説明

処理水製造システム

【課題】除去媒体の捕捉能力を十分に使用すると共に、安定した水質で給水量を確保する。
【解決手段】除去能力回復手段6,15,16と、水質計測手段10,12と、流量検出手段13と、時間情報計測手段32と、回復時刻設定手段18と、全除去可能量設定手段19と、除去能力回復動作後において除去した除去対象物質(除去実績量)を算出する除去実績量算出手段33と、回復時刻判定手段34と、回復時刻以降に除去できる除去対象物質の量(残存除去可能量)を算出する残存除去可能量算出手段35と、回復時刻以降に除去対象物質が処理水に漏出することなく処理水を製造できる残存除去可能時間を算出する残存除去可能時間算出手段36と、残存除去可能時間が次回の回復時刻までの時間未満の場合は除去能力回復動作を実施し、残存除去可能時間が次回の回復時刻までの時間以上の場合は実施しない回復動作制御手段38と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる懸濁物質や硬度成分等の除去対象物質を除去して処理水を製造する処理水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下水等の原水に含まれる除去対象物質(例えば、微粒子、有機物、溶存鉄の酸化析出物等)を除去媒体(例えば、濾材)により捕捉して処理水を製造する処理水製造システムが提供されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
前記除去媒体は、捕捉した除去対象物質の増加に伴って、除去対象物質の捕捉能力が次第に低下する。そのため、従来の処理水製造システムにおいては、予め設定した時刻又は捕捉した除去対象物質が所定量に達したときに、除去媒体の捕捉能力を回復させる制御(例えば、濾材の洗浄動作)が実施されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−191014号公報
【特許文献2】特開2003−190973号公報
【特許文献3】特開平10−192606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、除去媒体の捕捉能力が低下する時期は、原水の水質や処理水製造システムの運転時間の長さ等、様々な原因により変化する。そのため、予め設定した時刻において、除去媒体の捕捉能力がさほど低下していないにもかかわらず、除去媒体の捕捉能力を回復させる制御が実施される場合があった。つまり、除去媒体の捕捉能力を十分に使用していない場合があった。また、処理水の配給要求量が多い時間帯(重負荷時間帯)において、除去媒体の捕捉能力を回復させる制御が実施されると、その間、処理水の製造を停止しなければならず、必要な処理水量(給水量)を確保できない場合があった。
【0006】
本発明は、除去媒体の捕捉能力を十分に使用することができると共に、安定した水質で給水量を確保することができる処理水製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原水に含まれる除去対象物質を除去媒体により除去して処理水を製造する処理水製造手段と、前記除去媒体の除去能力を回復させる除去能力回復動作を実施する除去能力回復手段と、原水の水質及び/又は処理水の水質を計測する水質計測手段と、原水の流量又は処理水の流量を検出する流量検出手段と、時間情報を計測する時間情報計測手段と、除去能力回復動作を実施する回復時刻を設定する回復時刻設定手段と、除去能力回復動作後の前記除去媒体で除去することができる除去対象物質の最大量を、全除去可能量として設定する全除去可能量設定手段と、除去能力回復動作後において、前記水質計測手段により計測された水質及び前記流量検出手段により検出された流量に基づいて、前記除去媒体で除去した除去対象物質の量を、除去実績量として算出する除去実績量算出手段と、前記時間情報計測手段により計測された時間情報が、前記回復時刻設定手段により設定された回復時刻になったか否かを判定する回復時刻判定手段と、前記回復時刻判定手段により回復時刻になったと判定された場合に、前記全除去可能量設定手段により設定された全除去可能量及び前記除去実績量算出手段により算出された除去実績量に基づいて、回復時刻以降に前記除去媒体で除去することができる除去対象物質の量を、残存除去可能量として算出する残存除去可能量算出手段と、前記残存除去可能量算出手段により算出された残存除去可能量、前記水質計測手段により計測された水質及び前記流量検出手段により検出された流量に基づいて、回復時刻以降に除去対象物質が処理水中に漏出することなく処理水を製造することができる時間を、残存除去可能時間として算出する残存除去可能時間算出手段と、前記残存除去可能時間算出手段により算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満の場合には、除去能力回復動作を実施するように前記除去能力回復手段を制御し、前記残存除去可能時間算出手段により算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上の場合には、除去能力回復動作を実施しないように前記除去能力回復手段を制御する回復動作制御手段と、を備える処理水製造システムに関する。
【0008】
また、前記処理水製造手段は、原水に含まれる懸濁物質を前記除去媒体としての濾材により捕捉して処理水を製造する濾過処理装置であることが好ましい。
【0009】
また、前記処理水製造手段は、原水に含まれる硬度成分を前記除去媒体としての陽イオン交換体により捕捉して処理水を製造する軟水化処理装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、除去媒体の捕捉能力を十分に使用することができると共に、安定した水質で給水量を確保することができる処理水製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の処理水製造システム1を示す構成図である。
【図2】第1実施形態の処理水製造システム1の制御に係る機能ブロック図である。
【図3】残存除去可能時間判定部が、残存除去可能時間の長さによって再生動作の実施の可否を判定する図である。
【図4】第1実施形態の処理水製造システム1の制御を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態の処理水製造システム1Aを示す構成図である。
【図6】第2実施形態の処理水製造システム1Aの制御に係る機能ブロック図である。
【図7】第2実施形態の処理水製造システム1Aの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の処理水製造システム1を示す構成図である。本発明の第1実施形態の処理水製造システム1は、原水に含まれる除去対象物質としての硬度成分を捕捉して処理水を製造する軟水化処理システムである。
【0013】
図1に示すように、処理水製造システム1は、地下水等の原水W1が流通する原水ラインL1と、原水ポンプ2と、原水バルブ3と、原水W1に含まれる硬度成分を捕捉して軟水化処理水としての処理水W2を製造する軟水化処理装置4と、処理水W2が流通する処理水ラインL2と、給水バルブ7と、処理水W2を貯留する処理水タンク8と、処理水配給ラインL3と、処理水配給ポンプ9と、排水ラインL4と、原水用硬度計10と、処理水用硬度計12と、流量計13と、制御装置30と、回復時刻設定部18と、全除去可能量設定部19と、を主体に構成されている。
なお、本明細書でいう「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0014】
原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(図示せず)に接続される。原水ラインL1の下流側の端部は、軟水化処理装置4(後述のコントロールバルブ6)に接続される。原水ポンプ2は、原水ラインL1に設けられている。原水ポンプ2は、地下水等の原水W1を軟水化処理装置4に向けて送出する。原水ポンプ2は、制御装置30(後述)と電気的に接続される。原水ポンプ2は、制御装置30(後述)によって運転(駆動及び停止)を制御される。
原水バルブ3は、原水ラインL1に設けられている。原水バルブ3は、制御装置30(後述)と電気的に接続される。原水バルブ3は、原水ラインL1を開閉する。原水バルブ3は、制御装置30(後述)によって開閉を制御される。
【0015】
これら原水ラインL1、原水ポンプ2及び原水バルブ3は、軟水化処理装置4の再生動作(後述する逆洗浄工程、押出工程及び水洗工程等)において、陽イオン交換体(後述)に原水W1を導入すると共に、この原水W1を系外へ排出する除去能力回復手段としても機能する。
【0016】
原水用硬度計10は、原水ラインL1に計測点J1において接続される。原水用硬度計10は、原水W1の硬度を計測点J1において計測する。つまり、原水用硬度計10は、軟水化処理装置4の入口側における原水W1の硬度(水質)を計測する水質計測手段として機能する。原水用硬度計10は、制御装置30(後述)と電気的に接続される。原水用硬度計10によって計測された信号は、制御装置30に入力される。
【0017】
次に、軟水化処理装置4について説明する。軟水化処理装置4は、原水ラインL1の下流側の端部に設けられる。軟水化処理装置4は、原水W1から硬度成分を除去して軟水化処理水としての処理水W2を製造する。軟水化処理装置4は、処理水製造手段として機能する。軟水化処理装置4は、交換塔5と、コントロールバルブ6と、排水ラインL4と、を備える。また、軟水化処理装置4には、除去能力回復手段としての塩水タンク14及び塩水ラインL6が接続されている。
【0018】
交換塔5は、その内部に除去媒体としてのナトリウム型の陽イオン交換体(図示せず)を有する。コントロールバルブ6は、交換塔5に対して流入又は流出する水(軟水製造時の原水W1及び処理水W2、並びに再生動作時の逆洗水、塩水、押出水及び濯ぎ水)の流路を切り換える。コントロールバルブ6は、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。コントロールバルブ6は、制御装置30によって流路切り換えが制御される。コントロールバルブ6は、除去能力回復手段として機能し、陽イオン交換体の再生時に、塩水タンク14(後述)の塩水を交換塔5に導入する。
【0019】
排水ラインL4は、コントロールバルブ6に接続され、再生動作時の逆洗水(原水W1)、塩水、押出水(原水W1)及び濯ぎ水(原水W1)を系外に排出する。排水ラインL4は、除去能力回復手段として機能する。
塩水タンク14は、再生剤としての塩水(塩化ナトリウム水溶液)を貯留する。塩水の調製には、原水W1(又は処理水W2)が用いられる。塩水ラインL6は、コントロールバルブ6に接続される。塩水ラインL6には、塩水タンク14からの塩水が流通する。
【0020】
処理水ラインL2の上流側の端部は、軟水化処理装置4のコントロールバルブ6に接続される。処理水ラインL2の下流側の端部は、処理水タンク8に接続される。処理水ラインL2には、処理水W2が流通する。
処理水ラインL2には、給水バルブ7が設けられている。給水バルブ7は、処理水ラインL2の下流側に設けられている。給水バルブ7は、処理水ラインL2を開閉する。給水バルブ7は、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。給水バルブ7は、制御装置30(後述)によって開閉を制御される。
【0021】
処理水用硬度計12は、処理水ラインL2に計測点J3において接続されている。処理水用硬度計12は、処理水ラインL2を流通する処理水W2の硬度(水質)を計測点J3において計測する。つまり、処理水用硬度計12は、水質計測手段として機能する。処理水用硬度計12は、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。処理水用硬度計12によって計測された信号は、制御装置30に入力される。
【0022】
流量計13は、処理水ラインL2に計測点J4において接続される。流量計13は、処理水ラインL2を流通する処理水W2の瞬間流量を計測点J4において計測する。流量計13は、流量検出手段として機能する。流量計13は、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。流量計13によって計測された信号は、制御装置30にパルス信号として入力される。制御装置30においては、流量計13によって計測された信号に基づいて、処理水W2の単位時間毎の積算流量が算出される。この積算流量の履歴は、後述するメモリ部40に記憶される。
【0023】
処理水タンク8は、処理水ラインL2の下流側の端部に接続され、処理水W2を貯留する。処理水タンク8は、水位計8aを備えている。水位計8aは、処理水タンク8に貯留された処理水W2の水位を計測する。水位計8aは、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。水位計8aによって計測された信号は、制御装置30に入力される。処理水タンク8の水位は、制御装置30によって算出される。
【0024】
本実施形態の処理水製造システム1においては、処理水W2の配給要求時には、後述する処理水配給ポンプ9が稼働され、処理水タンク8内の処理水W2が需要箇所に配給される。そのため、水位計8aによって処理水タンク8の減水及び満水を検出することによって、軟水化処理工程時に、処理水W2の給水開始タイミング及び給水停止タイミング(すなわち、原水ポンプ2の駆動及び停止タイミング)を判断することができる。
【0025】
処理水配給ラインL3は、処理水W2を下流側に流通する。処理水配給ラインL3の上流側の端部は、処理水タンク8に接続される。処理水配給ラインL3の下流側の端部は、処理水W2の需要箇所(図示せず)に接続される。
処理水配給ラインL3には、処理水配給ポンプ9が設けられる。処理水配給ポンプ9は、処理水タンク8からの処理水W2を、下流側の需要箇所(図示せず)に送出する。処理水配給ポンプ9は、制御装置30(後述)と電気的に接続される。処理水配給ポンプ9は、制御装置30によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0026】
回復時刻設定部18は、軟水化処理装置4において再生動作(除去能力回復動作)を実施する回復時刻を設定する。回復時刻設定部18は、例えば、制御装置30に接続されるキーボード(図示せず)である。回復時刻設定部18は、回復時刻設定手段として機能する。回復時刻は、システムの保守管理者による回復時刻設定部18からの入力操作によって設定される。
【0027】
回復時刻は、1日に1回だけではなく、複数回(通常は、1日に2〜3回)を設定してもよい。その際、回復時刻の間隔を一定に設定すると、後述する「次回の回復時刻までの時間」が固定される。例えば、回復時刻の間隔を12時間に設定し、回復時刻を12時及び24時の2回に設定することができる。また、回復時刻の間隔を8時間に設定し、回復時刻を8時、16時及び24時の3回に設定することができる。本実施形態においては、処理水W2の製造停止が頻繁に行われることを抑制するため、再生動作の実施頻度を1日に1〜3回程度としている。
【0028】
全除去可能量設定部19は、全除去可能量を設定する。全除去可能量は、軟水化処理装置4において1回の通水サイクルで除去することができる硬度成分(除去対象物質)の最大量である。つまり、陽イオン交換体の再生(回復)が十分に行われた場合における軟水化処理装置4の最大除去能力を意味する。全除去可能量設定部19は、例えば、制御装置30に接続されるキーボード(図示せず)である。全除去可能量設定部19は、全除去可能量設定手段として機能する。全除去可能量は、システムの保守管理者によって、全除去可能量設定部19からの入力操作により設定される。
【0029】
次に、図2を参照して、第1実施形態の処理水製造システム1の制御に係る機能について説明する。図2は、第1実施形態の処理水製造システム1の制御に係る機能ブロック図である。制御装置30は、第1実施形態の処理水製造システム1における各部を制御する。図2に示すように、制御装置30は、例えば、原水ポンプ2、処理水配給ポンプ9、原水バルブ3、コントロールバルブ6及び給水バルブ7に電気的に接続される。
【0030】
また、制御装置30は、回復時刻設定部18及び全除去可能量設定部19に電気的に接続され、回復時刻設定部18から設定入力された回復時刻の情報、全除去可能量設定部19から設定入力された全除去可能量の情報を受信する。また、制御装置30は、各計測装置に電気的に接続され、各計測装置により計測された計測情報を受信する。計測装置は、例えば、原水用硬度計10、処理水用硬度計12、流量計13及び水位計8aである。
【0031】
制御装置30は、制御部31と、メモリ部40と、を備える。制御部31は、時間情報計測手段としての時間情報計測部32と、除去実績量算出手段としての除去実績量算出部33と、回復時刻判定手段としての回復時刻判定部34と、残存除去可能量算出手段としての残存除去可能量算出部35と、残存除去可能時間算出手段としての残存除去可能時間算出部36と、残存除去可能時間判定部37と、回復動作制御手段としての再生動作制御部38と、を備える。
【0032】
時間情報計測部32は、各種時間情報(例えば、現在時刻、再生動作を開始する回復時刻、軟水化処理が継続されている時間(通水時間)、再生動作の実施が継続されている時間)等を計測する。
【0033】
除去実績量算出部33は、再生動作(除去能力回復動作)後において、原水用硬度計10及び処理水用硬度計12により計測された硬度、並びに流量計13により検出された流量に基づいて、陽イオン交換体で除去した硬度成分の量を、除去実績量として次の式(1)により算出する。つまり、この除去実績量は、前回の回復時刻(回復動作実施)から今回の回復時刻までの処理において、実際に除去した硬度成分の量の積算値である。
【0034】
除去実績量(g)=Σ〔(原水濃度(g/m)−処理水濃度(g/m))×パルス入力数(p)×流量計パルス定数(m/p)〕・・・(1)
ここで、式(1)における「原水濃度」は、原水W1の単位量あたりに含まれる硬度成分の量であり、原水用硬度計10によって計測される。「処理水濃度」は、処理水W2の単位量あたりに含まれる硬度成分の量であり、処理水用硬度計12によって計測される。パルス入力数は、流量計13により計測され、制御装置30に入力されたパルス数である。このパルス数に「流量計パルス定数」を乗ずることにより、処理水W2の瞬間流量が算出される。
【0035】
回復時刻判定部34は、時間情報計測部32により計測された時間情報(現在時刻)が、回復時刻設定部18により設定された回復時刻になったか否かを判定する。つまり、回復時刻判定部34は、軟水化処理装置4において再生動作の実施要求がなされているか否かを判定する。また、回復時刻判定部34は、時間情報計測部32により計測された時間情報(現在時刻)が、予め設定された運転停止時刻になったか否かを判定する。つまり、回復時刻判定部34は、処理水製造システム1において運転停止要求がなされているか否かを判定する運転停止時刻判定部としても機能する。
【0036】
残存除去可能量算出部35は、回復時刻判定部34により回復時刻になったと判定された場合に、全除去可能量設定部19により設定された全除去可能量及び除去実績量算出部33により算出された除去実績量に基づいて、回復時刻以降に陽イオン交換体で除去することができる硬度成分の量を、残存除去可能量として次の式(2)により算出する。つまり、この残存除去可能量は、イオン交換処理を継続した場合に除去することができる硬度成分の量である。
残存除去可能量(g)=全除去可能量(g)−除去実績量(g)・・・(2)
【0037】
残存除去可能時間算出部36は、残存除去可能量算出部35により算出された残存除去可能量、原水用硬度計10により計測された原水W1の硬度(原水濃度)、処理水用硬度計12により計測された処理水W2の硬度(処理水濃度)及び流量計13により検出された処理水W2の瞬間流量に基づいて、回復時刻以降に硬度成分が処理水W2中に漏出することなく処理水W2を製造することができる時間を、残存除去可能時間として次の式(3)により算出する。つまり、この残存除去可能時間は、硬度成分を処理水W2に漏出させずに、イオン交換処理を継続することができる時間である。
残存除去可能時間(h)=残存除去可能量(g)/〔(原水濃度(g/m)−処理水濃度(g/m))×瞬間流量(m/h)〕・・・(3)
【0038】
残存除去可能時間判定部37は、残存除去可能時間算出部36により算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満であるか否かを判定する。この残存除去可能時間判定部37の判定動作について、図3を参照しながら詳しく説明する。
【0039】
図3は、残存除去可能時間判定部37が、残存除去可能時間の長さによって再生動作の実施の可否を判定する図である。(a)は、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間よりも長く、再生動作の実施をキャンセルする場合を示す。(b)は、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間よりも短く、再生動作を実施する場合を示す。図3において、時刻T1は、今回の回復時刻を示す。時刻T2は、残存除去可能時間tb(<ts)が経過する時刻を示す。時刻T3は、次回の回復時刻を示す。時刻T4は、残存除去可能時間ta(>ts)が経過する時刻を示す。時刻T2は、次回の回復時刻T3よりも早い時刻を示し、時刻T4は、次回の回復時刻T3よりも遅い時刻を示す。
【0040】
従って、(a)に示すように、残存除去可能時間taが、次回の回復時刻までの時間tsよりも長い場合には、イオン交換処理を次回の回復時刻T3まで継続しても硬度成分が処理水W2に漏出する可能性が少ない。そのため、後述する再生動作制御部38は、今回の回復時刻T1における再生動作の実施をキャンセルする。
【0041】
一方、(b)に示すように、残存除去可能時間tbが、次回の回復時刻までの時間tsよりも短い場合には、今回の回復時刻T1においてイオン交換処理を継続すると、硬度成分が処理水W2に漏出する可能性が高い。そのため、後述する再生動作制御部38は、今回の回復時刻T1において、再生動作を実施する。
【0042】
再生動作制御部38は、除去能力回復手段としてのコントロールバルブ6等を制御する。具体的には、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満の場合には、再生動作制御部38は、再生動作を実施するように前記除去能力回復手段を制御する。再生動作では、後述するように、逆洗浄工程、再生工程、押出工程、水洗工程及び補水工程を順に行う。
【0043】
一方、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上の場合には、再生動作制御部38は、再生動作を実施しないように前記除去能力回復手段を制御する。つまり、再生動作制御部38は、通常の運転モードを維持するように、原水バルブ3及び給水バルブ7を開弁し、原水ポンプ2を運転する。
【0044】
再生動作制御部38は、再生動作を実施した後に、再生動作の実施要求をリセットすると共に、算出された除去実績量をリセットする。
【0045】
メモリ部40は、処理水製造システム1の制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する。具体的には、メモリ部40は、例えば、処理水製造システム1の制御に必要な各種機能を動作させる制御プログラム、回復時刻設定部18から入力された回復時刻、全除去可能量設定部19から入力された全除去可能量、前記各計測装置によって計測された各種計測データ(例えば、原水用硬度計10及び処理水用濁度計42によって計測された硬度データ、流量計13によって計測された流量データ、時間情報計測部32により計測された各種時間情報)、各種算出値(例えば、除去実績量、残存除去可能量及び残存除去可能時間)、各種閾値(例えば、再生動作を実施する処理水W2への漏れ硬度の閾値)を記憶する。
【0046】
次に、第1実施形態の処理水製造システム1の基本動作について、図1を参照しながら説明する。通常運転時の軟水化処理(イオン交換処理)工程の場合、軟水化処理装置4のコントロールバルブ6は、軟水化処理工程用の流路に設定されている。処理水W2の配給要求があると、制御装置30によって処理水配給ポンプ9が稼働されることにより、処理水タンク8に貯留された処理水W2が下流側の需要箇所に送出される(配給開始)。
【0047】
そして、水位計8aにより処理水タンク8の減水が検出されると、制御装置30によって、原水ラインL1における原水ポンプ2が稼働されると共に、原水バルブ3が開弁される。また、制御装置30によって、処理水ラインL2の給水バルブ7が開弁される。
【0048】
原水W1は、原水ポンプ2によって原水ラインL1に送出される。原水ラインL1においては、原水用硬度計10によって原水W1の硬度が計測される。この硬度情報は、制御装置30によって受信される。
硬度が計測された原水W1は、軟水化処理装置4の交換塔5の内部に導入される。交換塔5の内部において、原水W1は、陽イオン交換体(図示せず)によってイオン交換処理されることにより、硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)が除去される。これにより、処理水W2が製造される。製造された処理水W2は、処理水ラインL2に流通され、処理水タンク8に貯留される。
【0049】
処理水ラインL2においては、処理水用硬度計12によって処理水W2の硬度が計測される。また、流量計13によって処理水W2の瞬間流量が計測される。これらの計測情報は、制御装置30によって受信される。
【0050】
処理水W2の配給要求がなくなると、制御装置30によって処理水配給ポンプ9が停止される(配給停止)。続いて、処理水タンク8の満水が検出されると、制御装置30によって、原水ラインL1における原水ポンプ2が停止されると共に、原水バルブ3及び給水バルブ7が閉弁される。
【0051】
次に、軟水化処理装置4の再生動作(逆洗浄工程、再生工程、押出工程、水洗工程及び補水工程)について説明する。再生動作は、塩水タンク14で製造された塩水を、塩水ラインL6、コントロールバルブ6を介して交換塔5の内部に供給することにより、陽イオン交換体(図示せず)の硬度成分の捕捉能力(除去能力)を回復させることを主体としている。
【0052】
逆洗工程時には、再生動作制御部38によって、給水バルブ7が閉弁され、かつ軟水化処理装置4のコントロールバルブ6が、逆洗浄工程用の流路に切り換えられる。また、再生動作制御部38によって、原水バルブ3が開弁されると共に、原水ポンプ2が稼働される。これにより、交換塔5において、逆洗水としての原水W1が陽イオン交換体(図示せず)に対して上昇するように流され、陽イオン交換体が展開される。洗浄後の逆洗水は、排水ラインL4を介して、系外に排出される。
【0053】
再生工程時には、再生動作制御部38によって、軟水化処理装置4のコントロールバルブ6が、再生工程用の流路に切り換えられる。また、再生動作制御部38によって、給水バルブ7の閉弁状態が維持されると共に、原水バルブ3が開弁され、原水ポンプ2が稼働される。そして、塩水タンク14の塩水が、塩水ラインL6を介してコントロールバルブ6に供給され、原水W1によって所定の濃度まで希釈されながら、交換塔5の内部に導入される。これにより、陽イオン交換体(図示せず)の硬度成分の捕捉能力(除去能力)が再生(回復)される。再生後の塩水は、排水ラインL4を介して系外に排出される。
【0054】
押出工程時には、再生動作制御部38によって、軟水化処理装置4のコントロールバルブ6が、押出工程用の流路に切り換えられ、塩水タンク14からの塩水の供給を停止する。原水ポンプ2、原水バルブ3及び給水バルブ7は、再生工程の状態が引き継がれる。これにより、交換塔5の内部に存在する塩水は、押出水としての原水W1により押し出されながら、上記陽イオン交換体を通過する。このようにして、陽イオン交換体の再生が完了する。押出後の塩水は、排水ラインL4を介して系外に排出される。
【0055】
水洗工程時には、再生動作制御部38によって、軟水化処理装置4のコントロールバルブ6が、水洗工程用の流路に切り換えられる。原水ポンプ2、原水バルブ3及び給水バルブ7は、押出工程の状態が引き継がれる。これにより、交換塔5において、濯ぎ水としての原水W1が上記陽イオン交換体に対して下降するように流され、陽イオン交換体に残留する塩水が濯がれる。水洗後の濯ぎ水は、排水ラインL4を介して、系外に排出される。
【0056】
補水工程では、消費された塩水を再び調製するために、再生動作制御部38によって、コントロールバルブ6が補水工程用の流路に切り換えられる。そして、塩水タンク14に貯蔵された固形塩を溶解するための原水W1が、塩水ラインL6を介して塩水タンク14に補水される。
【0057】
再生動作制御部38による再生動作が終了した後は、通常の運転モードに復帰する。つまり、処理水W2を製造するために軟水化処理工程に復帰し、原水バルブ3及び給水バルブ7が開弁され、原水ポンプ2が稼働される。
【0058】
次に、第1実施形態の処理水製造システム1の特徴的な制御について図4を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態の処理水製造システム1の制御を示すフローチャートである。
【0059】
処理水製造システム1の運転を開始する前に、システムの保守管理者は、回復時刻を回復時刻設定部18から制御装置30に設定入力する。例えば、回復時刻を12時及び24時の2回(回復時刻の間隔が12時間)に設定する。また、システムの保守管理者は、全除去可能量を全除去可能量設定部19から制御装置30に設定入力する。制御装置30は、これらの設定入力データを受信し、メモリ部40に記憶する。
【0060】
図4に示すように、ステップST1において、原水W1の硬度を原水用硬度計10によって計測する。また、処理水W2の硬度を処理水用硬度計12によって計測する。更に、処理水W2の瞬間流量を流量計13によって計測する。
【0061】
ステップST2において、除去実績量算出部33は、ステップST1で計測された硬度及び瞬間流量に基づいて、前述の式(1)により除去実績量(積算値)を算出する。つまり、除去実績量算出部33は、前回の回復時刻(再生動作の実施時刻)から今回の回復時刻(例えば、図3における時刻T1を参照)までの軟水化処理において、実際に除去した硬度成分の量の積算値を算出する。
【0062】
ステップST3において、回復時刻判定部34は、時間情報計測部32により計測された現在時刻が、予め設定された回復時刻になったか否かを判定する。つまり、回復時刻判定部34は、軟水化処理装置4において再生動作の実施要求がなされているか否かを判定する。軟水化処理装置4において再生動作の実施要求がなされている(YES)場合には、ステップST4に進む。一方、軟水化処理装置4において再生動作の実施要求がなされていない(NO)場合には、ステップST1に戻る。
【0063】
ステップST4において、原水W1の硬度を原水用硬度計10によって計測する。また、処理水W2の硬度を処理水用硬度計12によって計測する。更に、処理水W2の瞬間流量を流量計13によって計測する。ステップST4においては、原水W1の硬度、処理水W2の硬度及び処理水W2の瞬間流量が、回復時刻に到達した時点における最新値として計測される。
【0064】
ステップST5において、残存除去可能量算出部35は、処理水製造システム1の運転開始前に設定された全除去可能量及びステップST2において算出された除去実績量に基づいて、前述の式(2)により残存除去可能量を算出する。
【0065】
ステップST6において、残存除去可能時間算出部36は、ステップST5において算出された残存除去可能量、ステップST4において計測された原水W1の硬度、処理水W2の硬度及び処理水W2の瞬間流量に基づいて、前述の式(3)により残存除去可能時間を算出する。
【0066】
ステップST7において、残存除去可能時間判定部37は、ステップST6において算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻(例えば、図3における時刻T3を参照)までの時間未満であるか否かを判定する。残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満である(YES)場合(例えば、図3に示す(b)の場合に相当)には、ステップST8に進む。つまり、今回の回復時刻において軟水化処理を継続すると、硬度成分が処理水W2に漏出する可能性が高い場合には、ステップST8に進む。
【0067】
一方、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上である(NO)場合(例えば、図3に示す(a)の場合に相当)には、ステップST10に進む。つまり、軟水化処理を今回の回復時刻(例えば、図3における時刻T1を参照)から次回の回復時刻(例えば、図3における時刻T3を参照)まで継続しても、硬度成分が処理水W2に漏出する可能性は少ない。そのため、今回の回復時刻においては、再生動作を実施せずに、ステップST10に進む。
【0068】
ステップST8において、再生動作制御部38は、今回の回復時刻(例えば、図3における時刻T1を参照)において再生動作を実施する。これにより、軟水化処理装置4の陽イオン交換体が再生される。
【0069】
ステップST9において、再生動作制御部38は、再生動作の実施要求をリセットすると共に、ステップST2において算出された除去実績量をリセットし、ステップST10に進む。
【0070】
ステップST10において、回復時刻判定部34(運転停止時刻判定部)は、運転停止要求がなされているか否かを判定する。運転停止要求がなされている(YES)場合には、本制御を終了する。一方、運転停止要求がなされていない(NO)場合には、ステップST1に戻り、本制御を継続する。
【0071】
以上に説明した第1実施形態の処理水製造システム1によれば、以下に示す各効果が奏される。
第1実施形態の処理水製造システム1は、再生動作を実施する回復時刻を設定する回復時刻設定部18と、再生動作後の陽イオン交換体で除去することができる硬度成分の最大量を、全除去可能量として設定する全除去可能量設定部19と、再生動作後において、陽イオン交換体で除去した硬度成分の量を、除去実績量として算出する除去実績量算出部33と、回復時刻になったか否かを判定する回復時刻判定部34と、回復時刻になったと判定された場合に、全除去可能量及び除去実績量に基づいて、回復時刻以降に陽イオン交換体で除去することができる硬度成分の量を、残存除去可能量として算出する残存除去可能量算出部35と、回復時刻以降に硬度成分が処理水W2中に漏出することなく処理水W2を製造することができる時間を、残存除去可能時間として算出する残存除去可能時間算出部36と、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満の場合には、再生動作を実施するようにコントロールバルブ6等を制御し、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上の場合には、除去能力回復動作を実施しないようにコントロールバルブ6等を制御する再生動作制御部38と、を備える。
【0072】
そのため、第1実施形態の処理水製造システム1によれば、処理水製造システム1の運転時間が短い場合等、軟水化処理装置4の陽イオン交換体の再生の必要性が少ない場合には、再生動作の実施をキャンセルすることができる。そのため、再生動作に必要な原水W1の使用量を低減することができると共に、排水量を低減することができる。従って、水資源を節約することができる。
【0073】
また、第1実施形態の処理水製造システム1によれば、残存除去可能時間と次回の回復時刻とを考慮して再生動作の実施の必要性を判定することができる。そのため、処理水W2の配給要求量が多い時間帯(重負荷時間帯)における再生動作の実施を回避しつつ、軟水化処理装置4における陽イオン交換体の捕捉能力(除去能力)を十分に使用することができる。
【0074】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。他の実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0075】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の処理水製造システム1Aの構成について図5を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態の処理水製造システム1Aを示す構成図である。本発明の第2実施形態の処理水製造システム1Aは、原水W1に含まれる除去対象物質としての懸濁物質を捕捉して処理水W2を製造する濾過システムである。
【0076】
図5に示すように、処理水製造システム1Aは、地下水等の原水W1が流通する原水ラインL1と、原水ポンプ2と、原水バルブ3と、原水W1に含まれる懸濁物質を濾材(図示せず)により捕捉して処理水W2を製造する濾過処理装置44と、処理水W2が流通する処理水ラインL2と、給水バルブ7と、処理水W2を貯留する処理水タンク8と、処理水配給ラインL3と、処理水配給ポンプ9と、逆洗水供給ラインL5と、逆洗水供給ポンプ15と、逆洗バルブ16と、排水ラインL7と、バックアップ給水ラインLbと、原水用濁度計40aと、薬剤添加装置41と、処理水用濁度計42と、流量計13と、制御装置30Aと、回復時刻設定部18aと、全除去可能量設定部19aと、を主体に構成されている。
【0077】
第2実施形態の処理水製造システム1Aにおける原水ラインL1、原水ポンプ2及び原水バルブ3の構成は、前記第1実施形態の処理水製造システム1における原水ラインL1、原水ポンプ2及び原水バルブ3の構成と同様であるので、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0078】
原水ラインL1の下流側の端部は、濾過処理装置44(後述のコントロールバルブ46)に接続される。原水ポンプ2は、地下水等の原水W1を濾過処理装置44に向けて送出する。原水ポンプ2は、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。原水ポンプ2は、制御装置30A(後述)によって運転(駆動及び停止)を制御される。原水バルブ3は、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。原水バルブ3は、原水ラインL1を開閉する。原水バルブ3は、制御装置30A(後述)によって開閉を制御される。
【0079】
これら原水ラインL1、原水ポンプ2及び原水バルブ3は、逆洗浄された濾過処理装置44の濾材(後述)を原水W1で濯ぎ、濾材を濯いだ原水W1を系外へ排出する除去能力回復手段としても機能する。
【0080】
原水用濁度計40aは、原水ラインL1に計測点J1bにおいて接続される。原水用濁度計40aは、後述する薬剤添加装置41により薬剤が添加された原水W1の濁度を計測する。つまり、原水用濁度計40aは、濾過処理装置44の入口側における原水W1の濁度を計測する水質計測手段として機能する。原水用濁度計40aは、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。原水用濁度計40aによって計測された信号は、制御装置30Aに入力される。
【0081】
薬剤添加装置41は、原水ラインL1に添加点J1aにおいて接続される。薬剤添加装置41は、原水ラインL1の添加点J1aにおいて、所定の薬剤を添加する。薬剤は、濾過処理装置44の濾過方法に応じて、適宜選択される。
【0082】
薬剤添加装置41は、薬剤貯留部(図示せず)と、薬剤添加ポンプ(図示せず)と、を備える。薬剤貯留部は、凝集剤や酸化剤等の薬剤を貯留する。薬剤添加ポンプは、原水ラインL1の添加点J1aにおいて、薬剤貯留部に貯留された所定の薬剤を原水W1に送出し、添加する。薬剤添加ポンプは、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。薬剤添加ポンプは、制御装置30A(後述)によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0083】
濾過処理装置44は、原水ラインL1の下流側の端部に設けられる。濾過処理装置44は、原水W1に含まれる懸濁物質を除去媒体としての濾材(図示せず)により捕捉(除去)し、処理水W2を製造する。濾過処理装置44は、処理水製造手段として機能する。
濾過処理装置44は、濾材を有する濾過塔45と、コントロールバルブ46と、排水ラインL7と、を備える。
【0084】
つまり、逆洗浄工程時には、逆洗水供給ラインL5(後述)を介して濾材に洗浄水(本実施形態においては、処理水W2である。以下、適宜、「逆洗水」ということもある)が供給され、濾材によって捕捉された懸濁物質が洗浄水と共に系外へ排出されるように構成される。水洗工程時には、逆洗浄された濾材を濯ぐために、濾材に濯ぎ水(本実施形態においては、原水W1)が供給され、濾材を濯いだ濯ぎ水が系外へ排出されるように構成される。
【0085】
濾過塔45は、懸濁物質を濾過するための濾材(図示せず)を有する。コントロールバルブ46は、濾過塔45に対して流入又は流出する水(濾過水製造時の原水W1及び処理水W2、並びに洗浄動作時の逆洗水及び濯ぎ水)の流路を切り換える。コントロールバルブ46は、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。コントロールバルブ46は、制御装置30A(後述)によって流路切り換えを制御される。コントロールバルブ46は、除去能力回復手段として機能する。
【0086】
排水ラインL7は、コントロールバルブ46に接続され、後述する濾材洗浄時の逆洗水(処理水W2)や濾材水洗時の濯ぎ水(原水W1)等を系外に排出する。排水ラインL7は、除去能力回復手段として機能する。
【0087】
濾過処理装置44は、処理水タンク8から逆洗水供給ラインL5を介して供給される処理水W2(逆洗水)によって、逆洗浄可能に構成される。
濾過処理装置44は、原水W1中の除去対象物質に応じて種々選択される。濾過処理装置44の例として、例えば、次のような砂濾過装置、除鉄除マンガン装置及び活性炭濾過装置を挙げることができる。これらの装置は、いずれも原水W1に含まれる懸濁物質を濾材の篩効果により捕捉して除去可能なものである。
【0088】
砂濾過装置は、原水W1に含まれる微粒子等の懸濁物質を濾材(図示せず)により捕捉して除去するものである。砂濾過装置としては、例えば、硅石等の粗粒濾材と、アンスラサイト、濾過砂等の細粒濾材と、から形成された濾材層(図示せず)を有する塔式のものが挙げられる。濾過処理装置44として、砂濾過装置が使用される場合には、原水W1に含まれる懸濁物質を凝集(フロック化)させて除去し易くする必要がある。そのため、濾過塔の上流側に配置された薬剤添加装置41によって、凝集剤を添加する。凝集剤としては、例えば、無機系凝集剤を用いることができ、具体的には、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0089】
除鉄除マンガン装置は、原水W1に含まれる微粒子等の懸濁物質と共に、溶存鉄及び溶存マンガンを濾材(図示せず)により捕捉して除去するものであり、この濾材が充填された濾過塔を備えている。濾材には、通常、粒子状のマンガンシャモットやマンガンゼオライトが使用される。また、濾過処理装置44として、除鉄除マンガン装置が使用される場合には、原水W1に含まれる溶存鉄及び溶存マンガンを酸化してから除去する。そのため、濾過塔45の上流側に配置された薬剤添加装置41によって、酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)を添加する。
【0090】
具体的には、原水W1に含まれる溶存鉄は、上記酸化剤の作用により酸化され、不溶性の水酸化第一鉄を経て水酸化第二鉄へと変化(すなわち、懸濁物質化)し、上記濾材によって濾過される。原水W1に含まれる溶存マンガンは、上記酸化剤の作用により上記濾材と接触したときに、酸化が進行し、濾材によって吸着され除去される。
【0091】
活性炭濾過装置は、原水W1に含まれる懸濁物質と共に、有機物、色度成分及び臭気成分等の不純物を吸着材からなる濾材で除去するものであり、この吸着材が充填された濾過塔を備えている。吸着材には、通常、粒子状又は繊維状の活性炭が使用される。
なお、活性炭濾過装置は、上記砂濾過装置及び/又は除鉄除マンガン装置と併用してもよい。その場合、活性炭濾過装置を、上記砂濾過装置及び/又は除鉄除マンガン装置の下流側に配置することが好ましい。このように配置することにより、例えば、除鉄除マンガン装置を通過した酸化剤由来の残留塩素を、活性炭濾過装置によって分解できるからである。
【0092】
以上のように構成された濾過処理装置44には、処理水ラインL2が接続される。処理水ラインL2の上流側の端部は、濾過処理装置44(コントロールバルブ46)に接続される。処理水ラインL2の下流側の端部は、処理水タンク8に接続される。処理水ラインL2は、濾過処理装置44によって製造された処理水W2が流通する。
【0093】
処理水用濁度計42は、処理水ラインL2に計測点J3aにおいて接続される。処理水用濁度計42は、処理水ラインL2を流通する処理水W2の濁度(水質)を計測点J3aにおいて計測する。つまり、処理水用濁度計42は、濾過処理装置44の出口側における処理水W2の濁度を計測する水質計測手段として機能する。処理水用濁度計42は、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。処理水用濁度計42によって計測された信号は、制御装置30Aに入力される。
【0094】
また、処理水タンク8には、バックアップ給水ラインLbが接続される。バックアップ給水ラインLbは、別系統の処理水製造システム等で製造された処理水や上水等からなるバックアップ水Wbを、処理水タンク8に供給する。バックアップ給水ラインLbは、処理水タンク8における処理水W2の貯留量が、処理水W2の需要量に対して不足する場合等において使用される。
【0095】
バックアップ給水ラインLbには、バックアップ給水バルブ17が設けられる。バックアップ給水バルブ17は、バックアップ給水ラインLbを開閉する。バックアップ給水バルブ17は、制御装置30(後述)と電気的に接続される。バックアップ給水バルブ17は、制御装置30によって開閉を制御される。
【0096】
次に、逆洗水供給ラインL5について説明する。逆洗水供給ラインL5の上流側には、逆洗水を送出する逆洗水供給ポンプ15が設けられている。逆洗水供給ポンプ15は、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。逆洗水供給ポンプ15は、制御装置30によって運転(駆動及び停止)を制御される。逆洗水供給ポンプ15は、除去能力回復手段として機能する。
【0097】
逆洗水供給ラインL5の下流側の端部は、原水ラインL1に合流点J2において合流している。逆洗水供給ラインL5には、逆洗バルブ16が設けられている。逆洗バルブ16は、逆洗水供給ラインL5を開閉する。逆洗バルブ16は、制御装置30(後述)と電気的に接続されている。逆洗バルブ16は、制御装置30によって開閉を制御される。逆洗水供給ラインL5及び逆洗バルブ16は、除去能力回復手段として機能する。
【0098】
第2実施形態の処理水製造システム1Aにおける流量計13、給水バルブ7、処理水タンク8、水位計8a、処理水配給ポンプ9及び処理水配給ラインL3の構成は、前記第1実施形態の処理水製造システム1における構成と同様であるので、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0099】
また、流量計13、給水バルブ7、水位計8a、処理水配給ポンプ9、バックアップ給水バルブ17、逆洗水供給ポンプ15及び逆洗バルブ16は、制御装置30A(後述)と電気的に接続される。流量計13及び水位計8aによって計測された信号は、制御装置30Aに入力される。処理水タンク8の水位は、制御装置30Aによって算出される。処理水W2の積算流量は、制御装置30Aによって算出される。
処理水配給ポンプ9及び逆洗水供給ポンプ15は、制御装置30Aによって運転(駆動及び停止)を制御される。給水バルブ7、逆洗バルブ16及びバックアップ給水バルブ17は、制御装置30Aによって開閉を制御される。
【0100】
回復時刻設定部18aは、濾過処理装置44において洗浄動作(除去能力回復動作)を実施する回復時刻を設定する。回復時刻設定部18aは、例えば、制御装置30Aに接続されるキーボード(図示せず)である。回復時刻設定部18aは、回復時刻設定手段として機能する。回復時刻は、システムの保守管理者による回復時刻設定部18aからの入力操作によって設定される。回復時刻の具体的な設定方法は、前記第1実施形態の処理水製造システム1の場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0101】
全除去可能量設定部19aは、全除去可能量を設定する。全除去可能量は、濾過処理装置44において1回の通水サイクルで除去することができる懸濁物質(除去対象物質)の最大量である。つまり、全除去可能量は、濾材の洗浄(回復)が十分に行われた場合の濾過処理装置44の最大除去能力を意味する。
【0102】
全除去可能量設定部19aは、例えば、制御装置30Aに接続されるキーボード(図示せず)である。全除去可能量設定部19aは、全除去可能量設定手段として機能する。全除去可能量は、システムの保守管理者によって、全除去可能量設定部19aからの入力操作により設定される。
【0103】
次に、図6を参照して、第2実施形態の処理水製造システム1Aの制御に係る機能について説明する。図6は、第2実施形態の処理水製造システム1Aの制御に係る機能ブロック図である。
【0104】
制御装置30Aは、第2実施形態の処理水製造システム1Aにおける各部を制御する。図6に示すように、制御装置30Aは、例えば、原水ポンプ2、処理水配給ポンプ9、薬剤添加装置41、逆洗水供給ポンプ15、原水バルブ3、コントロールバルブ46、給水バルブ7、逆洗バルブ16、バックアップ給水バルブ17に電気的に接続される。
【0105】
また、制御装置30Aは、回復時刻設定部18a及び全除去可能量設定部19aに電気的に接続され、回復時刻設定部18aから設定入力された回復時刻の情報、全除去可能量設定部19aから設定入力された全除去可能量の情報を受信する。また、制御装置30Aは、各計測装置に電気的に接続され、各計測装置により計測された計測情報を受信する。計測装置は、例えば、原水用濁度計40a、処理水用濁度計42、流量計13及び水位計8aである。
【0106】
制御装置30Aは、制御部31Aと、メモリ部40Aと、を備える。制御部31Aは、時間情報計測手段としての時間情報計測部32aと、除去実績量算出手段としての除去実績量算出部33aと、回復時刻判定手段としての回復時刻判定部34aと、残存除去可能量算出手段としての残存除去可能量算出部35aと、残存除去可能時間算出手段としての残存除去可能時間算出部36aと、残存除去可能時間判定部37aと、回復動作制御手段としての洗浄動作制御部38aと、を備える。
【0107】
時間情報計測部32aは、各種時間情報(例えば、現在時刻、洗浄動作を開始する回復時刻、濾過処理が継続されている時間(通水時間)、洗浄動作の実施が継続されている時間)を計測する。
【0108】
除去実績量算出部33aは、洗浄動作(除去能力回復動作)後において、原水用濁度計40a及び処理水用濁度計42により計測された濁度、及び流量計13により検出された流量に基づいて、濾材で除去した懸濁物質の量を、除去実績量として、前述の式(1)により算出する。つまり、この除去実績量は、前回の回復時刻(洗浄動作の実施時刻)から今回の回復時刻までの処理において、実際に除去した懸濁物質の量の積算値である。
【0109】
ここで、前述の式(1)における「原水濃度」は、原水W1の単位量あたりに含まれる懸濁物質の量であり、原水用濁度計40aによって計測される。「処理水濃度」は、処理水W2の単位量あたりに含まれる懸濁物質の量であり、処理水用濁度計42によって計測される。パルス入力数は、流量計13により計測され、制御装置30Aに入力されたパルス数である。このパルス数に「流量計パルス定数」を乗ずることにより、処理水W2の瞬間流量が算出される。
【0110】
回復時刻判定部34aは、時間情報計測部32aにより計測された時間情報(現在時刻)が、回復時刻設定部18aにより設定された回復時刻になったか否かを判定する。つまり、回復時刻判定部34aは、濾過処理装置44において洗浄動作の実施要求がなされているか否かを判定する。また、回復時刻判定部34aは、現在時刻が、予め設定された運転停止時刻になったか否かを判定する。つまり、回復時刻判定部34aは、処理水製造システム1Aにおいて運転停止要求がなされているか否かを判定する運転停止時刻判定部としても機能する。
【0111】
残存除去可能量算出部35aは、回復時刻判定部34aにより回復時刻になったと判定された場合に、全除去可能量設定部19aにより設定された全除去可能量及び除去実績量算出部33aにより算出された除去実績量に基づいて、回復時刻以降に濾材で除去することができる懸濁物質の量を、残存除去可能量として、前述の式(2)により算出する。つまり、この残存除去可能量は、濾過処理を継続した場合に除去することができる懸濁物質の量である。
【0112】
残存除去可能時間算出部36aは、残存除去可能量算出部35aにより算出された残存除去可能量、原水用濁度計40aにより計測された原水W1の濁度(原水濃度)、処理水用濁度計42により計測された処理水W2の濁度(処理水濃度)及び流量計13により検出された処理水W2の瞬間流量に基づいて、回復時刻以降に懸濁物質が処理水W2中に漏出することなく処理水W2を製造できる時間を、残存除去可能時間として、前述の式(3)により算出する。つまり、この残存除去可能時間は、懸濁物質を処理水W2に漏出させずに、濾過処理を継続することができる時間である。
【0113】
残存除去可能時間判定部37aは、残存除去可能時間算出部36aにより算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満であるか否かを判定する。この残存除去可能時間判定部37aの判定動作については、前記第1実施形態の図3において説明した残存除去可能時間判定部37の判定動作と同様であるので、重複説明を省略する。
【0114】
洗浄動作制御部38aは、除去能力回復手段としてのコントロールバルブ46、逆洗水供給ポンプ15、逆洗バルブ16等を制御する。具体的には、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満の場合には、洗浄動作制御部38aは、濾材の洗浄動作(逆洗浄工程及び水洗工程)を実施するように前記除去能力回復手段を制御する。一方、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上の場合には、洗浄動作制御部38aは、洗浄動作を実施しないように前記除去能力回復手段を制御する。
【0115】
また、洗浄動作制御部38aは、洗浄動作を実施した後に、洗浄動作の実施要求をリセットすると共に、算出された除去実績量をリセットする。
【0116】
メモリ部40Aは、処理水製造システム1Aの制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する。具体的には、メモリ部40Aは、処理水製造システム1Aの制御に必要な各種機能を動作させる制御プログラム、回復時刻設定部18aから入力された回復時刻、全除去可能量設定部19aから入力された全除去可能量、前記各計測装置によって計測された各種計測データ(例えば、原水用濁度計40a及び処理水用濁度計42によって計測された濁度データ、流量計13によって計測された流量データ、時間情報計測部32aにより計測された各種時間情報)、各種算出値(例えば、除去実績量、残存除去可能量及び残存除去可能時間)、各種閾値(例えば、洗浄動作を実施する処理水W2への漏れ濁度の閾値)を記憶する。
【0117】
次に、第2実施形態の処理水製造システム1Aの基本動作について、図5を参照しながら説明する。通常運転時の濾過工程の場合、濾過処理装置44のコントロールバルブ46は、濾過工程用の流路に設定されている。処理水W2の配給要求があると、制御装置30Aによって処理水配給ポンプ9が稼働されることにより、処理水タンク8に貯留された処理水W2が下流側の需要箇所に送出される(配給開始)。そして、水位計8aにより処理水タンク8の減水が検出されると、制御装置30Aによって、原水バルブ3及び給水バルブ7が開弁されると共に、原水ポンプ2及び薬剤添加装置41の薬剤添加ポンプ(図示せず)が稼働される。この場合、逆洗水供給ラインL5における逆洗水供給ポンプ15は、稼働されず、逆洗バルブ16は閉弁されたままとなっている。
【0118】
原水W1は、原水ポンプ2によって原水ラインL1に送出される。そして、原水ラインL1の添加点J1aにおいて、薬剤添加装置41によって所定の薬剤が添加される。また、原水ラインL1の計測点J1bにおいては、原水用濁度計40aによって原水の濁度が計測される。この濁度情報は、制御装置30Aによって受信される。
薬剤が添加された原水W1は、濾過処理装置44のコントロールバルブ46を介して濾過塔45内に導入される。濾過塔45においては、原水W1が上記濾材層に対して下降するように流される。これにより、原水W1に含まれる懸濁物質が濾材により捕捉され、処理水W2が製造される。製造された処理水W2は、コントロールバルブ46を介して処理水ラインL2に流通され、処理水タンク8に貯留される。
【0119】
処理水ラインL2においては、処理水用濁度計42によって処理水W2の濁度が計測されると共に、流量計13によって処理水W2の瞬間流量が計測される。これらの計測情報は、制御装置30Aによって受信される。
処理水W2の配給要求がなくなると、制御装置30Aによって処理水配給ポンプ9が停止される(配給停止)。続いて、水位計8aにより処理水タンク8の満水が検出されると、制御装置30Aによって、原水ラインL1における原水ポンプ2及び薬剤添加装置41の薬剤添加ポンプ(図示せず)が停止されると共に、原水バルブ3が閉弁される。また、制御装置30Aによって、処理水ラインL2の給水バルブ7が閉弁される。
【0120】
なお、制御装置30Aによって、処理水タンク8における処理水W2の水位が、所定の下限値になったと判定された場合には、制御装置30Aによって、バックアップ給水ラインLbのバックアップ給水バルブ17が開弁される。これにより、バックアップ水Wbが、処理水タンク8に補給される。
【0121】
次に、濾過処理装置44の洗浄動作(逆洗浄工程及び水洗工程)について説明する。逆洗浄工程時には、洗浄動作制御部38aによって、原水ラインL1における原水ポンプ2が停止されると共に、原水バルブ3が閉弁され、かつ、濾過処理装置44のコントロールバルブ46が、逆洗浄工程用の流路に設定される。また、洗浄動作制御部38aによって、処理水ラインL2の給水バルブ7が閉弁されると共に、逆洗水供給ラインL5における逆洗水供給ポンプ15が稼働され、逆洗バルブ16が開弁される。これにより、濾過塔45において、逆洗水としての処理水W2が上記濾材層に対して上昇するように流され、濾材が展開される。洗浄後の逆洗水は、排水ラインL7を介して、系外に排出される。
【0122】
また、水洗工程時には、洗浄動作制御部38aによって、原水ラインL1における原水ポンプ2が稼働されると共に、原水バルブ3が開弁され、かつ、濾過処理装置44のコントロールバルブ46が、水洗工程用の流路に設定される。また、洗浄動作制御部38aによって、処理水ラインL2の給水バルブ7が閉弁状態を維持されると共に、逆洗水供給ラインL5における逆洗水供給ポンプ15が停止され、逆洗バルブ16が閉弁される。これにより、濾過塔45において、濯ぎ水としての原水W1が上記濾材層に対して下降するように流され、濾材が濯がれる。水洗後の濯ぎ水は、排水ラインL7を介して、系外に排出される。
【0123】
洗浄動作制御部38aによる洗浄動作が終了した後は、通常の運転モードに復帰する。つまり、処理水W2を製造するために濾過工程に復帰し、原水バルブ3及び給水バルブ7が開弁され、原水ポンプ2等が運転される。
【0124】
次に、第2実施形態の処理水製造システム1Aの特徴的な制御について図8を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態の処理水製造システム1Aの制御を示すフローチャートである。
【0125】
処理水製造システム1Aの運転を開始する前に、システムの保守管理者は、回復時刻を回復時刻設定部18aから制御装置30Aに設定入力する。例えば、回復時刻を12時及び24時の2回(回復時刻の間隔が12時間)に設定する。また、システムの保守管理者は、全除去可能量を全除去可能量設定部19aから制御装置30Aに設定入力する。制御装置30Aは、これらの設定入力データを受信し、メモリ部40Aに記憶する。
【0126】
図7に示すように、ステップST11において、原水W1の濁度を原水用濁度計40aによって計測する。また、処理水W2の濁度を処理水用濁度計42によって計測する。更に、処理水W2の瞬間流量を流量計13によって計測する。
【0127】
ステップST12において、除去実績量算出部33aは、ステップST11で計測された濁度及び瞬間流量に基づいて、前述の式(1)により除去実績量(積算値)を算出する。ここで、式(1)における「原水濃度」は、原水W1の単位量あたりに含まれる懸濁物質の量であり、原水用濁度計40aによって計測される。「処理水濃度」は、処理水W2の単位量あたりに含まれる懸濁物質の量であり、処理水用濁度計42によって計測される。つまり、除去実績量算出部33aは、前回の回復時刻(洗浄動作の実施時刻)から今回の回復時刻までの処理において、実際に除去した懸濁物質の量の積算値を算出する。
【0128】
ステップST13において、回復時刻判定部34aは、時間情報計測部32aにより計測された現在時刻が、予め設定された回復時刻になったか否かを判定する。つまり、回復時刻判定部34aは、濾過処理装置44において洗浄動作の実施要求がなされているか否かを判定する。濾過処理装置44において洗浄動作の実施要求がなされている(YES)場合には、ステップST14に進む。
一方、濾過処理装置44において洗浄動作の実施要求がなされていない(NO)場合には、ステップST11に戻る。
【0129】
ステップST14において、原水W1の濁度を原水用濁度計40aによって計測する。また、処理水W2の濁度を処理水用濁度計42によって計測する。更に、処理水W2の瞬間流量を流量計13によって計測する。ステップST14においては、原水W1の濁度、処理水W2の濁度及び処理水W2の瞬間流量が、回復時刻に到達した時点における最新値として計測される。
【0130】
ステップST15において、残存除去可能量算出部35aは、処理水製造システム1Aの運転開始前に設定された全除去可能量及びステップST12において算出された除去実績量に基づいて、前述の式(2)により残存除去可能量を算出する。
【0131】
ステップST16において、残存除去可能時間算出部36aは、ステップST15において算出された残存除去可能量、ステップST14において計測された原水W1の濁度、処理水W2の濁度及び処理水W2の流量に基づいて、前述の式(3)により残存除去可能時間を算出する。
【0132】
ステップST17において、残存除去可能時間判定部37aは、ステップST16において算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満であるか否かを判定する。残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満である(YES)場合には、ステップST18に進む。つまり、今回の回復時刻において濾過処理を継続すると、懸濁物質が処理水W2に漏出する可能性が高い場合には、ステップST18に進む。
【0133】
一方、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上である(NO)場合には、ステップST20に進む。つまり、濾過処理を今回の回復時刻から次回の回復時刻まで継続しても、懸濁物質が処理水W2に漏出する可能性が少ない。そのため、今回の回復時刻においては、洗浄動作を実施せずに、ステップST20に進む。
【0134】
ステップST18において、洗浄動作制御部38aは、今回の回復時刻において洗浄動作を実施する。これにより、濾過処理装置44の濾材が洗浄され、懸濁物質の捕捉能力が回復する。
【0135】
ステップST19において、洗浄動作制御部38aは、洗浄動作の実施要求をリセットすると共に、ステップST12において算出された除去実績量をリセットし、ステップST20に進む。
【0136】
ステップST20において、回復時刻判定部34a(運転停止時刻判定部)は、運転停止要求がなされているか否かを判定する。運転停止要求がなされている(YES)場合には、本制御を終了する。一方、運転停止要求がなされていない(NO)場合には、ステップST11に戻り、本制御を継続する。
【0137】
以上に説明した第2実施形態の処理水製造システム1Aによれば、以下に示す各効果が奏される。
第2実施形態の処理水製造システム1Aは、洗浄動作を実施する回復時刻を設定する回復時刻設定部18aと、洗浄動作後の濾材で除去することができる懸濁物質の最大量を、全除去可能量として設定する全除去可能量設定部19aと、洗浄動作後において、濾材で除去した硬度成分の量を、除去実績量として算出する除去実績量算出部33aと、回復時刻になったか否かを判定する回復時刻判定部34aと、回復時刻になったと判定された場合に、全除去可能量及び除去実績量に基づいて、回復時刻以降に濾材で除去することができる懸濁物質の量を、残存除去可能量として算出する残存除去可能量算出部35aと、回復時刻以降に懸濁物質が処理水W2中に漏出することなく処理水W2を製造できる時間を、残存除去可能時間として算出する残存除去可能時間算出部36aと、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満の場合には、洗浄動作を実施するようにコントロールバルブ46、逆洗水供給ポンプ15、逆洗バルブ16等を制御し、残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上の場合には、除去能力回復動作を実施しないようにコントロールバルブ46、逆洗水供給ポンプ15、逆洗バルブ16等を制御する洗浄動作制御部38aと、を備える。
【0138】
そのため、第2実施形態の処理水製造システム1Aによれば、処理水製造システム1Aの運転時間が短い場合等、濾過処理装置44の濾材の洗浄の必要性が少ない場合には、洗浄動作の実施をキャンセルすることができる。そのため、洗浄動作に必要な原水W1及び処理水W2の使用量を低減することができると共に、排水量を低減することができる。従って、水資源を節約することができる。
【0139】
また、第2実施形態の処理水製造システム1Aによれば、残存除去可能時間と次回の回復時刻とを考慮して洗浄動作の実施の必要性を判定することができる。そのため、処理水W2の配給要求量が多い時間帯(重負荷時間帯)における洗浄動作の実施を回避しつつ、濾過処理装置44における濾材の捕捉能力(除去能力)を十分に使用することができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記第1実施形態及び前記第2実施形態においては、図4におけるステップST4、ステップST5、図5におけるステップST14及びステップST15に示すように、残存除去可能時間を算出する際に、原水濃度、処理水濃度及び処理水の流量は、回復時刻到達時点の最新値が用いられるものとして説明したが、これに制限されない。
【0141】
例えば、原水濃度及び処理水の流量に対しては、除去実績量の算出(図4におけるステップST2、図5におけるステップST12を参照)中における最大値を用い、処理水濃度に対しては、除去実績量の算出中における最小値を用いてもよい。これにより、残存除去可能時間が短くなるように算出することができる。そのため、残存除去可能時間を安全側の値として算出することができる。
また、処理水の流量は、直近の平均流量を用いてもよい。
【0142】
また、前記第1実施形態及び前記第2実施形態においては、原水濃度(原水W1の硬度又は原水W1の濁度)及び処理水濃度(処理水W2の硬度又は処理水W2の濁度)を計測するものとして説明したが、これに制限されない。例えば、原水濃度(原水W1の硬度又は原水W1の濁度)のみを計測し、この計測値に基づいて残存除去可能時間を算出してもよい。
【符号の説明】
【0143】
1,1A 処理水製造システム
2 原水ポンプ(除去能力回復手段)
3 原水バルブ(除去能力回復手段)
4 軟水化処理装置(処理水製造手段)
6,46 コントロールバルブ(除去能力回復手段)
10 原水用硬度計(水質計測手段)
12 処理水用硬度計(水質計測手段)
13 流量計(流量検出手段)
14 塩水タンク(除去能力回復手段)
15 逆洗水供給ポンプ(除去能力回復手段)
16 逆洗バルブ(除去能力回復手段)
18,18a 回復時刻設定部(回復時刻設定手段)
19,19a 全除去可能量設定部(全除去可能量設定手段)
32,32a 時間情報計測部(時間情報計測手段)
33,33a 除去実績量算出部(除去実績量算出手段)
34,34a 回復時刻判定部(回復時刻判定手段)
35,35a 残存除去可能量算出部(残存除去可能量算出手段)
36,36a 残存除去可能時間算出部(残存除去可能時間算出手段)
38 再生動作制御部(回復動作制御手段)
38a 洗浄動作制御部(回復動作制御手段)
40a 原水用濁度計(水質計測手段)
42 処理水用濁度計(水質計測手段)
44 濾過処理装置(処理水製造手段)
L1 原水ライン(除去能力回復手段)
L4,L7 排水ライン(除去能力回復手段)
L5 逆洗水供給ライン(除去能力回復手段)
L6 塩水ライン(除去能力回復手段)
ta,tb 残存除去可能時間
ts 次回の回復時刻までの時間
T1,T3 回復時刻
W1 原水
W2 処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に含まれる除去対象物質を除去媒体により除去して処理水を製造する処理水製造手段と、
前記除去媒体の除去能力を回復させる除去能力回復動作を実施する除去能力回復手段と、
原水の水質及び/又は処理水の水質を計測する水質計測手段と、
原水の流量又は処理水の流量を検出する流量検出手段と、
時間情報を計測する時間情報計測手段と、
除去能力回復動作を実施する回復時刻を設定する回復時刻設定手段と、
除去能力回復動作後の前記除去媒体で除去することができる除去対象物質の最大量を、全除去可能量として設定する全除去可能量設定手段と、
除去能力回復動作後において、前記水質計測手段により計測された水質及び前記流量検出手段により検出された流量に基づいて、前記除去媒体で除去した除去対象物質の量を、除去実績量として算出する除去実績量算出手段と、
前記時間情報計測手段により計測された時間情報が、前記回復時刻設定手段により設定された回復時刻になったか否かを判定する回復時刻判定手段と、
前記回復時刻判定手段により回復時刻になったと判定された場合に、前記全除去可能量設定手段により設定された全除去可能量及び前記除去実績量算出手段により算出された除去実績量に基づいて、回復時刻以降に前記除去媒体で除去することができる除去対象物質の量を、残存除去可能量として算出する残存除去可能量算出手段と、
前記残存除去可能量算出手段により算出された残存除去可能量、前記水質計測手段により計測された水質及び前記流量検出手段により検出された流量に基づいて、回復時刻以降に除去対象物質が処理水中に漏出することなく処理水を製造することができる時間を、残存除去可能時間として算出する残存除去可能時間算出手段と、
前記残存除去可能時間算出手段により算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間未満の場合には、除去能力回復動作を実施するように前記除去能力回復手段を制御し、前記残存除去可能時間算出手段により算出された残存除去可能時間が、次回の回復時刻までの時間以上の場合には、除去能力回復動作を実施しないように前記除去能力回復手段を制御する回復動作制御手段と、
を備える処理水製造システム。
【請求項2】
前記処理水製造手段は、原水に含まれる懸濁物質を前記除去媒体としての濾材により捕捉して処理水を製造する濾過処理装置である請求項1に記載の処理水製造システム。
【請求項3】
前記処理水製造手段は、原水に含まれる硬度成分を前記除去媒体としての陽イオン交換体により捕捉して処理水を製造する軟水化処理装置である請求項1に記載の処理水製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−212612(P2011−212612A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84182(P2010−84182)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】