説明

分岐ポリアルキレンオキシド改質耐付着性表面を有する逆浸透膜

生物付着に対して長期間の耐性を示す複合膜は、多孔質支持体及び外部表面を有する架橋ポリアミド識別層、その外部表面に結合した分岐ポリアルキレンオキシド(PAO)ポリマーを含む識別層を含む。分岐PAOポリマーは、通常、櫛型又はブラシ型分子の構造を有し、次式(I):RO−[(CHR′)n−O]m−V(Rは水素又はC1-20脂肪族又は芳香族基であり、Vは任意のポリマー重合し得る部位を含む任意の基であり、各R′は独立に水素又は短鎖アルキル基、nは1〜6の整数であり、mは1〜約200の整数である)のPAOマクロモノマーの重合により作製される。α末端基は、重合することも共重合することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜に関する。1局面において、本発明は、逆浸透(RO)膜に関し、一方、他の局面において、本発明は、薄膜複合(TFC)RO膜に関する。さらに他の局面において、本発明は、多孔質支持体と運転中の膜の付着物を減少又は防止するために外部表面が化学的に改質された識別層とを備えたTFC−RO膜に関する。さらの他の局面において、本発明は、TFC−ROの識別層の外部表面を改質する方法、及び改質されたTFC−ROを使用する方法である。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミドTFC−RO膜は、我々の日常生活において至る所にあり、塩水の脱塩、超純水の製造、環境汚染処理などの多くの産業分野において用途を見出している。そのような膜の次世代に向けた傾向は、全体的に増強された膜の性能を提供するために、それらが構築されているポリマー材料のより洗練された及び特化された機能を求めることである。次の順序として、このことは、機能及び性質が膜の目的の用途に精密に調整された、いわゆる「注文に合わせた」材料を求める需要を駆り立てる。
【0003】
RO−TFC膜の注文に合わせた材料は、(i)RO膜の薄膜識別層を形成する全面的に新規なポリマーの設計及び合成、又は(ii)薄膜の物理的及び/又は化学的改質のいずれかにより得られる。前者のアプローチは、水流束は増加するが塩除去率の相当の損失を伴うか、又はその逆のTFC−RO膜を製造してきた。後者のアプローチは、(i)種々の化学物質による膜の薄膜表面の後処理、又は(ii)薄膜形成中の添加剤使用のいずれかの結果として生ずる。
【0004】
後処理に関して、多数のRO膜が、架橋性官能基を備えたポリビニルアルコール(PVA)又は酢酸ビニルホモポリマー(例えば、エア・プロダクツ・ポリマー社(Air Products Polymers, L.P.)から入手できるVinac(登録商標))のいずれかでコートされてきた。添加剤の使用に関しては、多数の膜、特にナノ濾過膜が、膜中に組み込まれていると推定されるポリマー添加剤を用いて調製されて来た。識別層の外部表面の改質から生ずる膜の重要な改善は、長期運転中の識別層安定化、及び膜輸送特性の変化に基づく流量減少に対する除去率改善の均衡を含む。
【0005】
図1は、市販され成功しているRO−TFC膜、例えば、ミネソタ州エディナ(Edina)のフィルムテック社(FilmTec Corporation)によるFT−30 TFC−RO膜の断面の図式表示である。第1の、即ち最上層は、超薄障壁即ち識別層であり、通常、厚さ10〜100ナノメートル(nm)の架橋ポリアミドを含む。この層を調製する1つの方法は、水相中のm−フェニレンジアミン(MPD)と有機相中のトリメソイルトリクロリド(TMC)との界面重合による方法である。
【0006】
第2の、即ち中間層は、通常、ポリスルホンなどのエンジニアリングプラスチックを含み、それは、通常、約40ミクロン(μm)の厚さを有する。この第2層は、最上層のために硬くて平滑な(第3層に比較して)表面を提供し、それは、最上層が、高い運転圧力、例えば10〜2,000psiの下で機能することを可能にする。
【0007】
第3の、即ち最下層は、通常、ポリエステル不織布、例えば、約120μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)ウェブである。この第3の、即ち最下層は、通常、最上層に適当な直接の支持体層を提供するには、あまりに多孔質で不規則であり、それ故、第2の即ち中間層が必要になる。
【0008】
RO−TFC膜は、通常1つ又は2つの異なる形状、即ち、平板又は螺旋形に巻かれた形状で使用される。平板形状は、単独で膜であるか、又はより典型的には、多孔質のスペーサーシートにより互いに分離され、相互に積み重ねられて、供給溶液と透過排液との間の板として配置された複数の膜である。螺旋状に巻かれた形状は、図2に図式的に示してあり、それは、単に、中央の供給チューブの周りにコイル状に巻かれた膜とスペーサーの積み重なりである。両方の形状は、当技術分野において周知である。
【0009】
性能効率の観点から、TFC膜は、通常、塩分離性を犠牲にせずに劇的に増大した水透過性を有することを求められる。優れた水流束及び妥当な塩除去特性を有するそのような芳香族ポリアミドTFC膜は、米国特許第6,337,018号に教示されているように、TMCの錯体を形成する有機金属及び非金属で反応速度論的に変化させられたMPD/TMCの界面反応により形成される。これは、(i)拡散係数を低下させることによりTMCの反応速度を低下させ、且つ立体障害を使用してMPDを酸塩化物部位から遮蔽し、及び(ii)TMCを錯体化して酸塩化物を加水分解することから水を遮断する。
【0010】
化学的に類似したFT−30膜とは違って、MPD/TMCの界面重合に基づく反応速度論的に改質されたタイプのものは、表面形態における改質及び薄膜形成中でのポリマー鎖の組織化における変化が生ずる。組み合わされた効果は、膜の除去率を増大させること、並びに他の変形プロセスの使用を可能にして反応速度に、したがって膜性能に影響することである。このアプローチは、ある種の製品、例えば、フィルムテック社のXLE膜で、界面重合後の残存酸塩化物の減少及び生ずる薄膜の改善された膨潤能により、膜流束の100%を超える増大を可能にして、それは、薄膜表面の将来の後処理における流量損失を補償する性能を与える。
【0011】
膜プロセスを使用する多くの応用は、広範囲のポリマー化学を利用し得ることから利益を得ることができ、例えば、それらはより良い性能、より大きい耐久性及びより少ない付着物を示すことができ、またそれらは、より安価なポリマーを使用することができる。しかしながら、新規な化学の不確実性及び会社の新規ポリマーの開発に投資することへの逡巡により、広く使用されているポリマーの表面改質などの別のアプローチの重要性が増大している。
【0012】
RO膜分野における研究及び産業の目的の一つは、運転の効率を向上させ且つコストを低下させるために、長期間にわたって、塩除去を犠牲にせずに水流束を増大又は少なくとも維持することである。それにも拘わらず、この目的の達成における主な困難は、膜の運転期間を通して深刻な流束低下を生じさせる付着物である。
【0013】
付着物の主なタイプは、結晶性付着物(溶液生成物中の過剰に基づく鉱物性スケール生成、又は鉱物の沈着)、有機付着物(溶解したフミン酸、油、グリースその他)、粒子及びコロイド付着物(粘土、堆積、粒子状フミン物質、デブリ及びシリカの沈着)、及び微生物付着物(生物付着、及び微生物の付着及び蓄積、及び生物膜の形成)である。付着物を減少させるための種々のアプローチが使用され、これらは、通常、供給溶液の前処理、膜表面特性の改質(例えば、疎水性又は親水性、及び/又は電気陰性又は電気陽性基の結合)、モジュール配置及びプロセス条件の最適化、及び定期的クリーニングを含む。しかしながら、これらの方法は、適用性及び効率が大きく変化し、その結果、これらの問題を解決するため絶え間なく継続した努力が要求されてきた。
【0014】
ポリアミドRO−TFC膜にとって、微生物により惹起される表面上の生物膜形成による付着物は、最も重要なことと見なされてきた。濾過されるべき、細菌及びウイルスなどの水中の微生物、並びに他の顕微鏡的物質、例えば、タンパク質は、膜表面に付着して、水相から蓄積した栄養物を消費して増殖する。付着した微生物は、細胞外ポリマー状物質(EPS)を分泌し、これは、微生物及びタンパク質と組み合わされて、生物膜を形成する。生物膜形成は、残留消毒剤濃度の減耗に関連すると信じられており、その生物膜は、リットル当たり0.04〜0.05ミリグラム(mg/L)の残留遊離塩素を含む塩素化水などの消毒剤処理水からは形成されない。しかしながら、塩素化は、微生物の破壊に有効ではあるが、トリハロメタン及び他の発癌物質などの有害な副生物を生じさせる。
【0015】
膜表面のタンパク質、細胞及び細菌性付着物は、膜表面、即ち識別層の外部表面を生理的液体及び組織に露出すると自然発生的に生ずる。多くの場合に、生物付着は、RO膜の機能を損ない得る有害事象である。生物付着を阻止するための普通の方策は、膜表面上に耐付着性ポリマー又は自己集合した単分子層を継ぎ合わせることを含む。多くの合成ポリマーが、耐付着性コーティング剤として研究されて、これら耐付着性試験でいろいろな成功を収めている。
【0016】
医用デバイスにおいて表面を非特異的タンパク質吸着に対して不活性にするために使用される材料の、1つの著名な例は、ポリエチレンオキシド(PEO)であり、線状で柔軟性の親水性及び水溶性ポリエーテルである。金表面上にオリゴエチレングリコール(OEG)基を提示する(HS(CH211(EG)nOH)におけるように)自己集合した単分子層(SAMS))も、エチレングリコール単位の数がたとえ3のように小さくても、タンパク質の吸着を防止する。グラフトされた線状ポリアルキレンオキシドオリゴマーを主成分とする耐付着性膜は既知であり、それらは一方では優れた流束及び塩透過性能を提供しながら、付着に対する改善された耐性を提供する(米国特許第6,280,853号)。
【発明の開示】
【0017】
本発明は、付着の減少した複合膜及びそれらを調製する方法を提供する。1態様において、本発明は、生物膜の形成を防止する手段として、非特異的タンパク質吸着を防止することができる新規な分岐ポリアルキレンオキシド(PAO)で改質されたTFC−RO膜を開発し、その特性を決定し、その結果、付着物を減少させた。これらの分岐した、特に高度に分岐したPAOによる改質TFC−RO膜は、付着、特に生物付着環境における驚異的に改善された安定性を示す。その上、本発明の膜は、塩基性又は酸性いずれの条件下でも、線状PAO改質TFC−RO膜よりも徹底的に清浄化される。
【0018】
他の態様において、本発明は、多孔質支持体、及び線状PEO標準に対してサイズ排除クロマトグラフィーにより測定された相対重量平均分子量(架橋前)が、少なくとも約5,000の、好ましくは少なくとも約10,000の、より好ましくは約20,000と約1,000,000の間及びより一層好ましくは約100,000と約500,000の間の架橋及び分岐ポリアルキレンオキシドポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層を含む複合膜である。
【0019】
本発明のある好ましい態様において、本発明の実施において使用される分岐PAOポリマーは、次式のマクロモノマーの重合により作製される。
RO−[(CHR′)n−O]m−V (I)
(式中、Vはα末端基であり、Rはω末端基であり、各R′は独立に水素又は短鎖、例えば、C1-3アルキル基であり、nは1〜6の整数であり、及びmは1〜約200の整数である)。マクロモノマーの重合は、α末端基で起こり、それは、V又は他のα末端基による重合又はコモノマーとの共重合のいずれも可能である。Rは、通常C1-20の脂肪族又は芳香族基、Vは重合可能な部位を含む任意の化合物の誘導体、例えば、p−若しくはm−ビニルベンゼン、又はp−若しくはm−ビニル安息香酸、又はメタクリロイルクロリド、又はアクリロイルクロリド又はイソプロペニルオキサゾリンの誘導体などの二重結合を含む基であり、R′は、好ましくは水素又はメチルであり、mは、好ましくは2又は3の整数であり、及びnは好ましくは約3と約50の間の、より好ましくは約7と約25の間の整数である。式Iのマクロモノマーは、ホモ及びコポリマーの両方、コポリマーであれば、ランダム、ブロック及びランダム/ブロック混合ポリマーを含み、例えば、PEOマクロモノマー、ポリプロピレンオキシド(PPO)マクロモノマー、及びエチレンオキシド及びプロピレンオキシド単位の両方を主成分とするランダム及びブロックマクロモノマーを含む。本明細書で使用される「コポリマー」は、2つ以上のモノマーから作られるポリマーを意味する。
【0020】
分岐PAOポリマーは、識別層の外部表面に良好なタンパク質耐性を賦与する3つの顕著な構造特性を示す。即ち(i)親水性の反復単位、即ち、水と水素結合し、したがって水溶性である単位(それは水中で膨潤する。)、(ii)脂肪族エーテル結合に基づき非常に柔軟性であるオリゴマー側鎖、及び(iii)分岐した、好ましくは高度に分岐した、外部表面のために密な保護層を形成する構造である。「識別層の外部表面」は、材料、例えば、濾過されるべき溶液、分散液等と接触している識別層の表面であり、多孔質支持体に接している識別層の表面の反対側にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
「回収率」は、生産水即ち透過液として流出する膜系供給水の百分率を意味する。膜系の設計は期待される供給水品質に基づき、回収率は、濃縮液流に基づいてバルブの初期調整により決められる。回収率は、膜系内における過飽和した塩の沈澱を防止しながら、透過流を最大にする最高レベルに固定されることが多い。
【0022】
「除去率」は、膜による系供給水から除去された溶質濃度の百分率を意味する。逆浸透において、全溶解固体(TDS)の高い除去率は重要であり、一方ナノ濾過においては、関心ある溶質は特定のものであり、例えば、硬度については低除去率で且つ有機物質については高除去率である。
【0023】
「透過率」は、「除去率」の反対の意味である。透過率は、膜を通過することができた供給水中の溶解成分(汚染物)の百分率である。
【0024】
「透過液」は、膜系により製造された精製された生産水を意味する。
【0025】
「流量」は、膜エレメント又は膜系に導入される供給水の流速を意味し、通常1分当たりのガロン(gpm)又は1時間当たりの立方メートル(m3/h)で測定される。濃縮液流量は、膜エレメント又は膜系から流出する透過しなかった供給水流の流速を意味する。この濃縮液は、供給源からエレメント又は系に当初導入された溶解成分の大部分を含む。それは通常、gpm又はm3/hで測定される。
【0026】
「流束」は、単位膜面積当たりの輸送される透過液の流速を意味し、通常、1平方フィート1日当たりのガロン(gfd)又は1平方メートル1時間当たりのリットル(l/m2h)で測定される。
【0027】
「マクロモノマー」又は「マクロマー」は、高分子量モノマーの略記である。マクロモノマーは、鎖末端に重合可能な基を有する線状高分子を一般的に指す。大部分の場合、重合可能な基は、ビニル型のものであり、典型的には、スチリル、(メタ)アクリル、又はビニルエステル基である。
【0028】
「分岐ポリマー」及び類似の用語は、非線状ポリマクロモノマー、即ち、それから伸びる1つ以上の側鎖即ち腕を有するコア鎖即ち骨格を含むマクロモノマーを意味する。マクロモノマーの重合は、一連の分岐ポリマーモデル、例えば、櫛型、ブラシ型、星型及び樹状のものを提供する。用語に若干の流動性は存在するが、櫛型ポリマーは、通常、骨格と各分岐点に依存して、各々同じ方向へ伸びる1本の腕とを含むポリマー(真直ぐな即ち捩れのない骨格と推定される)を指す。ブラシ型ポリマーは、通常、各分岐点に依存する2本の腕を有する骨格、又は各分岐点から伸びる各1本の腕を有するが、全ての腕が共通の同じ方向に伸びてはいない骨格のいずれかを含むポリマーを指す。星状ポリマーは、通常分岐点から伸びる3本の腕を有する骨格を含むポリマーを指し、また、樹状ポリマー(即ちデンドリマー)は、通常、各官能性部位に結合した分岐した二股を有する多官能性コア分子を含むポリマーを指す。分岐した二股は、普通は系統だったモノマーで段階的に構築され、単分散の、樹状即ち世代構造に至る。一般的に、マクロモノマーの単独重合は、明確な構造の規則的な櫛型ポリマーを与える。このように、PEOマクロモノマー、例えばC1PEO−MA(スキーム1参照)は、容易に重合して、各々メチルアクリレート骨格の反復単位毎に規則的な及び密な間隔にある、PEO側鎖を有するポリメタクリレートを与える。ブラシ型ポリマーは、Zhang, M.およびMuller,A.H.E.,「Cylindrical Polymer Brushes」,J.Polym.Sci.,Part A,Polym.Chem.,2005年,第43巻,p.3461−3481により、もっと詳細に説明されている。
【0029】
「グラフトポリマー」及び類似の用語は、マクロモノマーが、重合して又は他のコモノマーと共重合して均一な高分子を形成したことを意味する。マクロモノマー及びコモノマーは、反応なしの単純な混合ではなく、フリーラジカル機構により共有結合を通して結合される。
【0030】
「線状ポリマー」及び類似の用語は、マクロマーが本質的に分岐を含まないことを意味する。本明細書で使用する「分岐」及び類似の用語は、骨格に結合した防護側鎖を意味し、腕の最小の長さは、少なくとも骨格を誘導体化している最長のモノマーの長さである。スキーム1において、腕又は分岐は、PEOから誘導された分子セグメントであり、骨格が誘導体化されているメタクリレートモノマーの一部を形成する骨格に結合したメチル基ではない。
【0031】
本発明の複合膜は、多孔質(微孔質とも呼ばれる。)支持体及び比較的薄い架橋ポリアミド識別層を含む。幾つかの知られた態様、例えば、米国特許第6,280,853号の複合膜においては、線状PEO基が、架橋ポリアミド識別層の表面にグラフトされている。本発明においては、これらのPAO基は、分岐した、好ましくは高度に分岐したポリマーの構造、例えば、櫛型又はブラシ型であり、且つ表面の官能基又は高分子内反応のいずれかにより架橋している。グラフト化は、予め作製された膜、例えばフィルムテック社から入手できるFT−30への後処理として、又は製膜中に、例えば、架橋識別層を形成する、ポリアミンと多官能性ハロゲン化アシルとの界面重合反応の開始直後に、成し遂げることができる。複合膜の製造及びPAO基での表面グラフト化は周知であり、就中、米国特許第6,280,853号に記載されている。
【0032】
本発明の好ましい1態様において、PAOマクロモノマーは、PEOのマクロモノマーである。数平均分子量(Mn)が約200〜約10,000g/モルのPEOマクロモノマーは、種々の実用的用途のある、周知の水溶性で市販のノニオン性オリゴマーである。それらは、1つ以上の任意の多数の在来のモノマーとの共重合による十分明確なグラフトコポリマー/ブラシ型、及び単独重合による規則的な櫛型ポリマーの合成を記載する多数の最近の発表の主題であった。PEOマクロモノマーの最も重要な及び興味ある特徴の一つは、他のPAOマクロモノマーと同様、それらの両親媒性である。これらのマクロモノマーは、それらの末端基、R及びV、及びPEO鎖長の性質に依存して、水、アルコール、ベンゼン、及び石油さえも含む非常に広範囲の溶媒に可溶である。そのような両親媒性は、在来のモノマーでは利用可能でなく、このことは、それらの重合における化学的性質を非常に便利なものにする。
【0033】
マクロモノマーの重合は、一連のモデル分岐ポリマーを提供する。特に、単独重合は、明確な構造の規則的な櫛型及びブラシ型ポリマーを与える。例えば、PEOメタクリレートは、有機溶媒中、水中又はバルクで、フリーラジカル開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、又は原子移動ラジカル開始剤(例えば、CuBr/2,2−ビピリジン/2−ブロモイソ酪酸エチル)で容易に重合して、スキーム1に示したように、各メタクリレート骨格の反復単位毎に、各々規則的に且つ密である、PEO側鎖を有するポリメタクリレートを生ずる。
【0034】
【化1】

【0035】
上記のように、PEOメタクリレートの重合により得られたフィルムの分岐構造は、この構造が高密度グラフト化及びPEOセグメントの高運動性の両方と結びつくので、タンパク質吸着を避けるべき場合に特に興味がある。表1は、分岐した、例えば、櫛型又はブラシ型ポリマーの合成に有用な種々のPEOマクロモノマーの性質をまとめて示す。全てのモノマーは、広く市販の供給源から入手可能である。α及びω基の両方並びにポリマー鎖長は、種々の要求及び性能に合わせるために改質することができる。
【0036】
【表1】

【0037】
性能改善のために、線状PVAなどの簡単なコーティングが、TFC−RO膜の識別層の外部表面に適用されてきたけれども、経験により、それらは、時間が経つとしばしば洗い落とされて性能低下を呈することが示された。分岐ポリマー中に架橋性基を組み込むことにより、この欠点を抑え又は排除することができる。懸垂架橋性基をポリマー中に組み込むための1つの普通の方法は、重合中に二官能性コモノマーを使用することによる。二官能性基を含むモノマーは、独特のポリマー構造の調製を可能にする。そのようなモノマーの1つは、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン(IPO)であり、それはPEOメタクリレートなどの最も工業的に有用なモノマーとイソプロペニル基により、容易に共重合し、一方オキサゾリン官能性基は、酸触媒での重合及びカルボン酸による開環反応による簡単なカップリングの両方が可能である。結果として、多くのTFC−RO膜がその表面上に多くのカルボン酸官能性を含むので、オキサゾリン基は、膜の識別層の外部表面上の架橋性基として役立つ。
【0038】
他の有用な架橋性モノマーは、フリーラジカル条件下で、PAOメタクリレート、例えば、PEOメタクリレートと共重合して、懸垂エポキシ基を有する(エポキシ樹脂形成と全く同じように)分岐PAOポリマーを形成することができるメタクリル酸グリシジル(GMA)である。オキシラン(グリシジル、エポキシ)基と膜表面上の残留アミン(MPD)と間の反応が、架橋コーティングの基本をなす。さらに他の有用な架橋性モノマーは、無水マレイン酸(MAH)である。酸無水物基は、識別層の外部表面上の残留アミン基と反応させて、膜の表面上に架橋ポリマーを形成させることができる。
【0039】
【化2】

【0040】
AIBNをラジカル開始剤として使用する、ジオキサン中におけるPAO例えばPEOメチルエーテルメタクリレートとIPO又はグリシジルモノマーのいずれかとのフリーラジカル共重合(50%wtのモノマー)は、やはり水溶性の高分子量の分岐ポリマーを生ずる。IPO及びMAHは、水溶液中で分解するので、IPO又はMAHがコモノマーとして使用されるとき、水は重合溶媒として使用されない。分岐ポリマーの相対分子量は、狭いポリエチレンオキシドを標準として使用して、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により測定し、これらを表2で報告する。これらのポリマーの高度の多分散性(表2及び図3)は、それらが高度に分岐していることを示す。そのように高度に分岐したPEOマクロマーは、線状PEOマクロマーよりも溶液中で圧縮されているので、これらのマクロマーの絶対分子量は、表2で報告したよりももっと高い可能性がある。
【0041】
【表2】

【0042】
それに反して、PAO例えば、PEOメチルエーテルメタクリレートの原子移動ラジカル重合(ATRP)は、水中で又はバルクで、メタクリル酸グリシジルコモノマーと共に又はそれ無しで実施することができる。例えば、遷移金属触媒がCuBrであり、リガンドが2,2′−ビピリジンであるATRP配合物が調製された。開始剤2−ブロモイソ酪酸エステルは水に不溶性であるが、PEOメチルエーテルメタクリレート水溶液中に20℃で溶解する。種々の条件をこの重合について検討して、結果を表3中に報告する。AIBN重合に比較して、ATRPは、分子量及び多分散性(大部分の場合2.0未満)の良好な制御を提供した。ATRP水溶液中20℃の重合速度は、高温(65℃)における従来のATRP(バルク又は有機溶媒中)より著しく速い。さらに、ATRP条件下で、高い反応率が達成されるが、一方、残留メタクリル酸グリシジルは、大部分の場合に重合後0.05%未満である。
【0043】
【表3】

【0044】
下で報告する実施例において、分岐PEOポリマーの相対重量平均分子量データを提供するために、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用した。実験手順は次の通りであった。
試料調製: 溶液は、約0.04グラムの試料を10mLの0.4w/v%LiNO3含有N,N−ジメチルホルムアミド中に入れることにより調製した。最終DMF試料溶液中の目標ポリマー濃度は2mg/mLであった。溶液は、約4時間振り混ぜ、注入に先立ってAlltech 0.2ミクロン(μm)ナイロンフィルターを通して濾過した。
ポンプ: 1.0mL/minの名目流速のWatersモデル2695分離モジュール。
溶離剤: 流路中で真空脱ガスした0.4w/v%LiNO3含有Fisher ACS保証ジメチルホルムアミド。
インジェクター: 50マイクロリットルの試料を注入するWatersモデル2695分離モジュールセット。
カラム: Two Polymer Laboratories 10μm Mixed−B、50℃。
検出: Waters 410DRI、感度128、スケールファクター1、及び温度50℃。
データシステム: Polymer Laboratories Calibre GPC/SEC、取得バージョン6.0及び再分析バージョン7.04。
較正: Polymer Laboratories提供の960〜1,169,000g/モルの範囲の狭い分子量のポリエチレンオキシド標準を使用して較正を決定した。
Yau,W.W.,Kirkland,J.J.,及びBIy,D.D.著,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley & Sons,NY,1979年に、SEC法の一般的説明がある。
【実施例】
【0045】
膜の調製
FT−30逆浸透複合膜は、フィルムテック社のパイロットコータ−を用いて連続プロセスで調製した。まずMPDを、裏打ちの不織布を備えた予め作製した微孔質ポリスルホン支持体に水中で供給し、次に支持体を水抜きしてニップローラーにかけて過剰の水溶液を除去した。支持体の最上表面に、TMCのIsopar L(エクソンモービル社(ExxonMobil Corp.)から入手可能)溶液を噴霧した。
【0046】
油水界面でポリアミドが形成された。最初のコーティングは、2.0〜4.0%のMPD溶液でなされ、2番目のコーティングは、0.13%(5mM)のTMC濃度でなされた。TMC溶液は、TMCに対して1:1のモル化学量論量比のTBP(リン酸トリブチル)も含むものであった。膜は、2番目のコーティング適用の後、先ず室温の水浴に、次に3.5%のグリセリンを含む98℃の浴に通した。この段階で、PEOブラシ層は、コーティングローラーとの接触により膜表面をコートされ、膜は、空気加圧浮上ドライヤーにより95℃の温度で乾燥された。試験は、150psi及び2000ppm NaClの標準試験条件にしたがって、BW膜について行なった。
【0047】
XLE膜の後処理
XLE BW RO膜は、フィルムテック社から得た。水性処理溶液は、特に断らない限り、適当量の水を75℃に加熱し、続いて異なる重量平均分子量(Mw)を有するいずれかのポリエチレンオキシド(PEO)ブラシの適当量を加えることにより調製した。膜は、所定の時間、PEOブラシ溶液中に浸漬した。次に、膜は、約2,000ppmを含む水性試験溶液を使用して、膜にかかる圧力150psiで試験した。
【0048】
AIBN開始剤によるPEOブラシの合成
250mLの丸底フラスコ中に、34.4gのポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(平均Mn≒475)、5.6gのメタクリル酸グリシジル、40gのジオキサン及び1.0gのAIBNを加えた。生じた混合物を15分間アルゴンでパージして、次にアルゴン下で8時間75℃で加熱した。狭い分子量のポリエチレングリコール標準を基準として113,000g/モルのMw(Mw/Mn=7.15)を有するブラシ型ポリマーの形成が、SEC分析により確認された。このポリマー溶液は、精製せずに使用した。
【0049】
ATRPによるPEOブラシの合成
小さいACEディールス・アルダー反応管中に29.2gのポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(Mn≒475g/モル),及び3.6gのメタクリル酸グリシジルを加えた。混合物は、アルゴンで5分間パージしてから、104mgのCuBr、226mgの2,2′−ビピリジン(オールドリッチ社(Aldrich)のα,α′−ジピリジルとしても知られている。)を加えた。溶液は直ちに褐色になり、Cu(I)−2,2′−ジピリジル錯体の形成を示した。アルゴンのパージを継続しながら,80mgの2−ブロモイソ酪酸エチル開始剤を加えて、溶液をテフロン(登録商標)キャップで密封した。混合物を65℃で7時間、油浴で加熱した後、粘稠なポリマーが得られ、SEC分析は、このポリマーが2.1の多分散性とともに約41000g/モルのMnを有することを示した。それをTHF中に溶解して、エーテル中に入れて沈澱させ、生じたポリマーを単離した。
【0050】
PEOブラシ改質膜の性能
PEOブラシによる表面改質に基づく種々のポリアミド膜の性能を、図4及び5に示す。全ての膜は、フィルムテック社のパイロットプラント技法を使用して作製された。図4は、コートされていない膜(XLE対照)、PVA(BW標準)でコートされた標準汽水膜、線状PEOマクロマーでコートされた2種の膜(それぞれ475及び1100のMnを有するPEOマクロマー)、及びPEOマクロマー(Mn:1100)とIPOモノマー(14wt%)との共重合により作製されたブラシでコートされた膜の性能(流束及び0.2,0.4及び0.6%水溶液の濃度でのNaCl透過)を示す。PEOマクロモノマー重量が増加するにつれて、水流束は減少し、一方塩透過は本質的にレベルを保った。しかしながら、PEOブラシが膜表面上にコートされたとき、塩透過は大きく改善され、水流束は減少した。高分子量ポリマーは、低分子量ポリマーよりも表面に長くとどまる傾向があるので、これは、おそらくPEOの表面被覆に基づくものである。その上、PEOの適用においては、それが比較的高い粘度を有すれば、増大した量のPEOを表面に適用することができるので、粘度が重要な役割を演じ、これはコーティングローラーと膜との間の摩擦を減少させる。それに加えて、PEOマクロモノマーは、メタクリレートを懸垂反応性基として含み、一方PEOブラシは、IPOを架橋性基として含み、そのような構造上の相違は膜表面の被覆に影響する。全ての膜について、BW標準は最悪の塩透過を与えるが、PEOブラシ膜は最良の塩透過を与える。
【0051】
図5は、PEOブラシの表面改質により調製された数種の他の膜の、流束及び0.2、0.4及び0.6%の水溶液濃度でのNaCl透過を示す。予想通り、XLE対照の場合に高い流束が観察された。XLE対照膜がPEOブラシでコートされたとき、流束は劇的に減少して、標準BW膜の流束レベルに達した。しかしながら、これらのコートされた膜の塩透過は、150psiの試験圧、及びBW膜の1/3に過ぎない2000ppm NaClで、0.3%のレベルであった。全体として、BW標準膜は、本質的に同様な流束を有するが、高流束XLE膜の表面改質に基づくずっと低い塩透過を有する。PEOブラシの同様な反復単位であれば、PEOブラシの鎖が長いほど、塩透過は改善されるが、流束は減少する。
【0052】
それに加えて、メタクリル酸グリシジル(GMA)濃度のPEOブラシ改質BW膜性能に対する効果を評価した。結果を表4に示す。ここで報告するように、重合中のGMAがより少ないPEOブラシの方が、塩透過が良い。より多いGMAは、塩透過を増大させ、また流束を減少させる。最適点は、10%GMAの周辺である。コモノマーの同じ濃度で、PEOを含むIPO(オキサゾリン)は、PEOブラシを含むGMAよりも悪い塩透過を与える。標準BW対照及びXLE対照に比較して、PEOブラシでコートされた膜は、塩透過を2〜5倍減少させる。有効な表面改質を得るためには、PEOブラシの濃度は、0.3%の周辺でなければならない。BW膜の調製のための表面改質におけるPVA濃度が約1%であるならば、これも、劇的な減少である。
【0053】
【表4】

【0054】
上記のように、架橋芳香族ポリアミドは、水相中のMPDと有機相中のTMCとの現場(in situ)界面重合により作製され、工業的複合膜の開発において相当重要なものである。そのようなXLE膜の塩透過及び流束は、MPD及びTMC濃度及びTMCのTBPに対する比を制御することにより調節することができる。これは、付着の評価に対する流量の効果を減少させ又は排除することができる。例えば、MPD濃度を、標準の2.4%から5.0%に増大させることにより、流束は、標準のXLEレベルからその半分のレベル即ち、PEO改質膜のレベルに非常に近いレベルに調節することができる。図6及び7において、市販のLE及び517−LE膜は両者とも、追加されたコーティング層がないものであった。しかしながら、5.0%のMPDが517−LE調製中に使用されたので、流束は異なり、その結果、517−LEが、直接的比較のための非コーティング標準になった。
【0055】
膜と未精製水中の成分との間の相互作用は、膜を通る流束の急速且つ頻繁な不可逆的低下を惹起する。多くの研究は、天然有機物質(NOM)が最も重要な付着物であることを示唆する。図6は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びドデカン(C12の炭化水素)の付着した選択された膜の性能を示す。試験は、PEO改質表面から作製された実際のエレメント及び幾つかの市販のエレメントで行った。図6からわかるように、PEOブラシ改質膜に対して保たれた流束の百分率は、市販の膜よりもずっと高く、PEO表面改質膜はNOM付着に耐え得ることを明確に示している。それに加えて、PEOブラシ改質膜は、油/石ケン付着及びクリーニング後の流量回復に対して傑出した性能を示し、一方従来のエレメントは、油/石ケン付着に対して非常に貧弱な性能を示した。
【0056】
PEO改質表面の細菌/細胞の付着に長期間にわたりに耐える能力は、市販膜用の試験を、水道水で、細菌の栄養として酢酸ナトリウムを使用して実施することにより測定した。エレメントは、全ての膜が同様な流束(150psi及び2000ppm塩化ナトリウム(NaCl)で約30gfd)を有して、その結果流束の効果が最小化されるように、特別に設計され製作された。
【0057】
図7に示したように、PEOブラシ改質表面は、2週間を超える期間、顕著に低いレベルの細胞付着を示し、その結果流量低下は試験された膜中で最低であった。対照的に、市販BW膜は大きい流量低下を示す。膜クリーニング後の流量回復は、同じ傾向を示し、即ちPEOブラシ膜は、それらの耐付着特性に基づき、最もよく機能する。表面に対する細胞の付着は、通常、吸着された細胞外多糖により媒介されるので、PEOブラシでコートされた膜は、実験進行中を通して非常に低い細胞外多糖吸着を有した。この優れた細胞外多糖耐性は、数週間維持され、それは、固定用の表面活性基(エポキシ)及び耐付着性ドメイン(PEO鎖)の化学組成に直接帰することができる。エポキシ基は、MPDの残留アミノ基と反応して、ポリマーの耐付着性(PEO鎖)部分のための強固な足場を形成すると信じられる。これらの基は、強酸(例えば、pH2.0)及び強塩基(例えば、pH13)によるクリーニングに対して安定である。
【0058】
その上、図7は、本発明の膜は、容易に清浄化することができることを示す。比較の膜、特に線状PEGオリゴマー(571−4,PEG Olig)で改質された膜表面は、試験の開始時から劣った性能を示した。
【0059】
PEO側鎖及びメタクリレート骨格の設計は、有効な耐付着性表面は水素結合受容体の存在、多量の水素結合供与体、中性電荷、及び水溶性を必要とするという一般原理に従う。さらに加わるPEOブラシの利点には、容易に入手できる出発原料PEOマクロモノマー、AIBNを使用する容易な重合又は共重合、及びメタクリレート官能性コモノマー及び生成コポリマーの改質の両者から得られる事実上無制限の組成融通性が含まれる。これらの新規な合成PEOブラシによる耐付着性ポリマーは、生理的、海洋性及び工業的環境において、膜表面の生物付着の長期制御を提供する。
【0060】
膜付着物を減少させるためのRO膜の表面改質のためのポリマー設計は重要である。PEOメタクリレート及び官能性コモノマー(エポキシ、無水マレイン酸、オキサゾリンその他)からのPEOブラシの合成は、FT−30型の膜上に親水性コーティングするための架橋性高分子を作製するのに非常によく適した技法である。櫛状又はブラシ状構造を有するこれらPEOブラシは、生物膜形成を防止するのに非常に有効であり、そのような新規PEOによる耐付着性ポリマーは、生理的、海洋性及び工業的環境において、膜表面の生物付着の長期制御を提供することができる。
【0061】
本発明をかなり詳細に説明したが、この詳細は例示の目的のためのものである。付記した請求項に記載された本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、上記のように多くの変更及び改変が本発明に対してなされ得る。全ての米国特許及び受理された米国特許出願は、参照により本明細書中に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】薄膜複合膜の断面の図解である。
【図2】螺旋に巻いた配置のTFC膜の図解である。
【図3】PEOマクロマーのAIBNによるラジカル重合により作製されたある架橋性PEOブラシの分子量分布を示すグラフである。
【図4】分岐PEO改質膜(PEOブラシ、MA2)と2つの線状PEO改質膜(PEOマクロマー、MA1及びMA2)の間の流束及び塩透過の比較を示すグラフである。
【図5】分岐PEOポリマーでの表面改質により調製された幾つかの膜の流束及び塩透過を示すグラフである。
【図6】本発明の架橋分岐PEO改質膜(571−5ブラシ型)と4種の市販膜とを比較する油/石ケン付着実験の結果を示すグラフである。
【図7】架橋分岐PEO改質膜(571−5)から作製されたエレメントの相対的生産性の、4種の市販膜との比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体と、架橋分岐ポリアルキレンオキシド(PAO)ポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層とを含む複合膜であって、前記ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の架橋前相対重量平均分子量を有する、複合膜。
【請求項2】
分岐PAOポリマーが式
RO−[(CHR′)n−O)]m−V (I)
(式中、Rは水素又はC1-20脂肪族若しくは芳香族基であり、Vは重合可能な部位を含む任意の基であり、各R′は独立に水素又は短鎖アルキル基であり、nは1〜6の整数であり、そしてmは1〜約200の整数である。)
のPAOマクロモノマーの誘導体を含む、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
RはC1-20アルキル基であり、Vはp−及びm−ビニルベンゼン、p−及びm−ビニル安息香酸、メタクリロイルクロリド、アクリロイルクロリド及びイソプロペニルオキサゾリンの少なくとも1つの誘導体であり、R′は水素又メチルであり、nは2又は3であり、そしてmは約3〜約50の整数である、請求項2に記載の複合膜。
【請求項4】
RはC1-12アルキル基であり、Vはメタクリロイルクロリドの誘導体であり、R′は水素であり、nは2であり、そしてmは約7〜約25の整数である、請求項3に記載の複合膜。
【請求項5】
PAOポリマーの相対重量平均分子量が、少なくとも約10,000である、請求項4に記載の複合膜。
【請求項6】
サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の相対重量平均分子量を有する、分岐ポリアルキレンオキシドポリマーであって、原子移動ラジカル重合(ATRP)条件下に、ポリアルキレンオキシドとメタクリル酸グリシジルとの共重合により調製されたポリマー。
【請求項7】
ATRP条件が、重合媒質として有機溶媒を含む、請求項6に記載の分岐ポリマー。
【請求項8】
ATRP条件が、重合媒質として水を含む、請求項6に記載の分岐ポリマー。
【請求項9】
ATRP条件が、重合開始剤としてCuBr/2,2′−ビピリジン/2−ブロモイソ酪酸エチルを含む、請求項6に記載の分岐ポリマー。
【請求項10】
サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の相対重量平均分子量を有する、分岐ポリアルキレンオキシドポリマーであって、フリーラジカル開始剤を用いて、ポリアルキレンオキシドとメタクリル酸グリシジルとの共重合により調製されたポリマー。
【請求項11】
フリーラジカル開始剤がアゾビスイソブチロニトリルである、請求項10に記載の分岐ポリマー。
【請求項12】
サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の相対重量平均分子量を有する、分岐ポリアルキレンオキシドポリマーであって、ATRP又はフリーラジカル開始剤条件下に、ポリアルキレンオキシドと2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとの共重合により調製されたポリマー。
【請求項13】
塩水を脱塩する方法であって、該方法は多孔質支持体と分岐した架橋ポリアルキレンオキシドポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層とを含む複合膜を通して塩水を通過させることを含み、前記ポリマーが、サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の架橋前相対重量平均分子量を有する、方法。
【請求項14】
未精製水を処理して精製水を製造する方法であって、該方法は、未精製水を、多孔質支持体と分岐した架橋ポリアルキレンオキシドポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層とを含む複合膜に通すことを含み、前記ポリマーが、サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の架橋前相対重量平均分子量を有する、方法。
【請求項15】
サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の相対重量平均分子量を有する、分岐ポリアルキレンオキシドポリマーを調製する方法であって、ポリアルキレンオキシドとメタクリル酸グリシジルとを、原子移動ラジカル重合(ATRP)条件下で共重合することを含む方法。
【請求項16】
多孔質支持体と分岐した架橋ポリアルキレンオキシドポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層とを含む複合膜を調製する方法であって、識別層の外部表面を、サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の架橋前相対重量平均分子量を有する、分岐した架橋PAOポリマーで、コーティングすることを含む方法。
【請求項17】
多孔質支持体と分岐した架橋ポリアルキレンオキシドポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層とを含む複合膜を調製する方法であって、識別層の外部表面を、サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の架橋前相対重量平均分子量を有する、分岐PAOポリマーで、コーティングし、次に、識別層の外部表面に結合した分岐PAOポリマーを架橋させることを含む方法。
【請求項18】
生物付着環境において使用中に蓄積した有機堆積物を、そのような環境で使用する前のように、効果的に除去する性能レベルを示す複合膜であって、多孔質支持体と分岐した架橋ポリアルキレンオキシドポリマーが結合した外部表面を有する架橋ポリアミド識別層とを含む膜であり、前記ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィにより、線状PEO標準に対して測定された、少なくとも約5,000の架橋前相対重量平均分子量を有する複合膜。
【請求項19】
架橋分岐PAOポリマーが、PEOとメタクリル酸グリシジルとのコポリマーである、請求項18に記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−535201(P2009−535201A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507886(P2009−507886)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/066298
【国際公開番号】WO2007/127605
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】