説明

分岐した炭化水素成分の製造方法

本発明は生物由来の高品質な炭化水素ベースオイルを製造するための方法に関連している。本発明の方法はアルドール縮合、水素化脱酸素化、および異性化段階を包含する。アルデヒドおよび/またはケトン、好ましくは生物由来材料が原料油として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素成分を製造するための方法であって、特に、新しい種類のベースオイル(base oil)として使われる生物由来の高品質の分岐を有する飽和炭化水素成分を製造するための方法に関する。アルドール縮合、水素化脱酸素化、異性化段階を含む方法は、最終的には植物油、動物性脂肪、天然ワックス、および糖質由来である、好ましくは生物起源の原料から得られる原料油(feedstock)を利用する。また、対応する合成原料およびそれらの組み合わせも原料油として用いられうる。
【背景技術】
【0002】
ベースオイルは、一般的に自動車用の潤滑油、工業用潤滑油および潤滑油グリースなどの潤滑剤の生産のために使用される。それらはまた、プロセス油、ホワイトオイル、金属加工用油としても使用される。完成品の潤滑剤は2つの一般的な成分、潤滑ベースオイルおよび添加剤からなる。潤滑ベースオイルはこれら完成品の潤滑剤における主な構成成分であり、完成品の潤滑剤の性質に大きく寄与している。一般的に、2、3の潤滑ベースオイルが、個々の潤滑ベースオイルおよび個々の添加剤の混合物を変えることによって、多種多様の完成品の潤滑剤を製造するために使用されている。
【0003】
米国石油協会(API)のグループIIIまたはIVの分類に基づくベースオイルは高品質の潤滑剤に使われている。APIベースオイル分類は表1に示されている。
【0004】
【表1】

【0005】
グループIIIの油は、とても高い粘度指数(VHVI)をもつベースオイルであり、原油から、蝋状の直鎖パラフィンの水素化分解、続いて異性化によって枝分かれ構造を有するパラフィンを与える、近代的な方法によって製造される。グループIIIの油はまた、鉱物油からの軟ろうパラフィンから、および例えば石炭、天然ガスからフィッシャー−トロプシェ合成法によって得られるワックス(GTLワックス)から、対応する異性化技術を用いて製造されるベースオイルを含む。グループIVの油は合成のポリアルファオレフィン(PAO)である。類似の分類がまたATIEL(Association Technique de l'Industrie Europeennedes Lubrifiants, or Technical Association of the European Lubricants Industry)によって使われている。該分類はまたグループVIのポリインターナルオレフィン(PIO)も含む。正式な分類に加えてまた、グループII+がこの分野においては一般的に用いられ、このグループは、110より高いが120より低い粘度指数をもつ、硫黄を含まない飽和のベースオイルを含む。これらの分類では飽和炭化水素はパラフィン系およびナフテン化合物を含むが、芳香族化合物は含まない。
【0006】
また、API1509による、ベースストック(base stocks)の定義があり、それは「ベースストックは単一の製造者によって同じ規格に沿うよう製造された(供給源または製造者の所在地と独立して)潤滑油成分であって、同じ製造者の規格に適合し、独自の方法、生成物認識番号、またはその両方によって同定される成分である。ベースストックは様々な異なる方法を用いて製造されうる」である。ベースオイルは、APIでライセンスされている油に使われているベースストックまたはベースストックの混合物である。ベースストックのタイプは、1)鉱物油(パラフィン系、ナフテン系、芳香族系)、2)合成物(ポリアルファオレフィン、アルキル化芳香族、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、シリコーン)、3)植物油である。
【0007】
すでに長い間、特に自動車産業界は、潤滑油ひいては改良された技術的性質を有するベースオイルを必要としてきている。完成品の潤滑油のための規格はますます卓越した低温特性、酸化反応に対する高い安定性、および低い揮発性を有する生成物を必要としている。一般的に潤滑ベースオイルは動粘性の値が100℃において約3cStまたはそれ以上(KV100)、流動点(PP)が約−15℃またはそれ以下、そして粘度指数(VI)が約100またはそれ以上であるベースオイルである。一般的に、潤滑ベースオイルは現在の従来のグループIまたはグループIIの天然軽油より大きくないノアク揮発度をもたねばならない。
【0008】
最も要求の厳しい自動車製造業の規格を満たす潤滑油を従来の鉱物油から製造することはもはや不可能である。一般的には鉱物油はしばしば高すぎる濃度の芳香族、硫黄、および窒素化合物を含み、そしてさらに、高い揮発性および中程度の粘度指数、すなわち粘度−温度依存をもつ。さらに、鉱物油の抗酸化剤添加物への反応もしばしば低い。合成およびいわゆる半合成ベースオイルは、エンジンおよびギアオイルのような自動車の潤滑油において特にますます重要な役割をはたしている。同様の現象が工業用潤滑油についても見られる。潤滑油の耐用年数は好ましくは可能な限り長いほうがよく、従って使用者による頻繁なオイル交換を避けて、さらに例えば商業用交通における自動車のメンテナンス間隔を延長することを可能にする。過去10年間で、乗用車のエンジンオイル交換の間隔は5倍に伸び、もっとも良い条件で50000kmである。頑丈な車においては、エンジンオイル交換の間隔は現在のところ100000kmの水準にある。
【0009】
潤滑油の製造は製品の環境、健康、および安全要素に関する、ますます普及してきている「ライフサイクルアプローチ」(LCA)によって影響をうける。LCAが目指していることは、製品の耐用年数の延長、そして製造、使用、製品の取り扱いおよび廃棄に関係する環境への不利益を最小限にすることである。高品質なベースオイルのより長いオイル交換間隔は、再生利用不可能な鉱物原油をもとにした原料の消費を減少させ、有害なオイル製品の有害な廃棄物の量を減少させることになる。
【0010】
エンジン技術およびベースオイルの製造に対する要求に加えて、厳格な環境要求事項がより洗練されたベースオイルを開発するように業界を導いている。硫黄を含まない燃料およびベースオイルが、排気ガス中の二酸化硫黄の直接的な減少をなしとげるだけでなく、現代の自動車において新しく効率の良い対公害技術の完全なる効果を得るために、そして二酸化窒素、揮発性炭化水素および粒子性物質の排出を削減するために必要とされている。欧州連合はこれらの燃料は2005年から市販されなければならず、そして2009年からは店頭の唯一の形でなければならないと規定している。従来の鉱物油性のベースオイルは硫黄、窒素、芳香族化合物、および一般的にはまた揮発性の化合物を含んでいる。それらは新しいエンジンにはあまり適しておらず、ひいてはより新しい、硫黄および芳香族化合物を含んでいないベースオイルより、環境的にもより有害である。
【0011】
今日では、リサイクルされたオイルおよび潤滑油の製造における再生可能な原材料の使用は、しばしば興味の対象となる。炭化水素成分を製造するための再生不可能な化石原料に代わる生物由来の再生可能な原材料の使用は、化石原料は枯渇しており、その環境に対する影響は有害であるために、望ましい。リサイクルされたオイルに関する問題は、高品質なベースオイルを得るための複雑な精製および再加工の過程を含む。さらに、機能的かつ大規模なリサイクルの物流システムの開発は高価である。
【0012】
現在のところ、再生可能な生物由来の潤滑剤としてエステルのみが使用されている。該エステルの使用は冷凍圧縮機の潤滑剤、バイオ油圧油、金属加工用油などのいくつかの特別な応用例に限られている。通常の自動車および工業用の潤滑剤の中で、それらは主に添加物量で使用されている。値段の高さもまたエステルの使用を制限している。加えて、エンジンオイル製剤に使用されるエステルは、たとえ置換するエステルの化学的組成が原則的には同様のものであったとしても、新しいエンジン試験をすることなしには他のエステルと交換することはできない。そのかわり、純粋な炭化水素からなるベースオイルは互いが一部交換可能である。またエステルに関するいくつかの技術的な問題もある。極性化合物として、エステルは純粋な炭化水素より大きなシール膨張(seal-swelling)の傾向をもつ。これは油圧応用におけるエラストマーに関連する多くの問題を生じる。加えて、エステルベースオイルはより容易に加水分解され、潤滑剤システムに徐々に腐食をひきおこす酸を生成する。さらには、エステルに関するより大きな不利な点は、無極性の炭化水素ベースオイルのために開発された添加剤はエステルベースオイルには効果的でないことである。
【0013】
より長い炭化水素鎖を有する不飽和の分岐のアルデヒドを製造するための方法は、アルドール縮合反応を用いてアルデヒドおよびケトンから出発することにより可能である。反応は、フィード(feed)に依存して、アルドール縮合によってヒドロキシアルデヒドまたはヒドロキシケトンを生じ、その次の水の開裂によって不飽和アルデヒドまたは不飽和ケトンを生成する。反応では、一般的に塩基触媒が80〜400℃の温度で用いられる。NaOHおよびCa(OH)2などの塩基性の均一系触媒、およびNa/SiO2のような担持されたアルカリ金属が、Kelly, G.JらGreen Chemistry, 2002, 4, 392-399に記載されるように、不均一系触媒としてあげられうる。4級アンモニウム基を含むイオン交換樹脂が、樹脂は高温では使用できないので、低級な炭素数のフィードが縮合される場合のみ触媒として用いられうる。
【0014】
脂肪族アルコールは脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルのどちらかの水素化によって生成される。アルキルエステルからアルコールを製造するための、気層水素化、細流床水素化、および懸濁水素化の3つの型の水素化装置が商業的に使用されている。これら3つのうち、初めの2つは固定床触媒を包含する。全ての方法において、銅亜クロム酸塩を含む触媒が、200〜250℃の温度で20〜30MPaの圧力の下使用されている。不飽和脂肪酸アルコールはクロムを含まない銅−亜鉛触媒を用いて製造される。さらに、飽和脂肪族アルコールは200〜230℃で、約20MPaの圧力のもと、クロム、鉄、またはロジウムで活性されたニッケル触媒を用いても製造される。
【0015】
脂肪族アルデヒドは脂肪族アルコールから脱水素化反応において、水素を除去することにより製造される。反応はアルコールの水素化の対極で、従って吸熱的である。脱水素化反応において、対応する水素化触媒が用いられるが、温度はより高く、従って、加熱分解、異性化、環化、および重合などの副反応が可能である。担持された亜クロム酸銅触媒が、一般的にはアルコールからアルデヒドを製造するために用いられる。気体相での脱水素化反応においては、一般的に250〜400℃の間の温度、および0.1〜0.5Mpaの間の圧力が用いられる。さらに、対応するアルデヒドはアルコールからアルミナ、シリカ−アルミナ、酸化ハフニウム、および酸化ジルコニウムを触媒として用いることにより製造されることが一般的に知られている。製法の生成物は工程中の温度を変えることによって制御される。低い温度ではエーテルが得られ、高い温度ではアルデヒドが得られ、300〜350℃では一般的にオレフィンが得られる。
【0016】
ケトンを製造する製法は、フィード分子の官能基が互いに反応しケトンを生成する公知の技術で知られている。生成したケトンの炭素数は、反応されたフィード分子の炭素数の合計に比べて1つ減少している。金属またはアルカリ土類金属の酸化物が触媒として使用される。EP591297は、マグネシウム酸化物触媒を用いて熱分解反応によって、脂肪酸からケトンを製造する方法について記載している。EP0457665はトリグリセリド、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩および脂肪酸無水物から酸化鉄を含むボーキサイト触媒を用いてケトンを製造するための方法について開示している。
【0017】
脂肪酸由来以外のアルデヒドおよびケトンは、バイオマスの酸加水分解によって糖質より製造されうる。バイオマス、ヘミセルロースの主要成分は、ペントサン(C5糖質)であり、セルロースの主要成分はヘキソサン(C6糖質)であり、加水分解されて、C5の糖(ペントース)およびC6の糖(ヘキソース)を生じる。糖中のカルボニル基は主にアルデヒドであり、ケトンはほんのわずかである。5−炭素の糖は6−炭素の糖に比べより早く分解するが、酸加水分解において糖の分解を低下させる1つの方法は、2つの段階を有する方法をとることである。第一の段階は、5−炭素の糖を回収するために穏やかな製法条件のもとで行われ、一方、第二の段階は、6−炭素の糖を回収するためにより過酷な条件化で行われる。糖は無機酸触媒の存在下でさらに反応し、対応するアルデヒドまたはケトンを生成する。酸性製法には、希釈した酸および濃縮した酸の2つの基本的なタイプがあり、この場合もやはりそれぞれの製法において変化に富んでいる。希釈した酸の製法は、160〜300℃の高温下で行われ、秒または分の範囲の反応時間をもつので、連続的なプロセッシングを可能にしている。
【0018】
FI100248には、植物油から該植物油のカルボン酸またはトリグリセリドの水素化によって中間の留分が製造され、直鎖状のノルマルパラフィンを生じる段階、続いて該n−パラフィンが異性化によって分岐のパラフィンを生成する段階の二段階を有する方法が示されている。水素化は330〜450℃の温度範囲で、3MPaより高い圧力のもと、0.5〜5 l/hである液体時間空間速度(LHSV)で行われた。異性化段階は200〜500℃で、加圧下、0.1〜10 l/hのLHSVで行われた。
【0019】
EP209997は、原油由来のワックス状の炭化水素の異性化によるベースオイルの製造、ひいては少量の軽い留分の製造のための方法を開示している。この方法は、例えばワックス状の水素添加分解装置の残油からグループIIIのベースオイルを製造するために使用されている。
【0020】
生物原料由来の材料は高容量の酸素を含む。加工の間、酸素は水、一酸化炭素、および二酸化炭素に変換される。加えて、生物由来の材料はしばしば、触媒毒および貴金属の触媒作用の阻害剤として知られる窒素、硫黄およびリンを含む。これらは触媒の耐用年数の減少を引き起こし、触媒の頻繁な再生を必要にせしめる。ベースオイルの製法において、ノルマルパラフィンはしばしば炭化水素鎖中に分岐を得るために異性化される。該分岐は低温特性を改善する。貴金属触媒は異性化方法で使用される。それらは非常に高価で触媒毒に非常に敏感である。
【0021】
ヘテロ原子を含む、生物由来の材料または中間体を利用する方法であって、該材料が、高品質なベースオイルを製造するために、随意的に熱的および/または化学的および/または物理的および/または機械的な前処理段階に付される方法であるような、いかなる方法も現在のところ開示されていない。
【0022】
上記の教示に基づいて、好ましくは生物由来の材料から分岐の飽和炭化水素成分を製造する代替方法であって、該方法が結果的に公知技術の溶液に関連する問題を回避する、または少なくとも実質的に減少させることに寄与する方法が明らかに必要であることが見てとれる。
【0023】
また、高品質なベースオイルのための必要条件を満たすような分岐を有する無極性のパラフィン系ベースオイルの必要性もあり、該ベースオイルは好ましくは生物由来であり、従来の鉱物ベースオイルよりも環境に対し、そして消費者にとってより好ましい影響をもつものである。加えて、再生可能な、従って再生不可能な原料を節約できる原料油の使用に基づいた方法も必要とされている。
【発明の開示】
【0024】
本発明の目的は炭化水素成分を製造するための方法である。
【0025】
さらなる本発明の目的は飽和炭化水素成分を生物由来の材料を用いて製造するための方法である。
【0026】
他の本発明の目的はベースオイルを製造するための方法である。
【0027】
さらなる他の本発明の目的は、ヘテロ原子を含まない新しい型の分岐を有するパラフィン系ベースオイルを、生物由来の材料から製造するための方法である。
【0028】
本発明の目的はさらにAPIグループIIIの必要条件を満たすベースオイルである。
【0029】
本発明の方法およびベースオイルの特性は添付の請求項に規定されている。
【0030】
発明の概要
本発明の方法はアルデヒドおよびケトンの縮合段階を含む。アルデヒドおよびケトンは好ましくは脂肪酸または糖質に由来する。下記の式Iに表されている反応において、原料油の分子が互いに反応し、従って分岐成分の炭素鎖長の増加がそれゆえ得られる。さらに、本発明の方法は縮合生成物からヘテロ原子を除去するための水素化脱酸素段階、そして最後に、分子骨格に分岐を形成するための異性化段階を含む。従って、パラフィン系製品の低温特性が改善される。
【0031】
【化1】

ここで、R’=H(アルデヒド)、またはC3〜C23(ケトン)
およびR=C2〜C22である。
【0032】
好ましくは、生物由来の出発原料に由来する原料油が主に使用される。加えて、方法は随意的の前水素化、最終加工、および生成物の再循環段階を含む。
【0033】
アルドール縮合反応が、フィード蒸気の炭化水素鎖を増加させるため、不飽和の分岐した一価官能基のカルボニル化合物である生成物を得るために利用される。
【0034】
本明細書において、カルボニル化合物とは、アルデヒドまたはケトンのカルボニル機能性含む化合物を指している。
【0035】
本明細書において、脂肪酸とは、生物由来のカルボン酸であって、炭素数がC1より大きいものを指している。
【0036】
脂肪酸、および脂肪族アルデヒド、および脂肪ケトン由来のアルデヒドおよびケトンは、本明細書において、生物由来の脂肪酸またはトリグリセリドから得られるアルデヒドおよびケトンを指している。
【0037】
本明細書において、水素化脱酸素化(HDO)とは水素によって化合物から酸素を取り除くことを意味している。水は反応中に遊離され、同時にオレフィン系の二重結合が水素化され、硫黄および窒素化合物が除去される。HDO段階の反応は発熱反応である。HDO段階の後、出発物質の構造はパラフィン系となる。
【0038】
本明細書において、飽和ベースオイルは飽和炭化水素を含む。「飽和炭化水素」という用語は、パラフィン系およびナフテン系の化合物を指すが、芳香族化合物は含まない。パラフィン系化合物は分岐していても直鎖でもどちらでもよい。ナフテン系化合物は環状の飽和炭化水素、またはシクロパラフィン、典型的にはシクロペンタンまたはシクロヘキサン由来である。ナフテン系化合物は1つの環構造(モノナフテン)、もしくは2つの独立した環構造(独立したジナフテン)もしくは3つまたはそれ以上の融合した環構造(多環式ナフテンまたはポリナフテン)を含む。
【0039】
本明細書において、炭素数の範囲とは、最終生成物中の最も大きい分子および最も小さい分子の炭素数の違いに1を足したものを表している。
【0040】
本明細書において、圧力は通常の大気圧に比べたゲージ圧を指している。
【0041】
元素周期系の分類はIUPAC分類である。
【0042】

本発明は本明細書において、添付の図1によって例示されるが、該図の実施様態に本発明の範囲を制限する意図ではない。
【0043】
図1において、脂肪酸または糖質由来のアルデヒドおよび/またはケトンを含む原料油の蒸気2および水素蒸気3が、二重結合の随意的な前水素化のために、前水素化反応器20に導入される。前水素化反応器20中に、再循環させるためにより軽い生成物留分(102)の一部が、またフィードを希釈するために他の水素蒸気201が、随意的に添加されてもよい。希釈蒸気202は再循環蒸気102、または水素蒸気201、またはそれらの混合物を含んでいる。該前水素化反応器20から、飽和アルデヒドおよび/またはケトン生成物が、蒸気21としてアルドール縮合反応器30に通される。また代わりに、合成的に製造されたアルデヒドなどのその他のアルデヒドが、単独でまたは上記アルデヒドとの組み合わせで工程に導入されてもよい。水酸化カルボニル化合物または、好ましくは、アルドール縮合反応器30からの生成物として得られるアルファ、ベータ−不飽和脂肪カルボニル化合物が蒸気31として通され、一方、水素は蒸気3としてHDO反応器40に通される。また代わりに、依然として蒸気31に存在している、縮合反応で縮合されなかった成分が、蒸留ユニット60中で例えば蒸留によって分離され、続いて、蒸気61としてアルドール縮合反応器30に再循環される。縮合された成分は蒸気62として、HDO反応器40に通される。HDO段階からの分岐パラフィン系生成物は、蒸気41として回収器70へ不必要な不純物を除去するために通される。その後、パラフィン系生成物蒸気71および水素蒸気3が、水素化異性化反応器80へと導入される。該反応器はまた、任意的に希釈液202も回収する。水素化異性化80に続いて、分岐のパラフィン81が、随意的に水素蒸気3を用いて最終加工90に付され、続いて蒸気91として生成物を蒸留および/または分離装置100に通す。該蒸留および/または分離装置100中で、異なる温度範囲で沸騰する、および/または特別な用途のための生成物成分、気体104、ガソリン101、ディーゼル102、およびベースオイル103が分離される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
ここで驚くべきことに、ヘテロ原子を含むアルデヒドおよび/またはケトンのアルドール縮合反応、水素化脱酸素化反応、および異性化反応を包含する本発明による方法によって、分岐を有する飽和の高品質なベースオイルが得られることが発見された。本発明の方法によって、特に生物由来であるアルデヒドおよびケトンのアルドール縮合反応が、水素化脱酸素化および異性化反応と組み合わされて、飽和のベースオイルの製造のための新しい方法として利用されうる。
【0045】
アルドール縮合反応段階において、原料油の炭化水素鎖の長さは、分子の基本骨格に炭素−炭素結合のみが残るように、増加される。このようなアルデヒドまたはケトン分子はそれだけではベースオイルとして適していないので、カルボニル基に存在する酸素は除去されなければならず、たとえば分子構造に短い分岐を形成するなどして低温特性が改良されなければならない。さらに、製法は随意的の前水素化段階、生成物の再循環および最終加工段階を含む。
【0046】
特に生物由来のアルデヒドおよび/またはケトンがベースオイルを製造するために原料油として用いられる場合、それらの炭化水素鎖の長さを増加させることが、基本骨格中に炭素−炭素結合のみを有する分子を得るためには必要である。本発明によって、アルデヒドまたはケトンが互いに反応させられることによりこれが達成され、これゆえ分子中に炭素−炭素結合が製造された。本発明の炭化水素鎖長が増加された生成物の構造において、アルデヒド基は長い炭化水素主鎖の中間に位置する−CH2−基に結合している。ケトンが原料油として同じ縮合反応に用いられた場合には、式(I)に示されるように、4個のより長い炭化水素鎖およびこれらの分岐上にあるケトン基が存在する。また2つの記載された反応の組み合わせも可能である。原料油のアルデヒドとケトンは2またはいくつかの官能基であるカルボニル基を含んでもよいので、従って生成物の構造中にはいくつかの分岐位置が得られる。
【0047】
本発明の方法において、炭素数がC1〜C40であるアルデヒド、好ましくは一級の飽和したアルデヒド、および/または炭素数がC3〜C79であるケトンが、互いに縮合段階で反応される。この方法により、原料油の炭化水素主鎖が増加されて、ベースオイルの炭素数に達する。また、より短い鎖を有するアルデヒドおよび/またはケトンも使用することができ、C12〜C24の範囲の脂肪族アルデヒドの一般的な炭素数またはC23〜C47の範囲のケトンに一般的である炭素数によるよりも、より低い炭素数による生成物の分子量の増加を可能にし、また、ベースオイル化合物であるより軽い化合物の製造を可能にしている。同様の方法で、2またはそれ以上の機能的カルボニル基を有するアルデヒドおよび/またはケトンが炭化水素鎖延長のために使用されうる。短い鎖を有するおよび/または2またはそれ以上の官能基を有する該アルデヒドは、合成的および/または天然原料由来であってもよい。
【0048】
本発明の方法において、ヘテロ原子は、水素化脱酸素化段階においてアルドール縮合の反応性生物から除去され、従って水の形でカルボニル基の酸素が遊離される。加えて、他の酸素、窒素および硫黄化合物が同時に取り除かれる。鎖の中央に分岐を有する飽和炭化水素が生成物として得られる。
【0049】
水素化脱酸素化段階で得られる生成物(主にパラフィン)は水素化異性化に付される。水素化異性化段階において、分子の枝分かれしていない炭化水素鎖は異性化されて、分子はもう少し短い分岐を有するので、低温特性が改善される。水素化異性化段階に引き続いて、生成物の酸化安定性は随意的の最終加工処理にて改良されてもよい。加えて、随意的の脱ろうが最終加工の前または後に行われうる。
【0050】
ディーゼルクラスのより短い鎖を有する分岐のパラフィンもまた副生成物として工程にて製造される。
【0051】
原料油
方法の原料油は、C1〜C40アルデヒド、C3〜C79ケトンおよびC2〜C40水酸化アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアルデヒドまたはケトンを含む。合成のおよび生物由来の両方のアルデヒドおよびケトンが、原料油として用いられる。好ましくは生物由来である、随意的に1または複数の公知技術の精製および/または調整段階に付されたC4〜C24脂肪族アルデヒド、C3〜C47ケトンおよびC4〜C24水酸化アルデヒドが、好ましくは使用される。調整段階は、例えば、アルデヒドを生じるアルコールの還元、またはケトンを生じる脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルのケトン化のみならず、脂肪酸を製造するための水素化、アルコールまたは酸とのエステル交換、脂肪酸アルキルエステルを製造するためのエステル交換、アルコールを生じる脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルの還元を含む。
【0052】
アルデヒドおよびケトンはいかなる公知の方法を用いても製造されうる。アルデヒドおよびケトンは好ましくは、植物、動物および魚から得られる生物由来の材料から、植物油、植物ワックス、植物性脂肪、動物油、動物性脂肪、動物ワックス、魚油、魚脂肪、魚ワックスからなる群より選択される材料から製造される。藻類および昆虫由来の対応する材料もまた糖質から製造されるアルデヒドおよびケトン由来の材料と同様に考慮に入れられる。
【0053】
生物由来の材料は次よりなる群から適切に選択される。
a)植物性脂肪、植物油、植物ワックス、動物性脂肪、動物油、動物ワックス、魚脂肪、魚油、魚ワックス、および
b)植物性脂肪、植物油、植物ワックス、動物性脂肪、動物油、動物ワックス、魚脂肪、魚油、魚ワックス植物からの加水分解、酸エステル変換または熱分解反応によって得られる遊離脂肪酸または脂肪酸、および
c)植物性脂肪、植物油、植物ワックス、動物性脂肪、動物油、動物ワックス、魚脂肪、魚油、魚ワックス、植物からエステル交換によって得られるエステル、および
d)植物、動物および魚由来の脂肪酸とアルコールのエステル化によって得られる脂肪酸アルキルエステル、および
e)植物性脂肪、植物油、植物ワックス、動物性脂肪、動物油、動物ワックス、魚脂肪、魚油、魚ワックスからの遊離脂肪酸または脂肪酸の還元または加水分解性生物として得られるアルコールおよびアルデヒド、および
f)植物性脂肪、植物油、植物ワックス、動物性脂肪、動物油、動物ワックス、魚脂肪、魚油、魚ワックスから得られる遊離脂肪酸、エステル、アルコールまたはアルデヒドのケトン化反応によって得られるケトン、および
g)生物由来のワックスから加水分解、エステル交換および熱分解によって得られる脂肪族アルコール
h)食品用脂肪およびオイルの廃棄物ならびに回収物、および遺伝子工学によって得られた脂肪、油、およびワックス、および
i)該出発材料の混合物
【0054】
植物および魚類の油ならびに動物の脂肪の一般的な基本骨格単位はトリグリセリドである。トリグリセリドは3個の脂肪酸とグリセロールのエステルであり、次の構造をもつ。
【0055】
【化2】

ここで、R1、R2およびR3はC4〜C30の炭化水素鎖を表している。炭化水素鎖に関して、該脂肪酸は枝分かれのない長鎖のカルボン酸である。主な炭化水素鎖の長さは18炭素(C18)である。C18脂肪酸は一般的にグリセロールの中心の水酸基に結合されている。2つの他の水酸基に結合した脂肪酸は一般的に偶数の炭素数をもち、一般的には炭素数C14およびC22の間である。
【0056】
生物由来の出発材料の脂肪酸成分は、異なる原料からの原料油の間でかなり様々である。いくつかの二重結合が脂肪酸中に存在しうる一方、それらは非共役であり、少なくとも1つの中間−CH2−基がそれらの間に存在する。立体配置に関しては、天然の脂肪酸の二重結合はシス型であり、水素原子はよってやや剛直な二重結合の同じ側に位置している。二重結合の数が増加すると、それらは一般的に鎖の自由な末端に位置するようになる。炭化水素鎖の長さおよび二重結合の数は、脂肪酸の原料として働く様々な植物および動物性脂肪、油またはワックスに依存する。動物性脂肪は一般的に、不飽和脂肪酸より多くの飽和脂肪酸を含む。魚油の脂肪酸は高容量の二重結合を含み、そして炭化水素鎖の平均の長さは植物油および動物性脂肪の脂肪酸に比べて長くなっている。
【0057】
生物由来の出発材料の脂肪酸成分は原料油の酸化反応抵抗性、熱的安定性、および低温特性を見積もるのに大きな役割を果たしており、また、縮合反応によって得られる生成物のタイプを決定している。原料油に存在している不飽和成分は、環構造を有する化合物を生成するオリゴマー化をたやすくうけ、また、続く水素化で、結果としてオリゴマーの炭化水素および環構造を有する炭化水素を最終生成物中に生じる。
【0058】
ワックスは主に長鎖を有するアルコールとエステル化された脂肪酸である。さらにワックスは様々な量のパラフィン(n−アルカン)、ケトン、およびジケトン、一級および二級アルコール、アルデヒド、アルカン酸(脂肪酸)およびテルペンを含む。これらの脂肪酸およびアルコール鎖の炭素数は、一般的にはC12〜C38である。
【0059】
生物由来の出発材料として適切な例は、バルチックニシン油、サーモン油、ニシン油、ツナ油、アンチョビ油、いわし油、およびさば油のような魚油、菜種油(rapeseed oil)、菜種油(colza oil)、キャノーラ油、トール油、ヒマワリ種子油、大豆油、コーン油、大麻油、オリーブ油、綿実油、からし油、ヤシ油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ジャトロファ種油、パーム核油、およびココナッツ油なとの植物油、そしてさらに、適切なものは、ラード、獣脂、などの動物脂肪、また食品用脂肪およびオイルの廃棄物ならびに回収物、遺伝子工学によって得られた脂肪、油、およびワックスである。脂肪と油に加えて、生物由来の適切な出発材料は、カルナバろう、オリコーリ(ouricouri)パームワックス、ホホバオイル、カンデリラろう、エスパルトろう、日本ろう、そしてぬか油といった植物ワックスのみならず、みつろう、中国ろう(昆虫ワックス)、セラックろう、ラノリン(羊毛脂)といった動物ワックスを含む。
【0060】
製法は、生物および合成の原料由来のフィード混合物を加工するためにも用いられ、かつもし必要であるならば、他の方法によって製造される原料油、または合成的に製造された、該当の加工段階に適した原料油が、付加的な原料油として使用されてもよい。また、純粋な合成原料油も考慮に入れられるが、しかしこの場合、製品は再生可能な天然原料をもとにしているとはいえない。
【0061】
脂肪酸アルデヒドに加えて、また、合成の水酸化アルデヒドまたは生物由来の出発原料から得られる水酸化アルデヒドも本発明の方法において原料油として使用可能である。製造されるベースオイルの熱安定性のため、好ましくは四級炭素を含まないアルデヒドおよび/またはケトンが使用される。特に、低温特性を改良するため、および、より重いベースオイルを製造するために、ベースオイルの構造における分岐サイトを得るための分岐を有する追加の成分も用いられうる。
【0062】
例えばディーゼルクラスの炭化水素などの、好ましくは生物由来の、希釈液として働く炭化水素が、方法の様々な段階で原料油に随意的に添加されうる。ディーゼルクラスの炭化水素の沸点の範囲は150〜400℃であり、一般的には180〜360℃の間である。
【0063】
方法
縮合段階
C1〜C40アルデヒド、C3〜C79ケトンおよびC2〜C40水酸化アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む原料油が縮合反応に付される。アルデヒドおよび/またはケトンは縮合され、実質的に炭化水素蒸気の炭素数を増加させる。飽和のアルデヒドおよびケトンが好ましくは原料油として用いられる。方法において、アルドール縮合反応が好ましくは用いられ、これゆえ分岐を有する不飽和のアルデヒドまたはケトンが得られる。縮合において、均一または不均一系アルドール縮合触媒が用いられうる。Na/SiO2のような担持されたアルカリ金属触媒が不均一系触媒として挙げられる。均一系触媒は、好ましくは、NaOH、KOHまたはCa(OH)2のようなアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物である。反応温度は80〜400℃で、好ましくはより低い温度がより小さい分子量フィードに用いられ、より高い温度がより大きい分子量フィードに用いられる。随意的にはアルコールのような溶媒が用いられてもよい。反応で使用される均一系触媒の量は1〜20重量%の間でさまざまであるが、好ましくは1.5〜19重量%である。代わりに、アルドール縮合の反応条件は反応生成物として、アルドールのような水酸化アルデヒドを生じるために調整されてもよく、これゆえ、二重結合の反応に基づくオリゴマー化を最小限にされうる。この場合、水酸基もまた次のHDO段階で水として除去されねばならない。
【0064】
水素化脱酸素化
その後のHDO段階において、アルドール縮合反応で得られた生成物のヘテロ原子が除去される。本発明による方法のHDO段階で、アルドール縮合の生成物および水素ガスは、0.1〜20MPaの間の範囲の圧力のもと、好ましくは1〜15MPaの間で、100〜500℃である温度、好ましくは150〜350℃の間、特に好ましくは200〜350℃の間で、流速WHSVが0.1〜10 l/hの範囲で反応される。HDO段階において、元素周期系の第VIII族および/または第VIA族金属を含む特別な触媒、およびアルミナおよび/またはシリカが用いられうる。HDO触媒は好ましくは担持されたPd、Pt、Rh、Ru、Ni、NiMoまたはCoMo触媒であって、担体は活性化された炭素、アルミナ、および/またはシリカである。
【0065】
好ましい実施様態としてはHDO段階のあと得られる反応性生物が例えば蒸気、または、軽い炭化水素、窒素、または水素などの適切なガスとともに回収されることにより精製される。方法にとっては、水素化異性化段階および/または最終加工段階の前に可能な限り効果的に不純物および水を除去することが望ましい。
【0066】
水素化異性化段階
HDOおよび随意的の精製段階の後、水素化異性化が、水素気体、水素化された成分、および随意的に添加されたパラフィン系フィードを反応させることによって、異性化触媒の存在の下行われる。水素異性化段階において圧力は0.1〜20MPaの圧力範囲で、好ましくは1〜15MPaである。温度は100〜500℃の間の範囲で、好ましくは200〜400℃の間である。水素化異性化段階においては、モレキュラーシーブおよび元素周期系の第VIII族の金属を含む特別な触媒、例えば、Ni、Pt、およびPdなどが使われる。アルミナおよび/またはシリカが担体として使用される。
【0067】
前水素化段階
アルドール縮合から得られる生成物同様、原料油が、緩やかな条件で、不飽和のアルコールなどの、水素化可能な二重結合を水素化するために、および触媒の活性は主にその表面でのコール生成によって失われるので、次の加工段階でのコーク生成を減少させるために、随意的な前水素化段階に付された。前水素化は水素化触媒の存在下、50〜400℃の間の温度で、0.1〜20MPaの間の範囲の水素圧の下、好ましくは、100〜300℃の間の温度、1〜10MPaの範囲の水素圧で行われる。前水素化触媒は元素周期系の第VIII族および/または第VIA族の金属を含む。前水素化触媒は好ましくは担持されたPd、Pt、Ni、Ru、Rh、Cu、CuCr、NiMoまたはCoMo触媒であり、担体は活性化された炭素、アルミナおよび/またはシリカのいずれかである。
【0068】
脱ろう段階
水素化異性化段階につづいて、随意的の脱ろう段階が触媒的にまたは溶剤脱ろうのどちらかによって行われる。触媒的な脱ろうにおいて、任意のパラフィン系添加フィードと同様、水素ガスおよび異性化される成分は脱ろう触媒の存在下反応する。元素周期系の第VIII族の金属、例えばNi、Pt、およびPdを含むゼオライト触媒が相応に使用される。脱ろう段階において、圧力は0.1〜20MPaの範囲で様々であり、温度は100〜500℃の間である。
【0069】
溶剤脱ろうにおいては、パラフィン系ワックスはオイルに溶解されて、溶媒中、例えばメチルエチルケトン、およびトルエンの溶媒の混合物中に分離される。方法において、溶媒およびフィードは向流で通され、これゆえ混合される。オイルおよび溶媒の混合物(異性化された生成物)は冷却ユニットに導入される。冷却はパラフィン系のワックスの結晶化を招く。冷却温度は、生成物の望まれる低温特性に依存する。ワックスの結晶は混合物よりろ過され、さらなる加工のために集められ、溶媒はベースオイルから蒸発により分離される。
【0070】
最終加工段階
上記で得られた生成物は、随意的に二重結合および芳香族化合物を除去するために最終加工に付されうる。該最終加工が、触媒の存在下水素を用いて行われる場合、水素化最終加工と呼ばれ、圧力がこれゆえ1〜20MPaの範囲で、好ましくは2〜15MPaの間、50〜500℃の間の範囲の温度、好ましくは200〜400℃の間で行われる。水素化最終加工では、元素周期系の第VIII族の金属を含む特別な触媒およびアルミナおよび/またはシリカが使用される。水素化最終加工の触媒は、好ましくは担持されたPd、Pt、またはNi触媒であり担体はアルミナおよび/またはシリカである。最終加工は、クレイやモレキュラーシーブスのような吸収性の材料を用いて極性成分を除去することによってもなされる。
【0071】
随意的の最終加工に続いて、生成物は、異なる温度範囲で沸騰する生成物成分および/または他の応用向きの生成物成分を分離するために蒸留および/または分離ユニットに通される。
【0072】
もし望むのであれば、生成物として得られた炭化水素成分、または他の適切な炭化水素が、本発明の様々な段階、たとえば、アルドール縮合、HDO、および/または異性化段階にて、転嫁率および/または選択率および/または反応の発熱性質を制御を促進するため希釈物として用いられうる。
【0073】
固定触媒床反応器、たとえば公知の細流床反応器が前水素化、HDO、水素化異性化、および水素化最終段階にて好ましく用いられる。
【0074】
生成物
本発明による方法は、ベースオイルに適切な、高品質な枝分かれ構造を有する飽和炭化水素成分を与える。ベースオイル生成物は非常にすばらしい粘性および低温特性をもつ。本発明による方法は、副生成物として、ディーゼル燃料プールに適したパラフィン系炭化水素生成物を与える。ディーゼル成分は一般的にいくつかの短い炭素−炭素側鎖を含み、結果として非常に低い曇点および低温フィルター目詰まり点をもつが、依然として高いセタン価を有する。加えて、溶媒、ガソリン、および/またはガソリンの成分に適した炭化水素の成分が副生成物として得られた。全てのこれらの生成物は好ましくは生物由来である。
【0075】
原料油、特に生物由来出発材料から得られる原料油は生成物の蒸留範囲、および成分に物質的に影響を与える。脂肪酸由来の原料油の成分は、蒸留によって分留され、様々な応用での必要要件に従って作られる狭い炭素数の範囲をもつ留分を与える。炭化水素鎖としてC16、C18、C20およびC22を有する原料油においては一般的に生成物の炭素数はそれぞれC32、C36、C409、C44である。生成物の蒸留範囲が主に原料油の炭化水素鎖の長さに依存するので、狭い炭素数範囲および蒸留範囲をもつ生成物留分が得られる。本発明によって得られる、狭い蒸留範囲をもつベースオイルは、公知の対応する生成物と比較した場合、非常に低い揮発度をもつ。
【0076】
本発明のベースオイルの炭素数範囲は非常にせまく、C12/C14、C14/C16、およびC16/C18原料油の場合、通常5炭素数幅以下である。本発明の方法によって製造されるベースオイルの最も一般的な構造および炭素数の範囲(動的粘性が4〜6cSt/100℃)は表2に示されている。炭素数は原料油の炭素数によって決定される。最も一般的な炭素数が太字で示されている。
【0077】
鉱物油由来であり、同じ粘性クラス(約4〜6cSt/100℃)に属する、公知である合成的な水素化異性化された炭化水素ベースオイルであるVHVI、GTLおよび軟ろうベースオイルの炭素数の範囲(C25〜C35)および一般的な構造もまた表2に表されている。
【0078】
【表2】

【0079】
表2に示されているベースオイルは以下のように製造される。
1.本発明のベースオイルは、C18アルデヒドを含むフィードをアルドール縮合、水素化、および水素化異性化することによって得られる。
2.本発明のベースオイルは、C23ケトンおよびC5アルデヒドを含むフィードをアルドール縮合、水素化、および水素化異性化することによって得られる。
3.本発明のベースオイルは、C23ケトンを含むフィードをアルドール縮合、水素化、および水素化異性化することによって得られる。
4.GTLはフィッシャー−トロプシュワックス状留分の異性化生成物である。
5.SWは、鉱物油由来の軟ろうのワックス状留分の異性化生成物である。
6.VHVIは鉱物油由来の水素化分解され異性化されたベースオイルである。
【0080】
飽和炭化水素は、炭素および水素原子に従って、電解イオン化質量分析(FIMS)法を用いて、次のように分類される。
1 C(n).H(2n+2) パラフィン
2 C(n).H(2n) モノナフテン
3 C(n).H(2n−2) ジナフテン
4 C(n).H(2n−4) トリナフテン
5 C(n).H(2n−6) テトラナフテン
6 C(n).H(2n−8) ペンタナフテン
【0081】
表2において、割合(%、FIMSによる)は該方法によって決定される化合物のグループを指す。
【0082】
異なる炭化水素鎖長を有する原料油およびアルコール縮合反応を用いることによって、生成物の分子量が異なる応用に必要な範囲の粘度になるように増加させられうる。縮合反応において、原料油の炭化水素鎖の長さが増加される。これゆえ原料油からの溶媒、ガソリン、およびディーゼル燃料などのより短い鎖を有する軽い炭化水素生成物、およびより長い鎖を有する原料油からのベースオイルを製造することが可能である。
【0083】
分子構造に関して、本発明のベースオイルは公知の生成物と異なっていることが、表2から見て取れる。アルデヒドをフィード分子として用いた、本発明による方法によって得られた生成物は、炭化水素主鎖の中心にメチル分岐を含む(表2の構造1)。生成物は、一般的に鎖の末端のみに分岐を有する公知のGTLおよびSW異性化生成物(表2の構造4および5)とは異なっている。アルデヒドおよびケトンがフィード分子として用いられたならば、本発明の方法によって得られる製品は、公知の製品(表2の構造4および5)に比べて、著しく長い側鎖を有する。そして、最終的にケトンがフィード分子として用いられたならば、本発明の方法によって得られる製品は、公知の製品(表2の構造4および5)に比べて、なお一層長い側鎖を有する。
【0084】
炭化水素鎖の中心に位置する分岐は、鎖の端にある分岐よりも流動点を顕著に低下させる。分岐の位置に加えて、それらの数も流動点に影響し、分岐が増加することによって流動点は低下するが、同時にまた粘度指数も低下する。従って、好ましい流動点および粘度指数であるためには分岐の数は制限される。パラフィン系ワックスの異性化によってアルドール縮合反応から得られる生成物(表2の構造1〜3)は炭化水素成分の末端にメチル分岐をもち、より少ない量のエチル分岐を炭化水素成分の末端にもち、そして、加えて炭化水素主鎖の中心に1個の分岐または複数の分岐を有する。
【0085】
粘度指数および流動点の間の最適な相関がたった2、3の分岐を含む炭化水素主鎖では存在する。従って、流動点を改善するためには、分岐を有するパラフィンは本発明の方法においてHDO段階のあと、公知である分岐の全くないパラフィン系ワックスに比べてより少ない異性化を必要とする。一般的に、本発明の生成物は30以上の炭素原子を含む異性化された分子を比較的高い割合で包含する。このような分岐した高分子量化合物は、流動点が−20℃未満であっても一般的に高い粘度指数(VI)を示す。
【0086】
本発明によるベースオイルは、少なくともC18の炭素数を有する分岐の炭化水素を含み、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、および特に好ましくは少なくとも97重量%の飽和炭化水素を含む(GC)。好ましくは、ベースオイルは生物由来であり、生物由来の出発材料から製造される。ベースオイルは、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、および特に好ましくは5重量%以下のモノナフテンを含む(FIMS)。ベースオイルは、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、および特に好ましくは0.1重量%以下の融合したジナフテンおよびポリナフテンを含む(FIMS)。
【0087】
本発明のベースオイルとしては、粘度指数が120より大きく、好ましくは少なくとも130、特に好ましくは少なくとも140(ASTM D 2270)である。流動点(ASTM D 5950)は−9℃より低く、好ましくは−12℃より低く、および特に好ましくは−15℃より低いものである。
【0088】
本発明のベースオイルの炭素数の範囲の幅は、5炭素数以下、好ましくは3炭素数以下、および特に好ましくは1炭素数以下である(FIMS)。少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%、および特に好ましくは少なくとも90重量%の飽和炭化水素が、特定された炭素数範囲内(5炭素数以下、等)にある。
【0089】
本発明のベースオイルの蒸留幅は、150℃以下、好ましくは100℃以下、特に好ましくは70℃以下である(ASTM D 2887の方法によって決定される、蒸留点D10およびD90)。
【0090】
本発明のベースオイルの硫黄の含有量は、300ppm未満であり、好ましくは50ppm未満、および特に好ましくは1ppm未満である(ASTM D 3120)。
【0091】
本発明のベースオイルの窒素含有量は100ppm未満、好ましくは10ppm未満、および特に好ましくは1ppm未満である(ASTM D 4629)。
【0092】
ベースオイルまたはベースオイル成分のためには、製品の揮発度は、KV100の値が3cStから8cStであって、DIN51581−2の方法(Mathematical Noack method based on ASTM D 2887 GC distillation)によって決定され、2271.2*(KV100)-3.5373重量%以下である。
【0093】
本発明のベースオイルは、生物由来の出発材料をもとに、再生可能な原材料の使用を示していると考えられる炭素14C同位体を含む。一般的には、完全に生物由来である生成物中の全炭素量に対する14C同位体量(割合)は少なくとも100%である。炭素14C同位体含有量は1950年の大気中の放射性炭素(炭素14C同位体)含有量に基づいて決定される(ASTM D 6866)。本発明によるベースオイルの14C同位体含有量は生物源成分以外の他の成分が生成物の加工に使われる場合より低い。該含有量は、しかしながら、50%より多く、好ましくは90%より多く、特に好ましくは99%より多い。この方法によれば、生物由来のベースオイルの量が低い場合でさえも、他のタイプの炭化水素ベースオイル中で検知されうる。
【0094】
本発明の利点
本発明の方法は、副生成物としてのディーゼルおよびガソリン成分のみならず、再生可能な天然原料由来のベースオイル製造のための、ヘテロ原子を含む、生物由来の再生可能な出発材料の使用を特に許す。従来の粗油に加えて、高品質な分岐を有するパラフィン系ベースオイルのための完全に新しい原料が、本発明により提供される。またグリーンハウス効果に寄与している二酸化炭素排出もまた、再生利用不可能なものに代えて再生利用可能な原材料を使用することによって減少させることができる。
【0095】
本発明によって、炭素と水素のみを含むベースオイルが得られ、該ベースオイルの高湿度な条件での安定性は、他のヘテロ原子またはエステルを含む他のベースオイルに比べて高い。パラフィン系炭化水素成分は、腐食性の酸を生成するようなエステルのように容易には分解しない。無極性のおよび完全に飽和した硫黄分を含まない炭化水素成分が、本発明の方法を用いて得られる。酸素、および原料油の不純物のヘテロ原子が、HDO段階除去される。
【0096】
異性化段階において、炭素鎖は分岐し、これゆえ低温特性が改良され、すなわち、流動点が低く、低温でのろ過性が促進される。ワックスは混合する限界のない、ベースオイルに非常に適した粘度指数(粘性−温度−依存性)をもつオイル状の炭化水素に変換され、さらにまた潤滑剤添加物と完全に混合可能である。
【0097】
高い水素部分圧および低い不純物のレベルが、全ての工程を通じて保たれている。一酸化炭素、二酸化炭素、および水の含有量は、HDO段階または別個の気体/液体分離容器における少量の回収が残余の不純物の除去に充分であるような量にまで異性化に先んじて低下させられる。随意的な前水素化段階によって、収率が改善され、そして、触媒表面上でのコーク生成の原因となる、重合、環化および炭化水素鎖の二重結合の芳香族化、ならびに作業時間が減少される。
【0098】
本発明の方法をもって、低い流動点をもつ高品質の飽和のベースオイルが製造されうる。該ベースオイルは従って低温条件で非常に役に立つものである。製品は一般的に硫黄を含んでおらず、その粘度指数は好ましくは少なくとも120であり、ひいてはグループIIIベースオイルの応用に相応に使用されうる。
【0099】
炭素数に従って留分を与えるように蒸留された脂肪酸由来の脂肪族アルコールおよびケトンが原料油として用いられうる。本発明によれば、分岐を有する狭い沸点範囲および様々な物質特性を有するパラフィン系ベースオイルは、これらの留分から加工される。生成物成分の一般的な炭素数の範囲は以下の通りである。ガスC1〜C4、ガソリンC5〜C10、ディーセルC11〜C26、および少なくともC18の炭素数を有するベースオイルである。ただひとつの炭素数を有する原料油から製造されるベースオイルの蒸留範囲が最も狭いものである。
【0100】
狭い蒸留範囲は、生成物がいかなる初めの軽い留分(すなわち平均より明らかに軽い分子)をも含んでないことを示しており、それは生成物の低減された揮発性によって見ることができ、そしてその結果実際の応用においてその排出を減らし、潤滑剤の使用を減らす。より重い「テイル(tail)」化合物(すなわち平均よりも明らかに重い分子)もまた生成物中に含まれていない。これは非常に良好な生成物の低温特性を結果として生じる。
【0101】
本発明のベースオイルについて、炭素数および蒸留の範囲は原料油の成分によって決定される。公知技術のベースオイルでは、蒸留範囲は、好ましい動的粘性をもつ留分を得るように、生成物を蒸留することによって調整される。潤滑剤にとって、狭い炭素数の範囲およびそれゆえ狭い蒸留範囲をもつベースオイルであることが好ましい。それ故、本発明によるベースオイルの成分は、潤滑油は異なる条件下で同じように作用する類似のサイズの分子を含むことになる。
【0102】
本発明によるベースオイルは高い粘度指数をもつので、高価な粘度指数改良材(VII)または他の用語では粘度修正剤(VM)の必要性が顕著に減少する。VIIは添加剤であり、車のエンジン内において高容量のデポジットをひきおこすことが一般に知られている。加えて、VIIの量を減少させることはコスト面でも重要な節約につながる。
【0103】
また、ベースオイルが無毒であり、従来の鉱物油ベースの製品中には存在する硫黄、窒素、および芳香族化合物を含まないため、消費者が油または油スプレーにさらされるような用途においてより安全に使用されることができる。
【0104】
さらに、本発明によるベースオイルの抗酸化剤および流動点降下剤に対する反応は非常に高く、これゆえ潤滑油の耐用年数はより長く、従来のベースオイルを基にした潤滑剤に比べ、より低温な環境で使用されることが可能である。
【0105】
本発明のベースオイルはまた、より反応性に富むエステルを基にした生成物に比べて、化学的により安定であり、そしてその耐酸化性は、生物由来の不飽和脂肪酸から製造された脂肪酸および脂肪酸アルコール2量体、またはエステルを基にしたベースオイルに比べてより良好である。
【0106】
エステルに比べ、本発明のベースオイルは粗油由来の従来のベースオイル、フィッシャー−トロプシェ法から得られるベースオイル、そして炭化水素ベースオイルと、そして潤滑油添加剤とも同様に互換性がある。さらには、エラストマーとも互換性を有し、これゆえ改良することなしに現代的な車のエンジンに使用されることができる。
【0107】
本発明によるベースオイルのさらなる利点は、APIグループIIIベースオイルの規格を満たしていることである。これゆえ、新しいエンジンテストを行う必要性がなく、同じ交換法則に従って、他のグループIIIベースオイルのようにエンジンオイルの製剤として用いることができる。
【0108】
本発明のベースオイルは、好ましくは再生可能な天然原料に基づく。本発明の方法の出発材料は世界中で入手可能であり、さらに該製法の使用は例えばGTL技術とは対照的に顕著な初期投資によって制限されるようなことはない。
【0109】
本発明の方法による製品は、それらの使用および廃棄に関して、二酸化炭素ニュートラルであり、これは化石原料由来の生成物と比べて大気中の二酸化炭素量を増加させないことを意味している。
【0110】
少なくとも1つのメチル分岐が、本発明の方法によって製造される炭化水素成分の炭化水素主鎖の中心に含まれている。C5〜C13の原料油から製造された、ディーゼルクラスの少なくとも1つのメチル分岐を有するこのようなC11〜C26炭化水素は、優れた低温特性をもつ。すなわち、それらは低温でも液体であり、その曇点は低い。これに対し、より重いC26〜C40の炭化水素成分のためには、およびベースオイルの用途にとっては、1つ以上の分岐が必要であり、該分岐は主に水素化異性化によって得られる。
【0111】
本発明による方法によって製造される炭化水素成分の特性は卓越している。製品は混合に関する制限がなく、ベースオイルとして良く適しており、さらにまた製品は潤滑油添加剤と混合可能である。
【実施例】
【0112】
本発明はここで、以下の実施例によってより詳細に例示される。しかしながら、本発明が実施例に記載された実施様態に限定されるものではないことは明らかである。本発明はまた、本発明から逸脱することなく他の方法で行われてもよい。
【0113】
実施例1
C16アルデヒドからの炭化水素成分の製造
アルドール縮合反応のため、パーム油由来のC16脂肪族アルデヒド200gおよび水に溶解された20%NaOH100gがパール反応器に入れられた。混合は250rpmで、温度は250℃に、そして圧力は0.5MPaに調整された。緩やかな窒素パージが、反応から遊離される水を取り除くために維持された。反応は、GC分析で縮合したアルデヒドの量が安定化されるまで行われた。反応後、生成物は塩酸によって中和され、水で洗浄され、そして塩化カルシウムで乾燥された。
【0114】
次のHDO段階では、上記で得られた縮合されたアルデヒドが高圧のパール反応器中で、乾燥し活性化されたNiMo/Al23触媒を用いて水素化されて、メチル分岐したパラフィンが得られた。アルデヒドは340℃で5MPaの圧力下で、300rpmで攪拌されながらアルデヒドのピークがFTIRスペクトルで検知されなくなるまで水素化された。得られたメチル分岐を有するC32パラフィン系ワックスの流動点は69℃であった。
【0115】
実施例2
C23ケトンおよびフルフラールからの炭化水素成分の製造
アルドール縮合段階において、14.6gのラウロン(パーム核油由来のC23ケトン)、150mlのイソプロパノールおよび15mlの10%NaOH水溶液が混合され、そして、丸底フラスコ中で80℃にて20分間還流された。15gのフルフラール(アルドヘキソース糖由来のアルデヒド)が添加され、そして加熱還流が5時間継続された。放冷後、アルコールがロータリーエバポレーターによって蒸発させられた。反応は繰り返され、そして2度の合成からの残渣が酢酸エチルに溶解され、氷中で冷却され、そして未反応のラウロンが低温溶液からろ過された。
【0116】
次のHDO段階では、上記で得られた縮合されたアルデヒドが高圧のパール反応器中で、乾燥し活性化されたNiMo/Al23触媒を用いて水素化されて、メチル分岐したパラフィンが得られた。アルデヒドは320℃で5MPaの圧力下で、300rpmで攪拌されながら5時間水素化された。得られたメチル分岐を有するC32パラフィン系ワックスの流動点は69℃であった。
【0117】
実施例3
植物油由来のケトンからの炭化水素成分の製造
アルドール縮合段階において、10gのパーム油脂肪酸由来のC31/C33/C35ケトン混合物および2gのNaOHが丸底フラスコ中撹拌下30分間400℃まで加熱された。放冷後、合成生成物が50mlの酢酸エチルに溶解され、ろ過され、そして希釈液が蒸発させられた。
【0118】
次のHDO段階では、上記で得られた縮合生成物が、実施例2同様に水素化された。分岐したワックスの流動点は35℃であった。
【0119】
実施例4
水素化異性化
実施例1で得られたC32パラフィンワックスが、パール反応器中で、還元されたPtモレキュラーシーブ/Al23触媒を用いて異性化され、ベースオイルクラスの分岐のパラフィンを得た。前加熱されたパラフィンは、340℃で3MPaの水素圧の下、−15℃未満の流動点が得られるまで異性化された。最終的に、軽い留分は減圧下生成物から蒸留された。
【0120】
実施例4で得られたベースオイルの特性が、公知技術の製品の特性とともに、次の表3に表されている。
【0121】
【表3】

【0122】
C1〜C40アルデヒドおよび/またはC3〜C79ケトン、C2〜C40水酸化アルデヒドおよびそれらの混合物が原料油として適している。合成および生物由来、両方のアルデヒドおよび/またはケトンが使用されうる。生物由来のC4〜C24脂肪族アルデヒドおよび/またはC7〜C47ケトンが、随意的の1または複数の、好ましく使用される公知技術の精製および/または調整段階に付される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】アルデヒドおよびケトンの縮合、水素化脱酸素化および異性化を含む方法から炭化水素成分を製造する本発明の方法の好ましい一実施様態を概略的に示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともC18の炭素数を有する分岐の炭化水素を含み、少なくとも90重量%の飽和炭化水素を含み、15重量%以下のモノナフテンならびに1重量%以下の融合ジナフテンおよびポリナフテンを含み、かつ少なくとも60重量%の飽和炭化水素が、5以下の炭素数範囲内であることを特徴とするベースオイル。
【請求項2】
ベースオイルが、少なくとも95重量%の飽和炭化水素を含みかつ少なくとも75重量%の飽和炭化水素が3以下の炭素数範囲内であることを特徴とする請求項1記載のベースオイル。
【請求項3】
少なくとも97重量%の飽和炭化水素を含むことを特徴とする請求項1または2記載のベースオイル。
【請求項4】
ベースオイルの粘度指数が、120より高く、好ましくは少なくとも130であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベースオイル。
【請求項5】
ベースオイル中の全炭素量中の14C同位体含有量が、1950年の14C同位体濃度の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベースオイル。
【請求項6】
C1〜C40アルデヒド、C3〜C79ケトン、C2〜C40ヒドロキシアルデヒドおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアルデヒドおよび/またはケトンを含む原料油が、アルドール縮合触媒の存在下で80〜400℃の範囲の温度で縮合され、縮合生成物が水素化脱酸素化触媒の存在下、0.1〜20MPaの範囲の水素圧下、100〜500℃の範囲の温度で水素化脱酸素化され、かつその後、異性化触媒の存在下、0.1〜20MPaの範囲の水素圧下、100〜500℃の範囲の温度で水素化異性化されることを特徴とするベースオイルまたは請求項1〜5のいずれかに記載のベースオイルを製造する方法。
【請求項7】
原料油が、C4〜C24脂肪族アルデヒド、C3〜C47ケトン、C4〜C24ヒドロキシアルデヒドおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのフィード成分を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記フィード成分が、生物起源の出発材料から誘導され、該出発材料が、植物油、植物ワックスおよび植物性脂肪;動物油、動物性脂肪および動物ワックス;魚油、魚脂肪および魚ワックス;食品用脂肪および油の回収物;遺伝子工学によって得られる脂肪、油およびワックス;藻類および昆虫由来の油および脂肪;酸加水分解法によって糖質から製造されるアルデヒドおよびケトン、ならびに該出発材料の混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
アルドール縮合触媒が、アルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
水素化脱酸素化が、150〜350℃の範囲の温度で、1〜15MPaの範囲の水素圧の下で行われることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
水素化脱酸素化触媒が、元素周期系の第VIII族または第VIA族の金属からなる群より選択される少なくとも1つの成分、および担体を含み、該触媒が、好ましくはPd、Pt、Rh、Ru、Ni、NiMoまたはCoMo金属、および活性化炭素、アルミナおよび/またはシリカ担体を含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
水素化異性化が、1〜15MPaの範囲の水素圧の下、200〜400℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
水素化異性化触媒が、元素周期系の第VIII族の金属、モレキュラーシーブおよび/または担体を含み、該触媒が好ましくは、モレキュラーシーブならびにPd、PtまたはNi金属および/または担体を含み、該担体がアルミナおよび/またはシリカであることを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
縮合の前に、前水素化が、0.1〜20MPaの間、好ましくは1〜10MPaの間の水素圧の下で、50〜400℃の間、好ましくは150〜300℃の間の温度で、前水素化触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項6〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前水素化触媒が、担持された、元素周期系の第VIII族および/または第VIA族の金属を含み、該触媒が、好ましくは担持されたPd、Pt、Rh、Ru、Ni、Cu、CuCr、NiMoまたはCoMo触媒であり、担体が、活性化炭素、アルミナおよび/またはシリカであることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
炭化水素または炭化水素の混合物が、原料油におよび/または製法段階で希釈液として添加されることを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
副生成物として、ディーゼル成分およびガソリンが製造されることを特徴とする請求項6〜17のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−518532(P2009−518532A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545028(P2008−545028)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050550
【国際公開番号】WO2007/068797
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(505081261)
【Fターム(参考)】