説明

処理データ管理システム、処理システム、および、処理装置のデータ管理方法

【課題】製造プロセスに何らかの異常が発生した場合、あとからその原因を追求して速やかに修復できるように、製造プロセスの履歴を保存できるようにする。
【解決手段】同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置(磁気ディスク製造用のスパッタリング装置など)11と、処理装置における処理条件の生データ(放電条件など)を収集するサンプリングユニット30と、前記生データを受け取り、生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データ(特性値:例えば平均値、最大値、最小値、標準偏差、放電時間など)として加工する演算部100と、その加工した要約データを記憶手段に保存するデータ保存ユニット40と、記憶手段に保存された要約データをチャート表示する表示・出力ユニット50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に高記録密度の磁気ディスクの製造現場等に適用される処理データ管理システム、その処理データ管理システムを含んだ処理システム、および、磁気ディスク製造装置等の処理装置のデータ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクの記録密度の増大が著しい。高記録密度の磁気ディスクは、基板の表面に複数の磁性層を形成する工程を経て製造される。各磁性層の下には下地層、上には保護層を設けるので、いくつもの膜形成工程を経て、磁気ディスクは製造される。このため、磁気ディスクの製造には、各工程を処理するための多数の処理室を並べた構成の処理装置が使用されている。
【0003】
例えば、1枚の磁気ディスクを製造する場合、ディスク(基板)を多数の処理室に順番に通過させ、各処理室毎に所定の工程処理を施す。各処理室では、1回の工程処理を1サイクルとして、同じ工程処理をディスクの通過毎に繰り返し行い、処理したらディスクを次の処理室へと送り出す。そして、終端の処理室から、全工程を経た磁気ディスクを送り出す。
【0004】
このような高記録密度の磁気ディスクの製造装置(処理装置)として、主にスパッタリング装置が使用されている。スパッタリング装置は、真空中に放電ガスを導入して、電極への電力の投入によりグロー放電を発生させ、グロー放電により発生したプラズマ中のイオンの衝突により、ターゲット金属の薄膜をディスクの表面に形成するものである。
【0005】
スパッタリング装置の各処理室では、1枚のディスクの片面に成膜処理する場合もあれば、両面に成膜処理する場合、2枚のディスクの片面に成膜処理する場合、2枚のディスクの両面に成膜処理する場合などもある。例えば、1つの処理室で2枚のディスクの各両面に同時に成膜処理する場合、放電発生のためのカソード電極を4枚装備し、各電極毎に電力を投入する必要がある。
【0006】
ところで、この種の磁気ディスクを製造する場合、製造プロセスの履歴を保存しておくことが重要である。それは、製造プロセスに何らかの異常が発生して不良品が発生した場合、あとからその原因を追求して速やかに修復することができるからである。
【0007】
従来の磁気ディスクの製造現場では、工程処理の条件データ(放電条件、ガス圧、基板温度など)をサンプリングし、そのサンプリングした生データを、そのままの形でグラフ等に表示または、記憶手段に保存する。そして、不良品が発生した場合は、ディスクやロットのインデックスに従って取り出した生データを、例えば、時系列でディスプレイ画面上にグラフ表示させ、グラフの波形を見て分析できるようにしている。
【0008】
図17は、従来の磁気ディスク製造システム(処理システム)の構成を模式的に示すブロック図である。
【0009】
この製造システムは、被加工物Wであるディスクをスパッタリング処理する処理装置(スパッタリング装置)10と、処理装置10を制御する制御ユニット20と、スパッタリング処理する際の処理条件の生データ(放電発生のための電源出力やガス圧、基板温度など)を取り込むサンプリングユニット(生データ収集手段)30と、収集したデータを記録手段に保存するデータ保存ユニット(データ保存手段)40と、収集したデータあるいは保存したデータを必要に応じてチャート表示したり他の出力手段に出力したりする表示・出力ユニット(表示手段)50と、からなる。
【0010】
処理装置10には、必要な工程処理を行うための処理室11と、処理を行うための処理ユニット12と、処理状況をモニタするためのセンサ13などが装備されており、処理ユニット12やセンサ13から出力される生データがサンプリングユニット30に入力される。センサ13や処理ユニット12から出されるデータは、アナログデータであることもあるし、デジタルデータであることもある。生データは、サンプリングユニット30において、データ保存ユニット40や表示・出力ユニット50が取り込める形(デジタルデータの形)に適宜変換された後、保存されたり表示・出力される。
【0011】
実際の磁気ディスク製造のための処理は、複数の工程を順番に経ることで行われるものであるから、処理装置10には、複数の処理室11が、ディスクの表面に所定の順序で薄膜を形成することができるように配列されている。そして、各処理室11において、それぞれ同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行うようになっている。この場合の処理装置10は、所定のガス圧雰囲気に保持された処理室11内での放電の発生によりディスク(基板)の表面に磁気ディスク用の薄膜を形成するものであるから、各処理室11では、薄膜形成のための各処理を順番に行う。
【0012】
また、サンプリングユニット20は、処理装置10における処理条件の生データを収集し、ここでは、多数の磁気ディスクの薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータを収集する。例えば、放電の発生のための電源出力(電力、電圧、電流)や処理室11のガス圧、ディスクの温度などの生のデータを一定のサンプリング間隔で収集する。
【0013】
ところで、このような処理において、生データの取得(サンプリング)は、各処理室11毎の1工程(サイクル)の処理内に複数回行うことが多い。これは、1サイクル中の各種パラメータの経時変化を詳しくみるためであり、特に処理結果を大きく左右するパラメータについては、1工程中の変化を良く見る必要があり、このようにしている。
【0014】
このようにして取り込まれたデータを時系列に表示したものは、例えば、図18のようなグラフになる。図18中で横軸は時間、縦軸は放電電圧等の測定値である。
【0015】
本例の場合、各構成要素が次のような具体的手段と対応している。
(名称) (具体的な手段の例)
処理装置10 … スパッタ装置
処理領域 … チャンバ(処理室11)内
処理ユニット12 … スパッタカソード、放電用電源など
センサ13 … 圧力計など
制御ユニット20 … PLC
サンプリングユニット30 … A/Dコンバータ
表示・出力ユニット50 … コンピュータ
データ保存ユニット40 … ハードディスクドライブ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上記のような製造システムにおいて、高密度記録の磁気ディスクを製造する場合、成膜品質(膜厚や膜質)の要求が極めてシビアであり、そのため、1サイクル内でのサンプリング間隔を短くしたり、サンプリング項目(パラメータ)を多くする必要がある。
【0017】
具体的には、例えば、1サイクルは6秒に設定されており、1秒間に40回サンプリングを行っている。検出項目(パラメータ)としては、電源出力に関しては、電力、電圧、電流であり、その他にガス圧、ディスク温度がある。1つの処理室11において、2枚のディスクの表裏2面を同時処理する場合、カソードの数は4枚であるから、電源出力に関しては、3項目×4=12項目あり、そのほかにガス圧の1項目と、2枚のディスクの各温度の2項目を加えると、各処理室11毎に全部で15項目について、生データをとらなければならない。従って、多数の処理室11を有する処理装置10全体で収集する生データの量が非常に膨大なものとなってしまう。
【0018】
また、そのほかに、従来のシステムでは、生データの波形をそのままグラフ表示しているだけであるから、却って分析がしにくく問題が見つけにくい場合もあった。
【0019】
このような背景から、従来の磁気ディスク製造システムでは、次のような(1)、(2)、(3)の問題があることが指摘できる。
【0020】
(1)画面上の生データの波形を見ても異常が掴みにくい場合があり、特に膨大なデータであるので、長期スパンで縮小表示すれば、全体は見えるが細部を読み取ることができず、短期スパンで拡大表示すれば、細部は見えるが長期変動などを読み取るのが難しい場合があった。
【0021】
即ち、従来の製造システムでは、生データをそのままグラフにプロットしている。図19は長期スパンで縮小表示したグラフ、図20は短期スパンで拡大表示したグラフである。図19に示すように、長時間のデータをグラフ表示させた場合、表示が密になるため、個々の波形が把握しにくくなる。逆に、図20に示すように、短時間のデータをグラフ表示させた場合、一度にディスプレイ画面上に表示できるサイクル数が少なくなり、長期的な変動を捉えることが困難になる。
【0022】
これらにより、現状のデータ管理の方法では、データ中に異常が発生した場合に、異常発生箇所を発見するのが困難である。つまり、1サイクル毎の波形の比較が難しいし、波形の長期変動を確認するのが難しい。
【0023】
(2)生データの波形だけ見ても、合否判定が難しい。
即ち、この種の生データを利用する場合、処理の合否を判断するために、人間が波形をみて判断する方法がとられることが多い。この場合、1日に1サイクル程度から1時間に1サイクル程度であれば、その都度人間が確認することも容易であるが、それ以上に速い場合、つまり、本例のように1サイクルが6秒のような短い場合、6秒毎に目視で生データの波形を確認する必要があり、長時間人間が観察を続けるのは困難である。
【0024】
この対策としては、上下限アラーム値を設けて、これを越した場合にアラームを発生させるようにすることが考えられる。複数の処理装置を並列して使用している場合、事実上目視による合否は不可能になるため、これらのアラーム機能は必須のものである。しかし、このアラーム機能では、アラーム設定値を越えない範囲での変動を把握することができない。
【0025】
(3)生データ量が膨大になるため、データの保存が難しい。
即ち、上記従来の製造システムで、生データを逐次データ保存ユニット40に保存していくと、データ量が膨大になる。そのため、大容量のデータ保存ユニット40を搭載するか、一定期間毎にデータを他のバックアップメディアに記録した後に記憶内容を消去して空き領域を確保する必要がある。このような生データは、有益な情報を含んではいるが、一点一点の生データ自体が有益な情報を含んでいるのではない。有益な情報は、波形全体に含まれる、ある種の情報であり、個別の生データそのものではない。つまり、生データをそのまま保存するのは無駄が多い。
【0026】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、生データを、サイクル毎の特徴点を表現する要約データ(以下においては、特性値ということもある)に加工した上で保存することにより、上記課題を解決できるようにした処理データ管理システム、その処理データ管理システムを含んだ処理システム、および、磁気ディスク製造装置等の処理装置のデータ管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1の発明の処理データ管理システムは、同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において収集された処理条件の生データを受け取り、該生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段と、その加工した要約データを記憶手段に保存するデータ保存手段と、を備えることを特徴としている。
【0028】
請求項2の発明の処理データ管理システムは、同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において収集された処理条件の生データを受け取り、該生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段と、その加工した要約データをチャート表示する表示手段と、を備えることを特徴としている。
【0029】
請求項3の発明の処理データ管理システムは、同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において収集された処理条件の生データを受け取り、該生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段と、その加工した要約データを記憶手段に保存するデータ保存手段と、前記データ加工手段が出力する要約データまたは前記記憶手段に保存された要約データをチャート表示する表示手段と、を備えることを特徴としている。
【0030】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の処理データ管理システムであって、前記生データは、多数の被加工物に対する薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータであり、前記要約データは、前記薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータを、一定の分析視点に基づいて変換することにより小容量化したデータであることを特徴としている。
【0031】
請求項5の発明は、請求項4に記載の処理データ管理システムであって、前記生データは、多数の磁気ディスクの薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータであり、前記要約データは、前記多数の磁気ディスクの薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータを、一定の分析視点に基づいて変換することにより小容量化したデータであることを特徴としている。
【0032】
請求項6の発明の処理システムは、同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置と、該処理装置における処理条件の生データを収集する生データ収集手段と、該生データ収集手段の収集した生データを管理するための請求項1〜5のいずれかに記載の処理データ管理システムと、を備えることを特徴としている。
【0033】
請求項7の発明は、請求項6に記載の処理システムであって、前記処理装置は、所定のガス圧雰囲気に保持された処理室内での放電の発生により基板の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置であり、前記生データ収集手段は、少なくとも放電の発生のための電源出力の生データを一定のサンプリング間隔で収集し、前記処理データ管理システムは、前記電源出力の生データに基づいて、放電のON時間、電源出力の平均値、最大値、最小値、標準偏差などの少なくとも1つの項目について繰り返しサイクル毎に要約データを演算して表示または保存することを特徴としている。
【0034】
請求項8の発明は、請求項7に記載の処理システムであって、前記処理装置は、処理室内に放電発生のための複数の電極を備えており、前記生データ収集手段は、各電極毎の放電発生のための電源出力の生データを収集することを特徴としている。
【0035】
請求項9の発明は、請求項7または8に記載の処理システムであって、前記処理装置は、基板に所定の順序で薄膜を形成するための複数の処理室を備えており、前記生データ収集手段は、各処理室毎の放電発生のための電源出力の生データを収集することを特徴としている。
【0036】
請求項10の発明は、請求項7〜9のいずれかに記載の処理システムであって、前記薄膜形成装置が、磁気ディスク製造装置であることを特徴としている。
【0037】
請求項11の発明の処理装置のデータ管理方法は、同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において工程処理条件の生データを収集するステップと、収集した前記生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するステップと、その加工した要約データを記憶手段に保存するステップと、を備えることを特徴としている。
【0038】
請求項12の発明の処理装置のデータ管理方法は、同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において工程処理条件の生データを収集するステップと、収集した前記生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するステップと、その加工した要約データをチャート表示するステップと、を備えることを特徴としている。
【0039】
請求項13の発明は、請求項11または12に記載の処理装置のデータ管理方法であって、前記処理装置における工程処理が、所定のガス圧雰囲気に保持された処理室内での放電の発生により基板の表面に磁気ディスク用の薄膜を形成する薄膜形成処理であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0040】
(1)要約データを用いることで、各サイクル毎の処理状態の変化が容易に把握できる。つまり、分析に適した形の解析用の切り口を容易に提供することができる。
【0041】
(2)要約データを用いることで、生データでは困難であった合否判定ができ、不良品の発生防止や不良判定に役立つ。
【0042】
(3)要約データを保存することで、データ保存量を小さくすることができる。従って、極めて大量の生データが発生する高記録密度の磁気ディスクの製造に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を説明する。
まず、概略的なことを述べると、上述した生データには、放電の安定性を示す重要な情報が含まれている。そのデータをいかにうまく抽出して表示させ、トータルのデータサイズを小さくするのか、というのが本発明のポイントである。
【0044】
例えば、電源出力の生データからは、放電時間、放電期間中の平均電力などが計算できる。つまり、1サイクルの生データから抽出した数少ないデータによって、放電の特性を代表させることができると考えられる。
【0045】
もちろん、これらの抽出データには含まれない細かな情報が生データには含まれている。例えば、放電の立ち上がり具合、立下り具合、放電時の電力安定性などである。しかし、このように生データから、ある処理を施していくつかの数値を得れば、生データの代わりにこの値をプロットすることができ、このプロットを延々と続けることにより、例えば、放電時間と平均電力の経時変化を視覚的に把握できる。この場合、1サイクルが1点のプロットデータになるため、比較的長時間の傾向を1画面に表示することが可能であり、さらにデータサイズも大幅に減らすことができる。
【0046】
放電の立ち上がり具合なども、うまく計算処理することによって1つの数値にして表すことが可能であるが、ここでは、それ以外の放電の特性を表す幾つかの値(本明細書では「要約データ」または「特性値」という)を生データから抽出することで、データの経時変化を的確に視覚化し、かつデータサイズを削減するようにしている。
【0047】
本実施形態では、このような放電特性を表す特性値として、
・放電時間
・放電中の出力標準偏差
・放電中の出力平均値、最小値、最大値
の項目を採用している。その他に異常放電回数(急激な出力低下をカウント)を採用することも考えられる。
【0048】
図1は本発明の実施形態の磁気ディスク製造システム(処理システム)の構成を模式的に示すブロック図である。
【0049】
この製造システムは、被加工物Wであるディスクをスパッタリング処理する処理装置(スパッタリング装置)10と、処理装置10を制御する制御ユニット20と、スパッタリング処理する際の処理条件の生データ(放電発生のための電源出力やガス圧、基板温度など)を取り込むサンプリングユニット(生データ収集手段)30と、収集した生データを受け取り、一定のルールに基づいて演算して、サイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段としての演算部100と、加工した要約データを記録手段に保存するデータ保存ユニット(データ保存手段)40と、収集したデータあるいは保存したデータを必要に応じてチャート表示したり他の出力手段に出力したりする表示・出力ユニット(表示手段)50と、からなる。
【0050】
データ管理の方法としてみると、サンプリングユニット30は、処理条件の生データを収集するステップを実行し、演算部100は、生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データに加工するステップを実行し、データ保存ユニット40は、要約データを記憶手段に保存するステップを実行し、表示・出力ユニット50は、記憶手段に保存された要約データをチャート表示するステップを実行する。
【0051】
ここで、演算部100、データ保存ユニット40、表示・出力ユニット50で構成されるグループは、処理装置10側と切り離して、処理データ管理システムとして独立させることができる。また、その中でも、演算部100およびデータ保存ユニット40と、表示・出力ユニット50とを切り離すこともできる。切り離すとは、空間的にも時間的にも独立させることができるということを意味する。
【0052】
要約データは、スパッタリング処理(薄膜形成処理)の処理条件に関する生のデータを、一定の分析視点に基づいて変換することにより小容量化したデータであり、具体的には、上述したように、電源出力に基づいて算出した、放電のON時間、電源出力の平均値、最大値、最小値、標準偏差である。
【0053】
処理装置10には、必要な工程処理を行うための処理室11と、処理を行うための処理ユニット12と、処理状況をモニタするためのセンサ13などが装備されており、処理ユニット12やセンサ13から出力される生データがサンプリングユニット30に入力される。サンプリングユニット30から出力されるデータは、演算部100で加工された後、データ保存ユニット40や表示・出力ユニット50に入力される。もちろん、演算部100で加工されない生データの形で、表示・出力ユニット50に表示・出力させる構成とすることも可能でる。
【0054】
図1のブロック図で明らかなように、本製造システムの特徴点は、サンプリングユニット30の後に演算部100を設けたことである。この演算部100は、デジタル信号処理回路やアナログ演算回路で構成することもできるが、ここでは、ソフトウェアで動くコンピュータによって構成した場合について説明する。
【0055】
演算部100は、1サイクル分の生データを、その特徴を表す値(これを「特性値」と呼ぶ。請求項の「要約データ」に相当)に変換する。1つの測定項目(パラメータ)の1サイクル分の生データに対して、複数の特性値を定義することが可能であり、ここでは、例として、放電電圧に対して、平均値、最大値、最小値、標準偏差、放電ON時間の5つの特性値を定義している。
【0056】
演算部100は、外部または内部のトリガ信号によって演算を開始すると共に、演算終了トリガによって演算を終了し、得られた特性値を出力する。内部トリガの例は、次のようなものである。即ち、入力されるデータが一定の条件を満たしたときに計算を開始し、条件を満たさなくなったときに計算を終了する。具体的には、放電電流でON時間を判定する場合を図2に例として示すように、ある閾値を越した時に測定を開始し、閾値未満になった時に測定を終了する。
【0057】
放電電圧のように処理時(放電中)と非処理時(無放電時)の値が異なる場合は、閾値による内部トリガで、自動的にデータの計算を開始し終了することができる。しかし、処理時と非処理時で値が変わらないものや、処理時・非処理時の差に比べてばらつきの方が大きいものは、内部トリガを用いることができない。そのような場合は、他のパラメータの閾値と連動させて計算開始させるか、制御ユニット20からのサイクルに同期した計算開始指令によって計算を開始させる。このようなパラメータの例として「ガス圧力」がある。プロセス条件にもよるが、圧力は処理時も非処理時もほぼ同様の値であり、閾値で計算させるのが難しい。
【0058】
演算部100で計算した特性値は、サイクル毎に出力され、出力された特性値は、適宜、データ保存ユニット40や表示・出力ユニット50に送られる。データの保存や表示には、データベースを利用したプログラム(図示せず)を利用することができる。
【実施例】
【0059】
実施例として、ここでは次の条件を想定している。
・1サイクル 6秒
・処理内容 スパッタリングによる薄膜形成
・処理時間 1秒
・処理ユニット スパッタ電源(出力:電圧、電流、電力)
・センサ 圧力計
・サンプリング間隔 40点/秒
・取得データ スパッタ時の放電電力
・特性値 ON時間、平均値、最大値、最小値、標準偏差
・閾値 5W
【0060】
上記条件でデータを処理し、特性値を得た。
図3、図4、図5は、図1の製造システムにおいて、生データ250サイクル分を特性値に変換した結果をに示す。これは正常時の特性値の波形である。横軸はディスクナンバーであり、1サイクルが1ディスクに相当する。
【0061】
図3は、スパッタ電力(Power)の平均値(中央)、最大値(上)、最小値(下)をプロットしたものである。
【0062】
図4は、電力ON中の電力の標準偏差(Standard Deviation)をプロットしたものである。
【0063】
図5は、スパッタ電力のON時間(Duration)をプロットしたものである。ただし、電力ONの閾値は5Wに設定した。
【0064】
上述した図19の生データのグラフでは、約130サイクル分の生データを表示させているが、一つ一つのサイクルの波形が問題ないかを確認するのは困難である。一つ一つの波形を確認するために、横軸を拡大して図20のように拡大表示させた場合は、波形の形をみることはできるが、離れた部分の波形との違いを比較するのは困難である。また、波形の形を目視で確認する作業は、異常点を発見しやすい場合もあるが、人間による作業のため、見落としてしまう可能性もある。
【0065】
一方、生データを特性値に変換した図3、図4、図5のデータは、図19で表示しているサイクルの2倍のサイクルを表示している。図3をみると、放電中の平均電力は227W程度で、サイクル間では±2W程度の変動があることが分かる。また、放電中の電力最大値は231W、最小値は222W程度であり、これらも±2〜3W程度の変動があることが分かる。
【0066】
図4からは、各サイクルの放電中の電力の標準偏差が約0.4Wであることが分かる。また、図5からは、放電時間が1.0秒で、ほぼ一定であることが分かる。
【0067】
これらより、電力に関しては250サイクルを通して、放電時間、放電電力共にほぼ一定であったことが確認できる。このように、生データの代わりに特性値をプロットすることによって、繰り返されるサイクルの安定性を容易に確認することができる。
【0068】
図6、図7は、処理した磁気ディスクに不良が発見されたときに収集した生データをグラフ化して示した図である。図19と図6を比較してみると、目視では違いがはっきりしない。図6の横軸を拡大したものが図7である。図20と比較しながら図7をよくみると、放電時の波形が若干不安定なこと(矢印A1)、放電の立下りに小さな尾を引いていること(矢印A2)が分かる。
【0069】
しかし、このような差は目視確認では見落としがちであり、また短時間のサイクルの場合は目視確認自体が困難になる。
【0070】
図6、図7の生データを特性値に変換した結果を、図8、図9、図10に示す。
【0071】
図8は、放電中の電力(Power)をプロットしたものであり、最大値と最小値が周期的(ほぼ50サイクル=50ディスク)に変動している様子が分かる。
【0072】
図9は、放電中の電力の標準偏差(Standard Deviation)をプロットしたものである。こちらも50枚(50ディスク)周期で変動しており、1−25枚、51−75枚のときに標準偏差が大きくなっていることが分かる。
【0073】
図10は、放電ON時間(Duration)をプロットしたものである。放電時間が25枚毎に変化していることが明確に分かる。
【0074】
標準偏差に注目してみると、26−50枚目、76−100枚目、・・・では正常時のときと同程度(0.4W)の値であることより、26−50枚、76−100枚、・・・のサイクルは正常と考えられる。一方、1−25枚、・・・のサイクルでは、標準偏差が0.6〜0.8となっており、これらのサイクルでは、放電電力のばらつきが大きいことが分かる。
【0075】
従って、このデータ取得時には処理装置に問題があった可能性が高いと判断することができる。実際に調べた結果、本装置に連結されている他の処理ユニットが25枚サイクルで処理を行っており、そこで使用している高周波電源のケーブルから発生したノイズがスパッタ電源に影響を与えていることがわかった。このように、特性値に変換することによって、目視では確認しにくい異常を明確に表示することが可能となる。
【0076】
次に特性値の計算例を挙げる。
特性値としてはさまざまなものが考えられるが、ここでは比較的簡単な例を挙げて計算方法を説明する。これらの他に、前述したように、波形立ち上がり時間や放電期間の各種統計値などが考えられる。また、ここで示す計算方法以外にも、同様の結果を得る方法はいくつも考えられるので、特に限定されるものではない。
【0077】
<平均値avg>
生データが閾値以上になったとき、配列変数C(n)に生データを次々と取り込み、閾値未満になったときに取り込みを終了する。取り込まれたm個の値より平均値(avg)を計算する。
平均値=(C(1)+・・・・+C(m))/m
【0078】
<最大値max>
生データが閾値以上になったとき、配列変数D(n)に生データを取り込み、閾値未満になった時点で取り込みをやめる。その後、配列変数の大小比較をし、最も大きい値を最大値(max)とする。適切なデータをとるためには、放電開始・終了前後の一定期間は、生データを取り込まない領域を設ける必要がある。
【0079】
<最小値min>
生データが閾値以上になったとき、配列変数D(n)に生データを取り込み、閾値未満になった時点で取り込みをやめる。その後、配列変数の大小比較をし、最も小さい値を最小値(min)とする。適切なデータをとるためには、放電開始・終了前後の一定期間は、生データを取り込まない領域を設ける必要がある。
【0080】
<標準偏差dev>
生データが閾値以上になったとき、配列変数F(n)に生データを次々と代入していく。生データが閾値未満となったら終了する。取り込まれたm個の値より標準偏差(dev)を計算する。(式省略)
【0081】
<ON時間差>
2つの測定項目のON時間差を算出する。項目1が閾値を越えたときの時刻を変数Gに取り込み、測定項目2が閾値を越えたときの時刻をHに取り込む。ON時間差をH−Gで計算する。これは電源出力ONから実際の放電がつくまでの時間を測定するのに使用する。
【0082】
特性値によっては、放電直後や終了直前の値を取り込むと、適切な値が出力されない場合がある(例:最大値、最大値)。従って、それを取り込まないようにするには、図11に示すように、放電前後にデータを取り込まない領域(無視する領域)を設定するとよい。
【0083】
<放電ON時間(+アーク発生回数)>
生データが閾値以上になったときの時間を放電開始時刻として変数Aに記録する。閾値未満になったときの時刻を放電終了時刻として変数Bに記録する。次の計算式で放電時間を算出する。放電時間=B−A
【0084】
上記の方法ではアークが発生して放電電圧が0になった場合、その時点で測定が終了する。その後アークが消えて、再度放電開始したときに再びデータを取り始める。従って、このままでは最後のアーク発生から放電終了までの時間をとってしまうことになる。
【0085】
これを防ぐために、電源出力ON指令とのANDを取り、A、Bを配列とすることが有効である。
【0086】
例えば、図12に示すように、電源ON指令が出ている間は、最初に閾値を越したときにA(0)に放電開始時間を代入、アーク発生して出力が閾値未満になった時にはB(0)にアーク発生時刻を代入する。
【0087】
アークから復帰して再度出力開始したときA(2)にアーク復帰時刻を代入し、その後、アークのたびにA(k)、 B(k)にアーク時刻、復帰時刻を入れていき、その都度kをインクリメントする。そして電源ON信号が切れ、かつ出力が閾値未満になった時点で上記操作を終了する。
【0088】
このような処理を行うことで、アークを考慮した放電時間の計算が可能となり、さらにアーク回数を取り込むことができるようになる。ただし、アークの発生したものは異常とするという観点からは、このような処理を入れないほうがいいかもしれない。
実際の放電時間=B(0)−A(0)−B(1)−A(1)+・・・+B(k)−A(k)
アーク発生回数=k
【0089】
上記では、いずれも一つの特性値(例えば電力)計算のトリガとして、もとの生データ(電力の生データ)の閾値を用いたが、他の生データ(例えば電圧)をトリガとして用いてもよい。例えば電力の計算トリガとして、電圧を用いるなどである。
【0090】
以上のように、生データではなく、特性値(要約データ)をデータ保存ユニット40に保存することにより、データ保存量を少なくできるので、長期間のデータを取る時や大量の項目を測定する時に有利である。
【0091】
上記実施例では毎秒40点のサンプリングを行っており、生データを保存する場合は1時間で144000データとなる。磁気ディスク製造のスパッタリング工程などでは、複数の処理装置が連結されており、さらに1処理室あたりの測定項目が数十になるので、合計測定項目数が100を越すことが多い。
【0092】
例えば、毎秒40点で100項目のデータをとった場合、生データの保存では、1日あたり691MB、1ヶ月で20GB、1年で252GBとなる。それに対して、特性値の保存では、1年分のデータでも52MBと小さくなっており、生データに比べてデータの扱いが極めて容易となる。
【0093】
データ量について比較してみる。条件は下記である。
・サンプリング数 …40点/秒
・サイクル時間 …6秒
・測定項目 …100項目
・データバイト …2Byte/データ
・特性値の数 …5項目
【0094】
<比較表>
(生データの場合) (特性値の場合)
・1サイクルあたりデータ数 240点/サイクル 5点/サイクル
・1時間サイクル数 600サイクル 600サイクル
・1点あたり1時間あたり 144000点 600点
・1時間あたりデータ数 14400000点 3000点
・1時間当たりバイト数 28.8MB 6KB
・1日あたりバイト数 691.2MB 144KB
・30日あたりバイト数 20.7GB 4.3MB
・1年あたりバイト数 252.3GB 52.6MB
【0095】
次に上記実施形態の利用の仕方(発展性)について述べる。
以上述べたように、生データを特性値に変換することによって、従来は目視に頼っていた異常検出を容易に行えるようになる。例えば、生データでは放電時間を確認するのが非常に困難であったが、放電ON時間という特性値を用いれば、簡単に確認できるようになる。
【0096】
また、上記構成に加えて、特性値(要約データ)について上限または下限の基準値を設定する基準値設定手段と、この基準値と特性値との比較から異常判定をする異常判定手段と、異常判定手段による判定結果に応じて、アラームを発生するアラーム発生手段を備えるようにするとよい。例えば、これら特性値に対して上下限アラームを設定すれば、効果的に異常を発見することができる。放電時のばらつきについても、標準偏差や最大値、最小値などの特性値に上下限アラームを設定すれば、合否判定などに用いることができる。また、ある程度複雑な波形に対しても、波形の特徴をうまく数値化できれば、上下限アラームが設定できるようになり、生データの上下限アラームでは実現できなかった異常検出が可能となる。このように、特性値を使えば、上下限アラームが有効に利用でき、有益である。その場合、構成的には、演算部100が出力する特性値(要約データ)が適正範囲にあるか否かを判定する手段と、特性値が適正範囲を外れたと判定した場合にアラームを発生する手段とを設ければよい。上述したような構成の全て、または一部を基本的な構成に加えることで、効果的に異常の報せ、発見をすることができる。
【0097】
また、その他の例として、特性値によるデータ管理を生データと関連付けすることもできる。
図13は、図1の構成に加えて、通常の生データの保存経路を設けた構成を示している。この場合、リレーショナルデータベース(RDB)を利用して、特性値のデータと生データとの間に関連付けを行っておくのがよい。そうすれば、異常点を発見した際に、必要に応じて生波形を参照することができるようなプログラムを作成することが可能である。この場合は、生データ保存用に大容量のディスク保存ユニットが必要となる。ただし、データベース内で一定期間経過したデータを自動的に削除するように設定しておけば、データの肥大化を防ぐことができる。また、上下限値を設定し、設定範囲外になったときにだけ自動的に、生データ保存を開始するようにすることも可能である。
【0098】
次に生産管理システムとして拡張する場合について述べる。
前述のアラーム情報を取り込み、特性値と合わせてデータベースに保存しておけば、アラーム発生時の特性値の挙動を簡単に調べることができる。その場合の生産管理システムとしては、次のような機能を持つことが望ましい。
【0099】
(a)日時とディスク番号を入力すると、該当ディスクの特性値のテーブルを表示する。
(b)アラームがあった場合は、アラーム内容も併せて表示する。
(c)日時とカセット番号を入力すると、該当カセットの全ディスクの特性値のテーブルを表示する。また、アラーム内容も表示する。
(d)期間とチャンバ番号を入力すると、該当チャンバの特性値のトレンドグラフを表示する。また、アラーム発生場所にはマークをつけ、アラーム内容を表示する。
(e)期間とチャンバ番号を入力すると、該当チャンバの特性値をエクセルファイルまたはCVSファイルで出力する。また、アラーム発生データも出力する。
(f)レシピ変更履歴と実際値をグラフ表示し、一定値異常ずれている部分をハイライト表示する。
これらの機能は、いずれもデータベースを併用することで実現可能である。
【0100】
上記のような機能を持つ生産管理システムを構築した場合、インターネット等の通信手段を介して、製品利用者と製品製造者との間で自由な情報交換をすることにより、品質管理の向上とクイックレスポンスを図ることができる。
【0101】
次に特性値を算出するまでのデータ処理の流れをフローチャートを参照しながら説明する。
【0102】
図14は、演算部100で実施される第1のデータ処理例を示すフローチャートである。
この処理例では、放電期間中のデータを配列変数に順次格納していく方式を採用している。そのため、大きなメモリ領域を確保しておく必要がある。この方式は、パソコン上のソフトウェアでは容易に実現可能であるが、PLC(シーケンサ)などのメモリの少ない機器に適用するには無理がある。PLC用には配列変数を使用しない第2のデータ処理例の方が適している。
【0103】
図14のフローチャートの処理が開始されると、ステップS101で、閾値xth、放電開始後ディレイ時間 t1、放電終了前ディレイ時間 t2(図15の無視する領域に相当する時間)を初期設定する。次に、ステップS102で、平均値avg、最大値max、最小値min、標準偏差dev、 放電時間 t、生データ格納用配列data(n)等の変数を初期化する。
【0104】
次にステップS103で生データの取り込みを行う(x=データ)。そしてステップS104で放電開始を判定する。放電開始は、放電指令ONでかつ x > xthであるかどうかで判断する。放電開始と判断した場合(Yes)は、ステップS105で放電時間のカウントを開始する(count = count + 1)と共に、データを配列に格納(data(count) =x)し、ステップS106に進んで放電終了の判定を行う。放電終了判定は、x < xth かつcount > 0 であるかどうかで行う。終了条件を満たさない間はステップS103〜ステップS106のループを繰り返す。ループを繰り返すたびに配列変数data()に生データxの値を格納していく。放電終了したとき(x<xthかつcount>0のとき)ループを抜けて、特性値計算ルーチンへ入る。
【0105】
特性値計算ルーチンのステップS107では、放電時間の長さ判定(count > 10)し、放電時間が長い場合はステップS108に進み、放電データの最初からt1個分、最後からt2個分のデータを取り除いて特性値(平均値avg、最大値max、最小値min、標準偏差dev、放電時間t)を計算する。
avg = average{data(t1)〜data(t2)}
max = max{data(t1)〜data(t2)}
min = min{data(t1)〜data(t2)}
dev = stdev{data(t1)〜data(t2)}
t = count * sampling rate
【0106】
一方、放電時間が短い場合はステップS109に進み、カウント値までのデータに基づいて特性値を計算する。
avg = average{data(1)〜data(count)}
max = max{data(1)〜data(count)}
min = min{data(1)〜data(count)}
dev = stdev{data(1)〜data(count)}
t = count * sampling rate
【0107】
そして、いずれの場合もステップS110にて、演算した特性値のデータ(avg, max, min, dev, t)を出力し、ステップS111で変数初期化して、ステップS103に戻る。
data(*) = 0, count = 0
avg = max = min = dev = t = 0
【0108】
図15は、演算部100で実施される第2のデータ処理例を示すフローチャートである。
このフローチャートは、配列変数を使わない場合の処理例を示す。ステップS201、S202、S203は、図14のフローチャートのステップS101、S102、S103と同じである。ステップS204で、x>xthにより放電判定を行い、取り込んだ生データxが閾値xth未満の場合は、ステップS216に進み、ステップS203、S204、S206を順番に経由するループ1を繰り返す。
【0109】
データxがxthを超えたときに、ステップS204の判断がYESとなってループ2に入り、各特性値を逐次計算していく。
【0110】
即ち、ステップS205で放電時間をカウント(count = count + 1)すると共に、データを代入( data = x)し、ステップS206、S207で最大値を更新する(data > maxになったときmax = dataとする)。また、次のステップS208、S209で、平均値・分散の更新を行う(count > t1 になったとき、totalx = totalx + data、totalx2 = totalx + data^2、avg = totalx/(count-t1)とする)。
【0111】
また、ステップS210、S211で標準偏差の計算を行う(count > t1 + 1
となったとき、dev = Sqr((totalx2 - (count - t1) * (avg ^ 2)) / (count - t1- 1))を算出)。また、ステップS212、S213で最小値を更新する(data < min になったとき、min = dataとする)。そして、ステップS214で放電時間を算出する(t = count * sampling rate)。
【0112】
放電終了時には再びループ1に入り、結果を出力し(ステップS217)、変数を初期化して(ステップS218)、次の放電が来るまでループ1を繰り返す。放電終了の判定は、データxが閾値xth未満かつカウント>0を満たすことで行い、この条件を満たすとき(つまり放電終了直後)に1回データをデータベースに出力する。
【0113】
図16は、演算部100で実施される第3のデータ処理例を示すフローチャートである。
このフローチャートは、アークなどによって放電が一時中断した場合に対応した処理例で、図15の第2のデータ処理例の一部を変更した例を示すものである。ステップS301〜ステップ318のうち、ステップS314A、S314Bのみが、図15の例と違うだけで、あとは図15のステップS201〜S218と同じであるので、違う点のみ説明する。
【0114】
この例では、PLCからの放電ON指令を取り込んで、条件を分岐させている。放電中断中であるかどうかは、ステップS304A、S304Bの放電指令ONかつ閾値未満という条件で判定する。このときはループ3に入り、放電時間のカウント、データの逐次計算は行わない。再び放電が始まったときは、ステップS304Bの判定がYESとなってループ2に入り、通常通りに放電時間カウント、データ逐次計算を実行する。
【0115】
以上のように演算部100で演算処理が行われることにより、適正な特性値が算出される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態の磁気ディスク製造システム(処理システム)の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】サイクル毎の特性値(要約データ)を算出する際の基準の説明図である。
【図3】特性値の一つである電力の平均値と最小値と最大値をプロットしたグラフである。
【図4】特性値の一つである電力の標準偏差をプロットしたグラフである。
【図5】特性値の一つである放電ON時間をプロットしたグラフである。
【図6】同システムで収集される生データを長期プロットしたグラフである。
【図7】図6の一部を横軸を延ばして拡大表示したグラフである。
【図8】異常が検出されたときの特性値の一つである電力の平均値と最小値と最大値をプロットしたグラフである。
【図9】異常が検出されたときの特性値の一つである電力の標準偏差をプロットしたグラフである。
【図10】異常が検出されたときの特性値の一つである放電ON時間をプロットしたグラフである。
【図11】特性値の算出時に無視する領域についての説明図である。
【図12】放電が中断するときの特性値の算出についての説明図である。
【図13】本発明の他の実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【図14】特性値を演算する場合の処理の流れの第1例を示すフローチャートである。
【図15】特性値を演算する場合の処理の流れの第2例を示すフローチャートである。
【図16】特性値を演算する場合の処理の流れの第3例を示すフローチャートである。
【図17】従来の磁気ディスク製造システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図18】同システムの1サイクルの概念の説明図である。
【図19】同システムで収集される生データを長期プロットしたグラフである。
【図20】図19の一部を横軸を延ばして拡大表示したグラフである。
【符号の説明】
【0117】
10 処理装置
11 処理室
12 処理ユニット
13 センサ
20 制御ユニット
30 サンプリングユニット(データ収集手段)
40 データ保存ユニット(データ保存手段)
50 表示・出力ユニット(表示手段)
100 演算部(データ加工手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において収集された処理条件の生データを受け取り、該生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段と、
その加工した要約データを記憶手段に保存するデータ保存手段と、
を備えることを特徴とする処理データ管理システム。
【請求項2】
同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において収集された処理条件の生データを受け取り、該生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段と、
その加工した要約データをチャート表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする処理データ管理システム。
【請求項3】
同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において収集された処理条件の生データを受け取り、該生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するデータ加工手段と、
その加工した要約データを記憶手段に保存するデータ保存手段と、
前記データ加工手段が出力する要約データまたは前記記憶手段に保存された要約データをチャート表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする処理データ管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の処理データ管理システムであって、
前記生データは、多数の被加工物に対する薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータであり、
前記要約データは、前記薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータを、一定の分析視点に基づいて変換することにより小容量化したデータである
ことを特徴とする処理データ管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の処理データ管理システムであって、
前記生データは、多数の磁気ディスクの薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータであり、
前記要約データは、前記多数の磁気ディスクの薄膜形成処理の処理条件に関する生のデータを、一定の分析視点に基づいて変換することにより小容量化したデータである
ことを特徴とする処理データ管理システム。
【請求項6】
同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置と、
該処理装置における処理条件の生データを収集する生データ収集手段と、
該生データ収集手段の収集した生データを管理するための請求項1〜5のいずれかに記載の処理データ管理システムと、
を備えることを特徴とする処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の処理システムであって、
前記処理装置は、所定のガス圧雰囲気に保持された処理室内での放電の発生により基板の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置であり、
前記生データ収集手段は、少なくとも放電の発生のための電源出力の生データを一定のサンプリング間隔で収集し、
前記処理データ管理システムは、前記電源出力の生データに基づいて、放電のON時間、電源出力の平均値、最大値、最小値、標準偏差などの少なくとも1つの項目について繰り返しサイクル毎に要約データを演算して表示または保存する
ことを特徴とする処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の処理システムであって、
前記処理装置は、処理室内に放電発生のための複数の電極を備えており、
前記生データ収集手段は、各電極毎の放電発生のための電源出力の生データを収集する
ことを特徴とする処理システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の処理システムであって、
前記処理装置は、基板に所定の順序で薄膜を形成するための複数の処理室を備えており、
前記生データ収集手段は、各処理室毎の放電発生のための電源出力の生データを収集する
ことを特徴とする処理システム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の処理システムであって、
前記薄膜形成装置が、磁気ディスク製造装置であることを特徴とする処理システム。
【請求項11】
同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において工程処理条件の生データを収集するステップと、
収集した前記生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するステップと、
その加工した要約データを記憶手段に保存するステップと、
を備えることを特徴とする処理装置のデータ管理方法。
【請求項12】
同一の工程処理をサイクル毎に繰り返し行う処理装置において工程処理条件の生データを収集するステップと、
収集した前記生データを一定のルールに基づいて演算してサイクル毎の特徴点を表現する要約データとして加工するステップと、
その加工した要約データをチャート表示するステップと、
を備えることを特徴とする処理装置のデータ管理方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の処理装置のデータ管理方法であって、
前記処理装置における工程処理が、所定のガス圧雰囲気に保持された処理室内での放電の発生により基板の表面に磁気ディスク用の薄膜を形成する薄膜形成処理である
ことを特徴とする処理装置のデータ管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2007−270337(P2007−270337A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101212(P2006−101212)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(501259732)ホーヤ マグネティクス シンガポール プライベートリミテッド (124)
【Fターム(参考)】