、気液分離器60は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
【0093】
図11には、暖房運転時の蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れが図示されている。熱交換器15と冷却部30との間を流通する冷媒の経路は、熱交換器15に近接する側の冷媒通路24a1と、冷却部30に近接する側の冷媒通路24a2と、を含む。暖房運転時に、気液分離器60は、熱交換器15から流出して冷媒通路24a1を流通する冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離する。
【0094】
熱交換器15の出口側において冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器15から流出した冷媒は、冷媒通路24a1を通って気液分離器60へ供給される。冷媒通路24a1から気液分離器60へ流入する気液二相状態の冷媒は、気液分離器60の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器60は、熱交換器15によって凝縮された冷媒を液体状の冷媒液62とガス状の冷媒蒸気61とに分離して、一時的に蓄える。
【0095】
分離された冷媒液62は、冷媒通路24a2を経由して、気液分離器60の外部へ流出する。気液分離器60内の液相中に配置された冷媒通路24a2の端部は、液相冷媒の気液分離器60からの流出口を形成する。気液分離器60の内部では、冷媒液62が下側、冷媒蒸気61が上側に溜まる。気液分離器60から冷媒液62を導出する冷媒通路24a2の端部は、気液分離器60の底部の近傍に配置されている。冷媒通路24a2の端部は、冷媒液62中に浸漬されており、冷媒通路24a2を経由して気液分離器60の底側から冷媒液62のみが気液分離器60の外部へ送り出される。これにより、気液分離器60は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
【0096】
冷却装置1は、一台の気液分離器60を備える。この一台の気液分離器60を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方において、気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液のみが冷却部30に供給されてHV機器31を冷却する。この液相冷媒は、過不足の全くない真に飽和液状態の冷媒である。そのため、気液分離器60から液相の冷媒のみを取り出し冷却部30へ流すことにより、気液分離器60の上流側に配置された熱交換器14,15の能力を最大限に活用してHV機器31を冷却することができるので、HV機器31の冷却能力を向上させた冷却装置1を提供することができる。
【0097】
気液分離器60の出口で飽和液の状態にある冷媒をHV機器31を冷却する冷却通路32に導入することにより、冷却通路32を含むHV機器31の冷却系である上述した第二通路を流れる冷媒のうち、気相状態の冷媒を最小限に抑えることができる。そのため、第二通路を流れる冷媒蒸気の流速が早くなり圧力損失が増大することを抑制でき、冷媒を流通させるための圧縮機12の消費電力を低減できるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の性能の悪化を回避することができる。
【0098】
気液分離器60の内部には、飽和液状態の冷媒液62が貯留されている。気液分離器60は、その内部に冷媒液62を一時的に溜める蓄液器として機能する。気液分離器60内に所定量の冷媒液62が溜められることにより、冷房運転と暖房運転との切り換え時にも気液分離器60から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器60が液だめ機能を有することにより、冷暖房切換の際に熱交換器14,15から気液分離器60へ
流れる冷媒の流量が一時的に低下する冷媒流量の変動を吸収できる。したがって、冷暖房の切り換え時に冷却部30への冷媒供給量が不足することを回避でき、HV機器31の冷却性能を安定させることができる。
【0099】
気液分離器60が冷房運転時と暖房運転時との両方において冷媒の気液分離を行なうことを可能にするために、冷却装置1は、切換弁70を備える。切換弁70は、四方弁28による冷媒の流れの切り換えに対応して、熱交換器14と熱交換器15とのいずれか一方から気液分離器60への冷媒の流れを切り換える。
【0100】
切換弁70の例について説明する。図12は、第一の例の切換弁70が第一の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。図13は、第一の例の切換弁70が第二の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。図12および図13に示す第一の例では、気液分離器60の天井側には、蓋部材63が取付けられている。蓋部材63は、気液分離器60の上側を覆うように配置される。蓋部材63には、蓋部材63を厚み方向に貫通する四つの貫通孔64〜67が形成されている。貫通孔64〜67は、気液分離器60の内部と外部とを連通する。気液分離器60の内部には二本の直立管が設けられており、当該直立管の一端部は冷媒液62中に浸漬され、直立管の他端部は貫通孔65,67にそれぞれ連結されている。
【0101】
蓋部材63の上面に、切換弁70が取付けられる。切換弁70は、中実の弁本体を有する。切換弁70には、弁本体の表面の一の部位から他の部位まで弁本体を貫通する、三つの貫通孔71〜73が形成されている。図12,13に示すように、弁本体は、円柱状の外形を有する。貫通孔71は、弁本体の側面の一の部位に形成された開口部71aから側面の他の部位に形成された開口部71bまで延びる。貫通孔71は、直線状に形成されている。貫通孔72は、弁本体の側面に形成された開口部72aから弁本体の下面に形成された開口部72bまで延びる。貫通孔72は、略L字状に形成されている。貫通孔73は、弁本体の側面に形成された開口部73aから弁本体の仮面に形成された開口部73bまで延びる。貫通孔73は、略L字状に形成されている。
【0102】
図12に示す、切換弁70が第一の設定位置にある状態では、蓋部材63の上面に切換弁70が取り付けられると、貫通孔72,73が弁本体の下面側に開口する開口部72b,73bは、それぞれ、蓋部材63側の貫通孔64,65と位置を合わせられる。蓋部材63の貫通孔66,67は、切換弁70の弁本体の下面により閉塞される。そのため、貫通孔64,72を介して気液分離器60の内部と外部とが連通され、また貫通孔65,73を介して気液分離器60の内部と外部とが連通された状態となる。このとき、貫通孔72の開口部72aが冷媒通路23aと位置を合わせられ、貫通孔73の開口部73aが冷媒通路23bと位置を合わせられる。
【0103】
その結果、冷房運転時に熱交換器14から流出し冷媒通路23aを流通する冷媒は、貫通孔72,64を順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が貫通孔65,73を順に経由して気液分離器60から流出し、冷媒通路23bを経由して冷却部30へ流通する。したがって、冷房運転時には、切換弁70を図12に示す第一の設定位置に合わせることで、気液分離器60で気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0104】
また、切換弁70が第一の設定位置にある状態で、貫通孔71の開口部71a,71bは、冷却部30から熱交換器15へ向かって流通する冷媒の経路である冷媒通路24aと位置を合わせられる。そのため冷房運転時には、冷却部30においてHV機器31と熱交
換した後の、冷媒通路24aを流れる冷媒は、貫通孔71を経由して流れ、気液分離器60には供給されない。
【0105】
図13に示す、切換弁70が第二の設定位置にある状態では、蓋部材63の上面に切換弁70が取り付けられると、貫通孔72,73が弁本体の下面側に開口する開口部72b,73bは、それぞれ、蓋部材63側の貫通孔67,66と位置を合わせられる。蓋部材63の貫通孔64,65は、切換弁70の弁本体の下面により閉塞される。そのため、貫通孔67,72を介して気液分離器60の内部と外部とが連通され、また貫通孔66,73を介して気液分離器60の内部と外部とが連通された状態となる。このとき、貫通孔72の開口部72aが冷媒通路24a2と位置を合わせられ、貫通孔73の開口部73aが冷媒通路24a1と位置を合わせられる。
【0106】
その結果、暖房運転時に熱交換器15から流出し冷媒通路24a1を流通する冷媒は、貫通孔73,66を順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が貫通孔67,72を順に経由して気液分離器60から流出し、冷媒通路24a2を経由して冷却部30へ流通する。したがって、暖房運転時には、切換弁70を図13に示す第二の設定位置に合わせることで、気液分離器60で気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0107】
また、切換弁70が第二の設定位置にある状態で、貫通孔71の開口部71a,71bは、冷却部30から熱交換器14へ向かって流通する冷媒の経路である冷媒通路23と位置を合わせられる。そのため暖房運転時には、冷却部30においてHV機器31と熱交換した後の、冷媒通路23を流れる冷媒は、貫通孔71を経由して流れ、気液分離器60には供給されない。
【0108】
図12に示す第一の設定位置と、図13に示す第二の設定位置との間を、切換弁70は回転移動可能に形成されている。切換弁70を180°回転させることにより、第一の設定位置と第二の設定位置との一方から他方へと、切換弁70の配置を変えることができる。
【0109】
図14は、第二の例の切換弁70が第一の設定位置にある状態を示す斜視図である。図15は、第二の例の切換弁70が第二の設定位置にある状態を示す斜視図である。第二の例の切換弁70は中実円柱状の外形を有し、円柱の端面の一方から他方へ切換弁70を貫通する四つの貫通孔74〜77が形成されている。図14に示すように、貫通孔74,75は、切換弁70の厚み方向(図中左右方向)に沿って直線的に延びている。一方図15に示す貫通孔76,77は、切換弁70の厚み方向(図中左右方向)に対してねじれている。
【0110】
切換弁70には、熱交換器14と冷却部30との間の冷媒の経路である冷媒通路23が連結される配管78a,78cと、切換弁70から気液分離器60へ流通する冷媒の経路である配管78bと、冷却部30と熱交換器15との間の冷媒の経路である冷媒通路24aが連結される配管79a,79bと、が設けられている。冷媒は、配管78a,79aのいずれかを経由して切換弁70へ流通し、配管78bから気液分離器60の内部へ導入され、気液分離器60内で気液分離された冷媒液62が配管78cを経由して冷却部30へ流通する。冷却部30においてHV機器31と熱交換した冷媒は、配管79bを経由して切換弁70へ再度流通し、配管79a,78aのいずれかへ流れる。
【0111】
図14に示す、切換弁70が第一の設定位置にある状態では、貫通孔74によって配管
79a,79bが連通され、貫通孔75によって配管78a,78bが連通される。その結果、冷房運転時に熱交換器14から流出し冷媒通路23aを流通する冷媒は、配管78a,貫通孔75および配管78bを順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が気液分離器60から流出し、配管78cを経由して冷却部30へ流通する。冷却部30でHV機器31を冷却した後の冷媒は、配管79b、貫通孔74および配管79aを順に経由して、冷媒通路24aへ流通する。冷房運転時には、切換弁70を図14に示す第一の設定位置に合わせることで、気液分離器60で分離された冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0112】
図15に示す、切換弁70が第二の設定位置にある状態では、貫通孔76によって配管79a,78bが連通され、貫通孔77によって配管78a,79bが連通される。その結果、暖房運転時に熱交換器15から流出し冷媒通路24a1を流通する冷媒は、配管79a,貫通孔76および配管78bを順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が気液分離器60から流出し、配管78cを経由して冷却部30へ流通する。冷却部30でHV機器31を冷却した後の冷媒は、配管79b、貫通孔77および配管78aを順に経由して、冷媒通路23へ流通する。暖房運転時には、切換弁70を図15に示す第二の設定位置に合わせることで、気液二相状態にある冷媒を気液分離器60で気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0113】
図14に示す第一の設定位置と、図15に示す第二の設定位置との間を、切換弁70は回転移動可能に形成されている。切換弁70を90°回転させることにより、第一の設定位置と第二の設定位置との一方から他方へと、切換弁70の配置を変えることができる。
【0114】
(実施の形態5)
図16は、実施の形態5の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態5の冷却装置1は、エンジン80と、エンジン80との間で熱の受け渡しを行なうヒータコア82と、ヒータコア82へ流れる空調用空気の流量を調節するダンパ85とを備える点で、実施の形態1〜4と異なっている。
【0115】
空調用空気が流通するダクト40内には、熱交換器18に加えて、ヒータコア82が配設されている。ヒータコア82は、熱交換器18に対して空調用空気の流れの下流側に配置されている。ダクト40の外部に、エンジン80が配置されている。循環経路81,83は、エンジン80とヒータコア82との間に配置され、エンジン80とヒータコア82との間で冷却水などの液冷媒を循環させる。
【0116】
ヒータコア82に対して空調用空気の流れの上流側には、ヒータコア82を通過する空調用空気の流量を調節する流量調整部の一例としての、ダンパ85が設けられている。ダンパ85は、ヒータコア82へ流通する空調用空気の流路を開閉する。アクチュエータ86は、ダンパ85を駆動する。ダンパ85は、アクチュエータ86によって一端が支持され、当該一端を中心として両方向に揺動する。ダンパ85の開閉に応じて、空調用空気がヒータコア82を経由して流通する場合と、空調用空気がヒータコア82をバイパスして流通する場合と、が切り換えられて、ダクト出口42での空調用空気の温度が調節される。
【0117】
図17は、ダンパ85を移動した状態の実施の形態5の冷却装置1を示す模式図である。図16と図17とを比較して、図16に示す状態では、ヒータコア82へ流れる冷却用空気の流れをダンパ85が遮蔽している。そのため、矢印47に示すように、空調用空気
はヒータコア82を通過せずにダクト40内を流通する。図17に示す状態では、ダンパ85は冷却用空気の流れをヒータコア82へ導く。そのため、矢印47に示すように、空調用空気はヒータコア82を通過してダクト40内を流通する。
【0118】
エンジン80の運転中の、エンジン80の温度がヒータコア82の温度よりも高いとき、エンジン80で発生する熱は、循環経路81,83を経由してヒータコア82に伝達され、ヒータコア82で放熱される。これにより、エンジン80は冷却される。エンジン80が停止中に、ヒータコア82の温度を高めることにより、ヒータコア82から循環経路81,83を経由してエンジン80に熱が伝達され、エンジン80の暖気を行なうことができる。
【0119】
図16に示す冷房運転中は、ダクト40から流出する空調用空気の温度を低く保つことが必要とされる。そのため、ダンパ85を操作して、空調用空気がヒータコア82を通過しないように、ダクト40内の空調用空気の経路を設定する。このようにすれば、ヒータコア82が空調用空気を加熱することを抑制できるので、車両の室内を効率的に冷却することができ、冷房能力を確保することができる。
【0120】
図17に示す暖房運転中は、ダクト40から流出する空調用空気の温度を高くすることが必要とされる。そのため、ダンパ85を操作して、空調用空気がヒータコア82を通過するように、ダクト40内の空調用空気の経路を設定する。このようにすれば、エンジン80の廃熱を暖房に利用でき、車両の室内を効率的に暖めることができるので、暖房能力を向上することができる。
【0121】
また、エンジン80の始動前または始動直後にエンジン80の暖気が必要とされる場合にも、図17に示す位置にダンパ85を配置する。これにより、熱交換器18で加熱された空調用空気がヒータコア82を通過するように、ダクト40内の空調用空気の経路が設定される。このようにすれば、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31の廃熱によりヒータコア82の温度を高めることができる。したがって、ヒータコア82からエンジン80に熱を伝達させて、エンジン80の暖気を早期に行なうことができる。
【0122】
上述した実施の形態5では、ヒータコア82を通過する空調用空気の流量を調節するために、ダクト40内にダンパ85が配置される例について説明した。ヒータコア82への空調用空気の流量を調整できる機能を有するのであれば、流量調整部はダンパ85に限られるものではない。たとえば、ロールスクリーン状の流量調整部をダクト40内に設置し、スクリーンの巻取り量を変化させることにより、ダクト40内の空調用空気の流れを制御してもよい。
【0123】
(実施の形態6)
図18は、実施の形態6の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態6の冷却装置1は、第四熱交換器としての熱交換器19をさらに備える点で、実施の形態1〜5と異なっている。熱交換器19は、ダクト40内の、熱交換器18に対し空調用空気の下流側に配置され、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を流通する冷媒とダクト40内を流通する空調用空気と、の間で熱交換を行なう。
【0124】
図19は、実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図19中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図19中には、圧縮機12から熱交換器19,14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24aから熱交換器15を経由して冷媒通路24bへ流入し、膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る
、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,G,C,D,FおよびE点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0125】
実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12から熱交換器14へ至る系統を除いて、実施の形態2と同じである。つまり、図6に示すモリエル線図におけるC点からD点、F点、E点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、図19に示すモリエル線図におけるC点からD点、F点、E点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、B点からC点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0126】
圧縮機12によって断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒(B点)は、熱交換器19において冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になる(G点)。冷媒はさらに、熱交換器14において冷却される。冷媒は、乾き飽和蒸気の状態から等圧のまま凝縮潜熱を放出し、徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になる(C点)。
【0127】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器19と熱交換器14との両方によって凝縮され、飽和液の状態になる。そのため、熱交換器14の放熱能力を低減することが可能となり、熱交換器14を小型化することができる。
【0128】
ダクト40内を流通する空調用空気は、熱交換器18において冷媒に熱を放出することで冷却される。その後空調用空気は、熱交換器19において冷媒から熱を受け取り加熱される。熱交換器19での加熱により、熱交換器18で冷却された後の空調用空気の飽和水蒸気圧が調整される。そのため、空調用空気の湿度を低下させ、乾燥した空調用空気を車両の室内に導入することができるので、冷房運転に加えて、除湿運転が可能になる。
【0129】
図20は、四方弁28を切り換えた状態の実施の形態6の冷却装置1を示す模式図である。図18と図20とを比較して、四方弁28が90°回転することにより、圧縮機12出口から熱交換器19を経由して四方弁28へ流入した冷媒が四方弁28を出る経路が切り換えられている。図18に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器19を経由して熱交換器14へ向かって流れる。一方、図20に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器19を経由して熱交換器18へ向かって流れる。
【0130】
暖房運転時には、図20に示すA点、B点、G点、E点、F点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器19,18と膨張弁16と熱交換器15,14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器19,18と膨張弁16と熱交換器15,14とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0131】
図21は、実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図21中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図21中には、圧縮機12から熱交換器19、熱交換器18、膨張弁16、熱交換器15を経由して冷媒通路24aへ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,G,E,F,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0132】
実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12から熱交換器14へ至る系統を除いて、実施の形態2と同じである。つまり、図8に示すモリエル線図におけるE点からF点、D点、C点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、図21に示すモリエル線図におけるE点からF点、D点、C点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、B点からE点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0133】
圧縮機12によって断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒(B点)は、熱交換器19において冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になる(G点)。冷媒はさらに、熱交換器18において冷却される。冷媒は、乾き飽和蒸気の状態から等圧のまま凝縮潜熱を放出し、徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(E点)。
【0134】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器19と熱交換器18との両方によって凝縮され、過冷却液の状態になる。そのため、熱交換器18の放熱能力を低減することが可能となり、熱交換器18を小型化することができる。
【0135】
ダクト40内を流通する空調用空気は、熱交換器18において冷媒から吸熱することで加熱される。その後空調用空気は、熱交換器19においてさらに冷媒から吸熱して加熱される。熱交換器18で冷却された後の空調用空気を、熱交換器19でさらに加熱することにより、空調用空気の温度を高めることができる。そのため、より温度の高い空調用空気を車両の室内に送ることができるので、暖房能力をより向上させることができる。
【0136】
実施の形態6で説明した熱交換器19は、ダクト40内の断面の一部を占めるように配置されてもよく、このとき、熱交換器19に対し空調用空気の流れの上流側に実施の形態5に示すダンパ85を設置してもよい。このようにすれば、ダンパ85を揺動させることにより、熱交換器19を経由して流れる空調用空気の流量を任意に調節できるので、最適な除湿運転を行なうことが可能になる。
【0137】
なお、実施の形態1〜6においては、HV機器31を例として車両に搭載された電気機器を冷却する冷却装置1について説明した。電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、インバータ、モータジェネレータなどの例示された電気機器に限定されるものではなく、任意の電気機器であってもよい。冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
【0138】
さらに、本発明の冷却装置1により冷却される発熱源は、車両に搭載された電気機器に限られず、熱を発生する任意の機器、または任意の機器の発熱する一部分であってもよい。
【0139】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の冷却装置は、モータジェネレータおよびインバータなどの電気機器を搭載するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの車両における、車内の冷房を行なうための蒸気圧縮式冷凍サイクルを使用した電気機器の冷却に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0141】
1 冷却装置、10 蒸気圧縮式冷凍サイクル、12 圧縮機、14,15,18,19 熱交換器、16 膨張弁、21,22,23,23a,23b,24,24a,24a1,24a2,24b,25,26,27,29 冷媒通路、28 四方弁、30 冷却部、31 HV機器、32 冷却通路、40 ダクト、41 ダクト入口、42 ダクト出口、43 ファン、45,46,47 矢印、51 流量調整弁、60 気液分離器、63 蓋部材、64〜67,71〜77 貫通孔、70 切換弁、71a,71b,72a,72b,73a,73b 開口部、78a〜c,79a〜b 配管、80 エンジン、82 ヒータコア、85 ダンパ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して発熱源を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置に関し、たとえば特開平5−96940号公報(特許文献1)には、車室内空気熱交換器を備え、四方切換え弁によって暖房モード運転および冷房モード運転が可能な、空気調和装置が開示されている。
【0003】
近年、環境問題対策の一つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。このような車両において、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータおよびバッテリなどの電気機器は、電力の授受によって発熱する。そのため、これらの電気機器を冷却する必要がある。そこで、車両用空調装置として使用される蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、発熱体を冷却する技術が提案されている。
【0004】
たとえば特開2007−69733号公報(特許文献2)には、膨張弁から圧縮機へ至る冷媒通路に、空調用の空気と熱交換する熱交換器と、発熱体と熱交換する熱交換器と、を並列に配置し、空調装置用の冷媒を利用して発熱体を冷却するシステムが開示されている。特開2001−309506号公報(特許文献3)には、車両走行モータを駆動制御するインバータ回路部の冷却部材に車両空調用冷凍サイクル装置の冷媒を還流させ、空調空気流の冷却が不要な場合に車両空調用冷凍サイクル装置のエバポレータによる空調空気流の冷却を抑止する、冷却システムが開示されている。
【0005】
特開2000−198347号公報(特許文献4)には、モータからの排熱を冷却水で回収し、冷却水から冷媒に熱を移動させることで暖房能力を向上させる、ヒートポンプ式空気調和装置が開示されている。特開2005−90862号公報(特許文献5)には、空調用の冷凍サイクルの減圧器、蒸発器および圧縮機をバイパスするバイパス通路に、発熱体を冷却するための発熱体冷却手段を設けた、冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−96940号公報
【特許文献2】特開2007−69733号公報
【特許文献3】特開2001−309506号公報
【特許文献4】特開2000−198347号公報
【特許文献5】特開2005−90862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている冷却装置は、冷房運転時に使用される冷却用室内熱交換器と、暖房運転時に使用される加熱用室内熱交換器と、の両方を備える。冷却装置が二台の室内熱交換器を備えるので、冷却装置のコストが増大し、装置が大型化する問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、装置のコスト低減と小型化とを達成できる、発熱源の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却装置は、発熱源を冷却する冷却装置であって、冷媒を循環させるための圧縮機と、冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する第二熱交換器と、減圧器を経由して第一熱交換器と第二熱交換器との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いて発熱源を冷却する冷却部と、圧縮機から第一熱交換器へ向かう冷媒の流れと、圧縮機から第二熱交換器へ向かう冷媒の流れと、を切り換える四方弁と、を備える。
【0010】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部は、第一熱交換器と減圧器との間に設けられる。
【0011】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部と減圧器との間に設けられ、冷媒と外気との間で熱交換する第三熱交換器を備える。好ましくは、第一熱交換器は、冷媒から熱を放出させる放熱能力が第三熱交換器よりも高い。
【0012】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部に向けて流通する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器と、四方弁による冷媒の流れの切り換えに対応して、第一熱交換器と第三熱交換器とのいずれか一方から気液分離器への冷媒の流れを切り換える切換弁と、を備える。
【0013】
上記冷却装置において好ましくは、冷却部は、第一熱交換器と第二熱交換器との間に直列に接続されている。
【0014】
上記冷却装置において好ましくは、第一熱交換器と第二熱交換器との間に並列に配置された第一通路および第二通路を備え、冷却部は、第二通路に設けられる。好ましくは、第一通路に配置され、第一通路を流れる冷媒の流量と第二通路を流れる冷媒の流量とを調節する、流量調整弁を備える。
【0015】
上記冷却装置において好ましくは、エンジンと、エンジンとの間で熱の受け渡しを行なうヒータコアと、を備え、ヒータコアは、第二熱交換器に対し空調用空気の下流側に配置されている。好ましくは、ヒータコアへ流れる空調用空気の流量を調節する流量調整部を備える。
【0016】
上記冷却装置において好ましくは、第二熱交換器に対し空調用空気の下流側に配置され、冷媒と空調用空気との間で熱交換する、第四熱交換器を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷却装置によると、装置のコスト低減と小型化とを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図3】四方弁を切り換えた状態の冷却装置を示す模式図である。
【図4】実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図5】実施の形態2の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図7】四方弁を切り換えた状態の実施の形態2の冷却装置を示す模式図である。
【図8】実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図9】実施の形態3の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図10】実施の形態4の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図11】四方弁を切り換えた状態の実施の形態4の冷却装置を示す模式図である。
【図12】第一の例の切換弁が第一の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。
【図13】第一の例の切換弁が第二の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。
【図14】第二の例の切換弁が第一の設定位置にある状態を示す斜視図である。
【図15】第二の例の切換弁が第二の設定位置にある状態を示す斜視図である。
【図16】実施の形態5の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図17】ダンパを移動した状態の実施の形態5の冷却装置を示す模式図である。
【図18】実施の形態6の冷却装置の構成を示す模式図である。
【図19】実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図20】四方弁を切り換えた状態の実施の形態6の冷却装置を示す模式図である。
【図21】実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の冷却装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、冷却装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備える。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、たとえば、車両の車内の冷暖房を行なうために、車両に搭載される。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた暖房は、たとえば、暖房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも低い場合に行なわれる。
【0021】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第一熱交換器としての熱交換器14と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第二熱交換器としての熱交換器18と、を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、四方弁28を含む。四方弁28は、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと、圧縮機12から熱交換器18へ向かう冷媒の流れと、を切り換え可能に配置されている。
【0022】
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に流通する気相冷媒を吸入圧縮して、高温高圧の気相冷媒を吐出する。圧縮機12は、冷媒を吐出することで、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
【0023】
熱交換器14,18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器14,18の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器14,18は、車両の走行によって発生する自然の通風によって供給された空気流れ、またはファンによって供給された空気流れと、冷媒と、の間で熱交換を行なう。
【0024】
膨張弁16は、高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温
・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
【0025】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、冷媒通路21〜27を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器14、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜27によって連結されて構成される。
【0026】
冷媒通路21は、圧縮機12と四方弁28とを連通する。冷媒は、冷媒通路21を経由して、圧縮機12から四方弁28へ向かって流通する。冷媒通路22は、四方弁28と熱交換器14とを連通する。冷媒は、冷媒通路22を経由して、四方弁28と熱交換器14との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路23は、熱交換器14と後述する冷却部30とを連通する。冷媒は、冷媒通路23を経由して、熱交換器14と冷却部30との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路24は、冷却部30と膨張弁16とを連通する。冷媒は、冷媒通路24を経由して、冷却部30と膨張弁16との一方から他方へ向かって流通する。
【0027】
冷媒通路25は、膨張弁16と熱交換器18とを連通する。冷媒は、冷媒通路25を経由して、膨張弁16と熱交換器18との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路26は、熱交換器18と四方弁28とを連通する。冷媒は、冷媒通路26を経由して、熱交換器18と四方弁28との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路27は、四方弁28と圧縮機12とを連通する。冷媒は、冷媒通路27を経由して、四方弁28から圧縮機12へ向かって流通する。
【0028】
なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニアまたは水などを用いることができる。
【0029】
熱交換器14と膨張弁16との間を流通する冷媒の経路上には、冷却部30が設けられている。冷却部30が設けられるので、熱交換器14と膨張弁16との間の冷媒の経路は、冷却部30よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路23と、冷却部30よりも膨張弁16に近接する側の冷媒通路24と、に二分割されている。冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるHV(Hybrid Vehicle)機器31と、冷媒が流通する配管である冷却通路32とを含む。HV機器31は、発熱源の一例である。冷却通路32の一方の端部は、冷媒通路23に接続される。冷却通路32の他方の端部は、冷媒通路24に接続される。
【0030】
熱交換器14と膨張弁16との間を流通する冷媒は、冷却通路32を経由して流れる。冷媒は、冷却通路32内を流通するとき、HV機器31から熱を奪って、HV機器31を冷却させる。冷却部30は、冷却通路32によってHV機器31と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部30は、たとえば、HV機器31の筐体に冷却通路32の外周面が直接接触するように形成された冷却通路32を有する。冷却通路32は、HV機器31の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路32を流通する冷媒と、HV機器31との間で、熱交換が可能となる。
【0031】
HV機器31は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の熱交換器14から膨張弁16に至る冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31を冷却す
ることができる。
【0032】
代替的には、冷却部30は、HV機器31と冷却通路32との間に介在して配置された任意の公知のヒートパイプを備えてもよい。この場合HV機器31は、冷却通路32の外周面にヒートパイプを介して接続され、HV機器31から冷却通路32へヒートパイプを経由して熱伝達することにより、冷却される。HV機器31をヒートパイプの加熱部とし冷却通路32をヒートパイプの冷却部とすることで、冷却通路32とHV機器31との間の熱伝達効率が高められるので、HV機器31の冷却効率を向上できる。たとえばウィック式のヒートパイプを使用することができる。
【0033】
ヒートパイプによってHV機器31から冷却通路32へ確実に熱伝達することができるので、HV機器31と冷却通路32との間に距離があってもよく、HV機器31に冷却通路32を接触させるために冷却通路32を複雑に配置する必要がない。その結果、HV機器31の配置の自由度を向上することができる。
【0034】
HV機器31は、電力の授受によって発熱する電気機器を含む。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
【0035】
熱交換器18は、空気が流通するダクト40の内部に配置されている。熱交換器18は、冷媒とダクト40内を流通する空調用空気との間で熱交換して、空調用空気の温度を調節する。ダクト40は、ダクト40に空調用空気が流入する入口であるダクト入口41と、ダクト40から空調用空気が流出する出口であるダクト出口42と、を有する。ダクト40の内部の、ダクト入口41の近傍には、ファン43が配置されている。
【0036】
ファン43が駆動することにより、ダクト40内に空気が流通する。ファン43が稼働すると、ダクト入口41を経由してダクト40の内部へ空調用空気が流入する。ダクト40へ流入する空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。図1,3中の矢印45は、熱交換器18を経由して流通し、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒と熱交換する空調用空気の流れを示す。冷房運転時には、熱交換器18において空調用空気が冷却され、冷媒は空調用空気からの熱伝達を受けて加熱される。暖房運転時には、熱交換器18において空調用空気が加熱され、冷媒は空調用空気へ熱伝達することにより冷却される。矢印46は、熱交換器18で温度調節され、ダクト出口42を経由してダクト40から流出する、空調用空気の流れを示す。
【0037】
冷房運転時には、図1に示すA点、B点、C点、D点およびE点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器14と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0038】
図2は、実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図2中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図2中には、圧縮機12から熱交換器14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24から膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,C,D
およびE点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0039】
図2に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器14へと流れる。
【0040】
熱交換器14へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器14において外気と熱交換して冷却される。冷媒は、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(C点)。熱交換器14は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器14において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0041】
熱交換器14で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路23を経由して冷却部30へ流れ、HV機器31を冷却する。HV機器31との熱交換により、冷媒の過冷却度が小さくなる。つまり、過冷却液の状態の冷媒の温度が上昇し、液冷媒の飽和温度に近づく(D点)。その後冷媒は、冷媒通路24を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(E点)。
【0042】
膨張弁16から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路25を経由して熱交換器18へ流入する。熱交換器18のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して車両の室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって、等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。冷媒は、熱交換器18において周囲から吸熱し加熱される。気化した冷媒は、冷媒通路24を経由して圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器18から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0043】
なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
【0044】
冷房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気の熱を吸収する。熱交換器18は、膨張弁16によって減圧された冷媒を用いて、冷媒の湿り蒸気が蒸発して冷媒ガスとなる際の気化熱を、車両の室内へ流通する空調用空気から吸収して、車両の室内の冷房を行なう。熱が熱交換器18に吸収されることによって温度が低下した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の冷房が行なわれる。
【0045】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、熱交換器18において気化熱を車両の室内の空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。加えて、熱交換器14から出た高圧の液冷媒が冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。なお、HV機器31を冷却するために必要とされる温度は、少なくともHV機器31の温度範囲として目標となる温度範囲
の上限値よりも低い温度であることが望ましい。
【0046】
図3は、四方弁28を切り換えた状態の冷却装置1を示す模式図である。図1と図3とを比較して、四方弁28が90°回転することにより、圧縮機12出口から四方弁28へ流入した冷媒が四方弁28を出る経路が切り換えられている。図1に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器14へ向かって流れる。一方、図3に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器18へ向かって流れる。
【0047】
暖房運転時には、図3に示すA点、B点、E点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器14とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0048】
図4は、実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図4中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図4中には、圧縮機12から熱交換器18、膨張弁16を経由して冷媒通路24へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,E,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0049】
図4に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器18へと流れる。
【0050】
熱交換器18へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器18において冷却され、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(E点)。熱交換器18は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器18において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器18における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。冷媒は、熱交換器18において周囲へ放熱し冷却される。
【0051】
熱交換器18で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路25を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(D点)。膨張弁16において温度が下げられた冷媒は、冷媒通路24を経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、HV機器31を冷却する。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。HV機器31から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(C点)。
【0052】
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。気化した冷媒は、冷媒通路22を経由して
圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器14から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0053】
暖房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する冷媒蒸気が凝縮することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気へ熱を加える。熱交換器18は、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒を用いて、冷媒ガスが凝縮して冷媒の湿り蒸気となる際の凝縮熱を、車両の室内へ流通する空調用空気へ放出して、車両の室内の暖房を行なう。熱交換器18から熱を受け取ることによって温度が上昇した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の暖房が行なわれる。
【0054】
以上のように、本実施の形態の冷却装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れる方向を切り換える四方弁28を備える。冷房運転中に、熱交換器18において、膨張弁16で絞り膨張された低温低圧の冷媒が空調用空気から熱を吸収して、車室内の冷房を行なう。暖房運転中に、熱交換器18において、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒が空調用空気に熱を放出して、車室内の暖房を行なう。冷却装置1は、一台の熱交換器18を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方の場合に、車両の室内へ流通する空調用空気の温度を適切に調節できる。したがって、空調用空気と熱交換する熱交換器を二台配置する必要がないので、冷却装置1のコストを低減することができ、加えて、冷却装置1を小型化することができる。
【0055】
また冷媒は、冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。熱交換器18において空調用空気と熱交換することで車両の室内の冷暖房を行なうために設けられた蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31の冷却が行なわれる。
【0056】
HV機器31の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。そのため、HV機器31の冷却装置1のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純にできるので、冷却装置1の製造コストを低減することができる。加えて、HV機器31の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、HV機器31の冷却のための消費動力を低減することができる。
【0057】
HV機器31は、膨張弁16を経由して熱交換器14と熱交換器18との間を流通する冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31を冷却することができる。
【0058】
冷房運転時に冷媒は、熱交換器14において過冷却液になるまで冷却され、HV機器31から顕熱を受けて飽和温度をわずかに下回る温度にまで加熱される。その後膨張弁16を通過することで、冷媒は低温低圧の湿り蒸気になる。膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。熱交換器14は、冷媒を十分に冷却できる程度に、その放熱能力が定められている。
【0059】
膨張弁16を通過した後の低温低圧の冷媒をHV機器31の冷却に使用すると、熱交換器18における空調用空気の冷却能力が減少して、車室用の冷房能力が低下する。これに対し、本実施の形態の冷却装置1では、熱交換器14において冷媒を十分な過冷却状態に
まで冷却し、熱交換器14の出口の高圧の冷媒をHV機器31の冷却に使用する。そのため、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、HV機器31を冷却することができる。
【0060】
熱交換器14の仕様(すなわち、熱交換器14のサイズまたは熱交換性能)は、熱交換器14を通過した後の液相冷媒の温度が車室内の冷房のために必要とされる温度よりも低下するように、定められる。熱交換器14の仕様は、HV機器31を冷却しない場合の蒸気圧縮式冷凍サイクルの熱交換器よりも、冷媒がHV機器31から受け取ると想定される熱量分だけ大きい放熱量を有するように、定められる。このような仕様の熱交換器14を備える冷却装置1は、車両の室内の優れた冷房性能を維持しつつ、圧縮機12の動力を増加させることなく、HV機器31を適切に冷却できる。
【0061】
暖房運転時に冷媒は、冷却部30においてHV機器31から吸熱することにより加熱され、熱交換器14において外気から吸熱することによりさらに加熱される。冷却部30と熱交換器14との両方で冷媒を加熱することにより、熱交換器14の出口において冷媒を十分な過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、HV機器31を適切に冷却できる。冷却部30で冷媒が加熱され、HV機器31の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、成績係数が向上し、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
【0062】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態2の冷却装置1は、冷却部30と膨張弁16との間の冷媒の経路の一部を形成する冷媒通路24に、第三熱交換器としての熱交換器15が配置されている点で、実施の形態1と異なっている。熱交換器15が設けられるので、冷媒通路24は、熱交換器15よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路24aと、熱交換器15よりも膨張弁16に近接する側の冷媒通路24bと、に二分割されている。
【0063】
冷房運転時には、図5に示すA点、B点、C点、D点、F点およびE点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0064】
図6は、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図6中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図6中には、圧縮機12から熱交換器14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24aから熱交換器15を経由して冷媒通路24bへ流入し、膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,C,D,FおよびE点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0065】
実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、熱交換器14から膨張弁16へ至る系統を除いて、実施の形態1と同じである。つまり、図2に示すモリエル線図におけるD点からE点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、図6に示すモリエル線図におけるF点からE点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、B点からF点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0066】
圧縮機12によって断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒(B点)は、熱交換器14において冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になる(C点)。
【0067】
熱交換器14から流出した飽和液状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して冷却部30へ流れる。冷却部30において、熱交換器14を通過して凝縮された液冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、HV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気となる(D点)。
【0068】
その後冷媒は、熱交換器15に流入する。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において外気と熱交換することで再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却された過冷却液になる(F点)。その後膨張弁16を通過することで、冷媒は低温低圧の湿り蒸気になる(E点)。
【0069】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器14と熱交換器15との両方によって凝縮される。熱交換器15において十分に冷媒を冷却することにより、膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。そのため、熱交換器18において冷媒が蒸発するときに外部から受け取る熱量を十分に大きくすることができる。このように、冷媒を十分に冷却できる熱交換器15の放熱能力を定めることにより、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、HV機器31を冷却することができる。したがって、HV機器31の冷却能力と、車室用の冷房能力との両方を、確実に確保することができる。
【0070】
実施の形態1の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12と膨張弁16との間に熱交換器14が配置され、冷房運転時には、冷房とHV機器31冷却とに相当する分の熱交換を熱交換器14で行なう必要がある。そのため、熱交換器14において冷媒を飽和液の状態からさらに冷却し、冷媒が所定の過冷却度を有するまで冷却する必要があった。過冷却液の状態の冷媒を冷却すると、冷媒の温度が大気温度に近づき、冷媒の冷却効率が低下するので、熱交換器14の容量を増大させる必要がある。その結果、熱交換器14のサイズが増大し、車載用の冷却装置1として不利になるという問題がある。一方、車両へ搭載するために熱交換器14を小型化すると、熱交換器14の放熱能力も小さくなり、その結果、膨張弁16の出口における冷媒の温度を十分に低くできず、車室用の冷房能力が不足する虞がある。
【0071】
これに対し、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置し、HV機器31の冷却系である冷却部30が熱交換器14と熱交換器15との間に設けられる。熱交換器14では、図6に示すように、冷媒を飽和液の状態にまで冷却すればよい。HV機器31から蒸発潜熱を受け取り一部気化した湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15で再度冷却される。湿り蒸気状態の冷媒を凝縮させ完全に飽和液にするまで、冷媒は一定の温度で状態変化する。熱交換器15はさらに、車両の室内の冷房のために必要な程度の過冷却度にまで、冷媒を冷却する。そのため、実施の形態1と比較して、冷媒の過冷却度を大きくする必要がなく、熱交換器14,15の容量を低減することができる。したがって、熱交換器14,15のサイズを低減することができ、小型化され車載用に有利な冷却装置1を得ることができる。
【0072】
熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒は、HV機器31を冷却するときに、HV機器31から熱を受け取り加熱される。冷却部30において加熱された冷媒が気化すると、
冷媒とHV機器31との熱交換量が減少してHV機器31を効率よく冷却できなくなり、また冷媒が配管内を流れる際の圧力損失が増大する。そのため、HV機器31を冷却した後の冷媒を気化させない程度に、熱交換器14において十分に冷媒を冷却するのが望ましい。
【0073】
具体的には、熱交換器14の出口における冷媒の状態を飽和液に近づけ、典型的には熱交換器14の出口において冷媒が飽和液線上にある状態にする。このように冷媒を十分に冷却できる能力を熱交換器14が有する結果、熱交換器14の冷媒から熱を放出させる放熱能力は、熱交換器15の放熱能力よりも高くなる。放熱能力が相対的に大きい熱交換器14において冷媒を十分に冷却することにより、HV機器31から熱を受け取った冷媒を湿り蒸気の状態に留めることができ、冷媒とHV機器31との熱交換量の減少を回避できるので、HV機器31を十分に効率よく冷却することができる。HV機器31を冷却した後の湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15において効率よく再度冷却され、飽和温度をわずかに下回る程度の過冷却液の状態にまで冷却される。したがって、車室用の冷房能力とHV機器31の冷却能力との両方を確保した、冷却装置1を提供することができる。
【0074】
図7は、四方弁28を切り換えた状態の実施の形態2の冷却装置1を示す模式図である。図5と図7とを比較して、四方弁28が90°回転することにより、圧縮機12出口から四方弁28へ流入した冷媒が四方弁28を出る経路が切り換えられている。図5に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器14へ向かって流れる。一方、図7に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器18へ向かって流れる。
【0075】
暖房運転時には、図7に示すA点、B点、E点、F点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0076】
図8は、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図8中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図8中には、圧縮機12から熱交換器18、膨張弁16、熱交換器15を経由して冷媒通路24aへ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,E,F,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0077】
実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、膨張弁16から熱交換器14へ至る系統を除いて、実施の形態1と同じである。つまり、図4に示すモリエル線図におけるA点からB点、E点を経由してD点へ至る冷媒の状態と、図8に示すモリエル線図におけるA点からB点、E点を経由してF点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、F点からA点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0078】
膨張弁16において温度が下げられた冷媒(F点)は、冷媒通路24bを経由して熱交換器15へ流入する。熱交換器15のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。熱交換器15における外気との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。熱交換器15において潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(
D点)。
【0079】
熱交換器15から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路24aを経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、HV機器31を冷却する。冷却部30において、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気状態の冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。HV機器31から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合がさらに増加する(C点)。
【0080】
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。
【0081】
暖房運転時に冷媒は、熱交換器14,15の両方において外気から吸熱することにより加熱され、冷却部30においてHV機器31から吸熱することによりさらに加熱される。冷却部30と熱交換器14,15との両方で冷媒を加熱することにより、熱交換器14の出口において冷媒を十分な過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、HV機器31を適切に冷却できる。冷却部30で冷媒が加熱され、HV機器31の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
【0082】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態1,2では、冷却部30が熱交換器14と熱交換器15との間に直列に接続されていた。これに対し、実施の形態3の冷却装置1では、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路は、冷却部30を経由しない経路である冷媒通路29を含む。熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路は、第一通路としての冷媒通路29を含む。
【0083】
冷却装置1は、冷媒通路29と並列に配置された第二通路としての、他の冷媒の経路を備える。当該他の冷媒の経路は、冷媒通路23,24a(図5も併せて参照)と、冷却部30の冷却通路32とを含む。冷却部30は、第二通路に設けられている。冷媒通路23,24aを経由して流れる冷媒は、冷却部30を経由して流れ、発熱源としてのHV機器31から熱を奪って、HV機器31を冷却させる。冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14と冷却部30との間を流通し、冷媒通路24aを経由して冷却部30と冷媒通路24aとの間を流通する。熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路が分岐して、冷媒の一部が冷却部30へ流通する。
【0084】
熱交換器14と熱交換器15との間を冷媒が流通する経路として、冷却部30を通過する経路である冷媒通路23,24aおよび冷却通路32と、冷却部30を通過しない経路である冷媒通路29と、が並列に設けられる。そのため、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の一部のみが、冷却部30へ流れる。冷却部30においてHV機器31を冷却するために必要な量の冷媒を冷媒通路23,24aへ流通させ、HV機器31は適切に冷却される。したがって、HV機器31が過冷却されることを防止できる。全ての冷媒が冷却部30に流れないので、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失を低減することができ、それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
【0085】
冷媒通路29は、熱交換器14と熱交換器15との間に設けられている。冷媒通路23
,24aを含むHV機器31の冷却系は、冷媒通路29と並列に接続されている。熱交換器14と熱交換器15との間を冷却部30を経由せずに流れる冷媒の経路と、熱交換器14と熱交換器15との間を冷却部30を経由して流れる冷媒の経路と、を並列に設け、一部の冷媒のみを冷媒通路23,24aへ流通させることで、HV機器31の冷却系に冷媒が流れる際の圧力損失を低減することができる。
【0086】
冷却装置1はさらに、流量調整弁51を備える。流量調整弁51は、冷媒通路29に配置されている。流量調整弁51は、その弁開度を変動させ、冷媒通路29を流れる冷媒の圧力損失を増減させることにより、冷媒通路29を流れる冷媒の流量と、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32を流れる冷媒の流量と、を任意に調節する。
【0087】
たとえば、流量調整弁51を全閉にして弁開度を0%にすると、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の全量が冷媒通路23,24aおよび冷却通路32へ流入する。流量調整弁51の弁開度を大きくすれば、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒のうち、冷媒通路29を経由して流れる流量が大きくなり、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32を経由して流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁51の弁開度を小さくすれば、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒のうち、冷媒通路29を経由して流れる流量が小さくなり、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32を経由して冷却部30へ流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
【0088】
流量調整弁51の弁開度を大きくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなり、HV機器31の冷却能力が低下する。流量調整弁51の弁開度を小さくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなり、HV機器31の冷却能力が向上する。流量調整弁51を使用して、冷却部30に流れる冷媒の量を最適に調節できるので、HV機器31の過冷却を確実に防止することができ、加えて、冷媒通路23,24aおよび冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失および冷媒を循環させるための圧縮機12の消費電力を、確実に低減することができる。
【0089】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4の冷却装置1の構成を示す模式図である。図11は、四方弁28を切り換えた状態の実施の形態4の冷却装置1を示す模式図である。実施の形態4の冷却装置1は、冷却部30に向けて流通する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器60を備える点で、実施の形態1〜3と異なっている。
【0090】
図10には、冷房運転時の蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れが図示されている。熱交換器14と冷却部30との間を流通する冷媒の経路は、熱交換器14に近接する側の冷媒通路23aと、冷却部30に近接する側の冷媒通路23bと、を含む。冷房運転時に、気液分離器60は、熱交換器14から流出して冷媒通路23aを流通する冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離する。
【0091】
熱交換器14の出口側において冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器14から流出した冷媒は、冷媒通路23aを通って気液分離器60へ供給される。冷媒通路23aから気液分離器60へ流入する気液二相状態の冷媒は、気液分離器60の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器60は、熱交換器14によって凝縮された冷媒を液体状の冷媒液62とガス状の冷媒蒸気61とに分離して、一時的に蓄える。
【0092】
分離された冷媒液62は、冷媒通路23bを経由して、気液分離器60の外部へ流出する。気液分離器60内の液相中に配置された冷媒通路23bの端部は、液相冷媒の気液分
離器60からの流出口を形成する。気液分離器60の内部では、冷媒液62が下側、冷媒蒸気61が上側に溜まる。気液分離器60から冷媒液62を導出する冷媒通路23bの端部は、気液分離器60の底部の近傍に配置されている。冷媒通路23bの端部は、冷媒液62中に浸漬されており、冷媒通路23bを経由して気液分離器60の底側から冷媒液62のみが気液分離器60の外部へ送り出される。これにより、気液分離器60は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
【0093】
図11には、暖房運転時の蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れが図示されている。熱交換器15と冷却部30との間を流通する冷媒の経路は、熱交換器15に近接する側の冷媒通路24a1と、冷却部30に近接する側の冷媒通路24a2と、を含む。暖房運転時に、気液分離器60は、熱交換器15から流出して冷媒通路24a1を流通する冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離する。
【0094】
熱交換器15の出口側において冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器15から流出した冷媒は、冷媒通路24a1を通って気液分離器60へ供給される。冷媒通路24a1から気液分離器60へ流入する気液二相状態の冷媒は、気液分離器60の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器60は、熱交換器15によって凝縮された冷媒を液体状の冷媒液62とガス状の冷媒蒸気61とに分離して、一時的に蓄える。
【0095】
分離された冷媒液62は、冷媒通路24a2を経由して、気液分離器60の外部へ流出する。気液分離器60内の液相中に配置された冷媒通路24a2の端部は、液相冷媒の気液分離器60からの流出口を形成する。気液分離器60の内部では、冷媒液62が下側、冷媒蒸気61が上側に溜まる。気液分離器60から冷媒液62を導出する冷媒通路24a2の端部は、気液分離器60の底部の近傍に配置されている。冷媒通路24a2の端部は、冷媒液62中に浸漬されており、冷媒通路24a2を経由して気液分離器60の底側から冷媒液62のみが気液分離器60の外部へ送り出される。これにより、気液分離器60は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
【0096】
冷却装置1は、一台の気液分離器60を備える。この一台の気液分離器60を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方において、気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液のみが冷却部30に供給されてHV機器31を冷却する。この液相冷媒は、過不足の全くない真に飽和液状態の冷媒である。そのため、気液分離器60から液相の冷媒のみを取り出し冷却部30へ流すことにより、気液分離器60の上流側に配置された熱交換器14,15の能力を最大限に活用してHV機器31を冷却することができるので、HV機器31の冷却能力を向上させた冷却装置1を提供することができる。
【0097】
気液分離器60の出口で飽和液の状態にある冷媒をHV機器31を冷却する冷却通路32に導入することにより、冷却通路32を含むHV機器31の冷却系である上述した第二通路を流れる冷媒のうち、気相状態の冷媒を最小限に抑えることができる。そのため、第二通路を流れる冷媒蒸気の流速が早くなり圧力損失が増大することを抑制でき、冷媒を流通させるための圧縮機12の消費電力を低減できるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の性能の悪化を回避することができる。
【0098】
気液分離器60の内部には、飽和液状態の冷媒液62が貯留されている。気液分離器60は、その内部に冷媒液62を一時的に溜める蓄液器として機能する。気液分離器60内に所定量の冷媒液62が溜められることにより、冷房運転と暖房運転との切り換え時にも気液分離器60から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器60が液だめ機能を有することにより、冷暖房切換の際に熱交換器14,15から気液分離器60へ
流れる冷媒の流量が一時的に低下する冷媒流量の変動を吸収できる。したがって、冷暖房の切り換え時に冷却部30への冷媒供給量が不足することを回避でき、HV機器31の冷却性能を安定させることができる。
【0099】
気液分離器60が冷房運転時と暖房運転時との両方において冷媒の気液分離を行なうことを可能にするために、冷却装置1は、切換弁70を備える。切換弁70は、四方弁28による冷媒の流れの切り換えに対応して、熱交換器14と熱交換器15とのいずれか一方から気液分離器60への冷媒の流れを切り換える。
【0100】
切換弁70の例について説明する。図12は、第一の例の切換弁70が第一の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。図13は、第一の例の切換弁70が第二の設定位置にある状態を示す分解斜視図である。図12および図13に示す第一の例では、気液分離器60の天井側には、蓋部材63が取付けられている。蓋部材63は、気液分離器60の上側を覆うように配置される。蓋部材63には、蓋部材63を厚み方向に貫通する四つの貫通孔64〜67が形成されている。貫通孔64〜67は、気液分離器60の内部と外部とを連通する。気液分離器60の内部には二本の直立管が設けられており、当該直立管の一端部は冷媒液62中に浸漬され、直立管の他端部は貫通孔65,67にそれぞれ連結されている。
【0101】
蓋部材63の上面に、切換弁70が取付けられる。切換弁70は、中実の弁本体を有する。切換弁70には、弁本体の表面の一の部位から他の部位まで弁本体を貫通する、三つの貫通孔71〜73が形成されている。図12,13に示すように、弁本体は、円柱状の外形を有する。貫通孔71は、弁本体の側面の一の部位に形成された開口部71aから側面の他の部位に形成された開口部71bまで延びる。貫通孔71は、直線状に形成されている。貫通孔72は、弁本体の側面に形成された開口部72aから弁本体の下面に形成された開口部72bまで延びる。貫通孔72は、略L字状に形成されている。貫通孔73は、弁本体の側面に形成された開口部73aから弁本体の仮面に形成された開口部73bまで延びる。貫通孔73は、略L字状に形成されている。
【0102】
図12に示す、切換弁70が第一の設定位置にある状態では、蓋部材63の上面に切換弁70が取り付けられると、貫通孔72,73が弁本体の下面側に開口する開口部72b,73bは、それぞれ、蓋部材63側の貫通孔64,65と位置を合わせられる。蓋部材63の貫通孔66,67は、切換弁70の弁本体の下面により閉塞される。そのため、貫通孔64,72を介して気液分離器60の内部と外部とが連通され、また貫通孔65,73を介して気液分離器60の内部と外部とが連通された状態となる。このとき、貫通孔72の開口部72aが冷媒通路23aと位置を合わせられ、貫通孔73の開口部73aが冷媒通路23bと位置を合わせられる。
【0103】
その結果、冷房運転時に熱交換器14から流出し冷媒通路23aを流通する冷媒は、貫通孔72,64を順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が貫通孔65,73を順に経由して気液分離器60から流出し、冷媒通路23bを経由して冷却部30へ流通する。したがって、冷房運転時には、切換弁70を図12に示す第一の設定位置に合わせることで、気液分離器60で気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0104】
また、切換弁70が第一の設定位置にある状態で、貫通孔71の開口部71a,71bは、冷却部30から熱交換器15へ向かって流通する冷媒の経路である冷媒通路24aと位置を合わせられる。そのため冷房運転時には、冷却部30においてHV機器31と熱交
換した後の、冷媒通路24aを流れる冷媒は、貫通孔71を経由して流れ、気液分離器60には供給されない。
【0105】
図13に示す、切換弁70が第二の設定位置にある状態では、蓋部材63の上面に切換弁70が取り付けられると、貫通孔72,73が弁本体の下面側に開口する開口部72b,73bは、それぞれ、蓋部材63側の貫通孔67,66と位置を合わせられる。蓋部材63の貫通孔64,65は、切換弁70の弁本体の下面により閉塞される。そのため、貫通孔67,72を介して気液分離器60の内部と外部とが連通され、また貫通孔66,73を介して気液分離器60の内部と外部とが連通された状態となる。このとき、貫通孔72の開口部72aが冷媒通路24a2と位置を合わせられ、貫通孔73の開口部73aが冷媒通路24a1と位置を合わせられる。
【0106】
その結果、暖房運転時に熱交換器15から流出し冷媒通路24a1を流通する冷媒は、貫通孔73,66を順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が貫通孔67,72を順に経由して気液分離器60から流出し、冷媒通路24a2を経由して冷却部30へ流通する。したがって、暖房運転時には、切換弁70を図13に示す第二の設定位置に合わせることで、気液分離器60で気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0107】
また、切換弁70が第二の設定位置にある状態で、貫通孔71の開口部71a,71bは、冷却部30から熱交換器14へ向かって流通する冷媒の経路である冷媒通路23と位置を合わせられる。そのため暖房運転時には、冷却部30においてHV機器31と熱交換した後の、冷媒通路23を流れる冷媒は、貫通孔71を経由して流れ、気液分離器60には供給されない。
【0108】
図12に示す第一の設定位置と、図13に示す第二の設定位置との間を、切換弁70は回転移動可能に形成されている。切換弁70を180°回転させることにより、第一の設定位置と第二の設定位置との一方から他方へと、切換弁70の配置を変えることができる。
【0109】
図14は、第二の例の切換弁70が第一の設定位置にある状態を示す斜視図である。図15は、第二の例の切換弁70が第二の設定位置にある状態を示す斜視図である。第二の例の切換弁70は中実円柱状の外形を有し、円柱の端面の一方から他方へ切換弁70を貫通する四つの貫通孔74〜77が形成されている。図14に示すように、貫通孔74,75は、切換弁70の厚み方向(図中左右方向)に沿って直線的に延びている。一方図15に示す貫通孔76,77は、切換弁70の厚み方向(図中左右方向)に対してねじれている。
【0110】
切換弁70には、熱交換器14と冷却部30との間の冷媒の経路である冷媒通路23が連結される配管78a,78cと、切換弁70から気液分離器60へ流通する冷媒の経路である配管78bと、冷却部30と熱交換器15との間の冷媒の経路である冷媒通路24aが連結される配管79a,79bと、が設けられている。冷媒は、配管78a,79aのいずれかを経由して切換弁70へ流通し、配管78bから気液分離器60の内部へ導入され、気液分離器60内で気液分離された冷媒液62が配管78cを経由して冷却部30へ流通する。冷却部30においてHV機器31と熱交換した冷媒は、配管79bを経由して切換弁70へ再度流通し、配管79a,78aのいずれかへ流れる。
【0111】
図14に示す、切換弁70が第一の設定位置にある状態では、貫通孔74によって配管
79a,79bが連通され、貫通孔75によって配管78a,78bが連通される。その結果、冷房運転時に熱交換器14から流出し冷媒通路23aを流通する冷媒は、配管78a,貫通孔75および配管78bを順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が気液分離器60から流出し、配管78cを経由して冷却部30へ流通する。冷却部30でHV機器31を冷却した後の冷媒は、配管79b、貫通孔74および配管79aを順に経由して、冷媒通路24aへ流通する。冷房運転時には、切換弁70を図14に示す第一の設定位置に合わせることで、気液分離器60で分離された冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0112】
図15に示す、切換弁70が第二の設定位置にある状態では、貫通孔76によって配管79a,78bが連通され、貫通孔77によって配管78a,79bが連通される。その結果、暖房運転時に熱交換器15から流出し冷媒通路24a1を流通する冷媒は、配管79a,貫通孔76および配管78bを順に経由して、気液分離器60の内部へ導入される。気液分離器60内で気相冷媒と液相冷媒とが気液分離され、液体状の冷媒液62が気液分離器60から流出し、配管78cを経由して冷却部30へ流通する。冷却部30でHV機器31を冷却した後の冷媒は、配管79b、貫通孔77および配管78aを順に経由して、冷媒通路23へ流通する。暖房運転時には、切換弁70を図15に示す第二の設定位置に合わせることで、気液二相状態にある冷媒を気液分離器60で気液分離し、気液分離器60で分離された液相冷媒である冷媒液62のみを冷却部30に供給して、HV機器31を効率よく冷却することができる。
【0113】
図14に示す第一の設定位置と、図15に示す第二の設定位置との間を、切換弁70は回転移動可能に形成されている。切換弁70を90°回転させることにより、第一の設定位置と第二の設定位置との一方から他方へと、切換弁70の配置を変えることができる。
【0114】
(実施の形態5)
図16は、実施の形態5の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態5の冷却装置1は、エンジン80と、エンジン80との間で熱の受け渡しを行なうヒータコア82と、ヒータコア82へ流れる空調用空気の流量を調節するダンパ85とを備える点で、実施の形態1〜4と異なっている。
【0115】
空調用空気が流通するダクト40内には、熱交換器18に加えて、ヒータコア82が配設されている。ヒータコア82は、熱交換器18に対して空調用空気の流れの下流側に配置されている。ダクト40の外部に、エンジン80が配置されている。循環経路81,83は、エンジン80とヒータコア82との間に配置され、エンジン80とヒータコア82との間で冷却水などの液冷媒を循環させる。
【0116】
ヒータコア82に対して空調用空気の流れの上流側には、ヒータコア82を通過する空調用空気の流量を調節する流量調整部の一例としての、ダンパ85が設けられている。ダンパ85は、ヒータコア82へ流通する空調用空気の流路を開閉する。アクチュエータ86は、ダンパ85を駆動する。ダンパ85は、アクチュエータ86によって一端が支持され、当該一端を中心として両方向に揺動する。ダンパ85の開閉に応じて、空調用空気がヒータコア82を経由して流通する場合と、空調用空気がヒータコア82をバイパスして流通する場合と、が切り換えられて、ダクト出口42での空調用空気の温度が調節される。
【0117】
図17は、ダンパ85を移動した状態の実施の形態5の冷却装置1を示す模式図である。図16と図17とを比較して、図16に示す状態では、ヒータコア82へ流れる冷却用空気の流れをダンパ85が遮蔽している。そのため、矢印47に示すように、空調用空気
はヒータコア82を通過せずにダクト40内を流通する。図17に示す状態では、ダンパ85は冷却用空気の流れをヒータコア82へ導く。そのため、矢印47に示すように、空調用空気はヒータコア82を通過してダクト40内を流通する。
【0118】
エンジン80の運転中の、エンジン80の温度がヒータコア82の温度よりも高いとき、エンジン80で発生する熱は、循環経路81,83を経由してヒータコア82に伝達され、ヒータコア82で放熱される。これにより、エンジン80は冷却される。エンジン80が停止中に、ヒータコア82の温度を高めることにより、ヒータコア82から循環経路81,83を経由してエンジン80に熱が伝達され、エンジン80の暖気を行なうことができる。
【0119】
図16に示す冷房運転中は、ダクト40から流出する空調用空気の温度を低く保つことが必要とされる。そのため、ダンパ85を操作して、空調用空気がヒータコア82を通過しないように、ダクト40内の空調用空気の経路を設定する。このようにすれば、ヒータコア82が空調用空気を加熱することを抑制できるので、車両の室内を効率的に冷却することができ、冷房能力を確保することができる。
【0120】
図17に示す暖房運転中は、ダクト40から流出する空調用空気の温度を高くすることが必要とされる。そのため、ダンパ85を操作して、空調用空気がヒータコア82を通過するように、ダクト40内の空調用空気の経路を設定する。このようにすれば、エンジン80の廃熱を暖房に利用でき、車両の室内を効率的に暖めることができるので、暖房能力を向上することができる。
【0121】
また、エンジン80の始動前または始動直後にエンジン80の暖気が必要とされる場合にも、図17に示す位置にダンパ85を配置する。これにより、熱交換器18で加熱された空調用空気がヒータコア82を通過するように、ダクト40内の空調用空気の経路が設定される。このようにすれば、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31の廃熱によりヒータコア82の温度を高めることができる。したがって、ヒータコア82からエンジン80に熱を伝達させて、エンジン80の暖気を早期に行なうことができる。
【0122】
上述した実施の形態5では、ヒータコア82を通過する空調用空気の流量を調節するために、ダクト40内にダンパ85が配置される例について説明した。ヒータコア82への空調用空気の流量を調整できる機能を有するのであれば、流量調整部はダンパ85に限られるものではない。たとえば、ロールスクリーン状の流量調整部をダクト40内に設置し、スクリーンの巻取り量を変化させることにより、ダクト40内の空調用空気の流れを制御してもよい。
【0123】
(実施の形態6)
図18は、実施の形態6の冷却装置1の構成を示す模式図である。実施の形態6の冷却装置1は、第四熱交換器としての熱交換器19をさらに備える点で、実施の形態1〜5と異なっている。熱交換器19は、ダクト40内の、熱交換器18に対し空調用空気の下流側に配置され、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を流通する冷媒とダクト40内を流通する空調用空気と、の間で熱交換を行なう。
【0124】
図19は、実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図19中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図19中には、圧縮機12から熱交換器19,14を経由して冷媒通路23へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24aから熱交換器15を経由して冷媒通路24bへ流入し、膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る
、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,G,C,D,FおよびE点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0125】
実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12から熱交換器14へ至る系統を除いて、実施の形態2と同じである。つまり、図6に示すモリエル線図におけるC点からD点、F点、E点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、図19に示すモリエル線図におけるC点からD点、F点、E点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、B点からC点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0126】
圧縮機12によって断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒(B点)は、熱交換器19において冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になる(G点)。冷媒はさらに、熱交換器14において冷却される。冷媒は、乾き飽和蒸気の状態から等圧のまま凝縮潜熱を放出し、徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になる(C点)。
【0127】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器19と熱交換器14との両方によって凝縮され、飽和液の状態になる。そのため、熱交換器14の放熱能力を低減することが可能となり、熱交換器14を小型化することができる。
【0128】
ダクト40内を流通する空調用空気は、熱交換器18において冷媒に熱を放出することで冷却される。その後空調用空気は、熱交換器19において冷媒から熱を受け取り加熱される。熱交換器19での加熱により、熱交換器18で冷却された後の空調用空気の飽和水蒸気圧が調整される。そのため、空調用空気の湿度を低下させ、乾燥した空調用空気を車両の室内に導入することができるので、冷房運転に加えて、除湿運転が可能になる。
【0129】
図20は、四方弁28を切り換えた状態の実施の形態6の冷却装置1を示す模式図である。図18と図20とを比較して、四方弁28が90°回転することにより、圧縮機12出口から熱交換器19を経由して四方弁28へ流入した冷媒が四方弁28を出る経路が切り換えられている。図18に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器19を経由して熱交換器14へ向かって流れる。一方、図20に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器19を経由して熱交換器18へ向かって流れる。
【0130】
暖房運転時には、図20に示すA点、B点、G点、E点、F点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器19,18と膨張弁16と熱交換器15,14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器19,18と膨張弁16と熱交換器15,14とが冷媒通路21〜27によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0131】
図21は、実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図21中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図21中には、圧縮機12から熱交換器19、熱交換器18、膨張弁16、熱交換器15を経由して冷媒通路24aへ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,G,E,F,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0132】
実施の形態6の蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12から熱交換器14へ至る系統を除いて、実施の形態2と同じである。つまり、図8に示すモリエル線図におけるE点からF点、D点、C点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、図21に示すモリエル線図におけるE点からF点、D点、C点、A点を経由してB点へ至る冷媒の状態と、は同じである。そのため、実施の形態2の蒸気圧縮式冷凍サイクル10に特有の、B点からE点へ至る冷媒の状態について、以下に説明する。
【0133】
圧縮機12によって断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒(B点)は、熱交換器19において冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になる(G点)。冷媒はさらに、熱交換器18において冷却される。冷媒は、乾き飽和蒸気の状態から等圧のまま凝縮潜熱を放出し、徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(E点)。
【0134】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器19と熱交換器18との両方によって凝縮され、過冷却液の状態になる。そのため、熱交換器18の放熱能力を低減することが可能となり、熱交換器18を小型化することができる。
【0135】
ダクト40内を流通する空調用空気は、熱交換器18において冷媒から吸熱することで加熱される。その後空調用空気は、熱交換器19においてさらに冷媒から吸熱して加熱される。熱交換器18で冷却された後の空調用空気を、熱交換器19でさらに加熱することにより、空調用空気の温度を高めることができる。そのため、より温度の高い空調用空気を車両の室内に送ることができるので、暖房能力をより向上させることができる。
【0136】
実施の形態6で説明した熱交換器19は、ダクト40内の断面の一部を占めるように配置されてもよく、このとき、熱交換器19に対し空調用空気の流れの上流側に実施の形態5に示すダンパ85を設置してもよい。このようにすれば、ダンパ85を揺動させることにより、熱交換器19を経由して流れる空調用空気の流量を任意に調節できるので、最適な除湿運転を行なうことが可能になる。
【0137】
なお、実施の形態1〜6においては、HV機器31を例として車両に搭載された電気機器を冷却する冷却装置1について説明した。電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、インバータ、モータジェネレータなどの例示された電気機器に限定されるものではなく、任意の電気機器であってもよい。冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
【0138】
さらに、本発明の冷却装置1により冷却される発熱源は、車両に搭載された電気機器に限られず、熱を発生する任意の機器、または任意の機器の発熱する一部分であってもよい。
【0139】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の冷却装置は、モータジェネレータおよびインバータなどの電気機器を搭載するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの車両における、車内の冷房を行なうための蒸気圧縮式冷凍サイクルを使用した電気機器の冷却に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0141】
1 冷却装置、10 蒸気圧縮式冷凍サイクル、12 圧縮機、14,15,18,19 熱交換器、16 膨張弁、21,22,23,23a,23b,24,24a,24a1,24a2,24b,25,26,27,29 冷媒通路、28 四方弁、30 冷却部、31 HV機器、32 冷却通路、40 ダクト、41 ダクト入口、42 ダクト出口、43 ファン、45,46,47 矢印、51 流量調整弁、60 気液分離器、63 蓋部材、64〜67,71〜77 貫通孔、70 切換弁、71a,71b,72a,72b,73a,73b 開口部、78a〜c,79a〜b 配管、80 エンジン、82 ヒータコア、85 ダンパ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源を冷却する冷却装置であって、
冷媒を循環させるための圧縮機と、
前記冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器と、
前記冷媒を減圧する減圧器と、
前記冷媒と空調用空気との間で熱交換する第二熱交換器と、
前記減圧器を経由して前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間を流通する前記冷媒の経路上に設けられ、前記冷媒を用いて前記発熱源を冷却する冷却部と、
前記圧縮機から前記第一熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、前記圧縮機から前記第二熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、を切り換える四方弁と、を備える、冷却装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記第一熱交換器と前記減圧器との間に設けられる、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却部と前記減圧器との間に設けられ、前記冷媒と外気との間で熱交換する第三熱交換器を備える、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第一熱交換器は、前記冷媒から熱を放出させる放熱能力が前記第三熱交換器よりも高い、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却部に向けて流通する前記冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器と、
前記四方弁による前記冷媒の流れの切り換えに対応して、前記第一熱交換器と前記第三熱交換器とのいずれか一方から前記気液分離器への前記冷媒の流れを切り換える切換弁と、を備える、請求項3または請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間に直列に接続されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間に並列に配置された第一通路および第二通路を備え、
前記冷却部は、前記第二通路に設けられる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第一通路に配置され、前記第一通路を流れる前記冷媒の流量と前記第二通路を流れる前記冷媒の流量とを調節する、流量調整弁を備える、請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
エンジンと、
前記エンジンとの間で熱の受け渡しを行なうヒータコアと、を備え、
前記ヒータコアは、前記第二熱交換器に対し前記空調用空気の下流側に配置されている、請求項1から請求項8のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項10】
前記ヒータコアへ流れる前記空調用空気の流量を調節する流量調整部を備える、請求項9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記第二熱交換器に対し前記空調用空気の下流側に配置され、前記冷媒と前記空調用空気との間で熱交換する、第四熱交換器を備える、請求項1から請求項10のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項1】
発熱源を冷却する冷却装置であって、
冷媒を循環させるための圧縮機と、
前記冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器と、
前記冷媒を減圧する減圧器と、
前記冷媒と空調用空気との間で熱交換する第二熱交換器と、
前記減圧器を経由して前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間を流通する前記冷媒の経路上に設けられ、前記冷媒を用いて前記発熱源を冷却する冷却部と、
前記圧縮機から前記第一熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、前記圧縮機から前記第二熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、を切り換える四方弁と、を備える、冷却装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記第一熱交換器と前記減圧器との間に設けられる、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却部と前記減圧器との間に設けられ、前記冷媒と外気との間で熱交換する第三熱交換器を備える、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第一熱交換器は、前記冷媒から熱を放出させる放熱能力が前記第三熱交換器よりも高い、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却部に向けて流通する前記冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器と、
前記四方弁による前記冷媒の流れの切り換えに対応して、前記第一熱交換器と前記第三熱交換器とのいずれか一方から前記気液分離器への前記冷媒の流れを切り換える切換弁と、を備える、請求項3または請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間に直列に接続されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間に並列に配置された第一通路および第二通路を備え、
前記冷却部は、前記第二通路に設けられる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第一通路に配置され、前記第一通路を流れる前記冷媒の流量と前記第二通路を流れる前記冷媒の流量とを調節する、流量調整弁を備える、請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
エンジンと、
前記エンジンとの間で熱の受け渡しを行なうヒータコアと、を備え、
前記ヒータコアは、前記第二熱交換器に対し前記空調用空気の下流側に配置されている、請求項1から請求項8のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項10】
前記ヒータコアへ流れる前記空調用空気の流量を調節する流量調整部を備える、請求項9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記第二熱交換器に対し前記空調用空気の下流側に配置され、前記冷媒と前記空調用空気との間で熱交換する、第四熱交換器を備える、請求項1から請求項10のいずれかに記載の冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−214175(P2012−214175A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82118(P2011−82118)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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