説明

凍結抑制舗装組成物

【課題】 タイヤ加重による弾性変形による舗装表面の氷盤を破壊すると同時に、ブラックシリカによる遠赤外線放射機能による氷結の融解を行うことで、交通事故の原因となる道路舗装面の凍結を効果的に抑制することができる凍結抑制舗装組成物を提供する。
【解決手段】 弾性体(粒状ゴム又は繊維状ゴム)、ブラックシリカ、バインダー(アスファルト、セメント、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂など)及び骨材を少なくとも含む凍結抑制舗装組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結抑制舗装組成物に関し、更に詳しくは、寒冷地における冬期の舗装路の凍結を効果的に抑制することのできる、舗装用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪寒冷地において、冬期の低温時には、舗装路面の凍結現象が生じやすく、スリップ等の安全上の大きな問題となる。この凍結現象としては、車のタイヤ荷重による圧雪や、圧雪が再び溶けて凍結した氷結などがある。
【0003】
このような問題を解決する目的で、塩化物系材料を舗装体に混入させたり路面に散布したりして、塩化物の氷点降下を利用して凍結を防止する方法(特許文献1参照)や、電熱線や配水管を舗装路の下部に埋設して、電熱あるいは加温水を流すことにより舗装路を加熱するいわゆるロードヒーティング法、さらには、ゴム粒子等の弾性体を舗装体に混入させて弾力性を持たせて凍結を抑制する方法(特許文献2参照)等が主に行われている。
また、ブラックシリカを用いた融雪装置が知られている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−283782号公報
【特許文献2】特開平5−321206号公報
【特許文献3】特開2006−249770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された塩化物系材料の混入による方法では、塩害の問題があり、さらに長期に渡り効果が持続できない。また、ロードヒーティング法によれば、凍結抑制効果は大きいが、工事費や維持費等のコストが非常に高いことが問題である。一方、特許文献2に記載された弾性体を舗装体に混入させる方法では、弾性体の添加量を多くしなければ凍結抑制効果は高くないことや、多く添加すると耐久性や施工性に問題が生じる。
また、特許文献3に記載された融雪装置は、発熱体によってブラックシリカを加熱して、ブラックシリカから遠赤外線を放射させるものであり、また、断熱材を配置する必要があることから、工事費、維持費の点で問題となる。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、施工が簡単で、耐久性に優れた凍結抑制舗装組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意研究の結果、弾性体とブラックシリカとバインダーを少なくとも含む舗装材を用いることで、所期の目的が達成できることを見い出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、弾性体、ブラックシリカ、バインダー及び骨材を少なくとも含むことを特徴とする凍結抑制舗装組成物である(本発明1)。
【0009】
また、本発明は、弾性体が最大粒径1〜5mmの粒状ゴム、または繊維状ゴムである本発明1記載の凍結抑制舗装組成物である(本発明2)。
【0010】
また、本発明は、ブラックシリカの粒度(最大粒径)が4.75mm未満である本発明1記載の凍結抑制舗装組成物である(本発明3)。
【0011】
また、本発明は、バインダーが、アスファルト、セメント、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする本発明1記載の凍結抑制舗装組成物である(本発明4)。
【0012】
また、本発明は、バインダーが、エチレン−酢酸ビニル共重合体を少なくとも30〜70重量%含む熱可塑性樹脂組成物である本発明1記載の凍結舗装材である(本発明5)。
【0013】
また、本発明は、舗装組成物として、弾性体を2〜5重量%、ブラックシリカを10〜50重量%含む本発明1〜5のいずれかに記載の凍結抑制舗装組成物である(本発明6)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物は、弾性体による物理的な作用と、ブラックシリカの遠赤外線効果による化学的な作用により、効率的に凍結を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0016】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物は、少なくとも、弾性体、ブラックシリカ、バインダー及び骨材からなるものである。
【0017】
本発明における弾性体は粒状ゴムまたは繊維状ゴムが好ましく、これら弾性体は最大粒径を1〜5mmの範囲に制御することが好ましい。弾性体の最大粒径が1mm未満の場合には、十分な弾力性を得ることが困難となる。一方、5mmを越える場合には、舗装面の耐久性に問題を生じることがある。弾性体の最大粒径は2〜5mmがより好ましい。
【0018】
また、本発明におけるブラックシリカは、粒度(最大粒径)が4.75mm未満であることが好ましい。4.75mmを越える場合には、舗装面において均一に存在せず、融雪効果に偏りが生じる可能性がある。4.75mm未満であれば、微細骨材や石粉を一部置換することが可能となる。
【0019】
本発明におけるバインダーとしては、アスファルト、セメント、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂のいずれかを用いればよい。求められる用途に応じてバインダーの種類を選択すればよい。
【0020】
また、本発明におけるバインダーとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を少なくとも30重量%以上70重量%以下含む熱可塑性樹脂組成物を用いてもよい。
【0021】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が30重量%未満では、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性が不十分となり、結果として舗装後の路面にひび割れを生じる問題がある。一方、70重量%を越えると、骨材への濡れ性が不十分となり、骨材との接着性に問題を生じる。さらに、石油系樹脂との相溶性も悪くなり、耐久性に優れた路面舗装はできなくなる。熱可塑性樹脂中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は30〜60重量%がより好ましい。
【0022】
本発明におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの含有量が20〜45重量%が好ましく、より好ましくは28〜45重量%である。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の溶融温度は40〜100℃好ましく、メルトフローレートは50〜3000g/10minが好ましい。
【0023】
本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体とともに用いられる他の熱可塑性樹脂としては、石油系樹脂が好適である。石油系樹脂としては、軟化点が70〜150℃のものが好ましい。例えば、C5留分を原料にした脂肪族系、C9留分を原料とした芳香族系、あるいは両者を原料としたC5C9共重合系石油樹脂や、シクロペンタジエン系石油樹脂等を用いることができ、これらは単独で、又は必要に応じ、2種以上組み合わせて用いられる。
【0024】
また、その他の添加物として、石油系プロセスオイルや液状ゴム、エポキシ樹脂、ロジン、低密度ポリエチレン等からなる粘性調整剤を、単独で又は必要に応じ、2種以上組み合わせて添加することができる。これらの添加により、熱可塑性樹脂組成物の粘性や、骨材への濡れ性が改善される。
【0025】
石油系プロセスオイルとしては、引火点が260℃以上のものが好ましい。具体的には、潤滑油、重質鉱油等を用いることができる。液状ゴムとしては、テルペン系の重合体や液状ポリブタジエン、液状ポリブテン等を用いることができる。
【0026】
他の熱可塑性樹脂と粘性調整剤の含有量は、両者合計で30〜70重量%が好ましい。但し、これらの合計量のうち、粘性調整剤の含有量は多くとも25重量%とすることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる骨材は、通常、舗装用として用いる骨材を用いればよい。
【0028】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物は弾性体を2〜5重量%含有することが好ましい。弾性体が2重量%未満の場合には、凍結抑制効果が不十分となる。一方、弾性体が5重量%を越える場合には、舗装面の強度に問題を生じることがある。より好ましくは3〜5重量%である。
【0029】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物はブラックシリカを10〜50重量%含有することが好ましい。ブラックシリカが10重量%未満の場合には、凍結抑制効果が不十分となる。一方、ブラックシリカが50重量%を越える場合には、舗装面の強度に問題を生じることがある。より好ましくは12〜40重量%である。
【0030】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物はバインダーを3〜10重量%含有することが好ましい。バインダーが3重量%未満の場合には、舗装面の強度に問題を生じることがある。一方、バインダーが10重量%を越える場合には、舗装面の強度に問題を生じることがある。より好ましくは4〜8重量%である。
【0031】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物は骨材を40〜80重量%含有することが好ましい。骨材が40重量%未満の場合には、舗装面の強度に問題を生じることがある。一方、バインダーが80重量%を越える場合には、凍結抑制効果が不十分となることがある。より好ましくは45〜78重量%である。
【0032】
必要により、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の無機物を添加しても構わない。
【0033】
本発明において、必要に応じて顔料が使用される。顔料は、無機顔料または有機顔料のいずれでも構わない。特に、耐熱性や耐候性の面から、無機顔料が好ましい。
【0034】
無機顔料としては、黄色含水酸化鉄(ゲーサイト)、赤色酸化鉄(ベンガラ)、緑色酸化クロム、白色酸化チタン等が使用できる。また、耐熱性を向上した顔料を用いることもできる。更に、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等の体質顔料を使用することもできる。これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0035】
また、フェライト等の磁性粒子を用いることにより、磁気誘導等の磁性に基づく機能を付与することができる。
【0036】
本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を用いた場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物をそれぞれ所定の比率で混合したものを、100〜180℃に加熱して混練する。工業的には、一軸や二軸の押出し機で混練し、冷却した後、ペレタイザーにより望ましい大きさに粉砕して小塊状の樹脂組成物とする。
【0037】
また、本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を用いて小塊状の樹脂組成物を作成した場合には、小塊状の樹脂組成物同士の付着を一層防止する目的で、無機顔料や炭酸カルシウムやクレイ、タルク、ケイ砂、ベントナイト等の安価な鉱物、あるいは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム等の滑材を添加することもできる。これらの付着防止用の粉末は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。より効果的には、得られた小塊状の舗装用樹脂組成物の表面に付着させることであり、例えば、押し出し機からでてきたストランドに振り掛けた後、必要な大きさの小塊状にしたり、あるいは小塊状にした後に振り掛けたりするような方法が有効である。
【0038】
これら付着防止用の粉末の添加量は、通常、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し0.1〜5重量部程度である。
【0039】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物は、弾性体、ブラックシリカ、バインダー及び骨材を、常法に従って、混合溶融して用いればよい。
【0040】
<作用>
本発明において重要な点は、弾性体とブラックシリカとバインダーを少なくとも含有する舗装用組成物を使用することで、交通荷重による弾性体の変形により舗装表面の氷板を破砕する、いわゆる物理的作用に加えて、ブラックシリカによる遠赤外線放射機能に基づき融雪する、いわゆる化学的作用の二つの作用によって、効率的に凍結を抑制するという点である。
【実施例】
【0041】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0042】
舗装材の引張強度試験を用いて凍結抑制効果を評価した。
具体的には、供試体上にφ10cmの鋼製冶具に水を含ませたポリエステル製不織布を当て、−5℃の低温室にて5時間氷着させる。氷着後、2.0kgの加重を掛けた後、引張試験機で冶具を引張り、氷着引張強度を求める。氷着引張強度の値が小さいほど、凍結抑制効果が高いことを意味する。
舗装材の耐久性に関しては、マーシャル安定度に関して評価した。マーシャル安定度試験は、「舗装試験法便覧」に記載されている方法に従って測定した。
【0043】
実施例1
弾性体として、4.75mmふるい通過100%、2.36nm通過10%、1.18nm通過2.5%のゴムチップを用いた。
一方、ブラックシリカは、4.75mmふるい通過100%、2.36mm通過98.8%、1.18mm通過86.7%、600μm通過53.8%、300μm通過29.2%、150μm通過13.9%の北海道上ノ国町産のものを粉砕して用いた。
【0044】
バインダーとしては、ストレートアスファルトの60−80を用いて、以下の配合で混合物を調製した。
砕石6号48重量%、荒砂18重量%、細砂3重量%、ゴムチップ5重量%、ブラックシリカ20重量%、およびストレートアスファルト6重量%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行った。締め固め回数は両面それぞれ50回行った。
【0045】
氷着状態における引張強度試験によって、凍結抑制効果を評価した。尚、−5℃で5時間養生後に試験を行い、0.15N/mmの値が得られた。
マーシャル安定度は、5.1kNだった。
【0046】
実施例2
バインダーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体としてウルトラセン760(商品名;(株)東ソー製;酢酸ビニル含有量41重量%)550g と石油系樹脂ネオポリマーE100(商品名;日本石油化学(株)製)650g およびプロセスオイルAROMAX−3(商品名;富士興産(株)製)300g をミキサーで混合した後、120℃に加熱して溶融させ、二軸の押し出し機で混練し、押し出された混合物を冷却した後、φ4mm×5mmの小塊状に切断して得られた樹脂組成物を用いて、以下の配合で混合物を調製した。
砕石6号54重量%、荒砂10重量%、細砂5重量%、ゴムチップ5重量%、ブラックシリカ20重量%、および上記樹脂組成物6重量%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行った。締め固め回数は両面それぞれ50回行った。
【0047】
氷着状態における引張強度試験によって、凍結抑制効果を評価した。尚、−5℃で5時間養生後に試験を行い、0.10N/mmの値が得られた。
マーシャル安定度は、4.5kNだった。
【0048】
比較例1
弾性体及びブラックシリカを用いない以外は実施例1と同様にして、砕石6号48重量%、荒砂23重量%、細砂23重量%、およびストレートアスファルト6重量%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行った。
【0049】
氷着状態における引張強度試験によって、凍結抑制効果を評価した。尚、−5℃で5時間養生後に試験を行い、0.70N/mmの値が得られた。
マーシャル安定度は、5.0kNだった。
【0050】
以上の結果から、弾性体とブラックシリカとを含有する舗装組成物は、引っ張り強度試験が0.50N/mm以下と優れた値を有するので、冬期における舗装面の凍結を抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る凍結抑制舗装組成物は、弾性体による物理的な作用と、ブラックシリカの遠赤外線効果による化学的な作用により、効率的に凍結を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体、ブラックシリカ、バインダー及び骨材を少なくとも含むことを特徴とする凍結抑制舗装組成物。
【請求項2】
弾性体が最大粒径1〜5mmの粒状ゴム、または繊維状ゴムである請求項1記載の凍結抑制舗装組成物。
【請求項3】
ブラックシリカの粒度(最大粒径)が4.75mm未満である請求項1記載の凍結抑制舗装組成物。
【請求項4】
バインダーが、アスファルト、セメント、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の凍結抑制舗装組成物。
【請求項5】
バインダーが、エチレン−酢酸ビニル共重合体を少なくとも30〜70重量%含む熱可塑性樹脂組成物である請求項1記載の凍結舗装材。
【請求項6】
舗装組成物として、弾性体を2〜5重量%、ブラックシリカを10〜50重量%含む請求項1〜5のいずれかに記載の凍結抑制舗装組成物。

【公開番号】特開2010−37878(P2010−37878A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204852(P2008−204852)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】