説明

冷却風導入構造

【課題】車両の高速走行時、低速走行時のそれぞれに熱交換器に所要の冷却性能を発揮させることができる冷却風導入構造を得る。
【解決手段】冷却風導入構造10は、フロアトンネル20の前部に設けられた空冷式の熱交換器を含む冷却ユニット22と、冷却ユニット22を通過した走行風が導かれるようにフロアトンネル20内における冷却ユニット22に対する後方に形成された第1通風路42と、フロアトンネル20内における冷却ユニット22に対する後方に第1通風路42とは独立して形成された第2通風路44と、第2通風路44に設けられたクロスフローファン50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却風を空冷式の熱交換器に導くための冷却風導入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジエータ及びコンデンサの車両後方に軸流ファンを配置し、該ファンとラジエータ及びコンデンサとの間にシュラウドにて流路を形成したクーリングモジュールが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、複数個のラジエータを設けた構成において、ラジエータ後方の導風路を上下に分割した導風構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−056717号公報
【特許文献2】特開2008−019741号公報
【特許文献3】特開2007−099194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き技術では、車両の高速走行の際にファンが通風抵抗となるので、エンジンの負荷に対しラジエータの通風量が少なく冷却効率が低くなることが懸念される。
【0005】
本発明は、車両の高速走行時、低速走行時のそれぞれに熱交換器に所要の冷却性能を発揮させることができる冷却風導入構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る冷却風導入構造は、フロアトンネルの車両前後方向の前部に設けられた空冷式の熱交換器と、前記フロアトンネル内における前記熱交換器に対する車両前後方向の後方に、前記熱交換器を通過した走行風が導かれるように形成された第1通風路と、前記フロアトンネル内における前記熱交換器に対する車両前後方向の後方に、前記第1通風路とは独立した流路を成すように設けられた第2通風路と、軸方向が車幅方向に一致するように前記第2通風路に設けられたクロスフローファンと、を備えている。
【0007】
請求項1記載の冷却風導入構造では、例えば車両の高速走行時には、走行風の流量が大きいので、空冷式の熱交換器を通過して第1通風路から排出される走行風で冷媒が十分に冷却される。一方、例えば車両の停止時や低速走行時には、クロスフローファンを作動させることで、熱交換器を通過して第2通風路から排出される空気流(冷却風)が生じ、熱交換器においては冷媒が十分に冷却される。
【0008】
そして、軸方向が車幅方向に略一致するように配置されたクロスフローファンは、車両上下方向の寸法が抑えられるので、上記した第1通風路を走行風が通過する際の抵抗になりにくい配置とすることができる。これにより、車両の高速走行時に走行風が熱交換器をスムースに通過されることとなり、軸流ファンを用いた構成と比較して冷却効率が向上する。このため、本冷却風導入構造では、車両の高速走行時に所要の冷却性能を得ることができる。一方、車両の低速走行時には、クロスフローファンの作動により所要の冷却性能を得ることができる。
【0009】
このように、請求項1記載の冷却風導入構造では、車両の高速走行時、低速走行時のそれぞれに熱交換器に所要の冷却性能を発揮させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1記載の冷却風導入構造において、前記熱交換器は、車両上下方向の上部が下部に対し車両前後方向の前側に位置するように傾斜されており、前記第2通風路は、前記熱交換器の車両上下方向の下部に対する車両前後方向の後側に配置されている。
【0011】
請求項2記載の冷却風導入構造では、冷却風は熱交換器の傾斜方向との略直交方向に沿って(斜め上後向きに)該熱交換器を通過する。このため、熱交換器の下部に対する後側は、熱交換器を通過する空気流の少なくとも一部の経路(範囲)から外れた位置とされ、この位置に設けられた第2通風路(クロスフローファン)は、走行風に対し通風抵抗になりにくい。これにより、本冷却風導入構造では、車両の高速走行時の通風抵抗が一層低下する。
【0012】
請求項3記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項2記載の冷却風導入構造において、前記熱交換器は、車両の駆動源を冷却するための冷媒との空気との熱交換器であり、前記第1通風路は、前記第2通風路に対する車両上下方向の上側に配置されており、前記第1通風路を開閉する開閉機構と、車両の走行速度が所定速度を越える場合又は前記冷媒の温度が所定温度未満の場合に、前記第1通風路を開くと共に前記クロスフローファンが非作動とされるように前記開閉機構及び前記クロスフローファンを制御し、車両の走行速度が前記所定速度以下でありかつ前記冷媒の温度が所定温度以上である場合に、前記第1通風路を閉じると共に前記クロスフローファンが作動されるように前記開閉機構及び前記クロスフローファンを制御する制御手段と、をさらに備えた。
【0013】
請求項3記載の冷却風導入構造では、車両の高速走行時には、開閉機構により第1通風路が開放されており、熱交換器を通過した走行風が第1通風路に導かれる。第1通風路はトンネル内における第2通風路の上側に配置されているので、冷却風として斜め上後向きに熱交換器を通過した走行風は、ファンが配置されていない第1通風路をスムースに通過する。一方、車両の停止時や低速走行時であって冷媒の温度が所定温度以上である場合には、開閉機構によって第1通風路が閉じた状態で作動するクロスフローファンによって生じた空気流が、熱交換器、第2流路を通過する。これにより、冷媒の冷却要求に対し走行風が不足しやすい低速走行時等において、冷媒を十分に冷却することができる。そして、車両の低速走行時であって冷媒の温度が所定温度未満である場合には、開閉機構によって第1通風路が開放されると共に、クロスフローファンが非作動とされる。これにより、走行風による冷媒との熱交換で足りる場合には、クロスフローファンを非作動としてエネルギ消費を抑えることができる。すなわち、冷却性能の確保と省エネルギ化との両立を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項3記載の冷却風導入構造において、車両前後方向における前記熱交換器と前記第1通風路及び第2通風路との間には、該第1通風路及び第2通風路のそれぞれに連通する共通通風路が形成されている。
【0015】
請求項4記載の冷却風導入構造では、共通通風路が設けられているので、熱交換器を通過したほぼ全量の空気流が、車両が相対的に高速で走行する際には第1通風路に、クロスフローファンの作動の際には第2通風路に導かれる。これにより、高速走行時、低速走行時の何れにおいても、熱交換器のサイズに頼ることなく、所要の冷却性能を確保することができる。
【0016】
請求項5記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の冷却風導入構造において、前記熱交換器、前記クロスフローファン、並びに、前記第1通風路及び第2通風路を形成する通風路形成部材とが車体に対し一体に着脱し得るようにモジュール化されている。
【0017】
請求項5記載の冷却風導入構造では、熱交換器、クロスフローファン、及び通風路形成部材がモジュール化されているので、車体(フロアトンネル)に対し各部品を独立して組み付ける構成と比較して、組付性が向上する。
【0018】
請求項6記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の冷却風導入構造において、前記熱交換器は、パワーユニットを冷却するための冷媒を冷却するためのラジエータ、及び空調装置の冷凍サイクルを構成する凝縮器の少なくとも一方を含んで構成されている。
【0019】
請求項6記載の冷却風導入構造では、ラジエータ及び凝縮器の少なくとも一方に、高速走行時、低速走行時共に所要の冷却風を熱交換器に導くことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明に係る冷却風導入構造は、車両の高速走行時、低速走行時のそれぞれに熱交換器に所要の冷却性能を発揮させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造の要部を示す一部切り欠いた側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造が適用された自動車の前部を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造の低速走行時の冷却風の流れを示す側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造の高速走行時の冷却風の流れを示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造を構成する冷却モジュールを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造を構成する冷却モジュールを示す、図5とは別方向から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る冷却風導入構造を構成する冷却ECUによる制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る冷却風導入構造10について、図1〜図6に基づいて説明する。先ず、冷却風導入構造10が適用された自動車Aの車体11の構成を説明し、次いで、冷却風導入構造10の具体的な構成を説明することとする。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示す。
【0023】
(車体の概略構成)
図2には、冷却風導入構造10が適用された自動車Aの前部が模式的な側断面図にて示されている。この図に示される如く、自動車Aの車両前後方向の前端側には、パワーユニット12が配設されたパワーユニット室14が配置されている。この実施形態におけるパワーユニット12は、それぞれフロントホイールWfを駆動するための駆動源として内燃機関であるエンジンと電動モータとを含んで構成されている。したがって、自動車Aは、2つの駆動源を有するハイブリッド自動車とされている。
【0024】
具体的には、パワーユニットは、車幅方向に沿ったクランクシャフトを有する横置きのエンジンと、該エンジンに動力伝達可能に連結されたトランスアクスルとを主要部として構成されている。トランスアクスルは、電動モータ、図示しないジェネレータ、動力分割機構、無段変速機等である変速機等を含んで構成されている。また、この実施形態では、トランスアクスルには、例えば電動モータ、ジェネレータ、及びバッテリに電気的に接続されたインバータを含んで構成されている。したがって、この実施形態に係るパワーユニットは、パワープラントとして捉えることも可能である。
【0025】
上記の通り内燃機関であるエンジンを含んで構成されるパワーユニット12が配設されたパワーユニット室14は、所謂エンジンルームとして捉えることができる。パワーユニット室14の車両前後方向の後端部は、車室Cとの間を隔てるダッシュパネル16にて規定されている。ダッシュパネル16は、フロアパネル18の車両前後方向の前端部に接合されている。フロアパネル18における車幅方向の中央部には、車両前後方向に長手とされると共に該長手方向と直交する断面視で車両上下方向に下向きに開口する[コ」字状を成すフロアトンネル20が形成されている。
【0026】
そして、冷却風導入構造10が適用された自動車Aでは、フロアトンネル20の車両前後方向の前側開口端20Aを塞ぐように、冷却ユニット22が設けられている。したがって、この実施形態では、冷却ユニット22がパワーユニット12に対する車両前後方向の後側に配置されている。冷却ユニット22は、パワーユニット12(のエンジンや電気モータ)との間で冷却水を循環させて該パワーユニット12を冷却する空冷式の熱交換器であるラジエータ、及び図示しない空調装置(の冷凍サイクル)を構成する空冷式の熱交換器であるコンデンサ(凝縮器)の少なくとも一方(この実施形態では双方)を含んで構成されている。
【0027】
以下、この冷却ユニット22に冷媒(ラジエータを循環する冷却水、エアコン冷媒)との熱交換を行う冷却風を導くための冷却風導入構造10について詳細に説明することとする。
【0028】
(冷却風導入構造の構成)
図2に示される如く、冷却風導入構造10は、パワーユニット室14を車両上下方向の下側から覆うアンダカバー24を備えている。アンダカバー24には、路面Rとの間を流れる走行風を冷却ユニット22(フロアトンネル20内)に導くためのダクト26が形成されている。また、ダクト26は、後述するクロスフローファン50の作動時には、自動車Aのフロア下から空気を吸い込む吸い込み口として機能する構成である。
【0029】
ダクト26は、図1に示される如く、フロアトンネル20に対する車両前後方向の前方で車両上下方向の下向きに開口された開口部としての導入口26Aと、フロアトンネル20に対する車両前後方向の直前方で車両前後方向の後向きに開口された導出口26Bとを有する。ダクト26は、導入口26Aと導出口26Bとの間の空間が、車幅方向に対向する左右一対の側壁28と、一対の側壁28の車両上下方向の上縁をつなぐ天壁30とで囲まれた流路26Cとされている。
【0030】
上記した冷却ユニット22(後述する冷却モジュール68)は、フロアトンネル20の前側開口端20Aとダクト26の導出口26Bとの間にシール状態で介在されている。すなわち、ダクト26(自動車Aと路面Rとの間)とフロアトンネル20とが冷却ユニット22(の空気側流路)を介して連通されている。なお、冷却ユニット22は、一部又は全部がフロアトンネル20内の前部に配置された構成としても良く、一部又は全部がダクト26内の後部に配置された構成としても良い。すなわち、冷却ユニット22は、ダクト26とフロアトンネル20とで形成される空間(空気流路)の中間部に配置されていれば良い。
【0031】
また、この実施形態では、冷却ユニット22は、車両上端側が下端側よりも車両前側に位置するように傾斜(前傾)して配置されている。導入口26Aにおける車両前後方向の後端、導出口26Bにおける車両上下方向の下端の位置は、冷却ユニット22における車両上下方向の下端の位置に略一致されている。この配置によって、冷却ユニット22(の空気側流路)には、冷却ユニット22の前面(傾斜方向)との略直交方向(図2に示す矢印FA参照)に沿って冷却風が通過する構成とされている。
【0032】
さらに、この実施形態では、アンダカバー24におけるダクト26の車両前側に傾斜壁としてのベンチュリ壁32が形成されている。ベンチュリ壁32は、アンダカバー24におけるダクト26(導入口26A)の前縁部26Dに対する車両前後方向の前側部分を、車両前後方向の前端側よりも後端側の方が路面Rに近接するように傾斜させることで形成されている。ベンチュリ壁32は、車幅方向においては少なくともダクト26の設置範囲の車両前後方向の前側に形成されれば良いが、この実施形態では、アンダカバー24の前部は、車幅方向の略全幅に亘り傾斜壁であるベンチュリ壁32とされている。
【0033】
このベンチュリ壁32は、路面Rとの間に形成される空間を、車両後端側に向かうほど上下幅が狭まる(流路断面が絞られる)ベンチュリ形状とする構成である。この実施形態では、ベンチュリ壁32と路面Rとの間に形成された空間におけるダクト26の前縁部26Dに対する車両上下方向のほぼ直下の部分が、流路断面が最も絞られたのど部とされている。このベンチュリ壁32を備えた冷却風導入構造10では、車両後方に向かう走行風が、導入口26Aに対する車両前方で生じるベンチュリ壁32のベンチュリ効果によって車両上方に導かれ、上記した矢印FA方向に沿ってダクト26に流入されやすい(走行風が、冷却ユニット22に至る前に、路面Rに対し矢印FA方向に近い角度でダクト26に流れ込む)構成とされている。
【0034】
そして、冷却風導入構造10では、冷却ユニット22を通過した空気流をフロアトンネル20の外側に流出させるための第1通風路42、第2通風路44がフロアトンネル20内に形成されている。
【0035】
図1に示される如く、冷却ユニット22における車両前後方向の後面(背面)22A側は、全面に亘ってフロアトンネル20内に設けられた第1シュラウド38にて覆われている。第1シュラウド38は、正面視では冷却ユニット22に対応する略矩形状の開口を有すると共に車両下向きにも開口する断面略「コ」字状を成している。具体的には、第1シュラウド38は、車幅方向に対向する左右一対の側壁38Aと、一対の側壁38Aの車両上下方向の上縁をつなぐ天壁38Bと有して構成されている。天壁38B(側壁38Aの車両上縁)は、側面視では上後側に凸とされると共に車両後端がフロアトンネル20の開口端(下端)に至る略弧状を成している。図5及び図6に示される如く、第1シュラウド38の車幅方向に沿った幅(一対の側壁38Aの対向間隔)は、冷却ユニット22の車幅方向に沿った幅と略同等とされている。
【0036】
また、第1シュラウド38内には、第2シュラウド40が配置されている。第2シュラウド40は、第1シュラウド38の天壁38Bを上下、前後に縮めた如き略弧状に形成されており、その車幅方向の両端が第1シュラウド38の両側壁38Aにそれぞれ接合されている。第2シュラウド40における車両前上の端部40A(後述する第1通風路42、第2通風路44の境界部)は、冷却ユニット22の後面22Aに対する車両後方側に離間して配置されている。
【0037】
これにより、第1シュラウド38内には、該第1シュラウド38と第2シュラウド40との間の空間である第1通風路42と、第2シュラウド40に対する車両上下方向の下側の空間である第2通風路44と、これら第1通風路42及び第2通風路44と冷却ユニット22の後面22Aとの間の空間である共通通風路46とが形成されている。したがって、この実施形態では、第1シュラウド38及び第2シュラウド40が本発明における通風路形成部材に相当する。
【0038】
第1通風路42は、共通通風路46(冷却ユニット22)に向けて開口する流入口42Aから流入された空気流が、車体フロア下面48に沿って車両下向きに開口する流出口42B(図6も参照)から流出される構成とされている。第2通風路44は、流入口42Aの車両下方で共通通風路46に向けて開口する流入口44Aから流入された空気流が、流出口42Bの車両前方で車体フロア下面48に沿って車両下向きに開口する流出口44B(図6も参照)から流出される構成とされている。
【0039】
第1通風路42の流入口42Aは、冷却ユニット22の下端側の空気流路を矢印FA方向に通過した空気が流入される(図1の矢印FA参照)ように、車両上下方向の下縁(第2シュラウド40の上前の端部40A)の位置が決められている。換言すれば、冷却風導入構造10では、冷却ユニット22を矢印FA方向に通過した空気流が第2通風路44には殆ど導入されないように、該第2通風路44が冷却ユニット22の下部における車両後方に配置されている。
【0040】
また、冷却風導入構造10は、第2通風路44に設けられたクロスフローファン50を備えている。クロスフローファン50は、長手方向が軸方向に一致された略円筒状を成し、外周側から吸い込んだ空気を外周側から吹き出す構成とされている。このクロスフローファン50は、軸方向が車幅方向に一致されるように第2通風路44の流入口44Aをシールするように配置されており、作動されることで共通通風路46側から吸い込んだ空気を流出口44B側に吹き出すようになっている。このように配置されたクロスフローファン50は、同等の性能を有する軸流ファンと比較して、車両上下方向の寸法が著しく小さい構成とされる。
【0041】
この実施形態では、冷却ユニット22の後面22A側の下端とクロスフローファン50(の吸い込み部の下縁)との間には、第1シュラウド38の左右の側壁38Aを架け渡して第3シュラウド52が設けられ、流出口44Bの前縁とクロスフローファン50(の吹き出し部の下縁)との間には、第1シュラウド38の左右の側壁38Aを架け渡して第4シュラウド54が設けられている。また、第2通風路44の流出口44Bにおける前縁とダクト26の導入口26Aにおける後縁と間は、第1シュラウド38の左右の側壁38Aを架け渡した底板56にて閉止されている。
【0042】
さらに、冷却風導入構造10は、第1通風路42を開閉するための開閉手段としての可動フラップ機構58を備えている。この実施形態では、可動フラップ機構58は、流入口42Aの開口面に沿って設けられ、該流入口42Aを閉止する状態と開放する状態とを切り替えるようになっている。
【0043】
具体的には、可動フラップ機構58は、車幅方向に軸方向が一致された支軸60A回りに回転することで図1に実線にて示す流入口42Aの閉止位置と、想像線にて示す流入口42Aの開放位置とをとり得る可動フラップ60を備えている。この実施形態では、上下に複数(2枚)の可動フラップ60が設けられている。また、可動フラップ機構58は、各可動フラップ60をそれぞれ閉止位置と開放位置との間で駆動するアクチュエータ62を備えている。
【0044】
そして、冷却風導入構造10は、クロスフローファン50及びアクチュエータ62の作動を制御する制御手段としての冷却ECU64を備えている。冷却ECU64は、クロスフローファン50、アクチュエータ62、冷却風導入構造10が適用された自動車Aの走行速度に応じた信号を出力する車速センサ66、及びパワーユニット12と冷却ユニット22との間で循環する冷却水の温度に応じた信号を出力する水温センサ72のそれぞれに、電気的に接続されている。
【0045】
冷却ECU64は、車速センサ66からの信号に基づいて自動車Aの車速Vが所定の車速V1を下回っており(又はV1以下であり)、かつ水温センサ72からの信号荷基づいて冷却水の水温Tが所定の温度T1以上である(又はT1を超える)と判断した場合に、可動フラップ60が閉止位置に位置するようにアクチュエータ62を制御すると共に、クロスフローファン50を作動させるようになっている。この実施形態では、冷却ECU64は、パワーユニット12の作動中における車両停止(車速Vが0)の際にも、水温Tが所定の温度T1以上である場合には、可動フラップ60が閉止位置に位置するようにアクチュエータ62を制御すると共に、クロスフローファン50を作動させるようになっている。
【0046】
一方、冷却ECU64は、車速センサ66からの信号に基づいて自動車Aの車速Vが所定の車速V1以上である(又はV1を超えた)と判断した場合、又は水温センサ72からの信号荷基づいて冷却水の水温Tが所定の温度T1を下回る(又はT1以下である)と判断した場合に、可動フラップ60が開放位置に位置するようにアクチュエータ62を制御すると共に、クロスフローファン50を停止させるようになっている。この実施形態では、冷却ECU64は、自動車Aの車速Vが所定の車速V1以上であると判断した後は、自動車Aの車速が別途所定の車速V2(V2<V1)以下であると判断するまで、可動フラップ60が開放位置に位置すると共にクロスフローファン50が停止された状態を維持するようになっている。また、この実施形態では、冷却ECU64は、冷却水温Tが所定の温度T1を下回ると判断した後は、冷却水温Tが別途所定の温度T2(T2>T1)以上であると判断するまで、可動フラップ60が開放位置に位置すると共にクロスフローファン50が停止された状態を維持するようになっている。これらにより、アクチュエータ62、クロスフローファン50の速度に対する過敏な動作(ばたつき等)等が抑制される構成とされている。
【0047】
なお、可動フラップ機構58は、可動フラップ60をスプリング等の付勢力とストッパとで閉止位置に位置させておき、車速Vが所定の速度V1以上になった場合又は冷却水温Tが所定の温度T1を下回る場合にアクチュエータ62を作動させる構成としても良い。
【0048】
また、以上説明した10では、図5及び図6に示される如く、冷却ユニット22と、第1シュラウド38(第1通風路42)と、第2シュラウド40(第2通風路44)と、第3シュラウド52と、第4シュラウド54と、底板56と、可動フラップ機構58とが車体への組付前に一体化(モジュール化)された冷却モジュール68を成している。冷却モジュール68は、第1シュラウド38の車両上下方向の下縁から車両前後方向に沿って車幅方向外側に張り出されたフランジ部70において、フロアパネル18におけるフロアトンネル20の車両下向きの両開口縁部に接合されるようになっている。
【0049】
このフランジ部70は、フロアパネル18におけるフロアトンネル20の両側部分を補強するトンネルブレースとして機能するようになっている。さらに、左右の側壁38Aすなわちフロアトンネル20の車幅方向に対向する両側壁の開口端部(下端間)を架け渡す底板56(第3シュラウド52、第4シュラウド54)は、フロアトンネル20を補強する補強部材として機能するようになっている。
【0050】
次に、本実施形態の作用について、図7に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0051】
上記構成の冷却風導入構造10が適用された自動車Aでは、その走行の際に、パワーユニット12と冷却ユニット22とを冷却水が循環する。この冷却水は、冷却ユニット22において空気との熱交換により冷却される。また、空調装置を作動時には、冷媒が冷却ユニット22、膨張弁、エバポレータ、コンプレッサの順で循環して冷凍サイクルが形成される。冷却ユニット22は、空気との熱交換により冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサとして機能する。
【0052】
この冷却ユニット22の熱交換は、自動車Aの走行風、又はクロスフローファン50の作動により生じる空気流(冷却風)が冷却ユニット22の空気側流路を流れることで行われる。以下、具体的に説明する。
【0053】
冷却ECU64は、ステップS10で車速センサ66からの信号に基づいて自動車Aの車速Vが所定の車速V1以上であるか否かを判断する。冷却ECU64は、車速Vが所定の車速V1以上であると判断すると、ステップS12に進み、アクチュエータ62を制御して可動フラップ60を開放位置に移動させる共に、クロスフローファン50を非作動とする(停止させる)。すると、図4に示される如く、自動車Aの走行風Fhが車両上向きのベクトル成分を持ってダクト26に流入し、冷却ユニット22を矢印FA方向に通過する。この走行風Fhは、共通通風路46経由して第1通風路42を通過する。
【0054】
一方、冷却ECU64は、ステップS10で車速Vが所定の車速V1以上であると判断すると、ステップS14に進み、冷却水温Tが所定の温度T1以上であるか否かを判断する。冷却水温Tが所定の温度T1以上であると判断した場合、冷却ECU64は、ステップS16に進み、アクチュエータ62を制御して可動フラップ60にて流入口42Aを閉止させると共に、クロスフローファン50を作動させる。すると、図3に示される如く、ダクト26、冷却ユニット22、共通通風路46、第2通風路44を通過する空気流である冷却風Flが生成される。これにより、冷却ユニット22では、この冷却風Flと冷却水、冷媒との熱交換が行われる。
【0055】
さらに、冷却ECU64は、ステップS14で冷却水温Tが所定の温度T1を下回ると判断した場合、ステップS18に進み、アクチュエータ62を制御して可動フラップ60を開放位置に移動させる共に、クロスフローファン50を非作動とする(停止させる)。この場合、冷却ユニット22においては、車両走行に伴いダクト26に流入する少量の走行風と冷却水との熱交換によって、該冷却水を十分に冷却することができる。
【0056】
ここで、冷却風導入構造10では、自動車Aの低速走行時でかつパワーユニット12の冷却要求が相対的に高い場合には、クロスフローファン50が作動されて生じる空気流である冷却風Flによって、所要の冷却性能を得ることができる。この際、第1通風路42の流入口42Aが可動フラップ60にて閉止されているので、クロスフローファン50の作動によって第1通風路42から第2通風路44に向かう流れが生じることもない。
【0057】
一方、冷却風導入構造10では、軸方向が車幅方向に略一致されたクロスフローファン50によって、低速走行時又は車両停止時の冷却ユニット22での熱交換用の冷却風Flが生成される構成であるため、高速走行時にクロスフローファン50を停止した場合に該クロスフローファン50が走行風Fhの通風抵抗となりにくい。また、このクロスフローファン50は、走行風Fhが通過する第1通風路42とは独立した第2通風路44に配置されているので、走行風Fhの通風抵抗には一層なりにくい。
【0058】
しかも、冷却風導入構造10では、第2通風路44が前傾配置された冷却ユニット22の車両下部に対する車両後方に配置されているので、クロスフローファン50は、その大部分が矢印FA方向に沿って第1通風路42に流入する走行風Fhの通過範囲外(風流れのない、又はごく弱い部分)に位置するととなり、走行風Fhの通風抵抗にはより一層なりにくい。すなわち、冷却ユニット22を上後向きに通過した走行風Fhは、通風抵抗の原因となり得るクロスフローファン50が配置されていない第1通風路42を通過する。
【0059】
以上により、冷却風導入構造10では、例えば軸流ファンが冷却ユニット22の後面22Aに積層された比較例の如く、自動車Aの高速走行時に軸流ファンが大きな通風抵抗となることがない。このため、冷却風導入構造10では、自動車Aの高速走行時における冷却ユニット22の冷却効率が高く、所要の冷却性能を得ることができる。
【0060】
このように、冷却風導入構造10では、冷却ユニット22の後方に第1通風路42、第2通風路44を設けたので、自動車Aの高速走行時、低速走行時のそれぞれに冷却ユニット22に所要の冷却性能を発揮させることができる。しかも、冷却水温Tが所定の温度T1を下回る場合、すなわちパワーユニット12の冷却要求が相対的に低い場合には、クロスフローファン50を非作動として低消費エネルギ化(省電力化)を図ることができる。
【0061】
また、冷却風導入構造10では、冷却ユニット22が上記の通り前傾されているので、該冷却ユニット22の設置スペースの車両上下方向の寸法を低く抑えることができる。これにより、フロアトンネル20の高さを抑えたり、冷却ユニット22下端の地上高を確保したりしやすくなる。
【0062】
さらに、冷却風導入構造10では、冷却ユニット22と第1通風路42及び第2通風路44との間に共通通風路46が形成されているので、冷却ユニット22を通過した走行風Fhのほぼ全量を第1通風路42に流入させ、また冷却ユニット22を通過したFlのほぼ全量を第2通風路44に流入させることができる。このため、冷却ユニット22の後方流路を上下に分割した構成において、冷却ユニット22を上下に大型化することなく、高速走行時、低速走行時に所要の冷却性能を得ることができる。すなわち、冷却風導入構造10では、共通通風路46が形成されない構成と比較して冷却ユニット22を小型化することができ、上記したフロアトンネル20の高さを抑えたり、冷却ユニット22下端の地上高を確保したりすることに一層寄与する。
【0063】
またさらに、冷却風導入構造10では、冷却ユニット22と、第1シュラウド38と、第2シュラウド40と、可動フラップ機構58とを主要部として冷却モジュール68が構成されているので、車体に対する組付性が良好である。すなわち、冷却ユニット22の車両後方に2分割された第1通風路42、第2通風路44が形成された構造を、フロアトンネル20内に容易に構成することができる。
【0064】
なお、上記した実施形態では、可動フラップ機構58がアクチュエータ62を備えた能動式の開閉手段である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、可動フラップ60の開閉制御を行わない構成においては、車両停止時や低速走行時にはスプリング等の付勢力にて閉止位置に偏倚される可動フラップ60が走行風Fhの風圧により開放位置に移動させる受動式の開閉手段を用いても良い。この構成では、スプリングのばね定数により流入口42Aを開放する車速を設定することができる。また、冷却ECU64は、車速及びパワーユニット12の冷却水温に応じてクロスフローファン50の作動、停止を制御することとなる。
【0065】
また、上記した実施形態では、ダクト26の車両前方にベンチュリ壁32が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ダクト26の前方のアンダカバー24を平坦(路面Rに対し略平行に)形成しても良い。さらに、ベンチュリ壁32と共に又はベンチュリ壁32に代えて、ダクト26に走行風Fhを流入させる空力構造を設けても良い。このような空力構造として、例えば冷却ユニット22の下端からフロア下に突出したスパッツ等の導風部材を設けることができる。また、この導風部材は、例えば車速に応じて形状や姿勢を変化させるものとしても良い。
【0066】
さらに、上記した実施形態では、内燃機関を含むパワーユニット12が車室Cの前方に位置するパワーユニット室14に配置されてフロントホイールWfを駆動する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、パワーユニット12がフロントホイールWfに代えて又はフロントホイールWfと共にリヤホイールを駆動する構成としても良く、パワーユニット12がモータを含まない構成(一般的なFF車、FR車、4WD車等のエンジン車)としても良く、内燃機関を含むパワーユニット12が車室Cの後方に位置するパワーユニット室に配置される構成としても良く、パワーユニットが内燃機関を含まない構成としても良い。これらの構成では、車両下向きに開口する導入口26Aに代えて、例えばバンパリインフォースメントやフロントグリルにおいて車両前向きに開口するダクトを用いることも可能である。
【0067】
またさらに、上記した実施形態では、冷却ユニット22、第1シュラウド38、第2シュラウド40、クロスフローファン50、可動フラップ機構58等が冷却モジュール68を構成する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、冷却モジュール68の構成部品の一部又は全部が個別に車体に組み付けられる構成としても良い。この構成では、第1シュラウド38を廃止してフロアトンネル20と第2シュラウド40との間に第1通風路42を形成することも可能である。
【0068】
その他、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
10 冷却風導入構造
12 パワーユニット
20 フロアトンネル
22 冷却ユニット(熱交換器)
38 第1シュラウド(通風路形成部材)
40 第2シュラウド(通風路形成部材)
42 第1通風路
44 第2通風路
46 共通通風路
50 クロスフローファン
58 可動フラップ機構(開閉手段)
64 冷却ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアトンネルの車両前後方向の前部に設けられた空冷式の熱交換器と、
前記フロアトンネル内における前記熱交換器に対する車両前後方向の後方に、前記熱交換器を通過した走行風が導かれるように形成された第1通風路と、
前記フロアトンネル内における前記熱交換器に対する車両前後方向の後方に、前記第1通風路とは独立した流路を成すように設けられた第2通風路と、
軸方向が車幅方向に一致するように前記第2通風路に設けられたクロスフローファンと、
を備えた冷却風導入構造。
【請求項2】
前記熱交換器は、車両上下方向の上部が下部に対し車両前後方向の前側に位置するように傾斜されており、
前記第2通風路は、前記熱交換器の車両上下方向の下部に対する車両前後方向の後側に配置されている請求項1記載の冷却風導入構造。
【請求項3】
前記熱交換器は、車両の駆動源を冷却するための冷媒との空気との熱交換器であり、
前記第1通風路は、前記第2通風路に対する車両上下方向の上側に配置されており、
前記第1通風路を開閉する開閉機構と、
車両の走行速度が所定速度を越える場合又は前記冷媒の温度が所定温度未満の場合に、前記第1通風路を開くと共に前記クロスフローファンが非作動とされるように前記開閉機構及び前記クロスフローファンを制御し、車両の走行速度が前記所定速度以下でありかつ前記冷媒の温度が所定温度以上である場合に、前記第1通風路を閉じると共に前記クロスフローファンが作動されるように前記開閉機構及び前記クロスフローファンを制御する制御手段と、
をさらに備えた請求項2記載の冷却風導入構造。
【請求項4】
車両前後方向における前記熱交換器と前記第1通風路及び第2通風路との間には、該第1通風路及び第2通風路のそれぞれに連通する共通通風路が形成されている請求項3記載の冷却風導入構造。
【請求項5】
前記熱交換器、前記クロスフローファン、並びに、前記第1通風路及び第2通風路を形成する通風路形成部材とが車体に対し一体に着脱し得るようにモジュール化されている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の冷却風導入構造。
【請求項6】
前記熱交換器は、パワーユニットを冷却するための冷媒を冷却するためのラジエータ、及び空調装置の冷凍サイクルを構成する凝縮器の少なくとも一方を含んで構成されている請求項1〜請求項5の何れか1項記載の冷却風導入構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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