説明

凹凸形成材の凹凸形成方法及び凹凸形成材

【課題】表側層の表面が湾曲されている場合でも表側層の表面に形成できる凹凸柄の凹凸形状が制限されることを抑制する。
【解決手段】加飾部材10では、基材20の外周面にベース層22が形成されており、ベース層22の外周面には、凹凸柄22Aが形成されている。ここで、凹凸柄82Aが形成された転写フィルム82を加飾部材10のベース層22の外周面に圧着して、ベース層22の外周面に凹凸柄22Aを形成する。このため、転写フィルム82をベース層22の外周面に圧着する際には、転写フィルム82が撓むことで、転写フィルム82の部位毎に凹凸柄82Aのベース層22外周面に対する移動方向を異ならせることができる。このため、ベース層22の外周面が湾曲されている場合でも、ベース層22の外周面に形成できる凹凸柄22Aの凹凸形状が制限されることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表側層の表面に凹凸柄を形成する凹凸形成材の凹凸形成方法及び表側層の表面に凹凸柄が形成された凹凸形成材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された凹凸形成材では、被転写基材の表側に剥離層が設けられており、二次転写用部材の表面の凹凸柄が剥離層の表面に加熱圧着されることで、剥離層の表面に凹凸柄が形成されている。
【0003】
しかしながら、この凹凸形成材では、二次転写用部材の表面を剥離層の表面に圧着する際に、二次転写用部材表面の凹凸柄の全体が剥離層の表面に対し同一方向に移動される。このため、仮に、剥離層の表面が湾曲されている場合に、これに対応させて、二次転写用部材の表面を湾曲させたとしても、剥離層の表面が二次転写用部材表面の凹凸柄の移動方向に平行に近い位置程、剥離層の表面に形成できる凹凸柄の凹凸形状が制限される。
【0004】
また、この凹凸形成材では、被転写基材の表側に剥離層が熱接着剤層によって接着されている。
【0005】
このため、構成が複雑であると共に、コストが高い。
【0006】
しかも、仮に、被転写基材が円柱状である場合には、剥離層の端部同士を合わせる必要があり、剥離層の端部同士の合わせ位置(凹凸柄の連結位置)では、剥離層の端部同士の境界線によって見栄えが悪くなる。特に、剥離層の端部同士を合わせた際に剥離層の端部同士の合わせ位置の不要部分をカットする(トリミングする)場合には、剥離層の見栄えが当該カット部分によって悪くなると共に、製造工数が多くなってコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−254238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、表側層の表面が湾曲されている場合でも表側層の表面に形成できる凹凸柄の凹凸形状が制限されることを抑制できる凹凸形成材の凹凸形成方法、構成を簡単にできると共にコストを低減できる凹凸形成材、及び、見栄えを良くできる凹凸形成材を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法は、基材と、前記基材の表側に設けられ表面に凹凸柄が形成された表側層と、を備えた凹凸形成材の凹凸形成方法であって、凹凸柄が形成された凹凸フィルムを前記表側層の表面に圧着して前記表側層の表面に凹凸柄を形成する。
【0010】
請求項2に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法は、請求項1に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法において、前記表側層の裏側の圧力を前記表側層の表側の圧力に比し低くして前記凹凸フィルムを前記表側層の表面に圧着する。
【0011】
請求項3に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法は、請求項1又は請求項2に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法において、前記凹凸フィルムを前記表側層の表面に圧着する際に前記表側層を加熱する。
【0012】
請求項4に記載の凹凸形成材は、基材と、接着性を有して前記基材の表側に接着され、表面に凹凸柄が形成された表側層と、を備えている。
【0013】
請求項5に記載の凹凸形成材は、基材と、前記基材の表側に設けられ、表面に凹凸柄が形成された表側層と、を備え、凹凸柄が連結された位置において前記表側層が連続されている。
【0014】
請求項6に記載の凹凸形成材は、請求項4又は請求項5に記載の凹凸形成材において、前記表側層の表面に設けられた透明層を備えている。
【0015】
請求項7に記載の凹凸形成材は、請求項6に記載の凹凸形成材において、前記基材、前記表側層及び前記透明層の少なくとも2つの輝度を異ならせている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の凹凸形成材では、基材の表側に表側層が設けられており、表側層の表面に凹凸柄が形成されている。
【0017】
ここで、請求項1に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法では、凹凸柄が形成された凹凸フィルムを表側層の表面に圧着して、表側層の表面に凹凸柄を形成する。
【0018】
このため、凹凸フィルムを表側層の表面に圧着する際には、凹凸フィルムの部位毎に凹凸柄の表側層表面に対する移動方向を異ならせることができる。このため、仮に、表側層の表面が湾曲されている場合でも、表側層の表面に形成できる凹凸柄の凹凸形状が制限されることを抑制できる。
【0019】
請求項2に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法では、表側層の裏側の圧力を表側層の表側の圧力に比し低くして、凹凸フィルムを表側層の表面に圧着する。このため、凹凸フィルムを表側層の表面に効果的に圧着でき、表側層の表面に凹凸柄を良好に形成できる。
【0020】
請求項3に記載の凹凸形成材の凹凸形成方法では、凹凸フィルムを表側層の表面に圧着する際に、表側層を加熱する。このため、表側層の表面の硬度を低下させることができ、表側層の表面に凹凸柄を良好に形成できる。
【0021】
請求項4に記載の凹凸形成材では、基材の表側における表側層の表面に凹凸柄が形成されている。
【0022】
ここで、表側層が、接着性を有して、基材の表側に接着されている。このため、表側層を基材の表側に接着する接着層を不要にでき、構成を簡単にできると共に、コストを低減できる。
【0023】
請求項5に記載の凹凸形成材では、基材の表側に表側層が設けられており、表側層の表面に凹凸柄が形成されている。
【0024】
ここで、凹凸柄が連結された位置において、表側層が連続されている。このため、凹凸柄が連結された位置において、表側層同士の境界線がなく、見栄えを良くできる。
【0025】
請求項6に記載の凹凸形成材では、表側層の表面に透明層が設けられている。このため、表側層表面の凹凸柄を保護できる。
【0026】
請求項7に記載の凹凸形成材では、基材、表側層及び透明層の少なくとも2つの輝度が異なっている。このため、表側層表面の凹凸柄を透明層を介して良好に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)〜(F)は、本発明の実施の形態に係る加飾部材の凹凸形成方法を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加飾部材の凹凸形成方法が適用された凹凸形成装置における凹凸形成状況を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る加飾部材の凹凸形成方法が適用された凹凸形成装置における凹凸形成状況を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る加飾部材の凹凸形成方法が適用された凹凸形成装置における凹凸形成状況を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る加飾部材が適用された車両のステアリングホイールを示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る加飾部材が適用された車両のシフトレバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図5には、本発明の実施の形態に係る凹凸形成材としての加飾部材10が適用された車両のステアリングホイール12が正面図にて示されている。
【0029】
図5に示す如く、本実施の形態におけるステアリングホイール12には、中心部分において、ブロック状のボス部14が設けられており、ボス部14の裏面には、円筒状の組付筒14A(図3参照)が一体に形成されている。組付筒14Aは、ステアリングホイール12と同軸上に配置されており、ボス部14は、組付筒14Aにおいて、車両側のステアリングシャフト(図示省略)に組み付けられている。これにより、ステアリングホイール12が、ステアリングシャフトと同軸上に配置されて、ステアリングシャフトと一体回転可能にされている。
【0030】
ボス部14の外周側には、棒状のスポーク部16が所定数(本実施の形態では4つ)設けられており、スポーク部16は、一端(内周側端)がボス部14に一体に連結されて、ボス部14の径方向外側へ延伸されている。
【0031】
所定数のスポーク部16の径方向外側には、円環状のリム部18が設けられており、リム部18は、所定数のスポーク部16の他端(外周側端)に一体に連結されている。
【0032】
ステアリングホイール12は、車両の乗員がリム部18を把持して回転操作されることで、ステアリングホイール12と一体にステアリングシャフトが回転されて、車両が操舵される。
【0033】
ステアリングホイール12のリム部18の上側部及び下部は、それぞれ加飾部材10によって構成されており、加飾部材10は、断面略円状にされると共に、ステアリングホイール12の周方向に沿って湾曲されている。
【0034】
図1(F)に示す如く、加飾部材10には、例えば木製の基材20が設けられており、基材20の外周面(表面)全体には、所定の基材柄(例えば木目柄)が形成(表示)されている。加飾部材10と同様に、基材20は、断面略円状にされると共に、ステアリングホイール12の周方向に沿って湾曲されている。
【0035】
基材20の外周面(表面)全体には、表側層としての樹脂製のベース層22(ベースコート又はトップクリヤ)が形成(塗装)されており、ベース層22は、接着性を有して、基材20の外周面に直接接着されている。ベース層22の外周面(表面)全体には、所定の凹凸柄22A(本実施の形態では凹凸状の格子縞柄)が形成(加飾)されている。
【0036】
ベース層22の外周面(表面)全体には、透明層としての樹脂製の被覆層24が形成(塗装)されており、被覆層24は、接着性を有して、ベース層22の外周面に直接接着されている。被覆層24は、ベース層22の凹凸柄22Aを被覆して保護している。
【0037】
ベース層22及び被覆層24は、無色透明又は有色透明にされており、被覆層24を介してベース層22外周面の凹凸柄22Aを視認可能にされると共に、被覆層24及びベース層22を介して基材20外周面の基材柄を視認可能にされている。
【0038】
また、基材20とベース層22と被覆層24とは、それぞれ輝度が互いに異なっている。
【0039】
図2には、本発明の実施の形態に係る加飾部材10の凹凸形成方法が適用された凹凸形成装置50が断面図にて示されている。
【0040】
図2に示す如く、凹凸形成装置50には、円柱形容器状のケース52が設けられている。ケース52には、下側の第1ケース52Aと上側の第2ケース52Bとが設けられており、第1ケース52Aの上面は開放されると共に、第2ケース52Bの下面は開放されている。
【0041】
第2ケース52Bは、開閉機構54に連結されており、開閉機構54が駆動されることで、第2ケース52Bが上下方向へ移動される。これにより、第2ケース52Bが第1ケース52Aから離間されて、ケース52内が開放されると共に、第2ケース52Bが第1ケース52Aに接近されて、ケース52内が閉塞される。また、ケース52内が閉塞された際には、ケース52内が気密空間にされる。
【0042】
ケース52内には、第2ケース52Bの底壁において、加熱手段としての加熱ランプ56が固定されており、加熱ランプ56は、ケース52内に赤外線を放射可能にされている。
【0043】
開閉機構54には、加熱手段及び冷却手段としての供給装置(図示省略)が接続されており、供給装置は、開閉機構54を介してケース52内に連通されて、ケース52内に加熱空気(蒸気(特に飽和蒸気)でもよい)及び冷却空気を供給可能にされている。
【0044】
第1ケース52A内には、ブロック状のセット台58が設けられており、セット台58の上面には、上面において円柱状のセットピン58Aが一体に立設されている。
【0045】
セット台58は、移動機構60に連結されており、移動機構60には、移動軸60A及び移動装置60Bが設けられている。移動機構60が駆動されることで、移動装置60Bが移動軸60Aを上下方向(軸方向)へ移動させて、セット台58が移動軸60Aと一体に上下方向へ移動される。これにより、セット台58が上側へ移動されて第1ケース52Aから上側に突出されると共に、セット台58が下側へ移動されて第1ケース52A内に収容される。
【0046】
ケース52内が開放されると共に、セット台58が第1ケース52Aから上側に突出された際には、ステアリングホイール12が表側を下側に向けられた状態で、ステアリングホイール12(ボス部14)の組付筒14A内にセット台58のセットピン58Aが嵌入されて、ステアリングホイール12のボス部14がセット台58に載置されることで、ステアリングホイール12がセット台58にセットされる。
【0047】
セット台58にセットされるステアリングホイール12では、リム部18の加飾部材10に、基材20及びベース層22は設けられているが、ベース層22の凹凸柄22A及び被覆層24は設けられていない。また、リム部18には、加飾部材10の長手方向両外側の全周において、境界溝18A(図3参照)が形成されており、境界溝18Aは、加飾部材10に隣接されている。
【0048】
セット台58には、第1コネクタ62が固定されており、第1コネクタ62は、セット台58内及び移動軸60A内を介して、減圧機構64に連通されている。減圧機構64には、開閉弁66、真空タンク68及び真空ポンプ70が設けられており、第1コネクタ62、開閉弁66、真空タンク68及び真空ポンプ70がこの順で連通されている。減圧機構64が駆動されることで、開閉弁66が開放されると共に、真空ポンプ70が真空タンク68内の空気を強制的に排出して真空タンク68内の圧力が一定に維持される。
【0049】
図3及び図4に示す如く、セット台58にセットされる前のステアリングホイール12の裏側には、上側から排気ユニット72が装着される。排気ユニット72には、着脱台74が設けられており、着脱台74には、円状の着脱孔74Aが貫通形成されている。ステアリングホイール12(ボス部14)の組付筒14Aが着脱孔74Aに嵌入されて、着脱台74がステアリングホイール12のボス部14に載置されることで、排気ユニット72がステアリングホイール12に装着される。着脱台74には、所定数(本実施の形態では4つ)の脚部74Bが一体に設けられており、脚部74B間にステアリングホイール12のスポーク部16が配置されることで、着脱台74のステアリングホイール12に対する回転が規制される。
【0050】
着脱台74の上面には、分配器76が固定されており、分配器76には、第2コネクタ78(図2参照)が設けられている。排気ユニット72が装着されたステアリングホイール12がセット台58にセットされることで、第2コネクタ78がセット台58の第1コネクタ62に連結される。
【0051】
分配器76には、4つの円管状の排気パイプ80が接続されており、各排気パイプ80は、第2コネクタ78に接続されている。排気パイプ80は、ステンレス、鉄、銅又は真鍮等の金属製にされており、排気パイプ80の外径は、1mm以上5mm以下(好ましくは2mm以上3mm以下)にされている。排気パイプ80は、変形されると変形形状を保持可能にされており、ステアリングホイール12に排気ユニット72が装着された際に、排気パイプ80の先端が、リム部18の各加飾部材10の長手方向両外側のそれぞれにリム部18の長手方向に沿って配置されると共に、排気パイプ80の先端縁の開口部80Aが、リム部18の各加飾部材10の長手方向両端のそれぞれの近傍(境界溝18A)に配置される。
【0052】
図4に示す如く、排気ユニット72が装着されたステアリングホイール12のリム部18には、凹凸フィルムとしてのフィルム状(シート状)の転写フィルム82が装着される。転写フィルム82は、長尺矩形状にされて、幅方向寸法がリム部18の断面周方向寸法に比し大きくされている。転写フィルム82は、引張られた状態でリム部18に長手方向外周側から被覆されて、長手方向がリム部18の長手方向に沿って曲げられると共に幅方向においてU字状に曲げられ、かつ、長手方向両端が互いに溶着されることで、リム部18に装着される。
【0053】
図1(C)に示す如く、転写フィルム82のベース層22側の面には、転写柄としての凹凸柄82Aが形成されており、凹凸柄82Aは、ベース層22に形成される凹凸柄22Aに対応している。
【0054】
転写フィルム82は、熱可塑性エラストマー又はゴム等のエラストマー等の可撓性を有するフィルムにされており、転写フィルム82は、後述の如く加熱されても溶融せず、かつ、破断時伸度が常温で130%以上にされると共に、回復率が10%以下にされている。すなわち、転写フィルム82は、局部的な延伸に対する耐屈曲性や耐引裂性に優れて延伸性(伸縮性)が高くされており、転写フィルム82は、例えば、日本マタイ株式会社製の「エスマーURS」にされている。また、転写フィルム82は、ベース層22に比し、硬度が高くされている。
【0055】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0056】
本実施の形態に係る加飾部材10の凹凸形成方法では、図1(B)に示す如く、ステアリングホイール12のリム部18における加飾部材10の基材20(図1(A)参照)の外周面全体に、ベース層22を形成(塗布)する。
【0057】
次に、ステアリングホイール12の裏側に、上側から排気ユニット72を装着する。
【0058】
この際には、ステアリングホイール12(ボス部14)の組付筒14Aを排気ユニット72の着脱台74の着脱孔74Aに嵌入することで、着脱台74をステアリングホイール12のボス部14に載置すると共に、着脱台74の脚部74B間にステアリングホイール12のスポーク部16を配置する。
【0059】
さらに、排気ユニット72の分配器76に接続された排気パイプ80の先端をリム部18の各加飾部材10の長手方向両外側のそれぞれにリム部18の長手方向に沿って配置すると共に、排気パイプ80の開口部80Aをリム部18の各加飾部材10の長手方向両端のそれぞれの近傍(リム部18の境界溝18A)に配置する。
【0060】
その後、ステアリングホイール12のリム部18に、転写フィルム82を装着する。これにより、転写フィルム82の長手方向がリム部18の長手方向に沿って曲げられると共に、転写フィルム82が幅方向においてU字状に曲げられ、かつ、転写フィルム82の長手方向両端が互いに溶着されて、図1(C)に示す如く、リム部18の加飾部材10のベース層22に転写フィルム82が張られた状態で被覆される。
【0061】
次に、開閉機構54を駆動させてケース52内を開放すると共に、移動機構60を駆動させてセット台58を第1ケース52Aから上側に突出させることで、ステアリングホイール12をセット台58にセットする。この際には、ステアリングホイール12(ボス部14)の組付筒14A内にセット台58のセットピン58Aを嵌入して、ステアリングホイール12のボス部14をセット台58に載置すると共に、分配器76の第2コネクタ78をセット台58の第1コネクタ62に連結する。
【0062】
さらに、減圧機構64を駆動させることで、開閉弁66が開放されると共に、真空ポンプ70が真空タンク68内の空気を強制的に排出して真空タンク68内の圧力が一定に維持される。このため、転写フィルム82の加飾部材10側の空気が、加飾部材10の長手方向両端近傍から排気パイプ80、分配器76、第2コネクタ78、第1コネクタ62、開閉弁66、真空タンク68及び真空ポンプ70を介して、強制的に排出される。これにより、転写フィルム82の加飾部材10側の気圧(圧力)が転写フィルム82の加飾部材10とは反対側の気圧(圧力)に比し低くされて、転写フィルム82が加飾部材10のベース層22の外周面に密着される。
【0063】
その後、移動機構60を駆動させてセット台58を第1ケース52A内に収容すると共に、開閉機構54を駆動させてケース52内を閉塞することでケース52内を気密空間にする。
【0064】
次に、加熱ランプ56及び供給装置を作動させることで、加熱ランプ56がケース52内に赤外線を放射すると共に、供給装置が開閉機構54を介してケース52内に加熱空気を供給する。このため、転写フィルム82及び加飾部材10のベース層22が加熱されて、転写フィルム82が延伸し易くなると共に、ベース層22の硬度が低下される。これにより、図2に示す如く、転写フィルム82が適宜延伸されつつ加飾部材10のベース層22の外周面全体(全周)に密着(圧着)されることで、図1(D)に示す如く、転写フィルム82の凹凸柄82Aがベース層22の外周面全体に圧着転写されて(痕を付けられて)、ベース層22の外周面全体に凹凸柄22Aが形成される。
【0065】
その後、加熱ランプ56及び供給装置の作動を停止させることで、転写フィルム82及び加飾部材10のベース層22の加熱が停止される。そして、供給装置を所定時間作動させて、供給装置が開閉機構54を介してケース52内に冷却空気を供給することで、転写フィルム82及び加飾部材10のベース層22が冷却される。
【0066】
さらに、減圧機構64の駆動を停止させることで、転写フィルム82の加飾部材10側の気圧が転写フィルム82の加飾部材10とは反対側の気圧と等しくされて、図1(E)に示す如く、加飾部材10がベース層22の外周面に密着されなくなる。
【0067】
そして、開閉機構54を駆動させてケース52内を開放すると共に、移動機構60を駆動させてセット台58を第1ケース52Aから上側に突出させることで、セット台58からステアリングホイール12を取外すと共に、ステアリングホイール12から転写フィルム82及び排気ユニット72を取外す。最後に、図1(F)に示す如く、ベース層22の外周面全体に被覆層24を形成(塗装)する。
【0068】
ここで、上述の如く、凹凸柄82Aが形成された転写フィルム82を加飾部材10のベース層22の外周面に圧着して、ベース層22の外周面に凹凸柄22Aを形成する。
【0069】
このため、転写フィルム82をベース層22の外周面に圧着する際及び転写フィルム82をベース層22の外周面から取外す際には、転写フィルム82が撓むことで、転写フィルム82の部位毎に凹凸柄82Aのベース層22外周面に対する移動方向を異ならせることができる。このため、本実施の形態の如くベース層22の外周面が断面略円状にされて湾曲されている場合のみならず、ベース層22の外周面が複雑な3次元形状にされている場合でも、ベース層22の外周面に形成できる凹凸柄22Aの凹凸形状が制限されることを抑制でき、ベース層22の外周面全体に凹凸柄22Aを高精度に形成できる。
【0070】
また、減圧機構64の駆動によって転写フィルム82の加飾部材10側の気圧が転写フィルム82の加飾部材10とは反対側の気圧に比し低くされて、転写フィルム82の凹凸柄82Aがベース層22の外周面に圧着される。このため、転写フィルム82の凹凸柄82Aをベース層22の外周面に効果的に圧着でき、ベース層22の外周面に凹凸柄22Aを良好に形成できる。
【0071】
さらに、転写フィルム82の凹凸柄82Aをベース層22の外周面に圧着する際に、加熱ランプ56からの赤外線及び供給装置からの加熱空気によって、転写フィルム82及び加飾部材10のベース層22が加熱される。このため、転写フィルム82が延伸し易くなると共に、ベース層22の硬度を低下させることができ、ベース層22の外周面に凹凸柄22Aを適切かつ良好に形成できる。
【0072】
また、加飾部材10において、ベース層22が、接着性を有して、基材20の外周面に接着されている。このため、ベース層22を基材20の外周面に接着する接着層を不要にでき、構成を簡単にできると共に、コストを低減できる。
【0073】
さらに、ベース層22の外周面の凹凸柄22Aが連結された位置22B(図2に示す加飾部材10の外周面周方向における転写フィルム82同士の連結位置)において、ベース層22が連続されている。このため、ベース層22の外周面の凹凸柄22Aが連結された位置22Bにおいて、ベース層22同士の境界線がなく、見栄えを良くできる。しかも、転写フィルム82は加飾部材10の外周面から取外されるため、図2に示す如く転写フィルム82同士を連結させて加飾部材10の外周面全体(全周)に転写フィルム82を圧着させた際に、転写フィルム82同士の連結位置の不要部分をカットする(トリミングする)必要がなく、製造工数を少なくできてコストを一層低減できる。
【0074】
また、ベース層22の外周面全体に被覆層24が形成されている。このため、ベース層22外周面の凹凸柄22Aの磨耗を防止でき、凹凸柄22Aを保護できる。
【0075】
さらに、ベース層22及び被覆層24は、無色透明又は有色透明にされており、基材20とベース層22と被覆層24とは、それぞれ輝度が互いに異なっている。このため、被覆層24を介してベース層22外周面の凹凸柄22Aを良好に視認できると共に、被覆層24及びベース層22を介して基材20外周面の基材柄を良好に視認できる。
【0076】
なお、本実施の形態では、ステアリングホイール12の各加飾部材10に一体の転写フィルム82を圧着させたが、ステアリングホイール12の各加飾部材10に別々の転写フィルム82を圧着させてもよい。
【0077】
また、本実施の形態では、基材20とベース層22と被覆層24との輝度を互いに異ならせたが、基材20、ベース層22及び被覆層24のうちの2つの輝度を互いに異ならせてもよい。
【0078】
さらに、本実施の形態では、ベース層22を無色透明又は有色透明にしたが、ベース層22を不透明にしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、ベース層22の外周面に被覆層24を形成したが、ベース層22の外周面に被覆層24を形成しなくてもよい。
【0080】
さらに、本実施の形態では、本発明をステアリングホイール12における加飾部材10に適用したが、本発明を他の加飾部材10に適用してもよい。例えば、図6に示す如く、本発明を車両のシフトレバー90のノブ90A(先端部分)における加飾部材10に適用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 加飾部材(凹凸形成材)
20 基材
22 ベース層(表側層)
22A 凹凸柄
24 被覆層(透明層)
50 凹凸形成装置
82 転写フィルム(凹凸フィルム)
82A 凹凸柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表側に設けられ表面に凹凸柄が形成された表側層と、を備えた凹凸形成材の凹凸形成方法であって、
凹凸柄が形成された凹凸フィルムを前記表側層の表面に圧着して前記表側層の表面に凹凸柄を形成する凹凸形成材の凹凸形成方法。
【請求項2】
前記表側層の裏側の圧力を前記表側層の表側の圧力に比し低くして前記凹凸フィルムを前記表側層の表面に圧着する請求項1記載の凹凸形成材の凹凸形成方法。
【請求項3】
前記凹凸フィルムを前記表側層の表面に圧着する際に前記表側層を加熱する請求項1又は請求項2記載の凹凸形成材の凹凸形成方法。
【請求項4】
基材と、
接着性を有して前記基材の表側に接着され、表面に凹凸柄が形成された表側層と、
を備えた凹凸形成材。
【請求項5】
基材と、
前記基材の表側に設けられ、表面に凹凸柄が形成された表側層と、
を備え、凹凸柄が連結された位置において前記表側層が連続された凹凸形成材。
【請求項6】
前記表側層の表面に設けられた透明層を備えた請求項4又は請求項5記載の凹凸形成材。
【請求項7】
前記基材、前記表側層及び前記透明層の少なくとも2つの輝度を異ならせた請求項6記載の凹凸形成材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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