説明

冷房システム

【課題】例えば24時間換気システムにおいて涼しい風を室内に導入可能にできる安価な冷房システムを提供する。
【解決手段】被冷却領域を通って熱媒体を循環させる循環路9に、建築物の床と該床よりも下側に設けられて地面に埋め込まれている基礎1との間の床下空間4に収容されたパイプクーラー11を介設し、基礎1上に配設する。パイプクーラー11は、床下空間4を上下に横切る態様で互いに間隔を介して複数配設された床づか7を避ける態様で、床づか7と床づか7との間隔に配設されたパイプ12とヘッダ16とを設けて形成し、パイプ12を通る熱媒体を床下空間4において基礎1の下側の地面と床下空間4との温度差に伴う気化熱によって冷却する。冷却した熱媒体を循環路9に介設したポンプにより循環路9に循環させて被冷却領域を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被冷却領域を通して循環する水等の熱媒体(熱媒)を冷却して被冷却領域を冷却する冷房システムおよびその冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住生活の快適環境を図る観点等から、建物内全てを24時間換気する住宅等の建物があり、その換気のための空気導入部に加温用の熱交換装置を設けることにより、空気が導入される室内(館内)を暖かくすることが行われている。また、地中に50〜150m程度の熱交換用のパイプを埋設し、地中熱を利用して空調を行うシステムも提案されている。(例えば、特許文献1、2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―266575号公報
【特許文献2】特許公報4599626号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記換気のための空気導入部に加温用の熱交換装置を設けるだけでは、夏場などの気温が高いときに涼しい空気を室内に導入することはできないし、地中に50〜150m程度の熱交換用のパイプを埋設し、地中熱を利用して空調を行うシステムにおいては、このシステムの構築の際に、パイプを埋設するための特殊重機が必要になるために、工事が大変であると共に、その費用も高くなってしまうといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構成で被冷却領域を冷却することができ、それにより、例えば24時間換気システムにおいて涼しい風を室内に導入可能にできる安価な冷房システムおよびその冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、次の構成をもって課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明の冷房システムは、被冷却領域を通って熱媒体を循環させる循環路と、該循環路に前記熱媒体を循環させるポンプとを有し、前記循環路には建築物の床と該床よりも下側に設けられて地面に埋め込まれている建築物基礎との間の床下空間に収容されて前記建築物基礎上に配設されたパイプを有するパイプクーラーが介設され、前記床下空間を上下に横切る態様で複数互いに間隔を介して配設された床づかを避ける態様で該床づかと床づかとの間隔に前記パイプクーラーのパイプが設けられて、該パイプを通る熱媒体を前記床下空間において前記建築物基礎の下側の地面と前記床下空間との温度差に伴う気化熱によって冷却し、該冷却した熱媒体を前記ポンプにより前記循環路に循環させて前記被冷却領域を冷却する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0007】
また、第2の発明の冷房システムは、前記第1の発明の構成に加え、前記被冷却領域は、床の上側に設けられた部屋に外部から空気を導入する空気導入部に設けられていることを特徴とする。
【0008】
さらに、第3の発明の冷房システムは、前記第1または第2の発明の構成に加え、前記パイプクーラーは、床下空間の建築物基礎の上側に配置されたパイプに熱媒体を供給する長形状のヘッダを有し、前記パイプは前記ヘッダから該ヘッダの長手方向を横切る方向であって前記建築物基礎の表面に沿う方向に突出して設けられて突出先端で屈曲し前記ヘッダに戻るヘアピン形状に形成され、該ヘアピン形状パイプが前記ヘッダの長手方向に互いに間隔を介して複数設けられて床づかと床づかとの間に配置される態様と成していることを特徴とする。
【0009】
さらに、第4の発明のパイプクーラーの敷設方法は、前記第3の発明の冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法であって、ヘッダにヘアピン形状パイプを取り付けたクーラー構成体を形成して前記ヘアピン形状パイプの先端側の屈曲部に紐部材を設けた状態とし、前記ヘアピン形状パイプをその屈曲部側から前記ヘッダ側に向けて該屈曲部を上向きにして丸めて床下空間に挿入し、前記ヘアピン形状パイプの巻き終わり側が上側になるようにして建築物基礎上に配置した後、前記紐部材を引っ張ることにより前記ヘアピン形状パイプを広げた状態として前記クーラー構成体を前記建築物基礎上に広げて配置することにより前記パイプクーラーを前記建築物基礎上に敷設することを特徴とする。
【0010】
さらに、第5の発明のパイプクーラーの敷設方法は、前記第4の発明の構成に加え、前記クーラー構成体をヘアピン形状パイプの先端部の屈曲部に紐部材が設けられてシート上に配置された状態とし、該シートと共に前記ヘアピン形状パイプをその屈曲部側から前記ヘッダ側に向けて該屈曲部を上向きにして丸めて床下空間に挿入し、前記ヘアピン形状パイプの巻き終わり側が上側になるようにして建築物基礎上に配置した後に前記シートを取り除き、前記紐部材を引っ張ることにより前記ヘアピン形状パイプを広げた状態として前記クーラー構成体を前記建築物基礎上に広げて配置し前記パイプクーラーを前記建築物基礎上に敷設することを特徴とする。
【0011】
さらに、第6の発明のパイプクーラーの敷設方法は、前記第3の発明の冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法であって、ヘッダの上側にパイプ挿入部を形成してヘアピン形状パイプの前記ヘッダへの取り付け端側には下向きの取り付け部を形成した構成とし、該ヘアピン形状パイプと前記ヘッダとを別々に床下空間に挿入して、該床下空間内で前記ヘアピン形状パイプの取り付け部を該ヘッダのパイプ挿入部に上側から差し込むことによって該ヘッダに前記ヘアピン形状パイプを取り付け、前記パイプクーラーを前記床下空間内で組み立てて前記建築物基礎上に敷設することを特徴とする。
【0012】
さらに、第7の発明のパイプクーラーの敷設方法は、前記第6の発明の構成に加え、前記それぞれのヘアピン形状パイプを、互いに間隔を介して配設された2本のパイプと該パイプ同士の間隔を保持するパイプ保持部とを備えた1つ以上のパーツユニットと、屈曲部が形成されたパイプの一端側と他端側とが間隔を介して配設されている1つのパーツユニットとを組み立て形成する構成として、隣り合うパーツユニットの一方側のパイプには下向きの取り付け部を設けて他方側には該取り付け部を上側から挿入するパイプ挿入部を設け、これらの複数のパーツユニットとヘッダとを別々に床下空間に挿入し、該床下空間内で前記パーツユニットのパイプの取り付け部を隣のパーツユニットの前記パイプ挿入部に上側から差し込んで取り付けることにより前記ヘアピン形状パイプを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷房システムによれば、被冷却領域を通って熱媒体を循環させる循環路に、建築物の床と該床よりも下側に設けられて地面に埋め込まれている建築物基礎との間の床下空間に収容されたパイプクーラーを介設し、建築物基礎上にパイプクーラーのパイプを配設することにより、該パイプを通る熱媒体を、前記床下空間において前記建築物基礎の下側の地面と前記床下空間との温度差に伴う気化熱によって容易に、かつ、電力などのエネルギを用いずに冷却することができる。そして、その冷却された熱媒体をポンプにより前記循環路に循環させることにより、簡単な構成で被冷却領域の冷却を行うことができる。また、前記床下空間には、該床下空間を上下に横切る態様で複数互いに間隔を介して床づかが配設されているが、前記パイプクーラーのパイプは床づかを避ける態様で、床づかと床づかとの間隔に設けるために、前記気化熱によってパイプを効率的に冷却できるようにパイプを配設でき、冷却効率の良好な冷房システムを提供することができる。
【0014】
また、被冷却領域を、床の上側に設けられた部屋に外部から空気を導入する空気導入部に設けることにより、パイプクーラーにより冷却した熱媒体の循環によって、被冷却領域を容易に、かつ、効率的に冷却し、部屋に導入する空気を冷却して、涼しい空気を部屋に送り込むことができる。そのため、この発明を例えば24時間換気システムに適用することにより、簡単な構成で被冷却領域を効率的に冷却し、涼しい空気を用いて換気を行うことができるし、部屋に設けられるエアコンの代わりに、空気導入部から室内に涼しい空気を導入するようにでき、エアコンの稼動時間等の負荷を少なくしたり、その日の気温等によっては、エアコンの負荷をゼロにしたりすることもできる。
【0015】
さらに、パイプクーラーの敷設は、通常、建物ができあがった後に行われるものであるが、パイプクーラーを、パイプに熱媒体を供給する長形状のヘッダと該ヘッダからヘッダの長手方向を横切る方向であって前記建築物基礎の表面に沿う方向に突出して設けたヘアピン形状パイプを有する構成として、該ヘアピン形状パイプをヘッダの長手方向に間隔を介して複数設け、床づかと床づかとの間に配置することによって、狭い床下空間において、床づかの配設部を避けてパイプクーラーを敷設する作業を、例えば以下のように容易にできるようになり、パイプクーラーによって被冷却領域を効率的に冷却できる冷房システムを構築することができる。
【0016】
例えば、このパイプクーラーを敷設する際に、ヘッダにヘアピン形状パイプを取り付けたクーラー構成体をヘアピン形状パイプの先端側の屈曲部に紐部材を設けた状態とし、前記ヘアピン形状パイプをその突出先端側の屈曲部側から前記ヘッダ側に向けて該屈曲部を上向きにして丸めて床下空間に挿入すれば、床下の点検のために設けられている点検孔からクーラー構成体を容易に挿入することができる。
【0017】
また、最近では、床下空間に、高さが1m以上の鋼製の床づか(床束)を用いることにより、床下空間の上下の間隔(高さ)を1m以上とした建物もあるが、従来の住宅においては、一般には、床下空間の上下の間隔は45〜60cm程度であり、かつ、床づか同士の間隔は、90cm程度であるために、パイプクーラーの敷設作業は、作業者が床づかと床づかとの間に横向きの状態でしゃがんだまま片手で作業することになるために容易でない。それに対し、床下空間に挿入したクーラー構成体を前記ヘアピン形状パイプの巻き終わり側が上側になるようにして建築物基礎上に配置し、前記紐部材を引っ張る作業ようにすれば、この紐部材を引っ張る作業は片手でも容易に行うことができ、紐部材を引っ張ることによってヘアピン形状パイプを広げた状態として前記クーラー構成体を前記建築物基礎上に広げて配置でき、パイプクーラーを容易に敷設できる。
【0018】
なお、ヘアピン形状パイプを丸めた状態としてクーラー構成体を床下空間に挿入すると、巻き方向に曲がり癖がつく可能性があるが、前記の如く、クーラー構成体をヘアピン形状パイプの巻き終わり側が上側になるようにして建築物基礎上に配置することによって、たとえヘアピン形状パイプに曲がり癖がついていても、ヘアピン形状パイプを広げた状態とした際には、ヘアピン形状パイプのヘッダへの取り付け側が建築物基礎の表面に接触した状態で配置される。そして、ヘアピン形状パイプの突出先端側が前記曲がり癖によって建築物基礎の表面に接触せずに上側に湾曲した状態で配置されたとしても、その後、ヘアピン形状パイプの突出先端側は重力によって下側に下がり、建築物基礎の表面に接触した状態で落ち着くため、パイプを良好な状態で配設でき、床下空間内で前記気化熱によってパイプを効率的に冷却できるようでき、冷却効率の良好な冷房システムを構築することができる。
【0019】
さらに、ヘアピン形状パイプの先端部の屈曲部に紐部材が設けられてシート上に配置された状態とし、シートと共に前記ヘアピン形状パイプを前記と同様に丸めて床下空間に挿入し、前記シートを取り除いた後、紐部材を引っ張って床下空間で広げることにより前記パイプクーラーを前記建築物基礎上に敷設するようにすれば、ヘアピン形状パイプの丸める作業や床下空間への挿入作業をより容易に行うことができ、パイプクーラーの敷設作業をより一層効率的に行うことができる。なお、前記シートは、フィルム、不織布なども含むものである。
【0020】
さらに、パイプクーラーの敷設に際し、上側にパイプ挿入部を形成したヘッダと、該ヘッダへの取り付け端側に下向きの取り付け部を形成したヘアピン形状パイプとを別々に床下空間に挿入することによっても、パイプクーラーの構成部品の床下空間への挿入を容易に行うことができる。そして、ヘアピン形状パイプの取り付け部を該ヘッダのパイプ挿入部に上側から差し込む作業は、作業者が片手で容易に行うことができ、この作業によってヘッダにヘアピン形状パイプを取り付け、前記パイプクーラーを前記床下空間内で組み立てて前記建築物基礎上に敷設することにより、パイプクーラーの敷設作業を容易に、かつ、効率的に行うことができる。
【0021】
さらに、ヘッダとヘアピン形状パイプとを別々に床下空間に挿入する構成において、それぞれのヘアピン形状パイプを、互いに間隔を介して配設された2本のパイプと該パイプ同士の間隔を保持するパイプ保持部とを備えた1つ以上のパーツユニットと、屈曲部が形成されたパイプの一端側と他端側とが間隔を介して配設された1つのパーツユニットとを設けて構成することにより、ヘアピン形状パイプの取り扱いを容易にできる。
【0022】
つまり、複数のパーツユニットとヘッダとを別々に床下空間に挿入する作業は容易であり、また、隣り合うパーツユニットの一方側には下向きの取り付け部を設けて他方側には該取り付け部を上側から挿入するパイプ挿入部を設けて、床下空間内で前記パーツユニットのパイプの取り付け部を隣のパーツユニットの前記パイプ挿入部に上側から差し込んで取り付ける作業は片手で容易にできるので、長めのパイプによって予めヘアピン形状パイプを形成しておいて床下空間内に挿入しなくても、短めのパイプを有するパーツユニットを用いてヘアピン形状パイプを床下空間内で容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る冷房システムの一実施例に適用されているパイプクーラーの要部構成を示す平面説明図である。
【図2】実施例の冷房システムの配置構成例を示す模式図である。
【図3】実施例の冷房システムにおけるパイプクーラーの敷設方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図4】その他の実施例の冷房システムにおけるパイプクーラーの敷設方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図5】さらに他の実施例の冷房システムにおけるパイプクーラーの敷設方法を説明するための模式的な斜視図である。
【図6】さらにまた他の実施例の冷房システムにおけるパイプクーラーの敷設例を示す模式的な平面図である。
【図7】家屋の床下空間の形成例を説明するための模式的な斜視図(a)と平面図(b)と鋼製束の例を示す斜視図(c)である。
【図8】本発明の冷房システムにおいてパイプクーラー敷設に用いられるアルミシートの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【実施例】
【0025】
図2には、実施例の冷房システムの配置構成例が家の断面構成図を用いて模式的に示されている。同図に示すように、本実施例の冷房システム50は、家屋100に設けられた24時間換気システムに適用されている。家屋100等の建築物には、基礎(建築物基礎)1が地面に埋め囲まれて設けられている。
【0026】
図7(a)に示すように、基礎1の上には建築物の土台2が設けられており、基礎1には通気口40が形成されている。また、建築物の床板3と床板3の下側(床よりも下側)の基礎1との間の床下空間4には、大引き5と根太6と床づか7とが設けられている。図7(b)に示すように、大引き5同士は互いに間隔a(例えば90cm)を介して配設されて、根太6同士は互いに間隔b(例えば45cm)を介して配設され、大引き5と根太6とで格子状に形成されている。床づか7は木製または鋼製(図7(c)、参照)であり、大引き5の下側に設けられて床下空間4を上下に横切る態様で複数互いに間隔を介して配設されている。
【0027】
図2に示すように、本実施例の冷房システムは、被冷却領域8を通って熱媒体を循環させる循環路9と、該循環路9に前記熱媒体を循環させるポンプ10とを有し、循環路9に前記床下空間4に収容されたパイプクーラー11を介設して形成されている。なお、循環路9には三方弁30,31が設けられている。ポンプ10は熱源機29内に設けられて循環路9に介設されており(熱源機29内の循環路9は図示せず)、熱源機29内には、ポンプ10の駆動手段や、ポンプ10の駆動により循環路9を循環する熱媒体の加熱手段(図示せず)が設けられている。
【0028】
被冷却領域8は、床の上側に設けられた部屋42に外部から空気を導入する空気導入部13に設けられており、空気導入部13には、フィルタ14とファン15とが設けられている。なお、本実施例において、被冷却領域8は、必要に応じて熱源機29によって加熱が行われる被加熱領域でもあり、図2の図中、符号41は、各部屋42への空気の吹き出し口を示す。
【0029】
パイプクーラー11は、図1に示すように、基礎1上に配設されたパイプ12と長形状(ここでは、直方体形状)のヘッダ16とを有し、ヘッダ16には、例えばパイプ12に熱媒体を供給するための熱媒体通路30が形成されてパイプ12に熱媒体を供給する。パイプ12はヘアピン形状に形成されており、床づか7を避ける態様で床づか7と床づか7との間隔に設けられている。つまり、パイプ12は、ヘッダ16から該ヘッダ16の長手方向を横切る方向であって基礎1の表面に沿う方向に突出して設けられて突出先端で屈曲し、ヘッダ16に戻るヘアピン形状に形成され、ヘッダ16の長手方向に間隔を介して複数(ここでは、ヘッダ16の両側に3本ずつ)平行に配設され、床づか7と床づか7との間に配置されている。パイプ12は、例えば直径が7mm〜10mmの架橋ポリエチレンパイプ等の樹脂により形成されて、パイプ保持体22によって保持されており、ヘッダ16も樹脂により形成されている。なお、図7(a)にも、パイプ12の配設例が一部示されている。
【0030】
本実施例は、パイプ12を通る熱媒体を、床下空間4において基礎1の下側の地面と床下空間4との温度差に伴う気化熱によって冷却する。つまり、基礎1の下側の土に含まれている水分が土から基礎1を通して床下空間4に入り、地面の温度(例えば15〜17℃程度)に比べて温度が高い床下空間4内で気化(蒸発)し、この気化熱によってパイプ12を通る熱媒体を冷却する。そして、その冷却した熱媒体をポンプ10により循環路9に循環させて被冷却領域8を冷却する。なお、パイプクーラー11による被冷却領域8の冷却時は、三方弁30,31により、パイプクーラー11側の循環路9を熱源機29と接続状態としてパイプクーラー11で冷却した熱媒体を被冷却領域9を通して循環させ、被冷却領域8を熱源機29により加熱するときには、三方弁30,31により、パイプクーラー11側の循環路9を熱源機29と非接続状態とする。
【0031】
本実施例において、パイプクーラー11は例えば以下のようにして敷設する。つまり、図3(a)に示すように、ヘッダ16にヘアピン形状パイプ12を取り付けたクーラー構成体17をヘアピン形状パイプ12の突出先端側の屈曲部20に紐部材18を設けた状態として、例えば上下間に伝熱性のあるアルミシート(図8(a)、参照)により形成されたシート19上に載せる。なお、クーラー構成体17をシート19上に載せてから紐部材18を設けてもよい。そして、シート19と共にヘアピン形状パイプ12をその突出先端側の屈曲部20側からヘッダ16側に向けて該屈曲部20を上向きにして丸めていき、図3(b)に示すように丸めて、点検孔21(図1、参照)から床下空間4に挿入する。そして、ヘアピン形状パイプ12の巻き終わり側が上側になるようにして基礎1上に配置する。
【0032】
その後、シート19を取り除き、紐部材18を引っ張ることにより、ヘアピン形状パイプ12をに広げた状態として、クーラー構成体17を基礎1上に広げて配置することによりパイプクーラー11を基礎1上に敷設し、このパイプクーラー11の敷設後、ヘッダ16に循環路9を接続する。なお、図8(a)に示すアルミシート19は、貫通の孔34が形成されている発砲ポリエチレンシート35の表面と裏面にそれぞれアルミ箔36を設け、発泡ポリエチレンシートをアルミ箔で挟んで形成されるものであり、図8(b)に示すように、アルミ箔36の発泡ポリエチレンシート35との対向面に両面テープ37を設けて接着したり、図8(c)に示すように、図の上下から圧力をかけて、上下のアルミ箔36を発泡ポリエチレンシート35の孔34の部分で接触させたりして形成されるものである。
【0033】
なお、本発明は前記実施例に限定されることはなく、様々な態様を採り得る。例えば、前記実施例に適用したパイプクーラー11の敷設を、以下のような方法により行ってもよい。例えば、図4(a)に示すように、ヘッダ16の上側にパイプ挿入部23を形成し、ヘアピン形状パイプ12のヘッダ16への取り付け端側には下向きの取り付け部24を形成して、ヘッダ16とヘアピン形状パイプ12とを別々に床下空間4に挿入する。そして、図4(b)に示すように、ヘアピン形状パイプ12の取り付け部24をヘッダ16のパイプ挿入部23に上側から差し込むことによって、ヘッダ16にヘアピン形状パイプ12を取り付け、パイプクーラー11を床下空間4内で組み立てて基礎1上に敷設してもよい。
【0034】
また、このように、ヘッダ16とヘアピン形状パイプ12とを別々に床下空間4に挿入して組み立てる構成において、図5(a)に示すように、それぞれのヘアピン形状パイプ12を、互いに間隔を介して配設された2本のパイプ12aと該パイプ12a同士の間隔を保持するパイプ保持部25とを備えた1つ以上(ここでは、2つ)のパーツユニット26と、屈曲部20が形成されたパイプ12bの一端側と他端側とが間隔を介して配設された1つのパーツユニット28とを組み立て形成する構成としてもよい。
【0035】
この場合、隣り合うパーツユニット26,28の一方側にはパイプ12a,12bに下向きの取り付け部24を設け、他方側には取り付け部24を上側から挿入するパイプ挿入部23を設け、これらの複数のパーツユニット26,28とヘッダ16(同図には図示せず)とを別々に床下空間4に挿入する。そして、床下空間4内でパーツユニット26,28のパイプ12a,12bの取り付け部24を隣のパーツユニット26のパイプ挿入部33に上側から差し込んで取り付けることにより、ヘアピン形状パイプ12を形成する。なお、例えば図5(b)に示すように、パイプユニット28にもパイプ保持部27を設けてもよく、この場合、パイプ保持部27にパイプ挿入部23を形成して、隣のパーツユニット26のパイプ12aをパイプ挿入部23に挿入する構成としてもよい。
【0036】
さらに、前記実施例では、パイプクーラー11を、ヘッダ16の両側に3本ずつヘアピン形状パイプ12を突出させて形成したが、ヘアピン形状パイプ12の配設数や配設形状等の詳細は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。例えば、ヘッダ16から突出形成するヘアピン形状パイプ12を、ヘッダ16を中心とした非対称な態様に突出形成しとしてもよいし、ヘアピン形状パイプ12を形成するパイプ同士は、平行でなくてもよい。
【0037】
また、図6に示すように、ヘアピン形状パイプ12の平行に対向するパイプの間隔を狭く形成してもよいし、床下空間4の大きさに応じて、基礎1の大きさが8畳(3.6m×3.6m)程度よりも小さい(6畳程度や4畳半程度)の場合には、1つのパイプクーラー11を設け、8畳程度の場合には、例えば図6に示すように、2つのパイプクーラー11を設ける等、床下空間4の広さに応じて複数のパイプクーラー11を設けてもよい。
【0038】
さらに、前記実施例では、被冷却領域8を、家屋100の24時間換気システムの空気導入部に設けたが、被冷却領域8の配設場所は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものであり、例えばオフィスにおける24時間換気システムの空気導入部に設けてもよい。また、浴室の冷房や衣類乾燥用として導入される空気導入部に被冷却領域8を設けてもよく、この場合も、浴室の快適な利用を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の冷房システムは、簡単な構成で被冷却領域を冷房できるので、例えば家庭やオフィス用として用いられている24時間換気システムにおいて、涼しい空気を導入するための冷房システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 基礎(建築物基礎)
3 床板
4 床下空間
5 大引き
7 床づか
8 被冷却領域
9 循環路
10 ポンプ
11 パイプクーラー
12,12a,12b パイプ
13 空気導入部
17 クーラー構成体
18 紐部材
19 シート
20 屈曲部
22 パイプ保持体
23,33 パイプ挿入部
24 取り付け部
25,27 パイプ保持部
26,28 パーツユニット
29 熱源機
50 冷房システム
100 家屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却領域を通って熱媒体を循環させる循環路と、該循環路に前記熱媒体を循環させるポンプとを有し、前記循環路には建築物の床と該床よりも下側に設けられて地面に埋め込まれている建築物基礎との間の床下空間に収容されて前記建築物基礎上に配設されたパイプを有するパイプクーラーが介設され、前記床下空間を上下に横切る態様で複数互いに間隔を介して配設された床づかを避ける態様で該床づかと床づかとの間隔に前記パイプクーラーのパイプが設けられて、該パイプを通る熱媒体を前記床下空間において前記建築物基礎の下側の地面と前記床下空間との温度差に伴う気化熱によって冷却し、該冷却した熱媒体を前記ポンプにより前記循環路に循環させて前記被冷却領域を冷却することを特徴とする冷房システム。
【請求項2】
被冷却領域は、床の上側に設けられた部屋に外部から空気を導入する空気導入部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の冷房システム。
【請求項3】
パイプクーラーは、床下空間の建築物基礎の上側に配置されたパイプに熱媒体を供給する長形状のヘッダを有し、前記パイプは前記ヘッダから該ヘッダの長手方向を横切る方向であって前記建築物基礎の表面に沿う方向に突出して設けられて突出先端で屈曲し前記ヘッダに戻るヘアピン形状に形成され、該ヘアピン形状パイプが前記ヘッダの長手方向に互いに間隔を介して複数設けられて床づかと床づかとの間に配置される態様と成していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の冷房システム。
【請求項4】
請求項3記載の冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法であって、ヘッダにヘアピン形状パイプを取り付けたクーラー構成体を形成して前記ヘアピン形状パイプの先端側の屈曲部に紐部材を設けた状態とし、前記ヘアピン形状パイプをその屈曲部側から前記ヘッダ側に向けて該屈曲部を上向きにして丸めて床下空間に挿入し、前記ヘアピン形状パイプの巻き終わり側が上側になるようにして建築物基礎上に配置した後、前記紐部材を引っ張ることにより前記ヘアピン形状パイプを広げた状態として前記クーラー構成体を前記建築物基礎上に広げて配置することにより前記パイプクーラーを前記建築物基礎上に敷設することを特徴とする冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法。
【請求項5】
クーラー構成体をヘアピン形状パイプの先端部の屈曲部に紐部材が設けられてシート上に配置された状態とし、該シートと共に前記ヘアピン形状パイプをその屈曲部側から前記ヘッダ側に向けて該屈曲部を上向きにして丸めて床下空間に挿入し、前記ヘアピン形状パイプの巻き終わり側が上側になるようにして建築物基礎上に配置した後、前記シートを取り除き、前記紐部材を引っ張ることにより前記ヘアピン形状パイプを広げた状態として前記クーラー構成体を前記建築物基礎上に広げて配置して前記パイプクーラーを前記建築物基礎上に敷設することを特徴とする請求項4記載の冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法。
【請求項6】
請求項3記載の冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法であって、ヘッダの上側にパイプ挿入部を形成してヘアピン形状パイプの前記ヘッダへの取り付け端側には下向きの取り付け部を形成した構成とし、該ヘアピン形状パイプと前記ヘッダとを別々に床下空間に挿入して、該床下空間内で前記ヘアピン形状パイプの取り付け部を該ヘッダのパイプ挿入部に上側から差し込むことによって該ヘッダに前記ヘアピン形状パイプを取り付け、前記パイプクーラーを前記床下空間内で組み立てて前記建築物基礎上に敷設することを特徴とする冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法。
【請求項7】
それぞれのヘアピン形状パイプを、互いに間隔を介して配設された2本のパイプと該パイプ同士の間隔を保持するパイプ保持部とを備えた1つ以上のパーツユニットと、屈曲部が形成されたパイプの一端側と他端側とが間隔を介して配設されている1つのパーツユニットとを組み立て形成する構成として、隣り合うパーツユニットの一方側にはパイプに下向きの取り付け部を設けて他方側には該取り付け部を上側から挿入するパイプ挿入部を設け、これらの複数のパーツユニットとヘッダとを別々に床下空間に挿入し、該床下空間内で前記パーツユニットのパイプの取り付け部を隣のパーツユニットの前記パイプ挿入部に上側から差し込んで取り付けることにより前記ヘアピン形状パイプを形成することを特徴とする請求項6記載の冷房システムに適用されるパイプクーラーの敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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