説明

分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法

【課題】エポキシアクリレート系樹脂を用いる硬化型樹脂組成物の製造に際して、分子量と不飽和結合導入量の調整において自由度が高く、しかも指蝕乾燥性、硬化性、硬化物の機械的物性等に優れた硬化型樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)を含有し、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)及び/又は芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有していてもよい反応系内、または、(B)および(C)を含有する反応系内で、窒素系触媒(D)の存在下に、(A)及び/又は(B)中の水酸基と、(A)及び/又は(C)中のエポキシ基を反応させて、(A)および/または(B)を高分子量化してなる分岐ポリエーテル樹脂(X)と、(A)、(B)および(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する樹脂組成物とする分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製膜時の乾燥性、硬化性、柔軟性に優れ、特に塗料、インキ、接着剤、注型重合等の用途に好適な熱硬化とエネルギー線硬化が可能で樹脂組成物であって、新規分岐ポリエーテル樹脂(X)と、その合成に用いた芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂と、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸との反応により合成され、塗料、接着剤、インキ、電子基板、封止材料等多方面に利用されている。一般に使用されるエポキシ樹脂としては、線状の構造を有するエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂や、3官能以上の多官能のエポキシ樹脂、例えばノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0003】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の線状エポキシ樹脂はエポキシ基が分子末端にのみ存在しており、不飽和カルボン酸との反応により得られるエポキシアクリレート系樹脂は分子末端に不飽和結合が導入されるのみである(例えば、特許文献1参照。)。このため、線状エポキシ樹脂としてエポキシ当量が大きい(分子量が大きい)線状エポキシ樹脂を用いた場合には、不飽和結合の導入量(含有率)の多いエポキシアクリレート系樹脂とすることができず、活性エネルギー線照射等での硬化においては、どうしても硬化性に劣り、低架橋密度の硬化物しか得ることができない。これに対して線状エポキシ樹脂としてエポキシ当量が小さい(分子量が小さい)線状エポキシ樹脂を用いた場合には、不飽和結合の導入量(含有率)の多いエポキシアクリレート系樹脂とすることができるが、エポキシ樹脂の初期分子量が小さいため、指蝕乾燥性、硬化性、硬化物の機械的物性等に問題がある。
【0004】
また、ノボラック型エポキシ樹脂等の3官能以上の多官能エポキシ樹脂では、初期分子量と不飽和結合の導入量は依存性がなく、基本的にノボラック樹脂の分子量が変化してもエポキシ当量は大きく変化はしないため、高分子量のノボラックエポキシ樹脂を使用して得られるエポキシアクリレート系樹脂では、線状エポキシ樹脂の様な不飽和カルボン酸の導入量の減少を発生することはない(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、ノボラックエポキシ樹脂においては、初期エポキシ当量が規定されていて自由な設計が出来ない欠点を有している。また、一般にこうしたノボラック型エポキシ樹脂を使用して得られるエポキシアクリレート系樹脂は、硬化物の機械的物性が劣るという欠点も有している。
【0005】
【特許文献1】特開平02−212506号公報
【特許文献2】特開昭62−004390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、エポキシアクリレート系樹脂を用いる硬化型樹脂組成物の製造に際して、分子量と不飽和結合導入量の調整において自由度が高く、しかも指蝕乾燥性、硬化性、硬化物の機械的物性等に優れた硬化型樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の知見(1)〜(5)を得た。
(1)芳香族二官能エポキシ樹脂とメタクリル酸を反応させる芳香族二官能エポキシ樹脂のメタクリレート(エポキシメタクリレート樹脂)の製造に際して、窒素系触媒の存在下、必要により有機溶剤の存在下で、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基がメタクリル酸中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させ、反応系内のメタクリル酸が消費されて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートと、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂を反応系とした後、さらに、この反応系を維持し続けると、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基(芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基とメタクリル酸中のカルボキシル基の反応により生成した水酸基)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基が反応し、この反応により生成した水酸基に、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基が反応するが、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基がメタクリル酸中のカルボキシル基に対して過剰でない場合や、芳香族二官能エポキシ樹脂の代わりに脂肪族二官能エポキシ樹脂を用いた場合では、このような反応は進行しないが、メタクリル酸の代わりにアクリル酸を用いた場合では副反応が起きて反応制御が困難となり、ゲル化すること。
【0008】
(2)前記(1)に記載の水酸基とエポキシ基の反応で水酸基が生成するため、生成した水酸基と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基の反応が繰り返され、その結果、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレートは高分子量化されると共に不飽和結合およびエポキシ基が導入された新規な多官能の分岐ポリエーテル樹脂となり、反応系はこの分岐ポリエーテル樹脂と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分を含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物となること。
【0009】
(3)この分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造は自由度が高く、例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂の分子量、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基とメタクリル酸中のカルボキシル基のモル比、窒素系触媒の使用量、反応温度、反応時間等を変更することにより、得られる分岐ポリエーテル樹脂の分子量、不飽和結合およびエポキシ基の導入量と導入密度、導入される不飽和結合とエポキシ基の比率等を広範囲に調整することができ、そのまま活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として使用するもの、硬化剤を加えて熱硬化性樹脂組成物として使用するもの、あるいは活性エネルギー線硬化と熱硬化の両方が可能な樹脂組成物として使用するものとすることができ、しかも、指蝕乾燥性、硬化性、硬化物の機械的物性等に優れた硬化型樹脂組成物であること。
【0010】
(4)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基の反応による前記分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造は、窒素系触媒の存在下であって、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートを含有し、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂を含有していてもよい反応系(すなわち、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートを含有する反応系、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレートと芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂を含有する反応系)、または、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂を含有する反応系の中であれば、実施可能であること。
【0011】
(5)このため、前記分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造は、前記(1)のように芳香族二官能エポキシ樹脂とメタクリル酸の反応から開始させて連続で製造する必要はなく、例えば、別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート、別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート、未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂を前記の組合せで用いても実施することができること(ただし、この反応の際、反応系は、さらに芳香族モノエポキシ化合物のモノアクリレートおよび/または芳香族モノエポキシ化合物を含有していてもよい。)。
【0012】
本発明は、このような知見に基づくものである。
即ち、本発明は、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)を含有し、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有していてもよい反応系内、または、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系内で、窒素系触媒(D)の存在下に、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基を反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)を高分子量化してなる分岐ポリエーテル樹脂(X)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する樹脂組成物とすることを特徴とする分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法は、分子量と不飽和結合の導入量の調整と共に、エポキシ基の導入量と不飽和結合とエポキシ基の比率の調整においても自由度が高く、指蝕乾燥性、硬化性、硬化物の機械的物性等に優れた分岐ポリエーテル樹脂樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製造方法で用いる前記芳香族二官能エポキシ樹脂(C)としては、1分子中に2個のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂であればよく、例えば、ビフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性の芳香族二官能エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂;芳香族二価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;キシレノールから誘導された二官能エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキルエポキシ樹脂;これら芳香族二官能エポキシ樹脂をジシクロペンタジエンで変性したエポキシ樹脂;これら芳香族二官能エポキシ樹脂を二塩基酸類で変性したエステル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0015】
前記エステル変性エポキシ樹脂としては、芳香族多官能エポキシ樹脂中のエポキシ基が二塩基酸類中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で変性して得られるものが挙げられる。ここで用いる二塩基酸類としては、例えば、コハク酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等の二塩基酸無水物等が挙げられる。
【0016】
前記二塩基酸類は1種または2種以上を用いることが可能である。また、一部に安息香酸の様な芳香族モノカルボン酸やプロピオン酸、ステアリリル酸等の脂肪族モノカルボン酸も使用することが可能である。芳香族二官能エポキシ樹脂を二塩基酸類で変性する場合は、エポキシ基に対して少ないモル量のカルボン酸を反応させ、分子中にエポキシ基を残存させることが必要である。また、その他のエポキシ樹脂としてトリグリシジルイソシアヌレートやその誘導体や、脂肪族や脂環族のエポキシを併用することも可能である。
【0017】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂(C)としては、なかでも硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物が得られることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂や、ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。前記芳香族二官能エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は135〜2,000g/当量であるものが好ましく、135〜500g/当量であるものがより好ましい。
【0018】
本発明の製造方法で用いる芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)としては、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中の2個のエポキシ基のうち平均1個のエポキシ基がメタクリル酸でメタクリル化されているものであり、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)としては、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中の2個のエポキシ基のエポキシ基がいずれもメタクリル酸でメタクリル化されているものである。
【0019】
本発明の製造方法により分岐ポリエーテル樹脂組成物を得るには、それぞれ別途用意した芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)を含有し、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有していてもよい反応系、または、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系となるように組合せ、窒素系触媒(D)の存在下、必要により有機溶剤または反応性希釈剤の存在下、通常100〜170℃、好ましくは100〜150℃で、通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間反応させればよい。なお、この際には、ゲル化を生じない範囲であれば、必要に応じて3官能以上の芳香族多官能エポキシ樹脂やそのメタクリレートを併用してもよい。また、芳香族モノエポキシ化合物やそのメタクリレートを併用してもよい。
【0020】
本発明の製造方法では、前記したように、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)を含有し、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有していてもよい反応系、または、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系となるように組合せて用いるが、その代わりに芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基がメタクリル酸(m)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系とした(以下、この工程を「工程1」と略記することがある。)ものを用いると、以後の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造を続いて実施できることから好ましい。
【0021】
前記工程1により芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系としたものを用いて、本発明の製造方法を実施するには、さらにこの反応系中の水酸基と残存するエポキシ基とを窒素系触媒(D)の存在下で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)を高分子量化してなる分岐ポリエーテル樹脂(X)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する樹脂組成物とすればよい(以下、この工程を「工程2」と略記することがある。)。この場合、窒素系触媒(D)は、前記工程1の終了後に添加してもよいが、前記工程1の反応に際して添加しておくことが好ましい。
【0022】
前記工程1で用いる芳香族二官能エポキシ樹脂(C)としては、なかでも硬化性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物が得られることから、エポキシ当量が135〜2,000g/当量であるものが好ましく、エポキシ当量が135〜500g/当量であるものがより好ましい。また、硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物が得られることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0023】
なお、前記工程1および2の工程により分岐ポリエーテル樹脂組成物を製造する場合、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)として芳香族二官能エポキシ樹脂を二塩基酸類で変性したエステル変性芳香族二官能エポキシ樹脂を用いる代わりに、前記工程1において芳香族二官能エポキシ樹脂(C)およびメタクリル酸(m)に変性用の二塩基酸類を併用することにより芳香族二官能エポキシ樹脂(C)の二塩基酸類による変性を行ってもよい。
【0024】
前記工程1において、芳香族多官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基がメタクリル酸(m)中のカルボキシル基に対して過剰である範囲としては、特に限定されないが、なかでも前記工程2において芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基の反応が円滑に進行することから、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基とメタクリル酸(m)中のカルボキシル基の当量比(C/m)が1.1〜5.5となる範囲であることが好ましい。また、得られる分岐ポリエーテル樹脂に含有するエポキシ基の数が多くなることからも、前記当量比(C/m)は、なかでも1.25〜3.0となる範囲であることがより好ましい。
【0025】
なお、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)の反応から始まる反応は、例えば下記の図のような反応スキームで進行すると考えられる。
【0026】
【化1】

〔式中、Arは芳香族二官能エポキシ樹脂(C)から1つのグリシジルオキシ基を除いた残基であり、Ar′は芳香族二官能エポキシ樹脂(C)から1つのグリシジルオキシ基を除いた残基または芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(B)から1つのグリシジル基を除いた残基である。〕
【0027】
前記工程1において使用される触媒としては塩基性触媒が好ましく、これらの中では非ハロゲン系触媒またはハロゲン系触媒を使用することができる。
【0028】
前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、ジエタノールアミン等の3級アミン類;テトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニュウムハイドロオキサイド等の4級アンモニュウムヒドロキシド類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジエチルアミン塩酸塩、ジアザビスシクロウンデセン等の窒素化合物類;トリフェニルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;テトラ−n−ブチルホスホニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルホスホニウムハイドロオキサイド類;ナフテン酸クロムなどの金属塩類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類等のハロゲン系触媒;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機触媒が挙げられる。
【0029】
これらの触媒としては、非ハロゲン系触媒が好ましく、さらに3級アミン類、4級アンモニュウム塩類等の窒素化合物類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類等のリン系触媒が好ましく、なかでも3級アミン類や4級アンモニュウム塩類等の窒素化合物類が特に好ましい。
【0030】
また、前記工程2において使用される触媒としては窒素系触媒が好ましく、かつ非ハロゲン系塩基性窒素触媒が好ましい。かかる触媒としては、前記の3級アミン類、4級アンモニュウムヒドロキシド類、イミダゾール類、その他の非ハロゲン系窒素化合物が挙げられる。
【0031】
前記触媒の使用量としては、触媒量が多いほど前記工程1及び2での反応が進行しやすいが、ゲル化しやすくなることと組成物の安定性が悪化するため、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)の合計重量に対して10〜10000ppmの範囲が好ましい。また、窒素系触媒であれば工程1で使用した触媒をそのまま工程2で使用してもよく、さらに工程2で追加あるいは異なる窒素系触媒を添加しても良いし、反応途中で追加しても良い。
【0032】
前記工程1では、通常、攪拌を行いながら温度70〜170℃、好ましくは100〜150℃で反応させる。このとき重合禁止剤や酸化防止剤を使用してもよく、重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルハイドロキノン、2−6−ジターシャリブチル−4−メトキシフェノール、銅塩類、フェノチアジン等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸エステル類、亜リン酸ジエステル類等が挙げられる。
【0033】
前記工程1では芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)との反応中において水酸基とエポキシ基との反応はほとんど進行せず、メタクリル酸(m)中のカルボキシル基が芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基との反応で消費された工程1の終了の時点で水酸基と残存するエポキシ基との反応によりエーテル結合が形成されて高分子量化が進行するようになり、前記工程2が開始される。
【0034】
前記工程2では、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基が反応し、この反応により生成した水酸基に、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基が反応し、水酸基を生成するため、水酸基とエポキシ基の反応が繰り返され、エポキシ基が消費されるためエポキシ当量は増大していく。その結果、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)は高分子量化されると共に不飽和結合およびエポキシ基が導入された新規な多官能の分岐ポリエーテル樹脂(X)となり、反応系はこの分岐ポリエーテル樹脂(X)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分を含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物となる。
【0035】
また、前記工程1および2での反応は、無溶剤、有機溶剤存在下および/または反応性希釈剤存在下で行うことが可能である。樹脂成分に対する有機溶剤、反応性希釈剤量が多くなることで工程1と2での反応速度は遅くなる為、合成中の樹脂割合は50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0036】
前記溶剤、反応性希釈剤としては、種々のものが使用することが可能であり、有機溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエーテル系溶剤や酢酸エステル類等が挙げられる。また、反応性希釈剤としては、各種アクリレートやメタクリレートのモノマー、オリゴマー、ビニルモノマー等を使用することが可能である。
【0037】
本発明の製造方法で得られる前記分岐ポリエーテル樹脂(X)の分子量は、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基とメタクリル酸(m)中のカルボキシル基の当量比(C/m)、触媒種類、触媒量、反応温度、反応時間等に影響を受ける。前記工程2での反応温度は、充分な反応速度がとれることから通常100℃以上であるが、急激な重合が生じにくく反応の制御が良好なことから170℃以下が好ましく、とくに100〜150℃の範囲にあることが好ましい。
【0038】
また、前記工程1と工程2の反応時間は温度との影響を受けるが、前記した温度範囲では、工程1が0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間であり、工程2が1〜20時間、好ましくは2〜15時間である。
【0039】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物や分岐ポリエーテル樹脂(X)の分子量を調整するためには、例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)と芳香族二官能エポキシ樹脂(C)の使用比率〔工程1において芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基のメタクリル酸(m)中のカルボキシル基に対する過剰率〕、窒素系触媒(D)の使用量、反応温度、反応時間等を適宜調整すればよい。例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)と芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系において芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)と芳香族二官能エポキシ樹脂(C)の使用比率を大きくすること〔工程1において芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基のメタクリル酸(m)中のカルボキシル基に対する過剰率を大きくすること〕、窒素系触媒(D)の使用量を大きくすること、反応温度を高くすること反応時間を長くすること等により、より分子量の大きいポリエーテル樹脂が得られる。
【0040】
また、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂(X)中の不飽和結合とエポキシ基の導入量を調整するには、例えば、反応系内エポキシ基のカルボキシル基に対する過剰率、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と芳香族二官能エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量の大きさを適宜調整すればよい。例えば、エポキシ当量の小さい芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を用いると共に、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)としてエポキシ当量の小さい芳香族二官能エポキシ樹脂を用いてなるものを用いること等により、不飽和結合とエポキシ基の導入量(含有率)の高い分岐ポリエーテル樹脂が得られるし、また、反応系内のエポキシ基のカルボキシル基に対する過剰率を調整することでポリエーテル樹脂中の不飽和結合とエポキシ基の導入量を調整できる。
【0041】
本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物や分岐ポリエーテル樹脂(X)は、各種応用の面で要求される性能を満たすのに十分な分子量となるように合成することができるが、各種のアプリケーション適性を満足させる為には、分岐ポリエーテル樹脂組成物中の樹脂成分〔分岐ポリエーテル樹脂(X)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分からなる組成物をいう。以下同様。〕の平均分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で1,000〜10,000の範囲内、重量平均分子量(Mw)で2,000〜50,000の範囲内であることが好ましく、数平均分子量(Mn)で1,000〜8,000の範囲内、重量平均分子量(Mw)で3,000〜30,000の範囲内であることがより好ましい。また、ポリエーテル樹脂(X)の分子量はポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で1,500〜10,000の範囲内、重量平均分子量(Mw)で3,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、数平均分子量(Mn)で1,500〜8,000の範囲内、重量平均分子量(Mw)で3,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。
【0042】
本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物中の樹脂成分の平均エポキシ当量は、250〜50,000g/当量であることが好ましく、さらに硬化性や硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物となることから500〜10,000g/当量であることがより好ましい。また、分岐ポリエーテル樹脂(X)のエポキシ当量は、1,000〜10,000g/当量であることが好ましく、さらに硬化性や硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物となることから1,500〜8,000g/当量であることがより好ましい。
【0043】
本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物中の樹脂成分の平均不飽和結合含有率は、0.1〜4.2mmol/g(平均不飽和結合当量240〜10,000g/当量)であることが好ましく、さらに硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物となることから0.2〜3.0mmol/g(平均不飽和結合当量333〜5,000g/当量)であることがより好ましい。
【0044】
本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物は、分岐ポリエーテル樹脂(X)を必須成分として含有するものであり、含有されている樹脂成分の合計100重量%中に分岐ポリエーテル樹脂(X)を20〜90重量%含有しているものが好ましい。また、この分岐ポリエーテル樹脂組成物には、分岐ポリエーテル樹脂(X)以外に、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分を含有する。これら1種以上の未反応樹脂成分は、分岐ポリエーテル樹脂組成物中の樹脂成分の合計100重量%中に合計で10〜80重量%含有するものが好ましく、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)を合計で10〜50重量%、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を0〜10重量%含有するものが好ましい。
【0045】
なお、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物には、さらに必要に応じて芳香族二官能エポキシ樹脂(C)以外の各種のエポキシ樹脂(c)や、各種のエポキシ樹脂(c)と不飽和カルボン酸(b)との反応物を添加しても良いが、その場合でも全樹脂成分100重量%中における分岐ポリエーテル樹脂(X)の含有率は20〜90重量%であることが乾燥性等に優れることから好ましい。
【0046】
前記エポキシ化合物(c)としては、特に限定されず、モノエポキシ化合物から多官能エポキシ樹脂のいずれもが使用可能である。前記エポキシ化合物(c)の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物;ビフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型エポキシ樹脂;各種ビスフェノール類を用いたノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、キシレノールノボラック等各種ノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性の芳香族エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂やジヒドロキシナフタレン類のノボラック体をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂;多価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;。キシレノールから誘導されたエポキシ樹脂、フェノールアラルキルエポキシ樹脂やナフタレンアラルキルエポキシ樹脂、その他ザイロック型エポキシ樹脂;上記芳香族エポキシ化合物の水添化物;脂肪族、脂環族、エーテル骨格などのエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0047】
また、前記不飽和カルボン酸(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、モノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、モノ(2−エチルヘキシル)マレート、ソルビン酸等が挙げられる。
【0048】
前記工程1と工程2を経て得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物中の分岐ポリエーテル樹脂(X)としては、例えば、メタクリロイル基とエポキシ基と水酸基と下記構造式(1)で示される分岐構造からなる繰り返し構造を有する重量平均分子量が3,000〜100,000の分岐ポリエーテル樹脂(X1)が挙げられる。
【0049】
【化2】

【0050】
前記分岐ポリエーテル樹脂(X1)としては、なかでも数平均分子量が1,500〜10,000、重量平均分子量が3,000〜100,000、エポキシ当量が1,000〜10,000g/当量の分岐ポリエーテル樹脂が好ましく、数平均分子量が1,500〜8,000、重量平均分子量が3,000〜50,000、エポキシ当量が1,500〜8,000g/当量の分岐ポリエーテル樹脂がより好ましい。
【0051】
また、前記分岐ポリエーテル樹脂(X1)としては、なかでも分岐ポリエーテル樹脂(X1)1g当たり0.1〜4.2ミリモルのメタクリロイル基(メタクリロイル基当量240〜10,000g/当量)と0.1〜4.2ミリモルの水酸基を有することが好ましく、分岐ポリエーテル樹脂(X1)1g当たり0.5〜2.0ミリモルのメタクリロイル基と0.5〜2.0ミリモルの水酸基を有することがより好ましい。
【0052】
さらに、前記分岐ポリエーテル樹脂(X1)としては、下記一般式(2)で示される分岐ポリエーテル樹脂(X2)であることも好ましい。
【0053】
【化3】

〔一般式(2)中、mは2〜100、好ましくは5〜80の繰り返し単位数を示すが、このm個の繰り返し単位中においてRは芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)から1つのグリシジルオキシ基を除いた残基(R)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)から1つのグリシジルオキシ基を除いた残基(R)のいずれかをランダムにとり得る。ただし、これら残基(R)は、その中の水酸基に芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基が反応して付加した残基(R11)であってもよく、また残基(R)は、その中のエポキシ基に芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基が反応して付加した残基(R22)であってもよい。更に、これら残基(R11)や残基(R22)中の水酸基には芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基が、エポキシ基には芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基が、それぞれ順次反応して付加した残基(R1n)や残基(R2n)であってもよい。〕
【0054】
前記一般式(2)で表される分岐ポリエーテル樹脂(X2)のなかでも、残基(R)および残基(R)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂またはジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂とメタクリル酸とを反応させて得られるエポキシ樹脂のメタクリレートから1つのグリシジルオキシ基を除いた残基およびビスフェノール型エポキシ樹脂またはジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂から1つのグリシジルオキシ基を除いた残基であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂または1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂とメタクリル酸とを反応させて得られるエポキシ樹脂のメタクリレートから1つのグリシジルオキシ基を除いた残基およびビスフェノールA型エポキシ樹脂または1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂から1つのグリシジルオキシ基を除いた残基であることがより好ましい。
【0055】
本発明の製造方法で得られる本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物は、残存するエポキシ基を利用する加熱硬化用および/または光硬化用の樹脂としてそのまま用いてもよく、あるいは、残存するエポキシ基にアクリル酸やメタクリル酸と反応させて多官能アクリレート樹脂を合成してから用いてもよく、この多官能アクリレート樹脂中の水酸基に酸無水物を反応させ酸ペンダント型エポキシアクリレートを合成してから用いることも可能である。また、ウレタン化やその他の化学修飾をほどこすことも可能である。
【0056】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物を加熱硬化用および/または光硬化用の樹脂として用いる場合、分岐ポリエーテル樹脂組成物には、更に、硬化成分を含有させてもよい。硬化成分としては、特に限定はなく、種々のエポキシ樹脂用硬化剤が使用することができる。また、硬化剤として、光開始剤、光増感剤を含有させても良い。
【0057】
前記エポキシ樹脂用硬化剤としては、各種のエポキシ樹脂用硬化剤がいずれも使用でき、例えば、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン類;ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環族ポリアミン類;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;ノボラック型フェノール樹脂類;メチルヘキサハイドロフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の多塩基酸無水物類;ポリアミドアミン樹脂およびその変性物;イミダゾール、ジシアンジアミド、三弗化ホウ素−アミン錯体、グアニジン誘導体等の潜在性硬化剤などが挙げられる。これら硬化剤の中でも、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ノボラック型フェノール樹脂、ジシアンジアミド、多塩基酸無水物が好ましい。これらの硬化剤は単独であっても2種類以上の併用でもかまわない。
【0058】
前記エポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、硬化剤中のアミノ基またはイミノ基、フェノール性水酸基等の活性水素を有する硬化剤の場合は、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物に含まれるエポキシ基1当量当たり、活性水素が0.3〜1.2当量となる範囲で使用することが好ましい。また、酸無水物の場合は、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物に含まれるエポキシ基1当量当たり、酸無水基が0.3〜1.2当量となる範囲で使用することが好ましい。
【0059】
また、エポキシ樹脂用硬化剤を用いる際には、硬化促進剤を適宜使用することができる。使用できる硬化促進剤は、特に限定されるものではなく、通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として常用されているものはいずれも使用でき、例えば、ジメチルベンジンアミンの様な3級アミン、2−チメルイミダゾールの様なイミダゾール系化合物、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物等が挙げられる。
【0060】
前記光開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーズケトン、ベンジン、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインメチルエ−テル類、α−アシロキシムエステル、チオキサントン類、アンスラキノン類及びそれらの各種誘 導体等が挙げられる。
【0061】
前記光開始剤の具体例としては、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル、ベンゾイン;ベンゾインベンゾエート、ベンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェノイルフォスフィンオキシド、ビス(2,6)−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0062】
さらに、これらの光開始剤に各種の光増感剤を併用することができ、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物又はニトリル類もしくはその他の含窒素化合物などが挙げられる。
【0063】
光開始剤の使用量としては、組成物中の樹脂分100重量部に対して0.5〜25重量部、好ましくは1〜15重量部の範囲内である。
【0064】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、着色剤、難燃剤、離型剤、熱可塑性樹脂シランカップリング剤等の各種添加剤も添加配合させることができる。
【0065】
前記充填剤として代表的なものには、シリカ粉、珪酸ジルニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、酸化ジルコニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、アスベスト粉またはミルド・グラスなどが挙げられる。また、着色剤として代表的なものにはカーボンブラックなどが、難燃剤として代表的なものには三酸化アンチモン等が挙げられ、離型剤として代表的なものにはカルナバワックス等が挙げられ、シランカップリング剤として代表的なものにはアミノシランまたはエポキシシラン等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物は、電気・電子部品封止材料、絶縁ワニス、積層板、絶縁粉体塗料等の電気絶縁材;プリント配線基板用積層板およびプリブレグ、導電性接着材およびハニカムパネルの如き構造材料用等の接着剤;ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種強化繊維を用いた繊維強化プラスチックおよびそのプリプレグ;レジストインキ等の用途に利用できる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、例中の部および%は、特に断りがない限り重量基準である。
【0068】
実施例1
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート26.6gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製EPICLON850、エポキシ当量188g/当量〕188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1gを加えた後、メタクリル酸51.6g(0.6mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/0.6)を仕込んだ。第4級アンモニュウム塩触媒としてテトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.48g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温してビスフェノールA型エポキシ樹脂のモノメタクリレートとビスフェノールA型エポキシ樹脂のジメタクリレートの混合物を得た。この時の酸価は0.50mgKOH/gであった。さらに、反応系の温度が130℃に到達した時点を0時間として0時間後、2.5時間後、5時間後、7時間後および10時間後の5回のサンプリングを行いながら、同温度で10時間反応を続けて黄色透明の本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−1)を得た。なお、サンプリングした5種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表1−1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−1)は、そのGPCから、下記表1−2に示す組成を有するものであった。また、下記表1−2中の各成分の含有率とエポキシ当量から算出された分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は5,446であった。なお、分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は、100/(分岐ポリエーテル樹脂組成物のエポキシ当量)=〔(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有率)/(そのエポキシ当量)+(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のモノメタクリレートの含有率)/(そのエポキシ当量)+(分岐ポリエーテル樹脂の含有率)/(そのエポキシ当量)〕から算出した。
【0071】
【表2】

【0072】
さらに前記5種のサンプルのそれぞれについて赤外吸収スペクトル分析を行い、3300〜3600cm−1のブロードな水酸基の吸収と2800〜3100cm−1のアルキル基に起因する吸収の相対強度を比較したところ、水酸基量は変化がないが、エポキシ基に起因する吸収である916cm−1は反応時間で減少していることがわかった。この結果は、前記表1−1で見られるエポキシ当量の増大と同一の現象であり、エポキシ基の反応により分子量が増大している根拠となる。一般にエポキシ基の酸やアルコールとの反応ではエポキシ基の反応に伴い水酸基が生成するが、ここで水酸基の吸収に変化が無いことを鑑みると、水酸基がエポキシ基と反応して新たに水酸基を生成し、系での水酸基濃度の変化が見られないと結論付けることができる。
【0073】
実施例2
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、ジエチルレングリコールモノエチルエーテルアセテート24.7gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON850)188gを溶解し、ハイドロキノン1gを加えた後、メタクリル酸34.4g(0.4mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/0.4)を仕込んだ。テトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.44g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温してビスフェノールA型エポキシ樹脂のモノメタクリレートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジメタクリレートと、未反応のビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物を得た。この時の酸価は0.1mgKOH/gであった。さらに、反応系の温度が130℃に到達した時点を0時間として0時間後、2.0時間後および4時間後の3回のサンプリングを行いながら、同温度で4時間反応を続けて黄色透明の本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−2)を得た。なお、サンプリングした3種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表2−1に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−2)は、そのGPCから、下記表2−2に示す組成を有するものであった。また、下記表2−2中の各成分の含有率とエポキシ当量から実施例1同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は2,240であった。
【0076】
【表4】

【0077】
比較例1
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート30.4gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON850)188gを溶解し、ハイドロキノン0.5gを加えた後、メタクリル酸86g(1mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/1)とテトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.55g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温してビスフェノールA型エポキシ樹脂のジメタクリレートを得た。さらに、反応系の温度が130℃に到達した時点を0時間として1.0時間後、3.0時間後、4.5時間後、6時間後、8時間後および10時間後に合計6回のサンプリングを行いながら、同温度で10時間反応を続けて比較用の樹脂(Z′−1)を得た。なお、サンプリングした6種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表1′−1に示す。
【0078】
下記表1′−1から判るように、得られた樹脂(Z′−1)のエポキシ当量は極めて大きくエポキシ基は殆ど消失しているし、酸価は極めて小さくカルボキシル基も殆ど残留していない。また、GPCの分析結果から分子量は10時間後でも大きな変化が認められず、樹脂(Z′−1)はビスフェノールA型エポキシ樹脂の末端エポキシ基とメタクリル酸とが反応したジメタクリレートであることが判り、本発明のポリエーテル樹脂の製造方法で得られた前記ポリエーテル樹脂組成物(Z−1)や(Z−2)とは全く異なる樹脂であった。
【0079】
【表5】

【0080】
実施例3
温度計、攪拌機、および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート27.6gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1gを加えた後、メタクリル酸60.2g(0.7mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/0.7)を仕込んだ。触媒としてN,N−ジメチルベンジルアミン0.49g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で110℃まで昇温してビスフェノールA型エポキシ樹脂のモノメタクリレートとビスフェノールA型エポキシ樹脂のジメタクリレートの混合物を得た。この時の酸価は0.5mgKOH/gであった。さらに、反応系の温度が110℃に到達した時点を0時間として0時間後、2.5時間後および5時間後の3回のサンプリングを行いながら、同温度で5時間反応を続けて黄色透明の本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−3)を得た。なお、サンプリングした3種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表3−1に示す。
【0081】
【表6】

【0082】
得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−3)は、そのGPCから、下記表3−2に示す組成を有するものであった。また、下記表3−2中の各成分の含有率とエポキシ当量から実施例1同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は7,438であった。
【0083】
【表7】

【0084】
実施例4
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46.5gを入れ、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル〔大日本インキ化学工業(株)製EPICLON HP4032D、エポキシ当量143g/当量、以下「ナフタレン型エポキシ樹脂」と略記する。〕143gを溶解し、ハイドロキノン1gを加えた後、メタクリル酸43g(0.5mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/0.5)を仕込んだ。テトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.186g(樹脂分100重量部に対して0.1%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で140℃まで昇温してナフタレン型エポキシ樹脂のモノメタクリレートと、ナフタレン型エポキシ樹脂のジメタクリレートと、未反応のナフタレン型エポキシ樹脂の混合物を得た。この時の酸価は0.3mgKOH/gであった。さらに、反応系の温度が140℃に到達した時点を0時間として0時間後、2.0時間後および5時間後の3回のサンプリングを行いながら、同温度で5時間反応を続けて黄色透明の本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−4)を得た。なお、サンプリングした3種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表4−1に示す。
【0085】
【表8】

【0086】
得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−4)は、そのGPCから、下記表4−2に示す組成を有するものであった。また、下記表4−2中の各成分の含有率とエポキシ当量から実施例1同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は2,419であった。
【0087】
【表9】

【0088】
実施例5
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート85.9gを入れ、ナフタレン型エポキシ樹脂(EPICLON HP4032D)228.8gとイソフタル酸66.4gを混合し、ハイドロキノン1gを加えた後、メタクリル酸48.2g(0.56mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/0.56)を仕込んだ。テトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.344g(樹脂分100重量部に対して0.1%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温してナフタレン型エポキシ樹脂のモノメタクリレートとナフタレン型エポキシ樹脂のジメタクリレートの混合物を得た。この時の酸価は0.1mgKOH/gであった。さらに、反応系の温度が130℃に到達した時点を0時間として0.5時間後、1.5時間後および5.0時間後の3回のサンプリングを行いながら、同温度で5時間反応を続けて黄色透明の本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−5)を得た。なお、サンプリングした3種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表5−1に示す。
【0089】
【表10】

【0090】
得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−5)は、そのGPCから、下記表5−2に示す組成を有するものであった。また、下記表5−2中の各成分の含有率とエポキシ当量から実施例1同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は5,864であった。
【0091】
【表11】

【0092】
比較例2
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート428gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON850)188gを溶解し、ハイドロキノン0.5gを加えた後、アクリル酸144g(2mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/2)とテトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.52g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温し、その後1時間で激しい発熱とともにゲル化した。
【0093】
実施例6
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート30.4gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON850)188gを溶解し、ハイドロキノン0.5gを加えた後、メタクリル酸86g(1mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/1)とテトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド0.55g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温してビスフェノールA型エポキシ樹脂のジメタクリレートを得た。さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EPICLON850)188gを添加し、130℃まで30分間で昇温した。反応系の温度が130℃に到達した時点を0時間として0時間後、2.5時間後、5時間後のサンプリングを行いながら、同温度で反応を続けて黄色透明の本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−6)を得た。なお、サンプリングした3種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価と、エポキシ当量(固形分換算)を測定すると共に、GPCによる分子量分布から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表6−1に示す。
【0094】
【表12】

【0095】
得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(Z−6)は、そのGPCから、下記表6−2に示す組成を有するものであった。また、下記表6−2中の各成分の含有率とエポキシ当量から実施例1同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂のエポキシ当量は4,421であった。
【0096】
【表13】

【0097】
合成例1(クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂の合成)
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート72gを入れ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製EPICLON N−673、エポキシ当量215〕215gを溶解し、ハイドロキノン0.5gを加えた後、アクリル酸72g(1mol、エポキシ基/カルボキシル基の当量比=1/1)とトリフェニルホスフィン0.52g(樹脂分100重量部に対して0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で120℃まで昇温し、その後同温度で15時間反応させて、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のアクリレート(Y−1)を得た。
【0098】
応用例1〜4および比較応用例1〜3
実施例1、2、4、6で得たポリエーテル樹脂組成物(Z−1)、(Z−2)、(Z−4)、(Z−6)、比較例1で得た樹脂(Z′−1)、または、合成例1で重合したクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のアクリレート(Y−1)を、イルガキュア184(チバガイギー社製光開始剤)、他の多官能アクリレートとしてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」と略記する。)と共に、下記表7−1に示す組成で配合して活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0099】
次いで、得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の指触乾燥性と硬化性と耐折り曲げ性を、以下の方法で評価した。結果を表7−1に示す
【0100】
(1)指触乾燥性1
ガラス基板に塗膜の乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗装し、80℃で30分間乾燥させ、25℃に冷却後の塗膜の指触時のタック性を以下の基準により評価した。
評価基準 ○:タックなし。
△:タック若干あり。
×:タック性あり。
【0101】
(2)指触乾燥性2
ガラス基板に塗膜の乾燥膜厚ガ40μmになるようにアプリケーターにて各活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗装し、80℃で30分間乾燥させ、25℃に冷却後、感度評価用のステップタブレット(コダック社製ステップタブレットNo.2)を乾燥塗膜面上に置き、この状態で紫外線照射を行った。紫外線照射は、メタルハライドランプ搭載の露光装置HTE106−M07〔(株)ハイテック社製〕にて真空減圧下で行い、積算光量800mJ/cmの紫外線照射後に常圧に戻し、ステップタブレットを塗膜面から剥離する時に発生するタック性を下記の基準により評価した。
評価基準 ○:タック感なくステップタブレットが容易に剥離可能。
△:タック感若干あり、ステップタブレットが引っかかるが剥離可能。
×:タック性ありステップタブレットにインキが付着し剥離し難い。
【0102】
(3)硬化性
ガラス基板上に乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗装し、80℃で30分間乾燥させ、25℃に冷却後、高圧水銀ランプにて紫外線を照射し、100mJ/cm、200mJ/cm、300mJ/cm照射での硬化性を調べた。硬化性は、指触とネールスクラッチにて行い、表面の状態を以下の基準により評価した。
評価基準 ◎:ネールスクラッチで傷がまったくつかない。
○:タック感はないがネールスクラッチで傷がつく。
×:ややタック感がある。
××:べたべたする。
【0103】
(4)耐折り曲げ性
厚さ100μmのポリエステル樹脂(PET)基板に乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗装し、80℃で30分間乾燥させ、25℃に冷却後、高圧水銀ランプにて紫外線を500mJ/cm照射して硬化させた。次いで、この硬化塗膜の塗装面を上にして180°折り曲げたときの状態を観察し、以下の基準により評価した。
評価基準 ○:割れないで折り曲げられる。
×:折り曲げると割れる。
【0104】
【表14】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)を含有し、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有していてもよい反応系内、または、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系内で、窒素系触媒(D)の存在下に、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基を反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)を高分子量化してなる分岐ポリエーテル樹脂(X)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および芳香族二官能エポキシ樹脂(C)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する樹脂組成物とすることを特徴とする分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基がメタクリル酸(m)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系とし、次いで窒素系触媒(D)の存在下で、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基を反応させる請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)とを、窒素系触媒(D)の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基がメタクリル酸(m)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)を含有する反応系とし、次いで芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジメタクリレート(B)中の水酸基と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基を反応させる請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
芳香族二官能エポキシ樹脂(C)がエポキシ当量135〜500g/当量の芳香族二官能エポキシ樹脂(C1)である請求項3に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
芳香族二官能エポキシ樹脂(C1)がビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項4に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
芳香族二官能エポキシ樹脂(C)とメタクリル酸(m)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基とメタクリル酸(m)中のカルボキシル基の当量比(C/m)が1.1〜5.5となる範囲で用いる請求項3に項記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
窒素系触媒(D)が第3級アミン類および/または第4級アンモニウム塩である請求項1〜6のいずれか一項に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
樹脂成分の重量平均分子量が2,000〜100,000となるまで反応させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
分岐ポリエーテル樹脂(X)の重量平均分子量が3,000〜100,000となるまで反応させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2006−63312(P2006−63312A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124927(P2005−124927)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】