説明

凝集核が結合された高分子支持体

本発明は凝集核が結合された高分子支持体に関する。より詳しくは、本発明は生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体及びその製造方法並びにこれを用いたβ−2−マイクログロブリン除去方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凝集核が結合された高分子支持体に関する。より詳しくは、本発明は生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体及びその製造方法、並びに、これを用いたβ−2−マイクログロブリン除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミロイド(amyloid)とは水溶性タンパク質が相互に交差したベータ構造(cross β−sheet conformation)を形成することで非水溶性の超分子タンパク質構造物を誘導して形成した繊維状タンパク質凝集体を言う。アミロイドタンパク質はパーキンソン病、痴ほう、狂牛病などの退行性疾患の患者で共通して見つかる。
【0003】
腎臓に異常がある患者の場合、体内の老廃物を除去する機能が円滑でないため血液透析によってこれを除去することになる。しかし、腎臓に比べ、血液透析器は各種老廃物の除去効率が落ち、特にI型主要組織適合複合体(major histocampatibility complex、class I)の一部であるβ−2−マイクログロブリン(β−2−microglobulin)タンパク質の場合、血液透析器によって完全に除去されずに体内に蓄積して結局アミロイドを形成して関節組職などに沈着する。この症状を透析関連類殿粉症(dialysis−related amyloidosis)という。透析関連類殿粉症による疾患では手首トンネル症侯群、関節炎、頚椎関節炎、骨折を誘発する骨嚢胞などがある。
【0004】
長期的に血液透析を受ける患者の場合、血清中のβ−2−マイクログロブリンの濃度が一般人に比べて60倍以上高くなることが知られており、患者の体内に高濃度で存在しているβ−2−マイクログロブリンの濃度を正常近くに下げると、透析関連類殿粉症による疾患の程度が緩やかになることが報告されている。よって、血液透析器を改良してβ−2−マイクログロブリン除去効率を高める方法または血液透析器にβ−2−マイクログロブリン除去専用の吸着能を示す補助クロマトグラフィー(カラム)を設置する方法などによって血清中のβ−2−マイクログロブリンの濃度を正常に近く下げる努力が活発になされて来た(非特許文献1〜3)。
【0005】
LuxellTMのような従来の商用化したカラムはアガロース(agarose)またはセルロース(cellulose)高分子由来のビードを充填した管で、β−2−マイクログロブリンを除去する方式で大きさの差によるタンパク質分離及び疎水性を用いるタンパク質吸着を用いるものである。これは結合親和力が低下して除去されるβ−2−マイクログロブリンの量が十分ではなく、非特異的に類似の大きさの他のタンパク質も一緒に除去される欠点がある。
【0006】
β−2−マイクログロブリンを選択的に除去するために高分子支持体に抗体を導入した場合、β−2−マイクログロブリンに対する高い親和力と特異性を持つ。しかし、抗体は生産費用が高くて安全性が落ちるため、長期間常温で保管すると損傷し易いという問題点がある(非特許文献4)。
【0007】
LuxellTMとの商標として市販されるβ−2−マイクログロブリン除去カラムの場合、疎水性を導入して親和力を増進させるためにセルロースビードに炭素鎖を導入した高分子支持体を使っているが、β−2−マイクログロブリンの外に他の有用なタンパク質も一緒に除去されるという欠点がある。
【0008】
したがって、当業界ではβ−2−マイクログロブリンにだけ選択的に結合して除去することで、他の有用なタンパク質は除去しながらも血液からβ−2−マイクログロブリンのみを除去することができる高分子支持体が要求されている。
【0009】
本発明の発明者らはアミロイド性タンパク質単量体がすでに同種のタンパク質で作られた繊維状構造と共存するとき、アミロイドの形成が一層促進されるという点に着眼し;除去しようとするタンパク質でアミロイドを製造し、前記アミロイドから製造された凝集核を高分子支持体に結合して除去しようとするタンパク質を選択的に除去することができるアミロイド凝集核が結合された高分子支持体を発明することにより本発明を完成することになった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Humes HD et al., The future of hemodialysis membranes, Kidney Int.,2006,69,1115−1119
【非特許文献2】Furuyoshi S et al., New adsorbent for extracorporeal removal of β2−microglobulin. In:Amyloid and amyloidosis,New York:Plenum Press,1988,629−634
【非特許文献3】Ameer et al.,A novel immunoadsorption device for removing of β2−microglobulin from whole blood,Kidney International,2001,59,1544−550
【非特許文献4】Shabunina et al., Immunoabsorbent for removal of β2−microglobulin from human blood plasma. Bulletin of experimental biology and medicine,2001,132,984−986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の基本的な目的は、生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、i)カルボキシル基が導入された高分子樹脂をN−ヒドロキシスクシンイミド、グルタルアルデヒド及びエポキシよりなる群から選ばれるいずれか一つと反応させて活性化した高分子支持体樹脂を製造する段階;及びii)前記活性化した高分子支持体樹脂とアミロイド凝集核を反応させて前記高分子樹脂の表面に前記アミロイド凝集核を導入する段階を含む、生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核が結合された高分子支持体をβ−2−マイクログロブリンが含有された流体と接触させる段階を含む、β−2−マイクログロブリン除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した本発明の基本的な目的は、生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体を提供することにより達成できる。
【0015】
本発明によれば、生体物質を凝集させることができる凝集核(seed)を高分子支持体に結合させることで前記生体物質を分離または除去することができる。前記凝集核の大きさは1nm〜10μmであることが好ましい。
【0016】
特に、前記生体物質凝集用凝集核はアミロイド凝集核であることができる。本発明の明細書において、アミロイド凝集核(amyloid seed)とはアミロイド形成に適した骨格(scaffold)を提供することにより早く伸張してより大きいアミロイドを形成するようにする臨界大きさまたは構造を持つアミロイド断片を指称する。
【0017】
特に、アミロイド凝集核が結合された高分子支持体はタンパク質凝集効果によって除去しようとするタンパク質のみを選択的に除去することができるようにする。タンパク質凝集効果とは、アミロイド性タンパク質単量体がすでに同種のタンパク質で作られた繊維状構造と共存するとき、アミロイドの形成が一層促進される現象を意味する。凝集核が存在するときのアミロイド形成程度は凝集核が存在しないときと比較すると、アミロイドの形成速度がずっと速く、作られる最終産物であるアミロイドの量においても大きな差を示す。前記アミロイド凝集核はβ−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核であることができるが、アミロイドを形成することができるタンパク質であれば制限なしに使うことができる。
【0018】
本発明の高分子支持体として、ポリスチレンレジン、PEG−g−PS(polyethylene glycol−g−polystyrene)レジン、TentaGelTMレジン、PEGATMレジン、CLEARTMレジンなどのPEG鎖を持つレジン、エポキシレジン、フェノールレジン、フェノキシレジン、メラミンレジン、ポリエステルレジン、セルロースレジン、アガロースレジン、キトサンレジン、PMMAレジン及びシリカビードなどの固体状支持体を使うことができ、好ましくはポリスチレン樹脂を使うことができる。
【0019】
前述した本発明の他の目的は、i)カルボキシル基が導入された高分子樹脂をN−ヒドロキシスクシンイミド、グルタルアルデヒド及びエポキシよりなる群から選ばれるいずれか一つと反応させて活性化した高分子支持体樹脂を製造する段階;及びii)前記活性化した高分子支持体樹脂とアミロイド凝集核を反応させて前記高分子樹脂の表面に前記アミロイド凝集核を導入する段階;を含む、生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法を提供することにより達成できる。
【0020】
本発明の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法に使われる高分子樹脂は、ポリスチレンレジン、PEG−g−PSレジン、TentaGelTMレジン、PEGATMレジン、CLEARTMレジンなどのPEG鎖を持つレジン、エポキシレジン、フェノールレジン、フェノキシレジン、メラミンレジン、ポリエステルレジン、セルロースレジン、アガロースレジン、キトサンレジン、PMMAレジン及びシリカビードなどの固体状支持体を使うことができ、好ましくはポリスチレン樹脂を使うことができる。
【0021】
前記カルボキシル基が導入された高分子樹脂は本明細書の実施例2に記載したように従来の方法で製造することができる。
【0022】
本発明の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体の製造方法のi)段階の溶媒はジクロロメタン(dichloromethane)またはジメチルホルムアミド(dimethylformamide)であることが好ましい。また、前記i)段階の触媒として4−ジメチル−アミノピリジン(4−dimethyl−aminopyridine)を使うことができる。
【0023】
また、前記i)段階の反応温度は0℃〜50℃であり、反応時間は2時間〜48時間であることが好ましい。
【0024】
前記ii)段階の生体物質凝集用凝集核はアミロイド凝集核であることができ、前記アミロイド凝集核はβ−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核であることができる。また、前記アミロイド凝集核の大きさは1nm〜10μmであることが好ましい。
【0025】
前述した本発明のさらに他の目的は、β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核が結合された高分子支持体をβ−2−マイクログロブリンが含有された流体と接触させる段階を含む、β−2−マイクログロブリン除去方法を提供することにより達成できる。
【0026】
β−2−マイクログロブリンが生体内でアミロイドを形成し易いこととは異なり、試験管内では酸性の条件でばかりアミロイドが作られ、中性の条件でアミロイドが作られるためには繊維化を促進させる多様な要素を添加することにより可能であると知られている。その一つとして、アミロイドの形成を促進させる効果としてタンパク質凝集核の効果がある。前記β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核が固定されたポリスチレン支持体をカラム形式で活用することにより流体の流れによるβ−2−マイクログロブリンのアミロイド形成加速化現象を用いてβ−2−マイクログロブリン除去の効率性を増進させることができる。
【0027】
すなわち、β−2−マイクログロブリンをβ−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核に結合させて安定的なアミロイド形成を誘導することにより、体内のβ−2−マイクログロブリンを除去することができ、前記支持体を用いて血液透析過程で血液透析器とともに補助カラムとして使用してβ−2−マイクログロブリンを効果的に除去することができる。また、前記β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核の大きさは1nm〜10μmであることが好ましい。
【0028】
本発明のβ−2−マイクログロブリン除去方法に使われる高分子支持体としては、ポリスチレンレジン、PEG−g−PSレジン、TentaGelTMレジン、PEGATMレジン、CLEARTMレジンなどのPEG鎖を持つレジン、エポキシレジン、フェノールレジン、フェノキシレジン、メラミンレジン、ポリエステルレジン、セルロースレジン、アガロースレジン、キトサンレジン、PMMAレジン及びシリカビードなどの固体状支持体を使うことができ、好ましくはポリスチレン樹脂を使うことができる。
【0029】
固定化した抗体にタンパク質を反応させる前に他のタンパク質が吸着されることを防止するためにウシ血清アルブミン(bovine calf serum、fetal bovine serumなどを含むbovine serum albumin)、ウマ血清、人血清、脱脂乳(skim milk)などの遮断溶液(blocking solution)で処理をする。また、PEG、キトサンなどの物質がグラフティングされた表面を使うことにより、他のタンパク質が吸着されることを防止する効果をもたらすことができる。
【0030】
前記β−2−マイクログロブリンが含有された流体と本発明の高分子支持体を接触させるとき、pHの急激な変化を防止するために燐酸塩緩衝溶液(Phosphate Buffer Solution)をさらに添加することが好ましい。この際、pHは6.0〜8.0に維持することが好ましい。これにより、人体内の条件と類似の環境を維持することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のアミロイド凝集核が結合された高分子支持体を用いて除去しようとするタンパク質のみを選択的に除去することができるようにする。
【0032】
特に、β−2−マイクログロブリンを血液から選択的に除去して腎不全症患者の血液透析過程でβ−2−マイクログロブリンが非正常的に体内に蓄積することを防止することができる。よって、透析関連類殿粉症を予防及び治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】チオフラビン−Tを用いたβ−2−マイクログロブリンアミロイド形成を示すグラフである。
【図2】超音波処理方法で製造された本発明のアミロイド凝集核の電子燎微鏡写真である。
【図3】本発明によってHicoreビードにβ−2−マイクログロブリン凝集核を接合させる方法の一実施例である。
【図4】本発明のタンパク質凝集核が固定されたビードとβ−2−マイクログロブリン結合を電子燎微鏡で確認した写真である。
【図5】本発明のタンパク質凝集核が固定されたビードのβ−2−マイクログロブリン結合を蛍光で確認した写真である(A:Hicoreビード、B:凝集核がないHicoreビードをβ−2−マイクログロブリンと反応させた写真、C:凝集核があるHicoreビードをβ−2−マイクログロブリンと1日間反応させた写真、D:凝集核があるHicoreビードをβ−2−マイクログロブリンと3日間反応させた写真、E:凝集核があるHicoreビードをα−シヌクレイン(他のタンパク質)と3日間反応させた写真)。
【図6】タンパク質凝集核ビードの時間によるβ−2−マイクログロブリン除去効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、次の実施例または図面に基づいて本発明をより具体的に説明する。しかし、次の実施例または図面についての説明は本発明の具体的な実施態様を特定して説明しようとするものであり、本発明の権利範囲をこれに記載した内容に限定するか制限して解釈しようとするものではない。
【0035】
実施例1.凝集核として使われるβ−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核の製造
精製されたβ−2−マイクログロブリン単量体を1mg/mlの濃度でpH2.5の0.15Mの塩化ナトリウムが含まれている20mM塩化燐酸塩緩衝溶液に入れ、37℃で2週間以上維持してアミロイド生成反応を進めた。アミロイド原線維(amyloid fibril)の形成有無はタンパク質のアミロイド形成程度を測定するのに広く使われる蛍光色素であるチオフラビン−T(Thioflavin−T)を用いて確認した(図1)。充分に成熟したアミロイドが作られたことを確認した後、これを超音波処理(sonication)法で小切れに破砕した後、濾過処理して長さ10nm程度のアミロイド凝集核(amyloid seed)を製作した(図2)。
【0036】
実施例2.高分子支持体の製造
高分子支持体として固体状合成及び支持体物質として多く使われているポリスチレン樹脂を改質したHiCoreレジン((株)ビードテック)を使った。まず、HiCoreビードのアミン官能基に無水コハク酸(succinic anhydride)をN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone)溶媒の下で常温で24時間反応させてカルボキシル基を導入した。そのうえ、N,N’−ジイソプロピル−カルボジイミド(N,N’−diisopropyl−carbodiimide)を用いて4−ジメチル−アミノピリジン(4−dimethyl−aminopyridine)触媒の下でN−ヒドロキシスクシンイミド(N−hydroxysuccinimide)を導入させた。溶媒としてはジクロロメタン(dichloromethane)とジメチルホルムアミド(dimethylformamide)を使用し、温度は反応初期には氷浴(ice bath)を用いて0℃を維持し、1時間後に常温に取り出して18時間反応させた。N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(N−hydroxysuccinimide ester)の形態に活性化させた後、超音波処理によって得られたβ−2−マイクログロブリンの凝集核に存在するアミンとの縮合反応によって化学的に結合されたリガンド含有高分子支持体を製造した(図3参照)。
【0037】
実施例3.凝集核と結合した高分子支持体を使っての溶液内のβ−2−マイクログロブリン除去
実施例2の凝集核が固定化した高分子ビード(0.4mmol NH/g bead)を1%BSA(bovine serum albumin)溶液に1時間のうち室内温度で反応させることで、高分子支持体表面の非特異的タンパク質吸着を最小化するように前処理した。このようにBSA処理されたビードを1mg/mlのβ−2−マイクログロブリンが入っている20mM塩化燐酸塩緩衝溶液(pH7.5)200mlに加えた。この状態で37℃撹拌培養器で反応させながら時間によって凝集核と結合されるβ−2−マイクログロブリンの量を測定した。その結果、時間によって凝集核が固定化した高分子ビードにβ−2−マイクログロブリンが選択的に結合する様相を定性及び定量分析によって確認した。pH6.5とpH7.0の環境でも高分子支持体にβ−2−マイクログロブリンがよく結合することを確認した。
【0038】
1)蛍光を用いた定性分析
FITC(fluorescein isothiocyanate)で蛍光標識したβ−2−マイクログロブリン単量体とタンパク質凝集核が固定化したビードを20mM燐酸塩緩衝溶液(pH7.4)内で37℃で3日間反応させた後、ビードに付いたβ−2−マイクログロブリンを共焦点燎微鏡を用いて確認した(図4)。
【0039】
図4の左側写真は凝集核が導入されなかったビードを72時間のうち蛍光が導入されたβ−2−マイクログロブリン単量体と反応させた後の共焦点燎微鏡写真;図4の中央写真は凝集核が導入されたビードを24時間のうち蛍光が導入されたβ−2−マイクログロブリン単量体と反応させた後の共焦点燎微鏡写真;図4の右側写真は凝集核が導入されたビードを72時間のうち蛍光が導入されたβ−2−マイクログロブリン単量体と反応させた後の共焦点燎微鏡写真である。
【0040】
凝集核が導入されなかった対照群は3日間の反応にもかかわらず、高分子支持体が放出する弱い自己蛍光と少しの吸着によって微細な蛍光を帯びる反面、凝集核が導入されたビードの場合は24時間のうち反応させた後にも非常に鮮やかな蛍光を示すことからβ−2−マイクログロブリンが選択的に結合することを確認した。
【0041】
2)定量分析結果
定量分析のためにタンパク質凝集核が付いているビードをβ−2−マイクログロブリンを含むpH7.4条件の20mM燐酸塩緩衝溶液に入れ、37℃で撹拌器で反応させた後、時間によって溶液に残っているβ−2−マイクログロブリン単量体の濃度をブラッドフォード分析法で分析した。その結果、図5に示すように、時間によって溶液中に残ったβ−2−マイクログロブリンが徐々に減少することから、凝集核固定化ビードがβ−2−マイクログロブリンを除去することができる能力を有することを確認した。また、これに基づいて各区間別に除去速度を計算して棒グラフで示した。その結果、時間が経つにつれて徐々に除去速度が増加することを観察した。これはアミロイド形成の凝集核効果が固定化支持体状態でもそのまま現れていることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体。
【請求項2】
前記凝集核がアミロイド凝集核であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子支持体。
【請求項3】
前記アミロイド凝集核がβ−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核であることを特徴とする、請求項2に記載の高分子支持体。
【請求項4】
前記凝集核の大きさが1nm〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の高分子支持体。
【請求項5】
前記高分子がポリスチレンレジン、PEG−g−PSレジン、TentaGelTMレジン、PEGATMレジン、CLEARTMレジン、エポキシレジン、フェノールレジン、フェノキシレジン、メラミンレジン、ポリエステルレジン、セルロースレジン、アガロースレジン、キトサンレジン及びPMMAレジンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の高分子支持体。
【請求項6】
i)カルボキシル基が導入された高分子樹脂をN−ヒドロキシスクシンイミド、グルタルアルデヒド及びエポキシよりなる群から選ばれるいずれか一つと反応させて活性化した高分子支持体樹脂を製造する段階;及び
ii)前記活性化した高分子支持体樹脂と生体物質凝集用凝集核を反応させて前記高分子樹脂の表面に前記アミロイド凝集核を導入する段階;を含む、生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項7】
前記高分子樹脂がポリスチレンレジン、PEG−g−PSレジン、TentaGelTMレジン、PEGATMレジン、CLEARTMレジン、エポキシレジン、フェノールレジン、フェノキシレジン、メラミンレジン、ポリエステルレジン、セルロースレジン、アガロースレジン、キトサンレジン及びPMMAレジンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項8】
前記i)段階の溶媒がジクロロメタン(dichloromethane)またはジメチルホルムアミド(dimethylformamide)であることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項9】
前記i)段階の触媒が4−ジメチル−アミノピリジン(4−dimethyl−aminopyridine)であることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項10】
前記i)段階の反応温度が0℃〜50℃であることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項11】
前記i)段階の反応時間が2時間〜48時間であることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項12】
前記ii)段階の生体物質凝集用凝集核がアミロイド凝集核であることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項13】
前記ii)段階のアミロイド凝集核がβ−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核であることを特徴とする、請求項12に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項14】
前記ii)段階のアミロイド凝集核の大きさが1nm〜10μmであることを特徴とする、請求項6に記載の生体物質凝集用凝集核が結合された高分子支持体製造方法。
【請求項15】
β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核が結合された高分子支持体をβ−2−マイクログロブリンが含有された流体と接触させる段階を含む、β−2−マイクログロブリン除去方法。
【請求項16】
前記β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核の大きさが1nm〜10μmであることを特徴とする、請求項15に記載のβ−2−マイクログロブリン除去方法。
【請求項17】
前記β−2−マイクログロブリンのアミロイド凝集核が結合された高分子支持体がウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、ウマ血清、人血清、及び脱脂乳(skim milk)よりなる群から選ばれるもので処理されたことを特徴とする、請求項15に記載のβ−2−マイクログロブリン除去方法。
【請求項18】
前記高分子がポリスチレンレジン、PEG−g−PSレジン、TentaGelTMレジン、PEGATMレジン、CLEARTMレジン、エポキシレジン、フェノールレジン、フェノキシレジン、メラミンレジン、ポリエステルレジン、セルロースレジン、アガロースレジン、キトサンレジン及びPMMAレジンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項15に記載のβ−2−マイクログロブリン除去方法。
【請求項19】
前記β−2−マイクログロブリンが含有された流体が燐酸塩緩衝溶液(Phosphate Buffer Solution)をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載のβ−2−マイクログロブリン除去方法。
【請求項20】
pHが6.0〜8.0に維持されることを特徴とする、請求項15に記載のβ−2−マイクログロブリン除去方法。
【請求項21】
前記流体が哺乳類の血液であることを特徴とする、請求項15に記載のβ−2−マイクログロブリン除去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−505204(P2012−505204A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530933(P2011−530933)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005402
【国際公開番号】WO2010/044551
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511092011)
【氏名又は名称原語表記】SNU R&DB FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】San 56−1, Sillim−dong, Gwanak−gu, Seoul 151−742 Republic of Korea
【Fターム(参考)】