説明

凸版印刷装置

【課題】 凸版を版シリンダに設置したまま、かつ凸版に損傷を与えることなく洗浄できるとともにインキの濡れ性を向上して洗浄直後から良好な印刷を可能にした凸版印刷装置を提供する。
【解決手段】 版シリンダ1と版洗浄装置4とを洗浄可能な状態に対向させて版シリンダ1を回転し、洗浄液供給ユニット5から供給される洗浄液を凸版11の表面に噴射し、次いで送風ユニット6から供給される加圧気体を噴射して凸版表面の洗浄液を吹き飛ばすことで乾燥させ、そして加圧気体の噴射時に発生する洗浄液の飛沫を洗浄液回収ユニット7で吸引して回収する。凸版の洗浄終了後は、版シリンダ1と版拭き取り装置4とを拭き取り可能な状態に対向させて凸版1に付着する洗浄液を拭き取る構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子系有機材料を溶剤に溶解してなるインキを被印刷基板上に印刷することにより高分子系有機ELディスプレイの発光層などを形成するのに好適な凸版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、PDA(携帯情報端末)、モバイルパソコン、車載用ナビゲーションシステム等における表示素子として、薄型、低電力、高輝度表示等の特徴を備える有機EL素子が注目されている。この有機EL素子は、例えば陽極(透明導電膜、ITO膜)と、有機発光体を含有する発光層と、陰極(金属電極)とを透明基板上に積層したものである。
【0003】
有機ELの発光層は、通常、低分子有機発光体を真空蒸着させることによって形成される。この場合、蒸着装置の観点から素子の大型化に限界がある。そこで、高分子有機発光体を溶剤に溶解、分散させてインキ化し、公知の印刷方式にて発光層を形成する試みが提案されている(例えば特許文献1参照)。
このような印刷法は、量産性に優れ、製造コストを低く抑えることが可能であり、具体的な印刷方式としては、オフセット印刷やグラビア印刷等が挙げられている。
【0004】
一方、フレキソ印刷は、ゴム又は樹脂からなるフレキシブルな凸版と、アニロックスロールと呼ばれるインキ付けロールとインキとを用いた印刷方式であり、従来、包装紙等の簡単な印刷物に広く使用されている。このフレキソ印刷は、膜厚0.01〜0.2μm程度の薄くて安定した印刷層の形成に特に適している。
また、フレキソ印刷は印圧がかかる凸版部に柔軟性があり、更に、キスタッチと呼ばれるごく低印圧での印刷であることから、ガラス基板や高圧をかけることによって特性が破壊されるような透明電極等が成膜された被印刷基板に対する印刷にも適しているため、特に有機EL素子の発光層の形成に適した印刷方法である。
【特許文献1】特開2001−185352号公報
【特許文献2】特表2000−511835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL素子をフルカラーディスプレイ用途で使用する場合、発光層をRGBで塗り分けする必要があり、150〜200ppi程度の微細なパターンをフレキソ印刷で形成することになる。
しかしながら、微細パターン印刷を連続で行ううちに、凸版の表面や凹部に乾燥したインキが堆積し、印刷線幅や膜厚の変動などの不良が起きるようになる。特に高分子有機発光体をインキ化したものは揮発性有機溶剤を使用しているため、乾燥が速く、インキの堆積が起こり易い。そのため、連続印刷を行う合間に凸版の洗浄を行う必要があるが、印刷パターンの位置合わせ精度を保持するためには、凸版の洗浄は印刷機から外さずに行いたい。
【0006】
凸版の洗浄を印刷機から外さないで行う清掃装置を積載した印刷機についての先行技術としては、例えば特許文献2に示すものが知られている。
しかしながら、この種の凸版印刷装置は、印刷終了時のメンテナンスでの使用を考えており、凸版表面をブラシロールでこする方式であるため、有機EL素子の発光層印刷用の微細なパターンを有する凸版に対して、印刷作業の合間に定期的に洗浄を行う目的で使用すると、凸版へのダメージが大きく良好な印刷を行うことができない。
また、凸版の洗浄後は、凸版とインキとの馴染みが悪く、十分なインキ付けができないため、印刷物に線幅の減少やカスレ等の不良が発生し、良好な印刷ができるまでに1〜5枚程度の被印刷基板への捨て印刷が必要となり、量産に際しては、定期的な捨て印刷にて大量の被印刷基板が消費されるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高分子有機EL素子の発光層を形成するための凸版またはその他の凸版であっても、これら凸版を版シリンダに設置したまま、かつ凸版に損傷を与えることなく洗浄できるとともにインキの濡れ性を向上して洗浄直後から良好な印刷を可能にした凸版印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、凸版を印刷版とする凸版印刷装置であって、前記凸版が設置される回転式の版シリンダと、被印刷基板を戴置する基板定盤と、前記凸版にインキを供給するインキ供給装置と、前記凸版の表面を洗浄する凸版洗浄装置と、前記洗浄後の凸版表面の洗浄液を拭き取る版拭き取り装置とを備え、前記凸版洗浄装置は、前記版シリンダに設置された前記凸版の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニットと、前記洗浄液が供給された前記凸版に加圧された気体を噴射する送風ユニットと、前記送風ユニットにより飛散された洗浄液を吸引する吸引ユニットと、前記凸版の表面に供給された洗浄液を受ける洗浄液回収ユニットとを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の凸版印刷装置によれば、版シリンダと版洗浄装置とを洗浄可能な状態に対向させて版シリンダを回転し、洗浄液供給ユニットから供給される洗浄液を凸版表面に噴射し、次いで送風ユニットから供給される加圧気体を噴射して凸版表面に付着する洗浄液を吹き飛ばすことで乾燥させ、そして加圧気体の噴射時に発生する洗浄液の飛沫を洗浄液回収ユニットで吸引して回収し、さらに、凸版の洗浄終了後は、版シリンダと版拭き取り装置とを拭き取り可能な状態に対向させて凸版に付着する洗浄液を拭き取るようにしたので、凸版を版シリンダに設置したまま、かつ凸版に損傷を与えることなく洗浄でき、これにより、インキの濡れ性が向上し、洗浄直後から良好な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、凸版を設置する回転式の版シリンダと、被印刷基板を載置する基板定盤と、凸版にインキを塗布するインキ供給装置とを備える凸版印刷装置に関するもので、特にフレキソ印刷機に適用される。また、印刷機の形態については、回転式の版シリンダが基板定盤上を移動する方式や、基板定盤が版シリンダの下を移動する方式があるが、どちらの形態でもかまわない。
また、本発明のインキ供給装置に関しても、平面アニロックス板にドクタリング機構を備えたものや、アニロックスロールによるもの、キャピラリコータ等が考えられるが、いずれの方式でもかまわない。
【0011】
また、本発明の版洗浄装置の設置方式は、凸版印刷機の機構によって変わってくる。例えば、版シリンダが移動する方式の凸版印刷機の版洗浄装置は、基板定盤と並列に設置され、版シリンダが版洗浄装置と対向する位置に移動してくる方式が適しており、版シリンダの位置が固定された方式の凸版印刷機の版洗浄装置では、通常時、退避している版洗浄装置が版洗浄時のみ、版シリンダに対向する位置まで移動してくる方式が適している。しかし、本発明による版洗浄装置の設置方法は、これに限定されるものではなく、各ユニット別に固定式と移動式を混在させた方式も考えられる。
【0012】
また、本発明の版洗浄装置を構成する洗浄液供給ユニットは、版シリンダに設置された凸版の表面にノズルにて、水と洗剤の混合液または有機溶剤からなる洗浄液をかけ流す方式である。この場合のノズル形態としては、スプレーノズルを版シリンダの幅方向に等間隔で並列したものや、スプレーノズルが版シリンダの幅方向に移動する機構等が考えられるが、洗浄液の供給ムラが印刷結果に与える影響を考えると、版シリンダの幅方向に均一な膜状に洗浄液を供給できるスリットノズルが望ましい。
また、凸版の凹部に溜まったインキ残渣を掻き出すため、加圧気体と一緒に洗浄液を噴射する二流体ノズルとしても良い。ノズルの設置位置は、版シリンダの幅方向に均一の距離から洗浄液をかけ流せる位置である。さらに、版シリンダの回転方向に対して下方に向け傾斜する入射角をつけるような位置、つまり、凸版の表面に対する洗浄液供給ユニットのノズル位置は、版シリンダに設置された凸版が版シリンダの回転方向において版シリンダの最下部に臨む位置から版シリンダの回転方向に180度の範囲内で洗浄液が凸版に供給されるようにノズルが設置するのが望ましい。
【0013】
また、本発明の送風ユニットは、洗浄液供給ユニットのノズルと平行に設置されたエアナイフノズルから、空気や不活性ガスからなる加圧気体を凸版表面上に噴射し、凸版表面に残った洗浄液を下方向に吹き落とす方式である。また、このエアナイフノズルも前記洗浄液供給ユニットのノズルと同様に、版シリンダの回転方向に対して下方に向け傾斜する入射角をつけるように設置するのが望ましい。
【0014】
また、本発明における洗浄液供給ユニットのノズルと送風ユニットのエアナイフノズルに共通のスリットノズルを使用し、この単一のスリットノズルから切り替え式で、洗浄液と加圧気体を選択的に噴出させる機構とすることもできる。この場合、スリットノズルから洗浄液を噴射させた後、乾燥のため加圧気体を噴射する際、スリットノズル先端に残った洗浄液の滴を同時に吹き飛ばすため、スリットノズル先端から凸版表面への洗浄液の滴垂れによる洗浄ムラ不良の発生を防げる。
【0015】
本発明における洗浄液回収ユニットは、洗浄液供給ユニットのノズルから垂れ落ちる洗浄液や凸版表面及び版シリンダ表面を伝って垂れる洗浄液の落下を受けるためのもので、少なくとも洗浄液供給ユニットのノズル直下から、版シリンダの最下部の直下までの間をカバーするように配置される必要がある。
また、洗浄液回収ユニットを構成する洗浄液受け皿と吸引ユニットの吸引口を直結し、受け皿上に溜まった洗浄液飛沫を吸引ユニットで回収する構造にすれば、さらに良い。
【0016】
本発明における洗浄液供給ユニットのノズル、送風ユニットのノズル、吸引ユニットの吸引口及び洗浄液回収ユニットは一つのカバー内に収容され、このカバーの版シリンダの外周が対向する面のみが開口され、かつ、版シリンダの外形に倣った曲面状の開口部を有しており、さらに、版シリンダがカバーに対向される時の版シリンダの外周とカバーとの間の隙間は5mm以下に設定される。これにより、版洗浄装置の動作時に使用される洗浄液の飛沫がカバーの外部に飛散するのを防止する。
【0017】
また、本発明における版拭き取り装置は、動作時にその拭き取りローラを版シリンダ表面に設置した凸版の表面に押し付けられ、この拭き取りローラが版シリンダの回転と共に回転して、凸版表面に付着する洗浄液を拭き取る方式である。この時、拭き取りローラ自体を吸着ローラ等から構成し、拭き取りローラ上に直接洗浄液を吸着する方式も考えられるが、この場合、拭き取りローラ自体の清掃も必要となる。そこで、拭き取りロールの表面に巻いたフィルム状の拭き取りシートを拭き取りロールと凸版との間に挟み込んで押し当てて凸版表面の洗浄液を拭き取りシート表面に転写する方式とし、拭き取りシートを供給ロールから繰り出されるロール状シートとし、常に新しい面が凸版に当たるように、版シリンダ及び拭き取りロールの回転に伴って拭き取りシートは送られ、回収ロールへ巻き取られる機構が望ましい。また、拭き取りシートの材質は、不織布、粘着シート等も考えられるが、発塵や粘着剤残り等の影響を考え、PET等の樹脂フィルムが望ましい。
【0018】
次に、本発明による版洗浄装置の動作について説明する。
有機EL素子の発光層をフレキソ印刷で印刷していくと、揮発性有機溶剤を溶媒とした高分子有機発光体のインキは、凸版の表面にインキ残渣が乾燥して蓄積していき、ある程度の回数の印刷を繰り返した時点で、凸版の凹部に蓄積したインキ残渣の影響で印刷パターンが所望の寸法よりも大きく印刷されたり、膜厚が不安定に変動して印刷ムラが発生したりする。そこで、印刷動作を一時中断させて版洗浄装置を作動させる。
【0019】
この場合は、まず、版シリンダと版洗浄装置とを洗浄可能な状態に対向させ、版シリンダを回転させる。凸版のパターン部の前端(印刷開始側)が洗浄液供給ユニットのノズル近傍まで到達した状態から、凸版表面に洗浄液をかけ、次いで、乾燥ユニットのノズルから圧空を噴射し、凸版表面の洗浄液を吹き飛ばして乾燥する。この時、版シリンダと版洗浄装置とを対向させた時点から、吸引ユニットを動作させて洗浄液の飛沫を吸引する。吸引ユニットの吸引量は、乾燥ユニットの吐出量よりも大きくし、版洗浄装置のカバーの内部を外圧よりも負圧とし、カバーと版シリンダの隙間から版洗浄装置の外側に洗浄機の飛沫や雰囲気が洩れないようにする。
洗浄液を使用した版洗浄終了後は、版シリンダとインキ供給装置を当接させ、凸版上にインキを供給させるが、洗浄液成分が残留した凸版はインキとの馴染みが悪く、インキが充分供給されにくい。そこで、版拭き取り装置の拭き取りロールを版シリンダに押し当てて凸版上に不十分に供給されたインキを一旦拭き取る。その後、凸版上に残留した洗浄液成分が減少しインキの濡れ性が向上して十分なインキ量が供給できるようになるまで、同様にインキ供給と拭き取りを所望の回数だけ繰り返して、版の洗浄動作を終了とし、その後、一時中断させていた印刷動作を再開させる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明にかかる凸版印刷装置の実施例1について、図面を参照して説明する。
図1は本実施例1における凸版印刷装置の全体構成を示す概要図、図2は本実施例1の凸版印刷装置における版洗浄装置の動作時の概要図、図3は本実施例1の凸版印刷装置における版拭き取り装置の動作時の概要図である。
【0021】
凸版印刷装置は、図1に示すように、移動式の版シリンダ1と、印刷機ベース10上に所定の間隔を離して並列に配置された基板定盤2、インキ供給装置3および版洗浄装置4と、インキ供給装置3の上方に版シリンダ1の通過経路よりも高い位置で図示省略の昇降機構をもつ版拭き取り装置9とを備える。この凸版印刷装置はフレキソ印刷機を構成するもので、有機EL素子の発光層のパターン印刷に適用される。
【0022】
前記版洗浄装置4は、版シリンダ1に設置された凸版11の表面を洗浄するもので、図2に示すように、版シリンダ1に設置された凸版11の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニット5と、洗浄液が供給された後の凸版11の表面に加圧された気体を噴射する送風ユニット6と、送風ユニット6からの加圧気体の噴射に伴い飛散された洗浄液を吸引する吸引ユニット7と、凸版11の表面に供給された後の流下する洗浄液を受ける洗浄液回収用の受け皿(特許請求の範囲に記載した洗浄液回収ユニットに相当する)8とを備える。
洗浄液供給ユニット5は、図2に示すように、凸版11の表面に洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズル51を有し、この洗浄液噴射ノズル51は洗浄液供給ホース52により洗浄液供給ユニット5に接続されている。
また、送風ユニット6は、図2に示すように、洗浄液が供給された凸版1の表面に加圧気体を噴射する気体噴射ノズル61を有し、この気体噴射ノズル61は加圧気体供給ホース62により送風ユニット6に接続されている。
また、吸引ユニット7は、図2に示すように、洗浄液回収用受け皿8の底部に連通する吸引口71を有し、この吸引口71は吸引ホース72により吸引ユニット7に接続されている。
【0023】
前記版洗浄装置4は、図2に示すように、洗浄液噴射ノズル51、気体噴射ノズル61及び洗浄液回収用受け皿8を収容するカバー41を有し、このカバー41の版シリンダ1の外周曲面と対応する箇所は版シリンダ1の外周曲面と対応した曲面形状に形成され、そして、このカバー41の曲面形状部分42は開口され、さらに、版シリンダ1の外周曲面と曲面形状部分42との間の隙間は5mm以下に設定されている。
また、洗浄液供給ノズル51と気体噴射ノズル61は、図2に示すように、曲面形状部分42の開口に臨ませて版シリンダ1の回転方向に前後して配置されている。
前記版拭き取り装置9は、図1及び図3に示すように、長尺な洗浄液拭き取りシート94をロール状に巻回した拭き取りシート供給ロール(特許請求の範囲に記載した拭き取りシート供給手段に相当する)92と、この供給ロール92から繰り出される拭き取りシート94を版シリンダ1に設置された凸版11の表面に押し付ける拭き取りロール(特許請求の範囲に記載した拭き取り手段に相当する)91と、凸版11の表面に付着した洗浄液を拭き取った後の拭き取りシート94を巻き取る回収ロール(特許請求の範囲に記載した拭き取りシート回収手段に相当する)93とから構成されている。
【0024】
前記インキ供給装置3は、アニロックスロール31を介して高分子発光体を含有したインキを、版シリンダ1表面に設置された所望の凸パターンを有する凸版11の表面に供給し、その後、版シリンダ1を基板定盤2に設置された被印刷基板21上を転がりながら、凸版11を被印刷基板21の表面に押し当て、インキをパターン状に転写することで発光層を形成する。この印刷動作を20〜100回程度繰り返すうちに、凸版11の表面に残ったインキ残渣が蓄積され、凸版11の凹部に詰まり、印刷パターンが所望の寸法よりも大きく印刷されたり、印刷ムラが発生するようになってしまう。
【0025】
そこで、この実施例1では、図2に示すように、版洗浄装置4に当接する位置に版シリンダ1を移動させ、版シリンダ1を回転させながら、洗浄液供給ユニット5のノズル51の近傍に凸版11の前端11aが到達した位置から、洗浄液供給ユニット5のノズル51から洗浄液としてトルエンを凸版11の表面上に吹き付けつつ、乾燥ユニット6のノズル61から圧空を凸版11の表面に吹き付け、同時に吸引ユニット7の吸い込み口71から洗浄液であるトルエンの飛沫や洗浄液受け皿8上に垂れたトルエンを吸い込む。この動作を、版シリンダ1が回転して、凸版11の後端11bまで、洗浄液であるトルエンがかかり、かつ乾燥するまで継続される。その後、洗浄動作は終了する。
【0026】
次いで、図3に示すように、版シリンダ1をインキ供給装置3に当接する位置まで移動させ、版シリンダ1を回転させながら凸版11の表面にインキを供給する。その後、版シリンダ1を上昇させて、拭き取りユニット9の拭き取りロール91に拭き取りシート94を介して当接させる。版シリンダ1と拭き取りロール91を同じ周速で回転させ、拭き取りシート94を送りつつ、凸版11の表面に付着されたインキを拭き取りシート94に転写させることで拭き取る。その後、同様にインキの供給とインキの拭き取りを交互に1〜5回程度繰り返す。しかる後、印刷機を通常動作に戻し、有機EL素子の発光層印刷を行い、所望の寸法のパターンを有する発光層を形成する。
【0027】
このような本実施例1に示す凸版印刷装置によれば、凸版11を版シリンダ1に設置したまま、凸版11を損傷することなく洗浄することができ、これにより、インキの濡れ性が向上し、洗浄直後から良好な印刷が可能になるほか、従来のような被印刷基板への捨て印刷が不要となり、無駄な被印刷基板の消費を防止できる。そして、本実施例1に示す凸版印刷装置を有機EL素子の発光層のパターン印刷に適用することにより、高品位の画像表示が可能な高分子有機EL素子を安価に生産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施例1における凸版印刷装置の全体構成を示す概要図である。
【図2】本実施例1の凸版印刷装置における版洗浄装置の動作時の概要図である。
【図3】本実施例1の凸版印刷装置における版拭き取り装置の動作時の概要図である。
【符号の説明】
【0029】
1……版シリンダ、11……凸版、2……基板定盤、21……被印刷基板、3……インキ供給装置、31……アニロックスロール、4……版洗浄装置、41……カバー、5……洗浄液供給ユニット、51……洗浄液供給ノズル、6……送風ユニット、61……気体噴射ノズル、7……吸引ユニット、71……吸引口、8……洗浄液受け皿、9……版拭き取り装置、91……拭き取りロール、92……供給ロール、93……回収ロール、94……拭き取りシート、10……印刷機ベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸版を印刷版とする凸版印刷装置であって、
前記凸版が設置される回転式の版シリンダと、被印刷基板を載置する基板定盤と、前記凸版にインキを供給するインキ供給装置と、前記凸版の表面を洗浄する凸版洗浄装置と、前記洗浄後の凸版表面の洗浄液を拭き取る版拭き取り装置とを備え、
前記凸版洗浄装置は、前記版シリンダに設置された前記凸版の表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニットと、前記洗浄液が供給された後の前記凸版に加圧された気体を噴射する送風ユニットと、前記送風ユニットにより飛散された洗浄液を吸引する吸引ユニットと、前記凸版の表面に供給された洗浄液を受ける洗浄液回収ユニットとを少なくとも備えることを特徴とする凸版印刷装置。
【請求項2】
前記洗浄液供給ユニットは、前記凸版に接触することなく洗浄液のみを前記凸版の表面に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の凸版印刷装置。
【請求項3】
前記凸版の表面に対して前記洗浄液供給ユニットからの洗浄液の供給位置は、前記版シリンダに設置された前記凸版が版シリンダの回転方向において該版シリンダの最下部に臨む位置から版シリンダの回転方向に180度の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の凸版印刷装置。
【請求項4】
前記洗浄液供給ユニットは前記凸版の表面に洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルを有し、前記送風ユニットは前記洗浄液が噴射された後の前記凸版に加圧気体を噴射する気体噴射ノズルを有し、前記吸引ユニットは前記洗浄液の飛沫を吸引する吸引口を有し、前記洗浄液噴射ノズル、前記気体噴射ノズル及び前記洗浄液回収ユニットはカバー内に収容され、前記カバーの前記版シリンダの外周曲面と対応する箇所は前記版シリンダの外周曲面と対応した曲面形状に形成され、当該カバーは前記曲面形状部分のみが開口し、かつ前記版シリンダの外周曲面と前記曲面形状部分との間の隙間が5mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の凸版印刷装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給ノズルと前記気体噴射ノズルは前記前記曲面形状部分の開口に臨ませて前記版シリンダの回転方向に前後して配置されることを特徴とする請求項4記載の凸版印刷装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給ユニットからの洗浄液を前記凸版の表面に噴射するノズルと前記送風ユニットからの加圧気体を前記洗浄液が供給された後の前記凸版に噴射するノズルを単一のノズルで構成し、当該ノズルから洗浄液と加圧された気体を切り替えて前記凸版に噴射するように構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の凸版印刷装置。
【請求項7】
前記版拭き取り装置は、長尺な洗浄液拭き取りシートを送り出す拭き取りシート供給手段と、前記拭き取りシート供給手段からの拭き取りシートを前記凸版の表面に接触させて該凸版表面に付着する洗浄液を拭き取る拭き取り手段と、前記凸版表面に付着した洗浄液を拭き取った後の拭き取りシートを巻き取る拭き取りシート回収手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の凸版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−196614(P2007−196614A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20478(P2006−20478)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】