説明

処方せん薬の転用を防止するための方法およびシステム

本発明は、処方せん医薬を監視するためのシステムおよび方法を提供する。特に、処方された投与計画への患者のコンプライアンスを監視するためおよび処方せん薬の出所を監視するためのシステムおよび方法が提供される。本発明は中央コンピュータおよび可搬装置を提供し、可搬装置は標的マーカーを検出するためのセンサーを少なくとも一つは含む。本発明の標的マーカーは、特定の処方薬剤の存在を表すか、または薬剤の適正な出所を同定する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年9月20日に出願された同時係属中の米国特許出願第10/945,732号の一部継続出願であり、前記特許出願は参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
ニセ薬は公衆衛生上および安全上の深刻な問題である。薬物供給に持ち込まれると、ニセ薬は、何百万人とはいわないまでも何千人もの人々に、例えば毒作用、意図しない作用、および無効な処置などの重大な健康リスクを与えうる。ニセ薬は不活性な成分だけを含有するか、間違った成分を含有するか、不適正な投与量を含有するか、または危険な効力過少成分もしくは効力過剰成分を含有する場合さえあるので、患者は、少なくとも治療失敗のリスクに、そして場合よっては致命的結果にさえつながる健康問題の悪化に、直面する。
【0003】
合法医薬品の流通は卸売産業に依存している。一次卸売業者は薬物を製造者から直接購入し、次にその製品を薬局、病院、施設、その他の調剤者に直接販売するか、二次卸売業者に販売する。米国では、流通する処方せん薬の90%を三つの一次卸売業者が占めている。時折、(例えば薬物供給の一時的過剰などによって)低コストの薬物を入手できる場合には、一次卸売業者が二次卸売業者から購入することもある。二次卸売業者は通常は取扱量が少なく、在庫の回転率も高い。しかし場合によっては、一部の小規模卸売業者が、合法な製造者によって提供されたものではないかもしれない薬物を入手することにより、承知の上で、または気づかずに、より高いリスクを冒す場合もある。このようにしてニセ薬は、二次卸売市場を通して薬物流通供給チェーンに入る場合があり、この際、最終使用者に届くまでに薬物は数回の取引を経ることがある。
【0004】
例えば、無認可薬局または無規制薬局は、承知の上で、または気づかずに、非承認薬を流通させる場合がある。加えて、ニセ薬は、他国からの偽装輸入品(例えばグレーマーケット品)によって、またはインターネットを介した薬物の購入によって、市場に場合もある。
【0005】
もう一つの深刻な問題は、非合法用途への合法薬物の転用である(処方せん薬転用とも呼ばれている)。米国麻薬取締局は、処方せん薬転用は米国における全薬物問題の約30%を占めると報告している。他の一般的乱用薬物(例えばマリファナ、ヘロイン)とは異なり、処方せん薬は合法的ルートで入手することができる。これらの薬物は物質乱用者にとって魅力的である。なぜなら、それらは合法的に製造され、医師によって処方されて、安全であるかのような錯覚を与えるからである。いくつかの例では、多くの処方せん薬の乱用に伴う嗜癖および離脱が、違法薬物に伴うものよりも有害である場合もある。
【0006】
最も一般的な転用医薬にはオピオイド(例えばOxyContin、Darvon、Vicodin、Dilaudid、Demerol、およびLomotil)、脳神経系抑制薬(例えばMebaral、Nembutal、Valium、Librium、Xanax、Halcion、およびProSom)、ならびに興奮薬(例えばDexedrine、Ritalin、およびMeridia)がある。これらの医薬は合法な医学的用途を持つが、娯楽的使用に違法に転用されることも多く、そのせいで連邦政府および諸州は、取締り、健康管理、社会福祉事業、および訴訟費用などの領域に、何十億ドルも費やしている。
【0007】
合法処方せん薬の転用は、典型的には、(1)医者のはしご、(2)違法なインターネット薬局、(3)薬物窃盗、(4)処方せん偽造、および(5)医師による非合法処方せんによって起こる。医者のはしごは、違法使用のために処方せん薬を入手する方法として最も好まれているものの一つである。この場合、典型的には、一個人が、処方どおりに薬物を服用するのではなくて、多様な処方せん薬を入手し、それを違法に販売する(Pilar Kraman「Drug Abuse in America - Prescription Drug Diversion」Trends Alert, The Council of State Governments(April 2004)(非特許文献1)参照)。
【0008】
例えば、麻酔薬およびベンゾジアゼピン類は、疼痛がひどい患者(例えば慢性の絶え間ない疼痛をもたらす癌その他の状態であると診断された患者)には高用量で処方される。そのような患者は、彼らの疾患の経過が長引くために、しばしばこれらの薬物に対して耐性を生じ、彼らの疼痛を抑えるには薬物投与量の段階的増加が必要になる。これらの個人はしばしば行動能力を失い、家族、介護者などにとって、処方薬剤の一部を違法な販売または使用のために転用することは、比較的容易である。
【0009】
違法市場への転用を防止しつつ合法的医学状態への処方せん薬剤の利用可能性を保証するための現在の方法には、(1)処方せん監視プログラム、(2)健康管理専門家のための薬物教育、および(3)窃盗/詐欺規制が含まれる。現在の処方せん薬監視プログラムは複数処方せんまたは電送の使用を必要とする。
【0010】
複数処方せんプログラムの場合、医師は、通し番号を含む州発行の複写式処方せん帳を使用する必要がある。その処方せんに従って調剤が行なわれた後に、一枚の写しが州規制当局に送られる。電送プログラムは複数処方せんプログラムに基づき、そのようなプログラムでは、薬剤師が、処方せん情報を指定された州当局にコンピュータで伝送する必要がある。残念ながら、これらのプログラムは、医者が一定の規制薬物の処方を躊躇または中止した場合に、患者管理に影響を及ぼしうる。その上、医師にも薬剤師にも、処方された投与計画への患者のコンプライアンスを監視する手段がない。結局、そのような監視プログラムでは、ニセ薬の捕捉は可能にならない。
【0011】
したがって、薬局から患者への合法的薬物流通を保証すると共に、処方された投与計画への患者のコンプライアンスを監視することができる、有効で使い勝手のよいシステムが必要とされている。
【0012】
【非特許文献1】Pilar Kraman「Drug Abuse in America - Prescription Drug Diversion」Trends Alert, The Council of State Governments(April 2004)
【発明の開示】
【0013】
概要
本発明の一つの目的は、処方どおりに薬剤を服用することに関して患者のコンプライアンスを監視するためのシステムおよび方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、薬剤の出所を照合するためのシステムおよび方法を提供することである。したがって本発明のシステムは、中央コンピュータと、あるマーカーに特異的な少なくとも一つのセンサーを装備した可搬装置とを含む。例えば、本発明の可搬装置には、処方薬剤を代表するマーカーに特異的な少なくとも一つもセンサーおよび/または薬剤の適正な出所を表すマーカーに特異的な少なくとも一つのセンサーを装備することができる。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、可搬装置が、指紋法または網膜走査技術など、多数の公知同定システムを含む。本発明の可搬装置は、(例えば患者から、および/または処方せん薬剤容器のヘッドスペースから)試料を受け取るための手段および処理手段も含むことができるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、可搬装置は、特別に処方された薬剤のマーカーを、呼気中に検出することができる。処理手段には、センサーによって提供されるデータを受け取るための手段と、ある動作/イベント(例えば本発明の可搬装置に提供された生物学的試料)が設定可能な時間間隔内に起こったかどうかを決定するための手段が含まれる。
【0015】
可搬装置の処理手段は、ある動作が起こったかどうか(薬剤が処方どおりに服用されているかどうか)に関して、情報を、薬剤師または他の監視人員に自動的に中継するための無線または標準通信技術も包含することができる。または、可搬装置はセンサーからのデータを記憶するための手段を含むことができ、この場合、そのデータは、その処方せんに従って再調剤が行なわれる時に、本発明の中央コンピュータにダウンロードすることができる。
【0016】
本発明の中央コンピュータは、(1)調剤された薬剤および対応する処方せんを追跡するための手段、(2)薬剤が処方どおりに服用されているかどうかに関して、可搬装置からの入力を受け取るための手段、および(3)薬剤が処方どおりに服用されていることまたは処方どおりに服用されていないことを薬剤師または他のシステム監視人員に通知するための手段を含むことができる。
【0017】
ある使用方法では、処方薬剤および可搬装置が、薬剤師から患者に与えられると考えられる。患者は、薬剤の各服用後に、指定された時間間隔で、体液の試料を装置に提供すると考えられる。好ましくは、患者は装置内に息を吐き出す。本発明によれば、体液試料が可搬装置のセンサーに適用される。標的マーカーの検出は患者における薬剤の存在の通知になり、その結果として、ある薬物が処方どおりに服用されたかどうかの査定を可能にする。もう一つの態様では、体液試料中の標的マーカーの濃度を定量することができる。
【0018】
次に、センサーからの情報は、可搬装置内の処理手段によって処理され、次にそれを、薬剤が患者によって服用されていること、そしてまた、以前の服用量が処方どおりに服用されたことを、体液(例えば呼気)試料中の標的マーカーの濃度に基づいて証拠づけるために、本発明の中央コンピュータに提供することができる。
【0019】
もう一つの使用方法では、ニセ薬剤から真の(合法的)薬剤を検出する際に使用するための特定揮発性マーカー(または「タガント」)を使って、薬剤を製造する。具体的には、薬剤由来のタガントは、薬剤容器のヘッドスペース中に検出することができるだろう。薬剤師が薬剤の瓶を初めて開封する時に、瓶のヘッドスペースが、タガントを検出するために、本発明の可搬装置で試料採取されるだろう。可搬装置のセンサーが適正なタガントを(または、さらに言えば適切な濃度の適正なタガントを)検出しない場合には、薬剤師はその薬剤が偽物であることを知り、薬剤流通を遮断、防止すると共に、偽物と疑われる薬物を関係当局に通報するだろう。
【0020】
関連する一態様では、容器内の薬物が製造者によって製造された本来の薬物であるかどうかを同定する際に使用するためのタガントを含有する薬剤容器を製造することができる。例えば、本発明の可搬装置を使ってすぐに検出できるであろうタガントを(例えば蓋に、容器内部に)含む薬剤容器を製造することができる。または、タガントを含む包装資材(例えば詰め綿、乾燥剤など)を製造し、それをニセ薬を同定する際に使用するための薬剤容器に入れることもできる。
【0021】
ある使用方法では、薬剤容器中に存在すべきタガントに関する情報が、薬剤師に提供されるだろう。タガントに関する情報は、例えば符号化された送り状、薬剤容器上の走査可能なバーコード、ファクシミリ、音声メッセージ、電子メッセージ、または郵便メッセージを含む任意の公知通信方法を使って薬剤師に提供することができる。必要に応じて、いくつかの態様は、例えば暗号化されたインターネット通信などといったセキュアな通信方法を含む。薬剤師が薬剤容器を開封する時に、本発明の可搬装置を使って容器のヘッドスペースが試料採取されるだろう。可搬装置のセンサーが適正なタガントを(そして場合によっては適正なタガント濃度を)検出しない場合には、薬剤師はその薬剤が偽物であることを知り、薬剤流通を遮断、防止すると共に、偽物と疑われる薬物を関係当局に通報するだろう。
【0022】
本発明によれば、本発明のセンサーは、バイオ検出器/バイオセンサーなどといった周知のセンサーを含む。一般に利用可能なバイオ検出器またはバイオセンサーは、関心対象の化学的および/または生物学的化合物(例えば本発明のマーカー)に対して高い特異性および感度を持つ天然化合物および/または合成化合物に基づく。本発明の好適なバイオ検出器またはバイオセンサーには、例えば抗体、酵素、タンパク質、受容体、ペプチド、核酸、膜、全および/または生細胞、ならびにアプタマーに基づくものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明に従って使用されることが考えられるセンサーの例には、導電性ポリマーセンサー、電気化学センサー、ガスクロマトグラフィー/質量分析センサー、赤外分光法、微小重量測定センサー、SAWセンサーなどがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0023】
本発明の利点は非常に多い。何よりもまず、本発明は、ある患者が処方された薬剤のクールを守ったかどうかを患者の体液の試料に基づいて容易に査定(例えばポイントオブケア査定)することができる方法を、健康管理人員に提供する。第2に、本発明は安価であり、医学的応用範囲が広い(例えば、医師が処置投与計画の有効性を容易に査定できる、より正確な医学的処置)。さらに本発明は、取締り/公衆衛生および安全性用途(例えばニセおよび/または転用処方せん薬の押収)に役立ちうる。
【0024】
詳細な開示
本発明は、概して、処方せん薬の効率的で適時かつ正確な監視を対象とする。本発明のいくつかの態様では、患者が処方された投与計画を遵守しているかどうかを査定するため、および調剤された薬剤を追跡するために、患者の体液の試料を分析するためのシステムおよび方法が提供される。別の態様では、本発明のシステムおよび方法を使って、処方せん薬の出所を決定することができる。
【0025】
本発明のシステムおよび方法は、一般に利用可能なセンサーおよびコンピュータ技術の使用に基づく。本発明によれば、標的マーカーの存在を検出するために、体液の試料および/または処方せん薬容器のヘッドスペースにセンサー技術を適用する。標的マーカーに関する情報は、(1)調剤された薬剤を追跡するため、(2)処方された投与計画を遵守することに関して患者のコンプライアンスを監視するため、および(3)薬物がニセまたは転用処方せん薬でないことを保証するべく処方せん薬の出所を監視するために使用される。
【0026】
定義
別段の表示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される以下の用語は下記の意味を持つ。
【0027】
本明細書において使用する用語「体液」は患者から得られる分子の混合物を指す。体液には、呼気、全血、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊膜液、膣液、腺液、喀痰、糞便、汗、粘液、および脳脊髄液が包含されるが、これらに限定されるわけではない。体液には、前述した全ての溶液の実験的に分離された画分、またはホモジナイズされた固形物を含有する混合物、例えば糞便、組織および生検試料も包含される。
【0028】
本明細書において使用する用語「マーカー」は、その物理的または化学的性質を利用して検出することができる分子または化合物を指す。本発明によれば、マーカーは薬剤そのもの、薬剤の代謝産物、薬剤を代謝する際に生成される内在性副生成物、または揮発性マーカーおよび揮発性マーカーの代謝産物であることができる。いくつかの態様では、揮発性マーカーが薬剤に取付けられ、その薬剤が代謝された後に、揮発性マーカーが放出される。別の態様では、薬物の出所を確認する際に使用するために、特定の揮発性マーカーまたは「タガント」が、処方せん薬容器に加えられる。標的マーカーには、リアルタイム査定用に可搬装置を使って検出するための放射標識された揮発性マーカーを含めることもできる。
【0029】
本明細書にいう「患者」とは、本発明による体液試料収集の対象となる、哺乳動物を含む生物をいう。本明細書に開示する診断システムおよび診断方法の恩典を受ける哺乳動物種には、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル、ならびに家畜(ペットなど)、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
センサー技術
本発明では、体液試料および/または処方せん薬容器のヘッドスペースにおけるマーカーの存在を検出するために、センサー技術を使用する。本発明のシステムおよび方法での使用が考えられるセンサーには、物理センサー、免疫アッセイ、免疫センサー、およびバイオセンサー技術が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
免疫アッセイ技術および免疫センサー技術は、複合体形成剤(例えば抗体、アプタマー、タンパク質、または分子インプリントポリマー)による分子認識の特異性に基づいて、免疫アッセイの場合は溶液中で、また免疫センサーの場合は固体界面上で、安定な複合体を形成させる。どちらの技術でも、マーカーの測定および安定複合体の発現に関する特異性は、複合体形成剤の適用に依存する。したがって、免疫グロブリン(抗体断片およびキメラ抗体を含む)に関するタンパク質工学、代替結合構成要素(例えばアプタマー)または代替結合構造(例えば分子インプリント法)による抗体の代用、およびレポーター分子への融合タンパク質のカップリングにおける新しい成果は、もし利用可能であるなら、免疫センサー技術または免疫アッセイ技術に適用することができるだろう。
【0032】
バイオセンサー技術は、標的マーカーとの生物特異的相互作用を目的とする固体表面への生物学的素子の組込みに基づく。生物学的素子は、生体認識に適した任意の分子、例えば酵素、受容体、ペプチド、レクチン、特異的結合タンパク質、核酸(一本鎖DNAを含む)、膜、および生細胞など(ただしこれらに限定されるわけではない)を含むことができる。いくつかの例ではバイオセンサー技術と免疫センサー技術とが部分的に重複する。例えば生物学的素子は抗体または抗体関連物質を含むことができる。
【0033】
物理センサー技術またはバイオセンサーに基づくセンサー技術であって本発明に利用することができるセンサー装置はいくつかある。それらには、例えば弾性表面波(surface acoustic wave)(SAW)センサー(例えば米国特許第4,312,228号および第4,895,017号、ならびにGroves W.A. et al.「Analyzing organic vapors in exhaled breath using surface acoustic wave sensor array with preconcentration: Selection and characterization of the preconcentrator adsorbent」Analytica Chimica Acta, 371:131-143(1988)に開示されているもの);本発明の作用に適用することができる化学選択的被覆を用いる当技術分野において公知の水晶微量天秤センサー、金属酸化物センサー、化学センサー(例えばバルク音波(bulk acoustic wave)(BAW)装置、プレート音波(plate acoustic wave)装置、くし形微小電極(IME)装置、光導波路(OW)装置、電気化学センサー、および導電性センサー);流体センサー技術(例えば「人工鼻」「電子鼻」もしくは「電子舌」と呼ばれる市販の装置、または米国特許第5,945,069号、第5,918,257号、第5,891,398号、第5,830,412号、第5,783,154号、第5,756,879号、第5,605,612号、第5,252,292号、第5,145,645号、第5,071,770号、第5,034,192号、第4,938,928号、および第4,992,244号、ならびに米国特許出願第2001/0050228号に開示されているもの);半導体ガスセンサー;質量分析計;IR、UV、可視、または蛍光の分光光度計;および導電性ポリマー ガスセンサー(「ポリマー型」)、アプタマーバイオセンサー、増幅蛍光ポリマー(amplifying fluorescent polymer:AFP)センサー、分子インプリントポリマーセンサーを備える器具;微小重量測定センサー;表面共鳴センサー;およびマイクロカンチレバーセンサーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の方法を実施する際に利用することができるさまざまなセンサー技術の例を以下に記載する。
【0034】
微小重力測定センサー
微小重量測定センサーは、特定の物質または構造類似体の群に対して選択的に前もって決定されたポリマー系吸収剤または生体分子系吸収剤の製造に基づく。吸収剤と標的マーカーとの結合によって誘発される質量変化の直接測定は、センサーの基材における音響すべり波(acoustic shear wave)の伝播によって観察することができる。音響波の位相および速度は、センサー表面への標的マーカーの特異的吸着によって左右される。石英(SiO2)または酸化亜鉛(ZnO)などの圧電材料は、振動場で励起されると、特定の超音波周波数で機械的に共鳴する。電磁エネルギーが音響エネルギーに変換されることにより、圧電気が異方性結晶構造を持つ材料の電気分極に関連づけられる。一般に、振動法は音響発振を監視するために用いられる。具体的には、振動法では、共鳴センサーの直列共鳴振動数を測定する。微小重量測定センサーに由来するタイプのセンサーには、厚みすべり(thickness-shear)モード(TSM)を応用する水晶微量天秤(QCM)装置および弾性表面波(SAW)検出原理を応用する装置が含まれる。微小重量測定センサーに由来する他の装置には、たわみ板波(flexural plate wave:FPW)、すべり水平音響板(shear horizontal acoustic plate:SH-APM)、表面横波(surface transverse wave:STW)およびシン・ロッド音響波(thin-rod acoustic wave:TRAW)が含まれる。
【0035】
弾性表面波センサー(SAW)
弾性表面波(SAW)センサーは、表面活性に基づいて弾性表面波を生成し検出する電極を使って構築される。弾性表面波は、表面にその最大振幅を持ち、そのエネルギーが15〜20波長の表面内にほぼ全て含有される波である。振幅は表面において最大であるので、そのような装置は表面感度が極めて高い。
【0036】
SAW化学センサーは、この表面感度を利用して、センサーとして機能する。特定の化合物に対する特異性を増加させるために、SAW装置はしばしば、装置の周波数および挿入損に予測可能な再現性のある形で影響を及ぼすであろう薄いポリマー薄膜で被覆される。センサーアレイ中の各センサーは異なるポリマーで被覆され、ポリマー被覆の数およびタイプは、検出すべき化学物質に基づいて選択される。次に、ポリマー被覆を持つ装置を、そのポリマー材料に吸収される化学物質蒸気にさらすと、装置の周波数および挿入損は、さらに変化するだろう。装置が化学センサーとして機能することを可能にするのは、この最終変化である。
【0037】
いくつかのSAW装置をそれぞれ異なるポリマー材料で被覆した場合、与えられた化学物質蒸気に対する応答は、装置ごとに異なるだろう。ポリマー薄膜は通常、それぞれがさまざまな有機化学物質クラス(すなわち炭化水素、アルコール、ケトン、酸素化物、塩素化物、および窒素化物)に対して異なる化学親和性を持つように選択される。ポリマー薄膜が適正に選択された場合、関心対象の各化学物質蒸気は、その装置セットに対してユニークな総合的作用を持つだろう。SAW化学センサーは、極端に軽く揮発性の高いヘキサンから極端に重く揮発性の低い半揮発性化合物に至る有機化合物の範囲で役立つ。
【0038】
試料をアレイ内に運び、アレイを通過させるために、モーター、ポンプおよびバルブを使用する。蒸気濃度が低い場合は、アレイの前に化学前濃縮器を使用するという選択肢を設けることにより、システムの感度を向上させることができる。動作時には、前濃縮器がある期間にわたって試験蒸気を吸収した後、加熱されて、はるかに短い時間枠でその蒸気を放出することにより、アレイにおけるその蒸気の有効濃度を増加させる。SAWシステムでは何らかのタイプの駆動および検出電子機器をアレイに使用する。SAWシステムのシークエンスを制御し、アレイからのデータを解釈し分析するための計算能力を与えるために、オンボードマイクロプロセッサを使用する。
【0039】
SAWセンサーは手頃な価格であり(200ドル未満)、良好な感度(数十ppm)と極めて良好な選択性とを併せ持つ。また、持ち運び可能であり、頑強であり、消費電力もごくわずかである。安定所要時間は2分未満であり、ほとんどの場合、分析に要する時間は1分未満である。通例、高精度定量用途には使用されないので、較正は必要ない。SAWセンサーは経時的にドリフトせず、動作寿命が長く(5年超)、貯蔵寿命に公知の問題はない。湿気の影響を受けやすいが、これは熱脱着型濃縮器および処理アルゴリズムの使用によって対処される。
【0040】
厚みすべりモードセンサー(TSM)
TSMセンサーはATカット圧電性結晶円板(石英は生物学的流体中で化学的に安定であり、極端な温度に対して耐性を持つので、ほとんどの場合、石英製である)と、その円板の相対する面に取付けられた二つの電極(好ましくは金属)とからなる。電極は振動電場を印加する。一般にTSMセンサー装置は5〜20MHzの範囲で作動させる。利点は、化学的に不活性であることの他に、装置が低コストであること、および量産された石英円板が信頼できる品質を持つことである。
【0041】
導電性ポリマー
導電性ポリマーセンサーには、短い応答時間、低コスト、ならびに良好な感度および選択性が見込まれる。この技術は概念的に比較的単純である。炭素などの導電性材料を特定の非導電性ポリマーに均一に配合し、酸化アルミニウム基材上に薄い薄膜として堆積させる。その薄膜は2本の電気リード線を横切るように設置されて、化学抵抗器(chemoresistor)を作り出す。ポリマーをさまざまな化学物質蒸気にさらすと、ポリマーが膨張して炭素粒子間の距離が増加し、それによって抵抗が増加する。ポリマーマトリックスは、分析物蒸気が薄膜中に吸収される(その程度は分析物の分配係数によって決まる)ことにより、膨潤する。分配係数は、指定された温度における蒸気相と凝縮相の間の分析物の平衡分布を定義する。個々の検出器素子は、ベースラインノイズを上回る顕著な応答を引き起こすために、分析物の最小吸収量を必要とする。異なる蒸気に対する選択性は、ポリマーの化学組成を変化させることによって達成される。これにより、各センサーを、特定の化学物質蒸気に適応させることができる。したがって、ほとんどの応用例では、選択性を改善するために、直交応答センサー(orthogonal responding sensors)のアレイが必要になる。関心対象の化学物質蒸気を正しく同定するには、アレイ中のセンサー数にかかわらず、それらからの情報をパターン認識ソフトウェアで処理しなければならない。感度濃度(sensitivity concentration)は良いと言われている(数十ppm)。この技術は可搬性が高く(小さく、消費電力が少ない)、応答時間が比較的短く(1分未満)、低コストであり、堅牢で信頼性は高いはずである。
【0042】
電気化学センサー
電気化学センサーは、感知素子上での標的マーカーの化学的相互作用が引き起こす感知素子の出力電圧の変化を測定する。いくつかの電気化学センサーは変換器原理に基づく。例えばいくつかの電気化学センサーは、試料とセンサー表面との間に電荷分離を生成するイオン選択膜を含むイオン選択電極を使用する。別の電気化学センサーは、複合体形成剤である表面として電極を単独で使用し、この場合は電極電位の変化が標的マーカーの濃度と関係する。電気化学センサーのさらなる例は、いわゆるソース電極とドレイン電極の間の金属ゲート上に蓄積された電極表面の電荷を監視するための半導体技術に基づく。表面電位は標的マーカー濃度と共に変動する。
【0043】
さらなる電気化学センサー装置には、電流測定型、導電率測定型、および容量型免疫センサーが含まれる。電流測定型免疫センサーは一定電圧下で電気化学反応によって生成する電流を測定するように設計される。一般に、感知電極における標的マーカーの電気化学反応には、そのままで、または酵素反応の生成物として、電気化学的に活性なラベルが必要である。電流測定型免疫センサーには、酸素電極およびH2O2電極を含む数多くの市販電極を使用することができる。
【0044】
容量型免疫センサーは、一定電圧で溶液中の電気伝導率の変化を測定するセンサーベース変換器であり、この場合、導電率の変化はイオンを特異的に生成または消費する生化学的酵素反応によって引き起こされる。静電容量変化は、生物活性素子が一対の金属電極(例えば金または白金電極)上に固定化された電気化学システムを使って測定される。
【0045】
導電率測定型免疫センサーも、表面導電率の変化を測定するセンサー系変換器である。容量型免疫センサーの場合と同様に、生物活性素子が電極の表面に固定化される。生物活性素子が標的マーカーと相互作用すると、電極間で導電率の低下が起こる。
【0046】
電気化学センサーは低百万分率濃度を検出するのに非常に適している。また、それらは堅牢であり、電力をほとんど消費せず、線形であり、著しい支援電子機器または蒸気の取扱(ポンプ、バルブなど)を必要としない。コストは中くらいであり(50ドル〜少量で200ドル)、サイズは小さい。
【0047】
ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)
ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)は実際には二つの技術の組み合わせである。一方の技術は化学構成要素を分離し(GC)、他方はそれらを検出する(MS)。技術的には、ガスクロマトグラフィーは、2またはそれ以上の化合物が二つの相(すなわち移動相および固定相)の間に差別的に分布することに基づく、2またはそれ以上の化合物の物理的分離である。移動相は、固定相で被覆したカラム(分離はここで起こる)を通して気化試料を移動させるキャリアーガスである。分離された試料構成要素がカラムから溶出するときに、検出器がカラム溶出物を電気シグナルに変換し、それが測定され、記録される。シグナルはクロマトグラムプロット中にピークとして記録される。クロマトグラフピークは、その対応する保持時間から同定することができる。保持時間は、試料注入時からピーク極大時まで測定され、他の試料構成要素の存在には左右されない。保持時間は、選択したカラムおよび構成要素に依存して、数秒〜数時間の範囲に及びうる。ピークの高さは試料混合物中の構成要素の濃度に関係する。
【0048】
分離後に、化学構成要素を検出する必要がある。質量分析はそのような検出方法の一つであり、この方法では、分離された試料構成要素分子に、それらがカラムから溶出した時に、電子ビームで衝撃が加えられる。これにより、その分子は電子を失い、正の電荷を持つイオンが形成される。分子を一つにつなぎ止めている結合の一部はその過程で破壊され、その結果生じた断片は転位またはさらなる分解を起こして、より安定な断片を形成しうる。与えられた化合物は、与えられた一組の条件下で再現性よくイオン化し、断片化し、転位するだろう。これにより、考えうる分子が同定される。質量スペクトルは、試料分子およびその断片に由来するイオンについて、質量/電荷比を存在量データに対して示したプロットである。この比は、通常は、その断片の質量に等しい。スペクトル中の最大ピークは基準ピークである。GC/MSは正確であり、選択的であり、高感度である。
【0049】
光学センサー
光学センサーは、迅速なシグナル生成およびシグナル読み取りに用いられる可視放射の応用に基づく。例えば吸着、蛍光、発光、散乱または屈折率(RI)の変化は、標的マーカーの検出に用いられる感知表面で光が反射される場合には、いずれも有用な出来事である。
【0050】
赤外(IR)分光法は有機化学者および無機化学者が使用するもっとも一般的な分光学的技法である。簡単に述べると、これは、IRビームの経路内に置かれた試料によるさまざまなIR周波数の吸収測定である。IR放射は、0.78〜1000マイクロメートル(ミクロン)の波長を持つ電磁スペクトルの広い区間にまたがる。一般にIR吸収はその波数(その波長の逆数を10,000倍したもの)によって表される。与えられた試料がIR分光法を使って検出されるには、その試料分子がIR領域で活性でなければならない。すなわちその分子はIR放射に曝露された時に振動しなければならない。このデータが掲載された参考図書は、CRC Press発行のHandbook of Chemistry and Physicsなど、いくつか入手することができる。
【0051】
大きく分けて2種類のIR分光光度計(すなわち分散型および非分散型)がある。典型的な分散型IR分光光度計では、広帯域線源からの放射が試料を通過し、モノクロメーターによって成分周波数へと分散させられる。次にビームは検出器(典型的には熱検出器または光子検出器)に当たり、それが分析用の電気シグナルを生成する。フーリエ変換IR分光光度計(FTIR)は、速さおよび感度が優れているので、分散型IR分光光度計に取って代わった。FTIRは、移動鏡マイケルソン干渉計を使用し、シグナルのフーリエ変換を行なうことにより、光学成分周波数の物理的分離を排除する。
【0052】
逆に、非分散型IR(NDIR)分光光度計においては、一連の試料ガスを分析するために広いIRスペクトルを供給するのではなく、NDIRは、標的試料の吸収波長に対応する特定の波長を供給する。これは比較的広いIR線源を利用し、放出を関心対象の波長に限定するために分光フィルターを使用することによって達成される。例えばNDIRは、IRエネルギーを4.67ミクロンの波長で吸収する一酸化炭素(CO)を測定するために、しばしば使用される。設計時にIR線源および検出器を注意深く調整することにより、大量生産COセンサーが製造される。これはとりわけ印象的である。というのも、二酸化炭素は一般的な干渉物質であり、COのIR吸収波長に極めて近い4.26ミクロンというIR吸収波長を持つからである。
【0053】
NDIRセンサーには、低いコスト(200ドル未満)、経常的コストなし、良好な感度および選択性、較正なしおよび高い信頼性が見込まれる。それらは小さく、電力をほとんど消費せず、素速く応答する(1分未満)。安定所要時間はわずかである(5分未満)。残念なことに、これらは一つの標的ガスしか検出しない。より多くのガスを検出するには、追加の分光フィルターおよび検出器、ならびに広帯域IR線源を導く追加の光学部品が必要である。
【0054】
イオン移動度スペクトロメトリ(IMS)
イオン移動度スペクトロメトリ(IMS)では、イオン化した分子試料を、管内で電場にさらした時のそれらの遷移時間に基づいて分離する。試料が計器内に取り出されると、それが弱い放射線源によってイオン化される。イオン化された分子は電場の影響を受けてセルの中をドリフトする。電子シャッターグリッドが、ドリフト管へのイオンの周期的導入を可能にし、その中でイオンは電荷、質量および形状に基づいて分離する。小さいイオンほど大きいイオンより速くドリフト管内を移動し、検出器に速く到達する。検出器からの増幅された電流が時間の関数として測定され、スペクトルが作成される。マイクロプロセッサがそのスペクトルを標的化合物に関して評価し、ピーク高に基づいて濃度を決定する。
【0055】
IMSは極めて迅速な方法であり、ほぼリアルタイムな分析を可能にする。また感度も極めて高く、関心対象の分析物を全て測定することができるはずである。IMSはコストが中くらいであり(数千ドル)、サイズおよび消費電力は大きい。
【0056】
金属酸化物半導体(MOS)センサー
金属酸化物半導体(MOS)センサーは半導体金属-酸化物結晶(典型的にはスズ-酸化物)を感知材料として利用する。金属-酸化物結晶が約400℃に加熱され、その温度で表面が酸素を吸着する。結晶中のドナー電子は吸着された酸素に移動して、空間電荷領域中に正電荷を残す。このようにして表面電位が形成され、それがセンサーの抵抗を増加させる。センサーを脱酸(または還元)ガスに曝露すると表面電位が除去されて、抵抗が低下する。最終的な結果は、その電気抵抗が脱酸ガスへの曝露と共に変化するセンサーである。抵抗の変化はほぼ対数的である。
【0057】
MOSセンサーには、極めて低コストである(少量で8ドル未満)と共に分析時間が短い(ミリ秒〜秒)という利点がある。これらは動作寿命が長く(5年超)、貯蔵寿命に問題があるという報告もない。
【0058】
光イオン化検出器(PID)
光イオン化検出器は、全ての元素および化学物質はイオン化させることができるという事実に依拠している。電子を引き離しガスを「イオン化」するのに必要なエネルギーをイオン化ポテンシャル(IP)といい、電子ボルト(eV)の単位で測定される。PIDでは紫外(UV)光源を使ってガスをイオン化する。PIDは高感度であり(低ppm)、低コストであり、応答が速く、持ち運び可能な検出器である。また電力もほとんど消費しない。
【0059】
PIDが使用するUV光源のエネルギーは少なくとも、試料ガスのIPと同じ強さでなければならない。例えばベンゼンは9.24eVのIPを持ち、一酸化炭素は14.01eVのIPを持つ。PIDでベンゼンを検出するには、UVランプは少なくとも9.24eVのエネルギーを持たなければならない。ランプが15eVのエネルギーを持つ場合は、ベンゼンと一酸化炭素の両方がイオン化されるだろう。いったんイオン化されると、検出器は電荷を測定し、シグナル情報を表示濃度に変換する。残念ながら、表示装置はこれら二つのガスを区別せず、単に両方を合計した総濃度を示すだけである。
【0060】
よく利用されるUVランプエネルギーは9.8、10.6および11.7eVの三つである。関心対象のガスをイオン化するのに十分なエネルギーを持つと同時に最も低いエネルギーのランプを選択することにより、多少の選択性を達成することができる。PIDによって測定される最大の化合物群は有機物(炭素を含有する化合物)であり、それらは典型的には百万分率(ppm)濃度まで測定することができる。11.7eVより大きいIPを持つガス、例えば窒素、酸素、二酸化炭素および水蒸気などは、いずれもPIDでは測定されない。CRC Press Handbook of Chemistry and Physicsには、さまざまなガスのIPを列挙した表が掲載されている。
【0061】
微小電気機械システム(MEMS)
MEMSに基づくセンサー技術では、機械的素子、センサー、アクチュエーター、および電子機器が、標的マーカーの検出に使用される共通のシリコン基材上に統合される(例えばPinnaduwage et al.,Proceedings of 3rd Intl Aviation Security Tech Symposium,ニュージャージー州アトランティックシティ,602-615(2001);およびLareau et al.,Proceedings of 3rd Intl Aviation Security Tech Symposium,ニュージャージー州アトランティックシティ,332-339(2001)参照)。
【0062】
MEMSに基づくセンサー技術の一例は、マイクロカンチレバーセンサーである。マイクロカンチレバーセンサーは、現在使用されているセンサーより少なくとも1,000倍は高感度でありかつ小さい、毛髪様のシリコン系装置である。ほとんどのマイクロカンチレバーセンサーの作用原理は、変位の測定に基づいている。具体的には、バイオセンサー用途の場合、カンチレバープローブの変位は、カンチレバービームの(活性化)表面における分子の結合に関係づけられ、これらの結合の強さならびに考慮中の溶液における特定試薬の存在を計算するために用いられる(Fritz, J. et al.「Translating biomolecular recognition into nanomechanics」Science, 288:316-318(2000);Raiteri, R. et al.「Sensing of biological substances based on the bending of microfabricated cantilevers」Sensors and Actuators B, 61:213-217(1999))。これらの装置の感度が最小検出可能運動に強く依存し、それが理論的に達成可能な性能と比較して実際に達成可能な性能に制約を課すことは明らかである。
【0063】
マイクロカンチレバー技術の一例では、異なるセンサー/検出器層(例えば抗体またはアプタマー)で被覆されたシリコンカンチレバービーム(好ましくは長さ数百マイクロメートル、厚さ1μm)を使用する。標的マーカーに曝露すると、カンチレバー表面が標的マーカーを吸収し、それが、カンチレバーを屈曲させるセンサーと吸収層の間の界面応力をもたらす。各カンチレバーは各標的マーカーに特有の特徴的な形で屈曲する。時間の関数としてのカンチレバー屈曲応答の強さから、各標的マーカーについてフィンガープリントパターンを得ることができる。
【0064】
マイクロカンチレバーセンサーは、相対湿度、温度、圧力、流れ、粘度、音、紫外および赤外放射、化学物質、ならびにDNA、タンパク質および酵素などの生体分子を検出し、測定することができる点で、非常に有利である。マイクロカンチレバーセンサーは堅牢であり、再利用可能であり、極めて高感度である上に、コストが低く、電力をほとんど消費しない。これらのセンサーを使用する際のもう一つの利点は、それらが空気中、真空下、または液体環境下で動作することである。
【0065】
増幅蛍光ポリマー技術
センサーには、高感度標的マーカー検出器として揮発性化学物質と反応する蛍光ポリマーを使用することができる。従来の蛍光検出では、通常は、一分子の標的マーカーが孤立した発色団と相互作用した時に起こる蛍光強度の増減または放出波長シフトが測定され、標的マーカーと相互作用する発色団が消光される場合、残りの発色団は蛍光を発し続ける。
【0066】
このアプローチの変法が、YangおよびSwager,J. Am. Chem. Soc, 120:5321-5322(1998)ならびにCumming et al.,IEEE Trans Geoscience and Remote Sensing,39:1119-1128(2001)に記載されている「分子ワイヤ」構成である。分子ワイヤ構成では、任意の発色団による光の単光子の吸収が連鎖反応をもたらして、多くの発色団の蛍光を消光し、感知応答を数桁増幅する。分子ワイヤ構成に基づくセンサーは爆薬を検出するために組み立てられている(SwagerおよびWosnick,MRS Bull,27:446-450(2002)参照)。
【0067】
光ファイバーミクロスフェア技術
光ファイバーミクロスフェア技術は、複数のミクロスフェアセンサー(ビーズ)のアレイに基づき、各ミクロスフェアは、マイクロメートル規模の複数のウェルを含有する光学基材上に置かれた、標的マーカーと関連する離散したクラスに属する(例えばMichael et al.,Anal Chem, 71:2192-2198(1998);Dickinson et al.,Anal Chem., 71:2192-2198(1999);AlbertおよびWalt,Anal Chem, 72:1947-1955(2000);ならびにStitzel et al.,Anal Chem, 73:5266-5271(1001)参照)。各タイプのビーズは、そのビーズを同定しその位置を特定するために、ユニークな符号を与えられる。標的マーカーに曝露すると、ビーズは標的マーカーに応答し、その強度および波長シフトを使って、蛍光応答パターンを作成し、次にそれを公知のパターンと比較することによって、標的マーカーを同定する。
【0068】
くし形微小電極アレイ(IME)
くし形微小電極アレイは、それぞれが有機単分子膜シェルで被覆されているナノメートルサイズ金属粒子のアンサンブルを組み込んだ変換器薄膜の使用に基づく(例えばWohltjenおよびSnow,Anal Chem, 70:2856-2859(1998)ならびにJarvis et al.,Proceedings of the 3rd Intl Aviation Security Tech Symposium,ニュージャージー州アトランティックシティ,639-647(2001)参照)。そのようなセンサー装置は、薄い絶縁層によって分離されたコロイドサイズの導電性金属コアの大集団の組み合わせであることから、金属-絶縁体-金属アンサンブル(metal-insulator-metal ensemble:MIME)とも呼ばれている。
【0069】
分子インプリントポリマー薄膜
分子インプリンティングは、ポリマー材料における特異的分子認識部位(結合部位または触媒部位)の形成がテンプレートによって誘発される過程であり、この過程では、テンプレートが、自己集合機序により、ポリマー材料の構造構成要素の配置および配向を指図する(例えばOlivier et al.,Anal Bioanal Chem, 382:947-956(2005)およびErsoz et al.,Biosensors & Bioelectronics, 20:2197-2202(2005)参照)。ポリマー材料には、有機ポリマー材料および無機シリカゲルが包含されうる。分子インプリントポリマー(MIP)は、例えば蛍光分光法、UV/Vis分光法、赤外分光法、表面プラズモン共鳴、化学発光吸着剤アッセイ、および反射率測定干渉分光法を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)さまざまなセンサープラットフォームで使用することができる。そのようなアプローチは、高効率かつ高感度な標的マーカー認識の実現を可能にする。
【0070】
可搬装置
本発明によれば、上述したセンサー技術の少なくとも一形態を含む可搬装置が提供される。可搬装置は、好ましくは、試料(例えば生物学的流体の試料または処方せん薬容器のヘッドスペースの試料)中の一つまたは複数の標的マーカーの存在を感知する際に使用される、手で持てる大きさの計器である。可搬装置は、可搬装置のセンサーに試料を供給するのに役立つ当業者に公知の任意の手段を含むことができる。考えられる試料提供手段には、ワンド(wand)、チャンバー、ディッシュ、プレート、ウェル、アッセイシートまたはアッセイフィルム、およびディップスティック(いずれも本発明のセンサーを使った分析のために試料を受け取ることができるもの)などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0071】
ある態様では、試料提供手段が、呼気の試料を収集するためのチャンバーである。呼気構成要素(特にガス)を収集し監視するために、さまざまなシステムが開発されている。例えばSilkoffの米国特許第6,010,459号には、ヒトにおける呼気の構成要素を測定するための方法および器具が記載されている。呼気を収集し分析するための他のさまざまな器具には、Glaser et al.,米国特許第5,081,871号の呼吸試料採取器;Kennyら,米国特許第5,042,501号の器具;Osborn,米国特許第4,202,352号の乳児の呼気を測定するための器具;Ekstrom,米国特許第5,971,937号の呼吸気から血中アルコール濃度を測定する方法、およびMitsui et al.,米国特許第4,734,777号のヒト尿および呼気中の代謝産物を並行分析するための計器などがある。コンピュータデータ分析構成要素を含む肺診断システムも公知である。例えばSnowら,米国特許第4,796,639号を参照されたい。
【0072】
可搬装置内でセンサー技術によって得られるシグナルは、シグナル処理を行なうために、可搬装置内に配置された処理手段に伝送される。処理手段は、獲得したデータの保全および可搬装置全体そのものの保全を担うことができる。また、処理手段は、当業者に公知のユーザーインターフェース手段(例えばキーボード、または双方向グラフィックモニター)を介したユーザー入力を検出し、それに従って動作することもできる。関連する一態様では、可搬装置は、可搬装置の動作モードおよび/または可搬装置の感知結果を伝達するために、表示装置(例えば液晶表示装置、モニターなど)を含むことができる。
【0073】
本発明によれば、処理手段は、特定用途向けの集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、制御装置、マイクロプロセッサ、または本明細書に記載する機能を実行するように設計された他の回路として実装することができる。
【0074】
いくつかの態様では、処理手段が、プログラムコード、データ、および他の構成情報を記憶するために、一つまたは複数の記憶装置も含むことができる。好適な記憶装置には、読取り書込み記憶装置(RAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、フラッシュメモリ、読取り専用記憶装置(ROM)、プログラム可能読取り専用記憶装置(PROM)、電気的にプログラム可能なROM(EPROM)、電気的に消去及びプログラム可能なPROM(EEPROM)、および他のメモリ技術が含まれる。記憶装置のサイズは用途に依存し、必要に応じて容易に拡張することができる。
【0075】
ある態様では、処理手段が、可搬装置のさまざまな動作を連係するプログラムコードを実行する。プログラムコードは、動作モードおよび動作方法をユーザーが選択し、可搬装置のセンサーを使って試料の分析を開始するのを支援する双方向ソフトウェアを含む。プログラムコードは、センサーによって与えられる試料に関する情報に対して分析機能を実行するソフトウェア、および所定のイベント分析を可能にするソフトウェアも含むことができる。例えば、処理手段がスケジューリング情報を記憶し、(例えば所定のイベントがいつ起こったかに関して記憶装置から)引き出すことを可能にするカレンダープログラムコードを用意することができる。
【0076】
可搬装置のさまざまな局面を制御する際に、処理手段は、センサー技術および/または試料の温度、湿度、pH、塩分などを制御することができる。例えば各センサーアレイおよび試料チャンバーは、加熱または冷却に使用するための好適な熱電装置を含むことができる。
【0077】
本発明の可搬装置が試験または動作を実行した後に、簡潔な結果が、任意で、ユーザー(患者、薬剤師、医師)に提示される。
【0078】
もう一つの態様では、装置が、データフィルタ、組込みアルゴリズム、およびイベントインジケータをさらに含む。データフィルタ、組込みアルゴリズム、およびイベントインジケータにより、可搬装置は、複雑な機能および能力を実行することが可能になる。例えば、センサーによって与えられたデータ全体を構文解析してイベントが処方どおりに起こっているかどうかを決定するために、データフィルタを設けることができる。データフィルタによるイベントの検出に応答するイベントインジケータを、データフィルタに接続することができる(例えばイベントは処方された指定時刻における薬剤の患者投与である)。関連するいくつかの態様では、イベントインジケータが、イベントインジケータを監視してユーザーが所定のイベントを実行したかどうか(例えば処方された指定時刻に患者が薬剤を服用した回数)を決定するイベントインジケータモニターを含むことができる。簡略化された電子機器が提供される別の態様では、可搬装置の複雑な機能および能力が、任意に、PC用ソフトウェアを使ってホストコンピュータから設定および駆動される。
【0079】
センサー技術が公知の電子鼻(e-nose)技術を含む別の態様では、処理手段は、収集したデータを、記憶装置(例えばRAM)に保存されている以前に収集された一組の標準を表すデータと相関させることができる。この比較は、試料提供手段(例えばチャンバー、ワンド、プレートなど)中に存在する標的マーカーの同定およびそのような標的マーカーの量または濃度の決定、ならびにそのようなアイデンティティおよび量の時間的変化の検出を容易にする。標的マーカーの同定および濃度の定量に適したさまざまな分析には、主成分分析、フィッシャーの線形分析、人工ニューラルネットワーク(ANN)、遺伝的アルゴリズム、ファジー論理、パターン認識、および他のアルゴリズムが含まれる。分析が完了したら、その結果得られた情報を表示装置に表示し、そして/または電子通信によって本発明の中央コンピュータに伝送することができる。
【0080】
または、本発明の中央コンピュータによって分析を実行することもできる。例えば、試料に関するセンサー情報は可搬装置の処理手段によって記憶され、(例えば薬局または診療室で)中央コンピュータに伝送されると、中央コンピュータがそのセンサー情報を自らの処理手段を使って分析するだろう。中央コンピュータまたは可搬装置の処理手段は、プロセッサ、DSPプロセッサ、特別に設計されたASIC、または試料中に存在する標的マーカーを同定し、標的マーカーの量または質を決定し、試料中の標的マーカーのそのようなアイデンティティおよび量の時間的変化を検出するために分析機能を実行するように設計された他の回路であることができる。いくつかの態様では、処理手段は、必要な分析機能を実行するように書かれたプログラムコードを実行する汎用プロセッサであることができる。
【0081】
本発明の中央コンピュータおよび/または可搬装置の処理手段は、さらに、データ収集を指示し、デジタルシグナル処理を実行し、そして/またはシリアル周辺装置(シリアル周辺インターフェースを介して)、入出力装置(I/O)、シリアル通信(シリアル通信インターフェースを介して)、および他の周辺装置を制御することができる。処理手段によって制御することができるシリアル周辺装置には、アナログ-デジタル変換器およびデジタル-アナログ変換器、32K外部EPROM(64Kに拡張することができる)、リアルタイムクロックおよびバッテリーバックアップを組み込んだ32K RAM、2×8キャラクタドットマトリックス表示装置などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。制御することができるI/Oには、温度プローブ、湿度プローブ、発光ダイオードなどが含まれる。
【0082】
中央コンピュータおよび/または可搬装置の処理手段は、さらに、表示装置およびセンサー技術(例えばSAWセンサーに用いられるバルブアセンブリおよびポンプ)などの周辺装置を制御することができる。処理手段は、入力装置(例えばキーボード上の押しボタンスイッチ)を監視し、可搬装置と中央コンピュータとの間の直接通信または遠隔通信を可能にする電子通信装置による(例えばモデム、イーサーネットカード、無線通信装置などによる)デジタル通信を提供することもできる。
【0083】
ある使用方法では、可搬装置の試料提供手段(例えばチャンバー、ワンド、プレート)に公知の参照試料を提供する。公知試料は、処理手段が参照試料を同定できるようにするために提供される。一態様では、公知参照試料が、定期的に取り替えることのできるカートリッジに入れて提供される。
【0084】
上に概説した測定および分析手順を履行する際に本発明の可搬装置および中央コンピュータによって実行される機能段階の好適なフローチャートの態様を、図1〜4に図示する。これらのフローチャートは、可搬装置が初期化された後、そのさまざまな動作モードで制御される方法を示している。処方された投与計画への患者のコンプライアンスを監視するための一態様では、これらの動作モードが、1)公知のアイデンティティを持つマーカーの試料に可搬装置を曝露することによって、または標準(化合物を何も含まない試料)を確定するために可搬装置を大気に曝露することによって、装置が較正される、関数バックグラウンドモード、2)装置がアイデンティティ未知の試料に曝露される、標的モード、および3)装置から滞留試料が取り除かれる、パージモードを含む。処方せん薬の出所が照合されるもう一つの態様では、動作モードが、1)公知のアイデンティティを持つマーカーの試料に可搬装置を曝露することによって可搬装置が較正される、バックグラウンド関数モード、2)装置がアイデンティティ未知の試料に曝露される、標的モード、および3)装置から滞留試料が取り除かれる、パージモードを含むことができる。
【0085】
可搬装置のメインプログラムメニューの一態様のフローダイアグラムを図1に示す。最初に、可搬装置のさまざまな電子素子(例えば表示装置およびさまざまな内部データレジスタ)を、段階5で初期化またはリセットする。次に、関数バックグラウンドサブルーチンを、段階10で実行する。このサブルーチンは図2でさらに説明する。関数バックグラウンドサブルーチンを実行した後、プログラムは、どの動作モード(モード)がユーザーによって選択されているかをプロセッサが決定する段階15に進行する。その後、プログラムは選択されたモードを履行するために、後続の図3〜4に図示する段階20に進行する。動作モードがまだ選択されていない場合、プログラムは、アイドルループ22によって段階10に戻り、関数バックグラウンドサブルーチンを再び実行する。
【0086】
関数バックグラウンドサブルーチン(段階10)の一態様のフローダイアグラムを図2に示す。段階25では、ユーザーによって選択された測定値およびパラメータ(例えば試料提供手段内の温度および湿度)を示すシグナルを、入力装置を検出するように構成されたアナログ-デジタル変換器(ADC)(内部ADCともいう)から読み取る。30の段階ではセンサーの状態を評価し、内部ADCからのシグナルに基づいてそれらを試料採取のために準備する。センサーの状態/準備態勢を示すシグナルを計測ADC(外部ADCともいう)から段階35で読み取る。最後に、段階40では、公知の通信(例えばデジタル通信による)方法で中央コンピュータから受け取った任意の指令を、処理手段が処理する。そのような指令は、例えば、標的動作モード中に可搬装置のセンサーによって検出されるべき標的マーカーのアイデンティティに関するプログラミング情報を含むことができる。または、40の段階は、可搬装置を公知のアイデンティティを持つマーカーの試料に曝露し、段階35での読み値を処理手段に提供することによって、可搬装置が較正される段階であることもできる。次に関数バックグラウンドルーチンが終了する。
【0087】
本発明の標的モードサブルーチンのフローダイアグラムを図3に示す。段階45では、外部ADCから最も新しく更新された一組の測定値を引き出す。これらの測定値は可搬装置のセンサーの状態/準備態勢を表す。次に、試料(例えば体液の試料、薬剤容器のヘッドスペース、薬剤容器充填材など)を、可搬装置の試料提供手段に、段階50で提供する。次に、新しい一組の測定値を、段階55で外部ADCから引き出す。この新しい一組の測定値は、提供された試料にセンサーが応答した時のセンサーからの出力を示す。段階60では、センサー出力を分析して、試料中の標的マーカーの存在を決定する。いくつかの態様では、標的マーカーの存在の決定後に、その情報を保存し、そして/または、処方せん投与計画へのコンプライアンスの保証に用いるために中央コンピュータに通信する。次に、標的動作モードが終了し、アイドルループ(図1の段階22)に戻る。
【0088】
パージモードサブルーチンの一態様のフローダイアグラムを図4に示す。段階65では、可搬装置のセンサーをベースライン読み値に戻すためにコンディショニングする。または、標的マーカーに関する全情報を固定メモリから削除するように処理手段をプログラムしてもよい。次にプログラムはアイドルループ(図1の段階22)に戻る。
【0089】
本発明のいくつかの局面では、可搬装置が、モジュラーセクションを使って設計される。例えば、センサー、処理手段、記憶装置、および/またはその他を、必要に応じて装備することまたは入れ換えることができるモジュール内に、任意で配置することができる。モジュラー設計には多くの利点があり、そのうちの一部は以下の特徴に関する:交換可能、取り外し可能、取り替え可能、アップグレード可能、および非固定式。モジュラー設計は使い捨てモジュールにも対応することができる。
【0090】
いくつかの態様では、モジュラー設計により、性能を改善することもできる。特定の試験試料セットが正確に測定されるように、さまざまなモジュール(例えばセンサーまたは試料提供手段)を設計することができる。異なる試料を測定するために異なるモジュールを使用することができる。したがって、可搬装置の使用によって性能が犠牲になることはない。例えば、高分子量マーカーの存在または濃度を感知するには、ある特定のセンサー技術(例えばSAW技術などの電子鼻チップ)を差し込む。次に、低分子量マーカーの存在または濃度を分析するために、別のセンサー技術(例えばバイオセンサー技術)を差し込むことができる。
【0091】
モジュラー設計は費用効果が大きい可搬装置設計をもたらすこともできる。構成要素の一部を容易に取り替えることができるので、特定の構成要素が消耗したとしても、可搬装置全体を処分する必要はなく、故障した構成要素を取り替えるだけでよい。
【0092】
いくつかの態様では、モジュラー設計がアップグレード可能な設計をもたらすこともできる。例えば、処理手段または記憶装置を、新しい技術でアップグレードすることができる電子モジュラーユニット内に(個別にまたは組み合わせて)配置することができる。メモリモジュールを入れ換えるだけで、より多くのデータを記憶するために、追加メモリを設けることができる。また、可搬装置に挿入されるプログラムモジュールに、分析アルゴリズムを含めることもできる。その場合、本発明によれば、プログラムモジュールを望みどおりに入れ換えることができる。
【0093】
可搬装置は、本発明によれば、任意の公知同定システム、例えば「バイオメトリック」同定システム、電子コード化システム(例えばパスワード保護システム)、錠-鍵型(lock-and-key)同定システムの使用など(ただしこれらに限定されるわけではない)を含むことができる。
【0094】
物理的鎖錠装置(例えば錠-鍵型同定システム)の場合、可搬装置は、錠が(鍵、組み合わせコードなどの使用によって)外されない限り、ユーザー(例えば患者、薬剤師など)による可搬装置のアクセス/使用を妨げる錠を含む。物理的セキュリティ装置の例には、鍵のかかった錠、および組み合わせ錠が含まれるが、これらに限定されるわけではない。一態様では、ユーザーが患者であり、可搬装置のセキュアな使用を保証するために、その患者に薬剤が交付される時に、可搬装置上の錠を外すための鍵がその患者に提供される。もう一つの態様では、可搬装置上の錠を外すための組み合わせがユーザーに提供される。
【0095】
パスワード保護方法などの電子コード化システムの場合、可搬装置の使用を開始するために、ユーザーは特定のパスワードを(例えば可搬装置に取付けられたキーボードから、またはコード化された「キー」カードを挿入することによって、またはボイスボックスにパスワードを口頭で伝えることによって)入力しなければならない。次にパスワードが(可搬装置の)処理手段および/または(中央コンピュータの)分析手段に伝送され、そこで、可搬装置にアクセスするためにシステム管理者によって登録された全ユーザーのパスワードを含有するパスワードデータベースと比較される。一致が見つかった場合、処理手段および/または分析手段は、そのユーザーを可搬装置に許可し、ユーザーはそのユーザー用の可搬装置を使用することができる。
【0096】
この開示の全体を通して使用する用語「バイオメトリック」は、広く、各ユーザーにユニークな任意の身体パラメータを指す。バイオメトリクスの例には、指紋、掌形、顔形、網膜走査、声、体臭またはある人を別の人と区別する他の任意の特徴が含まれる。バイオメトリクスは、例えばコンピュータシステムに接続する指紋センサー装置を市場に投入したIdenticator Technologies, Corp.が提供するものなど、公知の装置によって検出、測定、および/または走査することができる。ユーザーが装置の表面に自分の指を置くと、そのユーザーの指紋の像が取り込まれる。その指紋像はコンピュータシステムに提供される。コンピュータは指紋像を処理して、原像を代表する値であるその像の「テンプレート」を作成する。
【0097】
バイオメトリック同定システムを使用する場合、本発明のユーザーは、まず登録ユーザーとして登録され、ユーザーのバイオメトリック特性(例えば指紋、網膜、声など)の像が取り込まれ、そこからテンプレートが作成される。次にパスワードがそのユーザーに割り当てられる。パスワードおよびテンプレートは(可搬装置の処理手段内および/または中央コンピュータの分析手段内の)データベースに記憶され、ユーザー名によって索引が付けられる。したがってこのデータベースは、そのバイオメトリック同定機構を使ってログオンすることを望む全てのユーザーについて、パスワードおよびバイオメトリックテンプレートを含有する。ログオンの過程で、処理手段および/または分析手段は、作成されたテンプレートをデータベース中に以前に記憶されたテンプレートと比較する。一致が見いだされた場合、処理手段/分析手段は、一致するバイオメトリックテンプレートと共に記憶されているパスワードを選択し、そのパスワードを使ってユーザーに可搬装置の使用を可能にする。
【0098】
中央コンピュータ
中央コンピュータは、本発明によれば、監視すべき患者から遠く離れて位置する施設内に収納される。好ましい一態様では、中央コンピュータを薬局施設内に収容し、患者は自宅に位置する。
【0099】
本発明によれば、処方薬剤および/または薬剤の出所に関する情報が、可搬装置による試料採取に先だって、中央コンピュータおよび/または可搬装置に提供される。中央コンピュータおよび可搬装置に提供することができる情報には、以下のものがあるが、それらに限定されるわけではない:その薬剤について処方された投与計画に関する情報;患者の体液中に検出することができるその薬剤のマーカーに関する情報;薬剤の出所を示すマーカーに関する情報;薬剤副作用に関する情報。
【0100】
一態様では、中央コンピュータが、処理済データを記憶し出力するための手段を含む。。中央コンピュータは、本発明の可搬装置からのシグナル(例えばSAWセンサーが生成したシグナル)を処理することができる任意のデジタル計測手段を含む。そのようなデジタル計測手段は、当業者には理解されるように、本発明のアルゴリズムおよびフィルター動作を適用することによって、通信されたシグナルを処置することができる。または、中央コンピュータは、既に分析されて可搬装置から通信されたデータを処理することができる。好ましくは、デジタル計測手段はマイクロプロセッサ、パーソナルデスクトップコンピュータ、および/またはラップトップである。中央コンピュータは、汎用コンピュータまたは特定用途向けコンピュータであることができる。
【0101】
図5を参照して述べると、本発明の中央コンピュータは、例えば入力装置70、スタイラス75、マイクロホン80、マウス85、スピーカー90、およびモニター100など(ただしこれらに限定されるわけではない)といった、少なくとも一つのユーザーインターフェース装置を含むことができる。本発明において考えられる他のユーザーインターフェース装置には、タッチスクリーン、ストリップレコーダー、ジョイスティック、プリンター、およびローラーボールが含まれる。
【0102】
好ましくは、中央コンピュータは、本発明に従ってプログラムコードおよびアルゴリズム動作を実行するのに十分な処理能力を持つ中央処理ユニット(CPU)を含む。フィルタリング、分析、および監視動作を含むプログラムコードおよびアルゴリズム動作は、コンピュータプロセッサが利用可能な媒体、例えばフロッピーディスケット、CD-ROM、zipドライブ、不揮発性メモリ、または他の任意のコンピュータ可読記憶媒体などの形態で体現することができ、この場合、コンピュータプログラムコードは、中央コンピュータに読み込まれ、中央コンピュータによって実行される。任意で、本発明のプログラムコードおよび/または動作アルゴリズムを、任意の適切なプログラミング言語を使って(好ましくはCプログラミング言語を使って)CPUに直接プログラムすることもできる。
【0103】
中央コンピュータは、パターン認識用のニューラルネットワークを含むこともできる。人工ニューラルネットワークANNは自己学習性であり、多くのデータを提示されるほど、その計器は多くを識別するようになる。多くの標準試料を実行して、その結果をコンピュータメモリに記憶すれば、ANNの適用により、その装置がセンサーアレイ出力の意義をより良く「理解」すること、およびこの情報をその後の分析に使用すること(例えば処方薬剤がある期間にわたって適正に代謝されているかどうかを分析すること)が可能になる。「学習」は、あるセンサーともう一つのセンサーとを対比してその出力に置かれる強調または重みを変化させることによって達成される。学習過程は、データセット間の数学的距離または「ユークリッド」距離に基づく。大きいユークリッド距離は、試料間芳香特徴の有意差を表す。
【0104】
いくつかの態様では、中央コンピュータが、本発明に従ってプログラムコードおよび/またはアルゴリズム動作を実行するのに十分な大きさのメモリ容量を含む。本発明のメモリ容量は、コンピュータ可読記憶媒体を通したコンピュータプログラムコードの読み込みを支援することができ、そのプログラムは本発明のプログラムコードおよび/または動作アルゴリズムを実行するためのソースコードを含む。任意で、メモリ容量は、本発明の動作アルゴリズムを実行するようにCPUを直接プログラムすることを支援することができる。標準バス構成はCPU、メモリ、ポートおよび任意の通信装置間でデータを伝送することができる。
【0105】
また、当業者には理解されるように、中央コンピュータのメモリ容量は、追加したハードウェアによって、またフロッピーディスケット、zipドライブ、不揮発性メモリおよびCD-ROMなど(ただしこれらに限定されるわけではない)の外部媒体にデータを直接保存することによって、拡張することができる。
【0106】
中央コンピュータは、分析したセンサー情報を、薬剤師、訓練を受けた医師、ナースプラクティショナー、助産師、または専門技術者が容易に利用できる出力形態に提供するのに必要なハードウェアおよびソフトウェアを、さらに含むことができる。例えば、限定されるわけではないが、音声装置は音声スピーカーと共に、試料分析結果を音声シグナルに中継することができ、そして/またはグラフィカルインターフェースは結果をグラフ形式でモニターおよび/またはプリンター上に表示することができる。さらに、中央コンピュータは、可搬装置を使用している遠隔地との間でデータを受取り、ルーティングし、転送するのに必要なソフトウェアおよびハードウェアを含むこともできる。
【0107】
本発明はさまざまな状況で実施することができる。中央コンピュータ手段は可搬装置に直接接続するか、遠隔接続することができる。一態様では、本発明は薬局で直接実施される。もう一つの態様では、本発明は、例えば個人宅、移動診療所、海上船舶、田園部などの遠隔状況で実施される。
【0108】
患者のプライバシーを保証するために、暗号化ソフトウェアおよびファイアウォールなどのセキュリティ措置を、中央コンピュータで利用することができる。任意で、臨床データは、未処理シグナルもしくは「生」シグナルおよび/または処理済シグナルとして、伝送することができる。生シグナルを伝送する場合は、有利なことに、任意のソフトウェアアップグレードを、中央コンピュータがある場所で行なうことができる。また、履歴臨床データおよびリアルタイム臨床データの両方を伝送することができる。
【0109】
無線インターフェース、ケーブルモデム、衛星リンク、マイクロ波中継器、および伝統的電話モデムなどの通信装置は、データおよび/または分析済データを、可搬装置から中央コンピュータに、電子通信(例えばネットワーク)によって転送することができる。データの伝送に利用することができるネットワークには、ローカルエリアネットワーク、イントラネットおよびオープンインターネットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。伝送されたデータを閲覧するために、ブラウザーインターフェース(例えばNETSCAPE NAVIGATORまたはINTERNET EXPLORER)を、通信ソフトウェアに組み込むことができる。
【0110】
一態様では、可搬装置と中央コンピュータとの間の双方向通信を可能にする。双方向通信は、中央コンピュータが、患者に提示するための一組の質問またはメッセージを可搬装置を通してアップロードすることを可能にする。例えば、処方された投与計画への患者のコンプライアンスを監視するために可搬装置を使用する場合、体液試料を採取しそこなうと、薬剤師が、その患者に提示するためのカスタマイズされた質問(「今日は薬剤の服用を忘れましたか?」)を送ることになるかもしれない。または、処方せん投与計画に関する質問が患者にある場合、患者は薬剤師に提示するための質問(「この薬剤を服用すると、血圧の薬に影響がありますか?」)を送ることができる。そのようなカスタマイズされた質問は、その次に可搬装置/中央コンピュータにアクセスがあった時に提示され得るか、患者/薬剤師にリアルタイムに提示され得る。加えて、カスタマイズされたメッセージは、一定の時刻(例えば試料を採取して分析すべき所定時刻の半時間後)に送達されるように、スケジュール設定することもできる。さらに、メッセージを一覧から選択することもできる。
【0111】
本発明の中央コンピュータは、処方された投与計画への患者のコンプライアンスに関して正確なデータをユーザーに提供するために、可搬装置と絶え間なく通信するようにリアルタイム状況で機能することができる。または、本発明の中央コンピュータはスケジュール設定に基づいて機能することもでき、その場合、可搬装置と中央コンピュータとの間の通信は厳しく管理される。または、本発明の中央コンピュータは、ユーザー(例えば薬剤師、患者、専門技術者など)の手動始動に応じて可搬装置と通信することができる。例えば薬剤師が薬物の出所を知りたい場合は、可搬装置を薬物容器のヘッドスペースに適用することができ、次に薬剤師は、その薬物の出所を照会するために、可搬装置と中央コンピュータとの間の通信を開始することができる。
【0112】
標的マーカー
本発明によれば、処方薬物の患者における存在および/または処方せん薬の出所の目安として有用なマーカー(またはタガント)には、以下の嗅覚マーカーが含まれる(ただしそれらに限定されるわけではない):ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトアルデヒド、アセトフェノン、トランス-アネトール(1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン)(アニス)、ベンズアルデヒド(ベンゾイックアルデヒド)、ベンジルアルコール、ケイ皮酸ベンジル、カジネン、カンフェン、ショウノウ、シンナムアルデヒド(3-フェニルプロペナール)、ニンニク、シトロネラール、クレゾール、シクロヘキサン、ユーカリプトール、オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、イソ酪酸ブチル(n-ブチル 2,メチルプロパン酸)(パイナップル)、シトラール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-アール)、メントール(1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン-3-オール)、およびα-ピネン(2,6,6-トリメチルビシクロ-(3,1,1)-2-ヘプテン)。これらのマーカーは、食品産業において香り成分として使用され、米国食品医薬品局によって許可されているので好ましい。上述のように、本発明において使用するための嗅覚マーカーは、非常に多くの利用可能な化合物から選択することができ(Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients,第4版,CRC Press,2001参照)、そのような他の適用可能なマーカーの使用も本発明では考えられる。
【0113】
本発明のマーカーには、連邦政府に承認された添加物であって、GRAS(「一般に安全と認められる物質」)と分類され、米国食品医薬品局 食品安全・応用栄養センターが保守しているデータベースに見いだすことができるものも含まれる。GRASに分類されるマーカーであって、呼気中に容易に検出することができるものには、重硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリグリセロールポリリシノール酸、カルシウムカゼインペプトン-リン酸カルシウム、植物性薬品(例えばキク;甘草;仙草(jellywort)、スイカズラ;ササクサ、桑葉;インドソケイ;ウツボグサ;エンジュ花芽など)、ビスグリシン酸第一鉄キレート、海藻由来カルシウム、DHASCO(ドコサヘキサエン酸リッチシングルセルオイル)およびARASCO(アラキドン酸リッチシングルセルオイル)、フルクトオリゴ糖、トレハロース、ガンマシクロデキストリン、フィトステロールエステル、アラビアゴム、重硫酸カリウム、ステアリルアルコール、エリトリトール、D-タガトース、およびマイコプロテイン(mycoprotein)などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0114】
いくつかのGRAS分子が吸収され(例えば呼気などに)排出され得ることは公知である。例えばいくつかのGRAS分子は粘膜(例えば胃腸粘膜)を通して患者に吸収された後、呼気中に排出され得る。さらに、呼気中に検出することができるマーカーを生成するには代謝(例えばシトクロムp450酵素系による代謝)を必要とするGRAS化合物も、いくつか利用することができる。そのようなGRAS分子は、処方どおりに薬剤を服用しているふりをしようと試みる患者を回避するのに役立つと考えられる。本発明に従って使用することができるGRAS化合物の一覧を以下の表1に記載する。
【0115】
(表1)GRASに基づくマーカーの一覧

CAS、RN、または他のコード
【0116】
表1に記載するラベルの定義は以下のとおりである。

【0117】
上述のように、本発明のマーカーはそれらの物理的および/または化学的性質によって検出することができる。これは、処方治療薬そのものをそれ自身のマーカーとして用いることを排除するものではない。治療薬がマーカーそのものである場合は、本発明のセンサーを使ったマーカーの検出を強化する生成物および化合物を含むように、薬物を製造することができる。いくつかの例では、水溶性に乏しいマーカー(治療薬そのものであるもの)が、強化された揮発性を示し、呼吸における検出を容易にする。
【0118】
本発明によれば、処方薬剤は、例えば錠剤、カプセル剤などの経口投与可能な形態、または非経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、経皮経路、口腔粘膜経路、皮下経路、坐剤経路、または他の経路を含むさまざまな経路によって、患者に投与することができる。
【0119】
本発明によれば、処方薬物を服用した後(この場合、治療薬はマーカーであるか、治療薬は検出可能なマーカーを含むように製造される)で、患者は体液の試料を本発明の可搬装置に提供する。可搬装置において、マーカー検出はいくつかの状況下で起こり得る。薬物が経口投与される一例では、マーカーが、摂取時に口内、食道内および/または胃内で「コーティング」または存続することができ、呼息と共に検出され得る(ブレスミントを摂食した後に口内に残る味または香りと同様)。
【0120】
処方薬物が経口投与される一態様では、薬物が口内または胃内で酸または酵素と反応して、呼息時に検出することができるマーカーを生成または遊離する。第3に、薬物および/またはマーカーは、消化管で吸収され、肺内に排出され得る(例えばアルコールは迅速に吸収され、ブレスアナライザーで検出される)。
【0121】
もう一つの態様では、本発明のマーカーが治療薬と同時に投与される(例えばマーカーは薬学的に許容できる担体に入れて提供され、マーカーは速溶解性グルコースおよび/またはスクロースから構成される薬剤コーティング中に含まれる)。関連する一態様では、よく転用される処方せん薬、例えば麻薬性鎮痛薬(例えばDarvon、Demerol、Dilaudid、フェンタニル、Methadose、MSIR、Nubain、Oxycontin、Roxanol、Stadol);他の薬剤と組み合わされた麻薬性鎮痛薬(例えばVicodin、Lorcet、Tylox、Percocet);さまざまな精神状態または精神障害を処置するための薬剤(例えばジアゼパム、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン);勃起機能障害を処置するための薬剤(例えばViagra)、体重問題を処置するための薬剤(例えばMeridia)、脳神経系抑制薬(例えばMebaral、Nembutal、Librium、Xanax、Halcion、ProSom);下痢を処置するための薬剤(例えばLomotil)および興奮薬(例えばAdderal、Dexedrine、Ritalin、Focalin、Provigil)など(ただしこれらに限定されるわけではない)に、マーカーが提供される。そのような医薬は合法な医学用途を持つが、娯楽的使用に違法に転用されることも多く、そのせいで連邦政府および諸州は、取締り、健康管理、社会福祉事業、および訴訟費用などの領域に、何十億ドルも費やしている。
【0122】
好ましい態様では、治療薬が丸剤の形態で提供され、そのコーティングは空気凝縮(air-flocculated)糖結晶中に少なくとも一つのマーカーを含む。これは唾液分泌を刺激し、マーカーを口腔中に拡げて、口腔での寿命を延ばすのに役立つ。薬剤を摂取したときに咽喉および食道もマーカーでコーティングされ得るので、マーカーの検出はさらに強化される。
【0123】
したがって、薬物を患者に投与した時に、本発明の好ましい態様は、センサー(例えば電子鼻)を使って、患者の呼気中に(場合によっては故意におくびを出すように患者に要求することによって)治療薬マーカーをほとんど直ちに検出し定量する。いくつかの薬物組成物は呼気中に検出することはできないかもしれない。また他の薬物組成物は、薬剤が胃内で溶解するのを防止するコーティングを持つかもしれない。どちらの場合も、代替態様として、呼気中のマーカーを同定/定量するための手段を提供し、それゆえに患者が薬剤を処方された投与計画に従って服用したかどうかを決定するために、無毒性嗅覚マーカー(例えば揮発性有機物蒸気)を薬学的に許容できる担体に(例えば丸剤のコーティング、丸剤中の独立した速溶解区画中に、または薬物が液状または懸濁液状で投与される場合は溶液に)加えることができる。
【0124】
好ましくは、マーカーが、短い間、口腔または食道または胃をコーティングし、呼吸中(またはおくび中に)吐き出されるだろう。丸剤、カプセル剤、および速溶解性錠剤の形態で投与された薬物には、マーカーをコーティングとして適用するか、治療薬と物理的に混合するか、治療薬に添加することができる。液状で(例えばシロップにより、吸入器により、または他の投薬手段によって)投与される治療薬と共に、マーカーを含めることもできる。
【0125】
他の態様では、処方薬剤が静脈内投与される。静脈内投与の場合、処方薬剤は患者の血流中に直接与えられる。静脈内投与された薬物は、血中を循環するタンパク質に結合し、脂肪に吸収されるか、「遊離」型として存在し得る。静脈内投与された薬剤そのものが検出可能マーカーとして使用される態様では、本発明のセンサーは、薬物の「遊離」型を検出する。または、本発明のセンサーは、処方された静脈内薬剤に加えられる任意のマーカーを検出することができる(例えば薬剤はGRASマーカーを含むように製造することができる)。そのようなマーカーは、本発明のセンサーによる検出のために、任意の体液中に放出され得る。
【0126】
処方薬剤が非経口経路、筋肉内経路、経皮経路、口腔粘膜経路、皮下経路、または坐剤経路によって与えられるさらなる態様では、マーカーは薬剤そのものであるか、可搬装置による検出を保証するために薬剤に添加される検出可能化合物であることができる。
【0127】
もう一つの態様では、可搬装置によって検出することができるマーカーが、規制物質(例えば処方される規制物質または処方されない規制物質)を示すものを含む。例えば、処方薬剤のマーカーに加えて、本発明のセンサーは、例えば、乱用薬物(例えばアンフェタミン類、鎮痛薬、バルビツレート類、クラブドラッグ、コカイン、クラックコカイン、抑制薬、デザイナードラッグ、エクスタシー、ガンマヒドロキシブチレート-GHB、幻覚薬、ヘロイン/モルヒネ、吸入薬、ケタミン、リゼルグ酸ジエチルアミド−LSD、マリファナ、メタンフェタミン類、オピエート/麻酔薬、フェンシクリジン−PCP、幻覚発動薬、Rohypnol、ステロイド類、および興奮薬)を含む非合法、違法および/または規制物質(ただしこれらに限定されない)を代表するマーカーを検出することができる。
【0128】
本発明のマーカーは、特定の薬物または薬物クラスを示すために使用することができるだろう。例えば、患者が、抗うつ薬(ノルトリプチリンなどの三環系化合物)、抗生物質、抗高血圧剤(例えばクロニジン)、鎮痛剤、および逆流防止薬を服用している場合が考えられる。一つのマーカーを、クラスとしての抗生物質に使用するか、エリスロマイシン類などの抗生物質サブクラスに使用することができるだろう。もう一つのマーカーを、クラスとしての抗高血圧薬に使用するか、カルシウムチャネル遮断薬などの抗高血圧薬の特定サブクラスに使用することができるだろう。同じことが抗逆流薬にも当てはまるだろう。さらに、マーカー物質の組み合わせを使用することにより、かなり少数のマーカーで多数の薬剤を特異的に同定できるようにすることも可能だろう。
【0129】
本発明のシステムは、中央コンピュータおよび可搬装置を含み、可搬装置は少なくとも一つのセンサーおよび一つの試料提供手段を含む。本発明のセンサーは、標的マーカーの存在を適切に監視するために、試料提供手段と連通している。例えば、呼気または処方せん薬剤容器のヘッドスペースを可搬装置で調べようとする場合、センサーは、呼吸回路(試料が呼気である場合)または試料ワンド(試料がヘッドスペースである場合)の適切な管、バルブなどと流体連通している。
【0130】
ある使用方法では、薬剤が、処方された投与計画および本発明の可搬装置と共に、患者に提供される。患者は、薬剤の各服用後に、指定された時間間隔で、体液の試料を装置に提供するだろう。本発明によれば、体液の試料が可搬装置のセンサーに提供されるだろう。センサーによって与えられる情報は、システムに依存して、分析のために中央コンピュータに直接提供されるか、可搬装置内の処理手段によって分析されるか、または後に中央コンピュータで分析を行なうために可搬装置内の処理手段によって記憶されるだろう。標的マーカーの検出は患者における薬剤の存在をユーザーに通知し、その結果として、ある薬物が処方どおりに服用されたかどうかの査定を可能にする。
【0131】
もう一つの態様では、ニセ薬剤を検出する際に使用するための特定揮発性マーカー(または「タガント」)を使って、薬剤が製造されるだろう。与えられた薬剤のタガントに関する情報は、本発明の中央コンピュータに入力される。いくつかの態様では、その情報がユーザー(例えば薬剤師)に提供され、そしてそのユーザーがタガント情報を中央コンピュータに入力する。別の態様では、与えられた薬剤のタガントに関する情報を、中央コンピュータに(例えば処方せん薬販売者または製造者からの自動ダウンロードによって;スキャナを使ってコンピュータに取り込まれるコード情報によって)直接入力することができる。
【0132】
薬剤師が薬剤容器を初めて開封するときに、ヘッドスペース中に放出された薬剤のタガントまたはマーカーを検出するために、その容器のヘッドスペースが本発明の可搬装置を使って試料採取されるだろう。可搬装置のセンサーが適正なタガントを適切な濃度で検出しない場合、薬剤師はその薬剤が偽物であることを知り、薬剤流通を遮断、防止すると共に、偽物と疑われる薬物を関係当局に通報するだろう。
【0133】
関連する一態様では、容器内の薬物が製造者によって製造された本来の薬物であるかどうかを同定する際に使用するためのマーカーを含有する薬剤容器を製造することができる。例えば、本発明の可搬装置を使って検出することができるマーカーを持つように製造された薬剤容器には、例えば処方薬剤の添加前、添加中、または添加後に薬剤容器内部に導入された特定の揮発性マーカーを持つもの;容器の構成要素(例えば瓶、蓋など)上に特定のマーカーを含むように製造されたもの;および検出可能マーカーを含む包装資材(例えば詰め綿、乾燥剤など)を持つものなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0134】
ある使用方法では、薬剤容器のヘッドスペース内、包装資材上、または容器構成要素上に存在するべきマーカーに関する情報が薬剤師に提供されるだろう。マーカーに関する情報は、符号化された送り状、薬剤容器上の走査可能なバーコード、ファクシミリ、音声メッセージ、中央コンピュータへの電子メッセージ、または郵便メッセージなどの公知の通信方法を使って(例えば製造者または薬剤販売者から)薬剤師に提供することができる。薬剤師が薬剤容器を開封する時に、(薬剤師に提供された情報に応じて)容器ヘッドスペース、包装資材、または容器構成要素が、本発明の可搬装置を使って試料採取されるだろう。可搬装置のセンサーが適正なマーカーを(そして場合によっては適正なマーカー濃度を)検出しない場合には、薬剤師はその薬剤が偽物であることを知り、薬剤流通を遮断、防止すると共に、そのニセ薬を関係当局に通報するだろう。
【0135】
以下に、本発明を実施するための手順を例示する実施例を記載する。これらの実施例を限定であるとみなしてはならない。別段の注記がない限り、百分率は全て重量百分率であり、溶媒混合物の比率は全て体積比である。
【0136】
実施例1−薬物転用防止システム
乱用および嗜癖の可能性があり、それゆえに転用の可能性がある薬剤の製造者は、その薬物の製造時に、その薬剤を含有するマトリックスに少量のGRAS化合物を加える。GRAS化合物は、薬剤を服用した時にそれが肝臓で代謝されるという根拠で、そしてまたその代謝産物が揮発性であり、それゆえに薬剤が服用され消化管で吸収された後、短時間で呼吸中に現われるという理由で、選択される。
【0137】
薬剤師が薬剤処方せんに従って調剤する時に、センサーを持つ小さな可搬(例えば手で持てる大きさの)装置が、GRAS代謝産物を検出するようにプログラムされ、患者に与えられる。この可搬装置はGRAS化合物を検出するように適正にプログラムされる。ある態様では、検出すべきGRAS化合物のフィンガープリントを、薬局の中央コンピュータを使って可搬装置にプログラムする。薬物製造者は、薬局の中央コンピュータに、セキュアな通信リンク越しに、または他のセキュアな手段によって、GRAS化合物のフィンガープリントを提供する。
【0138】
ある態様では、個人が薬剤の転用を試みにくくなるように、薬剤のロットが変わるとGRAS化合物も変わるようにすることができる。薬剤に含有されるGRAS化合物のフィンガープリントの更新は、セキュアなネットワーク越しに、製造者から、または薬局が運用している中央情報センターから、薬局にある中央コンピュータにアップロードすることができる。
【0139】
可搬装置は、薬剤を服用する患者がその薬剤を処方された個人であることを照合するために、薬剤が服用される度に作動されなければならない指紋認識システムまたは他のバイオメトリック認識システムを持つ。
【0140】
可搬装置には他の処方せん情報(例えば薬剤を服用すべき時刻)をプログラムすることもでき、薬剤を服用すべき時刻がいつであるかを患者に思い出させるための警告システムを持つことができる。装置は、警告発令後適切な時間内にGRAS化合物が検出されない場合に健康管理人員に警告するためのシステムを持つこと、または単に服用された用量数を記憶することもでき、可搬装置が応答する方法の決定は医師が処方したとおりであるだろう。
【0141】
患者が薬剤を一回服用するごとに、患者は、呼気中のGRAS化合物の存在を検出することができる少なくとも一つのセンサーを含む可搬装置に、息を吐き出す。可搬装置は、そのイベント(患者が可搬装置に息を吐き出した時)にタイムスタンプを押すための処理手段を含むことができる。場合によっては、薬剤を服用する前に、ベースライン息試料が必要になるかもしれない。
【0142】
薬剤を再び調剤してもらうために患者が薬局を再訪問した時に、可搬装置をドックに入れ、記憶されている情報を中央コンピュータにダウンロードする。患者が服用した用量数は以前に処方された用量数と一致するべきである。食い違いがある場合は、処方医に、または服用された用量数と処方された数との食い違いが繰り返された場合など、場合によっては、取締り機関に通報し、さらなる再調剤を保留することができる。
【0143】
実施例2−ニセ薬検出システム
しばしば偽造されることが知られている薬物(通常は高価な新薬)を製造する時に、少量のマーカー(本明細書では「タガント」ともいう)、通常はGRAS化合物を、薬剤処方に加える。タガントは薬剤ロットごとに交代で使用することができ、タガントのフィンガープリントは、米国中の薬局にあるセキュアな中央コンピュータに、アップロードすることができる。
【0144】
薬剤のタグ付けに加えて、薬局に輸送される薬剤容器は、特定の薬剤ロットに関連することがわかっているフィンガープリントと組み合わせるために、中央コンピュータのスキャナで同定されるバーコードを、ラベル上に含むこともできる。薬局には、薬剤の瓶を開封する時にタガントを同定することができる可搬装置が提供される。タガントのフィンガープリントは、瓶上のバーコードによって決定される。検出されたフィンガープリントが中央コンピュータに記憶されている適切なフィンガープリントと一致しない場合、その薬剤は偽物とみなされる。
【0145】
薬剤の各用量にタガントを加えることに代わる方法には、瓶のねじ蓋の内側にタガントを加えること、または乾燥剤の小袋のような小袋を薬剤の瓶に加えることを含めることもできるだろう。この場合は、不正開封防止シールを、容器の蓋に組み込む必要があるだろう。
【0146】
本明細書に記載した実施例および態様は例示を目的とするに過ぎず、当業者には、それらに照らしてさまざまな変更または改変が示唆されると共に、それらは本願の要旨および範囲に包含されるものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0147】
(図1〜4)ある試料に関する測定および分析手順を履行する際に本発明の可搬装置が実行する機能段階の好適なフローチャートの態様を表す。
(図5)本発明に従って使用される計算手段である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一つのマーカーに特異的な少なくとも一つのセンサーを含む可搬装置;
b)少なくとも一つのマーカーの第1のマーカーを含む処方薬剤であって、該第1のマーカーは体液中に検出することができかつ処方薬剤を表すものである、処方薬剤;および
c)可搬装置によって提供される情報を処理する中央コンピュータ
を含む、処方せん投与計画に従った薬剤の服用における患者のコンプライアンスを監視し、調剤された薬剤を追跡し、処方薬剤の出所を決定するためのシステム。
【請求項2】
中央コンピュータが以下の機能の少なくとも一つを実行する第1の処理手段を含む、請求項1記載のシステム:
調剤された処方せん薬剤および対応する処方せん投与計画を追跡する機能;可搬装置によって検出することができるマーカーを追跡する機能;および処方薬剤の出所に関する情報を追跡する機能。
【請求項3】
第1の処理手段が、少なくとも一つのセンサーによって提供されるデータを受け取るための手段;ある動作が設定可能な時間間隔内に起こったかどうかを決定するための手段;記憶装置;データフィルタ;組込みアルゴリズム;イベントインジケータ;および人工ニューラルネットワークからなる群より選択される品目の少なくとも一つをさらに含む、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
中央コンピュータが可搬装置に直接接続または遠隔接続される、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
可搬装置から中央コンピュータにデータを転送することのできる通信装置をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
通信装置が、無線インターフェース、ケーブルモデム、衛星リンク、マイクロ波中継器、および電話モデムからなる群より選択される、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
通信装置が、可搬装置と中央コンピュータとの間の双方向通信を可能にする、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
センサーが、弾性表面波(surface acoustic wave)センサー;水晶微量天秤センサー;金属酸化物センサー;バルク音波(bulk acoustic wave)センサー;プレート音波(plate acoustic wave)センサー;くし形微小電極センサー;光導波路センサー;電気化学センサー;導電性センサー;人工鼻;電子鼻;電子舌;半導体ガスセンサー;質量分析計;IR、UV、可視、または蛍光の分光光度計;導電性ポリマー ガス-蛍光分光光度計を備える器具;導電性ガスセンサーを備えるセンサー;アプタマーに基づくバイオセンサー;イオン移動度スペクトロメトリ;光イオン化検出器;増幅蛍光ポリマー(amplifying fluorescent polymer)センサー;イオン移動度スペクトロメトリ;厚みすべり(thickness-shear)モードセンサー;微小重量測定センサー;分子インプリントポリマーセンサー;表面共鳴センサー;およびマイクロカンチレバーセンサーからなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
可搬装置が患者の体液の試料を可搬装置のセンサーに提供するための試料採取手段をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
試料採取手段がワンド(wand)、チャンバー、ディッシュ、プレート、ウェルアッセイ、シート、フィルム、およびディップスティックからなる群より選択される、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
体液が、呼気、全血、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊膜液、腺液、膣液、喀痰、糞便、汗、粘液、および脳脊髄液からなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
体液が呼気である、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも一つのマーカーが、処方薬剤;薬剤の代謝産物;薬剤を代謝する際に生成される内在性副生成物;GRAS添加物;および嗅覚マーカーからなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
GRAS添加物が、ジベンジルエーテル;ジフルフリルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;フルフリルメチルエーテル;イソオイゲニルベンジルエーテル;イソオイゲニルエチルエーテル;イソオイゲニルメチルエーテル;メチルフェネチルエーテル;β-ナフチルイソブチルエーテル;バニリルブチルエーテル;ジメチルエタノールアミン;イソペンチリデンイソペンチルアミン;重硫酸ナトリウム;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム;ポリグリセロールポリリシノール酸;カルシウムカゼインペプトン-リン酸カルシウム;植物性薬品;ビスグリシン酸第一鉄キレート;海藻由来カルシウム;ドコサヘキサエン酸リッチシングルセルオイル;アラキドン酸リッチシングルセルオイル;フルクトオリゴ糖;トレハロース;ガンマシクロデキストリン;フィトステロールエステル;アラビアゴム;重硫酸カリウム;ステアリルアルコール;エリトリトール;D-タガトース、およびマイコプロテイン(mycoprotein)からなる群より選択される、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
植物性薬品がキク;甘草;仙草(jellywort);スイカズラ;ササクサ;桑葉;インドソケイ;ウツボグサ;およびエンジュ花芽からなる群より選択される、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
嗅覚マーカーが、ジメチルスルホキシド;アセトアルデヒド;アセトフェノン;トランス-アネトール(1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン)(アニス);ベンズアルデヒド(ベンゾイックアルデヒド);ベンジルアルコール;ケイ皮酸ベンジル;カジネン;カンフェン;ショウノウ;シンナムアルデヒド(3-フェニルプロペナール);ニンニク;シトロネラール;クレゾール;シクロヘキサン;ユーカリプトール;オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル;イソ酪酸ブチル(n-ブチル 2,メチルプロパン酸)(パイナップル);シトラール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-アール);メントール(1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン-3-オール);およびα-ピネン(2,6,6-トリメチルビシクロ-(3,1,1)-2-ヘプテン)からなる群より選択される、請求項13記載のシステム。
【請求項17】
第1のマーカーが処方薬剤であり、処方薬剤が可搬装置のセンサーによるマーカーの検出を強化する化合物をさらに含む、請求項13記載のシステム。
【請求項18】
処方薬剤が、麻薬性鎮痛薬;他の薬剤と組み合わされた麻薬性鎮痛薬;さまざまな精神状態または精神障害を処置するための薬剤;勃起機能障害を処置するための薬剤、体重問題を処置するための薬剤;脳神経系抑制薬;下痢を処置するための薬剤;および興奮薬からなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
処方薬剤が、Darvon、Demerol、Dilaudid、フェンタニル、Methadose、MSIR、Nubain、Oxycontin、Roxanol、Stadol、Vicodin;Lorcet;Tylox;Percocet、ジアゼパム、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、Viagra、Mebaral、Nembutal、Librium、Xanax、Halcion、ProSom、Adderal;Dexedrine、Ritalin;Focalin;およびProvigilからなる群より選択される、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
可搬装置が、センサーによって生成されたシグナルを処理するための第2の処理手段をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
第2の処理手段が、少なくとも一つのセンサーによって提供されるデータを受け取るための手段;ある動作が設定可能な時間間隔内に起こったかどうかを決定するための手段;記憶装置;データフィルタ;組込みアルゴリズム;イベントインジケータ;および人工ニューラルネットワークからなる群より選択される品目の少なくとも一つをさらに含む、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
第2の処理手段が、可搬装置のさまざまな演算を連係させるプログラムコードを実行する、請求項21記載のシステム。
【請求項23】
プログラムコードの少なくとも一つが、対話ソフトウェア(interaction software);体液分析ソフトウェア;およびカレンダーソフトウェアからなる群より選択される、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
可搬装置が同定システムをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項25】
同定システムが、バイオメトリック同定システム、電子コード化システム、および錠-鍵型(lock-and-key)同定システムからなる群より選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
可搬装置が、入力手段および表示手段からなる群より選択される品目の少なくとも一つをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項27】
品目が、入力装置;双方向グラフィックモニター;液晶表示装置;およびモニターからなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項28】
可搬装置がモジュラーセクションを使って設計される、請求項1記載のシステム。
【請求項29】
処方薬剤用の薬剤容器をさらに含み、薬剤容器が第2のマーカーを含み、該第2のマーカーが処方薬剤の出所を示す、請求項1記載のシステム。
【請求項30】
第2のマーカーが、容器のヘッドスペース中、該容器の構成要素上、または容器の包装資材上に検出可能である、請求項29記載のシステム。
【請求項31】
a)処方薬剤に関する情報を可搬装置および中央コンピュータに提供する段階;
b)処方薬剤を患者に分与する段階;
c)患者の体液の試料を可搬装置の少なくとも一つのセンサーに曝露する段階;ならびに
d)可搬装置からのデータを記録および分析する段階
を含む、処方せん投与計画に従った薬剤の服用における患者のコンプライアンスを監視し、調剤された薬剤を追跡するための方法であって、少なくとも一つのセンサーは少なくとも一つのマーカーに特異的であり、処方薬剤は少なくとも一つのマーカーの第1のマーカーを含み、該第1のマーカーは体液中に検出することができかつ処方薬剤を表し、ならびに該情報は、処方せん投与計画に関する情報、第1のマーカーに関する情報、および処方せん投与計画の副作用に関する情報からなる群より選択される少なくとも一つの事項を含む、方法。
【請求項32】
処方せん投与計画に関する情報、第1のマーカーに関する情報、および処方せん薬剤投与計画の副作用に関する情報が中央コンピュータに提供され、中央コンピュータが、以下の機能の少なくとも一つを実行する第1の処理手段を含む、請求項31記載の方法:
調剤された処方せん薬剤および対応する処方せん投与計画を追跡する機能;および可搬装置によって検出することができるマーカーを追跡する機能。
【請求項33】
第1の処理手段が、少なくとも一つのセンサーによって提供されるデータを受け取るための手段;ある動作が設定可能な時間間隔内に起こったかどうかを決定するための手段;記憶装置;データフィルタ;組込みアルゴリズム;イベントインジケータ;および人工ニューラルネットワークからなる群より選択される品目の少なくとも一つをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
中央コンピュータが可搬装置に直接接続または遠隔接続される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
中央コンピュータが、可搬装置から中央コンピュータにデータを転送することのできる通信装置をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項36】
通信装置が、無線インターフェース、ケーブルモデム、衛星リンク、マイクロ波中継器、および電話モデムからなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
通信装置が、可搬装置と中央コンピュータとの間の双方向通信を可能にする、請求項35記載の方法。
【請求項38】
センサーが、弾性表面波センサー;水晶微量天秤センサー;金属酸化物センサー;バルク音波センサー;プレート音波センサー;くし形微小電極センサー;光導波路センサー;電気化学センサー;導電性センサー;人工鼻;電子鼻;電子舌;半導体ガスセンサー;質量分析計;IR、UV、可視、または蛍光の分光光度計;導電性ポリマー ガス-蛍光分光光度計を備える器具;導電性ガスセンサーを備えるセンサー;アプタマーバイオセンサー;イオン移動度スペクトロメトリ;光イオン化検出器;増幅蛍光ポリマーセンサー;イオン移動度スペクトロメトリ;厚みすべりモードセンサー;微小重量測定センサー;分子インプリントポリマーセンサー;表面共鳴センサー;およびマイクロカンチレバーセンサーからなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項39】
可搬装置が、患者の体液の試料を可搬装置のセンサーに曝露するための試料採取手段をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項40】
試料採取手段が、ワンド、チャンバー、ディッシュ、プレート、ウェルアッセイ、シート、フィルム、およびディップスティックからなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
体液が、呼気、全血、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊膜液、腺液、膣液、喀痰、糞便、汗、粘液、および脳脊髄液からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項42】
体液が呼気であり、処方薬剤を患者に投与する段階;および薬剤の投与後に、呼気の試料を可搬装置の少なくとも一つのセンサーに提供する段階をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
少なくとも一つのマーカーが、処方薬剤;薬剤の代謝産物;薬剤を代謝する際に生成される内在性副生成物;GRAS添加物;および嗅覚マーカーからなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項44】
GRAS添加物が、ジベンジルエーテル;ジフルフリルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;フルフリルメチルエーテル;イソオイゲニルベンジルエーテル;イソオイゲニルエチルエーテル;イソオイゲニルメチルエーテル;メチルフェネチルエーテル;β-ナフチルイソブチルエーテル;バニリルブチルエーテル;ジメチルエタノールアミン;イソペンチリデンイソペンチルアミン;重硫酸ナトリウム;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム;ポリグリセロールポリリシノール酸;カルシウムカゼインペプトン-リン酸カルシウム;植物性薬品;ビスグリシン酸第一鉄キレート;海藻由来カルシウム;ドコサヘキサエン酸リッチシングルセルオイル;アラキドン酸リッチシングルセルオイル;フルクトオリゴ糖;トレハロース;ガンマシクロデキストリン;フィトステロールエステル;アラビアゴム;重硫酸カリウム;ステアリルアルコール;エリトリトール;D-タガトース、およびマイコプロテインからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
植物性薬品が、キク;甘草;仙草;スイカズラ;ササクサ;桑葉;インドソケイ;ウツボグサ;およびエンジュ花芽からなる群より選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
嗅覚マーカーが、ジメチルスルホキシド;アセトアルデヒド;アセトフェノン;トランス-アネトール(1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン)(アニス);ベンズアルデヒド(ベンゾイックアルデヒド);ベンジルアルコール;ケイ皮酸ベンジル;カジネン;カンフェン;ショウノウ;シンナムアルデヒド(3-フェニルプロペナール);ニンニク;シトロネラール;クレゾール;シクロヘキサン;ユーカリプトール;オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル;イソ酪酸ブチル(n-ブチル 2,メチルプロパン酸)(パイナップル);シトラール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-アール);メントール(1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン-3-オール);およびα-ピネン(2,6,6-トリメチルビシクロ-(3,1,1)-2-ヘプテン)からなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項47】
第1のマーカーが処方薬剤であり、処方薬剤が可搬装置のセンサーによるマーカーの検出を強化する化合物をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項48】
処方薬剤が、麻薬性鎮痛薬;他の薬剤と組み合わされた麻薬性鎮痛薬;さまざまな精神状態または精神障害を処置するための薬剤;勃起機能障害を処置するための薬剤、体重問題を処置するための薬剤;脳神経系抑制薬;下痢を処置するための薬剤;および興奮薬からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項49】
処方薬剤が、Darvon、Demerol、Dilaudid、フェンタニル、Methadose、MSIR、Nubain、Oxycontin、Roxanol、Stadol、Vicodin;Lorcet;Tylox;Percocet、ジアゼパム、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、Viagra、Mebaral、Nembutal、Librium、Xanax、Halcion、ProSom、Adderal;Dexedrine、Ritalin;Focalin;およびProvigilからなる群より選択される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
可搬装置が、センサーによって生成されたシグナルを処理するための第2の処理手段をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項51】
第2の処理手段が、少なくとも一つのセンサーによって提供されるデータを受け取るための手段;ある動作が設定可能な時間間隔内に起こったかどうかを決定するための手段;記憶装置;データフィルタ;組込みアルゴリズム;イベントインジケータ;および人工ニューラルネットワークからなる群より選択される品目の少なくとも一つをさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
第2の処理手段が、可搬装置のさまざまな演算を連係させるプログラムコードを実行する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
プログラムコードの少なくとも一つが、対話ソフトウェア;体液分析ソフトウェア;およびカレンダーソフトウェアからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
可搬装置が同定システムをさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項55】
同定システムが、バイオメトリック同定システム、電子コード化システム、および錠-鍵型同定システムからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
同定システムがバイオメトリック同定システムであり、患者体液の試料を可搬装置の少なくとも一つのセンサーに曝露する前に、バイオメトリック特性をバイオメトリック同定システムに供給する段階をさらに含む、請求項55記載の方法。
【請求項57】
可搬装置がモジュラーセクションを使って設計される、請求項31記載の方法。
【請求項58】
a)処方薬剤の出所に関する情報を可搬装置および中央コンピュータに提供する段階;
b)薬剤容器の一部分を可搬装置の少なくとも一つのセンサーに曝露する段階;
d)可搬装置からのデータを記録および分析する段階
を含む、処方せん薬剤の出所を決定するための方法であって、少なくとも一つのセンサーは少なくとも一つのマーカーに特異的であり、薬剤容器は少なくとも一つのマーカーの第1のマーカーを含み、該第1のマーカーは処方薬剤の出所を表し、および該情報は第1のマーカーに関する情報を含むものである方法。
【請求項59】
薬剤容器の一部分が、ヘッドスペース、蓋、および包装資材からなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
第1のマーカーに関する情報に関する情報が中央コンピュータに提供され、中央コンピュータが、処方薬剤の出所に関する情報を追跡する第1の処理手段を含む、請求項58記載の方法。
【請求項61】
中央コンピュータが可搬装置に直接接続または遠隔接続される、請求項58記載の方法。
【請求項62】
中央コンピュータが中央コンピュータへの通信を可能にする通信装置をさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項63】
通信装置が、無線インターフェース、ケーブルモデム、衛星リンク、マイクロ波中継器、および電話モデムからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
通信装置が可搬装置と中央コンピュータとの間の双方向通信を可能にする、請求項62記載の方法。
【請求項65】
センサーが、弾性表面波センサー;水晶微量天秤センサー;金属酸化物センサー;バルク音波センサー;プレート音波センサー;くし形微小電極センサー;光導波路センサー;電気化学センサー;導電性センサー;人工鼻;電子鼻;電子舌;半導体ガスセンサー;質量分析計;IR、UV、可視、または蛍光の分光光度計;導電性ポリマー ガス-蛍光分光光度計を備える器具;導電性ガスセンサーを備えるセンサー;アプタマーバイオセンサー;イオン移動度スペクトロメトリ;光イオン化検出器;増幅蛍光ポリマーセンサー;イオン移動度スペクトロメトリ;厚みすべりモードセンサー;微小重量測定センサー;分子インプリントポリマーセンサー;表面共鳴センサー;およびマイクロカンチレバーセンサーからなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項66】
少なくとも一つのマーカーが、処方薬剤;GRAS添加物;および嗅覚マーカーからなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項67】
GRAS添加物が、ジベンジルエーテル;ジフルフリルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;フルフリルメチルエーテル;イソオイゲニルベンジルエーテル;イソオイゲニルエチルエーテル;イソオイゲニルメチルエーテル;メチルフェネチルエーテル;β-ナフチルイソブチルエーテル;バニリルブチルエーテル;ジメチルエタノールアミン;イソペンチリデンイソペンチルアミン;重硫酸ナトリウム;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム;ポリグリセロールポリリシノール酸;カルシウムカゼインペプトン-リン酸カルシウム;植物性薬品;ビスグリシン酸第一鉄キレート;海藻由来カルシウム;ドコサヘキサエン酸リッチシングルセルオイル;アラキドン酸リッチシングルセルオイル;フルクトオリゴ糖;トレハロース;ガンマシクロデキストリン;フィトステロールエステル;アラビアゴム;重硫酸カリウム;ステアリルアルコール;エリトリトール;D-タガトース、およびマイコプロテインからなる群より選択される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
植物性薬品が、キク;甘草;仙草;スイカズラ;ササクサ;桑葉;インドソケイ;ウツボグサ;およびエンジュ花芽からなる群より選択される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
嗅覚マーカーが、ジメチルスルホキシド;アセトアルデヒド;アセトフェノン;トランス-アネトール(1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン)(アニス);ベンズアルデヒド(ベンゾイックアルデヒド);ベンジルアルコール;ケイ皮酸ベンジル;カジネン;カンフェン;ショウノウ;シンナムアルデヒド(3-フェニルプロペナール);ニンニク;シトロネラール;クレゾール;シクロヘキサン;ユーカリプトール;オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル;イソ酪酸ブチル(n-ブチル 2,メチルプロパン酸)(パイナップル);シトラール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-アール);メントール(1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン-3-オール);およびα-ピネン(2,6,6-トリメチルビシクロ-(3,1,1)-2-ヘプテン)からなる群より選択される、請求項66記載の方法。
【請求項70】
可搬装置が、センサーによって生成されたシグナルを処理するための第2の処理手段をさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項71】
第2の処理手段が、少なくとも一つのセンサーによって提供されるデータを受け取るための手段;ある動作が設定可能な時間間隔内に起こったかどうかを決定するための手段;記憶装置;データフィルタ;組込みアルゴリズム;イベントインジケータ;および人工ニューラルネットワークからなる群より選択される品目の少なくとも一つをさらに含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
第2の処理手段が、可搬装置のさまざまな演算を連係させるプログラムコードを実行する、請求項70記載の方法。
【請求項73】
プログラムコードの少なくとも一つが、対話ソフトウェア;マーカー分析ソフトウェア;およびカレンダーソフトウェアからなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
可搬装置がモジュラーセクションを使って設計される、請求項58記載の方法。

【公表番号】特表2008−513896(P2008−513896A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532654(P2007−532654)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/033878
【国際公開番号】WO2006/034367
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(500228159)ユニバーシティ・オブ・フロリダ・リサーチ・ファンデーション・インコーポレーテッド (13)
【Fターム(参考)】