説明

分子イメージング及び治療用のターゲティング造影剤又はターゲッティング治療剤

この発明は、分子イメージング並びにターゲッティング診断及び治療用のターゲッティング造影剤を合成する方法、ターゲッティング造影剤及びターゲッティング治療剤、並びにそれらの使用を開示する


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲティング造影剤及びターゲッティング治療剤に、並びに、それらの生産及び使用のための方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
医学的な診断における多大な重要性を備えた知られたイメージングの技術は、陽電子射出断層撮影法(PET)、コンピュータ断層撮影法(CT)、核磁気共鳴映像法(MRI)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、及び超音波(US)である。今日のイメージングの技術が、良好に開発されるとはいえ、それらは、ほとんど、正常な組織から病理学的なものを区別する非特異的な、巨視的な、物理的な、生理学的な、又は、代謝的な変化に頼る。
【0003】
ターゲッティング分子イメージング(MI)は、医学的な診断における新しい次元に到達する可能性を有する。用語“ターゲッティング”は、試験管内の又は生体内の関心のある分子(分子のターゲット)への天然の又は合成の配位子(バインダー)の選択的な且つ高特異的なバインディングに関係させられる。
【0004】
MIは、無処置の生体内における細胞の及び亜細胞のレベルでの生物学的な過程の可視の表現、特性決定、及び定量化として定義されることもある急速に明らかになる生物医学的な調査の学問分野である。それは、新規な多学科的な分野であり、その分野において、生じさせられた画像が、細胞の及び分子の経路並びに疾患の原因である分子的な事象を識別することよりもむしろ生理学的に真正の環境の背景内に存在する疾患の生体内の機構を反映する。
【0005】
数個の異なるコントラスト向上剤が、今日知られ、且つ、それらの非特異的な又は非ターゲッティングの形態は、既に臨床的な日常業務である。下に述べられたいくつかの例が、文献に報告される。
【0006】
例えば、W.Krauseによる“Contrast Agents I”(Springer Verlag 2002,page 1及び後に続く頁)(非特許文献1)に従って、Gd錯体を、MRI用の造影剤として使用することができるであろう。さらには、超常磁性の粒子は、コントラスト向上剤の別の例であり、それら粒子を、MRI用の造影剤としてもまた使用することができるであろう(Contrast Media,Superparamagnetic Oxides,Dawson,Cosgrove and Grainger Isis Medical Media Ltd,1999,page 373及び後に続く頁の教科書)(非特許文献2)。W.Krauseによる“Contrast Agents II”(Springer Verlag 2002,page 73及び後に続く頁)(非特許文献3)に記載されたように、気体で充填されたマイクロバブルを、超音波用の造影剤と類似の方式で使用することができるであろう。その上、W.Krauseによる“Contrast Agents II”(Springer Verlag,2002,page 151及び後に続く頁)(非特許文献4)は、X線イメージング用の造影剤としてのヨウ化されたリポソーム又は脂肪酸の使用を報告する。
【0007】
機能的なイメージングにおいて使用することができるコントラスト向上剤は、主として、PET及びSPECT用に開発される。
【0008】
これらの造影剤の一つの例は、デオキシグルコースのような18Fで標識付けられた分子である(Beuthien−Baumann B et al.,(2000),Carbohydr.Res.,327,107)(非特許文献5)。PET用の造影剤としてのこれらの標識付けされた分子の使用は、W.Krauseによる“Contrast Agents II”に記載される(Springer Verlag,2002,page 201及び後に続く頁)(非特許文献6)。しかしながら、それらは、いずれの先行する特異的な細胞の相互作用無しに腫瘍の組織に蓄積するのみである。さらには、抗体又はペプチド類のような99Tcで標識付けられた分子を、SPECT用のターゲッティング造影剤として使用することができるであろう(Verbruggen A.M.,Nosco D.L.,Van Nerom C.G.et al.,99mTc−L,L−エチレンジシステイン:腎性のイメージング剤,Bucl.Med.1992,33,551−557)(非特許文献7)が、しかし、このような錯体分子の標識付けは、非常に困難な且つコストの大きいものである。
【0009】
PET/SPECTにおける使用のために既に存在する数個の他の配位子、例.L−DOPA(ドーパミン受容体,Parkinson)(Luxen A.,Guillaume M,Melega WP,Pike VW,Solin O,Wanger R,(1992)Int.J.Rad.Appl.Instrym.B 19,149)(非特許文献8);セロトニン類似体(セロトニン受容体)(Dyck CH, et al.,2000,J.Nucl.Med.,41,234)(非特許文献9);ソマトスタチン類似体(ソマトスタチン,腫瘍学)(Maecke,H.R.et al.,Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging,2004,Mar.17)(非特許文献10)、インテグリン受容体用のペプチド(血管形成)(Wicklinde,S.A.et al.,Cancer Res.,2003 Sep.15,63(18),5838−43(非特許文献11);Wicklinde,S.A.et al.,Circulation 2003 Nov.4,108,(18),2270−4)(非特許文献12)についても、同じことを、言うことができる。
【0010】
その上、アリールボロン酸とのイミダゾール類のCuで触媒された反応(例.Collman,Zhong,Organic Letters,2000,vol.2,no.9,1233−1236)(非特許文献13)もまた報告されてきた。
【0011】
しかしながら、疾患の原因である特異的な分子の事象の識別は、医学においてますます重要になっている。従って、生体内で又は試験管内である一定の組織において特異的にコントラストを向上させる材料を豊富にするための且つ分子病理学への洞察を可能にする分子の認識の機構が備え付けられるターゲッティング剤は、同様にして、診断に本質的な且つ未来の治療である。
【非特許文献1】W.Krause,“Contrast Agents I”,Springer Verlag 2002,page 1〜
【非特許文献2】Contrast Media,Superparamagnetic Oxides,Dawson,Cosgrove and Grainger Isis Medical Media Ltd,1999,page 373〜
【非特許文献3】W.Krause,“Contrast Agents II”,Springer Verlag 2002,page 73〜
【非特許文献4】W.Krause,“Contrast Agents II”,Springer Verlag,2002,page 151〜
【非特許文献5】Beuthien−Baumann B et al.,(2000),Carbohydr.Res.,327,107
【非特許文献6】W.Krause,“Contrast Agents II”,Springer Verlag,2002,page 201〜
【非特許文献7】Verbruggen A.M.,Nosco D.L.,Van Nerom C.G.et al.,Bucl.Med.1992,33,551−557
【非特許文献8】Luxen A.,Guillaume M,Melega WP,Pike VW,Solin O,Wanger R,(1992)Int.J.Rad.Appl.Instrym.B 19,149)
【非特許文献9】Dyck CH, et al.,2000,J.Nucl.Med.,41,234
【非特許文献10】Maecke,H.R.et al.,Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging,2004,Mar.17
【非特許文献11】Wicklinde,S.A.et al.,Cancer Res.,2003 Sep.15,63(18),5838−43
【非特許文献12】Wicklinde,S.A.et al.,Circulation 2003 Nov.4,108,(18),2270−4
【非特許文献13】Collman,Zhong,Organic Letters,2000,vol.2,no.9,1233−1236
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、本発明の目的は、鑑別診断のみならず高い感度及び特定性を備えた早期の診断を可能にする、新しい世代の改善された造影剤を提供すること、及び、前記の改善された造影剤を生産するためにあまり高価な且つ時間を浪費するものではない方法を提供することである。この点において、生産の工程及び生産されたターゲッティング剤を提供すること、それによって、それらを、短い時間内に且つ費用及び労働力に関する低い努力で解決する必要がある現実に起こる問題に容易に適合させることができることは、また、好都合であろう。イメージング診断についてのそれらの可能性は別として、ターゲッティング造影剤は、また、新しい治療論の開発において重大な役割を果たすことになる。このようなターゲッティング治療剤は、現在、利用可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、都合良くは、以下に記載されたように、本発明によって解決され、且つ、付加的に、特許請求の範囲及び例において定義される。好適な非限定的な変形は、図に記載され、且つ、本発明の説明に使用される。
【0014】
本発明は、ターゲッティング造影剤又は治療剤の生産用の方法に関係し、その方法は、
a)コアを提供する;
b)自由選択で、そのコアにシェルを加える;
c)バインディングユニットの少なくとも一つの分子を付けることによってそのコア又はそのシェルを修飾する;及び
d)適当な触媒を使用することによって、少なくとも一つのイミダゾール官能性をもつ、少なくとも一つの配位子を、その修飾されたコア又はその修飾されたシェルへ、連結する
:のステップを含む。
【0015】
前記の方法のさらなる実施形態においては、一つよりも多いシェルを、ステップb)において、そのコアへ加えることができる。言い換えれば、その外側のシェルを、一つから数個の内側のシェルによって、そのコアから分離することができる。本発明の好適な実施形態において、そのコアを、1個から100個までの内側のシェルによって、より好ましくは、1個から50個までの内側のシェルによって、その外側のシェルから分離することができる。そのシェル又はそれらシェルは、単層又は多層を含むこともある。これらのシェルの各々(それらシェルは、本発明の好適な実施形態において適当な材料の単層又は多層を含むこともある)は、約0.5nmから100nmまでの厚さを有する。本発明の好適な実施形態においては、各々のシェルは、約0.5nmから500nmまでの厚さを有する。さらには、各々のシェル又は数個のシェルでさえも、同じ材料又は異なる材料を含むこともある。
【0016】
本発明のさらなる変形において、そのシェル又はそれらシェルは、少なくとも部分的にそのコアを覆うこともある。これは、好ましくは、例.有機高分子(例.ポリエチレングリコール/PEG、ポリビニルアルコール/PVA、ポリアミド、ポリアクリラート、ポリ尿素)、官能性の末端基を備えた有機高分子(例.1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩)、生体高分子(例.デキストラン、キシラン、グリコーゲン、ペクチン、セルロースのような多糖類、又は、コラーゲン、グロブリンのようなポリペプチド)、システイン若しくは高いシステインの含有率を備えたペプチド、又は、リン脂質は、単数のシェル又は複数のシェルとして使用されるときの事例である。本発明の意味では、そのコアにシェルを加えるステップは、そのコアを完全に囲むこと、いくつかの明瞭なエリアのみを、及び、好ましくはこれらの状況の間における全ての範囲を、覆うことを意味する。
【0017】
ターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤の生産用の現行の方法の好都合な変形は、従属請求項に定義される。
【0018】
詳細には、本発明は、以下に記載されるように数個の特に好都合な変形を提供する。
【0019】
− “コア”:本ターゲッティング造影剤のコントラストを向上させる部分及び/又は治療的な部分として適切な材料。前記のコアは、連結するユニットとして使用されたポリペプチドの特定の構造のために、配位子と共有結合性の及びイオン性の結合を有する。
【0020】
− “単数のシェル又は複数のシェル”:シェルとして使用される材料に依存して、そのターゲッティング造影剤の良好な分散を可能にすることができる材料は、それの毒性を減少させることができるものであるか、又は、悪影響を予防することができる。ナノ粒子が、そのコアと使用されるとすれば、適当なシェル(例.ZnSのシェル)の使用は、それらナノ粒子の表面の欠陥の数を低減することができる。これらの欠陥は、それらナノ粒子によって発生させられたコントラストをかなり低減する。従って、欠陥の数の低減は、より良好なターゲッティングコントラスト向上剤に至る。
【0021】
本発明の状況においては、“コア”及び“修飾されたコア”を、類義語として使用することができ、且つ、“修飾されたコア”は、少なくとも一つの付けられたバインディングユニットによって修飾されたコアである。
【0022】
本発明の状況においては、“単数のシェル又は複数のシェル”及び“修飾された単数のシェル又は複数のシェル”を、類義語として使用することができ、且つ、“修飾されたシェル”は、少なくとも一つの付けられたバインディングユニットによって修飾されたシェルである。
【0023】
本発明の状況においては、“バインディングユニット”は、アリールボロン酸、超原子価アリールシロキサン、又は、ヨードベンゼンの少なくとも一つの分子であることが、理解される。本発明の好適な実施形態においては、シェル、修飾されたシェル、及び修飾されたコアの組み合わせは、バインディングユニットである(例.PEGシェルによって部分的に覆われた修飾されたコア、PEGシェルによって部分的に覆われた且つアリールボロン酸に連結されたカルボン酸で修飾されたシェルによって部分的に覆われたコア)。
【0024】
表現“配位子”を、バインダーと共に、又は、好ましくは生物学的に活性な配位子と共に、本発明の状況においては、類義語として使用することができる。
【0025】
本発明の状況においては、“適当な触媒”は、例.Cuに基づいた触媒である。前記の触媒は、好ましくは穏やかな条件で、コア又はそのコアへ付けられた単数のシェル若しくはシェルへ付けられた、アリールボロン酸、超原子価のアリールシロキサン、又はヨードベンゼンへ少なくとも一つのヒスチジンユニットをもつ配位子(例.ポリ−HISタグ)を共有結合的に連結させることによって、ターゲッティング造影剤の合成を可能にする。
【0026】
“穏やかな条件”は、好ましくは技術で知られた条件を意味することが、理解され、それら条件の下では、その配位子は、それの活性及び特異性を、それぞれ、例.水溶液又は血液若しくは血清様の溶液における条件、生理学的なpHの値及び室温を、保持することになる。
【0027】
本発明は、さらに、ターゲッティング造影剤及びターゲッティング治療剤並びにそれらの使用に関係する。
【0028】
そのターゲッティング造影剤は、非限定的な例によって本発明を記述する、以下に続く特性を有する。
【0029】
コントラストを向上させる材料に依存して、そのターゲッティング造影剤を、MRI、US、SPECT、CT、PET、光学的なイメージング、又は、PET/CTと同様の多様式のアプローチのような異なるイメージングの手順において適用することができる。
【0030】
そのターゲッティング造影剤は、コントラストを向上させるコア(例.磁気のナノ粒子)又は安定性及び/又は生体適合性を改善するために及び/又は生体内での毒性を低減するために一つ又はより多くのシェル(例.PEGシェル)によって覆うことができる治療的なコアを含む。
【0031】
ナノ粒子が、そのコアとして使用されるとすれば、これらの粒子の大きさは、約1nmから200nmまで変動することもある。本発明の好適な実施形態においては、それら粒子の大きさは、1nmから100nmまで変動することもある。
【0032】
高分子が、シェルとして使用されるとすれば、これらの高分子の分子量は、200g/molから200,000g/molまで変動することもある。本発明の好適な実施形態においては、これらの高分子の分子量は、200g/molから100,000g/molまで変動することもある。
【0033】
そのターゲッティング造影剤は、ターゲッティング配位子を含む。
【0034】
さらなる実施形態においては、それらターゲッティング造影剤又はそれらターゲッティング治療剤は、その配位子に連結された、修飾されたコア又は修飾された単数のシェル若しくは複数のシェルを含む。
【0035】
そのターゲッティング造影剤は、配位子を含み、その配位子は、生体内における又は試験管内におけるターゲット分子を特異的に認識することができるものである。
【0036】
ターゲッティング造影剤の本合成の一つの利点は、そこでは、その修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェルが、ヒスチジンとボロン酸、超原子価のアリールシロキサン又はヨードベンゼンの触媒された反応によって、その配位子(バインダー)へ共有結合させられるが、この反応によって形成される結合が、生体内でさえも、特に安定であるというものである。このように、その配位子及びその修飾されたコアは、生体内で連結されたままであり、望まれないエリア(例.組織)の造影を回避する。
【0037】
その修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェルとその配位子との間の記述された結合を、水性の媒体において穏やかな条件の下で発生させることができるが、そのことは、その配位子が、それの十分な生物学的な活性を保つことを可能にする。これは、その反応を、室温で水中における銅の触媒によって触媒することができるために、及び、その修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェル及びその得られたターゲッティング造影剤が、水又は血液若しくは血清に溶解性であるために、可能である。これらの穏やかな反応条件は、その配位子が変性させられないことを可能にする。
【0038】
その修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェル及びその配位子の“連結させること”を、その配位子へ合成で付けられたポリヒスチジンのタグ(“HISタグ”:6個のヒスチジンのアミノ酸の伸張)を使用することによって、行うことができる。ペプチド類、タンパク質、酵素、及び抗体と同様の生体分子は、しばしば日常的に、例.アフィニティー・クロマトグラフィーを介して、これらの生体分子を精製することを助けるこのようなポリヒスチジンのタグと共に合成される。本発明は、その修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェルへ少なくとも一つの配位子を連結するためのこれらのヒスチジンのタグの使用を可能にする。このように、別のタグをその配位子へ加える必要がない。従って、それら配位子の合成は、単純化される。加えて、合成の後におけるその配位子へ付けられたポリヒスチジンのタグは、それら配位子の合成の後における付加的な精製のステップの間に消化されること又は分裂することを必要ではない。
【0039】
その配位子へのその修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェルの“連結させること”を、サイト特異的に、例.HISタグサイトで、行うことができる。従って、その配位子の認識の中心は、それの活性を保持することになる。それらポリヒスチジンのタグを、制御された且つ選択的な方式で(例えば、配位子として役に立つ、アミノ酸配列のいずれの与えられたアミノ酸における選択性も)その配位子におけるどの場所でも固定することができるので、その配位子は、それの活性を保ち、このようにその配位子の失活を回避すると共にこのようにその配位子における望まれないサイトへのその修飾されたコア又はその修飾された単数のシェル若しくは複数のシェルの連結もまた回避する。
【0040】
記述した方法を、同様にしてターゲッティング治療剤へ移すことができる。この発明において記述された方法は、穏やかな反応条件のために、いずれの配位子にも及びいずれのコアにも潜在的に適用可能であり、いずれのタイプのターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤の調製のための非常に多角的な且つ容易に適合可能な系を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本ターゲッティング造影剤の最も好適な変形は、図1に概略的に記載される。
【0042】
詳細な図の説明
図1:
コア(1):例.以下のもの:用の(これらに限定されない)コントラストを向上させる材料;又は治療的な材料
− MRI:例.(これらに限定されない)鉄(Fe)、鉄の酸化物γ−Fe若しくはFe、又は、スピネル構造を備えたフェライトMFe(M=Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd)若しくはガーネット構造を備えたフェライトMFe12(M=Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、若しくは磁鉛鉱構造を備えたフェライトMFe1219(M=Ca、Sr、Ba、Zn)、若しくは例.BaFe1222(M=Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Mg)のような他の六方晶系のフェライト構造のような強磁性の、反強磁性の、フェリ磁性の、又は超常磁性の材料;全ての場合において、そのコアを、付加的な0.01から5.00モル%までのMn、Co、Ni、Cu、Zn、又はFでドープすることができる。
【0043】
− 常磁性のイオン(例.ランタニド、マンガン、鉄、銅)に基づいたコントラストを向上させるユニット、例.Gd(DTPA)、Gd(BMA−DTPA)、Gd(DOTA)、Gd(DO3A)のようなガドリウムキレート類;オリゴマーの構造;アルブミンGd(DTPA)20−35、デキストランGd(DTPA)、Gd(DTPA)−24−カスケードポリマー、ポリリジン−Gd(DTPA)、MPEGポリリジン−Gd(DTPA)のような巨大分子の構造;ランタニドに基づいたコントラストを向上させるユニットのデンドリマーの構造;Mn(DPDP)、Mn(EDTA−MEA)、ポリ−Mn(EED−EEA)、及びポリマーの構造のようなマンガンに基づいたコントラストを向上させるユニット;例.リポソームのGd(DTPA)のような常磁性のイオンの担体としてのリポソーム類;非プロトン性のイメージング剤;
光学的なもの:例.(これらに限定されない)ナノ発光体(例.希土類でドープされたYPO又はLaPO)のような発光材料又は(量子ドット;例.CdS、CdSe、ZnS/CdSe、ZnS/CdSと称された)半導体性のナノ結晶;カルボシアニン色素;テトラピロールに基づいた色素(ポリフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、及び関係した構造);デルタアミノレブリン酸;蛍光性のランタニドキレート類;フルオレセイン若しくは5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン−イソチオシアナート(FITC)又はOregon Green、ナフトフルオレセインのような他のフルオレセインに関係した蛍光体;
− US:例.(これらに限定されない)(AmershamからのOptison、ScheringからのLevovistのような)シェル(例.タンパク質、脂質、界面活性剤、又はポリマー)にカプセル化された気体(例.空気、ペルフルオロプロパン、ドデカフルオロカーボン、六フッ化硫黄、ペルフルオロカーボン)の泡;シェル(例.タンパク質、脂質、界面活性剤、又はポリマー)にカプセル化された小滴;ナノ粒子(例.白金、金、タンタル);
− X線:例.(これらに限定されない)例.2,4,6−トリ−ヨードベンゼンのイオン性の及び非イオン性の誘導体のようなヨウ化されたコントラストを向上させるユニット;硫酸バリウムに基づいたコントラストを向上させるユニット;例.ガドリニウムに基づいた化合物のような金属イオンキレート類;高い割合のヨウ素を備えたホウ素クラスター類;ヨウ化された多糖類、ポリマーのトリヨードベンゼン類のような高分子;低い水溶性を示すヨウ化された化合物からの粒子;ヨウ化された化合物を含有するリポソーム類;トリグリセリド類、脂肪酸のようなヨウ化された脂質;
− PET:例.(これらに限定されない)例.18F−FDG(グルコース代謝);11C−メチオニン、11C−チロシン、18F−FMT、18F−FMT、又は18F−FET(アミノ酸);18F−FMISO、64Cu−ATSM(低酸素症);18F−FLT、11C−チミジン、18F−FMAU(増殖)のような11C、13N、15O、66/8Ga、60Cu、52Fe、55Co、61/2/4Cu、62/3Zn、70/1/4As、75/6Br、82Rb、86Y、89Zr、110In、120/4I、122Xe、及び18Fに基づいたトレーサー;
− SPECT:例.(これらに限定されない)例.99mTc、123/5/131I、67Cu、67Ga、111In、201Tlのような放射性ヌクレオチドに基づいたコントラストを向上させるユニット;
− 治療的な材料:例.(これらに限定されない)毒素、放射性同位体、及び化学療法剤;YPO:PrのようなUV−Cを放出するナノ粒子;例.拡張されたポルフィリンの構造に基づいた化合物のような光線力学的治療(PDT)剤;例.157Sm、177Lu、212/3Bi、186/8Re、67Cu、90Y、131I、114mIn、At、Ra、Hoのような放射線治療用のヌクレオチド類;
− 例.(これらに限定されない)化学交換飽和移動(CEST);温度感受性MRI造影剤(例.リポソームのもの);pH感受性のMRI造影剤;酸素圧力又は酵素応答性のMRI造影剤;金属イオン濃度依存性MRI造影剤:のような小さいコントラストを向上させるユニット;
− 多様性:上記のものの組み合わせ
− 単数のシェル又は複数のシェル(2):は、例.(これらに限定されない)カルボン酸、酸ハロゲン化物、アミン類、酸無水物、活性化されたエステル類、マレイミド類、イソチオシアナート類、金、SiO、ポリホスファート(例.ポリリン酸カルシウム)、アミノ酸(例.システイン)、有機高分子(例.ポリエチレングリコール/PEG、ポリビニルアルコール/PVA、ポリアミド、ポリアクリラート、ポリ尿素)、有機の官能性の高分子(例.1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩)、生体高分子(例.デキストラン、キシラン、グリコーゲン、ペクチン、セルロースのような多糖類若しくはコラーゲン、グロブリンのようなポリペプチド)、システイン若しくは高いシステインの含有率を備えたペプチド、又はリン脂質を含むこともある。
【0044】
− 一個から数個のシェル、好ましくは、1個から100個までのシェル(2)を、そのコア、より好ましくは1個から50個の内側のシェルへ加えることができる。これらのシェルの各々(そのシェルは、本発明の好適な実施形態において適当な材料の単層又は多層を含むこともある)は、約0.5nmから100nmまでの厚さを有する。本発明の好適な実施形態においては、各々のシェルは、約0.5nmから500nmまでの厚さを有し、且つ、異なる材料で又は同じ材料で作られることができる。さらには、そのシェルは、少なくとも部分的に、そのコアを覆うことができる。
【0045】
− 単数又は複数のバインディングユニット(3):例.(これらに限定されない)アリールボロン酸、生体配位子(例.抗体又は抗体のフラグメント、ペプチド、小さい分子)のヒスチジンユニット(例.ポリ−HISタグ)との共有結合的なカップリングを媒介するアリールボロン酸の官能性を含むシェル
例.(これらに限定されない)超原子価のアリールシロキサン類、生体配位子(例.抗体又は抗体のフラグメント、ペプチド、小さい分子)のヒスチジンユニット(例.ポリ−HISタグ)との共有結合的なカップリングを媒介する超原子価のアリールシロキサン類を含むシェル
例.(これらに限定されない)ヨードベンゼン、ヨードベンゼンを含むシェル、又は、生体配位子(例.抗体又は抗体のフラグメント、ペプチド、小さい分子)のヒスチジンユニット(例.ポリ−HISタグ)との共有結合的なカップリングを媒介するシェルへの少なくとも一つのヨードベンゼンの結合
加えて、タンパク質のようなさらなる生体分子を、例.細胞膜(例.HIVタグペプチド、など)を通じた完全な集合体の通過を可能とすることで、生体適合性を増加させることで、又は、毒性を減少させることで、組み込むことができる。
【0046】
− 配位子(4):
− 例.(これらに限定されない)配位子、その配位子は、(例.抗体抗原相互作用によって)それの特異的な認識機構を通じて、関心のある明瞭な組織又はターゲット領域における造影剤の濃縮を含む
− 例.(これらに限定されない)配位子、その配位子は、付けられたポリ−HISタグを有する
− ターゲッティングユニットは、
− 例.(これらに限定されない)トラスツズマブ(乳ガン)、リツキシマブ(非ホジキンリンパ腫)、アレムツズマブ(慢性的なリンパ性白血病);ゲムツズマブ(急性の骨髄性の白血病);エドレコロマブ(大腸癌);イブリツモマブ(非ホジキンリンパ腫);セツキシマブ(大腸癌);トシツモマブ(非ホジキンリンパ腫);エプラツズマブ(非ホジキンリンパ腫);ベバシズマブ(肺及び大腸癌);抗−CD33(急性の骨髄性の白血病);ペムツモマブ(卵巣及び胃癌);ミツモマブ(肺及び皮膚癌);抗−MUC1(腺癌);抗−CEA(腺癌);抗−CD64(溶菌斑)、などのような抗体(単クローン性のもの、多クローン性のもの、マウスのもの、マウス−ヒトのキメラのもの、ヒトのもの、単鎖、二重特異性抗体、など)
:であることもある。
【0047】
− 例.(これらに限定されない)ペプチド類;ポリペプチド類、ソマトスタチン類似体、血管作用性のペプチド類似体、ニューロペプチドY、RGDペプチド、などのような擬ペプチド類
− 例.(これらに限定されない)アネキシンV、組織プラスミノーゲン活性化因子のタンパク質、輸送タンパク質、などのようなタンパク質
− 例.(これらに限定されない)巨大分子、例.ヒアルロナン、アプシタイド、デルマタン硫酸塩
− 例.(これらに限定されない)アパタマー、アンチセンスDNA/RNA、/PNA、低分子干渉性RNA、などのような核酸
− 例.(これらに限定されない)リン脂質などのような脂質
− 例.(これらに限定されない)レクチン類、例.白血球刺激性レクチン
− 例.(これらに限定されない)多糖類
− 触媒
− 例.(これらに限定されない)イミダゾールの官能性とのアリールボロン酸の官能性の反応を触媒すると共に、生体配位子が、カップリング反応(例.水溶液、pH=7、室温)の間に損傷されないという点で反応の窓を許容する、例.[Cu(OH)TMEDA]Cl;(TMEDA=テトラメチルエチレンジアミン)例えば、Collman,Zhong,Zeng,Costanza,J.Org.Chem.,2001,66,1528−1531を参照のこと。
【0048】
− 例.(これらに限定されない)イミダゾールの官能性との超原子価のアリールシロキサンの反応を触媒すると共に、生体配位子が、カップリング反応の間に損傷されないという点で反応の窓を許容する、例.Cu(AcO)、例えば、Lam,Deudon,Averill,Li,He,DeShong,Clark,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,7600−7601を参照のこと。
【0049】
− 例.(これらに限定されない)イミダゾールの官能性とのヨードベンゼンの反応を触媒する、例.[Cu(OH)TMEDA]Cl;例えば、Lam,Deudon,Averill,Li,He,DeShong,Clark,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,7600−7601を参照のこと。
【0050】
− ターゲッティング造影剤又は治療剤(5)
− 例.(これらに限定されない)コントラストを向上させる又は治療的なコア、異なる官能性を備えたシェル、カップリングユニット(フェニルイミダゾール)、及び特異的なターゲッティング配位子からなる
図2:o−アシルイソ尿素の中間体を形成する(室温,pH〜5)ための、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)との、そのコアに連結された、カルボン酸のワンポット反応による、フェニルボロン酸でのコントラストを向上させるユニット(COOHで被覆されたCdSe/ZnSの量子ドット)の表面の修飾についての反応スキーム この中間体は、スルホ−NHSエステルの中間体を与えるように、スルホ−NHSと反応する。過剰のEDCは、2−メルカプトエタノールの追加によって消滅させられる。最後に、3−アミノフェニルボロン酸との反応は、所望のアミド結合に至る(室温、pH〜7)。
【0051】
図3:
Collmann et al.(J.Org.Chem.,2001,66,1528−1531)に従って行われたイミダゾールとのp−トリルボロン酸のカップリングについての反応スキーム
図4:
イミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物の吸光度が、250ナノメートルと500ナノメートルとの間の入射する放射の(nmでの)波長の関数として(任意単位で)測定される。UV/Vの間に見られた差異は、二つの出発の生産物(イミダゾール及びp−トリルボロン酸)のスペクトル並びに、反応の後に得られた、カップリング生産物のスペクトルであり、そのカップリングが、記述された条件の下で起こることを証明する。
【0052】
図5:
クロロホルム、イミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物の透過性が、0cm−1と4000cm−1との間の、及び、1000cm−1と1500cm−1との間の、入射する放射の(cm−1での)波数の関数として(任意単位で)測定される。二つの出発の生産物(イミダゾール及びp−トリルボロン酸)の溶媒(クロロホルム)のFTIRスペクトルと、反応の後に得られたカップリング生産物のスペクトルとの間に見られた差異は、そのカップリングが、記述された条件の下で起こることを証明する。
【0053】
図6:
イミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物について記録された信号の強度が、ガスクロマトグラフィーによる(カップリング反応によって得られた)1−(4−トリル)イミダゾールの単離の後に、質量分析による(m/z単位での)質量の関数として(任意単位で)測定される。記述された条件の下でのイミダゾールとのp−トリルボロン酸のカップリングによって得られた、1−(4−トリル)イミダゾールのGC/MSスペクトルとスペクトル登録集に見出された1−(3−トリル)イミダゾールのGC/MSスペクトルの間の類似性は、所望のカップリング生産物が得られることを証明する。
【0054】
図7:
イミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物の信号の強度が、NMRによって(ppmでの)化学シフトの関数として測定される。二つの出発の生産物(イミダゾール及びp−トリルボロン酸)の溶媒(クロロホルム)のNMRスペクトルと反応の後に得られた、カップリング生産物のスペクトルとの間に見られた差異は、そのカップリングが、記述された条件の下で起こることを証明する。
【0055】
図8:
室温での[Cu(OH)TMEDA]Clによって一晩中触媒された、(His)−Ahx−FITCタグのヒスチジンユニットとのp−トリルボロン酸の反応を介した、(His)−Ahx−FITCとのp−トリルボロン酸のカップリングについての反応スキーム。
【0056】
図9:
反応の後に得られた生産物について記録された信号の強度は、MALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間)質量分析によって(m/z単位での)質量の関数として(任意単位で)測定される。(His)−Ahx−FITCとのp−トリルボロン酸のカップリング反応の後に得られた、その生産物のMALDI−TOFスペクトルは、そのカップリングが、記述された条件の下で起こることを証明する。所望のカップリング生産物(p−トリル−His−Ahx−FTC)に対応するm/z=1433でのピークは、この生産物の形成を証明する。
【0057】
図10:
o−アシルイソ尿素の中間体を形成するための、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩との、コントラストを向上させるユニットへ連結された、カルボン酸のワンポット反応による、フェニルボロン酸でのコア(18Fで標識を付けられた分子)の修飾についての反応スキーム(室温、pH〜5)。この中間体は、スルホ−NHSエステルの中間体を与えるために、スルホ−NHSと反応する。過剰のEDCは、2−メルカプトエタノールの追加によって、消滅させられる。最後に、3−アミノフェニルボロン酸との反応は、所望のアミド結合に至る(室温、pH〜7)。
【0058】
例:
【実施例1】
【0059】
例1:
CdSe/ZnS量子ドット(コア)を、一方の末端でカルボン酸の機能を且つ他方の末端で1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンの機能をもつ水溶性の高分子によって、酸によってカルボン酸の官能性で表面修飾した。
【0060】
COOHで被覆された量子ドットは、混合することによって得られた(50℃で4時間):
− 100μlのCdSe/ZnS(クロロホルム中、1重量/体積%)
− 100μlのクロロホルム
− 200μlのDPPC(5mM)−DPPC=1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン
200μlのDSPE−PEG2000−COOH(5mM)−DPSE−PEG2000−COOH:
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩、
並びに、真空によってクロロホルムを最後に取り除くこと、及び、超音波処理によって水にCOOHで被覆された量子ドットを分散させること
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンの末端基による疎水性の相互作用(又は吸着)によって、ナノ粒子の表面に結び付く。さらには、その1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩は、カルボキシの機能を提供し、その機能は、カルボン酸を得るために、酸のpHで、プロトン化される。
【0061】
DPPCは、それらナノ粒子に固定されたCOOHの機能の間にスペースを残すためのダミー(又はスペーサー)として使用される。現実に、COOHの機能によってのみ全体のナノ粒子の表面の覆いは、相互作用を作り出すことによって悪影響を、且つ、従って、体の望まれない組織又は望まれないエリアでのコントラストを、有し得るであろう。
【0062】
1)フェニルボロン酸でのシェルの表面修飾
コントラストを向上させるユニットを、カルボン酸を介したカップリングによって、ボロン酸の官能性で表面修飾することができる。
【0063】
他の例は、例.活性化されたエステルを介した、マレイミドを介した、又は、イソチオシアナートを介した、カップリングであるであろう。
【0064】
これは、水溶性のCdSe/ZnS量子ドットを修飾することによって、実験的になされる:
− 55μlの水
− 40μlの10倍のPBS溶液(PBS=リン酸塩緩衝液の生理食塩水:0.01Mのリン酸塩緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム、pH7.4)
− 100μlの0.1MのEDC溶液(EDC=1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)
− 5μlの20mMのスルホ−NHS溶液(N−ヒドロキシスルホスクシンイミドのナトリウム塩)
− 200μlの2μMのCdSe/ZnS(COOHで末端処理された)溶液
− 室温での温置(30分)
− 10μlの2−メルカプトエタノール
− 15分間の混合
− 50μlの20mMの3−アミノフェニルボロン酸の溶液
− 室温での混合(2時間)
− 遠心分離によるQDの分離
反応スキーム、図2を参照のこと。
【0065】
1)イミダゾールとのp−トリルボロン酸のカップリング
初期のステップとして、文献に記載されたイミダゾールとのトリルボロン酸の反応を、首尾良く再現した。Collmann et al.(J.Org.Chem.,2001,66,1528−1531)に従って行われた合成。
【0066】
反応スキーム、図3を参照こと。
【0067】
2)(His)−Ahx−FITCとのp−トリルボロン酸のカップリング
イミダゾールとのフェニルボロン酸の触媒された反応を、ポリ−HISタグを備えたペプチドとのフェニルボロン酸の反応に適合させることができ、その反応を、実験的に証明することができるであろう:
合成:
− 19μlの100μMの[Cu(OH)TMEDA]Clの溶液
− 38μlの1mMのp−トリルボロン酸の溶液
− 31.9μlのHis−Ahx−FITC(0.8mg/ml)(His=オリゴヒスチジン;Ahx=6−アミノヘキサ炭酸;FITC=フルオレセインイソチオシアナート(IsomerIK))
− 1911.1μlの水
− 酸素雰囲気における温置(室温で一晩中)
反応スキーム、図4を参照のこと。
【実施例2】
【0068】
例2:ボロン酸によって修飾された18Fで標識を付けられた分子:
これは、
− 55μlの水
− 40μlの10倍のPBS溶液(PBS=リン酸塩緩衝液の生理食塩水:0.01Mのリン酸塩緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム、pH7.4)
− 100μlの0.1MのEDC溶液(EDC=1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)
− 5μlの20mMのスルホ−NHS溶液(N−ヒドロキシスルホスクシンイミドのナトリウム塩)
− 200μlの2μMのF−18−L−DOPA溶液
− 室温での温置(30分)
− 10μlの2−メルカプトエタノール
− 15分間の混合
− 50μlの20mMのm−アミノフェニルボロン酸
− 室温での混合(2時間)
− 遠心分離による副産物の除去
:によって実験的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本ターゲッティング造影剤の最も好適な変形を概略的に記載する。
【図2】図2は、フェニルボロン酸でのコントラストを向上させるユニットの表面の修飾についての反応スキームを示す。
【図3】図3は、イミダゾールとのp−トリルボロン酸のカップリングについての反応スキームを示す。
【図4】図4は、入射する放射の(nmでの)波長の関数として(任意単位で)測定されるイミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物の吸光度を示す。
【図5】図5は、入射する放射の(cm−1での)波数の関数として(任意単位で)測定されるクロロホルム、イミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物の透過性を示す。
【図6】図6は、質量分析による(m/z単位での)質量の関数として(任意単位で)測定されるイミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物について記録された信号の強度を示す。
【図7】図7は、NMRによって(ppmでの)化学シフトの関数として測定されるイミダゾール、p−トリルボロン酸、及びそのカップリング生産物の信号の強度を示す。
【図8】図8は、(His)−Ahx−FITCとのp−トリルボロン酸のカップリングについての反応スキームを示す。
【図9】図9は、MALDI−TOF質量分析によって(m/z単位での)質量の関数として(任意単位で)測定される、反応の後に得られた生産物について記録された信号の強度を示す。
【図10】図10は、フェニルボロン酸でのコア(18Fで標識を付けられた分子)の修飾についての反応スキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲッティング造影剤又は治療剤の生産用の方法であって、
当該方法は、
a)コアを提供する;
b)自由選択で該コアにシェルを加える;
c)バインディングユニットの少なくとも一つの分子を付けることによって該コア又は該シェルを修飾する;及び
d)適当な触媒を使用することによって、該修飾されたコア又は該修飾されたシェルへ、少なくとも一つのイミダゾールの官能性をもつ、少なくとも一つの配位子を連結する
:のステップを含む、方法。
【請求項2】
ステップb)において、一つよりも多いシェルが、前記コアへ加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単数のシェル又は複数のシェルは、単層又は多層を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各々のシェルは、同じ材料又は異なる材料を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記単数のシェル又は複数のシェルは、少なくとも部分的に前記コアを覆う、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コアとして使用された材料は、鉄(Fe)、鉄の酸化物γ−Fe若しくはFe、又は、スピネル構造を備えたフェライトMFe(M=Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd)若しくはガーネット構造を備えたフェライトMFe12(M=Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、若しくは磁鉛鉱構造を備えたフェライトMFe1219(M=Ca、Sr、Ba、Zn)、若しくはBaFe1222(M=Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Mg)のような他の六方晶系のフェライト構造;のような強磁性の、反強磁性の、フェリ磁性の、又は超常磁性の材料:より選択され、
全ての場合において、前記コアを、付加的な0.01から5.00モル%までのMn、Co、Ni、Cu、Zn、又はF;常磁性のイオン(例.ランタニド、マンガン、鉄、銅)に基づいたコントラストを向上させるユニット、例.Gd(DTPA)、Gd(BMA−DTPA)、Gd(DOTA)、Gd(DO3A)のようなガドリウムキレート類;オリゴマーの構造;アルブミンGd(DTPA)20−35、デキストランGd(DTPA)、Gd(DTPA)−24−カスケードポリマー、ポリリジン−Gd(DTPA)、MPEGポリリジン−Gd(DTPA)のような巨大分子の構造;ランタニドに基づいたコントラストを向上させるユニットのデンドリマーの構造;Mn(DPDP)、Mn(EDTA−MEA)、ポリ−Mn(EED−EEA)、及びポリマーの構造のようなマンガンに基づいたコントラストを向上させるユニット;リポソームのGd(DTPA)のような常磁性のイオンの担体としてのリポソーム類;非プロトン性のイメージング剤でドープすることができる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コアとして使用された材料は、ナノ発光体(例.希土類でドープされたYPO又はLaPO)のような発光材料又は(量子ドット;例.CdS、CdSe、ZnS/CdSe、ZnS/CdSと称された)半導体性のナノ結晶;カルボシアニン色素;テトラピロールに基づいた色素(ポリフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、及び関係した構造);デルタアミノレブリン酸;蛍光性のランタニドキレート類;フルオレセイン若しくは5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン−イソチオシアナート(FITC)又はOregon Green、ナフトフルオレセインのような他のフルオレセインに関係した蛍光体:より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コアとして使用された材料は、(AmershamからのOptison、ScheringからのLevovistのような)カプセル化された気体(例.空気、ペルフルオロプロパン、ドデカフルオロカーボン、六フッ化硫黄、ペルフルオロカーボン)の泡;カプセル化された小滴;ナノ粒子(例.白金、金、タンタル):より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コアとして使用された材料は、2,4,6−トリ−ヨードベンゼンのイオン性の及び非イオン性の誘導体のようなヨウ化されたコントラストを向上させるユニット;硫酸バリウムに基づいたコントラストを向上させるユニット;ガドリニウムに基づいた化合物のような金属イオンキレート類;高い割合のヨウ素を備えたホウ素クラスター類;ヨウ化された多糖類、ポリマーのトリヨードベンゼン類のような高分子;低い水溶性を示すヨウ化された化合物からの粒子;ヨウ化された化合物を含有するリポソーム類;トリグリセリド類、脂肪酸と同様のヨウ化された脂質:より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コアと使用された材料は、18F−FDG(グルコース代謝);11C−メチオニン、11C−チロシン、18F−FMT、18F−FMT、又は18F−FET(アミノ酸);18F−FMISO、64Cu−ATSM(低酸素症);18F−FLT、11C−チミジン、18F−FMAU(増殖)のような11C、13N、15O、66/8Ga、60Cu、52Fe、55Co、61/2/4Cu、62/3Zn、70/1/4As、75/6Br、82Rb、86Y、89Zr、110In、120/4I、122Xe、及び18Fに基づいたトレーサー:より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コアと使用された材料は、99mTc、123/5/131I、67Cu、67Ga、111In、201Tlのような放射性ヌクレオチドに基づいたコントラストを向上させるユニット:より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コアとして使用された材料は、毒素、放射性同位体、及び化学療法剤;YPO:PrのようなUV−Cを放出するナノ粒子;拡張されたポルフィリンの構造に基づいた化合物のような光線力学的治療(PDT)剤;157Sm、177Lu、212/3Bi、186/8Re、67Cu、90Y、131I、114mIn、At、Ra、Hoのような放射線治療用のヌクレオチド類:より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コアとして使用された材料は、化学交換飽和移動(CEST);温度感受性MRI造影剤(例.リポソームのもの);pH感受性のMRI造影剤;酸素圧力又は酵素応答性のMRI造影剤;金属イオン濃度依存性MRI造影剤:より選択される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コアとして使用された材料は、二つの又はより多くの材料の組み合わせである、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
単数のシェル又は複数のシェルとして使用された材料は、カルボン酸、酸ハロゲン化物、アミン類、酸無水物、活性化されたエステル類、マレイミド類、イソチオシアナート類、金、SiO、脂質、界面活性剤、ポリホスファート(例.ポリリン酸カルシウム)、アミノ酸(例.システイン)、有機高分子(例.ポリエチレングリコール/PEG、ポリビニルアルコール/PVA、ポリアミド、ポリアクリラート、ポリ尿素)、官能性の末端基を備えた有機高分子(例.1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)2000]アンモニウム塩)、生体高分子(例.デキストラン、キシラン、グリコーゲン、ペクチン、セルロースのような多糖類若しくはコラーゲン、グロブリンのようなポリペプチド)、システイン若しくは高いシステインの含有率を備えたペプチド、又はリン脂質:より選択される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
さらなる成分を、前記単数のシェル又は複数のシェルへ組み込むことができる、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記バインディングユニットは、アリールボロン酸、アリールボロン酸の官能性を含むシェル、又は、配位子のヒスチジンユニットと共有結合的にカップリングするシェルへの少なくとも一つのアリールボロン酸の結合である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バインディングユニットは、超原子価のアリールシロキサン、超原子価のアリールシロキサンの酸の官能性を含むシェル、又は、配位子のヒスチジンユニットと共有結合的にカップリングするシェルへの少なくとも一つの超原子価のアリールシロキサンの結合である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記バインディングユニットは、ヨードベンゼン、ヨードベンゼンの官能性を含むシェル、又は、配位子のヒスチジンユニットと共有結合的にカップリングするシェルへの少なくとも一つのヨードベンゼンの結合である、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記コア又は前記単数のシェル若しくは複数のシェル及び少なくとも一つの配位子は、アリールボロン酸とヒスチジンユニットとの間の共有結合的なカップリングによって、連結される、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コア又は前記単数のシェル若しくは複数のシェル及び少なくとも一つの配位子は、超原子価のアリールシロキサンとヒスチジンユニットとの間の共有結合的なカップリングによって、連結される、請求項1乃至16及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記コア又は前記単数のシェル若しくは複数のシェル及び少なくとも一つの配位子は、ヨードベンゼンとヒスチジンユニットとの間で共有結合的なカップリングによって、連結される、請求項1乃至16及び19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
配位子として使用された材料は、トラスツズマブ(乳ガン)、リツキシマブ(非ホジキンリンパ腫)、アレムツズマブ(慢性的なリンパ性白血病);ゲムツズマブ(急性の骨髄性の白血病);エドレコロマブ(大腸癌);イブリツモマブ(非ホジキンリンパ腫);セツキシマブ(大腸癌);トシツモマブ(非ホジキンリンパ腫);エプラツズマブ(非ホジキンリンパ腫);ベバシズマブ(肺及び大腸癌);抗−CD33(急性の骨髄性の白血病);ペムツモマブ(卵巣及び胃癌);ミツモマブ(肺及び皮膚癌);抗−MUC1(腺癌);抗−CEA(腺癌);抗−CD64(溶菌斑)のような抗体(単クローン性のもの、多クローン性のもの、マウスのもの、マウス−ヒトのキメラのもの、ヒトのもの、単鎖、二重特異性抗体、など);ペプチド類;ポリペプチド類、ソマトスタチン類似体、血管作用性のペプチド類似体、ニューロペプチドY、RGDペプチドのような擬ペプチド類;アネキシンV、組織プラスミノーゲン活性化因子のタンパク質、輸送タンパク質のようなタンパク質;ヒアルロナン、アプシタイド、デルマタン硫酸塩のような巨大分子;アパタマー、アンチセンスDNA/RNA、/PNA、低分子干渉性RNAのような核酸;リン脂質のような脂質;白血球刺激性レクチンのようなレクチン類、及び多糖類:より選択される、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記修飾されたコア又は前記修飾されたシェルへ少なくとも一つの配位子を連結させるために使用された触媒は、[Cu(OH)TMEDA]Cl又はCu(AcO)である、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
イミダゾールの官能性とのアリールボロン酸の官能性又はヨードベンゼンの官能性の反応を触媒するために使用された触媒は、[Cu(OH)TMEDA]Clである、請求項1乃至17、19、20、22乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
イミダゾールの官能性との超原子価のアリールシロキサンの反応を触媒するために使用された触媒は、Cu(AcO)である、請求項1乃至16、18、21、23及び24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
コア、少なくとも一つのシェル、及び少なくとも一つの配位子を含むターゲッティング造影剤。
【請求項28】
請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法によって生産されたターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤。
【請求項29】
診断又は治療に用いる請求項27又は28に記載のターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤。
【請求項30】
ターゲッティング分子イメージングに用いる請求項27又は28に記載のターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤。
【請求項31】
CT、MRI、PET、SPECT、又はUSに用いる請求項27又は28に記載のターゲッティング造影剤。
【請求項32】
診断又は治療に適切な化合物の生産用の請求項27又は28に記載のターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤の使用。
【請求項33】
ターゲッティング分子イメージングに適切な化合物の生産用の請求項27又は28に記載のターゲッティング造影剤又はターゲッティング治療剤の使用。
【請求項34】
CT、MRI、PET、SPECT、又はUSに適切な化合物の生産用の請求項27又は28に記載のターゲッティング造影剤の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−524202(P2008−524202A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546265(P2007−546265)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054185
【国際公開番号】WO2006/064451
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】