説明

凝塊形成用の粒子調製方法

【課題】当該分野での問題点を解決し得る微粒子物質を生成する方法の提供。
【解決手段】微粒子物質を生成する方法であって、該方法は、以下: 第一粒径分布を有する粒子状物質を微粉化して、増大した非晶質含量を有する該中間粒子が生じる様式で、第二粒径分布を有する中間粒子を形成する工程であって、該第二粒径分布は、該第一粒径分布とは異なる、工程;
該中間粒子を硬化して、その非晶質含量を少なくする工程;および該硬化した中間粒子を再微粉化して、第三粒径分布を有する粒子を形成する工程であって、該再微粉化粒子は、該硬化した中間粒子よりも多い非晶質含量を有する、工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、広範には、凝塊形成に関し、および/または凝塊形成で使用する粒子性キャリアおよび/または結合剤および/または薬学的に活性な物質に関し、その形成方法およびそのように生成された凝塊に関する。さらに特定すると、本発明は、薬学的な投薬形態の設計の分野に関し、特に、独特の固形キャリアおよび/または薬学的に活性な物質、ならびに薬学的に活性な物質を患者に投与するための凝塊にした投薬形態の製造に関する。
【0002】
(発明の序説)
上気道および下気道および肺の疾患および病気を治療する公知方法がいくつかある。これらの病気には、例えば、喘息および鼻炎が挙げられる。このような技術の1つは、ある種の薬理学的に活性な試薬または薬剤(例えば、モメタゾンフロエート(mometasone furoate))を、すぐに使用できる形状で、局所的に、気道または肺に投与することを包含する。モメタゾンフロエートは、局所的に有効であり、ステロイド性の抗炎症薬である。
【0003】
経口吸入療法は、このような局所的に活性な薬剤を送達する1方法である。この形態の薬剤送達は、即時の利点を得るのに容易に利用できる形態で、冒された領域に乾燥粉末化薬剤を直接経口投与することに関与している。
【0004】
しかしながら、吸入療法は、特に要求の多い投薬システムであり、それ自体、独特の設計および性能の一連の問題を伴う。これらの問題のうちには、投薬の精度および再現性の懸念がある。いつ何時でも、同量の薬剤が確実に投与されるように試みなければならない。さらに、丸剤、カプセルおよびクリームとは異なり、経口吸入療法は、それ自体、その投薬形態自体だけでなく、薬剤送達装置およびそれらの間の相互作用に関心を向けなければならない。この問題を理解するには、店頭販売のスプレー式点鼻薬を考えるだけでよい。通常のスプレーボトルを締め付けるとき、いつ何時でも同じ量の力を加えることは困難である。力がほんの僅かに違っただけでも、投与される薬剤の量の相違が生じ得る。さらにある程度不変のポンプ型噴霧アプリケータを使っても、投薬の変動が起こり得る。このような変動は、通常、OTCスプレー式点鼻薬を投与するときには問題ではないものが、喘息のような重大な病気に対して強力な処方薬を投与するときには、変動は、できるだけ最小にするべきである。投薬しすぎまたは投薬が少なくなる危険およびこのような不要な逸脱の結果は、深刻であり得る。この問題は、その用量のサイズが経口吸入療法でしばしば見られる少量であるとき、さらに複雑になる。
【0005】
これらの問題を緩和するのを助けるために、Schering Corporationのような会社は、粉末薬剤を投与するための複雑で極めて正確な吸入器システム(例えば、PCT国際公開WO94/14492(その教本の内容は、本明細書中で参考として援用されている))を開発した。このような吸入器システムは、特定サイズの投薬穴を使用して、粉末化薬剤の正確な用量を計量するように、設計された。この穴は、投薬前に、薬剤で完全に満たされ、この投薬穴にある全内容物は、次いで、ノズルを通って、患者に送達される。この投薬穴は、次いで、次の用量のために、再度満たされる。これらの装置は、投薬時における人間の間違いおよび機械的に誘導された変動性をできるだけ取り除くように、特別に設計されている。
【0006】
このような装置は、経口吸入療法での著しい進歩を示すものの、依然として、一部には、問題が残り得る状況がある。これらの問題は、しばしば、この薬理学的な活性剤の特性およびそれらの吸入器との相互作用に集中している。例えば、ある種の薬剤は、「流れるように動かず」、そのことにより、その薬剤を貯蔵所からレザバに移動すること、投薬穴で測定すること、吸入器から送達することが困難となり得る。他の薬剤は、静電電荷の問題があり得るか、または許容できない程度の凝集力を示し得る。このような薬剤は、粉末形状のときでさえ、「粘着性」であり得る。これらの薬剤は、吸入器/アプリケータを塞ぎ得、それが計画量の薬剤を正しく計量する性能に影響を与える。このような粉末はまた、このアプリケータのノズルに付着し得、それにより、実際に送達される薬剤の量を減らす。これは、しばしば、「ハングアップ」と呼ばれる。薬剤はまた、「綿花状」であり得、それにより、十分な薬剤を操作して投薬穴に装填することが、非常に難題となる。さらに悪いことには、種々の薬理学的に活性な試薬のこれらの物理的特性および他の物理的特性は、1バッチの物質内で、変わり得る。これは、それを埋め合わせる試みを無効にし得る。
【0007】
吸入療法で一般に使用される粒子の小さいサイズに基づいて、関連した問題もまた、起こり得る。吸入療法は、通例、10ミクロン以下の程度の薬剤粒子が関与している。これにより、この薬剤は、患者の肺に十分に確実に貫入するだけでなく、良好な局所適用範囲が得られる。このような薬剤の十分な分配をもたらすためには、この薬剤の粒径の厳しい制御を維持しなければならない、しかしながら、このサイズの粉末は、特に、少ない投薬量が必要なとき、操作するのが極めて困難であり得る。このような粒子は、代表的に、自由に流動せず、通常、性質として軽く、埃っぽいか、または綿花状てあり、取り扱い、加工および保管中に問題を生じる。それに加えて、このような物質を吸入器の投薬穴に繰り返し正確に装填することは、困難であり得る。それゆえ、この薬剤の特性だけでなく、治療用微粒子の必要なサイズは、合体して、取り扱いおよび投薬に関して相当な問題を起こし得る。
【0008】
細かく粉末化した薬剤を投与する性能を改良する1方法は、乾燥賦形剤(例えば、粉末化ラクトース)を含有させることによる。しかしながら、特に少ない用量の薬剤(例えば、約100〜500μgより少ない薬剤)が必要なとき、従来の賦形剤を含有させても、細かい薬剤粒子の使用に付随した問題を十分に補い得ないことが確認された。それに加えて、通例使用されるような乾燥賦形剤は、一般に、この薬剤の粒径よりも著しく大きい粒径を有する。残念なことに、このような大きい粒径を使用すると、用量ごとに送達される薬剤の量に対して、重大な影響を与え得る。さらに、このような賦形剤の使用から予想される利点は、その用量が少なくなるにつれて、低下し始める。従って、計量装置または吸入ノズル内での粒子の保持および他の操作上の問題点は、重大な課題になり得る。
【0009】
あるいは、薬剤製品は、一般に、さらに流れるように動いて嵩高い凝塊またはペレットを形成するように、処理できる。薬剤を凝塊にする1方法は、PCT公開WO95/09616で記述されている。本明細書中で記述するように、細かく分割された粉末薬剤の凝塊(例えば、10μmより小さい粒径を有する微粉)は、結合剤を必要とせずに、生成できる。しかしながら、それらは、賦形剤と共に形成できる。これらの凝塊は、次いで、粉末化薬剤用の吸入器を通って、投与できる。
【0010】
結合剤を添加することなく粒子を作る性能は、吸入療法に重要であり、凝塊形成で水または他の伝統的な結合剤を使用する他の方法よりも、非常に有利であり得る。純粋な薬剤の凝塊は、粉末を処方し取り扱うとき、非常に有利であり得る。しかしながら、モメタゾンフロエートのような薬剤の約100〜500μgの用量およびそれ未満では、純粋な薬剤の凝塊は、動きがとれなくなり、服用の変動は、本当に懸念され得ることが分かった。比較的に多い用量の薬理学的に活性な試薬(例えば、500μgよりも多い量)を供給するように設計された服用システムでさえ、純粋な薬剤の得られる凝塊は、依然として、完全性の問題があり得る。これらの凝塊は、依然として、比較的に柔軟であり、また、計量中に粉砕され得、それにより、用量の変動が生じる。この物質はまた、例えば、吸入器を約4フィートの高さから落とすことにより、かなり容易に崩壊し得る。この結果、取り扱いが困難な小さな粒子の形成が早すぎるようになる。事実、最初に凝塊形成が必要となったのは、細かい薬剤粒子の取り扱いが困難であったからである。
【0011】
結合剤を含有する凝塊を使用すべきなら、このような凝塊は、例えば、米国特許第4,161,516号および英国特許第1,520,247号(これらは、経口吸入用の凝塊を生成するために、水を含めたある種の結合材料の使用を開示している)で記述された方法により、製造できる。本明細書中で記述されたプロセスによれば、凝塊形成前に、ある種の「自己凝塊性」または吸湿性の微粉化薬剤の水分含量は、高くなる。この微粉を所望の水分含量レベルまで高めた後、それは、凝塊にされる。非吸湿性物質は、本明細書で記述されるように、さらに伝統的な結合剤で結合されなければならない。同様に、PCT国際公開WO95/05805は、凝塊を形成するプロセスを開示しており、この場合、均一微粉物質の混合物は、後の時点で不安定になり得るいずれかの転換可能非晶質含量をなくすために、水蒸気で処理される。水蒸気での処理の後、現在結晶性の物質は、凝塊にされる。しかしながら、この適用は、凝塊形成後に蒸気暴露が行われるなら、その生成物が「吸入装置では役に立たない」ことを警告している。
【0012】
無水ラクトースの錠剤化特性に対する水分の効果は、Sebhatu, Elamin and Ahlneck、「Effect of Moisture Sorptionon Tableting Characteristics and Spray Dried (15% Amorphous) Lactose」
Pharmaceutics Research, Vol. 11, No. 9, pp. 1233-1238 (1994)で論述されている。しかしながら、この論文は、経口吸入療法の一部として投与するときに、許容できる「微粒子画分」(これはまた、「呼吸用画分」としても知られている)を生じることができる凝塊の形成または生成を論述していない。
【0013】
凝塊形成への1つの特に重要なアプローチは、PCT国際公開WO98/41193で開示された。ここで記述された発明は、凝塊を生成するプロセスを含んでいた。このプロセスは、少なくとも1種の第一物質(一般に、薬理学的に活性な試薬)の粒子を供給する工程、および少なくとも1種の固形結合剤または固形キャリアの粒子を供給する工程を包含していた。これらの2種の粒子の少なくとも1種(この薬剤または固形結合剤)は、転換可能非晶質含量を含有していた。この結合剤および/または薬剤の転換可能非晶質含量は、予め選択された刺激(これには、特に、湿気が挙げられる)に晒すと、結晶形状に転換できるはずである。
【0014】
結合剤またはキャリアおよび薬剤の粒子は、次いで、この転換可能非晶質含量を維持しつつ、凝塊にされる。凝塊形成が完結した後、この凝塊内の転換可能非晶質含量は、予め選択された刺激に晒され、そして結晶質形状に転換される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
驚くほどのことではないが、薬学的に活性な物質の遊離粒子の許容できる細かい粒子画分を凝塊にする性能および送達する能力には、この凝塊キャリアまたは結合剤の特性を厳重に管理することが、非常に重要である。これらの薬剤粒子の特性を制御することもまた、重要である。特定サイズの粒子を供給するだけでなく、非常に密接した粒径分布を提供することができるのが望ましい。理想的には、所望量の転換可能非晶質含量を協調的に提供できる。この非晶質含量は、得られる凝塊の強度、バルク密度および/または硬度に重要であり得る。もし、少なすぎる非晶質含量が存在しているなら、その凝塊は、包装、出荷および使用に耐えるほどに十分に頑丈ではなくなる。非晶質含量が多すぎる場合、その凝塊は、強すぎ、および/または硬すぎるようになり、許容できない程度に細かい粒子画分が粉末吸入器から送達されるという危険性がある。同様に、これらの粒子のサイズおよび粒径分布は、許容できる細かい粒子画分を提供するために、また、得られるバルク密度の一貫性による正確な用量の送達均一性を与えるために、これらの凝塊を正確に処方するのに重要である。残念なことに、正確に制御された粒径分布および非晶質含量を備えた薬剤および/または固形分キャリアの粒子を再現的に生成するプロセスは、知られていない。本発明が目指しているのは、この改良である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によって、以下が提供される:
(1) 微粒子物質を生成する方法であって、該方法は、以下:
第一粒径分布を有する粒子状物質を微粉化して、増大した非晶質含量を有する該中間粒子が生じる様式で、第二粒径分布を有する中間粒子を形成する工程であって、該第二粒径分布は、該第一粒径分布とは異なる、工程;
該中間粒子を硬化して、その非晶質含量を少なくする工程;および
該硬化した中間粒子を再微粉化して、第三粒径分布を有する粒子を形成する工程であって、該再微粉化粒子は、該硬化した中間粒子よりも多い非晶質含量を有する、工程、
を包含する、方法。
(2) 前記再微粉化粒子が、固形キャリアを含み、該固形キャリアが、約5μm以下の粒子が少なくとも約60容量%の粒径分布および約1ジュール/グラムと約20ジュール/グラムとの間の結晶化熱に相当する所定の転換可能非晶質含量を有する、項目1に記載の方法。
(3) 前記再微粉化粒子が、固形キャリアを含み、該固形キャリアが、約5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布および約2ジュール/グラムと約16ジュール/グラムとの間の結晶化熱に相当する所定の転換可能非晶質含量を有する、項目1に記載の方法。
(4) 前記再微粉化粒子が、固形キャリアであり、該固形キャリアが、約5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布および約3.8ジュール/グラムと約7ジュール/グラムとの間の結晶化熱に相当する所定の転換可能非晶質含量を有する、項目1に記載の方法。
(5) 前記粒子状物質が、ラクトースを含有する、項目1に記載の方法。
(6) 前記粒子状物質が、ラクトースを含有する、項目4に記載の方法。
(7) 前記粒子状物質が、薬学的に活性な物質を含有し、そして前記粒子状物質が、約5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布および約1ジュール/グラムと約20ジュール/グラムとの間の所定の非晶質含量を有する、項目1に記載の方法。
(8) 前記薬学的に活性な物質が、モメタゾンフロエートを含有する、項目7に記載の方法。
(9) 前記薬学的に活性な物質が、エホルモテロールの塩を含有する、項目7に記載の方法。
(10) 項目1に記載の方法によって生成された粒子状物質。
(11) 項目2に記載の方法によって生成された粒子状物質。
(12) 項目3に記載の方法によって生成された粒子状物質。
(13) 項目4に記載の方法によって生成された粒子状物質。
(14) 項目7に記載の方法によって生成された粒子状物質。
(15) 粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
モノメタゾンフロエートの粒子であって、該粒子は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約3.2〜約6ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
(16) 前記モノメタゾンフロエート粒子が、5μm以下の粒子が少なくとも約90容量%の粒径分布を有する、項目15に記載の粒子混合物。
(17) 粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
薬学的に活性な物質の粒子であって、該粒子は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約2〜約16ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
(18) 前記モノメタゾンフロエート粒子が、5μm以下の粒子が少なくとも約90容量%の粒径分布を有する、項目17に記載の粒子混合物。
(19) 粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
エホルモテロール塩の粒子であって、該粒子は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該固形粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約2〜約16ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
(20) 前記モノメタゾンフロエート粒子が、5μm以下の粒子が少なくとも約90容量%の粒径分布を有する、項目19に記載の粒子混合物。
(21) 粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
モノメタゾンフロエート、エホルモテロール塩およびそれらの組合せからなる群から選択される薬剤の粒子であって、該粒子は、約5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約2〜約16ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
(発明の要旨)
本発明は、薬学的に活性な物質および好ましくは固形結合剤または固形キャリアを含有する凝塊を生成する際に使用するのに特に適切な粒子状物質を製造する方法に関する。このプロセスにより製造される微粒子もまた、考慮される。この方法は、この微粒子の非晶質含量の増大に影響を与える様式で、初期粒径から中間粒径まで粒子状物質を微粉化する工程を包含する。付与した非晶質含量の一部または全部は、転換可能非晶質含量である。その粒径分布は、この微粉化工程により、低くされる。その後、微粉化された微粒子は、所定の刺激に晒すこと(例えば、特定の温度で、制御した相対湿度に晒すこと)により、「硬化」される。この硬化プロセスは、特定の刺激に晒したときに転換可能な微粒子の非晶質含量の少なくとも一部、多くの場合、好ましくは、全部を少なくするのに十分な時間にわたって、行われる。その後、硬化された微粒子は、再度、微粉化されるが、ここで、この微粒子は、中間粒径から最終粒径まで、さらにサイズが小さくされる。所望レベルの転換可能非晶質含量はまた、引き続いた微粉化工程により、作成される。
【0017】
この微粒子は、薬学的に活性な物質(すなわち、薬剤)または非治療上活性な物質(例えば、固形キャリア、固形結合剤または他の薬学的な賦形剤)を含有する任意の薬学的に受容可能な物質であり得る。実際、微粒子は、同時に、これらの両方から構成できる。
【0018】
別の角度から述べると、本発明に従って微粒子を生成する方法は、第一粒径分布を有する粒子状物質を、その第一粒径分布から、第二粒径分布を有する中間粒子へと微粉化する工程を包含する。第二粒径分布は、その微粒子が平均して小さく製造されるので、第一粒径分布とは異なる。微粉化は、先行する微粉化工程の前の出発微粒子に対して、中間微粒子の非晶質含量の増加に影響を与える様式で、達成される。この中間微粒子は、次いで、その非晶質含量を少なくするために、硬化される。最後に、硬化された中間微粒子は、第三粒径分布に再微粉化されるが、これは、それらの粒子が再度平均して小さくされるので、第一または第二粒径分布とは異なる。再微粉化した微粒子はまた、硬化した中間微粒子よりも多い非晶質含量を有する。それゆえ、第一微粉化工程では、これらの粒子に、一定量の非晶質含量が付与される。硬化により、刺激に晒したときに転換可能非晶質含量の量が低下する。これはまた、全非晶質含量を低下させる。その後、再微粉化すると、これらの粒子は、追加の非晶質含量(好ましくは、転換可能非晶質含量)を含有する。
【0019】
好ましくは、このプロセスに従って生成された微粒子固形キャリアの最終粒径は、5μm以下の粒子が少なくとも約60容量%であり、その所定の転換可能非晶質含量(これは、以下で記述する技術を使用して、特定の結晶化熱により、決定される)は、約1ジュール/グラム(「J/g」または「J/グラム」)と約20ジュール/グラムの間である。さらに好ましくは、これらの微粒子固形キャリアの最終粒径は、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%であり、その所定の転換可能非晶質含量は、約2ジュール/グラムと約16ジュール/グラムとの間である。最も好ましくは、これらの微粒子固形キャリアの最終粒径は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%であり、その所定の転換可能非晶質含量は、約3.8ジュール/グラムと約7ジュール/グラムとの間である。
【0020】
好ましくは、これらの方法に従って生成される微粒子状の薬学的に活性な物質の最終粒径は、5μm以下の粒子が少なくとも約60容量%であり、その所定の転換可能非晶質含量は、約1ジュール/グラムと約20ジュール/グラムとの間である。さらに好ましくは、この微粒子状の薬学的に活性な物質の最終粒径は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%であり、その所定の転換可能非晶質含量は、約2ジュール/グラムと約16ジュール/グラムの間である。最も好ましくは、この微粒子状の薬学的に活性な物質の最終粒径は、5μm以下の粒子が少なくとも約90容量%である。
【0021】
好ましくは、これらのプロセスにより処理される凝塊の形成に有用な薬学的に受容可能な物質が非治療上活性で非薬学的に活性な物質のとき、この薬学的に受容可能な物質は、通例の添加剤または賦形剤(例えば、ラクトース(これには、含水ラクトースおよび無水ラクトースの両方が含まれる)など)であり得る。しかしながら、同じプロセスは、この薬学的に活性な物質などでも実行できるので、この薬学的に活性な物質は、伝統的な固形キャリアか、または本発明に方法に従って製造された固形キャリアのいずれかで凝塊にできる。これらの方法を使用して生成される薬学的に活性な物質は、制御された粒径分布および制御された非晶質含量の両方を有し、また、追加の固形キャリアなしで、および/または他の薬学的に活性な試薬(この方法または別の方法で治療されるもの)で凝塊を形成するのに使用できる。
【0022】
本発明は、薬学的に活性な物質および/または固形キャリア粒子(それらのすくなくとも1つは、本発明に従って生成される)を凝塊にすることにより生成された凝塊に関する。
【0023】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明に従って、「薬学的に受容可能な物質」との用語は、薬学的に活性な物質または非薬学的に活性な物質のいずれかを含有できる。薬学的に活性な物質には、薬剤、ビタミン、ミネラル、ハーブ、栄養補助食品などが挙げられ、これらは、それが必要な患者に投与するとき、治療上の利点を生じる。非薬学的に活性な物質には、特に、固形キャリア、固形結合剤および他の伝統的な薬学的に受容可能な賦形剤(これらは、一般に、投薬形状の一部として投与するとき、患者に対して治療上の利益を示さない)を挙げることができる。本発明に従った「凝塊」とは、一般に、さらに大きい粒子を形成する小さい粒子の凝塊を意味する。これらの小さい粒子は、伝統的な結合剤により、または本発明のプロセスによって粒子に付与される転換可能非晶質含量を結晶化することにより、共に保持できる。
【0024】
本明細書中で使用する「非晶質含量」とは、結晶質でない薬学的に受容可能な物質の粒子の少なくとも表面の一部を意味する。「転換可能非晶質含量」とは、薬学的に受容可能な物質の非晶質含量のうち、所定の刺激に晒すと非晶質形状から結晶質形状に転換できる部分を意味する。所望の転換可能非晶質含量の量は、意図した凝塊の特徴ならびに処理する程度および様式に関係している多数の要因に依存し得る。転換可能非晶質含量の量はまた、使用する刺激に関係している。本発明に従って生成される微粒子は、1つの刺激に対して、他の刺激に対するよりも多くの量の転換可能非晶質含量を有し得る。従って、所望の転換可能非晶質含量は、処理の程度および/または使用する刺激を支配できる。ある薬剤は、第一の刺激を使用するなら、あまりに多くの転換可能非晶質含量を有し得ないが、他のいくらかの刺激を使用するなら、所望レベルの転換可能非晶質含量を有し得る。
【0025】
転換可能非晶質含量は、公知方法(例えば、X線粉末回折、示差走査熱量測定、溶液熱量測定など)により、測定できる。これらは、さらに好ましくは、例えば、Thermometrics2277 Thermal Activity Monitor (Thermometrics AB, Sweden)を使用することによる、等温マイクロ熱量測定を挙げることができ、この場合、転換可能非晶質含量は、その微粒子の特定の結晶化熱を測定することにより、ジュール/グラムによって定量できる。製造業者により提供された方法を使用して、非晶質含量を有する既知量の物質は、約38%の相対湿度(「RH」)の環境(これは、25℃で、ヨウ化ナトリウムの飽和溶液により発生する)に晒され、発生する熱は、時間に対してプロットされる。
【0026】
そのように測定した結晶化熱は、全結晶化プロセス中に一定量の微粒子(これは、転換可能非晶質含量を有する)により発生する全ての熱である。発生する全熱は、非晶質形態から結晶形態への移行中に発生する熱だけでなく、適用する場合、この移行前の水分吸収中に発生する熱を挙げることができる。
【0027】
それゆえ、微粒子の転換可能非晶質含量は、特定の刺激に晒したときのその微粒子の結晶化熱に相当しており、これは、ジュール/グラムで測定される。結晶の相対熱が高い程、転換可能非晶質含量の程度が高くなる。無水ラクトースについては、約45ジュール/グラムが、おおよそ、100%の非晶質含量に等しい。3.2〜6ジュール/グラムの測定した熱は、おおよそ、約7%と約13%との間の非晶質含量に等しい。
【0028】
本明細書中で使用する「刺激」とは、好ましくは、湿気である。しかしながら、他の刺激には、温度、溶媒蒸気などを挙げることができるが、これらに限定されない。湿気を使用するとき、その相対湿度および暴露時間は、この転換可能非晶質含量の所望の転換度を与えるように、調整すべきである。
【0029】
本発明に従って生成される凝塊は、他の微粒子または賦形剤と共にまたはそれらなしで、本発明に従って調製される少なくとも1種の薬学的に受容可能な物質の複数の粒子から製造できる。例えば、本発明に従って処理した薬学的に受容可能な物質が、薬学的に活性な物質または薬剤である場合、凝塊形成で使用される他の物質のいずれかが転換可能非晶質含量を含有している必要はない。しかしながら、1種またはそれ以上の異なる種類の粒子を使用することが有利であり得、それらの全ては、本発明に従って生成され、従って、全ては、制御された粒径分布および転換可能非晶質含量を有する。
【0030】
本発明に従って生成された薬学的に活性な物質の凝塊を、他の結合剤または賦形剤なしで、本発明に従って生成することもまた、可能である。それに加えて、本発明に従って、第一の薬学的に活性な物質を処理して、特定の粒径分布および転換可能非晶質含量を得る場合、それは、第二の薬剤(本発明に従って処理されていないもの)で凝塊できる。第一の薬剤は、本質的に、固形結合剤/キャリアとして機能できる。
【0031】
凝塊は、錠剤、カプセルまたは他の伝統的な投薬形態の形状で使用できるか、または、例えば、経口吸入療法で、直接投与できる。凝塊は、いずれかの既知の様式で生成できるが、好ましくは、PCT国際公開WO98/41193で記述された技術で生成され、この教本の内容は、本明細書中で参考として援用されている。このプロセスは、一般に、前述の発明の序説の項で、記述されている。
【0032】
本発明に従った「固形キャリア」とは、それと共に薬剤または薬学的に活性な物質が凝塊できる賦形剤である。この固形キャリアは、例えば、固形キャリアに与えられた転換可能非晶質含量およびその結晶形状への引き続いた転換の際に凝塊粒子を結合する手段として十分に利用する場合、固形結合剤として作用し得る。もし、伝統的な結合システムを使用するなら、またはこの薬剤が全転換可能非晶質含量を与えるなら、さらに一般的な用語「固形キャリア」がずっと適切である。
【0033】
本発明に従った固形キャリアの粒子は、好ましくは、約1〜約20ジュール/グラムの間の範囲の所定の転換可能非晶質含量および5μm以下の粒子が少なくとも60容量%の粒径分布を有するように、生成される。さらに好ましくは、この固形キャリアの粒子は、約2〜約16ジュール/グラムの間の範囲の所定の転換可能非晶質含量および5μm以下の粒子が少なくとも70容量%の粒径分布を有する。最も好ましくは、この固形キャリアの粒子は、約3.8〜約7ジュール/グラムの間の範囲の所定の転換可能非晶質含量および5μm以下の粒子が少なくとも80容量%の粒径分布を有する。
【0034】
これらの同じ範囲の転換可能非晶質含量および粒径分布はまた、薬学的に活性な物質の粒子に適用できる。しかしながら、好ましくは、薬学的に活性な物質の粒径分布は、固形キャリアの粒径分布よりも微細である。好ましくは、本発明に従って生成された薬学的に活性な物質の粒子は、5μm以下の粒子が約80容量%の粒径分布を有する。さらに好ましくは、その薬剤成分は、5μm以下の粒子が少なくとも90容量%の粒径分布を有する。
【0035】
特定の転換可能非晶質含量および粒径分布を有する粒子を、異なる転換可能非晶質含量および粒径分布を有する他の粒子と混合するとき、このシステムの転換可能非晶質含量および粒径分布は、比例的に変わることに注目せよ。粒径および粒径分布は、業界で既知でかつ使用されている多くの技術のいずれかにより、決定できる。これらには、製造業者が提示した標準的な技術を使用して、RODOSDry Powder Disperser付きのSympatec HELOS Laser Diffraction Particle Size Analyzerを使用することを挙げることができる。この装置は、Sympatec,Inc. of Princeton, New Jersey USA.から入手できる。
【0036】
本発明に従って処理した薬剤および固形キャリアの両方を含有する薬学的に受容可能な微粒子物質から凝塊を形成するとき、微粒子の両方が上述の粒径分布および転換可能非晶質含量の範囲内に入る必要はない。しかしながら、両方共、記述した基準に合うのが望まれ得る。
【0037】
本発明に従った薬学的に受容可能な物質には、固形キャリア/固形結合剤(例えば、限定されないが、非治療上活性な物質(ポリヒドロキシアルデヒド、ポリヒドロキシケトンおよびアミノ酸を含めて))を挙げることができる。好ましいポリヒドロキシアルデヒドおよびポリヒドロキシケトンには、水和した多糖類および無水の多糖類があり、これには、ラクトース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、ラフィノース、マンニトール、メレチトース(melezitose)、デンプン、キシリトール、マンニトール、ミオイノシトール、それらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。ラクトースは、好ましい。
【0038】
本発明に従って使用が考慮される薬学的に活性な物質には、例えば、薬剤、ビタミン、ミネラル、ハーブ、天然産物、栄養補助食品などが挙げられる。本発明に従って特に好ましい薬学的に活性な物質には、コルチコステロイド(例えば、モメタゾンフロエート、ベクロメタゾンジプロピオネート、ブデソニド、フルチカゾン(fluticasone)、デキサメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、(22R)−6α,9α−ジフルオロ−11β,21−ジヒドロキシ−16α,17α−プロピルメチレンジオキシ−4−プレグネン−3,20−ジオン、チプレダン(tipredane)など)が挙げられるが、これらに限定されない。β−アゴニスト(β1およびβ2−アゴニストを含めて)(これには、サルブタモール(アルブテロール)、テルブタリン、サルメテロール(salmeterol)およびビトルテロールが挙げられるが、これに限定されない)もまた、使用され得る。ホルモテロール(これはまた、「エホルモテロール(eformoterol)」とも呼ばれる)(例えば、フマル酸塩または酒石酸塩として、非常に選択的で長時間効果があり気管支拡張効果のあるβ2−アドレナリン作用性のアゴニストである)は、有用である。本発明に従って使用できる他のβ−アゴニストには、(2(1H)−キノリノン,8−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[[2−(4−(メトキシフェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]一塩酸塩があり、これはまた、Chemical Abstract Number CAS−137888−11−0により同定されており、米国特許第4,579,854号(この教本の内容は、本明細書中で参考として援用されている)で開示されている。抗コリン作用薬(例えば、チオトロピウム(tiotropium)ブロマイド、イプラトロピウムブロマイドおよびオキシトロピウムブロマイド)は、使用され得る。また、クロモグリケート、ネドクロミル(nedocromil)ナトリウムおよびロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテルーカスト(montelukast)、ザフィルーカスト(zafirlukast)およびプラニウカスト(pranlukast))もまた、使用できる。バンブテロール(bambuterol)(例えば、その塩酸塩として)、フェノテロール(例えば、その臭化水素塩として)、クレンブテロール(例えば、その塩酸塩として)、プロカエロール(例えば、塩酸塩として)、およびブロキサテロール(broxaterol)は、非常に選択的なβ2−アドレナリン作用性のアゴニストであり、本発明で使用できる。これらの化合物のいくつかは、薬学的に受容可能なエステル、塩、溶媒和物(例えば、水和物)、またはこのようなエステルまたは塩の溶媒和物(もしあれば)の形状で、投与できる。ラセミ混合物の両方だけでなく、1種またはそれ以上の光学異性体もまた、考慮される。本発明による薬剤はまた、吸入可能タンパク質またはペプチド(例えば、インシュリン、インターフェロン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子など)であり得る。これらの組合せ(例えば、コルチコステロイドおよびβ−アゴニストの組合せ)もまた、考慮される。本発明に従った特に好ましい薬学的に活性な試薬には、モメタゾンフロエートがある。
【0039】
薬剤または固形キャリアのいずれか(または両方)に対して1段階の微粉化プロセスを使用するとするなら、所望レベルの転換可能非晶質含量および所望の粒径分布の両方を再現的に達成することは困難である。これは、複数のバッチの処理物質が必要な場合の製造設定において、特に当てはまる。微粉化機での暴露時間が長くなるほど、細かい粒子が得られるが、非晶質含量が高くなる。暴露時間が短くなると、正しい非晶質含量が得られる場合もあるが、必ずしも、所望の粒径分布にはなり得ない。
【0040】
例えば、表1は、1段階微粉化プロセスおよびMICRON−MASTER(登録商標)4インチ(100cm)直径Jet Pulverizer(これは、Jet Pulverizer Co. of Palmyra,New Jersey USAから入手できる)を使用して無水ラクトースを微粉化することから得られるデータを提示する。この装置では、粉末化した給送材料の蒸気は、丸い壁を有するチャンバに入るにつれて、高圧気体流れに衝突する;粒子は、互いにおよび壁と幾多の衝突を受けて、これらの粒子がチャンバの出口に到達する前に、粒径が低下する。気体圧力[これは、本明細書中では、1平方インチゲージ(psig)あたりのポンドおよび1平方メートルあたりのニュートン(N/m2)の両方の単位で表わされる]および粉体給送速度は、最終粒径に影響を与える重要なパラメータである。
(表1)
【0041】
【表1】

「E」は、10の指数部を示し、例えば、6.9E5=6.9・105である。この命名法は、本明細書全体にわたって、データ提示で使用される。
【0042】
表1で示した13個のバッチのうち、バッチ10、11および12だけが、標的粒径の範囲外であった。しかしながら、バッチ10、11および12だけが、許容できるレベルの特定の結晶化熱(転換可能非晶質含量の尺度)を有していた。従って、特に、バッチからバッチへと1段階の微粉化プロセスを使用することにより、所望範囲の非晶質含量および所望の粒径分布の両方を確実に達成することは困難である。本発明は、この微粉化プロセスを少なくとも2つの独立した工程に分けることにより、この問題を解決する。第一工程では、微粒子物質は、所定の中間粒径分布に微粉化される。この微粉化プロセスでは、一定レベルの非晶質含量が得られる。
【0043】
もし、これらの中間粒子が、次いで、直ちに、微粉化機に再導入されるなら、それらの粒径は、許容できるレベルまで小さくされ得る。しかしながら、得られる非晶質含量の程度は、許容できない程に高くなる。表1では、許容できる粒径分布を有するバッチの全ては、望ましいよりも高い程度の特定の結晶化熱(すなわち、非晶質含量)を有していたことに注目せよ。
【0044】
「粒径分布」または所望粒径分布は、その粒径が一定範囲に入るという意味であると解釈すべきであり、ここで、1バッチの粒子の少なくとも特定割合は、容量で測定するとき、最大特定サイズを有する。「微粉化する」、「微粉化」および「微粉化すること」との用語は、所望レベルの粒径低下を生じる任意のプロセスを包含すると解釈すべきである。微粉化は、本明細書中では、ジェット粉砕機を使用して達成できたものの、所望の粒径分布を生じかつ一定量の非晶質含量を与えることができる任意の他の装置もまた、使用できる。事実、これは、他の伝統的な微粉発生装置(例えば、ミリング、噴霧乾燥またはボールミリング)を使用して、達成できる。Briggner,Buckton, Bystrom and Darcy、「The Use of Isothermal Microcalorimetry in the Studyof Changes in Crystallinity Induced During the Processing of Powders」、InternationalJournal of Pharmaceutics, Vol. 105, pp. 125-135 (1994)を参照せよ。
【0045】
本発明の方法は、少なくとも2つの微粉化工程の間に、「硬化」工程を差し挟む。この中間微粒子を刺激にかけること、本明細書中で記述した例では、無水ラクトースを、少なくとも約4時間(この間、この微粒子は、およそ5cm厚の物質の層またはケーク中にある)の適切な時間にわたって、20〜25℃で、35%と45%の間の相対湿度にかけることにより、なくすことができないとしても第一微粉化工程で得られた転換可能非晶質含量を低下できる。次いで、この中間微粒子を再微粉化することにより、一旦、この非晶質含量が、全部または一部、再結晶されたなら、引き続く微粉化工程で得られた追加非晶質含量の程度は、この粒径および粒径分布が許容できるレベルに調節されている間、所望のパラメータ内に入るように制御できる。
【0046】
このプロセスの詳細は、大きく変えることができる。例えば、この微粉化は、一般に、各微粉化工程間に単一の硬化工程を有する、2つの工程で起こる。しかしながら、微粉化は、3つまたはそれ以上の工程で起こることができ、各連続した微紛化間では、硬化工程があり得るかまたはあり得ない。同様に、これらの硬化工程は、多くの変数に依存して広く変化し得、その一部は、工程ごとに変わり得る。これらの硬化工程の詳細は、暴露の持続時間、刺激の種類、温度、この暴露を中断したときに残るケークの厚さおよび非晶質含量の程度などに関して、変化し得る。処理する物質の素性を変えることでも、特定のプロセス条件を変え得る;例えば、ラクトース一水和物粒子を硬化するには、無水ラクトースを硬化するのに使用するよりも高い湿度条件の使用が必要であり得る。
【0047】
表2で示すように、本発明を使用して、9回の無水ラクトース微粉化実験をセットで実行した。この微粉化気体圧力を、80psig(5.5・105N/m2)で固定した。
(表2)
【0048】
【表2】

第一微粉化段階では、粒子は、5μm以下の粒子が約47容量%と約67容量%との間の粒径分布に到達した。その後、これらの粒子を、約5cm厚の層でトレイに配置し、そして特定の結晶化熱が約0になるまで、約20℃と25℃との間の温度で、少なくとも約4時間、35〜45%の相対湿度に晒した。このことにより、それ以上の転換可能非晶質含量が存在していないこと、および転換不可能非晶質含量を除いて、全微粒子が事実上完全に結晶化したことが明らかとなった。その後、これらのバッチの各々は、指定したように、種々の給送速度を使用して、第二段階で微粉化された。微粉化の第二段階で処理された固形キャリアのバッチの全ては、5μm以下の粒子が80容量%以上の粒径分布を有していた。それゆえ、本発明の特に好ましい局面に従って、全て許容できた。これらのバッチの殆どはまた、約3.8〜約7ジュール/グラムに入る特定の結晶化熱を有していた。
【0049】
これらの結果を検証するために、本明細書中で記述した方法により、3.8J/gと7J/gとの間の結晶化熱を有する粒子を調製する目的で、23バッチの追加微粉化無水ラクトースを調製した(表2、バッチ番号19Cを参照)。これらの結果は、表3および4で示す。
(表3)
【0050】
【表3】

(表4)
【0051】
【表4】

表3で示すように、これらのバッチの各々の特定の結晶化熱は、3.9ジュール/グラムと6.6ジュール/グラムとの間に入り、すなわち、本発明に従って最も好ましい範囲内に入った。表4で示すように、これらのバッチの各々は、粒径分布を含んでおり、ここで、これらの粒子の80容量%より多くは、5μm未満のサイズであった。実際、全23バッチにわたって、これらの粒径分布は、5μm未満の粒子が84.8〜93.8容量%の範囲であった。この微粒子の実質的に全ては、10μm未満のサイズであった。
【0052】
先に述べたように、ある状況では、この薬剤およびキャリアの両方を共に処理することが望まれ得る。例えば、無水ラクトースのキャリアのみを用いて、第一微紛化工程を行うことが、所望され得る。硬化後、この薬剤および中間微粒子の両方を使って、所望される相対粒径に依存して、最終的な微粉化を行うことができる。薬剤およびキャリアの両方を、同じ微粉化工程で、同時に処理することが可能である。
【0053】
この理由のために、本発明に従って凝塊を生成することが望まれ得、ここで、単に、この薬剤は、本発明に従って処理される。凝塊は、次いで、この薬剤それ自体から単独で、または薬剤と固形キャリアで、形成できる。この固形キャリアは、転換可能非晶質含量を有し得るかまたは有し得ず、また、本発明に従って処理し得るかまたは処理し得ない。あるいは、この薬剤に特定の粒径分布および転換可能非晶質含量を与えることにより、他の薬剤(転換可能非晶質含量を含有しないもの)は、固形キャリアに代えて使用し得る。
【0054】
客観的には、一定粒子に対する非晶質含量の絶対レベルが存在し得るのに対して、転換可能非晶質含量の量は、同一または異なり得、加える転換刺激の関数であり得ることを理解すべきである。湿気に関連して、薬剤は、転換可能非晶質含量を有し得ない。しかしながら、他の一部の刺激(例えば、アルコール)に関して、それは、相当量の転換可能非晶質含量を含有し得る。好ましい実施形態では、この転換可能非晶質含量の量は、刺激として湿気に関連している。
【0055】
本発明に従って一般に好ましい刺激は、湿気である。湿気を使用すると、一定温度で湿気のレベルが高くなるほど、暴露に必要な時間は短くなる。しかしながら、ある程度徐々にかつ制御された転化が好ましい。転換可能非晶質含量を含有する粒子は、全非晶質含量を転化するのに十分な時間にわたって、約30%と約80%との間の相対湿度(25℃)に晒すことができる。さらに好ましくは、この転換可能非晶質含量は、約35%と約60%との間の相対湿度(この相対湿度は、約25℃で測定した)に等しい水分含量を有する大気に晒すことにより、転化される。これは、この固形キャリアが無水ラクトースのような無水物のとき、特に有用である。その時間量は、これらの粒子のサイズおよび密度ならびに暴露表面積と共に、劇的に変えることができる。例えば、平坦な開放トレイ上に粒子の薄層を配置すると、狭い容器中に同量の粒子を置くよりも、全体的に、ずっと速い転換が生じる。ある場合には、その暴露時間は、数10分程度必要である。他の場合には、1日または2日必要であり得る。
【0056】
好ましくは、無水ラクトースについては、その暴露は、65%以下(25℃)の相対湿度に制御されるので、暴露しすぎについては、相対的に殆ど懸念はない。これらの粒子の転換可能非晶質含量の全てを結晶形状に転化できるのに十分な時間がある限り、さらに暴露を行っても、一般に、何ら問題ではない。約65%を超える湿気のレベルを使用する場合、しかしながら、その水蒸気は、実際には、結合剤として作用できる。
【0057】
本発明に従った現在好ましい処方は、本発明に従って処理されたモメタゾンフロエートと無水ラクトースとの混合物である。このモメタゾンフロエートは、好ましくは、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布、さらに好ましくは、5μm以下の粒子が少なくとも約90容量%の粒径分布を有する。この無水ラクトースは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布および約3.8ジュール/グラムと約7ジュール/グラムとの間の転換可能非晶質含量(刺激としての湿気に基づいて)を有する。さらに好ましくは、これらの2つの成分は、10:1〜1:100部のモメタゾンフロエート:無水ラクトースの比で、混合される。最も好ましくは、これらの粒子は、1部のモメタゾンフロエート:約5.8部の無水ラクトースの量で、供給される。そのように混合したとき、このシステムに対する転換可能非晶質含量の量は、3.2〜6ジュール/グラムである。それゆえ、特定の微粒子に対して報告された転換可能非晶質含量の範囲は、正確であるものの、関連した比に依存して、他の物質と混合するとき、変わる。
【0058】
もちろん、本発明に従って生成された5μm以下の粒子が少なくとも80容量%の粒径分布、さらに好ましくは、5μm以下の粒子が少なくとも90容量%を有する薬学的に活性な物質もまた、さらに一般的に、考慮される。固形キャリアとして有用な薬学的に非活性物質が考慮され、これらは好ましくは、5μm以下の粒子を少なくとも約70容量%の粒径分布および約1ジュール/グラムと約20ジュール/グラムとの間の転換可能非晶質含量を有する。さらに好ましくは、本発明の方法により生成される固形キャリアの粒子は、約2ジュール/グラムと約16ジュール/グラムとの間の範囲の転換可能非晶質含量の量、最も好ましくは、約3.8ジュール/グラムと約7ジュール/グラムとの間の範囲の転換可能非晶質含量の量を有する。その薬学的に活性な物質の微粒子が、5μm以下の粒子が少なくとも80容量%、さらに好ましくは、5μm以下の粒子が少なくとも90容量%の粒径分布を有する混合物、および5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する固形キャリアは、特に考慮される。混合した微粒子に対する転換可能非晶質含量の量は、約2〜約16ジュール/グラムとの間、さらに好ましくは、3.2〜6ジュール/グラムの範囲であるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子物質を生成する方法であって、該方法は、以下:
第一粒径分布を有する粒子状物質を微粉化して、増大した非晶質含量を有する該中間粒子が生じる様式で、第二粒径分布を有する中間粒子を形成する工程であって、該第二粒径分布は、該第一粒径分布とは異なる、工程;
該中間粒子を硬化して、その非晶質含量を少なくする工程;および
該硬化した中間粒子を再微粉化して、第三粒径分布を有する粒子を形成する工程であって、該再微粉化粒子は、該硬化した中間粒子よりも多い非晶質含量を有する、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
モノメタゾンフロエートの粒子であって、該粒子は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約3.2〜約6ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
【請求項3】
粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
薬学的に活性な物質の粒子であって、該粒子は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約2〜約16ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
【請求項4】
粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
エホルモテロール塩の粒子であって、該粒子は、5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該固形粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約2〜約16ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。
【請求項5】
粒子混合物であって、該粒子混合物は、以下:
粒子状固形キャリアであって、該固形キャリアは、5μm以下の粒子が少なくとも約70容量%の粒径分布を有する、固形キャリア;および
モノメタゾンフロエート、エホルモテロール塩およびそれらの組合せからなる群から選択される薬剤の粒子であって、該粒子は、約5μm以下の粒子が少なくとも約80容量%の粒径分布を有する、粒子、を含有し;
ここで、該粒子混合物に対する転換可能非晶質含量の全量は、約2〜約16ジュール/グラムの範囲の結晶化熱に相当している、
粒子混合物。

【公開番号】特開2006−257103(P2006−257103A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164094(P2006−164094)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【分割の表示】特願2000−595656(P2000−595656)の分割
【原出願日】平成12年1月27日(2000.1.27)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】