説明

凍結乾燥かき卵の製造方法

【課題】
復元後に食感の良好なかき卵の得られる凍結乾燥かき卵およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
卵液を熱水に注いでかき卵液を調製し、該かき卵液を凍結乾燥する凍結乾燥かき卵の製造方法において、卵液として、デキストリンを含有し、かつ粘度が100〜2000cpである卵液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥かき卵およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かき卵は、卵液を熱水等に注いで凝固させたもので、該かき卵を含有するかき卵液は、スープ、ラーメン等に利用されている。
凍結乾燥かき卵は、かき卵液を凍結乾燥させたものであり、水、湯等で復元してスープ、ラーメン等に使用される。
しかし、かき卵液をそのまま凍結乾燥して得られた凍結乾燥かき卵は、復元して得られるかき卵の食感がよくないという問題がある。
【0003】
凍結乾燥かき卵の製造方法としては、かき卵液の調製に際し、タピオカ澱粉および乳糖を含有する水溶液に全卵液を投入する方法(特許文献1参照)、デキストリンを含む熱水中に卵液を投入する方法(特許文献2および3参照)等が知られている。しかし、これらの方法では、具材およびかき卵の復元性の改善、復元後のかき卵の分散性や形状の改善はできても、復元後のかき卵の食感を改善するにはいたらない。
【0004】
また、かき卵液の調製に際し、ソルビット、グリセリン等を添加した卵液または沸騰水を用いる方法(特許文献4参照)、粘度を調整した卵液を粘度および温度を調整した熱水に投入する方法(特許文献5参照)等の方法が知られている。これらの方法によると食感は若干改善されるが、満足のゆく改善にはいたらない。
したがって、復元後に食感の良好なかき卵の得られる凍結乾燥かき卵の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平5−276900号公報
【特許文献2】特開平4−190771号公報
【特許文献3】特開昭62−205768号公報
【特許文献4】特公昭45−26056号公報
【特許文献5】特開2002−51747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、復元後に食感の良好なかき卵の得られる凍結乾燥かき卵およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(1)〜(3)に関する。
(1) デキストリンを含有し、かつ粘度が100〜2000cpである卵液を用いることを特徴とする凍結乾燥かき卵の製造方法。
(2) 卵液のデキストリンの含有量が2〜6重量%である、請求項1記載の製造方法。
(3) 上記(1)または(2)の方法により得られる凍結乾燥かき卵。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、復元後に食感の良好なかき卵の得られる凍結乾燥かき卵およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の凍結乾燥かき卵の製造法では、デキストリンを含有し、かつ粘度が100〜2000cpである卵液(以下、本発明の卵液という)が用いられる。
本発明の卵液は、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ホロホロチョウ、七面鳥等の鳥類、好ましくはニワトリの卵より得られる卵液にデキストリンを添加し、かつ粘度を上記粘度となるように調整して得ることができる。
【0009】
本発明の卵液のデキストリン含有量は特に限定されないが、2〜6重量%が好ましく、3〜4重量%がさらに好ましい。
本発明の卵液の粘度は、100〜2000cpであればいずれの粘度であってもよいが、100〜1500cpが好ましく、200〜1000cpがさらに好ましい。
卵液としては、全卵液および卵黄液のいずれを用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。また、卵白液を混合して用いてもよい。
【0010】
デキストリンとしては、澱粉を直接、または酸を加えて乾燥後高温で焙焼、分解して得られる乾式分解物、澱粉糊液を酸、酵素、またはこれらを組み合わせて加水分解して得られる湿式分解物等をあげることができる。また、乾式分解物をさらに湿式で酵素分解して得られる難消化性デキストリンもあげられる。
デキストリンは卵液に直接添加してもよいし、あらかじめ水、湯等に溶解して添加してもよい。
【0011】
本発明の卵液の粘度となるように調整する方法としては、例えば、タマリンドガム、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、ペクチン、アルギン酸、澱粉等の増粘剤を添加する方法があげられる。これらの増粘剤は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
これらの増粘剤は卵液に直接添加してもよいし、あらかじめ水、湯等に溶解して添加してもよい。
【0012】
なお、卵液の粘度は、例えば、回転粘度計を用いる方法により測定することができる。
本発明の卵液は、必要に応じて、水、無機塩、糖、酸、アミノ酸、核酸、天然調味料、香辛料を含有していてもよい。
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、カルシウム等があげられる。
糖としては、シュクロース、グルコース、フラクトース、乳糖等があげられる。
【0013】
酸としては、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、脂肪酸等のカルボン酸等があげられる。
アミノ酸としては、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニン等があげられる。
核酸としては、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等があげられる。
天然調味料としては、醤油、みりん、味噌、畜肉エキス、家禽エキス、魚介エキス、蛋白質加水分解物等があげられる。
【0014】
香辛料としては、スパイス類、ハーブ類等があげられる。
本発明の卵液を、例えば攪拌している熱水中に注ぐことにより、かき卵液を調製することができる。
熱水の温度は90℃以上が好ましく、95℃以上がさらに好ましい。
熱水は、上記の増粘剤、無機塩、糖、酸、アミノ酸、核酸、天然調味料、香辛料等を含有していてもよく、また具材を含有していてもよい。
【0015】
具材としては、ワカメ、ねぎ、きのこ、人参、かまぼこ等があげられる。
なお、上記方法で調製したかき卵液中に、上記の増粘剤、無機塩、糖、酸、アミノ酸、核酸、天然調味料、香辛料、具材等を添加してもよい。
かき卵液は、そのまま次の凍結乾燥処理に供してもよいが、ろ過等の方法で、かき卵を含む固形分を回収し、これを次の凍結乾燥処理に供してもよい。
【0016】
凍結乾燥処理は、かき卵液または回収したかき卵を含む固形分をトレー等の適当な容器に入れて、好ましくは−20℃以下で凍結し、真空凍結乾燥機を用いる常法により行なう。
凍結乾燥の条件は、かき卵の量、かき卵液の含有物により異なるので適宜設定する。
上記の本発明の製造方法により得られた凍結乾燥かき卵は、水、湯等で復元してかき卵液として用いることができる。
【0017】
以下に実施例を示す。
【実施例1】
【0018】
鶏卵を用いて、全卵液を調製した。
該全卵液250gに、デキストリン(パインデックス#1:松谷化学社製)および2gのタマリンドガム(グリロイド3S:大日本製薬社製)を加え、第1表に示すデキストリンの含有量および粘度を有する卵液1〜8を調製した。
なお、粘度は、ブルックフィールド粘度計(B型粘度計)(東機産業社製)を用いて測定した。
【0019】
1000mlの水に22gのバレイショ澱粉を加え、加熱して溶解させ、さらに加熱して約95℃の熱水を調製した。
該熱水を攪拌しながら、これに上記卵液1〜8をそれぞれ250g注ぎ、かき卵液1〜8を製造した。
かき卵液1〜8を、それぞれトレーに約100g分注し、-20℃以下の冷凍庫で凍結させた後、真空凍結乾燥機(共和真空技術社製)を用いて凍結乾燥を行ない、凍結乾燥かき卵1〜8を得た。
【0020】
凍結乾燥かき卵1〜8をそれぞれカップに入れ、約200gの熱湯を注ぎ、かるくかき混ぜて30秒間復元させた。
復元して得られたかき卵の食感について、6名のパネラーにより、第2表に示す評価基準で官能評価を行なった。
各パネラーの評価点の平均値を第1表に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
第1表に示されるとおり、デキストリン含有量が2〜6重量%の卵液を用いて得られた凍結乾燥かき卵(凍結乾燥かき卵3〜7)を復元して得られたかき卵の食感は柔らかいか、または非常に柔らかいものであった。
【実施例2】
【0024】
卵液中のデキストリン添加量を7.5g(3重量%)とし、粘度をタマリンドガムで第3表に示した値となるように調整して卵液9〜16を調製した以外は、実施例1記載の方法に準じて凍結乾燥かき卵9〜16を調製した。なお、タマリンドガムの添加量は、卵液9から順に、約0.5g、約1.3g、約1.8g、約2.3g、約3.2g、約3.7g、約4.5g、約5.2gであった。
凍結乾燥かき卵9〜16を復元して得られるかき卵の食感について、6名のパネラーにより、実施例1記載の評価方法および評価基準に準じて官能評価を行なった。
【0025】
6名のパネラーの評価点の平均値を第3表に示す。
【0026】
【表3】

【0027】
第3表に示されるとおり、粘度が100〜2000cpの卵液を用いて得られた凍結乾燥かき卵(凍結乾燥かき卵10〜15)を復元して得られたかき卵の食感は、やや柔らかい〜非常に柔らかいものであった。
【実施例3】
【0028】
タマリンドガムの代わりに1gのミニットW(大日本製薬社製、グアガム87%、キサンタンガム13%からなる)を用い、卵液のデキストリン含有量および粘度を第4表の値となるように調整して卵液17〜19を調製する以外は、実施例1記載の方法に準じて凍結乾燥かき卵17〜19を得た。
凍結乾燥かき卵17〜19を復元して得られるかき卵の食感について、実施例1記載の評価方法および評価基準に準じて官能評価した。
【0029】
結果を第4表に示す。
【0030】
【表4】

【0031】
第4表に示されるとおり、卵液中の増粘剤がグアガムおよびキサンタンガムである場合でも、デキストリン含有量を3重量%とし、かつ粘度を250cpとした卵液を用いて得られた凍結乾燥かき卵19を復元して得られたかき卵の食感は非常に柔らかいものであった。
【実施例4】
【0032】
鶏卵を用いて得られた全卵液に、デキストリン(パインデックス#1:松谷化学社製)およびタマリンドガム(グリロイド3S:大日本製薬社製)を加え、デキストリン含有量3重量%、粘度200cpの卵液を調製する。
1000mlの水を加熱して約95℃の熱水を調製する。該熱水を攪拌しながら250gの上記卵液を注ぎ、かき卵液を製造する。このかき卵液に、チキンエキス100g、食塩13g、アミノ酸液(HVP)9gおよび野菜エキス8gを添加し、混合する。
【0033】
得られたかき卵液をトレーに約110g注ぎ、-20℃以下の冷凍庫で凍結させた後、真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥を行ない、凍結乾燥かき卵を製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストリンを含有し、かつ粘度が100〜2000cpである卵液を用いることを特徴とする凍結乾燥かき卵の製造方法。
【請求項2】
卵液のデキストリン含有量が2〜6重量%である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法により得られる凍結乾燥かき卵。

【公開番号】特開2006−296235(P2006−296235A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119808(P2005−119808)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(505144588)協和発酵フーズ株式会社 (50)
【出願人】(595124457)協和エフ・デイ食品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】