説明

冷蔵庫

【課題】従来の構成を用いても、まだ農薬の分解量が十分ではなかった。
【解決手段】貯蔵室と、貯蔵室に315nm〜380nmの光を照射する光源と、前記貯蔵室に酸素を供給する酸素富化装置とを備える。
また、貯蔵室の圧力を制御するための装置である圧力制御装置であるポンプ311と、貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源210を備えたものである。これによって、圧力を制御した空間で光による農薬分解を効率的に行うことができる。
また、次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410と、貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光と波長が780nm〜1mmの光を照射することが可能な光源を備える。
これによって、野菜に残留した農薬を効果的に分解し、かつ野菜の活性を保つことができ、したがって安心な食品を消費者へ提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、冷蔵庫を含む食品貯蔵庫に関し、特に、食品に残留している農薬を分解することのできる食品貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い酸化作用を備えるオゾンは、冷蔵庫などの除菌や防かびなどに用いられている。例えば、特許文献1には、除菌や防かびを行うためにオゾンを用い、当該オゾンのために冷蔵庫の内面を構成する樹脂が腐食するのを防止するために、耐オゾン性材料で形成される冷蔵庫に関する発明が記載されている。さらに、特許文献1には、当該冷蔵庫内に配置された光触媒に紫外線を照射し、触媒により臭気成分を分解し脱臭を行う旨の記載がある。
【特許文献1】特許第3920064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の構成を用いても、まだ農薬の分解量が十分ではないという課題を有していた。
【0004】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、保存食品の農薬を効果的に分解することで、より安心な食品を消費者へ提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、前記貯蔵室に酸素を供給する酸素富化装置と前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源を備えるものである。
【0006】
また、本発明の冷蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室の圧力を制御するための装置である圧力制御装置と、前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源を備えたものである。これによって、圧力を制御した空間で光による農薬分解を効率的に行うことができる。
【0007】
また、本発明の冷蔵庫は、前記貯蔵室に次亜塩素酸水溶液の生成供給装置と、前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光と波長が780nm〜1mmの光を照射することが可能な光源を備えるものである。これによって、オゾンによる野菜の残留農薬の分解を加速することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の冷蔵庫は、野菜に残留した農薬を効果的に分解し、かつ野菜の活性を保つことができ、したがって安心な食品を消費者へ提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、貯蔵室と、貯蔵室と、前記貯蔵室に酸素を供給する酸素富化装置と前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源を備えたことにより、酸素を富化した空間で光による食品の残留農薬の分解を効率的に行うことができる。
【0010】
第2の発明は、酸素富化手段として、酸素富化膜を用いるもので、酸化剤等の供給をす
ることなく、使用者の手間をかけることなく酸素の供給ができる。
【0011】
第3の発明は、酸素濃度検知手段を設けるもので、効率的に酸素濃度を保持する冷蔵庫を提供することができる。
【0012】
第4の発明は、貯蔵室と、前記貯蔵室の圧力を制御するための装置である圧力制御装置と前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源を備えたことにより、光による農薬の分解を加速的に行うことができる。
【0013】
第5の発明は、光源としてLEDを用いるもので、省エネルギーでの光照射が実現できる。
【0014】
第6の発明は、圧力制御装置がポンプもしくはコンプレッサーとするもので、簡易的に室内の気圧制御をすることができる。
【0015】
第7の発明は、貯蔵室と、前記貯蔵室に次亜塩素酸水溶液の生成供給装置と、前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光と波長が780nm〜1mmの光を照射することが可能な光源を備えた冷蔵庫とするもので、安価な方式で安全に野菜の残留農薬を分解することができる。
【0016】
第8の発明は、波長が315nm〜380nmの光と波長が780nm〜1mmの光を交互に照射する制御を行うことを特徴とするもので、効果的に野菜の残留農薬を分解することができる。
【0017】
第9の発明は、次亜塩素酸水溶液の生成供給装置が水道水の電気分解により次亜塩素酸を生成するもので、手間がかからず、簡易的な方法で次亜塩素酸水溶液を生成できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における冷蔵庫の側断面図である。
【0019】
図1において、冷蔵庫100は仕切り板101によって、上から冷蔵室102、野菜室103、冷凍室104に仕切られている。
【0020】
また、冷蔵庫101を冷却するため、冷凍サイクルが圧縮機、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、冷却器105、それら構成部品を連結する配管、冷媒などで構成され、この冷凍サイクルによって生成された冷気によって冷蔵庫101の貯蔵室が冷却される。
【0021】
また、冷蔵庫101には、冷却器105で冷却された冷気を各貯蔵室空間に搬送するためのファン106があり、ファン106により送風された冷気は各貯蔵室空間へ搬送する冷却封路107があり、風路107は各貯蔵室と仕切り板101で断熱されている。
【0022】
また、冷却風路107には、冷却器104と冷蔵室102の間に冷蔵室ダンパ108が設けられており、冷却器104と野菜室の間に野菜室ダンパ109、冷却器104と冷蔵室の間に冷凍室ダンパ110が設けられている。
【0023】
冷蔵庫100の各貯蔵室の冷蔵室102は設定温度が3度、野菜室103は5度、冷凍室104は−18度に保つように構成されている。ここで、冷蔵室ダンパ108と野菜室ダンパ109と冷凍室ダンパ110は各部屋の設定温度を保つために、冷却器で冷却され
た冷気をファンで各部屋へ送り込む際に開閉するように制御されている。
【0024】
また、野菜室103は下面に接しているー18度に保たれた冷凍室104からの冷却により、野菜室103が0度以下になる場合もある。このため、野菜室103の下面には野菜室103を5度に保つ手段として野菜室ヒーター111を設け、野菜室103の下面を温めている。
【0025】
また、冷却器105の下には、冷蔵庫100に保存した食品より発生した水分により冷却器105に霜が付着するが、その霜を溶かすためのデフロストヒーター112が設けられている。デフロストヒーター112動作時は、デフロストヒーター112で暖められた空気が冷蔵室102と野菜室103と冷凍室104に流入して各貯蔵室の温度が上昇するのを防ぐために、冷蔵室ダンパ108と野菜室ダンパ109と冷凍室ダンパ110は閉じた状態に制御され、温度上昇を防いでいる。
【0026】
また、野菜室103には、野菜室103に収納された野菜や果物の表面に付着している農薬等の有害物質を酸化分解により分解除去するための315nm〜380nmの光、つまり紫外線を発生する光源210と、酸素富化装置211が設けられている。また222は酸素濃度検知装置である。
【0027】
以上のように構成された冷蔵庫の農薬分解促進手段について、以下その動作、作用を説明する。
【0028】
まず、酸素富化装置211を駆動しない場合の動作を説明する。野菜室103に設置した光源210から光を照射、野菜や果物に光を当てる。光が野菜や果物の表面に付着している農薬等の有害物質と接触し、これらの有害物質が酸化され、害のない安全な物質へと分解される。
【0029】
ここで、光源210から照射される光による分解除去は、酸化分解のため光はできるだけ高強度の方が酸化分解は早く進み、その結果、これらの有害物質を効率よく分解することができるが、紫外線は高濃度であると保存している野菜、果物等の食品への悪影響が懸念されるため、できるだけ低強度の方がよい。光源210にはどのような光源を用いても実施可能であるが、LEDランプを用いることが安価であり望ましい。
【0030】
次に、加えて酸素富化装置211を駆動させた場合について説明する。酸素富化装置211を動作させ、野菜室の酸素濃度を通常の約21%から増加させることができ、野菜事態の活性を向上させることができる。222の酸素濃度検知装置により、野菜室内の濃度を安定して保つことも可能である。
(実験例1)
酸素濃度の異なる野菜室に既知の濃度を塗布した青梗菜を24時間保存して、初期からの農薬濃度の変化を比較した。冷蔵庫の運転状態は実施の形態1のとおりである。また光源には、中心波長が365nmの紫外線LEDを用いた。出力は0.6mWのLEDである。光源を野菜室上部に設置して、光源から野菜までの距離が20cmとなるようにした。野菜室に保存した青梗菜は葉の部分を4cm角に切断、マラチオンを重量比率で10ppm塗布した。これを比較例として酸素濃度21%の野菜室に24時間保存した。試験片は10枚とした。同時に同様の処理をした青梗菜を酸素濃度25%の野菜室にも保存した。24時間経過後に青梗菜を取り出し、破砕、溶媒抽出した後に、ガスクロマトグラフを用いて定量した。
【0031】
結果、比較例1では初期の塗布量に比べ、マラチオンは31%減少していた。それに対し、25%の酸素濃度に保存した青梗菜では、マラチオンは52%減少しており、明らか
に残留農薬濃度に差がみられた。また野菜表面の褐変の状態を比較したが、明らかに比較例1の方が褐色になっていた。そのほかにクロロピリホス、メタミドホスにおいても実験を行い、25%の酸素濃度に保存した方が残留農薬が少ない、つまり初期に比べて多く減少する傾向がみられた。
【0032】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態における冷蔵庫の側断面図である。
【0033】
図2において、冷蔵庫100は仕切り板101によって、上から冷蔵室102、野菜室103、冷凍室104に仕切られている。
【0034】
また、冷蔵庫101を冷却するため、冷凍サイクルが圧縮機、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、冷却器105、それら構成部品を連結する配管、冷媒などで構成され、この冷凍サイクルによって生成された冷気によって冷蔵庫101の貯蔵室が冷却される。
【0035】
また、冷蔵庫101には、冷却器105で冷却された冷気を各貯蔵室空間に搬送するためのファン106があり、ファン106により送風された冷気は各貯蔵室空間へ搬送する冷却封路107があり、風路107は各貯蔵室と仕切り板101で断熱されている。
【0036】
また、冷却風路107には、冷却器104と冷蔵室102の間に冷蔵室ダンパ108が設けられており、冷却器104と野菜室の間に野菜室ダンパ109、冷却器104と冷蔵室の間に冷凍室ダンパ110が設けられている。
【0037】
冷蔵庫100の各貯蔵室の冷蔵室102は設定温度が3度、野菜室103は5度、冷凍室104は−18度に保つように構成されている。ここで、冷蔵室ダンパ108と野菜室ダンパ109と冷凍室ダンパ110は各部屋の設定温度を保つために、冷却器で冷却された冷気をファンで各部屋へ送り込む際に開閉するように制御されている。
【0038】
また、野菜室103は下面に接しているー18度に保たれた冷凍室104からの冷却により、野菜室103が0度以下になる場合もある。このため、野菜室103の下面には野菜室103を5度に保つ手段として野菜室ヒーター111を設け、野菜室103の下面を温めている。
【0039】
また、冷却器105の下には、冷蔵庫100に保存した食品より発生した水分により冷却器105に霜が付着するが、その霜を溶かすためのデフロストヒーター112が設けられている。デフロストヒーター112動作時は、デフロストヒーター112で暖められた空気が冷蔵室102と野菜室103と冷凍室104に流入して各貯蔵室の温度が上昇するのを防ぐために、冷蔵室ダンパ108と野菜室ダンパ109と冷凍室ダンパ110は閉じた状態に制御され、温度上昇を防いでいる。
【0040】
また、野菜室103には、野菜室103に収納された野菜や果物の表面に付着している農薬等の有害物質を酸化分解により分解除去するための315nm〜380nmの光、つまり紫外線を発生する光源310と、野菜室103の気圧を制御するためのポンプ212が設けられている。
【0041】
以上のように構成された冷蔵庫の農薬分解促進手段について、以下その動作、作用を説明する。
【0042】
まず、ポンプ311を駆動しない場合の動作を説明する。野菜室103に設置した光源
310から光を照射、野菜や果物に光を当てる。光が野菜や果物の表面に付着している農薬等の有害物質と接触し、これらの有害物質が紫外線の酸化分解により害のない安全な物質へと分解される。
【0043】
ここで、光源310から照射される光による分解除去は酸化分解のため、光はできるだけ高強度の方が酸化分解は早く進み、その結果、これらの有害物質を効率よく分解することができるが、紫外線は高濃度であると保存している野菜、果物等の食品への悪影響が懸念されるため、できるだけ低強度の方がよい。光源310にはどのような光源を用いても実施可能であるが、LEDランプを用いることが安価であり望ましい。
【0044】
次に、加えてポンプ311を駆動させた場合について説明する。ポンプ311を動作させ、野菜室の気圧を通常の1気圧から減圧、加圧させることができ、野菜の活性に対して刺激を与えることができる。
(実験例2)
気圧の異なる野菜室に既知の濃度を塗布したりんごを24時間保存して、初期からの農薬濃度の変化を比較した。冷蔵庫の運転状態は実施の形態1のとおりである。また光源には、中心波長が365nmの紫外線LEDを用いた。出力は0.6mWのLEDである。光源を野菜室上部に設置して、光源からリンゴまでの距離が15cmとなるようにした。野菜室に保存したリンゴを4cm角に切断、クロロピリホスを重量比率で5ppm塗布した。これを比較例としてポンプ311を作動させない気圧が1気圧の野菜室に24時間保存した。試験片は10枚とした。同時に同様の処理をしたリンゴを、ポンプ311を作動させ減圧し0.8気圧とした野菜室にも保存した。24時間経過後に青梗菜を取り出し、破砕、溶媒抽出した後に、ガスクロマトグラフを用いて定量した。
【0045】
結果、比較例1では初期の塗布量に比べ、クロロピリホスは20%減少していた。それに対し、0.8気圧の野菜室に保存したリンゴでは、クロロピリホスは41%減少しており、明らかに残留農薬濃度に差がみられた。また野菜表面の褐変の状態を比較したが、明らかに比較例1の方が褐色になっていた。そのほかにマラチオン、メタミドホスにおいても実験を行い、0.8気圧の野菜室に保存した方が残留農薬が少ない、つまり初期に比べて多く減少する傾向がみられた。
【0046】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態における冷蔵庫の側断面図である。
【0047】
図3において、冷蔵庫100は仕切り板101によって、上から冷蔵室102、野菜室103、冷凍室104に仕切られている。
【0048】
また、冷蔵庫101を冷却するため、冷凍サイクルが圧縮機、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、冷却器105、それら構成部品を連結する配管、冷媒などで構成され、この冷凍サイクルによって生成された冷気によって冷蔵庫101の貯蔵室が冷却される。
【0049】
また、冷蔵庫101には、冷却器105で冷却された冷気を各貯蔵室空間に搬送するためのファン106があり、ファン106により送風された冷気は各貯蔵室空間へ搬送する冷却封路107があり、風路107は各貯蔵室と仕切り板101で断熱されている。
【0050】
また、冷却風路107には、冷却器104と冷蔵室102の間に冷蔵室ダンパ108が設けられており、冷却器104と野菜室の間に野菜室ダンパ109、冷却器104と冷蔵室の間に冷凍室ダンパ110が設けられている。
【0051】
冷蔵庫100の各貯蔵室の冷蔵室102は設定温度が3度、野菜室103は5度、冷凍室104は−18度に保つように構成されている。ここで、冷蔵室ダンパ108と野菜室ダンパ109と冷凍室ダンパ110は各部屋の設定温度を保つために、冷却器で冷却された冷気をファンで各部屋へ送り込む際に開閉するように制御されている。
【0052】
また、野菜室103は下面に接しているー18度に保たれた冷凍室104からの冷却により、野菜室103が0度以下になる場合もある。このため、野菜室103の下面には野菜室103を5度に保つ手段として野菜室ヒーター111を設け、野菜室103の下面を温めている。
【0053】
また、冷却器105の下には、冷蔵庫100に保存した食品より発生した水分により冷却器105に霜が付着するが、その霜を溶かすためのデフロストヒーター112が設けられている。デフロストヒーター112動作時は、デフロストヒーター112で暖められた空気が冷蔵室102と野菜室103と冷凍室104に流入して各貯蔵室の温度が上昇するのを防ぐために、冷蔵室ダンパ108と野菜室ダンパ109と冷凍室ダンパ110は閉じた状態に制御され、温度上昇を防いでいる。
【0054】
また、野菜室103には、野菜室103に収納された野菜や果物の表面に付着している農薬等の有害物質を酸化分解により分解除去するための次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410と、422の光源Aと423の光源Bが設けられている。次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410について説明する。容器内の水道水に2本の電極を設置して、電極間にある程度以上の電圧をかけると電気分解が起こり,陽極側では酸素の他に塩素が発生する。その塩素のうちのある割合は水溶液の中で強い酸化力を有する次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンになる。
また422の光源Aは波長が315nm〜380nmの光、つまり紫外線を照射可能で、423の光源Bは波長が780nm〜1mmの光、つまり赤外線を照射可能である。
【0055】
以上のように構成された冷蔵庫の農薬分解促進手段について、以下その動作、作用を説明する。
【0056】
まず、野菜室103に設置した次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410から次亜塩素酸水溶液を噴霧させ、野菜や果物が保存されている野菜室103にミストを充満させる。充満した次亜塩素酸が、野菜や果物の表面に付着している農薬等の有害物質と接触し、これらの有害物質がオゾンと酸化分解の化学反応を生じ、害のない安全な物質へと分解される。ここで、次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410から発生した次亜塩素酸による分解除去は、酸化分解のため次亜塩素酸はできるだけ高濃度の方が酸化分解は早く進み、その結果、これらの有害物質を効率よく分解することができるが、次亜塩素酸は高濃度であると人体への悪影響があり、できるだけ低濃度の方がよい。また、野菜室103を冷却する際は、冷却された冷気をファン106により冷却封路107を通過して野菜室103へ送風、流出している。このため、野菜室103に充満した次亜塩素酸は冷却の際の送風、流出の冷気にのり、野菜室103から拡散されやすい環境にある。そのため、野菜室103を冷却中は、次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410は停止している。その後、野菜室103への冷却が停止した際には、次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410は、運転停止を繰り返し、野菜室103へ再度次亜塩素酸を供給する。
【0057】
このように、野菜室103へ冷気が流入している場合には運転を停止し、冷気が流入していない場合に次亜塩素酸水溶液の生成供給装置410を動作させることで、野菜室103外への次亜塩素酸の流出が少ないため、貯蔵室の内部に収納された野菜表面に付着した残留農薬等の有害物質の分解を目的に少量の次亜塩素酸でより確実に貯蔵室内に次亜塩素酸を充満させることができる。
(実験例3)
野菜室に既知の濃度を塗布した青梗菜を24時間保存して、初期からの農薬濃度の変化を比較する実験を実施した。
【0058】
冷蔵庫の運転状態は実施の形態1のとおりであるが、次亜塩素酸発生の有無、光源AおよびBの駆動状態は表1のとおりである。光源Aと光源Bの点灯時間は10分づつとした。野菜室に保存した青梗菜は葉の部分を4cm角に切断、メタミドホスを重量比率で5ppm塗布した。試験片は各試験において10枚とした。24時間経過後に青梗菜を取り出し、破砕、溶媒抽出した後に、ガスクロマトグラフを用いて定量した。なお野菜からの農薬抽出や分析手法はJISに規定された方式に準じた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

結果を表2に示す、試験1では自然分解により28%の減少となり、オゾンの存在する試験2ではオゾンの分解効果により、試験1よりは多く減少していた。試験3と試験4は試験2に比べ、青梗菜中の農薬量は減少し、さらに試験4の方がより減少する結果となった。つまり光源Aと光源Bは同時に照射するよりも、交互に照射する方が効果的である結果となった。そのほかにクロロピリホス、マラチオンにおいても実験を行い、同様の順列の傾向がみられた。
【0061】
赤外領域の波長の光と紫外線領域の光が交互に照射されることで、野菜への刺激となり野菜も活性化する、また紫外線はそのものが高いエネルギーを有して農薬の分解する能力を有するものを思われる。しかし、照射が過度になった場合、野菜自身がもつ農薬分解能力を阻害することとなるもと思われる。同時に紫外線および赤外線を照射することは野菜、果物に対する阻害性が高く好ましくない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明による冷蔵庫は、消費者により安心した野菜や果物を提供することができるので、低温で野菜や果物を保存する貯蔵庫や業務用冷蔵庫にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態における冷蔵庫の側断面図
【図2】本発明の実施の形態における冷蔵庫の側断面図
【図3】本発明の実施の形態における冷蔵庫の側断面図
【符号の説明】
【0064】
100 冷蔵庫本体
101 仕切り板
102 冷蔵室
103 野菜室
104 冷凍室
105 冷却器
106 ファン
107 冷却封路
108 冷蔵室ダンパ
109 野菜室ダンパ
110 冷凍室ダンパ
111 野菜室ヒーター
112 デフロストヒーター
210,310 光源
211 酸素富化装置
222 酸素濃度検知装置
311 ポンプ(圧力制御装置)
410 次亜塩素酸水溶液の生成供給装置
422 光源A
423 光源B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、前記貯蔵室に酸素を供給する酸素富化装置と前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源を備えた冷蔵庫。
【請求項2】
酸素富化装置として、酸素富化膜を用いたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
貯蔵室内の酸素濃度を検知する酸素濃度検知手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
貯蔵室と、前記貯蔵室の圧力を制御するための装置である圧力制御装置と、前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光を照射することが可能な光源を備えた冷蔵庫。
【請求項5】
光源としてLEDを用いたことを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
圧力制御装置がポンプもしくはコンプレッサーであることを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
貯蔵室と、前記貯蔵室に次亜塩素酸水溶液の生成供給装置と、前記貯蔵室に貯蔵される食品に対し、波長が315nm〜380nmの光と波長が780nm〜1mmの光を照射することが可能な光源を備えた冷蔵庫。
【請求項8】
波長が315nm〜380nmの光と波長が780nm〜1mmの光を交互に照射する制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
次亜塩素酸水溶液の生成供給装置が水道水の電気分解により次亜塩素酸を生成することを特徴とする請求項7に記載の冷蔵庫。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−216667(P2010−216667A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60521(P2009−60521)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】