説明

凹凸パターンを有する金型の製造方法

【課題】 精度劣化無く凹凸パターンを有する円筒状金型を製造すること。
【解決手段】 図1(A)に示すように、母型である円筒1の表面には、第1の凹凸パターン2が形成されている。図1(B)に示すように、第1の凹凸パターン2が形成された円筒1のレジスト表面上にシリコーン樹脂層3を形成する。次に、図1(C)に示すように、シリコーン樹脂層3の周囲に円筒状のホルダー4を設置する。次に、図1(D)に示すように、円筒状のホルダー4を利用して円筒1と第1の凹凸パターン2をシリコーン樹脂層3から剥離する。次に、シリコーン樹脂層3をホルダー4の内部に固定する。次に、図1(E)に示すように、シリコーン樹脂層3の内周面に導電膜(導電層)5を形成する。次に、図1(F)に示すように、導電膜5上に電鋳し、金属層6を析出させる。次に、図1(G)に示すように、ホルダー4とシリコーン樹脂層3を除去し、円筒状の金型6を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸パターンを有する円筒状金型及びその製造方法に関するもので、具体的にはレンチキュラーレンズ、プリズム、マイクロレンズ、フレネルレンズなどの光学部品用金型の製造方法および作製された金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等に使用されるマイクロレンズ,プロジェクションTV用スクリーンに用いられるフレネルレンズやレンチキュラーレンズ等の光学部品を作製する際、一般に凹凸パターンを有する金型が用いられる。該金型は平板の形状のものもあるが、生産性を考慮すると円筒状の形状のものを使用して連続的に樹脂を成形することが望ましい。円筒状の金型は、平板をシリンダーの外表面に巻きつけることによっても作製することが可能であるが、当然、平板の始点と終点による継ぎ目が残り、それが成形品にも転写されてしまう。成形される部品が小さく、その継ぎ目を避けて製品が得られる場合はよいが、大きな部品の場合には、適用が不可能となる。
【0003】
円筒状の金型を作製する方法がいくつか提案されている。この1つの方法は、凹凸パターンに対応するパターンが形成された可撓性マスターを円筒型の内周面に沿って設置し、該可撓性基板上に電鋳膜を形成した後、該電鋳膜から可撓性基板を剥離することにより、その表面に凹凸パターンを有する円筒状スタンパーを従来の安価な装置で直接ロール状に作製するものである。(特許文献1)また、他の方法は、第1の凹凸パターンを有する母型を用いて第1の凹凸パターンを樹脂層に転写して第2の凹凸パターンを樹脂層に形成する工程と、該樹脂層に導電層を形成する工程と、該導電層に電鋳処理によって金属膜を形成する工程と、前記第2の凹凸パターンを前記金属膜に転写して第3の凹凸パターンを前記金属膜に形成する工程と、前記金属膜を前記導電層から剥離して金型とする工程とを有するものである。(特許文献2)また、その他の方法は、フレキシブルなシート部材の一方の面に所望の凹凸形状を形成し、当該面に導電性膜を形成する第1工程と、シート部材の凹凸形状が形成された面を内側にして円筒状に丸めて筒状部材の内部に挿入し、凹凸形状が形成された面に電鋳処理を施して金型を形成する第2工程と、金型及びシート部材を筒状部材から抜き取り、さらに金型をシート部材から剥離する第3工程とを備えるものである。(特許文献3)
【0004】
【特許文献1】特開平5−16230公報
【特許文献2】特開2005−153271公報
【特許文献3】特開2005−349596公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような継ぎ目のない円筒状金型の作製において、平板の母型を用いたり、円筒状の母型から一旦平板の複製版を作り、それを円筒状に丸めてから円筒状の金型を複製するような場合には、継ぎ目を完全に消失させることは不可能であり、継ぎ目を有するものと同様となる。一方、円筒状の母型から、平板の複製版を介さずに円筒状金型を作製する場合には、母型から樹脂で凹凸パターンを複製する場合に、それを剥離することが困難である。剥離の作業の際に、母型パターンと複製された樹脂が擦れ合うことにより、樹脂上に多数のキズが付き、多くの欠陥を有するものになる。このように擦れ合うことが起こるのは、複製用の樹脂に柔軟性や弾性がないという材料固有の特性による。柔軟性および弾性を有する材料としては、シリコーン樹脂があり、実際に母型からの複製にしばしば使用されている。シリコーン樹脂を使用することによって、円筒状の母型の表面から凹凸パターンを複製し、その柔軟性,弾性を利用してキズがつかないように剥離し、複製された凹凸パターン面が得られる。
【0006】
ところが、そのシリコーン樹脂上の凹凸パターン面上に金属膜を電鋳して金型を得る場合、シリコーン樹脂と金型金属の膨張率の相違により精度が大きく劣化する。すなわち、電鋳および、電鋳の前に行なわれる導電膜をシリコーン樹脂上に形成する工程において、温度が高いとシリコーン樹脂が膨張するため、その上の析出する金属膜も膨張した形状に倣って析出する。さらに、シリコーン樹脂と金属膜の密着性は必ずしも良好でないので、金属膜の析出後に温度が急激に変化すると、シリコーン樹脂との膨張,収縮量の差により金属膜には剥がれや割れが生じる。このことが、精度劣化の最も大きな要因である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は上記の様なシリコーン樹脂を介して凹凸パターンを有する金型を作製する際の精度の劣化であり、精度劣化無く凹凸パターンを有する円筒状金型を作製する方法及び該方法を用いて作製された金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の様な問題点を考慮し、各種検討した結果、少なくとも工程の初期において大きな温度変化無くシリコーン樹脂上に金属膜を析出させれば、精度劣化の無い金型を得ることができることを得た。
【0009】
本発明は、外周面に第1の凹凸パターンが形成された円筒状の母型を用いて凹凸パターンを有する継ぎ目のない円筒状金型を製造する方法であって、前記母型の外周面にフレキシブルなシリコーン樹脂を積層しその内周面に前記第1の凹凸パターンが転写された第2の凹凸パターンを有する円筒状のシリコーン樹脂層を形成する工程と、前記シリコーン樹脂層を前記母型から円筒形状のまま剥離する工程と、前記シリコーン樹脂層を、前記シリコーン樹脂層の外径よりも大きい内径を有する中空状の円筒状ホルダーの内部に固定する工程と、前記シリコーン樹脂層の第2の凹凸パターンの表面に導電層を形成しさらに前記導電層上に電鋳処理することによって金属層を形成し、この金属層によりその外周面に第3の凹凸パターンを有する円筒状の金型を形成する工程と、前記シリコーン樹脂層と前記円筒状ホルダーを前記円筒状の金型から除去する工程とを有し、これらの工程から第3の凹凸パターンが外周面に形成された円筒状の金型が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、第1の凹凸パターンを有する円筒状の母型からシリコーン樹脂を利用して第2の凹凸パターンを複製し、シリコーン樹脂の柔軟性,弾性を利用して、凹凸パターン面にキズを付けずに剥離して円筒状のシリコーン樹脂層を得、さらに、その内壁面上を無電解めっきで導電化、電鋳して金属層を形成して第3の凹凸パターンを得る。この第2から第3のパターンの複製において、プロセス上の大きな温度変化を、少なくともその工程の初期において起こさないことで精度を維持することができ、凹凸パターンを有する継ぎ目のない円筒状金型をパターンの精度が劣化すること無く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の円筒状金型の製造工程の概略図を図1に示し、得られた円筒状金型の概略斜視図を図2に示し、本発明の円筒状金型の製造方法のフローチャートを図3に示す。
図1(A)に示すように、母型である円筒1の表面に第1の凹凸パターン2が形成されている。円筒1は、ガラス,樹脂,金属などによって成る。その寸法は、例えば長さ2m,断面の直径が100〜300mmである。表面精度は、平滑性を保持するため、長さ1mあたりRaが1〜3μmであることが望ましい。第1の凹凸パターン2は、感光性樹脂レジストを円筒1の表面にディップコート法で塗布してレジスト層を形成する。ここでは図示はしないが、レジストを有機溶媒に溶解した液中に円筒1を浸漬した後、浸漬した円筒1を一定速度で引き上げることで、表面にレジストを均一に塗布してレジスト層を形成する。ここでレジストは、例えばポリイミド樹脂やノボラック樹脂などによる感光性樹脂を用いる。レジスト層の厚さは、レジストの粘度を適宜調整し、円筒1を引き上げる速度を変えることによって調整できる。膜厚は目的とする凹凸パターンにより異なるが、50〜80μmが適当である。
【0012】
レーザー走査装置を用いて、レジスト層の表面にレーザー光を当てて第1の凹凸パターン2を形成する(ステップS1)。レーザー光の積算レーザーパワー量を制御しながらレーザー光の焦点位置および照射時間を設定し、円筒1を回転させながら描画することで、円筒1上のレジスト面全体に第1の凹凸パターン2が形成される。この第1の凹凸パターン2は、例えばマイクロレンズ,フレネルレンズ等を構成する凹凸、曲率を有する形状である。また、第1の凹凸パターン2の作製方法は、このような方法に限らず、例えば、該感光性樹脂にフォトマスクを介して露光し現像するなどの方法を採用することも可能である。なお、後の工程でシリコーン樹脂層3に複製された後、シリコーン樹脂層3を凹凸パターン2から剥離する際に、若干パターン全体が伸びることになるので、その分を見越して凹凸パターンのピッチの設計がなされていることが望ましい。
【0013】
次に、図1(B)に示すように、第1の凹凸パターン2が形成された円筒1のレジスト表面上にシリコーン樹脂層3を形成する(ステップS2)。用いるシリコーン樹脂としては、硬化後も柔軟性,弾性を有するゴム状のものが適当である。例えば、KE-1300T,KE-1600(信越シリコーン)などが使用できる。塗布方法はとくに限定されないが、未硬化状態のシリコーン樹脂を第1の凹凸パターン2上に塗布し、円筒1を回転させながら、ブレードを用いて厚さが均一となるように広げていく。厚さは、1〜5mm程度が適当である。時間をおいて、シリコーン樹脂を完全に硬化させるが、この条件は使用するシリコーン樹脂による。
第1の凹凸パターン2が形成された円筒1のレジスト表面上にシリコーン樹脂層3を形成することで、シリコーン樹脂層3の内周面に、第1の凹凸パターン2が転写された第2の凹凸パターンが形成される。
【0014】
次に、図1(C)に示すように、シリコーン樹脂層3の周囲に円筒状のホルダー4を設置する。ホルダー4は、後の金属膜析出工程において、シリコーン樹脂層3を固定し、得られる円筒状金型のパターンの精度を維持するものである。したがって、ホルダー4は、屈曲性がなく、寸法安定性がよく、さらに内壁が平坦に加工されているべきである。材料としては、ガラス、プラスチック,表面を絶縁処理した金属がよい。この円筒状ホルダー4の内径は、シリコーン樹脂層3の外径よりも、5〜20mm程度大きくする。これにより、後続の工程において、円筒1と凹凸パターン2をシリコーン樹脂層3から剥離し、除去することが容易となる。
【0015】
次に、図1(D)に示すように、円筒1と第1の凹凸パターン2をシリコーン樹脂層3から剥離する(ステップS3)。これは、(1)予めシリコーン樹脂層3の表面に接着剤を塗布してから、ホルダー4をその周辺に設置した上で、ホルダー4の内壁にシリコーン樹脂層3の一部を圧接し、順次、全面を圧接することにより剥離する方法や、(2)円筒状のシリコーン樹脂層3とホルダー4の一方の端部を接着してから、他方の端部からその間隙に存在する空気を脱気することで剥離する方法、あるいは、(3)同様に一方の端部を接着してから、凹凸パターン2とシリコーン樹脂層3の間に圧縮空気を送り込み、その圧力で剥離するなどの方法、(4)さらには、(2)と(3)を組み合わせ、接着された一方の端部から第1の凹凸パターン2とシリコーン樹脂層3の間に圧縮空気を送り込み、他方の端部からシリコーン樹脂層3とホルダー4の内壁間を脱気するという方法を用いることができ、円筒状のホルダー4を利用することで効率よく行なえる。
【0016】
また、レジストの種類によってはレジストを加熱して溶融し、円筒1を剥離する方法や、溶剤を用いてレジスト自体を溶かして間隙を作製し、それを利用して剥離する方法がとれるが、シリコーン樹脂層3に形成された第2の凹凸パターンに与える影響を小さく抑える必要があるため、補助的に用いることが望ましい。
【0017】
次に、シリコーン樹脂層3をホルダー4の内部に固定する(ステップS4)。シリコーン樹脂層3はホルダー4の内壁に保持された状態で、接着剤を硬化することで固定できる。そして、両方の端部のシリコーン樹脂層3とホルダー4間を接着し、後続の溶液を使用する工程において、その間隙に液が侵入することを防ぐ。より詳細には、シリコーン樹脂層3の長手方向の両端において、シリコーン樹脂層3の外周面と円筒状ホルダー4の内周面との間の環状の空隙に接着剤が充填されてシリコーン樹脂層3の長手方向の両端が円筒状ホルダー4に液密に固定される。この際治具を使用し、シリコーン樹脂層3の形状が保たれる様にする。
【0018】
次に、図1(E)に示すように、シリコーン樹脂層3の内周面に導電膜(導電層)5を形成する(ステップS5)。すなわち、第2の凹凸パターンの表面に導電膜5を形成する。この方法として、無電解めっきを行なう。本発明の場合は、円筒状の物体の内壁に均一に導電膜を形成する必要があるため、スパッタ、蒸着などの方法よりも無電解めっきが好適である。シリコーン樹脂に対して無電解めっきを行なう場合には、シリコーン樹脂の撥水性が高いためにうまくめっき膜が析出しない場合があるが、めっきの前処理として有機溶媒に短時間浸漬する、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で表面を短時間処理する、高アルカリ性の溶液に浸漬するなどの方法で水濡れ性を改善すればよい。このような処理の後、通常、無電解めっきを析出させるために当該業務者では公知の前処理を行なう。これは、基材上に無電解めっき析出の核となる触媒を付与するものである。触媒溶液への浸漬の前に、基材上への触媒の付着を増進するためのコンディショナ処理を行い、水洗する。これは、カチオン界面活性剤を含有する溶液に浸漬後、水洗を行なうものである。それに引き続き、パラジウム−スズコロイドを含有する触媒溶液に浸漬、水洗後、余分なスズ分を除去するためのアクセラレータ処理を行い、水洗する。
【0019】
無電解めっきは、無電解銅めっきまたは無電解ニッケルめっきを用いる。無電解めっきは、シリコーン樹脂層3の内周面をなす第2の凹凸パターンの表面に、均一に析出しなければならない。そのため、本発明における電解めっきの条件は、温度が35℃未満であり、めっき液のpHが9以上である。温度が35℃以上では、シリコーン樹脂が膨張した状態で無電解めっきが析出するため、めっき後に水洗などを行うと温度変化によってめっき膜の剥離、割れが生じる。それによって、パターンの精度は劣化する。また、一般的に温度を35℃未満とすると無電解めっきの速度は低下するため、実用上十分なめっき速度を得るためには、pHを9以上とする必要がある。これには、シリコーン樹脂に対するめっき液の濡れ性を改善する効果もある。
【0020】
無電解銅めっきは、ホルマリンまたはグリオキシル酸を還元剤として含有する液が適当である。例えば、スルカップPEA(上村工業)などを、温度約30℃,pH12〜13で使用することができる。無電解ニッケルめっきは、次亜リン酸塩を還元剤として含有する液が適当である。例えば、化学ニッケル(奥野製薬工業)を温度約30℃,pH9.0〜9.5で使用することができる。得られるめっき膜厚は、時間で制御し、いずれの場合も、1μm以下とする。無電解めっきでは、反応生成物として水素ガスが発生するので、その泡の付着防止と温度の均一化、めっき成分の供給のために、液の循環を十分に行う。めっき後は、20〜30℃の水で緩やかに表面を水洗する。なお、一連の導電化に関わる前処理,無電解めっき,水洗の処理は、円筒全体を処理液に浸漬して行うこともできるが、円筒の内部にのみ処理液を充填して行なうと、処理液量の低減,不必要な部分への成分の付着の防止ができるため望ましい。
【0021】
無電解めっきによりシリコーン樹脂層3の第2の凹凸パターンの表面を導電化した後、図1(F)に示すように、導電膜5上に電鋳し、金属層6を析出させる(ステップS6)。シリコーン樹脂層3の第2の凹凸パターンの表面に金属層6を析出させることで、その外周面に第2の凹凸パターンが転写された第3の凹凸パターンを有する金属層6が得られ、この金属層6が円筒状の金型6である。
電鋳で析出させる金属はニッケルであり、例えば以下の電鋳液から析出させる。
スルファミン酸ニッケル 400g/L
塩化ニッケル 5g/L
ホウ酸 30g/L
界面活性剤 0.1g/L
電鋳処理は2段階で行われ、少なくとも、その第1段階では温度35℃未満で1μm以上の厚さとなるよう行なわれる。これは、上記のようにシリコーン樹脂上に析出させた無電解めっき膜上に電鋳層を析出させるにあたり、一般的なニッケル電鋳において適用される40℃以上の液温では、シリコーン樹脂の膨張により、無電解めっき膜のはがれや割れが生じてしまうので、それを防止するためである。1μm以上の厚さにした後は、温度変化によるシリコーン樹脂からのはがれ、割れが生じにくくなるため、別に用意した高温の液中に移しで電鋳を継続する。あるいは、同じ槽、液を用いて、液温を上昇させて電鋳を継続する。電流密度は、35℃未満の第1段階においては、2A/dm2以下とするが、温度を上げてからは、3A/dm2以上として、電鋳の析出速度を増大させる。
【0022】
本発明においては、この円筒状のシリコーン樹脂層3の内周面に電鋳をする方式については、特に定めないが、図4のような方式が適当である。ここでは、ホルダー4に固定され導電膜5を付与されたシリコーン樹脂層3(全体として7)は、その中心に棒状のアノード8が位置するように電鋳槽9内に設置されている。このホルダーは、中心を軸として電鋳処理が継続している間、連続的に回転し、これによって析出するニッケル層の厚さが均一になるようにする。めっき層への給電は、ホルダー4に固定され導電膜5を付与されたシリコーン樹脂層3が液面よりも上部に露出している部分で行なわれる。このようにして、ニッケル金属層が析出される。この金属層6の厚さは、当該事業者によって決められるものであるが、0.5〜3mm程度が適当である。
【0023】
ニッケル電鋳により電鋳金属層6を形成した後、図1(G)に示すように、ホルダー4とシリコーン樹脂層3を除去し(ステップS7、S8)、第3の凹凸パターンを有する円筒状の金型6を得る。この場合、ホルダー4,シリコーン樹脂層3の除去の前に、シリンダー状の電鋳金属層6の内部に心棒を入れ、さらに心棒とその電鋳金属層6の間を樹脂等で充填し、硬化させておくと電鋳金属層6が固定され、ホルダー4やシリコーン樹脂層3の除去作業が行いやすくなる。
【0024】
ホルダー4は、切断して物理的に除去すればよい。あるいは、予め、いくつかに分割できるような構造にしておくと、この作業が容易であり、ホルダー4は再利用することもできる。ホルダー4とシリコーン樹脂層3の間に固定のための接着剤が導入されている場合は、溶剤等でこの接着剤を溶解除去してから、ホルダー4の除去作業を行なう。さらに、シリコーン樹脂層3も、シリンダー状になった電鋳金属層6から一部を切断して展開して物理的に剥離する。
【0025】
シリコーン樹脂層3を除去した後の電鋳金属層6の表面には、導電膜5が残留しているが、これは、円筒状金型として光学部品の成形に使用する場合に部分的に剥離してしまうため、化学的に溶解除去するか、粘着シートにより物理的に剥離除去することが望ましい。化学的に溶解する場合は、無電解銅めっきを導電膜とした場合には、1〜5%過硫酸アンモニウム水溶液に1〜5%のアンモニア水を加えた溶液で処理すると、ニッケル電鋳層にほとんどダメージを与えずに、銅を除去することができる。
【0026】
以上の工程を進めることで、図1(G)、図2に示す円筒状の凹凸パターンを有する継ぎ目のない金型6を作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の円筒状金型の製造工程の概略図である。
【図2】得られた円筒状金型の概略斜視図である。
【図3】本発明の円筒状金型の製造方法のフローチャートである。
【図4】シリコーン樹脂層の内壁に電鋳をする方式の概略図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1……円筒、2……凹凸パターン、3……シリコーン樹脂層、4……ホルダー、5……導電膜、6……電鋳金属層、7……ホルダー4に固定されたシリコーン樹脂層3、8……アノード、9……電鋳槽、10……整流器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に第1の凹凸パターンが形成された円筒状の母型を用いて凹凸パターンを有する継ぎ目のない円筒状金型を製造する方法であって、
前記母型の外周面にフレキシブルなシリコーン樹脂を積層しその内周面に前記第1の凹凸パターンが転写された第2の凹凸パターンを有する円筒状のシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記シリコーン樹脂層を前記母型から円筒形状のまま剥離する工程と、
前記シリコーン樹脂層を、前記シリコーン樹脂層の外径よりも大きい内径を有する中空状の円筒状ホルダーの内部に固定する工程と、
前記シリコーン樹脂層の第2の凹凸パターンの表面に導電層を形成しさらに前記導電層上に電鋳処理することによって金属層を形成し、この金属層によりその外周面に第3の凹凸パターンを有する円筒状の金型を形成する工程と、
前記シリコーン樹脂層と前記円筒状ホルダーを前記円筒状の金型から除去する工程と、
を有することを特徴とする凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂層を前記円筒状ホルダーに固定する工程では、接着剤による接着で前記シリコーン樹脂層が前記円筒状ホルダーに固定されることを特徴とする請求項1に記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂層を前記円筒状ホルダーに固定する工程では、前記シリコーン樹脂層の長手方向の両端において、前記シリコーン樹脂層の外周面と前記円筒状ホルダーの内周面との間の環状の空隙に接着剤が充填されて前記シリコーン樹脂層の長手方向の両端が前記円筒状ホルダーに液密に固定されることを特徴とする請求項1に記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂層を前記母型から円筒形状のまま剥離する工程において、前記円筒状ホルダーの内部に、前記シリコーン樹脂層は前記母型と共に挿入され、前記シリコーン樹脂層の前記母型からの剥離は、前記円筒状ホルダーの内周面に前記シリコーン樹脂層の一部を圧接し、順次、残りの部分を圧接していくことで行なわれることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂層を前記母型から円筒形状のまま剥離する工程において、前記円筒状ホルダーの内部に、前記シリコーン樹脂層は前記母型と共に挿入され、前記シリコーン樹脂層の前記母型からの剥離は、前記シリコーン樹脂層の長手方向の一端と円筒状ホルダーの長手方向の一端を接着し、前記長手方向の他方の端部から前記シリコーン樹脂層の該周面と前記円筒状ホルダーの内周面との間の環状の間隙に存在する空気を脱気することで行なわれることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂層を前記母型から円筒形状のまま剥離する工程において、前記円筒状ホルダーの内部に、前記シリコーン樹脂層は前記母型と共に挿入され、前記シリコーン樹脂層の前記母型からの剥離は、前記シリコーン樹脂層の長手方向の一端と円筒状ホルダーの長手方向の一端を接着し、前記母型の第1の凹凸パターンと前記シリコーン樹脂層の第2の凹凸パターンとの間に圧縮空気を送り込むことで行なわれることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項7】
前記導電層が無電解めっきによって形成されたことを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項8】
前記無電解めっきが、温度が35℃未満であり、めっき液のpHが9以上であることを特徴とする請求項7に記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項9】
前記無電解めっきが、無電解銅めっきまたは無電解ニッケルめっきであることを特徴とする請求項7に記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項10】
前記導電層上への電鋳処理の析出金属がニッケルであり、2段階で行われ、少なくとも、その第1段階では温度35℃未満で1μm以上行なわれることを特徴とする請求項1乃至9に何れか1項記載の凹凸パターンを有する金型の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10に記載の方法で製造された凹凸パターンを有する継ぎ目のない円筒状金型。
【請求項12】
前記凹凸パターンが光学部品用のパターンであることを特徴とする請求項11に記載の円筒状金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−290274(P2007−290274A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121893(P2006−121893)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】