説明

分光分析装置

【課題】測定対象物による測定光の吸収特性を適切に検出することができる分光分析装置を提供する。
【解決手段】分光分析装置10では、光源11からの光が第2ファイバカプラFC2で分岐し、固定鏡18及び可動鏡15とで反射する。各鏡15,18で反射した光は、第2ファイバカプラFC2において同位相で合波され、第3ファイバカプラFC3で分岐されて測定光と参照光となる。測定光と参照光の位相は、第3位相調整器P3及び第4位相調整器P4で同位相となるように調整される。光検出器30は、参照光と試料測定部20を透過した測定光とを受光し、これらの光を光電変換してフーリエ変換した後に減算処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)等、マイケルソン干渉計を用いた分光装置が知られている。特許文献1の分光分析装置では、マイケルソン干渉計において、光源から出射した光を分岐させて固定鏡と可動鏡とでそれぞれ反射させた後に、これらの反射光を互いに合波させて干渉光を生成する。
【0003】
この分光分析装置では、干渉光を分岐させ、その一方を測定光とし他方を参照光とし、試料を透過した測定光と試料を透過していない参照光とを検出器で受光する。検出器では、これらの光を光電変換した後に、これらの電気信号をフーリエ変換して演算処理することで、試料に吸収された光の波長及び吸収量を検出する。この分光分析装置では、こうして検出された光の波長及び吸収量に基づいて、試料の原子・分子構造や量等を特定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10―176952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光源から出射された光は、光源から出射されて測定光や参照光として検出器に流入するまでに通過する経路に応じて位相が変化する。そのため、検出器に受光される際の光の位相によっては、測定対象物による測定光の吸収特性を適切に検出できない場合がある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、測定対象物による測定光の吸収特性を適切に検出することができる分光分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、広帯域光を出射する光源と、前記光源からの光を分岐させる分岐手段と、前記分岐された各光をそれぞれ反射させる固定鏡及び可動鏡と、前記各鏡の反射光を同位相で互いに合波させて測定光を生成する測定光合波手段と、前記各鏡の反射光を同位相で互いに合波させて参照光を生成する参照光合波手段と、前記参照光と測定対象物透過後又は反射後の前記測定光とを受光し、前記測定対象物による前記測定光の吸収特性を検出する吸収特性検出手段と、前記吸収特性検出手段に応じて、前記参照光と前記測定光との位相を調整する位相調整手段とを備える。
【0008】
上記構成において、測定光合波手段及び参照光合波手段では、固定鏡及び可動鏡で反射した各反射光が互いに同位相で干渉し合うため、干渉光が適切に生成される。
ここで、光源からの光が分岐手段で分岐されたり、合波手段で合波されたりする際に、位相が変化する場合がある。また、光源からの光が固定鏡や可動鏡で反射する場合、位相が逆位相となる。したがって、光源から出射される光は、伝送される経路に応じて位相が変化する。
【0009】
この点、位相調整手段が、吸収特性検出手段に応じて、参照光と測定光との位相を調整するため、吸収特性検出手段が、測定対象物による測定光の吸収特性を適切に検出することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記光源から出射される光を伝送するための光ファイバを備え、前記分岐手段及び前記各合波手段は、ファイバカプラで構成される。
【0011】
ファイバカプラによって光が分岐されたり合波されたりする場合、ファイバカプラを通過する光の位相が変化する場合がある。したがって、位相調整手段で光の位相を調整することにより、測定対象物による測定光の吸収特性を適切に検出するという効果を、より好適に発揮させることができる。
【0012】
また、上記したように、ファイバカプラを通過する際に光の位相が変化する場合には、分光分析装置に用いるファイバカプラの組み合わせ(個数や光ファイバとの接続態様)によって位相を調整することもできる。この場合には、ファイバカプラが位相調整手段を兼用することもできる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記各鏡の反射光を同位相で互いに合波させて基準光を生成する基準光合波手段と、前記各鏡の反射光を逆位相で互いに合波させてノイズに相当する波形を有するノイズ光を生成するノイズ光合波手段と、前記基準光と前記ノイズ光とを受光し、光源から出射された光の強度を検出する光源光検出手段とを備える。
【0014】
基準光合波手段では、各反射光が同位相で干渉し合うため、光源から出射される光の強度を反映した基準光が生成される。また、ノイズ光合波手段では、固定鏡及び可動鏡で反射した光が逆位相で干渉し合うため、2つの光が互いに打ち消し合い、打ち消し合わずに残存した光の波形は、光源からの光が伝送される際に生じるノイズを反映した波形を示している。そして、光源光検出手段では、流入する基準光とノイズ光とに基づいて、光源から出射される光の強度をノイズが除去された状態で検出する。
【0015】
こうして得られた光源の光の強度と、測定対象物による測定光の吸収特性とを比較することにより、測定対象物による測定光の吸収特性をより正確に検出することができる。
請求項1〜3に記載の発明は、具体的には、請求項4に記載の発明によるように、前記吸収特性検出手段は、前記参照光と前記測定対象物透過後又は反射後の前記測定光との強度とを減算処理し、前記位相調整手段は、前記測定光と前記参照光との位相が同位相になるように調整する。
【0016】
また、請求項5に記載の発明によるように、前記吸収特性検出手段は、前記参照光と前記測定対象物透過後又は反射後の前記測定光との強度とを加算処理し、前記位相調整手段は、前記測定光と前記参照光との位相が逆位相になるように調整する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定対象物による測定光の吸収特性を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る分光分析装置を示す模式図。
【図2】ファイバカプラによる光ファイバの連結状態を示す断面図。
【図3】(a)及び(b)は、参照光及び測定光を示す波形図。
【図4】(a)及び(b)は、参照光及び測定光を示す波形図。
【図5】第2実施形態に係る分光分析装置を示す模式図。
【図6】(a)及び(b)は、基準光及びノイズ光を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1に、本実施形態に係る分光分析装置を示す。本実施形態に係る分光分析装置10は、マイケルソン干渉計を用いた分光分析装置であり、複数の光ファイバF1〜F18を通じて光を伝送するとともに、干渉光を試料に通過させることで、試料に含まれる元素の量を特定する定量分析を行うものである。
【0020】
分光分析装置10は、光源11と、光源11から出射された光を集光する光源レンズ12を備えている。光源11は、例えば白色LEDからなり、広帯域光を出射する。
分光分析装置10では、光源レンズ12で集光された光が第1光ファイバF1に流入するように構成されている。第1光ファイバF1は、第2光ファイバF2と第1ファイバカプラFC1で結合されており、第3光ファイバF3及び第4光ファイバF4に分岐されている。
【0021】
図2に示すように、第1ファイバカプラFC1は、各光ファイバF1〜F4を連結している。各光ファイバF1〜F4では、コアCOがクラッドCLで被覆されている。第1ファイバカプラFC1では、第1光ファイバF1のコアCOと第3光ファイバF3のコアCOとが連続しており、第1光ファイバF1と第3光ファイバF3とは、第1ファイバカプラFC1においてストレート側で接続されている。また、第2光ファイバF2のコアCOと第4光ファイバF4のコアCOとが連続しており、第2光ファイバF2と第4光ファイバF4とは、第1ファイバカプラFC1においてストレート側で接続されている。また、第1光ファイバF1のコアCOと第4光ファイバF4のコアCOとは、第1ファイバカプラFC1においてクラッドCLを介して接続されており、第1光ファイバF1と第4光ファイバF4とは、第1ファイバカプラFC1においてクロス側に接続されている。また、第2光ファイバF2のコアCOと第3光ファイバF3のコアCOとは、第1ファイバカプラFC1においてクラッドCLを介して接続されており、第2光ファイバF2と第3光ファイバF3とは、第1ファイバカプラFC1においてクロス側に接続されている。
【0022】
第1光ファイバF1を流れる光は、第1ファイバカプラFC1を介してストレート側に接続する第3光ファイバF3に伝送される際には位相が維持され、クロス側の第4光ファイバF4に伝送される際には、位相がπ/2進む。なお、他のファイバカプラFC2,FC3においても同様に、光がファイバカプラFC2,FC3を通過してストレート側の光ファイバに分岐して流れる場合には位相が変化せず、クロス側の光ファイバに分岐して流れる場合には位相がπ/2進む。
【0023】
また、図2に示すように、第2光ファイバF2及び第3光ファイバF3のコアCOは、第1ファイバカプラFC1と接続される側と反対側の端部が閉塞又はAPC加工されており、この端部において光が反射しないようにするための処理が施されている。なお、後記する第10光ファイバF10においても、第3ファイバカプラFC3と接続される側と反対側の端部が閉塞又はAPC加工され、端部における光の反射を防止する処理が施されている。
【0024】
図1に示すように、第4光ファイバF4は、第5光ファイバF5と、第2ファイバカプラFC2で結合されており、第6光ファイバF6及び第7光ファイバF7に分岐されている。第2ファイバカプラFC2では、第4光ファイバF4のストレート側で且つ第5光ファイバF5のクロス側に第6光ファイバF6が接続され、第4光ファイバF4のクロス側で第5光ファイバF5のストレート側に第7光ファイバF7が接続されている。
【0025】
第6光ファイバF6は、第1位相調整器P1を介して第8光ファイバF8に接続されている。そして、第8光ファイバF8から流出する光は、可動側レンズ13及び波長板群14を通じて可動鏡15に入射し、可動鏡15で反射されるように構成されている。可動鏡15は、図示しない駆動機構により、図1の破線矢印に示す方向に移動可能に構成されている。
【0026】
第1位相調整器P1及び後記する第2〜第4の各位相調整器P2〜P4は、流入する光の位相を調整するものであり、第1位相調整器P1は、流入する光の位相を維持するように構成されている。また、波長板群14は、複数枚(本実施形態では2枚)の波長板14a,14bからなる。波長板群14は、光が各波長板14a,14bを通過する際には、位相が変更されるものの、波長板群14全体を通過する際には、位相が維持されるように構成されている。なお、第1位相調整器P1及び波長板群14の何れかを省略してもよい。また、光は、可動鏡15で反射する際には位相が逆位相となり、換言すれば位相がπ進む。
【0027】
第7光ファイバF7は、第2位相調整器P2を介して第9光ファイバF9に接続されている。そして、第9光ファイバF9から流出する光は、固定側レンズ16及び波長板群17を通じて固定鏡18に入射し、固定鏡18で反射されるように構成されている。固定鏡18は移動不能に構成されている。
【0028】
第2位相調整器P2は、流入する光の位相を維持するように構成されている。また、波長板群17は、複数枚(本実施形態では2枚)の波長板17a,17bからなり、光が各波長板17a,17bを通過する際には、位相が変更されるものの、波長板群17全体を通過する際には、位相が維持されるように構成されている。なお、第2位相調整器P2及び波長板群17の何れかを省略してもよい。また、光は、固定鏡18で反射する際に位相が逆位相となり、換言すれば位相がπ進む。
【0029】
本実施形態では、後記するように、第2ファイバカプラFC2が、光源11からの光を可動鏡15及び固定鏡18のそれぞれに伝送するために分岐させるとともに、これら可動鏡15及び固定鏡18で反射した光を合波させる。したがって、第2ファイバカプラFC2は、分岐手段、測定光合波手段及び参照光合波手段を構成している。
【0030】
第5光ファイバF5は、第2ファイバカプラFC2に接続される側と反対側の端部が、第10光ファイバF10と第3ファイバカプラFC3で結合されており、第11光ファイバF11及び第12光ファイバF12に分岐されている。第3ファイバカプラFC3では、第5光ファイバF5のストレート側で且つ第10光ファイバF10のクロス側に第11光ファイバF11が接続され、第5光ファイバF5のクロス側で第10光ファイバF10のストレート側に第12光ファイバF12が接続されている。第3ファイバカプラFC3は、第2ファイバカプラFC2で合波された光を、第11光ファイバF11と第12光ファイバF12とに分岐させる。第11光ファイバF11に分岐して流れた光は、参照光であり、第12光ファイバF12に分岐して流れた光は、測定光である。
【0031】
第11光ファイバF11は、第3位相調整器P3を介して第13光ファイバF13に接続されている。第3位相調整器P3は、流入する光の位相を維持するように構成されている。第12光ファイバF12は、第4位相調整器P4を介して第14光ファイバF14に接続されている。第4位相調整器P4は、流入する光の位相をπ/2遅らせるように構成されている。
【0032】
第14光ファイバF14において第4位相調整器P4が接続する側と反対側には、第1測定光レンズ19、試料測定部20、第2測定光レンズ21及び第15光ファイバF15が順に接続されている。第1測定光レンズ19は、第14光ファイバF14から流出した光を試料測定部20の試料上で集束させるためのものである。なお第1測定光レンズ19として、リレーレンズを用いるようにしてもよい。試料測定部20には、測定対象物となる試料が収容されている。また、第2測定光レンズ21は、試料測定部20を透過した測定光を集光するためのものである。
【0033】
第15光ファイバF15は、測定光量調整部22及び第16光ファイバF16を介して、吸収特性検出手段である光検出器30に接続されている。測定光量調整部22は、表面の曲率が部位毎に異なる1対のレンズを備えており、一対のレンズが対面し合う領域を変更することで、第15光ファイバF15から流出した光の量を調整して、光検出器30に流入する光量を調整するものである。測定光量調整部22としては、コリメートレンズやグリーンレンズを用いることができる。
【0034】
第13光ファイバF13において第3位相調整器P3が接続する側と反対側には、第1参照光レンズ23、光路長調整部24、第2参照光レンズ25及び第17光ファイバF17が順に接続されている。第1参照光レンズ23は、第13光ファイバF13から流出した光を平行光とするためのものであり、第2参照光レンズ25は、光路長調整部24から流出する光を集光するためのものである。第17光ファイバF17は、参照光量調整部26及び第18光ファイバF18を介して光検出器30に接続されている。参照光量調整部26は、測定光量調整部22と同様の原理により、第17光ファイバF17から流出した光の量を調整して、光検出器30に流入する光量を調整する。
【0035】
本実施形態では、第3ファイバカプラFC3から光検出器30までの光の経路において、第11光ファイバF11から第13光ファイバF13までの経路と、第12光ファイバから第14光ファイバF14までの経路は同じ光路長となるように設定されている。また、第15光ファイバF15から光検出器30までの経路と、第17光ファイバF17から光検出器30までの経路は、同じ光路長となるように設定されている。光路長調整部24は、測定光が試料測定部20を通過する際の光路長と、参照光が光路長調整部24を通過する際の光路長とが一致するように調整するためのものである。光路長調整部24による調整によって、第3ファイバカプラFC3から光検出器30までの経路において、測定光及び参照光が通過する光路長が同じ長さに設定される。
【0036】
光路長調整部24は、詳細には、第1〜第4の4個の反射鏡24a〜24dを備えており、第1反射鏡24aに入射した光が、第1反射鏡24aで反射し、第2反射鏡24b、第3反射鏡24c及び第4反射鏡24dを順に反射するように構成されている。また、第2反射鏡24bと第3反射鏡24cとは図1の破線矢印に示す方向に変位可能に構成されており、これにより、第1反射鏡24aから第2反射鏡24bまでの距離及び第3反射鏡24cから第4反射鏡24dまでの距離が可変に構成されている。したがって、試料測定部20の光路長(測定光が試料測定部20を伝播する時間)に応じて、第2反射鏡24bと第3反射鏡24cの位置を調整することで、測定光が試料測定部20を通過する際の光路長と、参照光が光路長調整部24を通過する際の光路長とを一致させることができる。
【0037】
光検出器30は、測定光電変換部31と参照光電変換部32と演算処理部33とを備えている。測定光電変換部31は、測定光を受光して電気信号に変換し、参照光電変換部32は、参照光を受光して電気信号に変換する。演算処理部33は、測定光と参照光との強度を示す電気信号を減算処理する。
【0038】
光検出器30は、アナログーデジタル変換器34を介してパーソナルコンピュータ35に接続されている。アナログーデジタル変換器34は、演算処理部33の演算結果をデジタル信号に変換し、その信号をパーソナルコンピュータ35に出力する。パーソナルコンピュータ35は、入力されるデジタル信号をフーリエ変換し、試料測定部20の試料に吸収された光の波長及び量を導出する。また、パーソナルコンピュータ35には、予め元素データ及びその吸収スペクトルのデータが格納されている。これによりパーソナルコンピュータ35は、これらのデータと、フーリエ変換により導出した光の波長及び吸収量に基づいて、試料測定部20の試料を特定するとともに試料の量を導出して、表示画面にこれらの導出結果を表示する。
【0039】
次に、分光分析装置10の動作について説明する。分光分析装置10では、光源11から出射される光が以下のように伝送されることで、試料の定量分析が行われる。
光源11から出射された光は、光源レンズ12で集光されて、第1光ファイバF1に流入する。この光は、第1光ファイバF1を流れて、第1ファイバカプラFC1で、第3光ファイバF3と第4光ファイバF4とに分岐して流れる。第4光ファイバF4に分岐された光は、第2ファイバカプラFC2で第6光ファイバF6と第7光ファイバF7とに分岐して流れる。
【0040】
第6光ファイバF6を流れた光は、第1位相調整器P1及び第8光ファイバF8を流れ、可動側レンズ13で平行光となる。可動側レンズ13を通過した光は、波長板14a,14bを通じて可動鏡15に入射して反射する。なお、以下では、光源11から出射されて可動鏡15で反射する光を可動反射光という。可動反射光は、可動鏡15で反射した後、再び波長板14a,14bを通じて可動側レンズ13に入射し、第8光ファイバF8、第1位相調整器P1及び第6光ファイバF6を通じて第2ファイバカプラFC2に流入する。
【0041】
一方、第2ファイバカプラFC2において、第7光ファイバF7に分岐された光は、第2位相調整器P2及び第9光ファイバF9を流れ、固定側レンズ16で平行光となる。固定側レンズ16を通過した光は、波長板17a,17bを通じて固定鏡18に入射して反射する。なお、以下では、光源から出射されて固定鏡18で反射する光を固定反射光という。固定反射光は、固定鏡18で反射した後、再び波長板17a,17bを通じて固定側レンズ16に入射し、第9光ファイバF9、第2位相調整器P2及び第7光ファイバF7を通じて第2ファイバカプラFC2に流入する。
【0042】
これにより、第2ファイバカプラFC2では、第6光ファイバF6を通じて流入する可動反射光と第7光ファイバF7を通じて流入する固定反射光とが、第5光ファイバF5に流入し、合波されて干渉し合う。ここで、第5光ファイバF5に流入する可動反射光及び固定反射光は同位相で合波される。
【0043】
すなわち、上記したように第1及び第2の各ファイバカプラFC1,FC2では、光がストレート側の光ファイバに分岐される場合には位相が変化せず、クロス側の光ファイバに分岐される場合には位相がπ/2進む。また、可動鏡15及び固定鏡18では、入射した光が反射することで位相が反転するため位相がπ進む。また、光が第1及び第2の各位相調整器P1,P2及び各波長板群14,17を通過する際には位相が変化しない。したがって、可動反射光は、光源11から出射された後に、表1に示すように位相が変化し、固定反射光は、光源11から出射された後に、表2に示すように位相が変化する。
【0044】
【表1】

表1に示すように、可動反射光は、光源11から出射されて第1光ファイバF1を流れ、第1ファイバカプラFC1においてクロス側の第4光ファイバF4へ流れるため位相がπ/2進む。そして、第2ファイバカプラFC2でストレート側の第6光ファイバF6へと流れるため位相が維持されて、光源11から出射される光に対して位相がπ/2進んだ状態を維持する。また、可動反射光は、第1位相調整器P1や波長板群14を通過する際には、位相が変化せず維持され、可動鏡15で反射することにより、位相がπ進み、光源11から出射される光に対して位相が3π/2進んだ状態となる。可動鏡15で反射した可動反射光は、波長板群14及び第1位相調整器P1を再度通過する際には、位相が変化せず維持される。そして、第2ファイバカプラFC2でクロス側の第5光ファイバF5へ流れる際に位相がπ/2進むため、光源11から出射される光に対して位相が2π進んだ状態となり、光源11から出射される光と同位相(位相差「0」)となる。
【0045】
【表2】

一方、固定反射光は、表2に示すように、光源11から出射されて第1光ファイバF1を流れ、第1ファイバカプラFC1においてクロス側の第4光ファイバF4へ流れるため位相がπ/2進む。そして、第2ファイバカプラFC2でクロス側の第7光ファイバF7へと流れるため位相がπ/2進み、光源11から出射される光に対して位相がπ進んだ状態となる。また、固定反射光は、第2位相調整器P2や波長板群17を通過する際には、位相が変化せず維持され、固定鏡18で反射することにより、位相がπ進んで光源11から出射される光に対して位相が2π進んだ状態(位相差「0」)となる。固定鏡18で反射した固定反射光は、波長板群17及び第2位相調整器P2を再度通過する際には、位相が変化せず維持されるため、光源11から出射される光と同位相に維持される。そして、固定反射光は、第7光ファイバF7から第2ファイバカプラFC2においてストレート側の第5光ファイバF5へ流れるため位相が変化せず、光源11から出射される光と同位相に維持される。
【0046】
以上のように、第2ファイバカプラFC2を通過して第5光ファイバF5に流入する可動反射光と固定反射光とは、ともに光源11から出射される光と同位相であるため、互いに位相が等しい。したがって、第5光ファイバF5では、同位相の光が合波されることにより干渉光が生成されることになり、干渉光を適切に生成することができる。こうして生成された干渉光は、第3ファイバカプラFC3で第11光ファイバF11と第12光ファイバF12とに分岐する。第11光ファイバF11に分岐した干渉光は、参照光となり、第12光ファイバF12に分岐した干渉光は、測定光となる。
【0047】
測定光は、第12光ファイバF12、第4位相調整器P4及び第14光ファイバF14を順に流れる。ここで、第14光ファイバF14を流れる測定光は、光源11から出射される光に対して、位相が表3に示すように変化している。
【0048】
【表3】

表3に示すように、第5光ファイバF5を流れる干渉光が第3ファイバカプラFC3においてクロス側の第12光ファイバF12に分岐して測定光となると、位相がπ/2進む。さらに、測定光は、第4位相調整器P4を流れる際に、位相がπ/2遅れるように調整されるため、第14光ファイバF14では、光源11から出射される光と同位相となる。
【0049】
第14光ファイバF14から流出した測定光は、第1測定光レンズ19で平行光となり、試料測定部20を透過する。測定光の一部は、試料測定部20を流れる際に、試料測定部20内の試料に吸収される。測定光のうち、試料に吸収される光の波長は、その試料の特性に応じて変化し、吸収量は試料の量に応じて変化する。測定光は試料測定部20を透過した後に、第2測定光レンズ21で集光されて第15光ファイバF15に流入する。第15光ファイバF15から流出した光は、測定光量調整部22によって適宜光量調整され、第16光ファイバF16を介して光検出器30の測定光電変換部31に受光される。
【0050】
参照光は、第11光ファイバF11、第3位相調整器P3及び第13光ファイバF13を順に流れる。ここで、第13光ファイバF13を流れる参照光の位相は、表4に示す通りである。
【0051】
【表4】

表4に示すように、第5光ファイバF5を流れる干渉光は、第3ファイバカプラFC3においてストレート側の第11光ファイバF11に分岐する際には、位相が維持される。さらに、参照光は、第3位相調整器P3を流れる際に位相が維持されるため、第13光ファイバF13では、光源11から出射される光と同位相となる。本実施形態では、第3位相調整器P3及び第4位相調整器P4により、第13光ファイバF13を流れる参照光と第14光ファイバF14を流れる測定光との位相が同位相に調整されるため、第3位相調整器P3及び第4位相調整器P4が位相調整手段を構成している。
【0052】
第13光ファイバF13から流出した参照光は、第1参照光レンズ23で平行光となり、光路長調整部24に入射する。光路長調整部24では、参照光が4つの反射鏡24a〜24dにより4回反射するため位相は維持される。
【0053】
参照光は、光路長調整部24の第4反射鏡24dで反射した後、第2参照光レンズ25で集光されて第17光ファイバF17に流入する。第17光ファイバF17から流出した参照光は、参照光量調整部26で適宜光量調整され、第18光ファイバF18を介して光検出器30の参照光電変換部32に受光される。
【0054】
光検出器30では、測定光電変換部31で測定光が電気信号(電圧)に変換され、参照光電変換部32で参照光が電気信号(電圧)に変換される。図3及び図4は、この電気信号(出力電圧)を示す波形図である。なお、可動鏡15が変位して所定位置となったときにファイバカプラFC2で干渉光が生成され、図3及び図4の波形図において、出力電圧が相対的に大きくなる時間は、可動鏡15が変位して所定位置に達した時間を示している。
【0055】
例えば、試料測定部20内に試料が収容されていない場合(試料の量が「0」の場合)には、光検出器30に流入する参照光と測定光との強度は等しい。したがって、参照光を示す電圧は、図3(a)に示す波形図となり、測定光を示す電圧は、図3(b)に示す波形図となり、参照光及び測定光の波形図は、互いに同位相で同じ強度の光の波形を示す。
【0056】
一方、試料測定部20内に試料が収容されている場合(試料の量が「0」でない場合)には、測定光は試料測定部20を通過する際に一部が吸収される。したがって、参照光を示す電圧は、図4(a)に示す波形図となり、測定光を示す電圧は、図4(b)に示す波形図となり、測定光の波形図は、参照光と同じ位相であって、所定波長において試料の吸収分だけ光量が小さい光の波形を示す。
【0057】
光検出器30の演算処理部33は、これらの出力電圧値を減算処理する。本実施形態では、第16光ファイバF16を通じて光検出器30に受光される測定光と、第17光ファイバF17を通じて光検出器30に受光される参照光の位相が互いに位相が等しい。そして、光検出器30の演算処理部33では、互いに位相が等しい光の出力電圧値の減算処理が行われる。したがって、演算処理部33は、減算結果として、試料に吸収された測定光の量を適切に検出することができる。すなわち、試料測定部20に試料が収容されていない場合には、図3に示す出力電圧値が減算処理されるため、減算結果が「0」となり、試料測定部20で測定光が吸収されなかった旨が検出される。一方、試料測定部20に試料が収容されている場合には、図4に示す出力電圧値がフーリエ変換されて減算処理されるため、試料測定部20の試料に吸収された測定光の量が検出される。
【0058】
演算処理部33による減算結果は、アナログーデジタル変換器34を通じてデジタル信号に変換され、パーソナルコンピュータ35に出力される。これにより、パーソナルコンピュータ35は、入力されたデジタル信号をフーリエ変換して、試料測定部20の試料に吸収された光の波長及び量、並びに試料測定部20の試料の種類とその量を導出し、その導出結果を表示画面に表示する。
【0059】
以上詳述したように、本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)分光分析装置10では、光検出器30が、試料によって吸収される測定光の量を検出し、その検出方法に応じて、第3位相調整器P3及び第4位相調整器P4が、参照光と測定光との位相を調整する。したがって、第3ファイバカプラFC3で測定光と参照光とに分岐される際に、測定光と参照光との位相がπ/2ずれるものの、第3位相調整器P3及び第4位相調整器P4により測定光と参照光との位相が同位相に調整される。したがって、光検出器30が、試料に吸収された測定光の量を適切に検出することができ、パーソナルコンピュータ35による演算処理により、試料測定部20の試料に吸収された光の波長及び量、並びに試料測定部20の試料の種類とその量を導出することができる。
【0060】
(2)分光分析装置10では、光検出器30の演算処理部33が、光検出器30に流入する参照光と測定光との強度とを減算処理し、第3及び第4の各位相調整器P3,P4は、測定光と参照光との位相が同位相になるように調整する。したがって、演算処理部33が測定光と参照光との減算処理を行うことで、試料が吸収した測定光の量を適切に検出することができる。
【0061】
(3)分光分析装置10は、光の分岐及び合波をファイバカプラFC1〜FC3で行うようにしており、ファイバカプラFC1〜FC3を通過する際にクロス側の光ファイバに光が流れると位相がπ/2進むため、伝送される光の位相が変化しやすい。そのため、第3位相調整器P3及び第4位相調整器P4で光の位相を調整することによって光検出器30試料に吸収された測定光の量を適切に検出するという効果を、より好適に発揮させることができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図5〜図6を参照して説明する。図5に、本実施形態に係る分光分析装置を示す。本実施形態に係る分光分析装置10aは、マイケルソン干渉計を用いた分光分析装置であり、複数の光ファイバF1〜F23を通じて光を伝送し、試料測定部20内の試料に含まれる元素の量を特定する定量分析を行うものである。本実施形態に係る分光分析装置10aにおいて、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号で示し、その説明を適宜省略する。
【0063】
分光分析装置10aにおいて、第1光ファイバF1は、第2光ファイバF2aと第1ファイバカプラFC1で結合されており、第3光ファイバF3及び第4光ファイバF4に分岐されている。第1ファイバカプラFC1では、第1光ファイバF1のストレート側で且つ第2光ファイバF2aのクロス側に第3光ファイバF3が接続され、第1光ファイバF1のクロス側で第2光ファイバF2aのストレート側に第4光ファイバF4が接続されている。本実施形態では、後記するように、ノイズ光が第2光ファイバF2aを流れる。
【0064】
第2光ファイバF2aにおいて、第1ファイバカプラFC1に接続されている側と反対側が、ノイズ光量調整部28及び第23光ファイバF23を介して光源光検出手段である光源光検出器36に接続されている。ノイズ光量調整部28は、測定光量調整部22と同様の原理により、第2光ファイバF2aを流出して光源光検出器36に流入する光の量を調整する。
【0065】
第5光ファイバF5は、第2ファイバカプラFC2に接続される側と反対側の端部が、第10光ファイバF10と第3ファイバカプラFC3で結合されており、第11光ファイバF11a及び第12光ファイバF12aに分岐されている。第3ファイバカプラFC3では、第5光ファイバF5のストレート側で且つ第10光ファイバF10のクロス側に第11光ファイバF11aが接続され、第5光ファイバF5のクロス側で第10光ファイバF10のストレート側に第12光ファイバF12aが接続されている。第3ファイバカプラFC3は、第2ファイバカプラFC2で合波された光を、第11光ファイバF11aと第12光ファイバF12aとに分岐する。第11光ファイバF11aに分岐して流れる光は、基準光である。
【0066】
第11光ファイバF11aにおいて、第3ファイバカプラFC3に接続されている側と反対側は、基準光量調整部27及び第22光ファイバF22を介して、光源光検出器36に接続されている。基準光量調整部27は、測定光量調整部22と同様の原理により、第11光ファイバF11aを流出して光源光検出器36に流入する光の量を調整する。
【0067】
光源光検出器36は、基準光電変換部37とノイズ光電変換部38と演算処理部39とを備えている。基準光電変換部37は、基準光を受光して電気信号に変換し、ノイズ光電変換部38は、ノイズ光を受光して電気信号に変換する。演算処理部39は、基準光とノイズ光とを示す電気信号(出力電圧値)を減算処理する。この減算結果は、後記するように光源11から出射される光の強度を反映した値となっている。
【0068】
光源光検出器36は、アナログーデジタル変換器40を介してパーソナルコンピュータ35aに接続されている。アナログーデジタル変換器40は、演算処理部39の減算結果をデジタル信号に変換し、その信号をパーソナルコンピュータ35aに出力する。これにより、パーソナルコンピュータ35aは、入力されるデジタル信号をフーリエ変換することで、表示画面に光源11から出射される光の強度を表示する。
【0069】
第12光ファイバF12aは、第3ファイバカプラFC3に接続される側と反対側の端部が、第13光ファイバF13aと第4ファイバカプラFC4で結合されており、第14光ファイバF14a及び第15光ファイバF15aに分岐されている。第4ファイバカプラFC4では、第12光ファイバF12aのストレート側で且つ第13光ファイバF13aのクロス側に第14光ファイバF14aが接続され、第12光ファイバF12aのクロス側で第13光ファイバF13のストレート側に第15光ファイバF15aが接続されている。第12光ファイバF12aを流れた光は、第4ファイバカプラFC4で分岐され、第14光ファイバF14aに分岐して流れた光が参照光であり、第15光ファイバF15aに分岐して流れた光が測定光である。
【0070】
第14光ファイバF14aは、第3位相調整器P3aを介して第16光ファイバF16aに接続されている。第3位相調整器P3aは、流入する光をπ/2遅らせるように構成されている。第15光ファイバF15aは、第4位相調整器P4aを介して第17光ファイバF17aに接続されている。第4位相調整器P4aは、流入する光の位相をπ遅らせるように構成されている。
【0071】
第17光ファイバF17aにおいて第4位相調整器P4aが接続する側と反対側には、第1測定光レンズ19、試料測定部20及び第2測定光レンズ21が順に接続されている。第2測定光レンズ21は、第18光ファイバF18aを介して測定光量調整部22に接続されており、測定光量調整部22は第19光ファイバF19を介して光検出器30に接続されている。
【0072】
第16光ファイバF16aにおいて第3位相調整器P3aが接続する側と反対側には、第1参照光レンズ23、光路長調整部24及び第2参照光レンズ25が順に接続されている。第2参照光レンズ25は、第20光ファイバF20を介して参照光量調整部26に接続されている。参照光量調整部26は、第21光ファイバF21を介して光検出器30に接続されている。
【0073】
第4ファイバカプラFC4から光検出器30までの経路において、第14光ファイバF14aから第16光ファイバF16aまでの経路と、第15光ファイバF15aから第17光ファイバF17aまでの経路は同じ光路長に設定されている。また、第20光ファイバF20から第21光ファイバF21までの経路と、第18光ファイバF18aから第19光ファイバF19までの経路は、同じ光路長に設定されている。そして、試料測定部20内の試料によって、光路長が変化する場合があるため、光路長調整部24は、試料測定部20の試料に応じて、光路長調整部24を通過する光と試料測定部20を通過する光の光路長が一致するように調整する。したがって、第4ファイバカプラFC4から光検出器30までの経路において、測定光及び参照光が通過する光路長は、同じ長さに設定される。
【0074】
光検出器30は、アナログーデジタル変換器34を介してパーソナルコンピュータ35aに接続されている。パーソナルコンピュータ35aは、第1実施形態と同様に、アナログーデジタル変換器34の出力信号をフーリエ変換し、試料測定部20の試料に吸収された光の波長及び量、並びに試料の量を導出してこれを表示する。なお、本実施形態では、パーソナルコンピュータ35aに、光源11から出射される光の強度を示すデジタル信号が入力されるため、パーソナルコンピュータ35は、試料測定部20の試料に吸収された光の波長及び量並びに試料の量を導出するにあたり、光源11から出射される光の強度に基づいて補正を行う。
【0075】
次に、分光分析装置10aの動作について説明する。分光分析装置10aでは、光源11から出射される光が以下のように伝送されることで、試料の定量分析が行われる。
分光分析装置10aでは、第1実施形態と同様に、第2ファイバカプラFC2において、第6光ファイバF6を通じて流入する可動反射光と第7光ファイバF7を通じて流入する固定反射光とが合波されて干渉し合う。
【0076】
本実施形態では、第2ファイバカプラFC2に流入する光は、第4光ファイバF4と第5光ファイバF5とに分岐される。このうち第5光ファイバF5に流入して干渉し合う光は、第1実施形態と同様に、可動反射光と固定反射光がともに光源11から出射される光と同位相で合波されるため、干渉光が適切に生成される。一方、第4光ファイバF4に流入する可動反射光は、表5に示すように光源11から出射される光に対して位相が変化している。また、第4光ファイバF4に流入する固定反射光は、表6に示すように、位相が変化している。
【0077】
【表5】

表5に示すように、第4光ファイバF4に流入する可動反射光は、可動鏡15で反射して第1位相調整器P1を通過するまでは、第1実施形態における表1と同じ態様で変化する。しかしながら、第2ファイバカプラFC2において第6光ファイバF6からストレート側の第4光ファイバF4に流入するため、第2ファイバカプラFC2を流れる際に位相が変化することなく維持される。したがって、光源11から出射される光に対して、位相が3π/2進んだ状態となる。
【0078】
【表6】

一方、表6に示すように、第4光ファイバF4に流入する固定反射光は、固定鏡18で反射して第2位相調整器P2を通過するまでは、第1実施形態における表2と同じ態様で変化する。しかしながら、第2ファイバカプラFC2において第7光ファイバF7からクロス側の第4光ファイバF4に流入するため、位相がπ/2進む。したがって、第4光ファイバF4に流入する固定反射光は、光源11から出射された光に対して、位相がπ/2進んだ状態となっている。
【0079】
このように第4光ファイバF4には、光源11から出射された光に対して位相が3π/2進んでいる可動反射光と、位相がπ/2進んでいる固定反射光とが流入して干渉し合う。したがって、逆位相の可動反射光と固定反射光とが干渉し合うことになるため、2つの光が互いに打ち消し合い、打ち消し合わずに残存する光の波形は、光源11から出射される光が伝送される際に生じるノイズが反映されたものとなる。
【0080】
このようにして光の伝送される際に生じるノイズが反映された光が、第4光ファイバF4を流れ、第1ファイバカプラFC1において、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2aとに分岐される。第1ファイバカプラFC1において、第1光ファイバF1から第2光ファイバF2aを流れる光はノイズを反映したノイズ光として、ノイズ光量調整部28で適宜光量調整されて、光源光検出器36のノイズ光電変換部38に流入する。
【0081】
第5光ファイバF5を流れる干渉光は、第3ファイバカプラFC3において、ストレート側の第11光ファイバF11aと、クロス側の第12光ファイバF12aとに分岐される。第11光ファイバF11aに分岐した干渉光は、第3ファイバカプラFC3において第5光ファイバF5からストレート側の第11光ファイバF11aに分岐しているため、第3ファイバカプラFC3を通過する際に位相が変化することなく維持される。また、第11光ファイバF11aを流れる光は、第5光ファイバF5において同位相の可動反射光と固定反射光とが合波されて生成される。したがって、第11光ファイバF11を流れる光は、光源11から出射される光の強度を反映した基準光となる。基準光は、第11光ファイバF11を流れ、基準光量調整部27で適宜光量調整されて、光源光検出器36に流入する。
【0082】
なお、ノイズ光及び基準光は、第2ファイバカプラFC2で合波されることにより生成されるため、本実施形態では、第2ファイバカプラFC2が、ノイズ光合波手段及び基準光合波手段を構成している。
【0083】
光源光検出器36では、図6(a)に示すように、基準光電変換部37で基準光が電気信号に変換され、図6(b)に示すように、ノイズ光電変換部38でノイズ光が電気信号に変換される。そして、これらの電気信号が演算処理部39で減算処理される。アナログーデジタル変換器40は、その減算結果をデジタル信号に変換し、パーソナルコンピュータ35aに出力する。したがって、パーソナルコンピュータ35aは、光源強度を示す基準光から、光が伝送される際に生じるノイズを除去した光の波形を表示する。
【0084】
第3ファイバカプラFC3を通じて第12光ファイバF12aに流れた干渉光は、第4ファイバカプラFC4において、第14光ファイバF14a及び第15光ファイバF15aに分岐して流れる。第14光ファイバF14aを流れる光は、参照光として、第3位相調整器P3a、第16光ファイバF16aを順に流れる。第16光ファイバF16aを流れる参照光は、光源11から出射される光に対して、位相が表7に示すように変化している。
【0085】
【表7】

表7に示すように、第5光ファイバF5を流れる干渉光は、第3ファイバカプラFC3においてクロス側の第12光ファイバF12aに分岐するため、位相がπ/2進み、光源11から出射される光に対してπ/2進んだ状態となる。そして、第4ファイバカプラFC4において、ストレート側の第14光ファイバF14aへ流れて参照光となるため、第4ファイバカプラFC4を通過する際には、位相が変化することなく、光源11から出射される光に対してπ/2進んだ状態に維持される。そして、第3位相調整器P3aを通過する際に、位相がπ/2遅れるため、第16光ファイバF16aでは、光源11から出射される光と同位相(位相差「0」)となる。
【0086】
一方、第15光ファイバF15aを流れる光は、測定光として、第4位相調整器P4a、第17光ファイバF17aを順に流れる。第17光ファイバF17aを流れる測定光は、光源11から出射される光に対して、位相が表8に示すように変化している。
【0087】
【表8】

表8に示すように、第5光ファイバF5を流れる干渉光は、第3ファイバカプラFC3においてクロス側の第12光ファイバF12aに分岐するため、位相がπ/2進み、光源11から出射される光に対してπ/2進んだ状態となる。そして、第4ファイバカプラFC4において、クロス側の第15光ファイバF15aへ流れて測定光となるため、位相がπ/2進み、光源11から出射される光に対して位相がπ進んだ状態に維持される。そして、第4位相調整器P4aを通過する際に、位相がπ遅れるため、第17光ファイバF17aでは、光源11から出射される光と同位相(位相差「0」)となる。
【0088】
第17光ファイバF17aから流出した測定光は、第1測定光レンズ19、試料測定部20、第2測定光レンズ21及び第18光ファイバF18aを順に流れる。第18光ファイバF18aから流出した測定光は、測定光量調整部22で光量が調整され、第19光ファイバF19を通じて光検出器30に流入する。第16光ファイバF16aから流出した参照光は、第1参照光レンズ23、光路長調整部24、第2参照光レンズ25及び第20光ファイバF20を順に流れる。第20光ファイバF20から流出した光は、参照光量調整部26で光量が調整され、第21光ファイバF21を通じて光検出器30に流入する。
【0089】
本実施形態においても、第3位相調整器P3a及び第4位相調整器P4aによって、光検出器30に流入する測定光と参照光とが同位相に調整されている。したがって、第1実施形態と同様に、パーソナルコンピュータ35aの表示部には、試料測定部20の試料により吸収された光の波長及び量、並びに試料の量が表示される。また、パーソナルコンピュータ35aには、上記したように、光源11から出射される光の強度を示すデジタル信号がノイズが除去された状態で入力される。したがって、パーソナルコンピュータ35aは、試料により吸収された光の波長及び量と、試料の量をより正確に導出して、この結果を表示画面に表示することができる。
【0090】
以上詳述したように、第2実施形態によれば、上記(1)〜(3)の作用効果に加え、以下の(4)の作用効果を奏することができる。
(4)分光分析装置10aでは、第2ファイバカプラFC2で基準光及びノイズ光を生成し、光源光検出器36で、光源11から出射された光の強度をノイズを除去した状態で検出するようにしている。これにより、パーソナルコンピュータ35aが、こうして得られた光源強度と試料に吸収された測定光の波長と強度を比較することで、試料に吸収された測定光の波長及び量をより正確に導出することができる。
【0091】
(その他の実施形態)
・上記各実施形態では、光検出器の演算処理部が減算処理を行うものであったが、演算処理部は、除算処理を行うものでもよい。この場合でも、位相調整手段は、光検出器に流入する測定光及び参照光が同位相となるように調整する。また、演算処理部は加算処理を行うものでもよく、この場合には、位相調整手段が光検出器に流入する測定光及び参照光が逆位相となるように調整する。これにより、試料がない場合に、逆位相の測定光と参照光とが光検出器に流入され、この電気信号が加算処理されることにより、逆位相の光が打ち消しあって加算結果が「0」となり、試料がある場合には、加算処理により、試料に吸収された測定光の波長及び量が検出されることになる。
【0092】
なお、上記第1及び第2実施形態やこの変形例では、このように同位相の光の電気信号を減算又は除算処理したり、逆位相の光の電気信号を加算処理するため、検出器のダイナミックレンジの制限を回避することができ、高感度の分析を行うことができる。
【0093】
・また、上記各実施形態の光検出器は、受光する測定光及び参照光を直接光電変換される構成であったが、例えば、光検出器は、各光電変換部の前段に位相調整器を備えている構成であってもよい。例えば、光検出器が、流入する光の位相をπ/2進ませる位相調整器を参照光電変換部の前段に備えており、演算処理部が減算処理を行う構成である場合には、位相調整手段により、光検出器に流入する参照光の位相が測定光よりもπ/2遅れるように調整する。これにより、参照光電変換部及び測定光電変換部で光電変換される電気信号は、同位相の光の波形を示すため、演算処理部の減算処理により、試料により吸収された測定光の波長及び量を検出することができる。
【0094】
・上記各実施形態では、第3位相調整器P3,P3a及び第4位相調整器P4,P4aで位相調整手段を構成した。しかしながら、位相調整手段は、ファイバカプラで構成してもよい。例えば、上記したように、光検出器が、流入する光の位相をπ/2進ませる位相調整器を参照光電変換部の前段に備えており、演算処理部が減算処理を行う構成である場合には、位相調整手段で、参照光の位相を測定光よりもπ/2位相を遅らせるように調整することが必要となる。この場合、第1実施形態の分光分析装置10から第3位相調整器P3と第4位相調整器P4とを取り除けば、参照光は測定光よりも位相がπ/2遅れた状態で光検出器に流入することとなる。したがって、このような光検出器を用いる場合には、第3ファイバカプラFC3が、参照光を測定光よりも位相をπ/2遅らせるための位相調整手段を構成することとなる。したがって、ファイバカプラを適宜組み合わせることにより、光検出器の構成や演算方法などに応じて、伝送される光の位相を調整するようにしてもよい。
【0095】
・上記各実施形態では、測定光及び参照光は、ともに第2ファイバカプラFC2で合波されたが、測定光及び参照光を合波させるため合波手段は、それぞれ別々の合波手段を用いるようにしてもよい。また、例えば、各合波手段で合波される固定反射光及び可動反射光が互いに同位相であれば、各合波手段で合波される際の測定光と参照光との位相は同位相であっても異なる位相であってもよい。すなわち、測定光及び参照光が合波された後に、位相調整手段で測定光及び参照光の位相を適宜調整して、光検出器に流入させるようにすればよい。
【0096】
また、ノイズ光及び基準光を合波させるための合波手段も、別々の合波手段を用いるようにしてもよい。
・上記各実施形態では、光路長調整部24で、測定光と参照光との光路長を一致させるように調整している。しかしながら、分光分析装置が特定の試料の定量分析を行うものであれば、試料測定部20の光路長は一定であるため、このような場合には、光路長が可変に調整できる光路長調整部を設けることなく、参照光が流れる光路長を光ファイバの長さなどによって調整することで、参照光と測定光との光路長を一致させるようにしてもよい。
【0097】
・上記各実施形態では、光ファイバを通じて光の伝送を行ったが、分光分析装置は、光ファイバを用いることなく、空間内において光が伝送される構成であってもよい。このような場合、空間内において光が伝送される際に光の位相が変化するため、検出器の構成や演算方法に応じて、検出器に流入する光の位相を波長板などで調整するようにしてもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、光検出器が試料透過後の測定光を受光するようにしている。しかしながら、光検出器は試料反射後の測定光を受光するようにしてもよい。
・上記実施形態では、光ファイバを流れる光を分岐させる手段として、ファイバカプラを用いるようにしている。しかしながら、光の伝送路が3ポートのみの場合には、ファイバカプラの代わりにサーキュレータを用いるようにしてもよい。
【0099】
・上記各実施形態では、光がファイバカプラにおいてクロス側の光ファイバに伝送される際に、位相がπ/2進む構成であったが、位相を保持するファイバカプラを用いるようにしてもよい。また、光ファイバ及びサーキュレータにおいても、位相保持用のファイバ及びサーキュレータを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10,10a…分光分析装置、11…光源、12…光源レンズ、13…可動側レンズ、14,17…波長板群、15…可動鏡、16…固定側レンズ、18…固定鏡、19…第1測定光レンズ、20…試料測定部、21…第2測定光レンズ、22…測定光量調整部、23…第1参照光レンズ、24…光路長調整部、25…第2参照光レンズ、26…参照光量調整部、27…基準光量調整部、28…ノイズ光量調整部、30…光検出器、31…測定光電変換部、32…参照光電変換部、33,39…演算処理部、34,40…アナログーデジタル変換器、35,35a…パーソナルコンピュータ、36…光源光検出器、37…基準光電変換部、38…ノイズ光電変換部、F1〜F24,F2a,F11a〜F18a…光ファイバ、P1〜P4,P3a,P4a…位相調整器、FC1〜FC4…第1ファイバカプラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域光を出射する光源と、
前記光源からの光を分岐させる分岐手段と、
前記分岐された各光をそれぞれ反射させる固定鏡及び可動鏡と、
前記各鏡の反射光を同位相で互いに合波させて測定光を生成する測定光合波手段と、
前記各鏡の反射光を同位相で互いに合波させて参照光を生成する参照光合波手段と、
前記参照光と測定対象物透過後又は反射後の前記測定光とを受光し、前記測定対象物による前記測定光の吸収特性を検出する吸収特性検出手段と、
前記吸収特性検出手段に応じて、前記参照光と前記測定光との位相を調整する位相調整手段とを備える
ことを特徴とする分光分析装置。
【請求項2】
前記光源から出射される光を伝送するための光ファイバを備え、
前記分岐手段及び前記各合波手段は、ファイバカプラで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の分光分析装置。
【請求項3】
前記各鏡の反射光を同位相で互いに合波させて基準光を生成する基準光合波手段と、
前記各鏡の反射光を逆位相で互いに合波させてノイズに相当する波形を有するノイズ光を生成するノイズ光合波手段と、
前記基準光と前記ノイズ光とを受光し、光源から出射された光の強度を検出する光源光検出手段とを備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分光分析装置。
【請求項4】
前記吸収特性検出手段は、前記参照光と前記測定対象物透過後又は反射後の前記測定光との強度とを減算処理し、
前記位相調整手段は、前記測定光と前記参照光との位相が同位相になるように調整する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分光分析装置。
【請求項5】
前記吸収特性検出手段は、前記参照光と前記測定対象物透過後又は反射後の前記測定光との強度とを加算処理し、
前記位相調整手段は、前記測定光と前記参照光との位相が逆位相になるように調整する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−78100(P2012−78100A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220742(P2010−220742)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】