説明

凝縮系物質を拡散処理する方法及びその方法で得られた物質

【課題】二元素以上からなる凝縮系物質を超高速回転による遠心力場を利用して拡散処理する方法及びその方法で得られた物質を提供すること。
【解決手段】二元素以上からなる加速度場下で液体、固体又はそれらの混合状態の凝縮系物質を収容する回転容器(8)と、前記回転容器に対して高温で最大81万g以上の遠心力場を与えるための高速回転駆動手段(5)と、前記高速回転駆動手段に圧縮空気を供給する圧縮空気源(3)と、前記高速回転駆動手段に供給される圧縮空気の圧力及び温度を調節して所望の回転数をうるように制御する回転制御部(10a)とを含む装置を用意し、60〜1,000℃の温度の高温、及び20万g以上の遠心力場のもとで高速回転させ、二元素以上からなる凝縮系物質の各原子及び/又は各分子に作用する遠心力の差を利用して凝縮系物質を原子・分子レベルで遠心力拡散処理するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二元素以上からなる凝縮系物質(気体以外の液体状物質、固体状物質、それらが混合した状態の物質またはそれらの中間的な状態の物質)を超高速回転による加速度場を利用して拡散処理する方法及びその方法で得られた物質に関する。
【背景技術】
【0002】
凝縮系物質の外力による原子や分子の拡散には、電磁力によるものと、遠心力(重力)によるものがあり、電磁力によるものは工業的にもすでに利用されている。しかし、遠心力によるものは、液体中のマクロ粒子で低い加速度場のものを除いて、固体中で原子や分子の高い加速度場のものでは基礎研究もほとんど行われていないのが現状である。
【0003】
濃度差以外の原動力による凝縮系物質中での原子や分子の拡散現象として、温度勾配によるもの(サーモマイグレーション)や電位勾配によるもの(エレクトロマイグレーション)などが知られており、後者は特殊な金属の高純度精製法などで工業的にも利用されている。一方、溶媒に気体や液体を用い、加速度場は小さいが、密度差による遠心力の差を利用してマクロ的混合物質の分離や濃縮をする方法は従来より行われている。また、同じく遠心力を利用して原子レベルの拡散処理する方法としては、溶媒に気体を用いた方法が気体分子や同位体元素の分離・濃縮法として一部利用されている。しかし、溶媒が凝縮系物質(液体や固体)で加速度場による原子や分子の拡散現象はまだ利用されていない。
【0004】
さらに、拡散する原子や分子の濃度がモル分率で10-3程度以上まで高くなると、原子や分子の濃度を制御する効果だけでなく、相変化や化学反応などを起こす効果もある。従来、沈降現象の解析は無限小濃度でしかも厳密にはマクロ粒子にしか適用できないLammの線形理論が提案されているが、上記のような強い加速度場による高い濃度の原子や分子の拡散に適用できる沈降理論はなく、実施例もなかった。
本明細書ではこのような凝縮系物質中での加速度場による拡散を遠心力拡散と呼ぶ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、凝縮媒体中で原子や分子の沈降拡散を高濃度で実現するために、20万g以上、望ましくは81万g以上の超高加速度場を、60℃を超える高温下で発生できる、これまでに類のない超遠心機(超高加速度場発生装置)を提供して、新しい物質プロセス方法を提供しようとするものである。
一般的に、回転軸のまわりの角速度をω、物体から回転軸に下ろした垂線の長さをrとすると、加速度場gは、α=rω2で表される。試料容器内径半径rの大小によつて必要な回転速度が相違するが、例えば試料容器内径半径rが20mmの場合には、81万gの発生には最高回転速度20万rpm以上の超高速回転を実現することが必要となる。
【0006】
そこで本発明は、試料温度60℃以上の条件下で、上記の超高速回転を実現しうる超高速回転装置を提供することを課題とする。
ちなみに、現在市販されている超遠心機では、試料が低密度液体試料の場合には、加速度場を高めることは困難であり、常温においてすら、発生できる加速度場が81万g以上のものは存在せず、特に60℃以上の雰囲気温度で動作しうる20万g以上の超遠心機は存在しない。
【0007】
もしも、任意の凝縮媒体中に上記のような超高加速度場が、60℃以上の高温下で実現するならば、外力による拡散の基礎技術が飛躍的に進歩するばかりでなく、元素、同位体の濃縮・精製、傾斜物質の作製の他、非平衡物質の合成など、これまでにない新しい物質プロセス法が生まれる可能性がある。かくて、本発明はこれを現実のものにしうる拡散処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような凝縮系物質の遠心力拡散処理方法を工業的に実施する場合には、目的とする拡散に必要な回転条件、高速回転によって物質及び容器に発生する応力、実用レベルの拡散原子の移動速度を実現できる条件(特に温度)、及び超高速回転と内部が加熱可能な装置の物質、構造、性能などの関係を相互に検討して遠心力拡散処理を実現する装置の設計・運転を行わなければならない。このような装置では、大抵の場合、1万rpm以上の高速回転と物質によっては加熱が必要になるので、回転動力にはタービンモータ、高周波モータなどが、加熱方法には熱風加熱、ジュール加熱、高周波加熱、レーザ加熱、反応加熱などが候補に上げられる。
【0009】
本発明では固体や液体中で外力による原子や分子の拡散を高濃度で実現するために、60〜2,000℃の温度で20万g以上、好ましくは100〜2,000℃の温度で30万g、より好ましくは100〜2,000℃の温度で81万g以上(差し当っての目標としては30万g以上)の加速度場を発生できる超遠心機(超高加速度場発生装置)を開発した。
従来は、60℃以上の高温下でそのような超加速度場を適用しようとする発想、つまり技術的思想そのものが全く存在しなかった。本発明は、そのような新規な発想に基づいて、問題の超加速度場を実現するために、試料内径40mmの実施例において、最高約22万rpm程度の超高速回転を達成した。このような超遠心機は世界でも類のないものである。
【0010】
現在、10万rpm以上の超高速回転は、ギアで回転数を上げるギアモータ、高周波モータ、オイルタービンモータ、エアタービンモータなどで実現されている。本発明では動力にエアタービン型モータを採用し、軸受には高トルクの超高速回転にも耐えられるオイルフロート軸受を用いている。
【実施例】
【0011】
A.装置の参考例
図1に本発明で使用する装置の全体を概略的に示す。図1(a)は本装置の概略平面図、図1(b)は概略正面図である。本装置を大別すると、コンプレッサ1及びリザーブタンク2を含み動力部を構成する圧縮空気源3、燃焼器4、エアタービンモータ5、試料容器(カプセル)8bを収容する回転容器8、加熱用の熱風器9、回転計測部10及び回転容器8の回転中の微小な変位を検出するためのギャップセンサ11からなる。
タービンモータ5及び回転容器8は、図2に示すように一体的に連結されていて、タービンモータ5としては基本的にターボチャージャを流用し、それにバランスを精密に取った回転容器(カプセル8bのホルダ)8を組み合わせて構成した。
【0012】
(動力部)
エアタービンモータ5の動力には、200℃以上、1.5気圧以上の高温圧縮空気が必要であり、このために、コンプレッサ1とジェットエンジン型燃焼器4を採用した。
【0013】
#1)圧縮空気源(図1)
エアタービンモータ5に供給しなければならない空気量(>5m3/min)、空気圧(最高3kg/cm2)に基づいてコンプレッサの仕様を決定し、スクリュー型コンプレッサ1を採用した。スクリュー型コンプレッサを選んだ理由は、高圧で吐出量が大きく、ピストン式よりも静かなためである。そのコンプレッサの最大吐出量は6.1m3/minで、吐出圧は、7.0kg/cm2であって、圧縮機と脱湿脱油装置の二つのユニットからなり、圧縮機で圧縮された空気は、脱湿脱油装置で乾燥脱油されるわけであるが、この脱湿脱油装置で、ほぼ完全に乾燥されるので、空気中の水分による回転装置の配管、及びタービンの損傷の心配がほとんどない。また、取扱いとメンテナンスが簡単で、信頼性も高い。
コンプレッサ1だけでは、コントロールバルブ12に供給する空気の圧力が変動しやすいので、間にリザーブタンク2を入れ供給圧力の安定化をはかった。タンクの容量は0.6m3、耐圧9.9kg/cm2で、9.5kg/cm2になると付属の安全弁が作動する。
【0014】
#2)ジェットエンジン型燃焼器(図1)
本器はコンプレッサと並んで動力部の根幹をなす部分で、エアタービンモータ(実体は、例えばターボチャージャ)を20万rpm回転させるために灯油の燃焼により、圧縮空気を最高800℃程度まで加熱する役目を持つ。この燃焼器4は丸和電機(株)製のジェットエンジン型のもので灯油を1〜15気圧で噴射してこの中で圧縮空気と混合して効率よく燃焼させうるものである。出口温度は400〜800℃まで可変である。ノズルを交換することによってあらゆる大きさのエアタービンモータに対応することができる。
【0015】
#3)エアタービンモータ(図2)
エアタービンモータ5としては、例えばエンジン用のターボチャージャを改造して用いる。使用したターボチャージャは三菱重工製のTD−04又はTD−07で、前者が高回転型で後者は大容量型である。公称最高回転数はTD−04型で20万rpmに達する(テストでは30万rpm近くまで回転できた)。このターボチャージャのタービンホイール13の軸受けとしては、オイルフロート軸受14を採用してそのような高速回転に耐えるようにし、循環する60〜80℃のオイルの傍に更に水を循環させ、オイルと水を併用して軸受やセンサ部を冷却するようにした。ターボチャージャに供給する圧縮空気は最大風量5m3/min、最大圧力3kg/cm2が必要である。
本発明ではこのターボチャージャに対して冷却用のカバー20を取り付け、その中に熱風を導入し、速度測定器、温度計、圧力計等を取り付けるなどの改造を施した上で、回転容器8を取り付けるようにした(図6も参照のこと)。改造後のエアタービンモータ5の断面模式図を図2に示す。
【0016】
#4)回転制御装置(図3)
回転制御装置全体のブロック図を図3に示す。大まかに説明すると、コンプレッサで圧縮された空気をタービン5に送り込む際に、空気のタービン入口での圧力及び温度(燃焼器を装着した場合のみ)を調節することにより所望のタービン回転数を得る装置である。これに付随して、オイル軸受への潤滑油の供給、潤滑油の温度保持、タービン入口に於ける空気の温度、圧力の計測、燃料供給装置、燃焼装置、及び、これらの管理制御が必要不可欠となる。
以下に、回転制御装置の主要な部分について簡単に解説する。
【0017】
ターボチャージャのオイル軸受14に於いてはオイルの温度が重要であり、高回転で焼き付かず、オイルの粘度が最適になる温度(60〜100℃)に保たねばならない。そこで、電子温度調節器10cによりオイルクーラを制御して潤滑油の温度調節を行う。オイル軸受では、潤滑油の温度と同様に供給圧力が重要であるが、ポンプでは圧力の制御ができないので、圧力スイッチを別に取り付けて圧力を一定(約2kg/m2)に保たねばならない。
【0018】
#5)回転診断装置(図3)
回転診断装置は回転制御装置各部をコントロールし、タービンの高速回転に必要な条件を制御する装置である。回転診断装置でコントロールできるのは、コントロールバルブ10dの操作によるタービン入口のエアの圧力調節、軸受の潤滑油温度の調節、燃焼器の制御によるタービン入口のエアの温度調節、である。圧力スイッチによる潤滑油供給圧力のコントロールは、診断装置を介さずに、圧力スイッチの部分だけで行い、圧力値の設定も、直接圧力スイッチのダイヤルにて行う。
【0019】
また、回転診断装置では各所の測定値を表示し、異常発生時の警告を警報表示灯10eにて行う。
測定表示する値は、潤滑油圧力、潤滑油温度、タービン入口圧力、タービン入口温度、燃料圧力、コントロールバルブ開度で、警告の項目は、潤滑油温度、潤滑油量、潤滑油圧力、タービン入口温度、点火不良、タービン回転数、潤滑油用冷却水の不足であるが、燃料圧力及び点火不良の表示は燃焼運転時のみで、空気運転時は表示しない。異常が発生した場合には燃料供給が停止するようになっているが、運転の停止は非常停止ボタンによる。
【0020】
(試料部)
本装置では、ただ遠心力を与えるだけでなく、拡散や相変化反応などを起こさせることが目的であるので、必要な拡散係数、反応速度を確保するために試料、即ちそれを収容する試料容器、及びそれを取り付けて回転させる回転容器の温度を上げる必要がある。このために、通常の回転容器では不向きなので、軽くて400℃付近まで高強度を維持するαβ型チタン合金製の回転容器を製作した。
また、チタン合金は400℃程度までしか使えないので、さらに高温用としてインコネルやセラミックス製のものを使ってもよい。
【0021】
#1)回転容器(図4)
ターボチャージャーに連結した回転容器8に設けたスロット8aの中に、試料を詰め栓8cをねじ込んだ試料容器(カプセル)8bを挿入し、更に栓8dでスロット8aの入口を閉ざして固定した上で、回転容器8を回転させて拡散の試験を行う。回転容器8に設けられたスロット8aに収容された試料容器8bの状態を図4(a)の断面部分に示す。回転容器8は、超高速で回転させるため、重量バランスの調整と応力集中を防ぐことが非常に重要である。このため有限要素法による解析を行い、応力集中が起きないように設計した。その結果、スロット8aは、回転軸に対して30°の傾斜を与えて配置したが、この傾斜角度に限定するものではない。
材質は、強度と軽量化が大切であるので両方を考え、αβ型チタン合金(Ti−6Al−4V)を採用した。
【0022】
#2)回転体カバー(図5)
回転容器8が20万rpmで回転すると、外周の周速は480m/sにも達するため万一破壊した場合、非常に危険である。そこで安全のために、周りを、カバー20で覆った。高温雰囲気中で動作させるので、水冷式カバー20aを用いてもよい。また、この回転体カバーには諸計測センサや、熱風導入装置としてヒータ21、ファン22などを取り付ける。
この回転カバー部及び計測部のブロック図を図5に示す。カバー20は危険防止だけでなく、後に論ずるレーザ回転計用のアダプタ61、光ファイバ62、63や変位計、などの固定に役立つ。
【0023】
実施例ではこれで充分であったが、熱風装置で試料の温度を上げるためにカバー内に熱風を送って高温雰囲気中で動作させようとすると、軸や軸受などの過熱を防ぐために冷却する必要が生じる。この場合に備えて、図7に示すように新たに水冷ジャケット20a及びジャケットカバー20bを製作し、水冷ジャケットとジャケットカバーとの間に冷却水20cを注入し、ドレイン20dから排出する構造も試みた。材質は、カバー、水冷ジャケット、ジャケットカバーは腐食や熱を考慮してSUS−304、リングはS45Cを採用した。これらは形状が複雑であるばかりかステンレスの加工が必要なので、熟練した技術者に依頼して試作した。
【0024】
#3)熱風装置(図6)
高温雰囲気中で試験を行うための熱風装置を取り付けた状況を図6に示す。セラミックヒータ21とファン(ロブスト型)22を組み合わせて、ファン22からの風がチューブ35を通ってヒータ21に入り、熱されてからステンレスフレキシブルチューブ36を介して水冷ジャケット20a内に送り込まれるように構成した。ヒータ21にはサーモスイッチが内蔵されているが、入力電流が大きくファンは200Vを使用し、またこれらは回転部の側に設置していることから、電源ボックス37内の電磁開閉器38を使用し遠隔操作する。本装置では1,000℃程度まで回転容器を加熱することができる。
実験に際しては、回転容器の材質であるチタンの耐熱が400℃程度までなので、さしあたって、400℃を目標にして実験を行つた。回転容器8をインコネル製にすると、700℃程度まで大丈夫であるが、重量が重くなる。セラミックを用いると、1,000℃程度まで可能になる。
【0025】
#4)計測機器
超高速回転装置では回転数を計測すること、及び超高速で回転する回転容器8の偏心を検出することが大変重要である。ここでは、レーザの反射光による回転数の計測、変位計による偏心回転の検出について述べる。
(1)変位計
回転容器8は、超高速で回転するので、重量バランスの不均整による回転の偏心が、軸や軸受の損傷、破壊を引き起こす可能性がある。そこで、ギャップセンサ11により、回転容器8の回転中の微小な変位を検出し、オシロスコープ又はデジタルメモリで記録するようにした。これによって回転速度も計測することができる。
(2)回転計(10b)
回転速度の計測には磁石を用いた電磁誘導が簡単であるが、本装置では、回転容器の回りが高温(300℃程度以上)になり、電磁誘導法では磁石が能力を失って計測には使えなくなる。そこで、フォトカップラの原理でレーザを回転容器に入射し、その反射光を検出して回転速度を計測するようにした。
レーザダイオードは、最大30mWの出力、波長7,800オングストロームのレーザ光を安定して発振するものを使用した。検出器としては、フォトトランジスタを利用して受光回路を作成した。レーザダイオードコリメータから回転容器へ、回転容器からフォトトランジスタへ、光ファイバによりレーザを誘導する。
【0026】
B.方法の実施例
(超高加速度場の発生)
#1)運転方法
超高速回転装置の運転は回転制御装置及びコンプレッサの運転マニュアルに従って行うが、回転制御装置については、運転前に潤滑油圧力(2.0kg/cm2)の設定を予め行っておく。また、運転開始後エアー設定ダイヤルで回転を上げる前に、電空ポジショナのパイロット減圧弁の圧力(1.4kg/cm2)を設定する。操作中、潤滑油の温度が70℃程度に上昇するまで30分ほど待たねばならないので、この間にコンプレッサの暖気運転を行っておく。
【0027】
#2)燃焼器を稼働しない場合の結果
図7に今回発明した超高速回転装置の性能図(タービン入口圧力と回転数の関係)を示す。この図で、燃焼器を稼働させなくて空気を加熱しないで運転した場合(空気運転、AIR運転)、バルブの開度が70%の時に回転数が15万rpmを越えた。このとき試料容器(カプセル)には、最大で50万g以上の遠心力がかかっていることになる。さらにバルブを開いて、開度を75%にすると、空気圧力は1.2kg/cm2以上で回転は瞬間的には17万rpmを越えたが、コンプレッサの空気供給量が限界に達し、圧縮空気の供給圧力が低下して、16万rpm弱で回転が安定した。この時の回転容器の温度はヒータを使用しない場合は50〜90℃程度の間で送風器で調節できる。
【0028】
#3)燃焼器を稼働させた場合の結果
図7で、燃焼器を稼働させ圧縮空気の温度を上げて運転した場合(燃焼運転、FIRING運転)の性能図を見ると、空気圧力は0.6kg/cm2以下であるが、空気温度が600〜650℃で20万rpm以上の超高速回転を容易に実現することができた。これは温度が上がることによって装置の効率が上がることと、空気の音速が上がり加速性能が上がることなどによるものと考えられる。図8に径が40mmのところで発生する加速度場の値を回転速度に対して示す。今回の試験での最高回転数は22.4万rpmであったが、この時、半径20mmの試料内の最大直径のところに発生する加速度は112万gに達する。この値は市販のいかなる超遠心機も達成することができない値である。今回の実験では20万rpm以上の回転を安定して5時間以上持続することに成功した。
回転容器の温度はオイルの温度、軸受冷却用の水の流し速度、容器室の空気流量などに依存するが、これらを相互に調節することにより、ヒータ無しで50〜200℃程度まで試料の温度を送風器で制御することができる。ヒータを使用すると300℃程度まで加熱が可能である。
【0029】
(動作試験)
本発明の拡散装置の耐久特性と超高加速度場の物質に対する効果を確認するために、実際に、二成分系の試料を容器に入れて、85〜103万g、温度が225〜235℃で、85時間程度の超遠心力処理試験を行った。本装置は凝縮系物質をヒータ無しで50〜150℃で最大22万rpmの遠心力処理をすることができる。
【0030】
本発明の装置では試料温度範囲がヒータ無しで50〜150℃であるので、最初の試料としてはこの温度付近で拡散係数が大きいこと、融けないこと、合金系であることが望ましい。
このような観点から、Au−In(試料1)、Se−Te(試料2)、Bi−Sb(試料3)系などを実施例として提示したが、これらに限定するものではない。更に、低融点合金を対象としてBi−Sn合金(試料4)、及びBi−In合金(試料5)についても試験した。
【0031】
最初の試験対象とした試料1は、150℃以下でも、比較的拡散係数が大きいAu(金)−In(インジウム)系であり、100℃程度、16万rpm程度の回転数、10時間程度の超遠心力処理試験(最大57万g程度)を行った。処理後に回収した試料は、偏光顕微鏡、局所X線回折装置及びEPMA(エレクトロン・プローブ・マイクロ・アナライザ)により、それぞれ断面の観察及び分析を行った。
【0032】
#1−1)試料1:Au−In
レアメタリック(株)製の金線とインジウムショットを用い、重量比がAu:Inで1:19になるように秤量した。試験管にInのみを入れ、排気しながら約450℃で融解させた。これにAu線を加え、約400℃で3時間融解混合した。恒温相で170℃で20時間アニールした後、再び400℃まで加熱し、内径3.0mmのムライト管に鋳込み、これを液体窒素中につけて急冷し、直径約3mmの円柱状試料を得た。この試料を若干圧延して、内径3mmのチタニウム合金製の2つの試料容器(カプセル)8bにジグとハンドプレスを用いて封入し、同じくチタニウム合金製の回転容器8にセットした。この時、2つの試料容器のバランスをとるために試料は1mg以内の誤差で秤量した。
【0033】
#1−2)超遠心処理
燃焼器運転の処理形態で行った。エアバルブを19%開け、燃料バルブ9%で点火した。この時の回転数は11.1万rpmであった。エアバルブ26%、燃料バルブ16%に上げると回転数は16.7万rpmに達し、試料温度は30分後115℃で安定した。これより8時間、回転数が16.0〜16.7rpmの範囲に納まるようにバルブを調整した。この時の最外部の(試料容器の内径最大のところでの)最大加速度場は、0.573/0.624×106g(57.3〜62.4万g)である。試料温度Tが110〜118℃に納まるように送風器を調整した。また、もう一つの実験では、同じ回転数の16.0〜16.7rpmで試料温度Tが153〜160℃に納まるように送風器を調整した。
【0034】
8時間経って、燃焼器を止め、エアバルブを上げ、回転数をなるべく維持しながら、また、送風器で冷風を送りながら急冷させた。この時の回転数は10.5万rpmであった。約30分後55℃、90分後40℃になったので装置を止め、試料容器(カプセル)を取り出した。試料はマイナス約20℃で保存した。
【0035】
#1−3)評価
各試料の結晶構造の解析は、局所X線回折装置である日本電子(株)製のDX−MAP2とリガク(株)製のRINT2000を用いて行った。カプセルを直径で約1/3まで平面研磨し、試料表面を長め方向に露出させ、ダイヤモンドペーストで光学研磨して観察試料とした。回収した試料の金属組成の偏光顕微鏡写真を図9に示す。
同様に、各試料の組織と組成の評価のためのEPMA(エレクトロン・プローブ・マイクロ・アナライザ)観察は、日本電子(株)製のJXA−8800Rを用いて行った。
【0036】
出発原料:Au:In=5:95wt%
純粋なIn相の中に、AuIn2結晶がランダムに分布した。
実験条件:
回転速度:160,000〜167,000rpm
最大加速度:0.573〜0.624×106g(57.3〜62.4万g)
温度:153〜160℃
時間:8時間
【0037】
回収試料(図9及び図10)
回収した試料Au−Inの断面の状態を、金属組成の偏光顕微鏡写真である図9と、EPMAによるAu及びInの濃度分析線のトレース図である図10とで示す。図9において、矢印の方向が加速度場が大きくかかる方向である。図10において、スキャン・ラインと表記された横線は、分析センサを試料に対して走査させたラインを示す。
分離した各相の濃度分析線図である図10によると、下記のとおり1相のAuIn2相の中でも、加速度場が大きい方向に金の濃度分布が観察されるが、これは化合物の中で原子の拡散が起こったためである、と結論される。
・主に3相に相分離した。
1相:Au−In相:AuIn2結晶(蛍石型構造)
高g方向(矢印の方向)に連続的にAuの濃度が大きくなることが観察された。
Auの濃度 35〜40wt%
Inの濃度 60〜65wt%
2相:富In相
高g方向に連続的にAuの濃度が大きくなることが観察された。
Auの濃度 5〜10wt%
Inの濃度 90〜95wt%
3相:ほぼ純粋なIn相
考察
・ このように相分離したAuIn2結晶内に、Auの連続的組成変化があるのは、原子レベルで沈降を生じた証拠である。
・ 先ず、マクロな沈降で相分離が起こり、その後結晶内で、原子レベルの沈降で連続的な組成勾配が起こったと考えられる。
【0038】
#2−1)試料2:Se−Te
次にSe−Teを試料として試験を行った。但し、Se−Te系は高温でSeが蒸発することを考慮して対応した。
レアメタリック(株)製のSeとTeを用い、重量比がSe:Teで1:19になるように秤量した。試験管にTeのみを入れ、排気しながら約450℃で融解させた。これにSe線を加え、約400℃で3時間融解混合した。恒温相で170℃で20時間アニールした後、再び400℃まで加熱し、内径3.0mmのムライト管に鋳込み、これを液体窒素中につけて急冷し、直径約3mmの円柱状試料を得た。この試料を若干圧延して、内径3mmのチタニウム合金製の2つの試料容器(カプセル)8bにジグとハンドプレスを用いて封入し、同じくチタニウム合金製の回転容器8にセットした。この時、2つの試料容器のバランスをとるために試料は1mg以内の誤差で秤量した。
【0039】
#2−2)評価
この試料2の結晶構造の光学的観察、及び組織と組成の評価のためのEPMA(エレクトロン・プローブ・マイクロ・アナライザ)観察も、前述の1−3)評価の項に記載した試料1に対して使用したものと同一の装置で、同様に実施された。回収した試料Se−Teの断面の状態を、金属組成の偏光顕微鏡写真である図11と、EPMAによるSe及びTeの濃度分析線のトレース図である図12とで示す。
【0040】
出発原料:Se:Te=70:30mol%
富(リッチ)Te相、富Se相のモザイク状試料(結晶粒径は小さい)
結晶構造は六方晶である。
実験条件:
回転速度:195,000〜215,000rpm
最大加速度:0.85〜1.03×106g(85〜103万g)
温度:225〜235℃
時間:85時間
【0041】
回収試料(図11及び図12)
図11及び図12から次のことが観察された。
・主に3相に相分離した。構造は六方晶のままであった。
1相:富Te相(純粋なTeの塊もある)
高g方向(矢印の方向)に連続的にTeの濃度が大きくなる
Teの濃度 60〜75wt%
Seの濃度 40〜25wt%
結晶粒径は小さい:100μm以下
2相:中間相(Se−Te同程度)
Teの濃度 40〜50wt%
Seの濃度 50〜60wt%
結晶粒径はかなり大きい
3相:富Se相‥‥低g方向に連続的にSeの濃度が大きくなる
Teの濃度 20〜30wt%
Seの濃度 70〜80wt%
結晶粒径は大きい:長さ>数百μm
考察
・ 図11の偏光顕微鏡写真によると、3相の結晶は大きいが、この中でもSeとTeとの連続的組成が存在することは、原子レベルの沈降が生じた証拠である。
・ 先ず、マクロな沈降で相分離が起こり、その後の結晶内での原子レベルの沈降により、連続的な濃度勾配が生じたと考えられる。
【0042】
#3−1)試料3:Bi−Sb
次にBi−Sbを試料として試験を行った。但し、Bi−Sb系は表面に酸化物相らしい物質ができることを考慮して対応した。
レアメタリック(株)製のBiとSbを用い、重量比がBi:Sbで1:19になるように秤量した。試験管にSbのみを入れ、排気しながら約450℃で融解させた。これにBi線を加え、約400℃で3時間融解混合した。恒温相で170℃で20時間アニールした後、再び400℃まで加熱し、内径3.0mmのムライト管に鋳込み、これを液体窒素中につけて急冷し、直径約3mmの円柱状試料を得た。この試料を若干圧延して、内径3mmのチタニウム合金製の2つの試料容器(カプセル)8bにジグとハンドプレスを用いて封入し、同じくチタニウム合金製の回転容器8にセットした。この時、2つの試料容器のバランスをとるために試料は1mg以内の誤差で秤量した。
【0043】
#3−2)評価
前述の試料1及び試料2に対するのと同様にして得た、試料3のbi−Sbの断面の状態を、金属組成の偏光顕微鏡写真である図13と、EPMAによるBi及びSbの濃度分析線のトレース図である図14とで示す。
出発原料:Bi:Sb=70:30mol%
富Bi相と富Sb相からなるデンドライト状試料
結晶構造は、六方晶の菱面体構造である。
実験条件:
回転速度:195,000〜215,000rpm
最大加速度:0.85〜1.03×106g(85〜103万g)
温度:225〜235℃
時間:85時間
【0044】
回収試料(図13及び図14)
図13及び図14から次のことが観察された。
・主に3相に相分離した。構造は六方晶(菱面体)のままであった。
1相:均一な富Bi相
高g方向(矢印の方向)に連続的に組成が大きくなる。
Biの濃度 80〜100wt%
Sbの濃度 0〜 20wt%
結晶粒径は大きく、数百μmから数mmである。
結晶構造が同じであるということは、固溶体を形成している証拠である。
2相:Bi−Sb相:ほぼ均一な相の中に薄いデンドライト相が残る。
Biの濃度 70〜80wt%
Sbの濃度 20〜30wt%
3相:薄いBi−Sbデンドライト相がそのまま残る。
マクロな沈降はあまり見られない。
考察
・ 図14の濃度分析線図に示すように、1相の結晶の粒径が数百μmから数mmのように大きく、1相の結晶内に連続的な組成変化が生じたことは、原子レベルの沈降が生じた証拠であると考えられる。
・ Bi−Sb系の場合、2相、3相にデンドライト相が残っていることから、マクロな沈降はなかったものと考えられる。
【0045】
#4)試料4:低融点合金Bi−Sn
低融点合金Bi−Snを出発原料にして比較的低温(100℃)で超遠心力処理を行い傾斜合金を作製した。出発原料の作成方法は、前述のBi−Sb系に対するものと同様である。
出発原料:Bi−Sn合金
Bi:58wt%、Sn:42wt%、融点:138℃
Bi=209.0g/mol、MSn=118.1g/mol
実験条件:回転速度:190,000〜210,000rpm
最大加速度:0.81〜0.99×106g(81〜99万g)
温度:95〜105℃
時間:50時間
このときは、熱風器を使用せず、冷風を送り温度を調節した。
回収試料:高g方向に富Bi相と富Sn相が順に2相に分離し、その中でBi−Snの傾斜分散した合金が得られた。富Sn相は固溶体相であるが富Bi相は分離相も含まれていた。
【0046】
#5)試料5:低融点合金Bi−In
低融点合金Bi−In合金を出発原料にして比較的低温(60℃)で超遠心力処理を行い傾斜合金を作製した。出発原料の作成方法は、前述のBi−Sb系に対するものと同様である。
出発原料:Bi−In合金
Bi:34wt%、In:66wt%、融点:72℃
Bi=209.0g/mol、MIn=114.8g/mol
実験条件:回転速度:190,000〜210,000rpm
最大加速度:0.81〜0.99×106g(81〜99万g)
温度:55〜65℃
時間:50時間
このときも熱風器を使用せず、冷風を送り温度を調節した。
回収試料:高g方向に基本的にIn2Bi化合物相と富In相が順に2相に分離し、その中でBi−Inの傾斜分散した合金が得られた。基本的にIn2Bi化合物相の中でも原子濃度の傾斜が見られた。
【0047】
#6)その他の試料
上に述べた実施例は二成分系のものを例示したが、本発明はそれらに限定するものではなく、三成分以上の凝縮材料であってもよい。例えば、三成分の材料としては、少なくとも、S−Se−Te、As−Sb−Bi、In−Au−Ag、Bi−Sn−Inなどを主成分として、四成分の材料としては、少なくとも、P−As−Sb−Bi、Pb−In−Au−Cuなどを主成分としても同様に実施可能である。また低融点合金についても、三成分、四成分試料でも同様に実施可能である。何れも現象は基本的に同じなので同様な効果が期待できる。
固溶体、化合物及び分離系などの相状態は、加速度場下での状態図によつて決定される。また、状態は固体に限らず、液体状態であってもよい。また、液体と固体が混合した状態や中間的な状態であってもよい。
【0048】
[発明の効果]
本発明の方法により、エアタービン型モータとチタン合金製回転容器を採用して、試料容器8bの最大内径40mmのところで、最高22万rpm以上の超高速回転を実現できる超遠心機(超高加速度場発生装置)を提供することができた。これによって、外熱式ヒーターを併用することにより、チタン合金製の容器に納めた凝縮媒体は400℃程度までの温度下で、インコネル製の容器に納めた凝縮媒体は700℃程度までの温度下で、それぞれ当初の目標であった試料容器の内径最大部分で81万gはもとより、100万g以上の超高加速度場を安定して実現できるようなった。
【0049】
かくて、本発明の方法によって、凝縮系材料を遠心力拡散することが可能になり、原子濃度の制御や元素や同位体の分離・濃縮・精製などのような直接的作用はもちろん、その二次的作用として、原子や分子の濃度変化に伴う密度や屈折率の制御、異種材料の接合、材料の焼結などの作用が期待できる。また、拡散原子のモル分率が10-3程度を越えるような拡散の場合、化学的に非平衡な状態が実現し、不定比化合物、金属間化合物、準安定相物質などの非平衡物質や特殊構造物質及びそれらを含む多層共存物質や傾斜材料を合成する作用も期待できる。特に、拡散原子のモル分率が10-1を越えるとその可能性は極めて高くなる。さらに、高速回転には不可避の遠心力による応力(圧力)分布が拡散と一緒に物質に変化を与え、焼結や接合だけでなく高圧相物質、高歪材料などの特殊構造物質やそれらを含む多層共存物質の合成が期待できる。
本発明によって得られる組成勾配を有する凝縮系材料は、従来技術では得られなかったので、例えば半導体産業、素材産業、原子力産業、のような分野において、例えば元素同位体の濃縮、精製、組成の制御、新素子の製造技術に進歩をもたらすことが期待できるので、産業上の利用価値が高い。
【0050】
次に、本発明の効果を個条書きに列挙する。先ず、拡散とそれによってもたらされる化学的に非平衡な状態を利用し:
イ)元素、化合物の分離、濃縮、精製が可能(従来技術では気体またはイオンのみであった)
ロ)ウラニウムや重水素など核燃料物質などの同位体の分離・濃縮
ハ)固体の不純物・欠陥濃度の制御
ニ)固体の密度・屈折率分布の制御
ホ)不定比化合物(触媒)、準安定相物質などの非平衡物質の合成
ヘ)多層共存物質、傾斜材料の製作
ト)特殊な傾斜接合面(半導体素子)の形成
更に、重力拡散のメカニズムの研究など、遠心力による応力の効果も加えて:
チ)高圧相物質などの合成
リ)固体材料の接合、焼結や複合材料の製作
ヌ)ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リの作用が複合されてできる材料の合成など。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明で使用する装置全体の概略参考図であって、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図。
【図2】エアタービンモータの断面模式図。
【図3】本発明で使用する装置の参考ブロック図。
【図4】回転容器の概略を示し、(a)は回転容器のスロット内における試料容器(カプセル)の収容状態を示すため部分的に断面で示す側面図、(b)は部分的に切り欠いて示す正面図。
【図5】回転カバー部及び計測部を示すブロック図。
【図6】水冷カバーの概略図。
【図7】超高速回転装置の性能(タービン入口圧力とタービン回転数との関係)を示す図。
【図8】タービン回転数と加速度場との関係を示す図。
【図9】本発明の方法にしたがって処理した後の、試料1(Au−In)の金属組成の偏光顕微鏡写真。
【図10】試料1中で相分離したAu及びInの、濃度分析線のトレース図。
【図11】本発明の方法にしたがって処理した後の、試料2(Se−Te)の金属組成の偏光顕微鏡写真。
【図12】試料2中で相分離したSe及びTeの、濃度分析線のトレース図。
【図13】本発明の方法にしたがって処理した後の、試料3(Bi−Sb)の金属組成の偏光顕微鏡写真。
【図14】試料3中で相分離したBi及びSbの、濃度分析線のトレース図。
【符号の説明】
【0052】
1 コンプレッサ
2 リザーブタンク
3 圧縮空気源
4 燃焼器
5 エアタービンモータ
8 回転容器
8a 試料容器を収容するスロット
8b 試料容器(カプセル)
10a 回転制御部
10b 回転計測部
11 ギャップセンサ
12 コントロールバルブ
13 タービンホイール
14 オイルフロート軸受
20 カバー
21 セラミックヒータ
22 フアン
35 チューブ
36 フレキシブルチューブ
37 電源ボックス
38 電磁開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度場下で液体、固体、又はそれらの混合状態を呈する少なくとも二元素からなる凝縮系物質を拡散処理するための方法であって、
前記凝縮系物質を超遠心分離機の回転容器に入れて超高速回転動力源で回転駆動し、60〜1,000℃程度の温度の下で、20万g〜103万gの加速度場を前記超遠心分離機に与えて、前記少なくとも二元素の各原子及び/又は各分子に作用する遠心力に、原子・分子レベルで差を与えることにより、遠心力拡散処理することを特徴とする拡散処理方法。
【請求項2】
前記加速度場下で液体、固体、又はそれらの混合状態を呈する少なくとも二元素からなる凝縮系物質が、少なくともSe−Te、Au−In、Bi−Sb、Bi−Sn、Bi−In、S−Se−Te、As−Sb−Bi、In−Au−Ag、Bi−Sn−In、P−As−Sb−Bi、及びPb−In−Au−Cuからなる群から選ばれた物質を主成分とするものであることを特徴とする請求項1記載の拡散処理方法。
【請求項3】
加速度場下で液体、固体、又はそれらの混合状態を呈する少なくとも二元素からなる凝縮系物質を超遠心分離機の回転容器に入れて超高速回転動力源で回転駆動し、60〜1,000℃程度の温度の下で、20万g〜103万gの加速度場を前記超遠心分離機に与えて、前記少なくとも二元素の各原子及び/又は各分子に作用する遠心力に、原子・分子レベルで差を与えることにより得られる、傾斜濃度分布を有する液体、固体、又はそれらの混合状態を呈する凝縮系物質。
【請求項4】
前記加速度場下で液体、固体、又はそれらの混合状態を呈する少なくとも二元素からなる凝縮系物質が、少なくともSe−Te、Au−In、Bi−Sb、Bi−Sn、Bi−In、S−Se−Te、As−Sb−Bi、In−Au−Ag、Bi−Sn−In、P−As−Sb−Bi及びPb−In−Au−Cuからなる群から選ばれた物質を主成分とするものであることを特徴とする、請求項3記載の傾斜濃度分布を有する液体、固体、又はそれらの混合状態を呈する凝縮系物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−289957(P2007−289957A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148067(P2007−148067)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【分割の表示】特願平8−109043の分割
【原出願日】平成8年4月30日(1996.4.30)
【出願人】(392020820)
【出願人】(000221144)株式会社タンガロイ (185)
【出願人】(591245185)丸和電機株式会社 (6)
【復代理人】
【識別番号】100075225
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 文雄
【Fターム(参考)】