説明

凝集能力を有する血小板フラグメントの製造方法及びその使用

【課題】 凝集能力を有する血小板フラグメントの製造方法及びその使用。
【解決手段】 自然のままの血小板を超音波及び固定剤で処理して、凝集能力を有する血小板フラグメントを製造する。該血小板フラグメントは、例えばVWF活性を測定する方法におけるような凝集反応を含む、診断検査における使用のために好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断、殊に凝固疾患の技術分野におけるものであり、そして凝集能力を有する血小板フラグメントの製造方法、及び、例えばVWF活性を測定する方法におけるような、凝集反応を含む診断検査方法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フォン・ヴィルブランド(von Willebrand )因子 (VWF) は、初期の止血過程において重要な機能を有する高分子量の多量体糖タンパク質である。血管損傷が生じた場合、VWFは3つの重要な機能:血小板を内皮下層へ接着させる媒介、結果として血栓の形成に好都合となる血小板を互いに凝集させる媒介、及び未成熟分解から血漿凝固因子VIII(F VIII)を保護するF VIII複合体の形成、を演じる。トロンビンは、F VIII−VWF複合体からF VIIIを取りはずし、そしてそれをF VIIIaへと活性化し、そしてそれによってF VIIIはその凝固促進活性を獲得し、そしてそれはまたしばしばF VIII:Cと称される。
【0003】
フォン・ヴィルブランド(von Willebrand )症候群は、VWFの定性的又は定量的な欠陥に起因して生じるものであり、そして最も一般的な遺伝性出血疾患の一つである。種々のスクリーニング法がフォン・ヴィルブランド症候群の診断のために使用可能であり、例えば、出血時間(BT)の測定、例えばELISA法のようなVWF抗原濃度(VWF:Ag)を測定する定量的な方法、及び、例えばリストセチンで誘導された血小板凝集(VWF:RCo)のようなVWF活性を測定する方法が挙げられる。
【0004】
リストセチンで誘導された血小板凝集方法は、またリストセチン補因子検定とも称されるが、VWF抗原濃度を測定するための定量的な方法によっては検知することができないVWFタンパク質中の機能欠陥を検知することができる。それ故、リストセチン補因子の活性を測定するためにリストセチン補因子検定を行うことは、フォン・ヴィルブランド症候群の完全な診断にとって必要なものである。通常は、リストセチン補因子検定は患者の血漿試料を血小板と混合することによって行うことができる。通常はこの目的のために固定されたヒトの血小板が使用されるが、しかしながら、生理的に活性な、即ち自然のままの血小板を使用することもまた可能である。リストセチンの添加により、又は試料中にある活性なVWFの作用で、自然のままの血小板の凝集又は固定された血小板の凝集が起こる。凝塊形成又は凝集反応は、例えば、透過率の増加を測定することにより光学的に検知することができ、そしてそれ故にVWF:RCo活性を定量化することが可能となる。しかしながら、全血小板の凝塊形成又は凝集反応の測定には、幾つかの欠点が伴っている。
【0005】
第一の欠点は、光学的測定の記録中に混合物を完全にそして継続的に混合することが必要であることである。この継続的で完全な混合は、おそらく血小板の衝突頻度を高めそしてそれにより反応速度を増大させるために必要とされるものである。最新の検査施設において止血の診断検査に使用されている自動化測定機のうちほんのわずかなものだけが、このような測定中の反応混合物を継続して完全に混合することができる技術的装置を有しているに過ぎない。第二に、従来型のリストセチン補因子検定の不正確さが比較的高いということである。止血の診断検査の分野における圧倒的に大部分の自動化測定機は可視範囲の波長だけを測定することができる光学的装置を備えているが故に、同様にこの波長の範囲において自動化された検定法による評価を行うことが可能となるはずである。血小板凝集の後に透過率を測定するとき、大きい凝塊を形成したもののみが可視波長範囲における透過率の増大をもたらす。しかしながら、大きい凝塊の形成は、機械的な破壊に対して更に影響を受け易く、小さい光学的測定窓に対応する通常は比較的小さい検定キュベット(cuvettes)中で正確には検知することはできない。それ故に、血小板の凝塊形成反応又は血小板凝集反応のプロットは、典型的には測定中のかなりのばらつきを示している。
【0006】
VWF:RCo活性のより正確な測定を可能とする幾つかの別法としての検定法は、これまでにも開発されてきた。これらの方法の幾つかにおいては、VWF受容体GP1b 又はそのフラグメントが使用されている。それ故、例えば、GP1b受容体に対するVWFのリストセチン誘導による結合を測定するELISA法が開発されてきた。このタイプの方法は、例えば、Federici, A.B. ら、(Haematologica 2004; 89(1), 77-85頁) 及びWO 01/02853 A2に記載されている。もう一方の検定形式は、GP1bタンパク質が結合する、例えば、ラテックス粒子又はリポソーム(例えばKitaguchi, T. ら、Biochem Biophys Res Commun. 1999; 261(3):784-789頁)のような粒子支持相を使用している。このGP1b結合−粒子は、リストセチン及び活性VWFの存在下における凝集を意図したものである。
【0007】
上記で言及した方法の一つの欠点は、自然のままの又は組み換え法で発現したGP1bタンパク質の精製に通常は先行する、GP1b会合−固相の製造に時間がかかりそして費用が高くつくという点である。更に、少なくともこれらの検定の形式を遂行するためには、抗体、例えばGP1b抗体が使用可能となっていることが追加的に必要とされる。結局のところ、当該方法は複雑でありそして多くの特異的な試薬の調製が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、凝集検定において自然のままの又は固定された血小板の代替として使用することができ、そして可視範囲の波長において凝集反応の正確な光学的測定を可能とする方法を提供するという目的に基づいていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
自然のままの血小板を最初に超音波で処理しそして続いて固定する方法によって得られる血小板フラグメントは、凝集検定において血小板フラグメントとして使用することができる凝集能力を有することが判明した。
【0010】
血小板フラグメントを調製するための種々の方法は技術水準として既知のものである。血小板フラグメントはまた文献においては微小水胞(microvesicles)又は微小粒子(microparticles)とも称されている。血小板膜の機械的な製造としては、例えば、超音波処理、凍結/解凍又は窒素空洞法(nitrogen cavitation)が挙げられるが、大きさの異なった粒子しか得られていない(Authi, K.S:Preparation of highly purified human platelet plasma and intracellular membranes using high voltage free flow electrophoresis and methods to study Ca2+ regulation、第5章、Platelets - A Practical Approach, 1996, 編者 Steve P. Watson & Kalwant S. Authi, Oxford University Press, 英国及び Lee, D.H. & Blajchman, M.A.:Platelet Substitutes and Novel Methods of Platelet Preservation、第60章、Platelets, 2002, 編者Alan D. Michelson, Academic Press, Elsevier Science, 米国)。同一の大きさ及び同一表面特性を有する粒子が要求されるが故に、該調製物の不均一な組成は凝集検定における該血小板フラグメントの使用を有望なものとはしない。加えて、これら既知の方法は、多くの操作を含んでいるが故に、しばしば時間がかかりそして費用が高くつく。多くの場合、血小板の過剰な活性化及びさらに分解酵素による攻撃から血小板を保護するために、血小板は阻害物質と一緒にインキュベートされる。
【0011】
医薬品を目的とした血小板フラグメントの製造の一つの方法は、米国特許第5,185,160号に記載されている。この事例においては、血小板を最初に凍結及び解凍を繰り返して破壊し、そして最後に60℃で20時間インキュベートして、予想されるウイルス汚染を不活性化している。インキュベート中に生じる沈殿物は超音波処理により溶解させている。このように処理した該調製物を遠心分離にかけて得られた上澄液は薬剤として許容され得る血小板フラグメントを含んでいるが、これは凝固促進的特性を有するが故に、例えば出血疾患の患者の治療に使用することができる。
【0012】
本発明は、自然のままの血小板を最初に超音波で処理しそしてその超音波処理後に固定する、凝集能力を有する血小板フラグメントを製造するための方法に関する。
【0013】
用語「凝集能力を有する血小板フラグメント」とは、活性なVWFの存在下で凝集反応を起こすことができる血小板のフラグメントを意味する。ヒト血小板フラグメントの凝集能力は、例えば、血小板フラグメントをウシ血漿と混合して反応混合物とすることにより検知することができ、ウシ血漿はウシVWFの供給源として用いられる。好ましくは可視範囲の波長で測定する透過率の増加に伴う、当該反応混合物の透過率の増加は、凝集反応が起こったことそしてそれ故に血小板フラグメントの凝集能力を明白に指摘している。この凝集能力を検知するために考え得る別法としては、反応混合物を作成するために血小板フラグメントをヒト血漿及びリストセチンと混合することである。
【0014】
本発明の方法において出発物質として使用する血小板は、動物又はヒト起源のいずれであってもよい。自然のままの血小板は、例えば全血液又は血小板濃縮血漿からの沈降によって得ることができる。血小板は超音波処理前に、例えば燐酸−、TRIS−又はイミダゾール緩衝液のような緩衝液中で再懸濁することが好ましい。出発物質として使用する好適な血小板の懸濁液は、マイクロリットル当たり約0.5から2×106個の、殊に好ましくは約1×106個の血小板を含んでいる。
【0015】
血小板を再懸濁した緩衝液には、好ましくは抗凝固剤が含まれている。好ましい抗凝固剤としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸塩−クエン酸グルコース、酸性クエン酸グルコース、EDTA、EGTA、ヘパリン、ヘパリン誘導体、例えばホンダパリヌックス(fondaparinux)のような合成五糖類、又はヒルジンが挙げられる。抗凝固剤は緩衝液の成分である必要はない。それはまた血小板の懸濁液に別々に添加することができる。
【0016】
自然のままの無傷血小板のフラグメント化のための超音波処理は、好ましくは自然のままの血小板の懸濁液を十分に強い超音波に照射することによって行うことができる。これは例えば超音波プローブを用いた高強度の超音波でもって当該処理を適度に長い時間の照射によって行うことができる。この必要な強度及び時間は、使用するそれぞれの超音波発生装置及びその容量を用いて確かめることができる。好ましい超音波処理は、設定負荷サイクル:100%、出力調節:7のブランソン ソニファイアー(Branson Sonifier)250 (Branson Danbury, 米国) 超音波プローブを用いて行う超音波処理と同程度のものである。血小板又は血小板フラグメントは、超音波処理中及びその前後を通じて、例えば氷の水槽中に保管しておくなどして、継続的に保冷しておくことが好ましい。
【0017】
超音波処理の後に血小板フラグメントは固定される。この固定工程は超音波処理に続いて直ちに、即ち間を置かずに行った方が有利である。超音波処理した血小板フラグメントの固定は、好ましくは超音波処理した血小板フラグメントの懸濁液に架橋形成の固定剤を添加することにより行うことができる。殊に好適な固定剤の例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドが挙げられる。当該方法の好ましい実施例においては、ホルムアルデヒドを超音波処理した血小板フラグメント懸濁液当たりの最終濃度が1%となるように添加し、そしてこの懸濁液を約2から8℃で約6から16時間インキュベートしている。
【0018】
好ましい実施例においては、血小板の超音波処理及びそれに続く固定工程の両方とも、抗凝固剤の存在下で行っている。これは例えば上記に記載した超音波処理の前に血小板懸濁液に抗凝固剤を添加し、そして次いで超音波処理の後に洗浄工程なしで、固定剤を添加することで達成できる。
【0019】
他の好ましい実施例においては、血小板の超音波処理及びそれに続く固定工程の両方とも、血小板機能阻害物質の存在なしで行っている。血小板機能阻害物質は、好ましくは血小板懸濁液又は血小板フラグメント懸濁液には添加しないが、それには例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばアセチルサリチル酸)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、テオフィリン、カフェイン、ジピリダモール、ミルフィノン、シロスタミド、ザプリナスト)、cAMP レベルを増大する試薬 (例えば、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンI2、 プロスタサイクリン、アデノシン)、並びにADP−分解酵素 (例えば、アピラーゼ)が挙げられる。
【0020】
固定化の後に、固定剤は典型的には、例えば、好ましくは燐酸緩衝液を用いた透析により当該懸濁液から取り除く。透析は好ましくは当該懸濁液における固定剤の濃度が0.001%より低くなるまで行う。
【0021】
好ましい実施例においては、本発明により調製された血小板フラグメントの殊に有利な画分を、血小板フラグメント懸濁液の遠心分離によって濃縮している。この濃縮は血小板フラグメント懸濁液を、最初に1500gで10分間遠心分離し、そして得られた上澄液を第二回目の遠心分離で4000gで40分間、遠心分離することにより行っている。上澄液を除去し、そして沈殿している血小板フラグメントを緩衝液、好ましくは燐酸緩衝液に再懸濁する。この遠心分離工程は約20℃の温度で行うのが好ましい。
【0022】
凝集能力を有する血小板フラグメントを製造するための本発明の方法の更なる実施例では、固定化の後にGP1b受容体が血小板フラグメントに結合する方法の更なる工程が含まれている。GP1bは、血小板膜の内在性の構成要素である糖タンパク質であり、そしてそれはVWFを血小板の表面に結合させることに関与している。固定された血小板フラグメントに結合しているGP1bタンパク質は、自然のままのGP1bタンパク質、即ち、例えば血漿のような天然起源から単離されたもの、又は組換え法で調製されたGP1bタンパク質である。本発明の文脈の中で、用語「GP1bタンパク質」には、完全長の自然のままのタンパク質又は組換えタンパク質及びそれらのフラグメントの両方が含まれ、殊に、アミノ酸残基1−290 (GP1bαサブユニット)を含んでいるN−末端フラグメントが含まれる。
【0023】
GP1bタンパク質を血小板フラグメントに結合するためには、例えばGP1bタンパク質が結合していてそしてタンパク質又は脂質のような血小板表面エピトープに結合する、一つ又はそれ以上の抗体を用いることが可能である。GP1bに結合している抗体を結合するために好適な血小板表面エピトープには、例えば、GPIIb、GPIIIa、GPIa、GPVI、ホスファチジルコリン及び/又はホスファチジルセリンがある。そのGP1b部分がまだVWFに結合する能力を有しているGP1b結合−抗体を使用することが好ましい。GP1bを好適な抗体に結合するためには既知の数多くの方法を使用することができる。同時に、抗体−GP1b複合体を血小板フラグメントの表面に安定的に結合するためには、血小板フラグメント表面のタンパク質又は他の分子と架橋を形成することが可能な種々の既知の方法を使用することができる。
【0024】
GP1bタンパク質はまた血小板フラグメントに化学的に結合することもできるし、又はGP1bタンパク質とフラグメント表面の分子との間に、例えばタンパク質のような仲介分子を介して連結を形成することもできる。例えば、GP1bタンパク質はホスファチジルセリンと結合しているアネキシンVに結合することができる。ホスファチジルセリンは殊に活性化された血小板及びそれから形成されたフラグメントの表面に見出される。仲介分子の更なる例としては、例えば、ビススルホスクシンイミジル スベレート(ポリエチレングリコール5)、 ビス−N−スクシンイミジル ペンタエチレン グリコール エステル、及びタンパク質が共に結合することができるその他の多くの分子、のような架橋形成分子が当業者に知られている。仲介分子の使用によりGP1b受容体を表面からかなり離して置くことができ、それ故にVWFが容易に結合できるようにするという有利な効果を有する。
【0025】
本発明はまた、本発明の方法によって製造された凝集能力を有する血小板フラグメントの、試料中のVWF活性を測定する方法における使用に関する。
【0026】
本発明はまた、試料を本発明の方法によって製造された凝集能力を有する血小板フラグメントと混合し、そして反応混合物中の血小板フラグメントの凝集反応を測定する、試料中のVWF活性を測定する方法に関する。この目的のために、当該試料、好ましくは血漿試料を、好ましくは緩衝液に懸濁してある血小板フラグメントと混合することによって反応混合物を作成する。リストセチンを反応混合物に添加することにより、リストセチン−依存性のVWF活性を測定することもさらに可能となる。
【0027】
試料中のVWF活性を測定する本発明の方法の殊に好ましい実施例においては、塩化ナトリウム、好ましくはNaCl溶液の形態で、試料と混合する直前に血小板フラグメントに添加する。NaCl添加後の血小板フラグメント懸濁液中のNaCl濃度は、好ましくは5g/l未満であり、殊に好ましくは3g/l未満である。
【0028】
試料中のVWF活性を測定する本発明の方法の更に有利な実施例においては、反応混合物を継続的に混合しない。驚くべきことに、例えば、検定混合物を撹拌し又は振とうすることによって、測定の記録中の反応混合物の継続的な混合を必要とはしないが、その理由は、凝集反応が反応混合物の継続的な混合なしでもVWF活性を定量化することを可能としているからである。
【0029】
反応混合物における血小板フラグメントの凝集反応は、好ましくは凝集反応の作用として変化する反応混合物の光学的特性を測定することによって測定することができる。殊に好ましくは、透過率の減少又は光散乱の増大を測定することができる。
【実施例】
【0030】
実施例1:凝集能力を有する血小板フラグメントの製造
自然のままの血小板は、試料管数個中のヒト全血液からの血小板アフェレーシス濃縮液を、予備冷却した遠心分離機中4℃で10分間1500gでブレーキ制動なしの遠心分離によって作成した。該上澄液を除去し、そして沈殿物を、冷却したクエン酸緩衝液(リン酸水素二ナトリウム9.07g/l、リン酸二水素カリウム1.65g/l、クエン酸ナトリウム0.38%、NaCl 1.2g/l)の30mlごとに分注した。再懸濁及びホモジェネートの作成は、ウルトラ−ツラックス(Ultra-Turrax)分散器(Janke und Kunkel GmbH, シュタオフェン, ドイツ)を用いて行った(13,500rpmで10秒間)。次いでクエン酸緩衝液で希釈することにより、血小板数を1,000,000血小板/μlに調整した。
【0031】
該血小板懸濁液を氷浴中で30分間インキュベートした。次いで20ml容量を、氷で15分間継続的に冷却した超音波プローブを備えたブランソン(Branson)超音波発生装置250 (Branson, ダンベリー, 米国) で、設定負荷サイクル:100%、出力調節:7の仕様で処理した。当該処理後直ちに、ホルムアルデヒドを最終濃度が1%となるように添加した。2〜8℃で一晩(約14時間)の固定化後に、緩衝液(リン酸水素二ナトリウム9.07g/l、リン酸二水素カリウム1.65g/l、NaCl 1.2g/l)を用いて、ホルムアルデヒドの濃度が0.001%より低くなるまで透析した。
【0032】
殊に有利な画分を濃縮するために、最初にフラグメント懸濁液をウルトラ−ツラックス分散器を用いてホモジェナイズし、そして次いで20ml容量を20℃で10分間1500gで遠心分離した。該上澄液を取り出し、そして20℃で40分間4000gで遠心分離した。沈殿物をリン酸緩衝液(リン酸水素二ナトリウム0.907g/l、リン酸二水素カリウム0.165g/l)の1ml容量に分注し、そして当該沈殿物が底から完全に剥がれるまで振とうした。このように沈殿物を再懸濁したもの数個分を14mlのプラスチック製の管に一緒に集め、そしてウルトラ−ツラックス分散器を用いて5から10秒間、毎分13,500回数でホモジェナイズした。
【0033】
VWF活性を測定するために、使用する直前にNaClを添加して、フラグメント懸濁液のNaCl濃度を2g/lとした。
【0034】
実施例2:本発明に従って製造した血小板フラグメントを用いたウシ血漿中のVWF活性の測定
以下の工程をBCT(登録商標)(Dade Behring Marburg GmbH,マールブルク,ドイツ) 凝固分析機を用いて自動的に行った。
【0035】
ウシの血小板欠乏−クエン酸塩加の血漿50μlを、実施例1のように製造した血小板フラグメント懸濁液100μlと混合して反応混合物を作成し、そして37℃で15秒間インキュベートした。
【0036】
測定中は該反応混合物を混合することなく、該反応混合物の620nmにおける透過率を90秒間にわたって測定した。この方法で明らかとなった凝固反応の動態を透過率の変化(mE/分)を測定するために使用し、そして透過率の最大変化(透過率増加のVmax)が見出された。
【0037】
較正用プロットは、一連の希釈化においてウシ血漿 (VWF 活性=100%) をVWF−欠陥血漿で希釈して作成した。希釈無しの正常な血漿及び異なるVWF活性を有する種々の希釈化のものを、上記に記載した方法によって分析した。図1は、このようにして構築した照合プロットを表示している。本発明の血小板フラグメント凝集反応の動態は試料のVWF活性に比例している。
【0038】
比較実験においては、同様のウシ血漿希釈化を、全血小板を試料と混合する従来の凝集検定で検定している。図2から実証されるように、本発明に係る血小板フラグメントを用いた新規な検定方法の結果は、従来の方法からの検定結果と極めてよく相関していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】照合曲線における直線的増大は、本発明の血小板フラグメントの凝集反応の作用がウシ血漿中のVWF活性に比例していることを表示している。
【図2】検定結果(VWF活性)の相関関係は、同一のウシ血漿試料を用いて、従来の血小板検定及び新規な血小板フラグメント検定により求めている。相関係数R2=0.9879により、当該2つの検定における検定結果の間には直線的な相関関係があることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然のままの血小板を最初に超音波で処理しそして次いで固定することを含む、凝集能力を有する血小板フラグメントの製造方法。
【請求項2】
抗凝集剤の存在下で血小板を超音波で処理しそして固定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血小板を超音波で処理しそして血小板機能阻害物質の存在なしで固定する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
血小板を超音波処理後に、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドの群からの固定剤により処理して固定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
固定化の後にGP1b受容体タンパク質が血小板フラグメントに結合している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により製造された凝集能力を有する血小板フラグメントの、試料中のVWF活性を測定する方法における使用。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により製造された凝集能力を有する血小板フラグメントと試料とを混合し、そしてその反応混合物中の血小板フラグメントの凝集反応を測定することを含む、試料中のVWF活性を測定する方法。
【請求項8】
リストセチンを反応混合物に添加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
血小板フラグメントが、塩化ナトリウムを5g/l未満、好ましくは3g/l未満の濃度で含んでいる懸濁液の形態で使用される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
反応混合物は連続的には混合されない、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応混合物中の血小板フラグメントの凝集反応が、透過率の減少を測定することによって測定される、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−83048(P2008−83048A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−244631(P2007−244631)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(398032751)デイド・ベーリング・マルブルク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (36)
【Fターム(参考)】