説明

分娩時の頭皮血液における低酸素症を確認する方法

試料から得られた血漿中全乳酸脱水素酵素の測定を含む、分娩時に採取した胎児頭皮血液における低酸素症を確認する方法。本法は、血漿および/血液中のK、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸のさらなる測定を含む。LDH、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸の1種類または数種類の高値は、胎児における低酸素症を示す。本法においては、血漿分離装置の使用も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胎児の臓器不全を示す分娩時の頭皮血液における低酸素症を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出生時または出生が迫っているときの新生児の急性周生期仮死、すなわち低酸素症(胎児血液の酸素飽和度が不十分な状態)は、低酸素性虚血性脳症(HIE)という形で依然として神経障害の重要な原因となっている。これは満期産児1000例中2〜9例に認められ、その後脳性小児麻痺(CP)が起こり、重症例では死に至る病気である。世界的にみて、毎年約400万人の新生児が死亡しており、約25%は急性周生期仮死が原因である。資源不足のため、発展途上国では状況が悪化しているが、多くの人々が理解しているとおり、これは西欧諸国でも深刻な問題である。スウェーデンは、西欧世界の代表国と考えられており、仮死は満期出産1000件中約7件に発生するため、1000人中2人の子供が生れつきHIEを有することになる。周生期仮死を起因とする持続性障害を予防するため、発症後、できる限り早く、胎児の低酸素症を発見することが重要である。迅速に発見することで、持続性障害が発生していない段階で、介入すべきかどうかを決定することができるようになる。介入とは、実質的には器械使用分娩によりできる限り早く新生児を外に出すこと、具体的には帝王切開をすることである。
【0003】
現在、急性周生期仮死は胎児の心拍モニタリングによって検知されており、胎児心拍数が好ましからざるパターンを示した場合は、膣から採取した胎児頭皮血液を用いてpHまたは乳酸値を測定する。
【0004】
pHおよび乳酸は、酸素供給不足時に嫌気性代謝へスイッチが切り替わることから生じる代謝性アシドーシスの指標である。酸素不足状態の胎児では、ピルビン酸が代謝されて乳酸とエネルギーになる。現時点では、pH値がもっとも信頼できる基準である。しかし、pHを迅速に測定するには約35 μlの頭皮血液が必要であり、これは容易に得ることはできない。いくつかの試験で示されているとおり、1回目の測定に失敗することが非常に多い(20%)。乳酸の測定に必要な血液はわずか5 μlであるため、測定は容易で、ベッドサイドで分析できる。乳酸分析は1分以内に実施可能なため、十分迅速に行える。
【0005】
膣分泌液等、分泌液中の乳酸測定を含む出産をモニタリングする方法は、特許文献1にて開示されている。分娩時の胎児血液のpHおよび乳酸について最近行われたスウェーデン無作為化試験から得られた予備的結果によると、アシドーシスの指標として乳酸はpHと同程度優れている。乳酸とpHは、どちらも中等度/重度のHIEの理想的な予測因子とは言えない。乳酸に対する感度はわずか67%、pHに対しては50%であり、特異度は乳酸に対しては76%、pHに対しては73%と同程度であった。また、新生児のアシドーシス予測における感度および特異度は、乳酸およびpHのどちらについても70%未満である。最近のスウェーデンの報告は、胎児心拍陣痛図(CTG)およびSTAN(心電図STセグメントの分析)を併用して新生児モニタリングを行っても、脳症性障害を来すおそれのあるタイプの周生期仮死が検出できないリスクがあると結論付けている(SBU Alert‐rapport nr 2006‐04)。
【0006】
出生時に仮死状態に陥った新生児において高値であることがわかっている酵素はLDH(乳酸脱水素酵素)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、およびAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)であり、これらは肝酵素としても知られている。LDHは身体のほとんどの細胞中に認められるため、非特異的な酵素と考えられている。したがって、臨床研究で使用されることは少ない。以前、LDHは心筋障害マーカーとして使用されていたが、現在ではより特異度の高い検査に取って代わられている。ASTおよび具体的にはALTは、肝障害に対してより特異的である。低リスクの中国人女性群の新生児を対象として、出産および分娩が血漿中肝酵素に対して及ぼす影響に関する試験において、LDH(乳酸脱水素酵素)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、GGT(グルタミルトランスアミナーゼ)を測定し、母体および新生児特性と相関させた(非特許文献1)。
【0007】
出生時または出生が迫っているときに胎児が低酸素症となった場合、身体の血流は「重要度の低い臓器」(腎、肝、脂肪、腸)から脳、心臓、および副腎に優先的に再分布する。これは優先度の低い臓器の細胞にダメージを与える傾向がある。細胞が障害されると酵素が循環に漏れ出す。低酸素症が重度の場合、細胞は死滅し、血液の酵素濃度も上昇する。低酸素症は、胎児の体内電解質のバランスにも影響を及ぼす。1例を挙げると、低酸素症時には、血液中のカルシウムが細胞に流入する。新生児動物モデルでは、低酸素症になると血清中イオン化カルシウム濃度が上昇することが実証されている。ヒトの乳児では、カルシウムも転帰(脳損傷の有無)の予測因子となる。哺乳動物の新生児において、低酸素症時に変化する問題のその他の酵素および電解質は、カリウム(K)、マグネシウム(Mg2+)、ナトリウム(Na)、グルコース、クレアチンキナーゼ(CK)、およびGGTである。
【0008】
したがって、分娩時の胎児の酸素供給状態を確認する方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/034762A1号パンフレット
【0010】
【非特許文献1】Mongrelli M et al.,J Obstet Gynaecol Resw,26(1):61‐63,2000
【0011】
本発明の目的は、先行技術では既知の方法の欠点の少なくとも一部が克服されている、分娩時の頭皮血液における低酸素症を確認する方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、先行技術では既知の方法を補い、より堅固な根拠に基づいて低酸素症を測定する、分娩時の頭皮血液における低酸素症を確認する方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、本発明についての以下の説明、その好適な実施形態、および添付の請求項に関する試験より明白である。
【発明の概要】
【0014】
本発明により、血漿中LDH(乳酸脱水素酵素)の測定を含む、分娩時に採取した胎児頭皮血液における低酸素症を確認する方法が開示される。LDHのほか、胎児頭皮血液中のK、Mg、Ca、AST、ALT、および乳酸の群から選択される1種類または数種類のマーカーを測定するのが好適である。特に好適は、LDHとK、Mg、Ca、AST、ALT、および乳酸のいずれかとの組み合わせである。さらに好適は、LDH、乳酸、Mg、およびASTおよび/またはALTとの組み合わせである。
【0015】
本出願では、「LDH」および「乳酸脱水素酵素」は全乳酸脱水素酵素を示しており、そのアイソザイムのことではない。
【0016】
本発明の方法では、分娩時に、患者に近い環境において、膣から少量(好ましくは約5〜25 μL)の胎児頭皮血液を採取する。試料中の血液細胞から、具体的には電解質から血漿(血清)を分離し、LDHおよび任意選択的にK、Mg、Ca、AST、ALT、および乳酸のなかから1種類以上について分析し、数分以内に結果を提示する。その結果、帝王切開が必要かどうかを示す等、患児が急性仮死に陥っているかどうかは医療チームが直接結論付ける。本発明のおかげで、仮死関連の多くの苦痛が取り除かれ、多くの命が救われると考えられる。
【0017】
発明者が実施した試験では、小児から採取した血液試料中のLDH、AST、およびALTを24時間以内に分析した。分析対象となった小児は193例であった。このうち19例が仮死の徴候を示した。生後5分のアプガー指数は<7であった。ROC曲線(図1参照)によると、LDHの感度および特異度は、カットオフ値1000 U/Lで96%であった。HIEの場合、同一のカットオフ値で感度100%、特異度96%である。言い換えれば、これは本発明の方法による主要マーカーにより、真の低酸素症である全小児の95%(以上)が確認されると同時に全健康児の95%が健康であると確認されることを意味している。ASTおよびALTは、カットオフ値55 U/Lおよび18 U/Lにて、それぞれ感度86%および特異度90%を示した。本試験が予備的試験であるという事実にも関わらず、現在の既存の方法と比べて驚くほどの改善が示された。
【0018】
費用の観点から、結果は驚くべきものである。現在の方法を用いた場合、不要な帝王切開約10件あたりHIE状態の小児が1例認められることが分かっている。例えば、HIEの小児を1例発見するために計11件の帝王切開が行われるが、このうち10件は不要である。本発明の感度および特異度では転帰は反対であり、例えば不要な帝王切開は10件中1件のみであることを示す。したがって、社会は多くの命を救い、より多くの小児が自然分娩で生まれるようになる。下表は、既知の方法と比べて、本発明による方法によって大幅な改善がみられることを示している。

【0019】
健康な人では、電解質中にはLDHが血清の約150倍含まれていることがわかっている。したがって、電解質にダメージを与えない方法で試料を採取し、分離して、LDHの内容物が血漿中に流入しないようにすることが重要である。また、分析用に少量の頭皮血液を採取することも考慮することが重要である。本発明の方法では、血漿を多孔質マトリックス(本出願では、血液細胞を保持可能な固体支持体上の「膜」と呼ぶ)に通すことで、頭皮血液試料を血漿と血液細胞に分離する。血漿中のLDHについて、従来の方法で分析する。血漿または血液中のK、Mg、Ca、AST、ALT、および/または乳酸を分析する。血液で分析する場合、頭皮血液試料をLDH測定用の血漿を得る部分と、その他の仮死マーカーを分析するための1つまたは複数の部分とに分ける必要がある。先行技術では既知のその他の方法、例えばマイクロ遠心、マイクロ流体コンパクトディスク法、および磁気泳動を使用して、本発明の頭皮血液試料中の血液細胞から血漿を分離することは、本発明の範囲内である。
【0020】
血漿等の液体中のLDHの分析方法は先行技術では既知であり、これを適用して胎児血液から得られた血清中のLDHを測定することができる。例えば、Pinto P V C et al.,Clin Chem 15:339‐349,1969を参照。本出願に組み込まれている米国特許第4,803,159号明細書にて開示されている方法は特に有用である。最後に述べた方法で使用するための装置は、市販されている(VitrosRDT60II Chemistry System;Ortho‐Clinical Diagnostics社、米国)。血液中のK、Mg、Ca、ALT、AST、および乳酸を分析する方法は、臨床化学で通常使用されているため、当業者は容易に入手できる。
【0021】
本発明によると、胎児が低酸素状態に陥っている場合、分娩時に膣から採取した胎児頭皮血液中のLDH、K、Mg、Ca、ALT、AST、および乳酸が高値となる。正常分娩では、基準値(ベースライン)は分娩中および/または分娩直後の値と一致している。具体的には、重度の仮死状態(胎児のHIE発症リスクを上昇させる)に陥っている胎児では、LDH、ALT、およびAST値は、2種類の、具体的には3種類以上のよって上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の好適な態様により、急性仮死がさし迫っているかどうか数分以内に確認するため、少なくとも1種類の、好ましくは多数のマーカーを用いて、ポイント・オブ・ケア・デバイスを提供することを含む、分娩時の頭皮血液試料における低酸素症を確認する方法が開示される。
【0023】
さらに好適な変形形態によると、本デバイスはK、Mg、Ca、AST、ALT、乳酸の中の1種類または数種類の分析手段とさらに連絡している。
【0024】
さらに好適な態様によると、本発明のデバイス/方法を簡便かつ直接使用するための血漿分離デバイスが開示される。
【0025】
ここで本発明について、ほとんどの図面にて例示されている好適であるが実施形態を制限しない説明によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】感度および特異度を示すROC曲線。
【図2】本発明の方法の実施形態を図示するブロック線図。
【図3】本発明の方法において、連続的な使用段階における分離デバイスの第1の実施形態の断面図。
【図4】本発明の方法において、連続的な使用段階における分離デバイスの第1の実施形態の断面図。
【図5】本発明の方法において、連続的な使用段階における分離デバイスの第1の実施形態の断面図。
【図6】頭皮血液の採取および検査に使用することを意図した、本発明によるキャピラリーデバイスの実施形態。
【図7】本発明の別の実施形態による迅速検査用分析システム。
【図8】本発明による迅速検査用の使い捨てカードデバイスの実施形態。
【図9】通常本発明とともに取られる措置。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
血漿分離カード(Micronics社、米国)の膜に健康成人(男性1例、女性1例)の指からキャピラリー採血した血液を入れた。次に膜の反対側を用手的に減圧した。チャンバーのカバーをメスで開け、カード内の血漿採取チャンバーに採取した血漿10 μlを電気ピペットで吸引した。3回の連続実験において、吸引した各血漿10 μlをEKTACHEM DT 60 IIスライドに入れ、それぞれLDH、AST、およびMgを分析した。LDHおよびASTはVitros DTSCモジュール(Ortho−Cliniacal Diagnostics社、米国)にて、Mgは同社のVitros DT 60モジュールにて分析した。
【0028】
本法における連続的な使用段階での本発明による血漿分離デバイスを図3〜図5に示す。本デバイス1は、概してポリ(テトラフルオロエチレン)等の疎水性ポリマー材料でできた円形のハウジングを備える。ハウジング内の血漿採取コンパートメント2は、ハウジングと同一または類似の材料でできたグリッド12により支持される血漿分離膜11によって閉鎖される上端開口部を有する。コンパートメント底部13は広角円錐形をしていて、中央部に向かって傾斜している。コンパートメントの側壁14は、バルブ16を備えた導管15へ伸びている。導管15は、真空ポンプ(図なし)等の陰圧源まで伸びている。図3では、頭皮血液試料7 40 μLは膜11の外面に蓄積していて、バルブ16は閉鎖位置にある。バルブ16を開放するとコンパートメント14に陰圧がかかる(図4)。それによって血漿7’がコンパートメント14に吸引され、傾斜した底部13に蓄積し、血液細胞7’’は膜11により保持される。バルブ16を閉じると図5で示される状態になり、膜から空気が吸引されてコンパートメント内の圧が周囲圧力と等しくなる。代替方法として、コンパートメント14内の圧の等化は、陰圧発生停止後またはその他の適切な方法で、導管15を介して達成され得る。図5は、吸引シリンジによって血漿試料7がコンパートメント14から除去される様子を示す。膜11からシリンジのカニューレ10を挿入した。膜上の血液細胞によって血漿試料7が汚染されないように、デバイス1の上端または側壁の別の開口部に配置した分離挿入口(図なし)にゴム製隔壁を作成してもよい。図2のブロック線図は、本発明の方法の原理を例示する。
【0029】
コンパートメントは、その底部に蓄積した液体(血漿)の排出能を調節する第2のバルブ手段を備えた底部セクションと連絡するように配列される第2の導管をさらに備えることができる。代替方法として、コンパートメントは、蓄積した血漿中のLDHおよびその他のマーカーを測定する手段を含むことができる。膜の面積は、5 mm〜1000 mm、具体的には20 mm〜300 mmであるのが好適である。
【0030】
頭皮血液分析。pHまたは乳酸を測定するため臨床検査で使用される標準機器を用いて、健康男性成人から採取した頭皮血液の反復分析に成功した。試料については、膣管(実際の状況で、羊水で汚染されないように)を使用する場合と使用しない場合があった。血液試料を血漿分離カードに入れてから結果が表示されるまでの時間は、平均7分であった。分析時間は、本法に適合した機器を使用することで、具体的には電気的手段を使用する等、膜の真空側にかける陰圧と時間が十分にコントロールされる分離カードを使用することで、3〜4分以下等まで、かなり短縮できることは明らかである。したがって、緊急時にベッドサイドで胎児頭皮血液を測定する際に、本発明の方法を使用できることは確実である。
【0031】
測定によると、LDH値はキャピラリー中の指の血液より頭皮血液のほうがかなり高く、膣管使用時と非使用時の頭皮血液ではそれぞれ1044 U/Lおよび1127 U/L、指血液では400 U/Lであった。胎児のグルコースおよびヘモグロビン濃度については、頭皮血液と臍帯血との間に差異が認められている。胎児頭皮血液中のLDHの測定は、当業者にはわからないと考えられる。
【0032】
図6では、患者に近い環境等において、検査結果が7分以内に、好ましくは2分以内に、より好ましくは数秒以内に提示され得る使い捨てカード2およびポイント・オブ・ケア検査用分析装置3を含む本発明によるシステムを示す。図7と合わせて詳細に説明されるとおり、使い捨てカード2には、好ましくは複数の検出セル20A〜20Eが配置されるが、実際には、用途によってはLDHを検査するカード(LDH+ASTの場合は2つのセル等)のみで十分と考えられる。
【0033】
図6では、本発明の方法による連続的なステップが提示される。左上に第1ステップが示されており、約10 μL等の量の全血を充填したガラス製キャピラリーデバイス3を用いて新しいカード2に試験血液7が供給される。図7と合わせて詳細に説明されるとおり、連続的なステップでガラス製キャピラリーデバイス4をカード2のコンパートメント21に挿入し、カード2で血液試料7を遮る。使い捨てカード2を装置3にはめて血液試料7を直接分析した。カードはデバイス(例えば、血漿/血清分布用のマイクロ流体チャネル)を備えており、血液試料7由来の血漿7’が少なくとも1つの検出セル20A〜20Eに入れるようになり、好ましくは少なくとも1つのその他のセル中の血液細胞およびより好適な全血が少なくとも1つのその他のセルに入れるようになる。検出セルに入る前に、血漿/血清/全血は、試薬(好ましくは乾燥状態)が蓄積している反応チャンバー(26A〜26E)に入る。したがって、反応が生じてから検出される。装置3には、光計測を行う光デバイス(例えば、(参照用に紹介されている)米国特許第493534号明細書に記載されている)が配置されている。光計測(例えば、米国特許第4803159号明細書に記載されている吸光度測定法等)は、装置3のプロセッサ31によって処理され、ディスプレイ32に表示されるおよび/またはデータ出力33(例、印刷された紙)として示される。さらに、分析装置3は、好ましくは使い捨てカード2固有のコードを用いてバーコード22を読み取り・処理可能なバーコード読み取り装置34を備える。好ましくは、分析装置3はハウジング35内に収納され、携帯可能である。接続(図なし)によって装置3に必要なサプライ用品、例えば電源(バッテリーで動作するのでなければ)を供給する。代替の実施形態では、例えば装置をラップトップに接続可能にする外部プロセッサを用いて、例えばUSBケーブルを用いて、装置を小型化することができる。
【0034】
図7では、本発明による典型的な使い捨てカード2の実施形態を示す。カード2には、5つの検出セル20A〜20Eが配置されており、これらはいずれも光学的検出セルである。第1検出セル20Aは、ALT用である。第2検出セル20Bは、AST用である。第3検出セル20Cは、全LDH用である。第4および第5検出セル20D、20Eは、それぞれ乳酸およびMg2+用である。図示されている実施形態によるカードは円筒形本体23を有し、扱いやすい直径を有する(例えば、直径20〜120 mm以内、好ましくは40〜100 mmm)。本体23材料は、例えばポリ(テトラフルオロ)エチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、幅広い範囲から選択される。図7で図示されるとおり、カード2は、血液試料7を供給するガラス製キャピラリーデバイス4を取り付けるために適合させたチャンバー21を備えている。チャンバー21とその底部には、既知の方法にて、例えば血漿分離装置25(膜25Bおよび血漿採取コンパートメント25Aを含む。図3〜図5に示した膜11と比較する)への血液試料のさらなる輸送を保護するインターフェース23がある。血漿分離膜25とインターフェース23の間には任意選択的に試料スプリッタ24(点線にて示す)があり、例えばプリント試薬26A、Bを介して全血を一部の検出セルに供給し、それぞれALTおよびASTを検出可能にする。次に、より大量の全血試料を血漿分離装置25に供給し、例えばプリント試薬26C、Dを介して、それぞれ血漿7’中の全LDHおよび乳酸が検出可能になる。分離後に得られた血液細胞7’’については、光セル20Eに対応するプリント試薬26Dと混合後に処理し、Mg2+を検出することができる。
【0035】
以下で、検査結果について説明する。本発明による典型的な使い捨てカードには、さまざまな組み合わせのマーカーが使用されている。
【0036】
乳酸脱水素酵素は低酸素状態時には増加を続け、身体の全細胞に存在する。血流にLDHが認められるということは、重度の低酸素症により末梢臓器への血流が減少していることを示している。これは、これらの細胞からのLDHの漏れの始まりである。LDHが検出されても、どの臓器が低酸素状態であるか判断することはできない。溶血が生じた場合(低酸素症によるものでない場合でも、赤血球破裂がLDH増加の原因である可能性もある)。溶血は、2つのグループに分けられる。(1)in vitro溶血は、採取時または試験管にて貯蔵する際に生じる溶血を意味し、(2)in vivo溶血は、病気を起因として患者体内の赤血球が破裂していることを意味する。低酸素症だけでなく、溶血が続いても誤ってLDHが高値になる。LDHの半減期(T1/2)は、血中に漏れ出すLDHの異性体が5種類のなかのどのタイプかによって異なる。主に心臓、脳、および赤血球中に存在するLDH1のT1/2は120時間で、主に肝臓および筋に認められるLDH5のT1/2は10時間である。

【0037】
新生児を対象とする本試験では、HIEを有する患児全員および健康児184例中178例について、マーカーとしてLDHを用いて確認した。これは低酸素症例の見落としがなく、6例が受けた帝王切開および器械使用分娩が不要であったことを意味する。
【0038】
LDH高値は、現在または最近、身体のどこかの部位が低酸素症に陥っている、あるいは溶血が生じていることを示す。
【0039】
ASTは身体の多くの臓器に存在する酵素であるが、LDHよりも臓器に対する特異性が高い。ASTは主に肝臓、筋、および赤血球に存在する。ASTおよびLDHは溶血に感受性を示すが、程度は異なる。新生児のASTのT1/2は、12〜15時間である。

【0040】
新生児を対象とする本試験では、HIEを有する患児全員および健康児236例中210例について、マーカーとしてASTを用いて確認した。これは低酸素症例の見落としがなく、26例が受けた帝王切開および器械使用分娩が不要であったことを意味する。
【0041】
AST高値は、現在または最近、肝臓または筋が低酸素症に陥っている、あるいは溶血が生じていることを示す。
【0042】
ALTは肝臓に特異的な酵素であり、溶血の影響はほとんど受けない。ALTのT1/2は36時間である。

【0043】
本試験では、ALTを単一マーカーとして使用した場合、脳損傷症例の見落としはないが、健康児240例中28例が受けた帝王切開および器械使用分娩が不要であったと考えられる。
【0044】
ALT高値は、現在または以前に肝臓が低酸素症に陥ったことを示している。
【0045】
体内のマグネシウムは骨格に最大50%、細胞内に最大50%存在する。例えば、低酸素症時にアシドーシスが生じた場合(pH低下)、水素イオンが細胞内に移動する。同時にMgが細胞内から血中へ輸送され、血中Mg濃度が上昇する。HIEを有する新生児の場合、Mg濃度は健康児より低い。Mgは、細胞障害よりも優れたアシドーシス・マーカーである。
【0046】
Mg高値は、低酸素症の症状であるアシドーシスの指標である。Mg低値は、脳損傷を来した低酸素症歴の指標である。
【0047】
現段階では、分娩時のMgに関するデータはない。しかし、われわれはブタ新生児に関する動物試験で確認されたMg高値を信頼している。
【0048】
下表は、マーカーとしてLDH+ASTを使用した結果を示す。

【0049】
これらの知見から、健康新生児はいずれもASTおよび/またはLDH低値であることが示されている。HIEを有する新生児10例全員が、ASTおよびLDHのどちらも高値であった。ASTおよびLDH高値の新生児でHIEを発症しなかったのは3例であった。ASTは、新生児が健康である時期を確認するためのLDHの利用効果を増大させる。
【0050】
LDHおよびASTが高値の場合、低酸素症および溶血である。
【0051】
下表は、マーカーとしてLDH+ALTを使用した結果を示す。

【0052】
上表は、LDHおよびALTを同時に分析した場合、健康新生児全員のALTおよび/またはLDHが低値であることを示している。HIEを有する新生児10例全員が、ALTおよびLDHのどちらも高値であった。ASTおよびLDH高値の新生児でHIEを発症しなかったのは1例であった。ALTは、新生児が健康である時期を確認するためのLDHの利用効果を増大させる。
【0053】
ALTは長時間(T1/2は36時間)血中に残るため、早期(胎内で)に新生児が低酸素症を発症していたかどうかが理論的にわかることから、重要である。
【0054】
LDHおよびALT高値は、肝臓(その他の臓器のなかで)に影響を及ぼす低酸素症を示す。
【0055】
下表は、マーカーとしてLDH+ALT+ASTを使用した結果を示す。

【0056】
LDH、AST、およびALTを一緒に分析し、すべての酵素が低値であった場合、HIEを有する新生児は認められないと考えられる。この3種類のマーカーが高値のときに、HIEを有する新生児全員が確認される。HIEが認められない、不要な分娩にて生まれた新生児は1例である。
【0057】
LDH+ALT+AST高値は現在の低酸素症または過去数時間における低酸素症を示している。ALTの半減期が24時間で、ASTやLDHより長いという事実から、この組み合わせによって低酸素症の時間態様が得られる可能性もある。例えば、LDH+ALT+ASTがすべて高値であり、なおかつ出生後も24時間にわたって上昇している場合、分娩直近に低酸素症が発症したことを示している。
【0058】
実際にこれらの計算で使用される資料では、低酸素症の指標(HIE、アシドーシス、アプガースコア低値)が認められないグループに対し、帝王切開23件および器械使用分娩22件が施行された。新生児に害を与えることが疑われたため、本明細書では帝王切開のみを対象とする。
【0059】
上の実施例では、LDHとALTを併用することによって、不要な分娩にて生まれるのが45例ではなく、1例のみで済んでいる。これによって帝王切開のみにかかる費用が880000SEK(スウェーデンクローナ)削減される。吸引分娩費用は含まれない。吸引分娩は母子ともに損傷リスクが高くなり、ヘルスケア費が発生するとともに患者の負担も増える。
【0060】
上述のとおり、新生児が低酸素症を発症しているかどうか確認する際、本法ではASTからはさほど情報を得られない。ASTは半減期が12時間であるため、依然として情報源となる。ALTとともに、出生後の試料を繰り返し採取した場合、この2つの酵素から低酸素症がいつ発症したかに関する情報が得られる。今日の産科医には、低酸素症を見逃したのかどうか、あるいは分娩のため女性が病院に到着した時点で、すでに患児が低酸素症を発症していたのかどうか、証明すべき問題を抱えているため、これは法律的に価値が高い。
【0061】
科学文献から得られた情報に基づく結論によると、マグネシウムよって低酸素症が存在しているのか、あるいは過去に発症したのかに関する知識が得られる。
【0062】
LDH+ALT+AST+Mg高値は、末梢臓器に影響を及ぼし、アシドーシスを引き起こすほど重度の低酸素症が続いていることを示す。LDH+ALT+ASTは高値であるが、Mgは低値の場合、臓器損傷を引き起こし、おそらく脳に影響を及ぼすおそれのある低酸素症を最近発症したことが示される。Mgは溶血には感受性を示さないため、ALTと一緒にLDH高値が溶血ではなく、臓器損傷を起因とするものであることを強調する。
【0063】
以下で、本発明の方法およびデバイスを実際に使用したときの実施例について説明する。アンナという名の患者が分娩室に到着し、分娩すると仮定する。スタッフが、女性の胃の上に装着した機器を用いて心拍数を測定することにより、胎児の状態コントロールを開始する(胎児心拍数パターン、CTG)。一定間隔でCTGをコントロールし、考え得る変化を観察する。陣痛が開始して8時間後、子宮口が8 cm開いていた。新たなCTGコントロール時に、心拍数が増加していることが示された。助産婦は、産科医を呼ぶ。産科医は、病気の徴候が認められるかどうか確認するため、新生児の頭皮から引き続き試料を採取しようと考えている。
【0064】
側臥位を取っていたアンナに内診の体位になるよう指示し、産科医は金属管を膣に通し、胎児の頭皮に押し付ける。羊水を洗い流し、胎児の頭皮に小さな切れ込みを入れる(頭皮試料)。少量の血液7を確認すると、キャピラリー管4を持って、血液約10 μlを採取する。(細管から採血しながら清潔かつ迅速に作業することは容易なことではない。このような場合、30〜40 μlという量はかなり多めである。これは頭皮試料でpHを測定する際に必要とされる量である)。
【0065】
助産婦は産科医の傍らで使い捨てカード2を持ち、そこに医師がキャピラリー管4を挿入する。血液7の入ったカード2を横に配置された検出装置3に入れる。ここで分光計4によってLDH、AST、ALT、およびマグネシウム濃度が分析される。カード2上で赤血球7’’が分離されると分析が始まり、残存する血漿7’がカード上の試薬20A〜20Dと反応する。2分後、装置のディスプレイ上に結果が表示される。表示が「正常―正常―正常―正常」であると、マーカーであるLDH、AST、ALT、およびマグネシウムは、いずれも高値ではないことが産科医にわかる。アンナは自然な手段で分娩を続け、その後、健康児を出産する。
【0066】
その後、同夜、産科医は、ヘレナが第一児を出産している部屋に呼ばれる。ここでもCTGは満足のいくものではないため、頭皮試料を採取する。このとき、表示が「高―高―高―高」であると、全マーカーが高値であることが産科医にわかる。これは、胎児が現在低酸素症に陥っていて、緊急帝王切開を決断しなければならないことを意味しているにすぎない。手術を知らせるアラームが鳴り、ヘレナはベッドに寝たまま手術室へ急いで連れてこられる。迅速麻酔を行ない、産科医は手を洗って手術着に着替える。次に皮膚を切開し、アラームが鳴ってわずか数分後に胎児を取り出す。
【0067】
上述のとおり、溶血に感受性を示すマーカーもある。溶血が本法に及ぼす影響については、現段階では完全には検討されていないが、転帰がさほど変わらない症例もある。しかし、試料採取中に溶血が頻繁に生じる場合は、カードに溶血用マーカーを統合する。もっとも考えられるシナリオは、第1選択マーカーとして遊離型ヘモグロビンを使用することである。血漿中のHb値を測定することで溶血に関する情報が得られ、その情報があれば、溶血の重症度もつかめると考えられる。溶血の程度によっては、酵素値を考慮に入れて、再計算することもできる。
【0068】
分析法が比色定量法(試薬の色の変化)である場合、状況次第では、LDH単独またはLDHと乳酸、ALT、AST、またはマグネシウム等との併用によって、胎児の状態を判断することができる。
【0069】
図8では、固相化学を用いて分析を行う、代替の試験装置の実施形態を示す。図8に示される検査デバイス5の利点は、電源が不要である点である。検査デバイス5には、本体/ケーシングに形成される細長い管が配置される。長形の本体50内部には、ハウジング50の前端近くに配置される前チャンバー52へと開通するチャネル51がある。チャネル51のもう1つの端部、ハウジング50の後端近くには、ポンプデバイス53がある。弾性の中空体の形状をしたポンプデバイス53には、そのアウトレット端部にチェックバルブ54が配置される。アウトレットは、(チェックバルブ54から)使い捨てコンパートメント55へと開通する。ハウジング50の前端にはカラーデバイス56が配置され、中央部にはフィルタ58を介して前チャンバー52と連絡する穴57がある。フィルタは、濾過して血液細胞を取り除く。前端より一定の距離を置いて、チャネル51の一部を形成している、固相化学手段8が配置されるさらなるチャンバー59がある。また、ポンプデバイス53に隣接するチャネル51の一部として、バッファーを生じるさらなるチャンバー501が配置され、チャネル51内の血液7量に関する指標となる。
【0070】
図8に示される検査デバイスは、分娩時の使用に適応している。図8で図示されるとおり、小児の頭皮6に穿刺しして少量の血液7を採取する(それ自体が衆知される)。その後、血液受け7周囲にカラー56を配置することで、検査デバイス5を膣から入れ、血液試料にあてる。次のステップでは、弾性ポンプデバイス53の中空内部から空気を逃がすようにチェックバルブ54が開くポンプ機構53を作動させる。チャネル51を介して血液受け7と連絡するポンプデバイス53開放時に真空が生じ(弾力性のおかげで)、それによって血液はフィルタ58を介してチャネル51に吸引される。したがって、血漿7’は分析チャンバー59に入る。ポンプ機構を何度も適用して十分な検査用血液を確保する。バッファー用チャンバー501中で血液が確認されると、血液量が測定される。その後、検査デバイス5を除去し、分析チャンバー59において化学手段の色を観察することで胎児が低酸素症に陥っているかどうかを確認できる。それ自体が衆知されているように、固相化学手段8を用いて、提示されている色に応じて講じるべき様々な措置を示すことができる。例えば、以下の色を用いて、どの措置を取るべきか示す。緑色が示された場合、取るべき措置はない。赤色が提示された場合、可能な限り迅速に胎児を取り出す。黄色が示された場合、20分以内に新たに試料を採取する。
【0071】
臨床的に、検査デバイス5から上述のような同様の指標が得られる。胎児頭皮から採血するためのキャピラリー管を若干改良した検査デバイス5を併用できることは明らかであるが、好ましくは、採血の際にデバイス5内部に閉鎖システムが生じるようなデザインにする。これは例えばシリコンカラー(図)で胎児の頭部にあてた上端を押すまたはデバイス5を除去して上端に厳封した蓋を装着する(図なし)など、さまざまな方法で実現可能である。
【0072】
われわれは、現在使用されている乳酸検査は、本発明の方法と組み合わせて分析できる。
【0073】
図9において、好ましくは本発明による方法およびデバイスを使用するタイミングに関するフローチャートを示す。フローチャートで示されるとおり、CTGは、好ましくは主要指標として使用すべきである。CTGが正常である場合、通常の措置を取る。しかし、CTGが異常である場合、本発明により胎児の頭皮から直接採血する、あるいは胎児の心臓をST解析することで進めることもできる。
【0074】
本発明は、上述の内容によって制限されるものではないが、添付の請求項の適用範囲内で異なる場合がある。例えば、「胎児血液」、あるいは身体のその他の部位から採取した血液試料の定義は、時に本発明による利益を得るために機能することは、当業者にとって明らかである。本発明と合わせて使用する試料は全血、血漿、および血清である。
【0075】
さらに当業者は、例えばプラスチック等の代わりにガラスまたはその他の適切な材料を使用する等、上の記述から逸脱し、発明の技術を使用せずにさまざまな変更形態を実行可能であることを理解している。
【符号の説明】
【0076】
1デバイス
2使い捨てカード
3検査用分析装置
4ガラス製キャピラリー
5(代替)検査デバイス
6頭皮
7血液試料
7‘血漿
7‘’血液細胞
8固相化学手段
10カニューレ
11膜
12グリッド
13コンパートメントの底部
14コンパートメントの側壁
15導管
16バルブ
20検出セル
21チャンバー
22バーコード
23インターフェース
24試料スプリッタ
25血漿分離デバイス
26プリント試薬
30デバイス
31プロセッサ
32ディスプレイ
33データ出力
34バーコード読み取り装置
35ハウジング
51チャネル
52前チャンバー
53ポンプデバイス
54チェックバルブ
55使い捨てコンパートメント
56カラーデバイス
57穴
58フィルタ
59分析チャンバー
501バッファー用チャンバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料(7)から得られた血漿(7’)中の全乳酸脱水素酵素(LDH)の測定を含んでいて、分娩時の血液試料(7)の採取および低酸素症を確認する少なくとも1つの指標を探すための血液試料(7)の処理を含む胎児頭皮血液における急性低酸素症を確認する、方法。
【請求項2】
前記試料(7)が、5 μL〜60 μLである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記試料(7)が、5 μL〜25 μLである、請求項1の方法。
【請求項4】
前記試料(7)が、約5 μL〜15 μLである、請求項1の方法。
【請求項5】
半透過性膜(11;25)および/またはフィルタ(58)を用いて、血液細胞(7’’)から血漿(7’)を分離することを含む、請求項1〜請求項4のいずれか1つの方法。
【請求項6】
前記膜(11;25;58)の面積が、5 mm〜1000 mm、好ましくは100 mm未満である、請求項5の方法。
【請求項7】
前記膜(11;25:58)の片面に前記試料(7)を負荷するステップと、前記膜のもう1つの面に陰圧をかけるステップと、前記もう1つの面が正面であるコンパートメント(14;20C、D;52)中の血漿(7’)を採取するステップとを含む、請求項5または6の方法。
【請求項8】
前記血漿(7’’)を前記コンパートメント(14;20C、D;52)からLDHを測定する装置および/またはデバイス(59)に移すステップを含む、請求項7の方法。
【請求項9】
前記コンパートメント(20C〜D)に蓄積した前記血漿(7’)中のLDHを測定するステップを含む、請求項7の方法。
【請求項10】
前記膜が、キャピラリー力によって引き寄せられた血漿(7’)が入る多孔質マトリックスに配置または統合される、請求項5の方法。
【請求項11】
前記膜が、前記マトリックスにおいて規定の時間でLDHを測定した後に除去される、請求項10の方法。
【請求項12】
前記試料中の血液細胞から血漿を分離するステップと、LDHを測定するため前記血漿の上清を装置に移すステップとを含む、請求項1〜請求項4の方法。
【請求項13】
このように測定されたLDHと分娩時に非低酸素症状態の胎児から採取された胎児頭皮血液から得られた血漿にて測定されたLDHとを前記比較することをさらに含む、請求項1〜請求項12の方法。
【請求項14】
統計的に有意なLDH高値が低酸素症を示す、請求項13の方法。
【請求項15】
3種類以上の因子による統計的に有意なLDH高値が低酸素性虚血性脳症を示す、請求項13の方法。
【請求項16】
前記頭皮血液(7)および/または前記血漿(7’)中のK、Mg、Ca、AST、ALT、および乳酸からなる前記群の1種類または数種類を測定することをさらに含む、請求項1〜請求項15のいずれかの方法。
【請求項17】
統計的に有意なK、Mg、Ca、AST、ALT、および乳酸高値と統計的に有意なLDH高値は、低酸素症を示す。
【請求項18】
血漿(7’)を分離する手段(25、58)と、LDHを検出するために配置されたコンパートメント(20C、D;59)を含む使い捨てデバイス(2、5)に前記試料(7)が採取される、請求項1〜請求項17のいずれかによる方法。
【請求項19】
前記装置が、ハウジング(17;50;25)と、前記ハウジング内のコンパートメント(14;52;25)と、半透過性膜(11;58;25B)により被覆された前記ハウジングにおける第1開口部と、陰圧手段または導管(15;51)を用いたキャピラリー力手段を用いて前記コンパートメントと連絡する前記ハウジングにおける第2開口部と、陰圧により前記連絡をコントロールするバルブ手段(16;53)とを含む、請求項1〜請求項18のいずれかの前記方法にて、血液細胞から血漿を分離する装置の、使用。
【請求項20】
前記バルブ手段が前記導管(15;51)に配置されていて、好ましくは前記コンパートメントがその底部と連絡するよう配列され、前記コンパートメントの前記底部に蓄積した血漿の排出能を調節する第2のバルブ手段を備えた第2導管をさらに含んでいる、請求項19の使用。
【請求項21】
前記コンパートメントが、前記ハウジング内に蓄積した前記血漿中のLDHを測定する手段を格納する、またはこれと連絡する、請求項19または請求項20の使用。
【請求項22】
前記検査システムが、前記血漿(7’)中の全乳酸脱水素酵素(LDHを間接的または直接的に測定するよう配置される血液試料採取部分(21、33;57)と、血漿分離デバイス(25;58)と、コンパートメント(20C;59)とを備える、請求項1〜請求項18のいずれかによる前記方法を実行するための、検査システム。
【請求項23】
前記受け部分(21、23)がコンパートメントおよびキャピラリー試料採取器(4)用インターフェースを形成する、前記使い捨てデバイス(2)が平らな形体(23)を有している、請求項22による検査システム。
【請求項24】
前記カード上に多数の検出コンパートメント(20A〜20E)が配置されていて、好ましくは試薬を用いて前記コンパートメント(20A〜20C)のいずれか1つが上流コンパートメント(26A〜26E)と連結される、請求項23による検査システム。
【請求項25】
前記インターフェース(23)と前記血漿分離デバイス(25)との間に試料スプリッタ(24)がある、請求項22〜請求項24のいずれかによる、検査システム。
【請求項26】
前記コンパートメント(20A〜20E)が光検出セルの形状をしていて、前記本体(23)が少なくとも1つのデバイス(30A〜30E)に配置される装置(3)に適合するよう形成されている、請求項23および/または請求項24による検査システム。
【請求項27】
前記本体(23)には固有のコード(22)が配置されていて、好ましくは前記装置(3)が読み取り装置(34)を備えている、請求項22による検査システム。
【請求項28】
前記使い捨てデバイス(5)が、視覚的検出用の固相化学手段(8)が配置されたコンパートメントを含む、請求項22による検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2010−505443(P2010−505443A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532327(P2009−532327)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050738
【国際公開番号】WO2008/054303
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509198321)カルマーク スウェーデン アクティエボラグ (1)
【Fターム(参考)】