説明

分光検出装置

【課題】 高感度検出と広い波長選択範囲を併せ持つ分光検出装置を提供する。
【解決手段】 平面ミラー9は可動式であり、点線で示される位置にあるときはミラー5からの分光された光が試料セル11に達し、広い波長範囲で試料による吸光度を測定することができる。この時、レーザー15からの光は平面ミラー9により反射され、試料には到達しない。平面ミラー9が実線で示される位置にあるときはレーザー15からの光が平面ミラー9により反射され試料セル11に到達し、試料による吸光度が測定される。レーザー15から発せられる光は小さな開口角で微小な点に集光して試料セル11入射できるため、高感度検出が可能となる。このとき、ミラー5からの光は平面ミラー9により反射され、試料には到達しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光した光を試料に照射し、試料を透過する光や反射する光あるいは試料から発生する蛍光を測定する分光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定試料中を透過した光を測定する吸光度検出器や被測定試料から発生する蛍光を測定する蛍光検出器では、特定の波長を試料に照射することで測定を行う。特定波長の光を照射する手段としては、重水素ランプやキセノンランプなどの放電灯を光源とし、グレーティングなどによる分光あるいは干渉フィルタなどのフィルタといった波長選択手段を組み合わせている。これは分析対象とする試料の吸収スペクトルあるいは試料励起波長に合わせて照射光の最適な波長を選択できるという利点を有しているためである。
【0003】
図3に従来の吸光度検出器の概略構成図を示す。重水素ランプ等の光源41から照射された光はミラー43によりスリット47上に集光される。スリット47を通過した光はミラー44によりグレーティング49に照射され、グレーティング49で分散された光はミラー45で試料セル51に集光される。グレーティング49を回転させることにより特定波長の光を試料セル51に照射させることができる。試料セル51には試料が封入あるいは通液されており、試料を透過した光の強度を光電子増倍管等の光検出器53で測定することにより試料の吸光度を測定することができる。
【0004】
吸光度あるいは蛍光の検出においては、試料に照射される光の強度が大きいほど検出感度は向上する。また、試料に照射される光の波長幅が小さいほど試料に対する選択性が向上する。このため、光源としてレーザーを用いることが試みられている。レーザーを光源として用いれば強度の大きな単色光が得ることができ、高検出感度で選択性のよい測定が可能となる。
【特許文献1】特開平5−307003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電灯を光源とし、グレーティング等の波長選択手段を組み合わせた特定波長光の照射手段では、グレーティング等により取り出された光は通常ある程度の波長幅を持っている。測定の高感度化をはかるためには試料への照射光の強度を大きくする必要があるが、照射光強度を大きくする手段として、選択波長のバンド幅を広げることがある。しかしながら、バンド幅を広げることにより波長の純度が低くなるため、吸光度検出器においても蛍光検出器においても測定試料に対する選択性が損なわれる。また、蛍光検出器においては励起波長と蛍光波長が接近しているような試料では励起光の一部が蛍光検出側の分光器内の光検出器に入射して試料蛍光のバックグラウンドレベルが高くなり、ノイズが増加してかえってS/N比が低下することがある。
【0006】
試料への照射光の光量を多くとるために光源の集光系の開口角を大きく取ろうとしても、試料に照射される高束の開口角も大きくなってしまう。また、試料への光束の開口角を小さくしても試料上での光源の像も拡大される。吸光度検出の場合は試料への光束の開口角が大きいと試料の光路長を長く取ることができず、また試料上での像が大きくなると試料からはみ出て利用されない光が発生し、結果としてS/Nの向上が損なわれることがある。蛍光検出器の場合では、試料への光束の開口角が大きかったり、試料上での像が大きかったりすると、セルの内壁での入射光の散乱が増加することでバックグラウンドレベルが高くなり、ノイズが増加してしまう。
【0007】
一方、光源として平行光を取り出せるレーザーを使用すると、小さな開口角で微小な点に集光でき、微小なセルに入射できるため、上述のような問題は避けることができ高感度化することが可能であるが、レーザーの場合発振できる波長が限られているため、特定の分析対象にしか用いることができない。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高感度検出と広い波長選択範囲を併せ持つ分光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分光検出装置は上記問題を解決するため、連続スペクトルを有する光源と、光源から照射された光を分光する波長選択手段と、分光された光と試料との相互作用により得られる光を検出する光検出手段を有する分光検出装置において、レーザー光を試料に導入する手段を有するものである。
【0010】
分光された光と試料との相互作用が試料による吸光の場合には吸光度検出器であり、試料による蛍光発光の場合には蛍光検出器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源として連続スペクトルを有する光源とレーザー光源とを有しているので、レーザー光源による高感度検出を可能とするとともに、連続波長光源を使用することで波長選択範囲を広く取ることができ、分析対象を広げることも同時に可能となる。よって、1台の装置で高感度かつ汎用性の高い分光検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は連続波長光源、光源から照射された光を分光する分光器、試料と分光された光との相互作用、たとえば試料が光を吸収した後の透過光を検出する光検出器を有するとともに、レーザー光源を設置し、レーザー光源からの単色光を試料に照射し試料に吸収された後の透過光を光検出器に導入する。連続波長光源としては重水素ランプ、キセノンランプ等を用いることができる。分光器としてはグレーティングを用いることができる。光検出器としてはホトダイオード、光電子増倍管等の検出器を用いることができる。レーザー光源としては半導体レーザー、He−Cdレーザー、YAGレーザー等種々のレーザーを必要な波長にあわせて用いることができ、波長可変レーザーの使用も可能である。
【0013】
分光器で分光された光と、レーザー光源から照射された光が、試料の手前の地点から同一の光路を進むように設定する。高感度検出が必要な場合は試料を通過する光路にレーザー光源からの光を導入し、広い波長範囲での測定が必要な場合は分光器からの光を試料に導入する。レーザー光源からの光と分光器からの光を切り替えるために、試料の手前の光路上に可動式のミラーを設置し、ミラーの位置を制御することにより試料に導入する光源からの光の切り替えを行う。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施例の吸光度検出器の概略構成図を示したものである。本発明の吸光度検出器は、重水素ランプ1、ミラー3、4、5、スリット6、平面グレーティング7、平面ミラー9、試料セル11、ホトダイオード13およびレーザー15から構成されている。
【0015】
連続波長光源である重水素ランプ1から照射された光はミラー3によりスリット6上に集光される。スリット6を通過した光はミラー4により平面グレーティング7に照射され、平面グレーティング7で分散された光はミラー5で試料セル11に集光される。平面グレーティング7を回転させることにより特定波長の光を試料セル11に照射させることができる。試料セル11には試料が封入あるいは通液されており、試料を透過した光の強度を光検出器であるホトダイオード13で測定することにより試料の吸光度を測定することができる。また、レーザー15がミラー5から試料セル11にいたる光路に対して直角の位置に設置されている。
【0016】
平面ミラー9は可動式であり、点線で示される位置にあるときは、ミラー5からの分光された光が試料セル11に達し、広い波長範囲で試料による吸光度を測定することができる。この時、レーザー15からの光は平面ミラー9により反射され、試料には到達しない。平面ミラー9が実線で示される位置にあるときはレーザー15からの光が平面ミラー9により反射され試料セル11に到達し、試料による吸光度が測定される。レーザー15から発せられる光は小さな開口角で微小な点に集光して試料セル11に入射できるため、高感度検出が可能となる。このとき、ミラー5からの光は平面ミラー9により反射され、試料には到達しない。平面ミラー9はモータにより回転させることで実線の位置あるいは点線の位置に移動させることができる。
【0017】
レーザー15に半導体レーザーなどのビームの広がり角が大きいものを使用する場合には、平面ミラー9とレーザー15の間にレンズを入れて試料セル11に集光されるように補正する。図1においてはミラー5からの光とレーザー15からの光の導入を可動式の平面ミラー9により切り替えているが、ダイクロックミラーを使用することによりミラーの位置を固定して重水素ランプ1とレーザー15の点灯、消灯を切り替えることで光源の切り替えを行うことも可能である。
【0018】
また、レーザー15からの光の導入位置を、図1においてはミラー5と試料セル11との間にしているがこの限りではなく、レーザー15からの光の導入位置を平面グレーティング7より重水素ランプ1側にしたときは、レーザー15からの光の波長にあわせて平面グレーティング7の回転位置を合わせ分光する波長とあわせることで、試料セル11にレーザー15からの光を入射させることができ、平面ミラー9と試料セル11の間のミラーやグレーティング等の影響でレーザー15からの光が試料セル11中に絞りきれない場合はレーザー15と平面ミラー9との間にレンズを設置して、レーザー15からの光の焦点が試料セル11に結ぶように補正すればよい。
【実施例2】
【0019】
本発明が提供する第2の実施例は図2に示すとおりである。この第2の実施例は蛍光検出器に適用したものであり、キセノンランプ21、ランプ集光ミラー22、励起側入射スリット24、励起側グレーティング25、励起側出射スリット27、励起側ミラー28、試料セル30、蛍光側ミラー32、蛍光側入射スリット33、蛍光側グレーティング35、蛍光側出射スリット36、光電子増倍管38およびレーザー40とから構成されている。
【0020】
連続波長光源であるキセノンランプ21から照射された光はトロイダルミラーからなるランプ集光ミラー22で励起側入射スリット24に集光され、励起側入射スリット24を通過した光は凹面グレーティングからなる励起側グレーティング25で分散され、特定の波長の光が励起側出射スリット27に集光される。励起側出射スリット27を通過した光はトロイダルミラーからなる励起側ミラー28で試料セル30に集光される。励起側グレーティング25を回転させることにより特定波長の光を試料セル30に照射することができる。試料セル30の中には試料が封入または通液されており、励起光により励起された試料中の蛍光物質から発光された蛍光は、トロイダルミラーからなる蛍光側ミラー32によって蛍光側入射スリット33に集光され、蛍光側入射スリット33を通過した光は蛍光側グレーティング35で蛍光側出射スリット36に分散、集光される。蛍光側出射スリット36を透過した光の強度を光電子増倍管38によって測定することにより試料の蛍光光量を測定する。レーザー40は励起側ミラー28と試料セル30を結ぶ光軸上の試料セル30をはさんで励起側ミラー28と反対側に設置され、レーザー40からの光は励起側ミラー28からの光とは反対側から試料セル30に入射される。レーザー40からの光により励起された試料中の蛍光物質から発光された蛍光は、励起側ミラー28からの光により発光する蛍光と同じ光路をたどり、光電子増倍管38によりその強度が測定される。キセノンランプ21を光源とするときはレーザー40を消灯し、レーザー40を光源とするときはキセノンランプ21を消灯するようにして光源の切り替えを行う。
【0021】
レーザー40に半導体レーザーなどのビームの広がり角が大きいものを使用する場合には、レーザー40と試料セル30との間にレンズを入れて、レーザー40からの光が試料セル30に集光されるように補正する。レーザー40からの光の導入方法は第1の実施例の吸光度検出器と同様の方法によって、励起側の光学系のいずれの位置においてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
液体クロマトグラフィー等の試料の吸光度、蛍光強度を検出することにより試料の定性、定量分析を行う分析装置の検出器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施例の吸光度検出器の概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施例の蛍光検出器の概略構成図である。
【図3】従来の吸光度検出器の概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 重水素ランプ
3、4、5 ミラー
6 スリット
7 平面グレーティング
9 平面ミラー
11 試料セル
13 ホトダイオード
15 レーザー
21 キセノンランプ
22 ランプ集光ミラー
24 励起側入射スリット
25 励起側グレーティング
27 励起側出射スリット
28 励起側ミラー
30 試料セル
32 蛍光側ミラー
33 蛍光側入射スリット
35 蛍光側グレーティング
36 蛍光側出射スリット
38 光電子増倍管
40 レーザー
41 光源
43、44、45 ミラー
47 スリット
49 グレーティング
51 試料セル
53 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続スペクトルを有する光源と、光源から照射された光を分光する波長選択手段と、分光された光と試料との相互作用により得られる光を検出する光検出手段を有する分光検出装置において、レーザー光を前記試料に導入する手段を有することを特徴とする分光検出装置。
【請求項2】
光と試料との相互作用が試料による吸光であり、分光検出装置が吸光度検出器であること特徴とする請求項1記載の分光検出装置。
【請求項3】
光と試料との相互作用が試料による蛍光発光であり、分光検出装置が蛍光検出器であること特徴とする請求項1記載の分光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−300671(P2006−300671A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121459(P2005−121459)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】