説明

冷媒流路切換弁、及び空気調和装置

【課題】比較的簡素な構造で冷媒の流路を切り換えることができる冷媒流路切換弁、及びこの冷媒流路切換弁を備えた空気調和装置を提案する。
【解決手段】冷媒流路切換弁(60)は、出力軸(74)を有する駆動機構(70)と、第1から第6のポート(91〜96)が接続されるケース部(80)と、ケース部(80)に収容されて出力軸(74)に回転駆動されることで、各ポート(91〜96)の連通状態を切り換える切換機構(100)とを備え、切換機構(100)は、第2ポート(92)と第3ポート(93)とを連通させ且つ第4ポート(94)と第5ポート(95)とを連通させる第1角度位置と、第1ポート(91)と第2ポート(92)とを連通させ且つ第4ポート(94)と第5ポート(95)とを連通させる第2角度位置と、第1ポート(91)と第2ポート(92)とを連通させ且つ第4ポート(94)と第6ポート(96)とを連通させる第3角度位置とに、変位するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路における冷媒の流路を切り換える冷媒流路切換弁、及びこの冷媒流路切換弁を備えた空気調和装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルが行われる冷媒回路を備えた空気調和装置が知られている。例えば特許文献1には、この種の空気調和装置が開示されている。
【0003】
この空気調和装置の冷媒回路には、圧縮機、室外熱交換器、複数の室内膨張弁、複数の室内熱交換器等が接続されている。また、冷媒回路には、冷媒の流路を切り換えるための四方切換弁や複数の電磁弁が接続されている。空気調和装置では、冷媒の流路が切り換えられることで、暖房運転や冷房運転等の各種の運転が実行される。
【0004】
暖房運転では、各室内熱交換器が凝縮器(放熱器)となり、室外熱交換器が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。これにより、室内熱交換器では、室内空気が冷媒によって加熱される。また、冷房運転では、室外熱交換器が凝縮器となり、各室内熱交換器が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。これにより、室内熱交換器では、室内空気が冷媒によって冷却される。更に、この空気調和装置は、電磁弁の開閉に伴い冷媒の流路を切り換えることで、少なくとも1つの室内熱交換器で室内を冷房すると同時に他の室内熱交換器で室内を暖房する運転が可能な、いわゆる冷暖フリー式に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−138954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に開示のような空気調和装置において、2つの圧縮機(低段側圧縮機及び高段側圧縮機)で冷媒を2段階に圧縮するとともに、中間圧の冷媒をインタークーラで冷却する動作を実行させることが考えられる。
【0007】
このような冷媒回路について、図17を参照しながら詳細に説明する。図17に示す空気調和装置(200)の冷媒回路(201)は、室内ユニット側の回路を省略して室外ユニット側の回路のみを表したものである。冷媒回路(201)には、低段側圧縮機(202)、高段側圧縮機(203)、室外熱交換器(204)、室外膨張弁(205)、及びインタークーラ(206)が接続されている。低段側圧縮機(202)と高段側圧縮機(203)とは、直列に接続されている。これにより、冷媒回路(201)では、低段側圧縮機(202)と高段側圧縮機(203)とで冷媒を二段階に圧縮する、いわゆる二段圧縮式の冷凍サイクルが可能となっている。
【0008】
また、同図の冷媒回路(201)には、冷媒の流路を切り換えるための機構として、2つの四方切換弁(207,208)が設けられている。具体的に、この空気調和装置では、冷媒の循環方向を切り換えて冷房運転や暖房運転を切り換えるための第1の四方切換弁(207)と、低段側圧縮機(202)で圧縮した後の中間圧の冷媒をインタークーラ(206)へ供給したり、この供給を停止したりするための第2の四方切換弁(208)とが設けられている。即ち、この空気調和装置(200)では、第1四方切換弁の4つのポートの連通状態を切り換えることで、冷房運転と暖房運転とが切り換えて行われる。また、冷房運転においては、第2の四方切換弁(208)の4つのポートの連通状態を切り換えることで、この冷房運転中に第1動作と第2動作とが切り換えて行われる。第1動作では、低段側圧縮機(202)で中間圧まで圧縮された冷媒がインタークーラ(206)を介さずに高段側圧縮機(203)まで送られ、この、高段側圧縮機(203)で高圧にまで圧縮される。一方、第2動作では、低段側圧縮機(202)で中間圧まで圧縮された冷媒がインタークーラ(206)へ送られる。インタークーラ(206)では、冷媒が室外空気等によって冷却される。これにより、その後に高段側圧縮機(203)へ送られた冷媒の温度は、上記第1動作よりも低くなる。その結果、第2動作では、高段側圧縮機(203)において冷媒の圧縮に要する動力が軽減され、この空気調和装置の省エネ性の向上が図られる。
【0009】
このように空気調和装置の冷媒回路において、冷媒の流路を比較的複数種に変更する場合、その冷媒の流路の数に応じて、冷媒の流路を切り換えるための機構も複雑となる。具体的に、上述した図17に示す参考例では、冷媒回路(201)に2つの四方切換弁(207,208)を設け、各ポートに配管を繋いだり、配管の一端を封鎖したりする必要がある。その結果、このような冷媒の流路の切換機構の複雑化を招くという問題が生じる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡素な構造で冷媒の流路を切り換えることができる冷媒流路切換弁、及びこの冷媒流路切換弁を備えた空気調和装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換える冷媒流路切換弁を対象とする。そして、この冷媒流路切換弁は、出力軸(74,147)を有する駆動機構(70,145)と、第1から第6のポート(91〜96,131〜136)が接続されるケース部(80,140)と、前記ケース部(80,140)に収容されて前記出力軸(74,147)に回転駆動されることで、前記各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換える切換機構(100,150)と、を備え、前記切換機構(100,150)は、第2ポート(92,132)と第3ポート(93,133)とを連通させ且つ第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とを連通させる第1角度位置と、第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とを連通させ且つ第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とを連通させる第2角度位置と、前記第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とを連通させ且つ第4ポート(94,134)と第6ポート(96,136)とを連通させる第3角度位置とに、変位するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第1の発明の冷媒流路切換弁には、ケース部(80,140)に6つのポート(91〜96,131〜136)が接続される。ケース部(80,140)内には、切換機構(100,150)が設けられる。駆動機構(70,)によって出力軸(74)が回転駆動されると、切換機構(100,150)も回転駆動されて変位する。これにより、冷媒流路切換弁では、切換機構(100,150)が第1から第3までの角度位置に変位する。
【0013】
具体的に、切換機構(100,150)が第1角度位置に変位すると、第2ポート(92,132)と第3ポート(93,133)とが連通し且つ第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とが連通する。これにより、第2ポート(92,132)を流通した冷媒を第3ポート(93,133)へ送ると同時に第4ポート(94,134)を流通した冷媒を第5ポート(95,135)へ送ることができる。また、切換機構(100,150)が第2角度位置に変位すると、第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)が連通し且つ第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)が連通する。これにより、第1ポート(91,131)を流通した冷媒を第2ポート(92,132)へ送ると同時に第4ポート(94,134)を流通した冷媒を第5ポート(95,135)へ送ることができる。更に、切換機構(100,150)が第3角度位置に変位すると、第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とが連通し且つ第4ポート(94,134)と第6ポート(96,136)とが連通する。これにより、第1ポート(91,131)を流通した冷媒を第2ポート(92,132)へ送ると同時に第4ポート(94,134)を流通した冷媒を第6ポート(96,136)へ送ることができる。
【0014】
以上のように、本発明では、1つの駆動機構(70,145)を用いて切換機構(100,150)を3つの角度位置に変位させることで、少なくとも3種類の冷媒の流路を形成することができる。即ち、例えば図17に示す例では、各四方切換弁に4つのポートをそれぞれ設けたり、各四方切換弁を異なる駆動源で別々に制御する必要がある。これに対し、本願発明では、ポート(91〜96,131〜136)の数も少なくなるため、各ポート(91〜96,131〜136)に接続する冷媒配管の本数も減らせる。また、1つの駆動源(駆動機構(70,145))だけで各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換えることができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、前記ケース部(80)は、出力軸(74)の軸方向に2段に重ねられて、該出力軸の周囲に形成される筒状の第1収容室(85)と第2収容室(86)とを形成し、前記第1から第3までのポート(91〜93)が前記第1収容室(85)に接続され、前記第4から第6までのポート(94〜96)が前記第2収容室(86)に接続され、前記切換機構(100)は、前記第1収容室(85)に収容されて前記出力軸(74)に回転駆動されることで、第1から第3までのポート(91〜93)の連通状態を切り換える第1切換部(110)と、前記第2収容室(86)に収容されて前記出力軸(74)に回転駆動されることで、第4から第6までのポート(94〜96)の連通状態を切り換える第2切換部(120)とを含んでいることを特徴とする。
【0016】
第2の発明では、ケース部(80)において、第1収容室(85)と第2収容室(86)とが軸方向に二段重ねに形成される。第1収容室(85)には、第1切換部(110)が収容され、第2収容室(86)には、第2切換部(120)が収容される。出力軸(74)は、第1切換部(110)及び第2切換部(120)の双方に連結される。これにより、駆動機構(70)の出力軸(74)が回転すると、第1切換部(110)と第2切換部(120)とが同時に変位する。その結果、第1収容室(85)では、第1から第3までのポート(91〜93)の連通状態が切り換わり、第2収容室(86)では、第4から第6までのポート(94〜96)までの連通状態が切り換わる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、前記各ポート(91〜96)は、対応する収容室(85,86)の軸方向端面に開口するように前記ケース部(80)に接続され、前記第1切換部(110)は、前記第1収容室(85)の軸方向両端に亘って延びる略筒状に形成されて、該第1収容室(85)を内側の第1内側室(IS1)と外側の第1外側室(OS1)とに区画する第1仕切部(111)を有し、前記第2切換部(120)は、前記第2収容室(86)の軸方向両端に亘って延びる略筒状に形成されて、該第2収容室(86)を内側の第2内側室(IS2)と外側の第2外側室(OS2)とに区画する第2仕切部(121)を有し、前記各収容室(85,86)の内側室(IS1,IS2)と外側室(OS1,OS2)の一方又は両方は、各仕切部(111,121)の回動に伴い、対応する各ポート(91〜96)の開口端の連通状態を切り換える連通路を構成することを特徴とする。
【0018】
第3の発明では、第1から第3までのポート(91〜93)が、第1収容室(85)の軸方向端面に開口し、第4から第6までのポート(94〜96)が、第2収容室(86)の軸方向端面に開口する。第1収容室(85)には、筒状の第1仕切部(111)が収容される。これにより、第1収容室(85)は、第1仕切部(111)の外側の第1外側室(OS1)と、第1仕切部(111)の内側の第1内側室(IS1)とに区画される。同様に、第2収容室(86)には、筒状の第2仕切部(121)が収容される。これにより、第2収容室(86)は、第2仕切部(121)の外側の第2外側室(OS2)と、第2仕切部(121)の内側の第2内側室(IS2)とに区画される。駆動機構(70)の出力軸(74)が回転すると、第1仕切部(111)及び第2仕切部(121)が同時に回転駆動される。
【0019】
第1収容室(85)では、第1から第3までのポート(91〜93)の各開口端が、第1仕切部(111)の第1内側室(IS1)や第1外側室(OS1)を通じて連通する。ここで、第1仕切部(111)が回動すると、第1収容室(85)に区画される第1内側室(IS1)や第1外側室(OS1)の位置も変更される。その結果、第1から第3までのポート(91〜93)の連通状態が切り換えられる。同様に、第2収容室(86)では、第4から第6までのポート(94〜96)の開口端が、第2仕切部(121)の第2内側室(IS2)や第2外側室(OS2)を通じて連通する。ここで、第2仕切部(121)が回動すると、第2収容室(86)に区画される第2内側室(IS2)や第2外側室(OS2)の位置も変更される。その結果。第4から第6までのポート(94〜96)の連通状態も切り換えられる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、前記各仕切部(111,121)は、前記出力軸(74)の軸周りに沿うような円弧状に形成され、前記各ポート(91〜96)の開口端は、対応する仕切部(111,121)の回転軌跡に跨るように、出力軸(74)の軸周りに配列されていることを特徴とする。
【0021】
第4の発明では、第1収容室(85)において、出力軸(74)の軸周りに円弧状の第1仕切部(111)が形成される。第1から第3までのポート(91〜93)の各開口端は、第1仕切部(111)の回転軌跡に跨るように配列される。これにより、第1仕切部(111)が回動することで、第1内側室(IS1)や第1外側室(OS1)を通じての、第1から第3までの各ポート(91〜93)の連通状態が切り換わる。第2収容室(86)において、出力軸(74)の軸周りに円弧状の第2仕切部(121)が形成される。第4から第6までのポート(94〜96)の各開口端は、第2仕切部(121)の回転軌跡に跨るように配列される。これにより、第2仕切部(121)が回動することで、第2内側室(IS2)や第2外側室(OS2)を通じての、第4から第6までの各ポート(94〜96)の連通状態が切り換わる。
【0022】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記ケース部(140)には、前記第1角度位置から第3角度位置までの範囲で、第1外側室と第2外側室(OS2)とを連通させる内部連通路(87)が形成されていることを特徴とする。
【0023】
第5の発明では、各仕切部(111,121)の第1角度位置から第3角度位置までの範囲において、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)とが内部連通路(87)を介して連通する。これにより、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)との圧力とが同じ圧力となる。このように、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)とを同じ圧力雰囲気とする構造とする。ここで、仮に第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)とが異なる圧力である場合、出力軸(74)の軸周り等に、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)との間での冷媒の流通を禁止するためのシール機構が必要となる。これに対し、本願発明では、両者の外側室(OS1,OS2)を同じ圧力に設定できるため、このようなシール機構は不要となる。
【0024】
第6の発明は、第1の発明において、前記ケース部(140)は、前記出力軸(74)の周囲に扁平な筒状の1つの収容室(144)を形成しており、前記第1から第6のポート(131〜136)が前記1つの収容室(144)に接続され、前記切換機構(100)は、前記1つの収容室(144)に収容される円板状に形成され、出力軸(74)に回転駆動されることで、各ポート(131〜136)の連通状態を切り換える複数の内部通路(C1〜C14)を有する円板状切換部(153)を含んでいることを特徴とする。
【0025】
第6の発明では、ケース部(140)内に扁平な1つの収容室(144)が形成され、この収容室(144)に6つのポート(131〜136)が接続される。収容室(144)内の円板状切換部(153)が出力軸(74)によって回転駆動されると、円板状切換部(153)に形成された複数の内部通路(C1〜C14)と各ポート(131〜136)の連通状態が切り換わる。これにより、6つのポート(131〜136)の連通状態が切り換えられる。
【0026】
第7の発明は、空気調和装置を対象とする。そして、この空気調和装置は、低段側圧縮機(22)及び高段側圧縮機(23)と、該低段側圧縮機(22)の吐出側と高段側圧縮機(23)の吸入側との間に並列に接続される第1及び第2の分岐路(31,32)と、該第2分岐路(32)に接続される冷却機構(35)と、室外熱交換器(24)と、室内熱交換器(43a,43b,43c)と、前記請求項1乃至6のいずれか1つに記載の冷媒流路切換弁(60,130)とを有し、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)を備え、前記冷媒流路切換弁(60,130)は、前記第1ポート(91,131)が、前記高段側圧縮機(23)の吐出側の高圧ライン(29)に接続され、前記第2ポート(92,132)が、前記室外熱交換器(24)の一端側に接続され、前記第3ポート(93,133)が、前記低段側圧縮機(22)の吸入側の低圧ライン(26)と接続され、前記第4ポート(94,134)が、前記低段側圧縮機(22)の吐出側の吐出ライン(27)に接続され、前記第5ポート(95,135)が、前記第1分岐路(31)に接続され、前記第6ポート(96,136)が、前記第2分岐路(32)に接続されることを特徴とする。
【0027】
第7の発明の空気調和装置では、冷媒流路切換弁(60,130)の切換機構(100,150)の角度位置が、第1から第3までの角度位置に変位することで、3つの動作が実行可能となる。具体的に、冷媒流路切換弁(100,150)が第1角度位置になると、第2ポート(92,132)と第3ポート(93,133)が連通する。この状態では、室外熱交換器(24)の一端と低段側圧縮機(22)の吸入側とが連通する。その結果、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(24)を低圧冷媒が流れ、この低圧冷媒が蒸発する。つまり、この状態では、室内熱交換器(43a,43b,43c)を放熱器(凝縮器)として室外熱交換器(24)を蒸発器とする冷凍サイクル(即ち、暖房サイクル)を実行できる。また、冷媒流路切換弁(60,130)が第1角度位置になると、第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とが連通する。この状態では、低段側圧縮機(22)の吐出側の吐出ライン(27)と第1分岐路(31)とが連通する。その結果、低段側圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第1分岐路(31)を通じて高段側圧縮機(23)に送られ更に圧縮される。つまり、この状態では、暖房運転時において、低段側圧縮機(22)で中間圧まで圧縮された冷媒を高段側圧縮機(23)で高圧にまで圧縮する、二段圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0028】
冷媒流路切換弁(60,130)が第2角度位置になると、第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とが連通する。この状態では、高段側圧縮機(23)の吐出側と室外熱交換器(24)の一端とが連通する。その結果、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(24)を高圧冷媒が流れ、この高圧冷媒が室外空気へ放熱する。つまり、この状態では、室外熱交換器(24)を放熱器(凝縮器)として室内熱交換器(43a,43b,43c)を蒸発器とする冷凍サイクル(即ち、冷房サイクル)を実行できる。また、冷媒流路切換弁(60,130)が第2角度位置になると、第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とが連通する。この状態では、低段側圧縮機(22)の吐出側の吐出ライン(27)と第1分岐路(31)とが連通する。その結果、低段側圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第1分岐路(31)を通じて高段側圧縮機(23)に送られ更に圧縮される。つまり、この状態では、冷房運転時において、低段側圧縮機(22)で中間圧まで圧縮された冷媒を高段側圧縮機(23)で高圧にまで圧縮する、二段圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0029】
冷媒流路切換弁(60,130)が第3角度位置になると、第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とが連通する。従って、この状態においても、冷媒回路(11)では、冷房サイクルを実行できる。また、冷媒流路切換弁(60,130)が第3角度位置になると、第4ポート(94,134)と第6ポート(96,136)とが連通する。この状態では、低段側圧縮機(22)の吐出側の吐出ライン(27)と第2分岐路(32)とが連通する。その結果、低段側圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第2分岐路(32)を流れる。ここで、第2分岐路(32)には、冷媒を冷却するための冷却機構(35)が設けられている。このため、第2分岐路(32)を流れる中間圧冷媒は、冷却機構(35)によって冷却される。冷却機構(35)によって冷却された冷媒は、高段側圧縮機(23)に送られて更に圧縮される。このように、高段側圧縮機(23)に吸入される冷媒を冷却すると、この冷媒を高圧にまで圧縮するのに要する圧縮動力が軽減される。以上のように、この状態では、冷房運転時において、中間圧の冷媒が冷却機構(35)によって冷却されるため、冷房運転における省エネ性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、6つのポート(91〜96,131〜136)をケース部(80,140)に接続し、駆動機構(70,145)によって切換機構(100,150)を3つの角度位置の間で回転駆動させることで、各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換えるようにしている。このため、1つの駆動源で各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換えることができるため、冷媒流路切換弁の構造の簡素化を図ることができる。また、切換機構(100,150)を回動させて連通状態を切り換える機構としているため、例えば参考例の四方切換弁のように冷媒の圧力差がなくとも、切換機構(100,150)を容易に駆動できる。また、参考例の四方切換弁のように、常時通電をせずとも、連通状態を所定の状態に保持できるため、省エネ性の向上を図ることができる。
【0031】
第2の発明では、2つの収容室(85,86)を軸方向に二段重ねとし、各収容室(85,86)の切換部(110,120)を同時に駆動させて各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換えるようにしている。このため、冷媒流路切換弁(60,130)が軸直角方向に大型化されるのを回避できる。
【0032】
第3の発明では、各収容室(85,86)に筒状の仕切部(111,121)を設け、各仕切部(111,121)の外側室(OS1,OS2)及び内側室(IS1,IS2)を、各ポート(91〜96)の連通路として利用するようにしている。このため、切換機構(100)の簡素化を図ることができる。
【0033】
特に第4の発明では、出力軸(74)の軸周りに円弧状の仕切部(111,121)を設け、この仕切部(111,121)の回転軌跡に跨るように、各ポート(91〜96)の開口端を配列している。これにより、収容室(85,86)のスペースを有効に利用でき、切換機構(100)を径方向に小型化できる。
【0034】
第5の発明では、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)とを内部連通路(87)を通じて連通させるようにしたので、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)との間で圧力差を低減できる。その結果、出力軸(74)の軸周りの隙間をシールする必要もなく、冷媒流路切換弁の構造の簡素化を図ることができる。
【0035】
第6の発明では、ケース部(140)内に扁平な1つの収容室(144)を形成し、この収容室(144)内の円板状切換部(153)を回転駆動させることで、6つのポート(131〜136)の連通状態を切り換えるようにしている。これにより、本発明では、冷媒流路切換弁を軸方向に小型化できる。
【0036】
第7の発明では、空気調和装置の冷媒回路(11)に、上記第1から第6までの発明の冷媒流路切換弁(60,130)を用い、3つの動作を切り換えるようにしている。具体的に、本発明では、冷媒流路切換弁(60,130)を第1から第3までの角度位置に変位させることで、暖房運転、冷房運転の第1動作(中間圧の冷媒を冷却機構をバイパスして高段側圧縮機(23)で更に圧縮する動作)と、冷房運転の第2動作(中間圧の冷媒を冷却機構で冷却して高段側圧縮機(23)で更に圧縮する動作)とを切り換えることができる。従って、例えば図17に示す参考例の冷媒回路と比較して、冷媒流路切換弁の数量やポート数、冷媒配管の本数等を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、実施形態1に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る複合弁の全体構成を表す斜視図であり、ケースユニットの一部を透視させて表したものである。
【図3】図3は、図2におけるIII-III線断面図である。
【図4】図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
【図5】図5は、図3におけるV-V線断面図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る複合弁の切換機構を拡大して表した図3相当図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る複合弁の切換状態(切換機構の角度位置)の変化を説明するための図4及び図5相当図であり、図7(A)は第1角度位置、図7(B)は第2角度位置、図7(C)は第3角度位置をそれぞれ表したものである。
【図8】図8は、実施形態1に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図であり、暖房運転時の冷媒の流れを付加したものである。
【図9】図9は、実施形態1に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図であり、冷房運転の第1動作時の冷媒の流れを付加したものである。
【図10】図10は、実施形態1に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図である、冷房運転の第2動作時の冷媒の流れを付加したものである。
【図11】図11は、実施形態2に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図である。
【図12】図12は、実施形態2に係るロータリー弁の分解斜視図である。
【図13】図13は、実施形態2に係るロータリー弁の軸直角断面図である。
【図14】図14は、実施形態2に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図であり、暖房運転時の冷媒の流れを付加したものである。
【図15】図15は、実施形態2に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図であり、冷房運転の第1動作の冷媒の流れを付加したものである。
【図16】図16は、実施形態2に係る空気調和装置の冷媒回路の配管系統図であり、冷房運転の第2動作の冷媒の流れを付加したものである。
【図17】図17は、参考例に係る空気調和装置の冷媒回路の一部を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0039】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る複合弁(60)は、空気調和装置(10)に適用されている。空気調和装置(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷凍装置を構成している。空気調和装置(10)は、室内の冷房と暖房とを切り換えて行うヒートポンプ式である。図1に示すように、空気調和装置(10)は、1つの室外ユニット(20)と、複数の室内ユニット(40a,40b,40c)とを有する、いわゆるマルチ式である。本実施形態では、空気調和装置(10)が、3つの室内ユニット(40a,40b,40c)を有しているが、この数量は単なる例示であり、如何なる数量であっても良い。空気調和装置(10)は、各室内ユニット(40a,40b,40c)に対応する複数の切換ユニット(50a,50b,50c)(以下、BSユニット(50a,50b,50c)という)を有している。空気調和装置(10)は、いわゆる冷暖フリー式(少なくとも1つの室内ユニットで冷房動作を行うと同時に少なくとも1つの室内ユニットで暖房動作を行う運転を実行できる方式)である。
【0040】
室外ユニット(20)は、室外に設置されている。室外ユニット(20)は、熱源側回路を成す室外回路(21)を有している。各室内ユニット(40a,40b,40c)は、室内に設置されている。各室内ユニット(40a,40b,40c)は、利用側回路を成す室内回路(41a,41b,41c)をそれぞれ有している。各BSユニット(50a,50b,50c)は、切換回路(51a,51b,51c)をそれぞれ有している。空気調和装置(10)では、室外回路(21)と各室内回路(41a,41b,41c)と各切換回路(50a,50b,50c)とが接続されることで、閉回路となる冷媒回路(11)が構成されている。本実施形態の冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。つまり、冷媒回路(11)では、二酸化炭素が臨界圧力以上まで圧縮される、いわゆる超臨界サイクルが行われる。
【0041】
〈室外ユニット〉
室外ユニット(20)の室外回路(21)には、低段側圧縮機(22)、高段側圧縮機(23)、室外熱交換器(24)、及び室外膨張弁(25)が設けられている。
【0042】
低段側圧縮機(22)及び高段側圧縮機(23)は、例えばスクロール圧縮機で構成されている。また、低段側圧縮機(22)及び高段側圧縮機(23)は、容量が可変なインバータ式に構成されている。低段側圧縮機(22)の吸入側には、低段側吸入管(26)が接続され、低段側圧縮機(22)の吐出側には、低段側吐出管(27)が接続されている。高段側圧縮機(23)の吸入側には、高段側吸入管(28)が接続され、高段側圧縮機(23)の吐出側には、高段側吐出管(29)が接続されている。室外回路(21)では、低圧の冷媒が低段側圧縮機(22)で中間圧まで圧縮され、この中間圧の冷媒が高段側圧縮機(23)で高圧まで圧縮される。つまり、冷媒回路(11)では、冷媒が二段階に圧縮される、二段圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0043】
室外熱交換器(24)は、熱源側熱交換器を構成している。室外熱交換器(24)は、例えばフィンアンドチューブ式に構成されている。室外熱交換器(24)の近傍には、送風機構としての室外ファン(図示省略)が設けられている。室外熱交換器(24)では、室外ファンが送風する室外空気と冷媒とが熱交換する。
【0044】
室外膨張弁(25)は、冷媒を膨張させる膨張機構を構成している。室外膨張弁(25)は、開度が開閉自在な例えば電子膨張弁で構成されている。
【0045】
低段側圧縮機(22)の吐出側と高段側圧縮機(23)の吸入側との間には、第1分岐路を成す第1分岐管(31)と、第2分岐路を成す第2分岐管(32)とが並列に接続されている。第1分岐管(31)には、第1逆止弁(33)が設けられている。第2分岐管(32)には、第2逆止弁(34)が設けられている。第1逆止弁(33)は、低段側圧縮機(22)から高段側圧縮機(23)側への冷媒の流れを許容する一方、高段側圧縮機(23)から低段側圧縮機(22)への冷媒の流れを禁止する。同様に、第2逆止弁(34)は、低段側圧縮機(22)から高段側圧縮機(23)側への冷媒の流れを許容する一方、高段側圧縮機(23)から低段側圧縮機(22)への冷媒の流れを禁止する。
【0046】
また、第2分岐管(32)には、第2逆止弁(34)の下流側にインタークーラ(35)が設けられている。インタークーラ(35)は、低段側圧縮機(22)で圧縮された中間圧の冷媒を冷却する。つまり、インタークーラ(35)は、冷凍サイクルの圧縮行程中の冷媒を冷却する冷却機構を構成している。具体的に、インタークーラ(35)は、冷媒と空気とを熱交換する空気熱交換器で構成されている。インタークーラ(35)の近傍には、冷却ファン(図示省略)が設けられている。インタークーラ(35)では、冷却ファンが送風する空気(例えば室外空気)と冷媒とが熱交換し、この冷媒が冷却される。なお、中間圧の冷媒を冷却する冷却機構として、他の方式の冷却機構を採用しても良い。
【0047】
室外回路(21)には、冷媒の流路を切り換える冷媒流路切換弁を構成する複合弁(60)が設けられている。複合弁(60)は、第1から第3までのポート(91,92,93)が接続される下側閉塞部(83)と、第4ポートから第6までのポート(94,95,96)が接続される上側閉塞部(82)とが、一体的なユニットを構成している。第1ポート(91)は、高圧分岐管(36)を介して高段側吐出管(29)(即ち、高圧ライン)と接続している。第2ポート(92)は、低圧分岐管(37)を介して低段側吸入管(26)(即ち、低圧ライン)と接続している。第3ポート(93)は、室外熱交換器(24)のガス側端部と接続している。第4ポート(94)は、低段側圧縮機(22)の低段側吐出管(27)(即ち、吐出ライン)と接続している。第5ポート(95)は、第1分岐管(31)の流入端に接続している。第6ポート(96)は、第2分岐管(32)の流入端に接続している。
【0048】
複合弁(60)は、第1から第3までの状態に切り換わるように構成されている。第1状態(図1に示す状態)では、第2ポート(92)と第3ポート(93)とが連通して第1ポート(91)が閉鎖すると同時に、第4ポート(94)と第5ポート(95)とが連通して第6ポート(96)が閉鎖する。第2状態(図9に示す状態)では、第1ポート(91)と第3ポート(93)とが連通して第2ポート(92)が閉鎖すると同時に、第4ポート(94)と第5ポート(95)とが連通して第6ポート(96)が閉鎖する。第3状態(図10に示す状態)では、第1ポート(91)と第3ポート(93)とが連通して第2ポート(92)が閉鎖すると同時に、第4ポート(94)と第6ポート(96)とが連通して第5ポート(95)が閉鎖する。複合弁(60)の構造及び切換動作の詳細については後述する。
【0049】
〈室内ユニット〉
空気調和装置(10)は、3つの室内ユニット(40a,40b,40c)を有している。各室内ユニット(40a,40b,40c)は、異なる部屋の室内にそれぞれ設置される。各室内ユニット(40a,40b,40c)は、利用側回路としての室内回路(41a,41b,41c)をそれぞれ有している。各室内回路(41a,41b,41c)は、一端が液管(12)に接続されている。各室内回路(41a,41b,41c)には、液管(12)側より、室内膨張弁(42a,42b,42c)及び室内熱交換器(43a,43b,43c)が順に接続されている。室内膨張弁(42a,42b,42c)は、冷媒を膨張させる膨張機構を構成している。室内膨張弁(42a,42b,42c)は、開度が開閉自在な例えば電子膨張弁で構成されている。室内熱交換器(43a,43b,43c)の近傍には、送風機構としての室内ファン(図示省略)が設けられている。室内熱交換器(43a,43b,43c)では、室内ファンが送風する室内空気と冷媒とが熱交換する。
【0050】
〈BSユニット〉
空気調和装置(10)は、各室内ユニット(40a,40b,40c)にそれぞれ1つずつ対応する、3つのBSユニット(50a,50b,50c)を有している。各BSユニット(50a,50b,50c)は、切換回路(51a,51b,51c)をそれぞれ有している。各切換回路(51a,51b,51c)は、室内回路(41a,41b,41c)の他端とそれぞれ接続する合流管(52a,52b,52c)を有している。また、各切換回路(51a,51b,51c)は、第1分流管(53a,53b,53c)及び第2分流管(54a,54b,54c)とを有している。各第1分流管(53a,53b,53c)は、一端が合流管(52a,52b,52c)と接続し、他端が高圧ガス管(13)と接続している。各第2分流管(54a,54b,54c)は、一端が合流管(52a,52b,52c)と接続し、他端が低圧ガス管(14)と接続している。各第1分流管(53a,53b,53c)には、それぞれ開閉機構としての第1開閉弁(55a,55b,55c)が設けられる。各第2分流管(54a,54b,54c)には、それぞれ開閉機構としての第2開閉弁(56a,56b,56c)が設けられている。
【0051】
〈複合弁の構造〉
上述したように、空気調和装置(10)の冷媒回路(11)には、複合弁(60)が接続されている。図2及び図3に示すように、複合弁(60)は、ケースユニット(61)、駆動機構(70)、及び切換機構(100)を備えている。
【0052】
ケースユニット(61)は、概略の外形が円柱状の円柱ケース部(62)と、該円柱ケース部(62)の上端に形成されるキャップ状のモータケース部(63)とを有している。モータケース部(63)は、上端部が半球状に形成されて下端に開口が形成されている。円柱ケース部(62)は、軸方向の略中間位置よりも上方に形成されるギアケース部(64)と、該中間位置よりも下方に形成される弁ケース部(80)とを有している。ギアケース部(64)は、モータケース部(63)が立設される上蓋部(65)と、該上蓋部(65)の下側に形成される筒部(66)とを有している。
【0053】
駆動機構(70)は、モータ(71)、モータ駆動軸(72)、変速ギア(73)、及び出力軸(74)を有している。モータ(71)は、モータケース部(63)に収容されている。モータ(71)の下端には、該モータ(71)に回転駆動されるモータ駆動軸(72)が連結している。モータ駆動軸(72)は、上蓋部(65)を貫通して筒部(66)内に延出し、変速ギア(73)と連結している。変速ギア(73)の下端には、出力軸(74)が連結している。出力軸(74)は、弁ケース部(80)の内部を下方に延びている。
【0054】
弁ケース部(80)は、筒状カバー(81)と上側閉塞部(82)と下側閉塞部(83)と中間プレート(84)を有している。
【0055】
筒状カバー(81)は、上側閉塞部(82)と下側閉塞部(83)との間に介設された筒状に形成されている。上側閉塞部(82)は、上下に扁平な略円板状に形成され、ギアケース部(64)の下端、及び筒状カバー(81)の上端を閉塞している。下側閉塞部(83)は、上下に扁平な略円板状に形成され、筒状カバー(81)の下端を閉塞して、円柱ケース部(62)の底部を構成している。
【0056】
中間プレート(84)は、筒状カバー(81)の内部を軸方向の上下に2つの空間(85,86)に仕切っている。具体的に、筒状カバー(81)と下側閉塞部(83)と中間プレート(84)との間には、筒状カバー(81)の内壁に沿うようにリング状の下側スペーサ(75)が介設されている。そして、筒状カバー(81)(厳密には、下側スペーサ(75)の内周面)と、下側閉塞部(83)の上面と、中間プレート(84)の下面との間には、略円柱状の第1収容室(85)が形成されている。同様に、筒状カバー(81)と上側閉塞部(82)と中間プレート(84)との間には、筒状カバー(81)の内壁に沿うようにリング状の上側スペーサ(76)が介設されている。そして、筒状カバー(81)(厳密には、上側スペーサ(76))の内周面)と、上側閉塞部(82)の下面と、中間プレート(84)の上面との間には、略円柱状の第2収容室(86)が形成されている。
【0057】
下側閉塞部(83)の軸心には、出力軸(74)が貫通している。下側閉塞部(83)の軸心部上端には、出力軸(74)の下端面を回転自在に保持する回転支持部材(77)が設けられている。また、下側閉塞部(83)には、上述した第1ポート(91)、第2ポート(92)、及び第3ポート(93)が接続されている。第1から第3までのポート(91,92,93)の端部は、下側閉塞部(83)の外周面に挿通している。下側閉塞部(83)の内部には、第1ポート(91)、第2ポート(92)、及び第3ポート(93)にそれぞれ対応して連通する、3つの内部連通路(97,97,97)が形成されている。各内部連通路(97)は、径方向に延びる径方向通路(97a)と、該径方向通路(97a)の内周側端部から軸方向上方に屈曲して第1収容室(85)に連通する軸方向通路(97b)とをそれぞれ有している。即ち、第1収容室(85)の下面には、第1ポート(91)に対応する内部連通路(97)の開口端となる第1開口部(91a)と、第2ポート(92)に対応する内部連通路(97)の開口端となる第2開口部(92a)と、第3ポート(93)に対応する内部連通路(97)の開口端となる第3開口部(93a)とが形成されている(図4を参照)。
【0058】
上側閉塞部(82)の軸心には、出力軸(74)が貫通している。また、上側閉塞部(82)には、上述した第4ポート(94)、第5ポート(95)、及び第6ポート(96)が接続されている。第4から第6までのポート(94,95,96)の端部は、上側閉塞部(82)の外周面に挿通している。上側閉塞部(82)の内部には、第4ポート(94)、第5ポート(95)、及び第6ポート(96)にそれぞれ対応して連通する、3つの内部連通路(98,98,98)が形成されている。各内部連通路(98)は、径方向に延びる径方向通路(98a)と、該径方向通路(98a)の内周側端部から軸方向下方に屈曲して第2収容室(86)に連通する軸方向通路(98b)とをそれぞれ有している。即ち、第2収容室(86)の上面には、第4ポート(94)に対応する内部連通路(98)の開口端となる第4開口部(94a)と、第5ポート(95)に対応する内部連通路(98)の開口端となる第5開口部(95a)と、第6ポート(96)に対応する内部連通路(98)の開口端となる第6開口部(96a)とが形成されている(図5を参照)。
【0059】
中間プレート(84)の軸心には、出力軸(74)が貫通している。また、中間プレート(84)には、第1収容室(85)と第2収容室(86)とを連通させる連通孔(87)が軸方向に貫通して形成されている。
【0060】
複合弁(60)の切換機構(100)は、第1から第6までのポート(91,92,93,94,95,96)の連通状態を切り換えるためのものである。図3〜図6に示すように、切換機構(100)は、第1収容室(85)に収容される第1切換部(110)と、第2収容室(86)に収容される第2切換部(120)とを備えている。また、第2収容室(86)には、棒状の位置決めピン(101)が軸方向に立設している(例えば図3及び図5を参照)。
【0061】
第1切換部(110)は、出力軸(74)に回転駆動されることで、第1から第3までのポート(91,92,93)の連通状態を切り換えるように構成されている。第1切換部(110)は、筒状の第1仕切部を構成する第1仕切弁(111)を有している。第1仕切弁(111)は、第1本体部(112)と、一対の第1オーリング(113,113)と、一対の第1パッキン(114,114)とを有している。
【0062】
第1本体部(112)は、出力軸(74)と同一の部材で構成され、該出力軸(74)と一体成形されている。第1本体部(112)は、出力軸(74)の軸周りに沿うように形成された第1筒状弁部(115)と、該第1筒状弁部(115)と出力軸(74)とを一体的に結合する連接部(116)とを有している。
【0063】
図4に示すように、第1筒状弁部(115)は、軸直角方向の大まかな外形が、出力軸(74)に沿うような円弧状、ないし繭状、ないし扇状に形成されている。第1筒状弁部(115)は、出力軸(74)の軸心を中心として、周方向に約120°の範囲に亘って形成されている。図6に示すように、第1筒状弁部(115)の内部には、軸方向の中間部位に筒状凸部(117)が形成されている。筒状凸部(117)は、第1筒状弁部(115)の内周の全域に亘って形成されている。これにより、第1筒状弁部(115)の筒状凸部(117)の軸方向の両側には、それぞれ大径開口部(118,118)が形成される。つまり、大径開口部(118,118)は、筒状凸部(117)の内側よりも開口幅が広くなっている。また、第1筒状弁部(115)の軸方向長さが、下側閉塞部(83)から中間プレート(84)までの軸方向の間隔よりも僅かに短くなっている。
【0064】
第1本体部(112)には、一対の大径開口部(118,118)の内部に、筒状凸部(117)と当接するようにそれぞれ第1オーリング(113,113)が嵌め込まれている。第1オーリング(113,113)は、筒状凸部(117)の各段差面に沿うような環状に形成されている。各第1オーリング(113,113)は、第1仕切弁(111)の内側の空間((第1内側室(IS1))と第1仕切弁(111)の外側の空間(第1外側室(OS1))との隙間をシールするためのシール部材を構成している。
【0065】
第1本体部(112)には、一対の大径開口部(118,118)の内部に、第1オーリング(113,113,)に重なるようにそれぞれ第1パッキン(114,114)が嵌め込まれている。第1パッキン(114,114)は、第1オーリング(113,113)に沿うような環状に形成されている。第1パッキン(114)の内側の開口縁部には、テーパー面状の環状の面取り部(114a)が形成されている。これにより、第1パッキン(114)は、軸方向両端側に向かうにつれて、その開口の径が拡大している。第1パッキン(114)は、第1内側室(IS1)と第1外側室(OS1)との隙間をシールするためのシール部材を構成している。
【0066】
第1パッキン(114,114)の各先端部は、第1本体部(112)の軸方向端面よりも外側へ突出しており、第1収容室(85)の軸方向の両端面(下面及び上面)と当接する。これにより、下側の第1パッキン(114)の外周には、第1本体部(112)の軸方向の一端面(下端面)と、第1収容室(85)の下面との間に、筒状の隙間(G1)が形成されている。つまり、この隙間(G1)は、下側の第1パッキン(114)の全周を囲むように形成されている。同様に、上側の第1パッキン(114)の外周には、第1本体部(112)の軸方向の他端面(上端面)と、第1収容室(85)の上面との間に、筒状の隙間(G2)が形成されている。つまり、この隙間(G2)は、上側の第1パッキン(114)の全周を囲むように形成されている。
【0067】
以上のように、本実施形態では、第1仕切弁(111)の軸方向両端側に、それぞれ同じ圧力が作用する背圧空間(G1,G2)が形成される。これにより、第1仕切弁(111)では、軸方向端面に作用する押し付け力が互いに相殺される。例えば仮に、第1仕切弁(111)の一方の軸方向端面にのみ隙間が形成されて、この端面に押し付け力が作用すると、第1仕切弁(111)が片側に押し付けられる。その結果、第1仕切弁(111)を駆動する際の摺動抵抗が増大してしまう。しかしながら、本実施形態では、第1仕切弁(111)に作用する軸方向の両側の押し付け力が互いにキャンセルされるため、このような摺動抵抗の増大を防止できる。
【0068】
第2切換部(120)は、出力軸(74)に回転駆動されることで、第4から第6までのポート(94,95,96)の連通状態を切り換えるように構成されている。第2切換部(120)は、筒状の第2仕切部を構成する第2仕切弁(121)を有している。第2仕切弁(121)は、第2本体部(122)と、一対の第2オーリング(123,123)と、一対の第2パッキン(124,124)とを有している。
【0069】
第2本体部(122)は、出力軸(74)と別体に構成され、キー(102)を介して出力軸(74)と連結されている。第2本体部(122)は、出力軸(74)の軸周りに沿うように形成された第2筒状弁部(125)と、該第2筒状弁部(125)と連接して出力軸(74)とキー(102)を介して連結される連結部(126)とを有している。
【0070】
図5に示すように、第2筒状弁部(125)は、軸直角方向の大まかな外形が、出力軸(74)に沿うような円弧状、ないし繭状、ないし扇状に形成されている。第2筒状弁部(125)は、出力軸(74)の軸心を中心として、約120°の範囲に亘って形成されている。図6に示すように、第2筒状弁部(125)の構成は、上述した第1筒状弁部(115)と同様に構成されている。つまり、第2筒状弁部(125)の軸方向の中間部位には、筒状凸部(127)が形成されている。そして、この筒状凸部(127)の軸方向の両側に、第2オーリング(123,123)及び第2パッキン(124,124)が嵌合している。第2オーリング(123,123)及び第2パッキン(124,124)は、第2仕切弁(121)の内側の空間(第2内側室(IS2))と第2仕切弁(121)の外側の空間(第2外側室(IO2))との隙間をシールするためのシール部材を構成している。
【0071】
また、第2筒状弁部(125)では、第1筒状弁部(115)と同様にして、各第2パッキン(124,124)の外周に、背圧空間としての隙間(G3,G4)がそれぞれ形成されている。これにより、第2仕切弁(121)では、第1仕切弁(111)と同様、軸方向の両側からの押し付け力がキャンセルされるため、駆動中に第2仕切弁(121)に作用する摺動抵抗を低減できる。
【0072】
〈各ポートの開口部、及び各仕切弁の配置関係〉
複合弁(60)の各ポート(91〜96)の開口部(91a〜96a)、及び2つの仕切弁(111,121)の配置関係について、図4及び図5を参照しながら詳細に説明する。
【0073】
上述したように、第1から第3までの開口部(91a〜93a)は、第1収容室(85)の下面側に形成されている。これらの開口部(91a〜93a)は、互いに同一径となる円形状に形成されている。第1から第3までの開口部(91a〜93a)は、これらの各中心点が、出力軸(74)の軸心を中心とした所定半径の仮想円p上に位置するように配列されている。第1開口部(91a)の中心点と第2開口部(92a)の中心点とは、出力軸(74)の軸心を中心として周方向(図4における反時計回り方向)に約60°を成している。一方、第2開口部(92a)の中心点と第3開口部(93a)の中心点とは、出力軸(74)の軸心を中心として周方向(図4における反時計回り方向)に約120°を成している。
【0074】
第1仕切弁(111)は、出力軸(74)が回転駆動されることに伴い、少なくとも図7の(A)、(B)、及び(C)に示す範囲を回動するように構成されている。具体的に、第1仕切弁(111)は、図7(A)に示す角度位置(第1角度位置)を基準として、この第1角度位置よりも反時計回りに約60°回動した角度位置(第2角度位置)、及びこの第2角度位置よりも反時計回りに約60°回動した角度位置(第3角度位置)とに亘って変位する。
【0075】
上述したように、第4から第6までの開口部(94a〜96a)は、第2収容室(86)の上面側に形成されている。これらの開口部(94a〜96a)は、互いに同一径となる円形状に形成されている。また、第4から第6までの開口部(94a〜96a)と、第1から第3までの開口部(91a〜93a)の径も概ね同じである。第4から第6までの開口部(94a〜96a)は、これらの各中心点が、出力軸(74)の軸心を中心とした所定変形の仮想円l上に位置するように配置されている。本実施形態では、上記仮想円pと仮想円lとは概ね同じ半径である。
【0076】
第4開口部(94a)の中心点は、第1開口部(91a)の中心点と軸方向に概ね一致している。第4開口部(94a)の中心点と第5開口部(95a)の中心点とは、出力軸(74)の軸心を中心として周方向(図5における時計回り方向)に約60°を成している。一方、第4開口部(94a)の中心点と第6開口部(96a)の中心点とは、出力軸(74)の軸心を中心として周方向(図5における反時計回り方向)に約120°を成している。
【0077】
2仕切弁(121)は、第1仕切弁(111)と外形が概ね同じであり、且つ軸方向において互いにオーバーラップするように配設されている。つまり、出力軸(74)が回転すると、第1仕切弁(111)と第2仕切弁(121)とは、概ね同じ角度位置を保つように同期して駆動される。
【0078】
第2仕切弁(121)は、出力軸(74)が回転駆動されることに伴い、少なくとも図7の(A)、(B)、及び(C)に示す範囲を回動するように構成されている。具体的に、第2仕切弁(121)は、図7(A)に示す角度位置(第1角度位置)を基準として、この第1角度位置よりも反時計回りに約60°回動した角度位置(第2角度位置)、及びこの第2角度位置よりも反時計回りに約60°回動した角度位置(第3角度位置)とに亘って変位する。なお、第2仕切弁(121)が第1角度位置となる状態では、第2仕切弁(121)と位置決めピン(101)とが当接する。これにより、第2仕切弁(121)、及びこの第2仕切弁(121)に同期して駆動される第1仕切弁(111)は、第1角度位置で保持される。
【0079】
−運転動作−
まず、空気調和装置(10)の基本的な運転動作について説明する。空気調和装置(10)では、室内の暖房を行う暖房運転と、室内の冷房を行う冷房運転とが行われる。また、冷房運転では、中間圧の冷媒を冷却せずに圧縮する第1動作と、中間圧の冷媒をインタークーラ(35)で冷却してから圧縮する第2動作とが実行可能となっている。
【0080】
〈暖房運転〉
図8に示すように、暖房運転では、複合弁(60)が第1状態(即ち、第1角度位置)となる。また、各第1開閉弁(55a,55b,55c)が開放状態となり、各第2開閉弁(56a,56b,56c)が閉鎖状態となる。また、室内膨張弁(42a,42b,42c)が開放され、室外膨張弁(25)の開度が適宜調節される。このような状態で、低段側圧縮機(22)及び高段側圧縮機(23)が運転されると、各室内熱交換器(43a,43b,43c)が放熱器となり、室外熱交換器(24)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0081】
具体的に、低段側圧縮機(22)で圧縮されて中間圧にまで圧縮された冷媒は、第4ポート(94)及び第5ポート(95)を通過し、第1分岐管(31)を流れる。第1分岐管(31)を流出した冷媒は、高段側圧縮機(23)で高圧にまで圧縮される。この高圧冷媒は、高圧ガス管(13)を経由して各第1分流管(53a,53b,53c)に流入し、各室内熱交換器(43a,43b,43c)を流れる。各室内熱交換器(43a,43b,43c)では、冷媒が室内空気へ放熱する。これにより、室内空気が加熱される。
【0082】
各室内熱交換器(43a,43b,43c)で放熱した冷媒は、液管(12)で合流し、室外膨張弁(25)で減圧された後に室外熱交換器(24)を流れる。室外熱交換器(24)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(24)で蒸発した冷媒は、第3ポート(93)及び第2ポート(92)を通過し、低段側圧縮機(22)に吸入されて圧縮される。
【0083】
なお、このような暖房運転では、複数の室内ユニット(40a,40b,40c)のうちの一部で暖房を行う一方、残りで冷房を行うこともできる。即ち、冷房対象の室内ユニット(例えば室内ユニット(40c))に対応するBSユニット(50c)について、第1開閉弁(55c)を閉鎖状態とし、第2開閉弁(56c)を開放状態とする。これにより、液管(12)内の高圧液冷媒の一部が、室内熱交換器(43c)を流れて蒸発する。その結果、この室内熱交換器(43c)を流れる冷媒で室内空気を冷却すると同時に、残りの室内熱交換器(43a,43b)を流れる冷媒で、室内空気を加熱できる。
【0084】
〈冷房運転の第1動作〉
図9に示すように、冷房運転の第1動作では、複合弁(60)が第2状態(即ち、第2角度位置)となる。また、各第1開閉弁(55a,55b,55c)が閉鎖状態となり、各第2開閉弁(56a,56b,56c)が開放状態となる。また、室外膨張弁(25)が開放され、各室内膨張弁(42a,42b,42c)の開度が適宜調節される。このような状態で、低段側圧縮機(22)及び高段側圧縮機(23)が運転されると、室外熱交換器(24)が放熱器となり、各室内熱交換器(43a,43b,43c)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0085】
具体的に、低段側圧縮機(22)で圧縮されて中間圧にまで圧縮された冷媒は、第4ポート(94)及び第5ポート(95)を通過し、第1分岐管(31)を流れる。第1分岐管(31)を流出した冷媒は、高段側圧縮機(23)で高圧にまで圧縮される。この高圧冷媒は、高圧分岐管(36)を経由して第1ポート(91)及び第3ポート(93)を通過し、室外熱交換器(24)を流れる。室外熱交換器(24)では、冷媒が室外空気へ放熱する。
【0086】
室外熱交換器(24)で放熱した冷媒は、液管(12)を経由して各室内回路(41)へ分流する。各室内回路(41)に流入した冷媒は、各室内膨張弁(42a,42b,42c)で減圧された後に各室内熱交換器(43a,43b,43c)を流れる。各室内熱交換器(43a,43b,43c)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。
【0087】
各室内熱交換器(43a,43b,43c)で蒸発した冷媒は、各第2分流管(54a,54b,54c)を流れて低圧ガス管(14)で合流した後、低段側圧縮機(22)に吸入されて圧縮される。
【0088】
なお、このような冷房運転においても、複数の室内ユニット(40a,40b,40c)のうちの一部で冷房を行う一方、残りで暖房を行うこともできる。即ち、暖房対象の室内ユニット(例えば室内ユニット(40c))に対応するBSユニット(50c)について、第1開閉弁(55c)を開放状態とし、第2開閉弁(56c)を閉鎖状態とする。これにより、高段側圧縮機(23)の吐出冷媒の一部は、第1分流管(53c)を流れた後、室内熱交換器(43c)で放熱する。その結果、この室内熱交換器(43c)を流れる冷媒で、室内空気を加熱すると同時に、残りの室内熱交換器(43a,43b)を流れる冷媒で、室内空気を冷却できる。
【0089】
〈冷房運転の第2動作〉
図10に示すように、冷房運転の第2動作では、複合弁(60)が第3状態(即ち、第3角度位置)となる。それ以外は、上述した冷房運転の第1動作と同様である。
【0090】
この冷房運転の第2動作では、低段側圧縮機(22)で圧縮されて中間圧にまで圧縮された冷媒が、第4ポート(94)及び第6ポート(96)を通過し、第2分流管(54)を流れる。この冷媒は、インタークーラ(35)を通過する際、室外空気によって冷却される。冷却された冷媒は、高段側圧縮機(23)で高圧にまで圧縮される。その後の動作は、上述した冷房運転の第1動作と同様である。この第2動作では、低段側圧縮機(22)で圧縮された冷媒をインタークーラ(35)で冷却してから高段側圧縮機(23)で更に圧縮している。これにより、高段側圧縮機(23)の圧縮行程中の圧縮動力を低減でき、空気調和装置(10)の省エネ性を向上できる。
【0091】
−複合弁の切換動作について−
上述した空気調和装置の各運転の切換時には、複合弁(60)の状態が3段階に切り換えられる。このよう複合弁(60)の切換動作について図7を参照しながら詳細に説明する。なお、図7では、第1収容室(85)と第2収容室(86)とを連通させる連通孔(87)の内部通路を一点鎖線によって模式的に表している。
【0092】
〈第1角度位置〉
暖房運転において、複合弁(60)が第1状態になると、第1仕切弁(111)及び第2仕切弁(121)が第1角度位置となる(図7(A)を参照)。第1仕切弁(111)が第1角度位置になると、第1開口部(91a)が第1内側室(IS1)と連通し、第2開口部(92a)及び第3開口部(93a)が第1外側室(OS2)と連通する。これにより、第1ポート(91)が閉鎖され、第2ポート(92)と第3ポート(93)とが連通する。同時に、第2仕切弁(121)が第1角度位置になると、第4開口部(94a)及び第5開口部(95a)が第2内側室(IS2)と連通し、第6開口部(96a)が第2外側室(OS2)と連通する。これにより、第4ポート(94)と第5ポート(95)とが連通し、第6ポート(96)が閉鎖される。以上のように、各ポート(91〜96)の連通状態が設定されることで、上述した暖房運転の冷凍サイクルが実行可能となる。
【0093】
このように複合弁(60)が第1状態になると、第1内側室(IS1)は、第1ポート(91)を介して高圧ライン(高圧分岐管(36))と連通する。これにより、第1内側室(IS1)の内圧は、冷媒回路(11)の高圧冷媒の圧力と同等となる。一方、第1外側室(OS1)は第2ポート(92)を介して低圧ライン(低圧分岐管(37))と連通する。これにより、第1外側室(OS1)の内圧は、冷媒回路(11)の低圧冷媒の圧力と同等となる。
【0094】
また、複合弁(60)が第1状態になると、第2内側室(IS2)は、第4ポート(94)を介して低段側圧縮機(22)の吐出ライン(低段側吐出管(27))と連通する。これにより、第2内側室(IS2)の内圧は、冷媒回路(11)の中間圧冷媒の圧力と同等となる。一方、第2外側室(OS2)は、中間プレート(84)に形成された連通孔(87)を介して第2外側室(OS2)と連通する。これにより、第2外側室(OS2)の内圧は、第1外側室(OS1)の内圧(即ち、低圧冷媒の圧力)と同等となる。なお、低圧状態の第2外側室(OS2)は、第6ポート(96)を介して第2分岐管(32)と連通してしまう。しかしながら、第2分岐管(32)には第2逆止弁(34)が設けられているため、高段側吸入管(28)側の中間圧の冷媒が、第2分岐管(32)を経由して低圧状態の第2外側室(OS2)に逆流してしまうことが防止される。よって、第1外側室(OS1)及び第2外側室(OS2)を低圧状態に維持することができる。
【0095】
以上のように、第1状態の複合弁(60)では、第1内側室(OS1)の内圧が高圧となる一方、第1外側室(OS1)の内圧が低圧となる。また、第1状態の複合弁(60)では、第2内側室(OS2)の内圧が中間圧となる一方、第2外側室(OS2)の内圧が低圧となる。
【0096】
〈第2角度位置〉
冷房運転の第1動作において、複合弁(60)が第2状態になると、第1仕切弁(111)及び第2仕切弁(121)が第2角度位置となる(図7(B)を参照)。第1仕切弁(111)が第2角度位置になると、第1開口部(91a)と第2開口部(92a)が第1内側室(IS1)と連通し、第3開口部(93a)が第1外側室(OS2)と連通する。これにより、第1ポート(91)と第2ポート(92)とが連通し、第3ポート(93)が閉鎖される。同時に、第2仕切弁(121)が第2角度位置になると、第4開口部(94a)及び第5開口部(95a)が第2内側室(IS2)と連通し、第6開口部(96a)が第2外側室(OS2)と連通する。これにより、第4ポート(94)と第5ポート(95)とが連通し、第6ポート(96)が閉鎖される。以上のように、各ポート(91〜96)の連通状態が設定されることで、上述した冷房運転の第1動作の冷凍サイクルが実行可能となる。
【0097】
このように複合弁(60)が第2状態になった場合にも、第1内側室(IS1)は、第1ポート(91)を介して高圧分岐管(36)と連通し、第1外側室(OS1)は、第2ポート(92)を介して低圧分岐管(37)と連通する。また、第2内側室(IS2)は、第4ポート(94)を介して低段側吐出管(27)と連通し、第2外側室(OS2)は、連通孔(87)を介して第1外側室(OS1)と連通する。従って、第2状態の複合弁(60)においても、第1外側室(OS1)及び第2外側室(OS2)を低圧に維持される。
【0098】
〈第3角度位置〉
冷房運転の第2動作において、複合弁(60)が第3状態になると、第1仕切弁(111)及び第2仕切弁(121)が第3角度位置となる(図7(C)を参照)。第1仕切弁(111)が第3角度位置になると、第1開口部(91a)と第2開口部(92a)が第1内側室(IS1)と連通し、第3開口部(93a)が第1外側室(OS2)と連通する。これにより、第1ポート(91)と第2ポート(92)とが連通し、第3ポート(93)が閉鎖される。同時に、第2仕切弁(121)が第2角度位置になると、第4開口部(94a)及び第6開口部(96a)が第2内側室(IS2)と連通し、第5開口部(95a)が第2外側室(OS2)と連通する。これにより、第4ポート(94)と第6ポート(96)とが連通し、第5ポート(95)が閉鎖される。以上のように、各ポート(91〜96)の連通状態が設定されることで、上述した冷房運転の第2動作の冷凍サイクルが実行可能となる。
【0099】
このように複合弁(60)が第3状態になった場合にも、第1内側室(IS1)は、第1ポート(91)を介して高圧分岐管(36)と連通し、第1外側室(OS1)は、第2ポート(92)を介して低圧分岐管(37)と連通する。また、第2内側室(IS2)は、第4ポート(94)を介して低段側吐出管(27)と連通し、第2外側室(OS2)は、連通孔(87)を介して第1外側室(OS1)と連通する。なお、第2外側室(OS2)は、第5ポート(95)を介して第1分岐管(31)と連通するが、この第1分岐管(31)には第1逆止弁(33)が設けられている。従って、高段側吸入管(28)側の中間圧冷媒が、第2外側室(OS2)に逆流してしまうこともない。以上のようにして、第1外側室(OS1)及び第2外側室(OS2)は低圧に維持される。
【0100】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、空気調和装置(10)の冷媒回路(11)に複合弁(60)を接続し、この複合弁(60)の6つのポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換えることで、上述した暖房運転、冷房運転の第1動作、冷房運転の第2動作を切り換えるようにしている。ここで、このように複合弁(60)を冷媒回路(11)に適用すると、例えば図17に示す参考例の2つの四方切換弁の方式と比較して、切換弁の数量を1つ削減でき、且つポートの数を2つ削減できる。また、図17に示す例では、各ポートを封止する配管や、他の配管を設ける必要があったが、本実施形態では、このような配管も不要となる。従って、冷媒回路(11)、及びこの冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換えるための機構(冷媒流路切換弁)の簡素化を図ることができる。
【0101】
また、複合弁(60)は1つの駆動原(モータ(71))により、2つの仕切弁(111,121)を同時に回転駆動できるため、図17の参考例のように2つの駆動源が不要となる。また、複合弁(60)は、2つの仕切弁(111,121)を電気的に回転駆動させる方式であるため、図17の参考例のように冷媒の差圧がなくても、各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を容易に切り換えることができる。更に、本実施形態の方式では、図17の参考例のように連通状態を保持するために常に通電状態とする必要がない。つまり、モータ(71)への通電を停止させることで、各仕切部(111,121)の角度位置をそのまま保持できるため、省エネ性にも優れる。
【0102】
また、本実施形態の複合弁(60)は、第1収容室(85)及び第2収容室(86)、並びに各第1切換部(110)及び第2切換部(120)を軸方向に二段重ねに配設する構造としているため、複合弁(60)が軸直角方向に拡大されてしまうのも回避できる。更に、2つの仕切部(111,121)を出力軸(74)の軸周りに沿うような円弧状に形成しているため、各仕切部(111,121)の径方向における収容スペースも小さくなる。
【0103】
更に、複合弁(60)では、仕切部(111,121)の角度位置が3つの状態に変位しても、第1外側室(OS1)と第2外側室(OS2)とが常に低圧に維持される。その結果、両者の外側室(OS1,OS2)では差圧が発生しないため、出力軸(74)の軸周りの隙間を通じて、両者の外側室(OS1,OS2)の間で冷媒が漏れることもない。即ち、例えば第1外側室(OS1)及び第2外側室(OS2)の一方を高圧とし他方を低圧とすると、出力軸(74)の軸周りから冷媒が漏れ込むため、これを禁止するためのシール機構が必要になる。これに対し、本実施形態では、両者の外側室(OS1,OS2)を同じ圧力雰囲気としているため、このようなシール機構が不要となる。なお、本実施形態では、第1外側室(OS1)及び第2外側室(OS2)を低圧としているが、両者の外側室(OS1,OS2)を高圧とする構成としても良い。
【0104】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2に係るロータリー弁(130)は、上記実施形態1と同様の空気調和装置(10)に適用されている。一方、実施形態2に係る複合弁(130)は、上記実施形態1の複合弁(60)と構成が異なっている。
【0105】
〈冷媒回路でのロータリー弁の接続位置〉
図11に示すように、実施形態2のロータリー弁(130)は、上記実施形態1と同様の冷媒回路(11)に接続されている。ロータリー弁(130)は、円板状の弁ケース部(140)を有している。弁ケース部(140)には、第1から第6までのポート(131〜136)が形成されている。第1ポート(131)は、高圧分岐管(36)に接続され、第2ポート(132)は、低圧分岐管(37)に接続されている。第3ポート(133)は、室外熱交換器(24)のガス側端部と接続している。第4ポート(134)は、低段側圧縮機(22)の低段側吐出管(27)に接続している。第5ポート(135)は、第1分岐管(31)の流入端に接続している。第6ポート(136)は、第2分岐管(32)の流入端に接続している。ロータリー弁(130)は、冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換える冷媒流路切換弁を構成している。具体的に、ロータリー弁(130)は、第1から第3までの状態に切り換わるように構成されている。第1状態(図11に示す状態)では、第2ポート(132)と第3ポート(133)とが連通して第1ポート(131)が閉鎖すると同時に、第4ポート(134)と第5ポート(135)とが連通して第6ポート(136)が閉鎖する。第2状態(図15に示す状態)では、第1ポート(131)と第3ポート(133)とが連通して第2ポート(132)が閉鎖すると同時に、第4ポート(134)と第5ポート(135)とが連通して第6ポート(136)が閉鎖する。第3状態(図16に示す状態)では、第1ポート(131)と第3ポート(133)とが連通して第2ポート(132)が閉鎖すると同時に、第4ポート(134)と第6ポート(136)とが連通して第5ポート(135)が閉鎖する。
【0106】
〈ロータリー弁の構造〉
ロータリー弁(130)の詳細構造について、図12及び図13を参照しながら説明する。ロータリー弁(130)は、上述した弁ケース部(140)と、駆動機構(145)と、切換機構としての弁体(150)とを有している。
【0107】
弁ケース部(140)は、扁平な円筒状に形成されている。弁ケース部(140)は、軸方向の一端が開放されたケース本体(141)と、ケース本体(141)の開放部を閉塞する円板状の蓋部(142)とを有している。ケース本体(141)の周壁部(141a)には、上述した6つのポート(131〜136)が径方向に貫通している。これらのポート(131〜136)は、周方向に等間隔をおいて配列される。具体的に、これらのポート(131〜136)は、ケース本体(141)の軸心を中心として約60°おきに配列されている。ケース本体(141)と蓋部(142)とは、複数のビス(143)によって互いに結合される。ケース本体(141)の内部には、弁ケース部(140)が収容される収容室(144)が形成される。
【0108】
駆動機構(145)は、モータ及び変速ギアを有する駆動部(146)と、駆動部(146)によって回転駆動される出力軸(147)とを備えている。出力軸(147)は、弁ケース部(140)を軸方向に貫通し、例えばキーを介して弁体(150)に連結される。
【0109】
弁体(150)は、扁平な円板状に形成されて収容室(144)に収容される。弁体(150)は、弁体上蓋(151)とガスケット(152)と弁本体(153)とを有している。弁体(150)では、弁体上蓋(151)、ガスケット(152)、及び弁本体(153)が軸方向に順に積層されて結合される。詳細には、弁体上蓋(151)と弁本体(153)との間にガスケット(152)が狭持された状態で複数のビス(154)が締結されることで、弁体(150)が構成される。
【0110】
弁本体(153)は、各ポート(131〜136)の連通状態を切り換える円板状切換部によって構成されている。弁本体(153)には、上述した各ポート(131〜136)と連通可能な弁体通路(160)が形成されている。具体的に、弁体通路(160)は、弁本体(153)の外周寄りの部位を径方向に延びる14本の内部通路(第1から第14までの内部通路(C1〜C14))を有している(図13を参照)。各内部通路(C1〜C14)の径方向外方の端部は、弁本体(153)の外周面に開口している。これらの開口端の外周縁部にはそれぞれ環状溝(155)が形成され、各環状溝(155)には、オーリング(156)及び環状のパッキン(157)が嵌合される(図12を参照)。
【0111】
各内部通路(C1〜C14)は、弁体(150)の軸心を通過し且つ互いに約20°を成す複数の仮想径方向線と一致するように配設されている。具体的に、第1から第10までの内部通路(C1〜C10)は、周方向に互いに約20°成すように等間隔おきに配列されている。第10内部通路(C10)と第11内部通路(C11)とは、互いに約40°を成すように間隔がやや大きくなっている。第11内から第14までの内部通路(C11〜C14)は、周方向に互いに約20°を成すように等間隔おきに配列されている。
【0112】
また、弁本体(153)の軸方向の一端面(図12における上端面)には、弁体通路(160)の一部を成す、第1から第4までの円弧溝(161〜164)が形成されている。これらの円弧溝(161〜164)は、弁体(150)の軸心を中心とした所定半径の仮想円上に位置している。第1円弧溝(161)は、周方向に約60°の範囲に亘って形成され、第1から第4までの内部通路(C11〜C14)と連通している。第2円弧溝(162)は、周方向に約60°の範囲に亘って形成され、第5から第8までの内部通路(C5〜C8)と連通している。第3円弧溝(163)は、周方向に約80°の範囲に亘って形成され、第9から第12までの内部通路(C9〜C12)と連通している。第4円弧溝(164)は、周方向に約20°の範囲に亘って形成され、第13と第14の内部通路(C13,C14)と連通している。
【0113】
更に、弁本体(153)の上端面には、弁体通路(160)の一部を成す、連通溝(165)が形成されている。連通溝(165)は、出力軸(147)の軸周りに沿うように形成され、第1円弧溝(161)と第4円弧溝(164)とを連通させている。
【0114】
上述したガスケット(152)には、弁本体(153)の各溝(161〜165)の形状に対応するように複数の開口穴(152a)が形成されている。弁体(150)の組立て状態では、ガスケット(152)の開口穴と、弁本体(153)の各溝(161〜165)が軸方向に一致する。つまり、ガスケット(152)は、弁本体(153)の各溝(161〜165)からの冷媒の漏れを禁止するシール部材を構成している。
【0115】
以上のような構成のロータリー弁(130)は、駆動機構(145)によって弁体(150)が回転駆動される。具体的に、弁体(150)は、少なくとも、第1角度位置、第2角度位置、及び第3角度位置の範囲に亘って変位するように構成されている。
【0116】
具体的に、弁体(150)は、図13に示す第1角度位置から反時計回りに約20°回動すると、第2角度位置となる。更に、弁体(150)は、この第2角度位置から反時計回りに約20°回動すると、第3角度位置となる。
【0117】
第1角度位置では、第2ポート(132)と第3ポート(133)とが連通して第1ポート(131)が閉鎖する時に、第4ポート(134)と第5ポート(135)とが連通して第6ポート(136)が閉鎖する(図14を参照)。第2角度位置では、第1ポート(131)と第3ポート(133)とが連通して第2ポート(132)が閉鎖すると同時に、第4ポート(134)と第5ポート(135)とが連通して第6ポート(136)が閉鎖する(図15を参照)。第3角度位置では、第1ポート(131)と第3ポート(133)とが連通して第2ポート(132)が閉鎖すると同時に、第4ポート(134)と第6ポート(136)とが連通して第5ポート(135)が閉鎖する(図16を参照)。
【0118】
−運転動作−
実施形態2の空気調和装置(10)は、上記実施形態1と同様にして、暖房運転と冷房運転とが行われる。また、冷房運転では、上記実施形態1と同様にして、第1動作と第2動作とが行われる。
【0119】
〈暖房運転〉
図14に示す暖房運転では、各第1開閉弁(55a,55b,55c)が開放状態となり、各第2開閉弁(56a,56b,56c)が閉鎖状態となる。また、室内膨張弁(42a,42b,42c)が開放され、室外膨張弁(25)の開度が適宜調節される。
【0120】
暖房運転時には、ロータリー弁(130)の弁体(150)が第1角度位置になる。この状態では、第1ポート(131)が弁体(150)の外周面によって閉塞され、第2ポート(132)は、第5内部通路(C5)、第2円弧溝(162)、及び第8内部通路(C8)を介して第3ポート(133)と連通する。また、この状態では、第4ポート(134)が、第2内部通路(C2)、第1円弧溝(161)、連通溝(165)、第4円弧溝(164)、及び第14内部通路(C14)を介して第5ポート(135)と連通し、第6ポート(136)は弁体(150)の外周面によって閉塞される。
【0121】
暖房運転では、低段側圧縮機(22)で中間圧まで圧縮された冷媒が、第4ポート(134)及び第5ポート(135)を通過し、高段側圧縮機(23)で更に高圧にまで圧縮される。高圧の冷媒は、各室内熱交換器(43a,43b,43c)でそれぞれ放熱して暖房に利用される。この冷媒は、室外膨張弁(25)で減圧された後、室外熱交換器(24)で蒸発する。蒸発した冷媒は、第3ポート(133)及び第2ポート(132)を通過し、低段側圧縮機(22)で圧縮される。
【0122】
〈冷房運転の第1動作〉
図15に示す冷房運転の第1動作では、各第1開閉弁(55a,55b,55c)が閉鎖状態となり、各第2開閉弁(56a,56b,56c)が開放状態となる。また、室外膨張弁(25)が開放され、各室内膨張弁(42a,42b,42c)の開度が適宜調節される。
【0123】
冷房運転の第1動作時には、ロータリー弁(130)の弁体(150)が第2角度位置になる。この状態では、第1ポート(131)が、第11内部通路(C11)、第3円弧溝(163)、第9内部通路(C9)を介して第3ポート(133)と連通し、第2ポート(132)が第6内部通路(C6)と連通する。ここで、第6内部通路(C6)と連通する他の内部通路(C5,C7,C8)は、弁ケース部(140)の内周面に閉塞される。従って、第2ポート(132)は実質的に閉鎖される。また、この状態では、第4ポート(134)が、第3内部通路(C3)、第1円弧溝(161)、連通溝(165)、第4円弧溝(164)、及び第14内部通路(C14)を介して第5ポート(135)と連通し、第6ポート(136)は弁体(150)の外周面によって閉塞される。
【0124】
冷房運転の第1動作では、低段側圧縮機(22)で中間圧まで圧縮された冷媒が、第4ポート(134)及び第5ポート(135)を通過し、高段側圧縮機(23)で更に高圧にまで圧縮される。高圧の冷媒は、高圧分岐管(36)を流れて第1ポート(131)及び第3ポート(133)を通過し、室外熱交換器(24)で放熱する。放熱した冷媒は、各室内膨張弁(42a,42b,42c)で減圧された後、各室内熱交換器(43a,43b,43c)で蒸発する。蒸発した冷媒は、低圧ガス管(14)で合流した後、低段側圧縮機(22)で圧縮される。
【0125】
〈冷房運転の第2動作〉
図16に示す冷房運転の第2動作では、第1動作と同様、各第1開閉弁(55a,55b,55c)が閉鎖状態となり、各第2開閉弁(56a,56b,56c)が開放状態となる。また、室外膨張弁(25)が開放され、各室内膨張弁(42a,42b,42c)の開度が適宜調節される。
【0126】
冷房運転の第1動作時には、ロータリー弁(130)の弁体(150)が第3角度位置になる。この状態では、第1ポート(131)が、第12内部通路(C12)、第3円弧溝(163)、第10内部通路(C10)を介して第3ポート(133)と連通し、第2ポート(132)が第7内部通路(C7)と連通する。ここで、第7内部通路(C7)と連通する他の内部通路(C5,C6,C8)は、弁ケース部(140)の内周面に閉塞される。従って、第2ポート(132)は実質的に閉鎖される。また、この状態では、第4ポート(134)が、第4内部通路(C4)、第1円弧溝(161)、第1内部通路(C1)を介して第6ポート(136)と連通し、第5ポート(135)は弁体(150)の外周面によって閉塞される。
【0127】
冷房運転の第2動作では、低段側圧縮機(22)で中間圧まで圧縮された冷媒が、第4ポート(134)及び第6ポート(136)を通過し、インタークーラ(35)で冷却される。インタークーラ(35)で冷却された冷媒は、高段側圧縮機(23)で高圧まで圧縮される。このように、中間圧の冷媒を冷却することで、高段側圧縮機(23)での冷媒の圧縮動力が低減される。
【0128】
−実施形態2の効果−
上記実施形態2では、空気調和装置(10)の冷媒回路(11)にロータリー弁(130)を接続し、このロータリー弁(130)の6つのポート(131〜136)の連通状態を切り換えることで、上述した暖房運転、冷房運転の第1動作、冷房運転の第2動作を切り換えるようにしている。ここで、このようにロータリー弁(130)を冷媒回路(11)に適用すると、例えば図17に示す参考例の2つの四方切換弁の方式と比較して、切換弁の数量を1つ削減でき、且つポートの数を2つ削減できる。また、図17に示す例では、各ポートを封止する配管や、他の配管を設ける必要があったが、実施形態2においても、このような配管が不要となる。従って、冷媒回路(11)、及びこの冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換えるための機構(冷媒流路切換弁)の簡素化を図ることができる。
【0129】
また、上記実施形態2では、ロータリー弁(130)の弁ケース部(140)を軸方向に扁平な形状とし、弁ケース部(140)の外周面に6つのポート(131〜136)を接続するようにしている。このため、ロータリー弁(130)を軸方向に薄型化できる。
【0130】
《その他の実施形態》
上記実施形態1や2では、冷媒流路切換弁(60,130)をいわゆる冷暖フリー式の空気調和装置に適用しているが、他の方式の空気調和装置の冷媒回路や、冷凍装置や給湯器等の他の冷媒回路に適用することもできる。
【0131】
また、上記各実施形態の空気調和装置(10)の冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素を充填しているが、他の冷媒を充填して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上説明したように、本発明は、冷媒回路における冷媒の流路を切り換える冷媒流路切換弁、及びこの冷媒流路切換弁を備えた空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0133】
10 空気調和装置
11 冷媒回路
22 低段側圧縮機
24 室外熱交換器
26 低段側吸入管(低圧ライン)
27 低段側吐出管(吐出ライン)
29 高段側吐出管(高圧ライン)
31 第1分岐管(第1分岐路)
32 第2分岐管(第2分岐路)
43a,43b.43c 室内熱交換器
60 複合弁(冷媒流路切換弁)
70 駆動機構
74 出力軸
80 弁ケース部(ケース部)
85 第1収容室
86 第2収容室
87 連通孔(内部連通路)
91 第1ポート
92 第2ポート
93 第3ポート
94 第4ポート
95 第5ポート
96 第6ポート
100 切換機構
110 第1切換部
111 第1仕切弁(第1仕切部)
120 第2切換部
121 第2仕切弁(第2仕切部)
130 ロータリー弁(冷媒流路切換弁)
131 第1ポート
132 第2ポート
133 第3ポート
134 第4ポート
135 第5ポート
136 第6ポート
140 弁ケース部(ケース部)
144 弁収容室
145 駆動機構
147 出力軸
150 弁体(切換機構)
153 弁本体(円板状切換部)
OS1 第1外側室
IS1 第1内側室
OS2 第2外側室
IS2 第2内側室
C1〜C14 内部通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換える冷媒流路切換弁であって、
出力軸(74,147)を有する駆動機構(70,145)と、
第1から第6のポート(91〜96,131〜136)が接続されるケース部(80,140)と、
前記ケース部(80,140)に収容されて前記出力軸(74,147)に回転駆動されることで、前記各ポート(91〜96,131〜136)の連通状態を切り換える切換機構(100,150)と、を備え、
前記切換機構(100,150)は、第2ポート(92,132)と第3ポート(93,133)とを連通させ且つ第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とを連通させる第1角度位置と、
第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とを連通させ且つ第4ポート(94,134)と第5ポート(95,135)とを連通させる第2角度位置と、
前記第1ポート(91,131)と第2ポート(92,132)とを連通させ且つ第4ポート(94,134)と第6ポート(96,136)とを連通させる第3角度位置とに、変位するように構成されていることを特徴とする冷媒流路切換弁。
【請求項2】
請求項1において、
前記ケース部(80)は、出力軸(74)の軸方向に2段に重ねられて、該出力軸の周囲に形成される筒状の第1収容室(85)と第2収容室(86)とを形成しており、
前記第1から第3までのポート(91〜93)が前記第1収容室(85)に接続され、
前記第4から第6までのポート(94〜96)が前記第2収容室(86)に接続され、
前記切換機構(100)は、前記第1収容室(85)に収容されて前記出力軸(74)に回転駆動されることで、第1から第3までのポート(91〜93)の連通状態を切り換える第1切換部(110)と、前記第2収容室(86)に収容されて前記出力軸(74)に回転駆動されることで、第4から第6までのポート(94〜96)の連通状態を切り換える第2切換部(120)とを含んでいることを特徴とする冷媒流路切換弁。
【請求項3】
請求項2において、
前記各ポート(91〜96)は、対応する収容室(85,86)の軸方向端面に開口するように前記ケース部(80)に接続され、
前記第1切換部(110)は、前記第1収容室(85)の軸方向両端に亘って延びる略筒状に形成されて、該第1収容室(85)を内側の第1内側室(IS1)と外側の第1外側室(OS1)とに区画する第1仕切部(111)を有し、
前記第2切換部(120)は、前記第2収容室(86)の軸方向両端に亘って延びる略筒状に形成されて、該第2収容室(86)を内側の第2内側室(IS2)と外側の第2外側室(OS2)とに区画する第2仕切部(121)を有し、
前記各収容室(85,86)の内側室(IS1,IS2)と外側室(OS1,OS2)の一方又は両方は、各仕切部(111,121)の回動に伴い、対応する各ポート(91〜96)の開口端の連通状態を切り換える連通路を構成することを特徴とする冷媒流路切換弁。
【請求項4】
請求項3において、
前記各仕切部(111,121)は、前記出力軸(74)の軸周りに沿うような円弧状に形成され、
前記各ポート(91〜96)の開口端は、対応する仕切部(111,121)の回転軌跡に跨るように、出力軸(74)の軸周りに配列されていることを特徴とする冷媒流路切換弁。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記ケース部(80)には、前記第1角度位置から第3角度位置までの範囲で、第1外側室と第2外側室(OS2)とを連通させる内部連通路(87)が形成されていることを特徴とする冷媒流路切換弁。
【請求項6】
請求項1において、
前記ケース部(140)は、前記出力軸(74)の周囲に扁平な筒状の1つの収容室(144)を形成しており、
前記第1から第6のポート(131〜136)が前記1つの収容室(144)に接続され、
前記切換機構(100)は、前記1つの収容室(144)に収容される円板状に形成され、出力軸(74)に回転駆動されることで、各ポート(131〜136)の連通状態を切り換える複数の内部通路(C1〜C14)を有する円板状切換部(153)を含んでいることを特徴とする冷媒流路切換弁。
【請求項7】
低段側圧縮機(22)及び高段側圧縮機(23)と、該低段側圧縮機(22)の吐出側と高段側圧縮機(23)の吸入側との間に並列に接続される第1及び第2の分岐路(31,32)と、該第2分岐路(32)に接続される冷却機構(35)と、室外熱交換器(24)と、室内熱交換器(43a,43b,43c)と、前記請求項1乃至6のいずれか1つに記載の冷媒流路切換弁(60,130)とを有し、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)を備え、
前記冷媒流路切換弁(60,130)は、前記第1ポート(91,131)が、前記高段側圧縮機(23)の吐出側の高圧ライン(29)に接続され、前記第2ポート(92,132)が、前記室外熱交換器(24)の一端側に接続され、前記第3ポート(93,133)が、前記低段側圧縮機(22)の吸入側の低圧ライン(26)と接続され、前記第4ポート(94,134)が、前記低段側圧縮機(22)の吐出側の吐出ライン(27)に接続され、前記第5ポート(95,135)が、前記第1分岐路(31)に接続され、前記第6ポート(96,136)が、前記第2分岐路(32)に接続されることを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−36933(P2012−36933A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175591(P2010−175591)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】