説明

凹凸補正外用組成物

【課題】厚塗りを行っても、皮膚に密着してたれ落ちせず、皮膚の凹凸の補正能力に優れた凹凸補正外用組成物を提供すること。
【解決手段】下記の成分(1)〜(4)を含有する凹凸補正外用組成物を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
(1)ポリビニルアルコール
(2)液状多価アルコール、あるいは、当該液状多価アルコール及びこれに可溶の多糖類
(3)粒径0.1〜100μmのシリコーンゴム球状微粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆してなる、ゴム硬度がJISの規格(A形試験)において10〜80の範囲の複合ポリマー粉末
(4)水、又は、エタノール水溶液

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚において用いられる外用組成物に関する発明であり、より具体的には、皮膚上の様々な原因により形成された凹凸等を覆って平滑化し、視覚的に、あたかもその凹凸が存在しないように補正し得る、凹凸補正外用組成物に関する発明である。当該皮膚外用組成物は、例えば、メーキャップ化粧料として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
メーキャップ化粧料の役割として最も大きな役割の一つに、外観を美しく見せる「美的役割」がある。具体的に、この「美的役割」は、例えば、皮膚の小さな毛穴による凹凸を平滑化したり、皮膚の色を補正したりすることにより果たされる場合が少なくない。
【0003】
しかしながら、既存のメーキャップ化粧料を用いても、十分な補正をすることが困難なほどの、皮膚上の凹凸等が少なからず存在することも事実である。例えば、(1)ニキビ等により「クレーター状」ともいえる程、は皮膚上の凹凸が顕著になった場合、(2)熱傷によるケロイド跡や植皮跡、(3)手術跡、(4)深いしわ、(5)深い傷跡、(6)大きな毛穴や小じわ等は、既存のメーキャップ化粧料のみでは、十分な補正することは困難である。
【0004】
例えば、上記(1)〜(6)のうち、皮膚凹凸の程度が正常に近いと考えられる、(6)の大きな毛穴や小じわも、これを、既存のメーキャップ化粧料で無理に補正しようとすると、不自然な仕上がりになってしまう傾向が強い。
【0005】
そこで、特に上記のような従来のメーキャップ化粧料では補正が困難な凹凸等を含めて、皮膚上の大小の凹凸等を平滑化し、これらの凹凸等を視覚的にも目立たなくすることを主要な目的とする、凹凸補正用組成物が提供されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、吸水性ポリマーを含有し、塗布後に吸水性ポリマーを膨潤させることを特徴とする凹凸部隠し用化粧料が開示されている。しかしながら、この化粧料は、塗布後、膨潤剤用化粧料(水を含む)を塗布するため手間がかかるという問題があり、厚い化粧膜の形成に関しては開示されていない。
【0007】
さらに、シリコーン化プルランと、エラストマー粉末とから構成される凹凸補正用組成物が提供されている(特許文献2)。しかしながら、この凹凸補正用組成物は、厚みを出すための構成成分として粉末とシリコーン化プルラン(皮膜剤)を主に配合しており、ワックスの配合量が少ないため、厚みを伴う化粧膜を実現することは困難である。
【0008】
また、高粘度シリコーンオイルと、シリカ、シリコーン樹脂、シリコーンゴム粉末から構成される凹凸補正用組成物が提供されている(特許文献3,4)。
【0009】
しかしながら、これらの凹凸補正用組成物は、こすれやよれに対して化粧膜自身が弱いという欠点がある。また、高粘度シリコーン油は他の成分との相溶性が低く、原料選択の幅が狭い、超微粒子の無水ケイ酸を配合することを必須としており、きしみ等を伴う傾向が認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4004945号公報
【特許文献2】特開2000−16919号公報
【特許文献3】特開平11−60445号公報
【特許文献4】特開2003−55134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
凹凸補正用組成物は、特に、皮膚上の大きな凹凸を補正する場合には、厚く塗布しても、脱落等せずに皮膚に密着し、重力によってたれ落ちないと同時に、皮膚から容易に除去し得ることが、特に求められる。また透明性が高く、視覚的に皮膚上の凹部分と凸部分とがあたかも存在しないように補正し得ることが好ましい。
【0012】
本発明は、厚塗りを行っても、皮膚に密着してたれ落ちせず、皮膚の凹凸の補正能力に優れた凹凸補正外用組成物を提供することを課題とする発明である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題の解決に向けて、新たな凹凸補正用組成物についての検討を行い、その結果、下記の成分(1)〜(4)を含有する、凹凸補正外用組成物(本発明の組成物ともいう)を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
(1)ポリビニルアルコール
(2)液状多価アルコール、あるいは、当該液状多価アルコール及びこれに可溶の多糖類
(3)粒径0.1〜100μmのシリコーンゴム球状微粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆してなる、ゴム硬度がJISの規格(A形試験)において10〜80の範囲の複合ポリマー粉末(以下、シリコーン弾性球状粉末ともいう)
(4)水、又は、エタノール水溶液
【0014】
本発明の組成物である「凹凸補正外用組成物」とは、正確には、上述した皮膚上の凹凸を補正する「凹凸補正用途」の「皮膚外用組成物」、としての意義を有するものである。
【0015】
本発明の組成物は、厚さ0.5mm程度の厚塗りを行っても、皮膚に密着してたれ落ちせず、かつ、皮膚の凹凸の補正能力に優れる、という凹凸補正外用組成物としては、非常に好ましい特性を有することが確認される。
【0016】
本発明の組成物には、上記(1)〜(4)に加えて、ポリ酢酸ビニルエマルションとアクリル酸エステル共重合体水溶液を、一緒に、又は、別個に配合することにより、皮膚への組成物の付着性を良好にすることが可能である。また、水膨潤性粘土鉱物を配合することにより、基剤の透明性を損なわずに効率的に増粘を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明の組成物の製品形態は、メーキャップ化粧料とすることが典型的な形態の一つである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、厚塗りが真に可能であり、かつ、凹凸補正効果や使用性にも優れる、凹凸補正用の皮膚外用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.本発明の組成物における配合成分
必須の配合成分
(1)ポリビニルアルコール
ポリビニルアルコール(PVA)は、公知の方法、すなわち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化して得ることができる。
【0020】
本発明の組成物において配合されるポリビニルアルコールは、特に限定されないが、好適には、鹸化度は78%以上、特に好適には85%以上である。鹸化度の上限は、限定されず、100%まで許容されるが、概ね90%以下であることが、組成物の柔軟性を考慮すると、特に好適である。また、重合度は、組成物の強度を考慮すると、1000以上が好ましく、特に好適には1500以上である。重合度の上限は、現在提供されている市販品の上限である4000程度が目安となる。
【0021】
市販品としては、ゴーセノールシリーズ(EG−40、NH−26、NH−20、NH−18、NH−14,NH−11、AH−22、AH−17、GH−23、GH−20、GH−17、GM−14:日本合成化学工業社製)等が挙げられ、上記性質に合致した、クラレ社製のクラレポバールシリーズ、電気化学工業社製の電化ポバールシリーズ、信越化学工業社製の信越ポバールシリーズ、ユニチカ社製のユニチカポバールシリーズ等が挙げられる。
【0022】
本発明の組成物におけるPVAの配合量は、好適には組成物の1〜10質量%、特に好適には2〜5質量%である。この配合量が組成物の1質量%未満であると、本発明において想定される十分な膜と粘度が得られず、10質量%を超えると粘度が高すぎて、使用感に不都合を生ずることになる。
【0023】
(2)液状多価アルコール、あるいは、当該液状多価アルコール及びこれに可溶の多糖類
この項目の配合により、本発明の組成物において、塗布・乾燥後の皮膜に弾力性が付与され、ひび割れ等の崩壊を抑制することが可能となる。
【0024】
本発明の組成物において配合され得る液状多価アルコールとしては、化粧料等の外用組成物に用いられている当該多価アルコール、例えば、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、特に好適にはジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールである。また、当該液状多価アルコールに可溶の多糖類としては、例えば、キシリトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられ、特に好適にはエリスリトールである。
【0025】
上記多糖類を配合せずに液状多価アルコールを、本発明の組成物に配合する場合の、当該多価アルコールの配合量は、組成物の1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは5〜15質量%である。この液状多価アルコール単独の配合量が組成物の1質量%未満であるとPVA膜の可塑性が不十分であり、また、多糖類を共存配合する場合これが析出する傾向が認められる。また、20質量%を超えると、可塑性が過度になり使用上の問題を生ずる。また、上記多糖類と液状多価アルコールを併せて配合する場合は、当該多価アルコールと多糖類を併せて、好適には組成物の1〜7質量%、特に好適には2〜5質量%である。この配合量が組成物の1質量%未満であると組成物の可塑性が不十分であり、7質量%を超えると過剰の多価アルコールがその溶解に必要になるばかりか、組成物の可塑性が過度になる。さらに、当該多価アルコールと多糖類の間の配合質量比は、多価アルコール:多糖類=10:1〜2:1が好適である。当該配合質量比が2:1よりも多糖類の比率が多いと、組成物の塗布乾燥後に水分が気散してしまうと、皮膜が真白になり、かつ、可塑化能が失われて皮膜が脆くなる傾向が強くなる。
【0026】
(3)シリコーン弾性球状粉末
本発明の組成物に配合されるシリコーン弾性球状粉末は、粒径0.1〜100μmのシリコーンゴム球状微粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆してなる、JIS−A硬度が10〜80の範囲の複合ポリマー粉末である。
【0027】
このシリコーン弾性球状粉末は、例えば、(a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含む、油系の水中油型乳化物に触媒を加えて硬化反応させ、球状シリコーンゴム硬化物微粒子分散液とした後、その水分散液にアルカリ性物質又はアルカリ性水溶液と、オルガノトリアルコキシシランを添加し、オルガノトリアルコキシシランを加水分解、縮合硬化反応させた後、乾燥させて得られる、球状シリコーンゴム硬化物微粒子に、ポリオルガノシルセスキオキサン硬化物を被覆した複合粉体である。この複合粉体の製造方法の詳細は、特開平7−196815号公報に記載されている。
【0028】
本発明の組成物の使用感や使用性を考慮すると、上記のごとく、シリコーン弾性球状粉末の粒径は、0.1〜100μmであることが好適である。また、シリコーン弾性球状粉末のJIS−A硬度は、10〜80の範囲であることが好適である。シリコーン弾性球状粉末のJIS−A硬度が80を超えると、組成物のなめらかさが失われる傾向が顕著になり、10未満であると、組成物においてべたつきを生じ、凹凸補正効果も低下する傾向が顕著となる。
【0029】
このようなシリコーン弾性球状粉末は、上述した製法を行うことにより製造して用いることが可能であり、また、市販品を用いることも可能である。市販品としては、例えば、KSP−100、KSP−101、KSP−102、KSP−103、KSP−104、KSP−105(以上、信越化学工業社製)等が知られている。
【0030】
シリコーン弾性球状粉末の本発明の組成物における配合量は、組成物の10〜45質量%が好適であり、20〜40質量%が特に好適である。シリコーン弾性球状粉末の配合量が、組成物の10質量%未満であると適切な厚さに塗布することが難しくなり、45質量%を超えると、乾燥後の塗布膜がはがれやすくなる。
【0031】
(4)水、又は、エタノール水溶液
本発明の組成物には、溶媒として、水、又は、エタノール水溶液の配合が必要である。水の配合量は、本発明の組成物の具体的な剤形等により異なるが、水換算で組成物の5〜50質量%程度である。水は、水道水であっても、蒸留水であっても、イオン交換水であっても、精製水であってもよい。溶媒が、エタノール水溶液の場合の配合量は、エタノール換算で組成物の0.1〜20質量%程度である。
【0032】
選択的配合成分
(1)ポリ酢酸ビニルエマルションとアクリル酸エステル共重合体水溶液
本発明の組成物にこれらの粘着性高分子を配合することにより、本発明の組成物の肌上における付着性をいっそう向上させることができる。
【0033】
ポリ酢酸ビニルエマルションは、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルが、エマルションとして溶媒分散してなるものである。その製造は、公知の方法を用いて行うことができるが、市販品を用いることも可能である。市販品のポリ酢酸ビニルエマルションは、概ね、固形分含有率が35〜55%であり、ポリ酢酸ビニル粒子の粒径は0.1〜3μmである。市販品としては、例えば、ボンコートシリーズ(大日本インキ化学)やエスダインシリーズ(積水化学)を挙げることができる。
【0034】
ポリビニルエマルションの本発明の組成物における配合量は、固形分の質量として、組成物の0.1〜20質量%が好適であり、特に好適には2〜15質量%である。この配合量が組成物の0.1質量%未満であると、組成物の肌への付着性の向上を顕在させることが困難となり、20質量%を超えて配合すると安全性の懸念や、塗布後に肌上でのツッパリ感が過度に感じられる傾向が認められる。
【0035】
アクリル酸エステル共重合体溶液は、アクリル酸エステル共重合体が適切な溶媒に溶解、もしくは分散したものである。アクリル酸エステル共重合体は、公知の方法により製造することができるが、アクリル酸エステル共重合体溶液として提供される市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、プラスサイズL−64S(固形物含有率は、50%エタノール溶液:互応化学工業社製)等を挙げることができる。
【0036】
アクリル酸エステル共重合体水溶液の本発明の組成物における配合量は、固形分の質量として、組成物の0.1〜20質量%が好適であり、特に好適には2〜15質量%である。この配合量が組成物の0.1質量%未満であると、組成物の肌への付着性の向上を顕在させることが困難となり、20質量%を超えて配合すると安全性の懸念や、塗布後に肌上でのツッパリ感が過度に感じられる傾向が認められる。
【0037】
ポリビニルエマルションとアクリル酸エステル共重合体水溶液は、それぞれを単独で、又は、双方を組み合わせて、本発明の組成物に配合することが可能である。双方を組み合わせて配合する場合の配合量は、固形分の質量として、組成物の0.1〜20質量%が好適であり、特に好適には2〜15質量%である。
【0038】
(2)水膨潤性粘土鉱物
本発明の組成物に、水膨潤性粘土鉱物を配合することにより、基剤の透明性を損なわずに効率的に増粘を行うことが可能となる。
【0039】
水膨潤性粘土鉱物の例としては、スメクタイト属の層状ケイ酸塩鉱物が挙げられ、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等であり、これらは天然または合成品のいずれであっても良い。市販品では、クニピア、スメクトン(クニミネ工業)、ビーガム(バンダービルト社)、ラポナイト(Rockwood Additives社)、フッ素四珪素雲母などが挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのスメクタイト属の層状ケイ酸塩の内から、1種または2種以上が任意に選択できる。これらの中で、増粘効果に優れるラポナイトが最も好ましい。また、基剤を調整する際にはあらかじめ当該水膨潤性粘土鉱物を水中に分散させ、十分に、はく離・増粘したゲルを利用することが、組成物の製造を簡便化し、かつ、十分な増粘効果を達成するのに有利である。
【0040】
任意の配合成分
また、本発明の組成物には、上記の配合成分に加えて、必要に応じて、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、香料、酸化防止剤、キレート剤、色素、顔料、防腐剤、油分(シリコーン油分を含む)等の、外用組成物に一般的に用いられる成分を、本発明の所期の効果を妨げない範囲で配合することができる。例えば、顔料を、本発明の組成物に配合することにより、組成物に積極的な着色を行って、所望する肌上の凹凸補正を、より多彩に行うことができる。
【0041】
本発明の組成物の剤形は、油分散型、クリーム等の乳化型、油性固形型等が挙げられ、いずれの剤型であっても、所望する肌上の凹凸補正効果を発揮することができる。
【0042】
本発明の組成物は、上述したように、その特徴的な作用である凹凸補正効果に着目した凹凸補正外用組成物である。
【0043】
また、本発明の組成物は、上述したような、優れた凹凸補正効果等の特徴を、メーキャップ化粧料(凹凸補正用メーキャップ化粧料)として用いることも好適な態様である。メーキャップ化粧料の製品形態としては、上記の剤型(油分散型、クリーム等の乳化型、油性固形型等)の、ファンデーション、化粧下地等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の範囲はこれにより、なんら限定されるものではない。なお、実施例等において、表中等に記載されている配合量は特に断らない限り、その配合成分の配合対象全体に対する質量%を意味する。
【0045】
実施例等の具体的な開示に先立ち、本発明の効果を検証するために行われた試験の内容を説明する。
【0046】
[試験方法]
(1)凹凸補正効果の検証試験
火傷跡、傷跡、大きな毛穴、深いしわのいずれかを有する女性パネル10名について、0.5mm程度の深さの凹凸を選択し、洗顔後の顔面部に基剤を塗布して、これをきれいに補正できるか否かについて、下記の基準に基づき、視感による判定を行った。
【0047】
○:補正されていると回答したパネルが9名以上
△:補正されていると回答したパネルが6〜8名
×:補正されていると回答したパネルが5名以下
【0048】
(2)肌への付着性の検証
女性パネル10名について、乾燥後の塗布膜の厚さが、約0.5mmとなるように、顔面の頬の部分と、ほうれい線(小鼻の両脇から唇の両側に伸びる2本の線)部分、の3×4cmの決められた範囲2カ所に、被験基剤約0.5gを均一に塗布し、経時1時間後に、塗布膜のうち、剥がれた部分の面積の全体に対する割合の評価を、下記の基準で評価を行った。
【0049】
○:剥がれている部分の面積の割合が、全体の10%以下
△:剥がれている部分の面積の割合が、全体の10〜20%
×:剥がれている部分の面積の割合が、全体の20%以上
【0050】
(3)粉末状ファンデーション(FD)の付着性の検証
女性パネル10名について、乾燥後の塗布膜の厚さが、約0.5mmとなるように、顔面の頬の部分と、ほうれい線部分、における3×4cmの決められた範囲2カ所に、被験基剤約0.5gを均一に塗布し、その10分後に、下記表1に記載の処方の粉末状ファンデーションを、さらに下記の製造で調製し、これを化粧用パフにて塗布し、その付着性を、下記の○〜×で表される基準で評価した。
【0051】
○:FDが十分付着していると回答したパネルが9名以上
△:FDが十分付着していると回答したパネルが6〜8名
×:FDが十分付着していると回答したパネルが5名以下
【0052】
【表1】

【0053】
<製造方法>
表1の処方中の粉末部に、80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行い、ファンデーションを製造した。
【0054】
(4)塗布膜の透明性、及び、仕上がりの自然さについての検証
女性パネル10名について、洗顔後、顔面部に、基剤を約0.5mmとなるように塗布し、15分後に塗布膜の透明性と仕上がりの自然さを、下記の基準で視感にて判定を行った。
【0055】
○:半透明な塗布膜で自然であると回答したパネルが9名以上
△:半透明な塗布膜で自然であると回答したパネルが6〜8名
×:半透明な塗布膜で自然であると回答したパネルが5名以下
【0056】
(5)硬度に関する検証
30℃において、被験基剤に対し、測定器M−301AR型カードメーター(飯尾電気製)を使用し、8mmφの侵入針に200gの加重を与えて測定したときの値を硬度として検証した。
【0057】
(6)離しょうについての検証
基剤を1ヶ月室温で保存して、液状成分が基剤の表面に浮いてくるか否かを検証した。
【0058】
[試験例]
(1)本発明の組成物における粘着性高分子の配合の影響(実施例1〜4:表2)
製造方法:粉末部を除く原料を加熱して、ディスパーミキサーにより混合後、これを均一にし、その後、粉末部を徐々に添加しながら、ディスパーミキサーにて混合して、各基剤を得た。
【0059】
なお、ポリビニルアルコールは、ゴーセノール EG−40(日本合成化学工業社製:鹸化度は86.5〜89.4%、水溶液粘度は40〜46cP、重合度は2100:後述する実施例27で用いたポリビニルアルコールと同じもの)を用いた。特に、断らない限り、本実施例では、全てこのポリビニルアルコールを用いた。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果より、粘着性高分子の配合が抜去されている実施例1は、凹凸補正効果には優れていたものの、肌への付着性と粉末状ファンデーションの付着性については問題が認められた。実施例2では、粘着性高分子として、ポリ酢酸ビニルエマルションのみを配合したが、同じく凹凸補正効果には優れていたものの、肌への付着性に関しては若干の弱みが認められ、粉末状ファンデーションの付着性に関しては問題が認められた。実施例3は、粘着性高分子として、アクリル酸エステル共重合体水溶液のみを配合した。この例では、凹凸補正効果、肌への付着性、及び、粉末ファンデーションの付着性は、いずれも良好であると認められた。実施例4では、粘着性高分子として、ポリ酢酸ビニルエマルションとアクリル酸エステル共重合体水溶液の両者を組み合わせて配合した。この例では、いずれの試験項目においても、最良の結果が得られた。
【0062】
(2)用いる粉体の種類の検討(実施例5、比較例1〜10)
製造方法:表2に示した製造方法と、実質的に同一の製造工程を行った。
【0063】
【表3】

【0064】
表3の結果より、シリコーン弾性球状粉末を用いることにより、他の粉末では得ることができない、塗布膜の透明性と仕上がりの自然さが認められることが明らかになった。
【0065】
(3)水膨潤性粘土鉱物の配合の検討(実施例6〜12)
製造方法:表2に示した製造方法と、実質的に同一の製造工程を行った。モンモリロナイトは、クニピアG(クニミネ工業社製)を、合成スメクタイトは、スメクトンSA(クニミネ工業社製)を、合成ヘクトライトは、ラポナイトLG(Rockwood Additives社製)を用いた。これらの水膨潤性粘土鉱物は、事前に10%水分散物を作成し、配合した。
【0066】
【表4】

【0067】
表4の結果より、シリコーン弾性球状粉末を45質量%配合した例(実施例6)は、水膨潤性粘土鉱物を配合しなくても、凹凸補正効果と離しょう試験の結果は、共に良好であったが、当該球状粉末を30質量%配合した例(実施例12)は、これらの結果が劣っていることが確認された。しかしながら、これに水膨潤性粘土鉱物を配合することにより、シリコーン弾性球状粉末の配合量が少なくても、シリコーン弾性球状粉末を大量配合したのと同等の凹凸補正効果と離床試験の結果を得ることができた(実施例7〜11)。すなわち、水膨潤性粘土鉱物の配合による、シリコーン弾性球状粉末の配合減量効果が認められた。特に、合成ヘクトライトの当該減量効果は著しいものがあった。
【0068】
(4)液状多価アルコールと多糖類の配合の影響の検討(実施例13〜21)
製造方法:表2に示した製造方法と、実質的に同一の製造工程を行った。
【0069】
【表5】

【0070】
表5の結果より、液状多価アルコールの単独配合(実施例13〜15)と、液状多価アルコールと多糖類(粉末状)の組合せ配合(実施例19〜21)においては、塗布膜の透明性と仕上がりの自然さが、共に良好であったのに対し、多糖類の単独配合(実施例16〜18)においては、その結果が劣っていた。すなわち、粉末状の多糖類のみを、液状多価アルコールと組み合わせずに用いると、基剤の塗布乾燥後に水分が気散すると、皮膜が白くなり、かつ、脆くなることが確認された。
【0071】
(5)ポリビニルアルコール種による検討(実施例22〜30)
次に、配合するポリビニルアルコールの種により、本発明の組成物がどのような影響を受けるかを検討し、本発明の組成物のさらなるグレードについての考察を行った。具体的には、組成物の塗布膜の強度と柔軟性についての検証を行った。
【0072】
すなわち、女性パネル10名について、洗顔後、顔面部に、基剤を約0.5mmとなるように塗布し、15分後に塗布膜の強度と柔軟性を、下記の基準で視感にて判定を行った。結果を、表6に示す。
【0073】
<判定基準>
○:塗布膜が十分な強度、柔軟性を有すると回答したパネルが9名以上
△:塗布膜が十分な強度、柔軟性を有すると回答したパネルが6〜8名
×:塗布膜が十分な強度、柔軟性を有すると回答したパネルが5名以下
【0074】
【表6】

【0075】
表6の結果より、塗布膜の主要成分であるポリビニルアルコールの鹸化度と重合度を変えて塗布膜を調整した結果、実施例22,25,30の結果より、重合度が低いポリビニルアルコールでは膜の強度が低く、塗布膜を経時で維持できないことが分かった。また、実施例30,31より、鹸化度が高くなるにつれ塗布膜の柔軟性が低下し、硬くなる傾向になることが認められたが、凹凸補正用途としては許容出来る範囲であった。肌に塗布した際に、肌の動きに容易に追随できるより好ましい膜の柔軟性を示す鹸化度は78〜90%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)〜(4)を含有する、凹凸補正外用組成物。
(1)ポリビニルアルコール
(2)液状多価アルコール、あるいは、当該液状多価アルコール及びこれに可溶の多糖類
(3)粒径0.1〜100μmのシリコーンゴム球状微粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆してなる、ゴム硬度がJISの規格(A形試験)において10〜80の範囲の複合ポリマー粉末
(4)水、又は、エタノール水溶液
【請求項2】
ポリビニルアルコールの鹸化度は78%以上であり、重合度は1000以上である、請求項1に記載の凹凸補正外用組成物。
【請求項3】
ポリ酢酸ビニルエマルション、及び/又は、アクリル酸エステル共重合体溶液を含有する、請求項1又は2に記載の凹凸補正外用組成物。
【請求項4】
水膨潤性粘土鉱物を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の凹凸補正外用組成物。
【請求項5】
製品形態は、メーキャップ化粧料である、請求項1〜4のいずれかに記載の凹凸補正外用組成物。

【公開番号】特開2011−213678(P2011−213678A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84549(P2010−84549)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】