説明

出力向上のための正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池

【課題】本明は、向上した出力特性を有するリチウム二次電池に関する。
【解決手段】本発明は、混合されたリチウム転移金属酸化物間の作動電圧の差によって発生する急激な電圧降下現象を改善することにより、全SOC区間にわたって急激に電圧が降下することなく、均一なプロファイルを示し、低電での出力特性を向上させた高容量の混合正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。特に、本明に係るリチウム二次電池は、電気自動車などの中大型デバイスの電源として用いる場合、要求される出力特性、容量、及び安全性などの条件を十分に満足させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用可能なSOC領域が拡大し低電圧での出力特性が向上した混合正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれエネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池の中でも高いエネルギー密度と電圧を有しサイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が実用化されて広く用いられている。また、環境問題に対する関心が大きくなるにつれ大気汚染の主な原因中の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使う車両を代替できる電気自動車、ハイブリッド電気車などに対する研究が活発に進められている。近年、このような電気自動車、ハイブリッド電気車などの動力源として高いエネルギー密度と放電電圧を有するリチウム二次電池の使用に対する研究が活発に進められており、一部は実用化段階にある。
【0003】
特に、電気自動車用大容量リチウム二次電池の正極素材の開発は、現在使われているLiCoOを代替するために様々な研究が進められている。
【0004】
既存の代表的正極物質であるLiCoOの場合、エネルギー密度の増加と出力特性の実用限界に到達しており、特に、高エネルギー密度の応用分野に用いられる場合、その構造的不安定性によって高温充電状態で構造の変性と共に、構造内の酸素を放出して電池内の電解質と発熱反応を起こして電池爆発の主原因となる。このようなLiCoOの不安定性を改善するために、層状結晶構造のLiMnO、スピネル結晶構造のLiMn等のリチウム含有マンガン酸化物とリチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)の使用が提案されてきており、近年、LiNiMnCol-x-yの三成分系層状酸化物の使用に対する研究が活発に進められてきた。
【0005】
上記三成分系層状酸化物中最も代表的なLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]Oは、充電時にNi2+から充電深度によりNi3+やNi4+に変わる。しかしながら、安定したNi2+とは異なりNi3+やNi4+(特に、Ni4+)は不安定性により格子酸素を失ってNi2+に還元され、この格子酸素は電解液と反応して電極の表面性質を変えたり、表面の電荷移動(charge transfer)のインピーダンスを増加させて容量減少や高率特性などを低下させる。
【0006】
このような三成分系層状酸化物の問題点を改善するために、オリビン(olivine)構造の金属酸化物を上記三成分系正極活物質に混合する研究が進められてきたが、上記オリビン構造の金属酸化物は、低い電気伝導度による低い可逆容量および低い出力特性の問題があり、低コストおよび高安全性の利点にもかかわらず、体積エネルギー密度が低い問題があり、特に、上記三成分系の層状酸化物とオリビン構造の金属酸化物とを混合する場合、作動電圧の差によって放電の途中3.6〜3.4V付近で急激な電圧降下を誘発するため、この部分のSOC(State Of Charge;一定の充電状態)領域で出力が急激に低下する問題がある。
【0007】
特許文献1には、リチウム含有オリビン型燐酸塩を含む第1のリチウム化合物にリチウム含有コバルト酸化物又はリチウム含有ニッケルコバルト酸化物などの第2のリチウム化合物を混合して正極活物質として用いた非水電解質二次電池について開示されているが、上記発明によるリチウム二次電池も混合した二物質の作動電圧の差によって上記第2のリチウム化合物の作動電圧の末端部分で急激に電圧が降下する部分が存在して、瞬間的な出力が低下する問題があった。
【0008】
このような問題は、特に、リチウム二次電池を、可用SOC領域内での出力維持が必須である電気自動車のような中大型デバイスの電源として用いる場合、大きな問題となる恐れがあるので、高安全性を維持しながらも可用SOC領域内での急激な出力降下がなく、低いSOC領域でも高い出力を有する二次電池についての研究が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-307730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するためになされたものであって、本発明の出願人は、様々な研究と実験を重ねた結果、三成分系層状酸化物とオリビン構造の金属酸化物とを混合した正極活物質の急激な電圧降下現象が、上記二つの酸化物の作動電圧の境界付近で発生することに注目し、作動電圧の領域が上記のように完全に区分されない正極活物質を実現するにことにより、従来発明の問題点を解決すると共に、低電圧での出力特性を改善する高容量の二次電池を提供できることを確認し本発明に至った。
【0011】
これにより、本発明は、三成分系層状酸化物の代わりに、電圧プロファイルが3V以下まで発現される層状リチウムマンガン酸化物とオリビン構造の金属酸化物とを混合した混合正極活物質を提供することを目的とする。
【0012】
なお、本発明は、上記混合正極活物質を含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0013】
なお、本発明は、上記混合正極活物質を含むリチウム二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような課題を解決するために、本発明は下記のような手段を提供する。
【0015】
本発明は、下記一般式(1)で表されるリチウムマンガン酸化物と下記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物を混合した混合正極活物質を含み、正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電することを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
[化1]
aLiMnO・ (1-a)LiMO
式中、0<a<1であり、Mは、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Fe等からなる群より選ばれるいずれか一つの元素、又は2以上の元素を同時に用いるものである。
[化2]
LiM'XO
式中、M、M'は移転金属元素から選ばれる1種以上であり、XはP、Si、S、As、Sbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つであり、x+y+z=2である。
【0016】
なお、上記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物はLiFePOであることを特徴とする。
【0017】
上記正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電することは、フォーメーション段階あるいはその後数サイクルあるいは毎サイクルで充電することを特徴とする。
【0018】
上記混合正極活物質はオリビン構造の金属酸化物を5〜50重量%含むことを特徴とする。
【0019】
なお、上記混合正極活物質は上記オリビン構造の金属酸化物を10〜40重量%含むことを特徴とする。
【0020】
上記混合正極活物質中オリビン構造の金属酸化物は導電性物質でコーティングされていることを特徴とする。
【0021】
上記導電性物質はカーボン系物質であることを特徴とする。
【0022】
また、上記混合正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-マンガン酸化物、リチウムマンガン-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-ニッケル-マンガン酸化物およびこれらに他元素が置換又はドープされた酸化物からなる群より選ばれるいずれか一つ、又は2以上のリチウム含有金属酸化物がさらに含まれることを特徴とする。
【0023】
また、上記他元素は、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Feからなる群より選ばれるいずれか一つ、又は2以上の元素であることを特徴とする。
【0024】
また、上記リチウム含有金属酸化物は、混合正極活物質の総重量に対して50重量%以内に含まれることを特徴とする。
【0025】
また、上記リチウム二次電池は、上記混合正極活物質以外にも導電材、バインダー、充填剤がさらに含まれる正極合剤を含むことを特徴とする。
【0026】
また、上記リチウム二次電池は、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池として用いられることを特徴とする。
【0027】
上記中大型デバイスは、パワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車;E-バイク(E-bike)、E-スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(Electric golf cart);電気トラック;電気商用車又は電力貯蔵用システムであることを特徴とする。
【0028】
一方、本発明は、下記一般式(1)で表されるリチウムマンガン酸化物と下記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物とを混合した混合正極活物質を製造する段階と、
上記混合正極活物質を含むリチウム二次電池の製造段階と、
上記リチウム二次電池を正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電するフォーメーション段階とを含むリチウム二次電池の製造方法を提供する。
[化1]
aLiMnO・ (1-a)LiMO
式中、0<a<1であり、Mは、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Fe等からなる群より選ばれるいずれか一つの元素、又は2以上の元素を同時に用いるものである。
[化2]
LiM'XO
式中、M、M'は移転金属元素から選ばれる1種以上であり、XはP、Si、S、As、Sbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つであり、x+y+z=2である。
【0029】
上記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物はLiFePOであることを特徴とする。
【0030】
上記フォーメーション段階は数サイクルあるいは毎サイクルごとに行うことを特徴とする。
【0031】
上記混合正極活物質はオリビン構造の金属酸化物を5〜50重量%含むことを特徴とする。
【0032】
上記混合正極活物質の製造段階は、オリビン構造の金属酸化物を導電性物質でコーティングする段階をさらに含むことを特徴とする。
【0033】
上記導電性物質はカーボン系物質であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る混合正極活物質を含むリチウム二次電池は、作動電圧領域が断絶せず連結可能な二つの酸化物を用いることにより、放電時に全SOC領域で急激に電圧が降下することなく、連続的に均一な電圧プロファイル(profile)が示され、さらに、低SOC領域での出力低下現象も改善することができ、使用可能なSOC領域が拡大すると共に、安全性に優れた高容量のリチウム二次電池を提供する。
【0035】
特に、本発明に係るリチウム二次電池は、電気自動車などの中大型デバイスの電源として用いる場合、要求される出力特性、容量、及び安全性などの条件を十分に満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係るリチウム二次電池の放電時における電流-電圧の変化およびプロファイルの傾きを示すグラフである。
【図2】本発明の比較例1に係るリチウム二次電池の放電時における電流-電圧の変化およびプロファイルの傾きを示すグラフである。
【図3】本発明の比較例2に係るリチウム二次電池の放電時における電流-電圧の変化およびプロファイルの傾きを示すグラフである。
【図4】本発明の比較例3に係るリチウム二次電池の放電時における電流-電圧の変化およびプロファイルの傾きを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
上記のような目的を達成するために、本発明は、オリビン構造の金属酸化物(以下、"オリビン"とする。)と比較的高い電圧で充電時平坦準位領域を有する層状構造のリチウムマンガン酸化物(以下、"リチウムマンガン酸化物"とする。)とを混合した混合正極活物質を提供し、このような正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0039】
本発明に係る混合正極活物質は、オリビンの作動電圧領域と明確に断絶される作動電圧を有する三成分系リチウム転移金属酸化物の代わりに、上記オリビンの作動電圧領域と連結されるように3.5V電圧以下まで電圧プロファイルが発現されるリチウムマンガン酸化物をオリビンと混合することにより、作動電圧領域の差による急激な電圧降下現象を防ぐことができる。
【0040】
このために、本発明の正極活物質は、正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電時平坦準位の電圧領域を有することで知られているリチウムマンガン酸化物とオリビンとを混合した混合正極活物であることを特徴とする。
【0041】
上記リチウムマンガン酸化物は下記一般式(1)で表することができる。
[化1]
aLiMnO・ (1-a)LiMO
式中、0<a<1であり、Mは、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Fe等からなる群より選ばれるいずれか一つの元素、又は2以上の元素を同時に用いるものである。
【0042】
すなわち、上記一般式(1)で表されるリチウムマンガン酸化物は、必須移転金属としてMnを含み、Mnの含有量がリチウムを除いたその他金属の含有量より多いことを特徴とする。また、上記リチウムマンガン酸化物は高電圧で過充電時に大きい容量を発現する。
【0043】
また、上記リチウムマンガン酸化物は、放電時、3.5V電圧以下まで長く電圧プロファイルが示されるため、オリビンとの混合時に作動電圧領域が断絶しない。
【0044】
上記一般式(1)で表されるリチウムマンガン酸化物に必須移転金属として含まれるMnは、他金属(リチウム除外)の含有量より多量含まれることを要するので、具体的には、リチウムを除いた全体金属量を基準として50〜80モル%であることが望ましい。
【0045】
Mnの含有量が少なすぎると安全性が低下して製造コストが増加し、上記リチウムマンガン酸化物のみの特性を発揮しにくい可能性もある。逆にMnの含有量が多すぎるとサイクルの安定性が低下する可能性がある。
【0046】
また、上記リチウムマンガン酸化物は、構成成分の酸化数の変化によって現れる酸化/還元電位以上で一定区間の平坦準位を有している。具体的に、上記リチウムマンガン酸化物は、正極電位を基準として4.45V、より望ましくは4.5V以上の比較的高い電圧で充電時4.5V〜4.8V付近で過量の酸素ガスと共に、平坦準位区間を示し、約250mAh/gに至る大きい容量を有する。
【0047】
上記リチウムマンガン酸化物は、特に、その製造方法が限定されず、公知の方法を用いて製造することができ、一般的に、上記リチウムマンガン酸化物に含まれる各金属塩を共沈してMO(M=Mn、Ni、Coなど)を製造した後、LiCo、LiOHなどと高温で固体反応(solid-state reaction)により合成することができるが、これに限定されない。その他の方法として、Mn酸化物、Ni酸化物又はCo酸化物などをLiCO、LiOHなどと共に高温で固体反応(solid-state reaction)を行うこともでき、又は、上記金属塩の共沈時、リチウム塩を共に共沈して製造することもできる。
【0048】
一方、本発明に用いられる上記オリビンは下記一般式(2)で表することができる。
[化2]
LiM'XO
式中、M、M'は移転金属元素から選ばれる1種以上であり、XはP、Si、S、As、Sbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つであり、x+y+z=2である。
【0049】
さらに、上記一般式(2)で表されるオリビンは、上記一般式(1)のリチウムマンガン酸化物の3V領域帯の出力を補助して低電圧での出力低下現象を改善するために、比較的充電電位が低いLiFePOを用いることが望ましい。
【0050】
上記LiFePOは、理論容量が170mAh/gであり、標準還元電位が3.4Vであり、この電圧は電解質を分解させるほど高くはないながらも、エネルギー密度を維持することができる。
【0051】
しかしながら、LiFePOの場合、低い電気伝導度によりその充放電の挙動が充分でないため、一般的に導電性物質を表面にコーティングした形態が広く用いられており、したがって本発明においても純粋なLiFePOのみでなく、その表面に導電性物質がコーティングされた形態のものを含む。
【0052】
上記導電性物質としては、電気伝導度に優れ、二次電池の内部環境で副反応を誘発しないものであれば特に制限されなく、特に伝導性の高いカーボン系物質が望ましい。
【0053】
本発明の混合正極活物質は、上記一般式(1)のリチウムマンガン酸化物と上記一般式(2)のオリビンを含むことを特徴とし、含有量比は特に限定されないが、望ましくは上記オリビンの含有量は混合正極活物質の総重量に対して5〜50重量%を含み、より望ましくは10〜40重量%を含む。
【0054】
オリビンの含有量が5重量%以下である場合は、オリビンの役割を十分に発揮しにくく、二次電池の安全性に問題が発生し得、50重量%以上である場合は、全体正極の高容量化の発現に限界があり得る。
【0055】
上記のような本発明の混合正極活物質は、明確な作動電圧の境界がないため、全SOC領域にわたって急激な電圧降下現象がなく、オリビンとしてLiFePOを用いる場合、上記LiFePOがリチウムマンガン酸化物の低SOC領域での出力を補助して低電圧での出力低下現象を改善した正極活物質を提供することができる。本発明に係る混合正極活物質は、上記のように正極電位を基準として4.45V以上の高い電圧で充電時平坦準位の電圧領域を有し、3.5V以下まで電圧プロファイルが示されるリチウムマンガン酸化物とオリビン以外に下記のようなリチウム含有金属酸化物をさらに含むことができる。
【0056】
すなわち、さらに含まれるリチウム含有金属酸化物は、当業界に公知されている多様な活物質として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-マンガン酸化物、リチウムマンガン-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-ニッケル-マンガン酸化物、これらに他元素が置換又はドープされた酸化物などが含まれ、上記他元素は、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Feからなる群より選ばれるいずれか一つ、又は2以上の元素を含むことができる。
【0057】
このようにさらに含まれるリチウム含有金属酸化物は、その含有量が混合正極活物質の総重量に対して50重量%以内に含ませることにより、発明の効果を奏することができる。
【0058】
一方、本発明に係る混合正極活物質を含むリチウム二次電池は、正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電時に高い容量を発現するリチウムマンガン酸化物を活性化するために、正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電するようにし、望ましくは4.5V以上の電圧で充電する。
【0059】
本発明に係るリチウム二次電池は、上記のような活性化過程を通じて4.45V付近で平坦準位区間を有するようになり、上記平坦準位区間で酸素発生と共に大きい容量を発現することになる。
【0060】
さらに、放電過程で急激な電圧降下又は出力低下のなく連続的に均一な放電特性を示し、低電圧でもオリビンの出力補助によって出力低下現象が改善されたリチウム二次電池を提供することができる。
【0061】
上記正極電位を基準として4.45V以上の比較的高い電圧で充電する活性化工程方法は、特に制限されず、本技術分野において公知の充電方法を用いる。
【0062】
但し、このような高電圧での充電処理は、毎作動サイクルごとに行うこともでき、安全性および工程性を勘案して電池フォーメーション段階で1回又は数回行うこともできる。このような充電処理を毎サイクルごとに行うためには、高電圧で安定的に作動できる電解液が必要であるが、現在の技術段階ではこのような電解液の実現が容易ではない。
【0063】
また、上記充電過程が進行された後には酸素などのガスが大量に発生するので、充電過程を含むフォーメーション段階後には必ず脱ガス(degassing)工程を行うことが望ましい。
【0064】
なお、本発明は、上記のような混合正極活物質を含むことを特徴とする正極合剤を提供する。
【0065】
このような正極合剤は、上記混合正極活物質以外にも選択的に導電材、バインダー、充填剤などを含むことができる。
【0066】
上記導電材は、通常、混合正極活物質の全体重量を基準として1〜50重量%添加する。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発させず、導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末と、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカーと、酸化チタンなどの導電性酸化物と、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。場合によっては上記混合正極活物質に導電性を有する第2被覆層が付加されることで、上記導電材の添加を省略することもできる。
【0067】
上記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、通常、混合正極活物質の全体重量を基準として1〜50重量%添加する。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴムなど様々な共重合体などが挙げられる。
【0068】
上記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分であって、選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発させず、繊維状材料であれば特に制限されなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体と、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質を用いることができる。
【0069】
なお、本発明は、上記正極合剤が集電体上に含まれる正極を提供する。
【0070】
二次電池用正極は、例えば、正極集電体上に上記混合正極活物質、導電材およびバインダー、充填剤などの正極合剤をNMPなどの溶媒に混合して作製されたスラリーを負極集電体上に塗布した後乾燥および圧延して製造することができる。
【0071】
上記正極集電体は一般的に3〜500μmの厚さに作製する。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させず、高い導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又は、アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等を用いことができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイール、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が可能である。
【0072】
なお、本発明は、上記正極、負極、セパレータ、およびリチウム塩含有非水電解液で構成されたリチウム二次電池を提供する。
【0073】
上記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質を含んでいる負極合剤を塗布及び乾燥して作製され、上記負極合剤には、必要に応じて、先立って説明したような成分をさらに含ませることもできる。
【0074】
上記負極集電体は、一般的に3〜500μmの厚さに作製する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させず、導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドニウム合金などを用いることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイール、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態で用いることができる。
【0075】
上記セパレータは、負極と負極との間に介され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が用いられる。セパレータの気孔直径は一般的に0.01〜10μmであり、厚さは一般的に5〜300μmである。このようなセパレータとしては、例えば、耐化学性および疏水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーと、ガラス繊維又はポリエチレン等で作られたシートや不織布などが用いられる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0076】
上記リチウム塩含有非水系電解液は、非水電解液とリチウム塩とからなる。非水電解液としては非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが用いられる。
【0077】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソロン、フォルムアミド、ジメチルフォルムアミド、ジオキソロン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、硝酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソロン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。
【0078】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、燐酸エステルポリマー、ポリアジテイションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを用いることができる。
【0079】
上記無機固体電解質としては、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiS等のLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを用いることができる。
【0080】
上記リチウム塩は、上記非水系電解質に溶解しやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSO)NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを用いることができる。
【0081】
また、非水系電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的にして、例えば、ピリジン、亜リン酸トリエチル、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレン ジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサ燐酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどを添加することもできる。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもできる。
【0082】
このような本発明に係る二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用できるのみでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても望ましく用いることができる。
【0083】
上記中大型デバイスの望ましい例としては、パワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車;E-バイク(E-bike)、E-スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(Electric golf cart);電気トラック;電気商用車又は電力貯蔵用システムなどを挙げられるが、これらに限定されるのではない。
【0084】
以下では、実施例により本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0085】
(実施例)
[正極の製造]
LiFePOと0.5LiMnO-0.5Li(Mn0.33NiO.33Co0.33)Oを重量比が3:7となるように混合し、これを正極合剤の総重量に対して88重量%にし、導電材としてデンカブラック6重量%、バインダーとしてPVDF6重量%をNMPに添加してスラリーを作製する。これを正極集電体に塗布して圧延および乾燥して二次電池用正極を製造した。
【0086】
[リチウム二次電池の製造]
上記のように製造された正極を含み、リチウム金属からなる負極の間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介し、リチウム電解液を注入してコイン型リチウム二次電池を作製した。上記コイン型リチウム二次電池を正極電位を基準として4.6VでCC/CV充電した後、3Vで放電した(C-rate = 0.1C)。
【0087】
(比較例1)
上記実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池を製造した後、フォーメーション段階として正極電位を基準として4.4Vで充電したことを除いては実施例1と同一に実施した。
【0088】
(比較例2)
上記実施例1において、0.5LiMnO-0.5Li(Mn0.33Ni0.33Co0.33)Oの代わりに、Li(Mn0.33Ni0.33Co0.33)Oを混合したことを除いては実施例1と同一に実施した。
【0089】
(比較例3)
上記比較例2と同様に、リチウムイオン二次電池を製造した後、フォーメーション段階として正極電位を基準として4.4Vで充電したことを除いては比較例2と同一に実施した。
【0090】
上記実施例および各比較例によって製造されたセルに対し室温で4.4〜3Vサイクルで充放電特性を確認し、これについての結果は図1〜図4に示した。
【0091】
図1には、実施例に係る二次電池の放電時、3〜4Vの領域での電流-電圧の変化およびプロファイルの傾きが示されている。フォーメーションおよびその後の2サイクル目の結果を共に示した。
【0092】
図2〜図4には、比較例の二次電池の放電時、3〜4Vの領域での電流-電圧の変化およびプロファイルが示されている。
【0093】
これらの図を参照すると、実施例のリチウム二次電池は、比較例に係るリチウム二次電池の場合とは異なり、2Vから4.5Vにかけて急激に電圧が降下することなく、均一なプロファイルを示すことを確認することができる。
【0094】
したがって、本発明により、充放電特性および安全性が非常に優れ、低電圧での出力特性に優れた高容量のリチウム二次電池を提供でき、特に、電気自動車などの電源として用いられる中大型の電池として利用するとき、要求される出力特性、容量、及び安全性などの条件を十分に満足させることができる中大型リチウム二次電池を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるリチウムマンガン酸化物と下記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物とを混合した混合正極活物質を含み、正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電することを特徴とするリチウム二次電池。
[化1]
aLiMnO・ (1-a)LiMO
式中、0<a<1であり、Mは、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Fe等からなる群より選ばれるいずれか一つの元素、又は2以上の元素を同時に用いるものである。
[化2]
LiM'XO
式中、M、M'は移転金属元素から選ばれる1種以上であり、XはP、Si、S、As、Sbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つであり、x+y+z=2である。
【請求項2】
上記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物はLiFePOであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
上記正極電位を基準として4.45V以上の電圧での充電は、フォーメーション段階あるいはその後数サイクルあるいは毎サイクルで充電することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
上記混合正極活物質は、オリビン構造の金属酸化物を5〜50重量%含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
上記混合正極活物質は、上記オリビン構造の金属酸化物を10〜40重量%含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
上記混合正極活物質中のオリビン構造の金属酸化物は、導電性物質でコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
上記導電性物質はカーボン系物質であることを特徴とする請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
上記混合正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-マンガン酸化物、リチウムマンガン-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-ニッケル-マンガン酸化物およびこれらに他元素が置換又はドープされた酸化物からなる群より選ばれるいずれか一つ又は2以上のリチウム含有金属酸化物がさらに含まれることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
上記他元素は、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Feからなる群より選ばれるいずれか一つ又は2以上の元素であることを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
上記リチウム含有金属酸化物は、混合正極活物質の総重量に対して50重量%以内に含まれることを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
上記リチウム二次電池は、上記混合正極活物質以外にも導電材、バインダー、充填剤がさらに含まれる正極合剤を含むことを特徴とする請求項1〜請求項10のうちいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
上記リチウム二次電池は、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池として用いられることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
上記中大型デバイスは、パワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車;E-バイク(E-bike)、E-スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(Electric golf cart);電気トラック;電気商用車又は電力貯蔵用システムであることを特徴とする請求項12に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
下記一般式(1)で表されるリチウムマンガン酸化物と下記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物とを混合した混合正極活物質を製造する段階と、
上記混合正極活物質を含むリチウム二次電池の製造段階と、
上記リチウム二次電池を正極電位を基準として4.45V以上の電圧で充電するフォーメーション段階と、を含むリチウム二次電池の製造方法。
[化1]
aLiMnO・ (1-a)LiMO
式中、0<a<1であり、Mは、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Fe等からなる群より選ばれるいずれか一つの元素、又は2以上の元素を同時に用いるものである。
[化2]
LiM'XO
式中、M、M'は移転金属元素から選ばれる1種以上であり、XはP、Si、S、As、Sbおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか一つであり、x+y+z=2である。
【請求項15】
上記一般式(2)で表されるオリビン構造の金属酸化物はLiFePOであることを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項16】
上記フォーメーション段階は数サイクルあるいは毎サイクルごとに行うことを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項17】
上記混合正極活物質はオリビン構造の金属酸化物を5〜50重量%含むことを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項18】
上記混合正極活物の製造段階は、オリビン構造の金属酸化物を導電性物質でコーティングする段階をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項19】
上記導電性物質はカーボン系物質であることを特徴とする請求項18に記載のリチウム二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−520783(P2013−520783A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554933(P2012−554933)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001300
【国際公開番号】WO2011/105833
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(504111015)エルジー ケム. エルティーディ. (38)
【Fターム(参考)】