説明

分岐用接触子

【課題】分岐接続箇所における接触圧力を安定的、長期的に維持することのできる分岐用接触子を提供すること。
【解決手段】一対の導電性接触片12,14が互いに所定間隔離間して対向し、一端が導電性接触片12、14が相互に非連結で分離した挿入側端部10bを構成し、他端が連結された連結側端部10aを構成し、挿入側端部10bを導電部間に接触挿入させて分岐用の接続が行われる分岐用接触子において、挿入側端部10bよりも連結側端部10a寄り位置に設けられ対向する導電性接触片12,14が互いに近接する絞り部10cと、絞り部10cから連結側端部10a側に所定長さに亘って設けられ絞り部10cよりも対向する導電性接触片12,14の離間間隔を拡げた付加離間部10dと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部からの分岐ラインを形成するために導電部間に挿入されて電気的に接続される分岐用接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バスダクトなどの幹線から分岐して電流供給ラインを形成するために、バスダクト内の導電部に直接接続するために分岐用接触子が用いられている。この様な従来の接触子の例として、特許文献1では、導体に貫通穴を設け、その貫通穴に導電性接触片を所定間隔あけた状態で配置して弾性を有する接触子を形成しこれを上記貫通穴に挿入嵌着して、前記貫通穴の両側壁にその弾性接触子の両外側部を圧接させて接続する導体の分岐装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、平板導体で形成した1対の導電性接触片を一端部で結合し、他端側で導電性接触片相互を所定間隔離間させて対向させ、接続側端部を形成している。そして、接続側端部の対向する接触片間にばね片を介在させ、接続側端部における接触片相互間の離反力を増加させ、接続対象である導体との間の接触状態の安定化を図ったプラグイン接触子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−15795号公報
【特許文献2】特開平11−262142公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、弾性導電部分を導体の貫通穴に圧入嵌着する際の、嵌入圧力を長期に維持するために、弾性導電部分の離間箇所の長さを短くすることが望まれる。しかし、前記長さを単に短くすると、圧入嵌着時の圧力が強すぎて圧入嵌着が難しくなり、逆に長さを長くすると、導体との接触部分で導電性接触片が撓んで変形し、接触力が弱くなるおそれが増し、長期に亘っての嵌入圧力の維持が難しいという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の技術は、接触片間にバネ片を介在させることにより、接触片相互の外方への付勢力を増すことができるが、バネ片のみの付勢力に頼っていることから、長期的な使用においては、接触子の接触状態の点検、管理の頻度が増加するという事情がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、分岐接続箇所における接触圧力を安定的、長期的に維持することのできる分岐用接触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る分岐用接触子は、
一対の導電性接触片が互いに所定間隔離間して対向配置され、一端が前記導電性接触片が相互に非連結で分離した挿入側端部、他端が連結された連結側端部をそれぞれ構成し、前記挿入側端部を導電部間に接触挿入させて分岐用の接続が行われる分岐用接触子において、
前記挿入側端部と前記連結側端部との間に前記対向する導電性接触片の前記離間間隔を他の部分よりも小さくして近接させた絞り部を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、分岐用接触子を構成する対向する導電性接触片は、互いに離間した挿入側端部側の部分から、一旦、互いに近接する絞り部となり、そこから他方の連結側端部側の所定領域において再度離間した離間部を有することとなる。したがって、導体間に接触挿入される挿入側端部は、まず、導電性接触片が離間状態にあることによる基本的な離反力で接続対象である導体に対する接触押圧力を得ることができる。そして、更に、絞り部を支点としたテコの作用による離反力を得ることができる。すなわち、所定間隔をあけて設置されて対向する導電性接触片に同方向の電流が流れた場合、互いに、吸引し合う力が作用する。したがって、この吸引力によって、対向する導電性接触片が近接した状態にある絞り部では、導電性接触片相互は当接状態となる。これにより、この絞り部は支点として機能し、絞り部から連結側端部までの間における導電性接触片相互の引き合う力は、テコの作用により、挿入側端部側における導電性接触片相互の離反力を増加させる作用を奏する。したがって、この中間の絞り構造により、挿入側端部の安定した良好な離反力が確保維持される。
【0010】
請求項2に係る分岐用接触子は、請求項1に記載の分岐用接触子において、
前記絞り部より前記挿入側端部側の部分で、且つ前記対向する導電性接触片の間に、当該導電性接触片を離間させる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、上記挿入側端部側の部分には、付勢手段による付勢力が働くことから、導体間に挿入される挿入側端部は、基本的に絞り部から連結側端部までの間よりも強い離反力が確保される。更に、上述のように絞り部から連結側端部までの間における電流が流れた際の導電性接触片相互の吸引力は、絞り部を支点としたテコの作用として挿入側端部の導電性接触片相互を離反させる方向に作用する。したがって、付勢手段と上述のテコの作用による離反力により挿入側端部の接触力の安定化が図られる。
【0012】
請求項3に係る分岐用接触子は、請求項2に記載の分岐用接触子において、
前記付勢手段は、板状体で、且つ一端側に弾性力を有する曲がり部を有し、該曲がり部が前記絞り部よりも前記挿入側端部側に位置するように、前記対向する導電性接触片の間に設けられたことを特徴とする。
【0013】
挿入側端部の強い離反力を得るための付勢手段が板状体で対向する導電性接触片に挟まれて設置される構成としたことで、付勢手段を簡単且つ安定して設置することが可能となっている。
【0014】
請求項4に係る分岐用接触子は、請求項2に記載の分岐用接触子において、
前記付勢手段は、板状体をほぼ中央で折り返し屈曲させた屈曲端部と、
該屈曲端部から非屈曲端部までの途中位置に形成され離間間隔の狭くされた絞り対応部を有し、前記非屈曲端部の先端は互いに離反する方向に屈曲させて形成された離反部とされ、前記絞り対応部が前記対向する導電性接触片の前記絞り部に、前記屈曲端部が前記導電性接触片の前記連結側端部側に、前記離反部が前記導電性接触片の前記挿入側端部側に、それぞれ配置され、前記対向する導電性接触片の間に設置されたことを特徴とする。
【0015】
この構成により、挿入側端部における強い離反力を簡単な構造で安定して得ることが可能となっている。また、本実施の形態では、付勢手段にも絞り部が形成されていることから、付勢手段の屈曲端部側部分が、上記対向する導電性接触片に生じる吸引力によって両側から締め付けられることで、対向する導電性接触片と同様に、絞り対応部が支点となってテコの作用が生じ、付勢手段の離反部は、このテコの作用によりより強い離反力を挿入側端部に伝えることが可能となっている。
【0016】
請求項5に係る分岐用接触子は、請求項1から4の何れか1項に記載の分岐用接触子において、
前記絞り部から挿入側端部までの長さよりも前記絞り部から前記連結側端部までの長さを長く設定したことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、分岐用接触子が分岐用の接続状態におかれ、電流が流れた場合、より長く設定されている絞り部から連結側端部までの間で、導電性接触片相互間のより強い引きつけ力が生じ、この対向する導電性接触片の吸引し合う力が、上述の絞り部を支点としたテコの作用で、挿入側端部側に作用することとなる。これにより、挿入側端部における離反力が安定して強く維持される。
【0018】
請求項6に係る分岐用接触子は、請求項1から5の何れか1項に記載の分岐用接触子において、
前記絞り部から前記挿入側端部側における前記対向する導電性接触片相互の離間間隔は、前記絞り部から前記連結側端部側における前記対向する導電性接触片相互の離間間隔よりも大きく設定されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、挿入側端部側部分の対向する導電性接触片相互の離間間隔が絞り部から連結側端部側への所定領域の導電性接触片相互の離間間隔よりも大きく取られていることから、挿入側端部が挿入圧縮された際には大きな離反力を発揮することができ、上述のテコの作用による離反力と併せて良好な導体への接触状態が確保される。
【0020】
請求項7に係る分岐用接触子は、請求項1から6の何れか1項に記載の分岐用接触子において、
前記絞り部から前記連結側端部側への所定領域までの間に前記対向する導電性接触片相互を近接させる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、付勢手段によって絞り部から連結側端部側への所定領域の対向する導電性接触片相互が引き締められるので、絞り部を支点とするテコの作用が挿入側端部の導電性接触片相互を離反させる方向の力として作用し、挿入側端部における離反力がより強く安定したものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る分岐用接触子によれば、絞り部から挿入側端部まで短い範囲での分離構造による基本的な安定した離反力を得ることができ、更に、電流が流れた際に絞り部から連結側端部までの間に生じる吸引力が、絞り部を支点としてテコの作用により、挿入側端部の対向する導電性接触片を互いに離反させる方向の力として作用する。これにより、挿入側端部の接続対象との接触関係はより安定したものとなり、接続対象からの分岐構造を複雑化、大型化させることなく、分岐用接触子の接触状態の長期的な安定化、更に、その接続状態維持の信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、一の実施の形態を示しており、(A)は分岐用接触子の分解斜視図、(B)は、組み立てた状態を示す正面説明図、(C)は、分岐用接触子の挿入後の状態を示す正面説明図、(D)は、(C)の分岐用接触子に電流が流れた状態を示す正面説明図である。
【図2】図2は実施の形態の分岐用接触子にて分岐可能なバスダクト及び接続部の斜視説明図である。
【図3】図3(A)は実施の形態の分岐用接触子を有する分岐装置をバスダクトに取付ける前の状態を示す正面説明図、(B)は分岐用接触子を有する分岐装置をバスダクトに取り付けた後の状態を示す正面説明図である。
【図4】図4(A)は、図3に示した分岐装置をバスダクトに取り付ける前の状態を示す断面説明図、(B)は分岐用接触子を有する分岐装置をバスダクトに取り付けた後の状態を示す断面説明図である。
【図5】図5は分岐用接触子の他の実施の形態を示しており、(A)は分岐用接触子の分解斜視図、(B)は、組み立てた状態を示す正面説明図、(C)は、分岐用接触子の挿入後の状態を示す正面説明図、(D)は、(C)の分岐用接触子に電流が流れた状態を示す正面説明図である。
【図6】図6は更に他の分岐用接触子の他の実施の形態を示しており、(A)は分岐用接触子の分解斜視図、(B)は、組み立てた状態を示す正面説明図、(C)は、分岐用接触子の挿入後の状態を示す正面説明図、(D)は、(C)の分岐用接触子に電流が流れた状態を示す正面説明図である。
【図7】図7は更に他の分岐用接触子の他の実施の形態を示しており、(A)は分岐用接触子の分解斜視図、(B)は、組み立てた状態を示す正面説明図、(C)は、分岐用接触子の挿入後の状態を示す正面説明図、(D)は、(C)の分岐用接触子に電流が流れた状態を示す正面説明図である。
【図8】図8は更に他の分岐用接触子の他の実施の形態を示しており、(A)は分岐用接触子の分解斜視図、(B)は、組み立てた状態を示す正面説明図、(C)は、分岐用接触子の挿入後の状態を示す正面説明図、(D)は、(C)の分岐用接触子に電流が流れた状態を示す正面説明図である。
【図9】図9は更に他の分岐用接触子の他の実施の形態を示しており、(A)は分岐用接触子の分解斜視図、(B)は組み立てた状態を示す正面説明図である。
【図10】図10は図9に示した分岐用接触子を有する分岐装置のバスダクトへの取り付けを示す図であり、(A)装着前の状態を示す説明図、(B)は装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明に係る分岐用接触子の実施の形態について詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る分岐用接触子10を示しており、同図(A)は分解斜視図であり、同図(B)は各部材を結合して組み立てた状態を示す正面図、同図(C)は導電部相互間に挿入した状態を示す正面図、同図(D)は電流が流れた状態を示す正面図である。
【0025】
同図(A)に示すように本実施の形態に係る分岐用接触子10は、略長方形の平板状の2枚の導電性接触片12、14の間に付勢手段である弾性材で略平板状からなる板バネ部材16を介在させ、導電性接触片12,14相互をそれらの基部12a,14aでリベット又はボルトナット等からなる結合具18により結合して構成されている。同図(B)は、結合して組み立てられた状態の分岐用接触子10が示されている。図示のように、板バネ部材16は、導電性接触片12,14の何れか一方の対向面側に接着等で固定されている。なお、板バネ部材16は、上記接着固定する構造に限られず、結合具18により、両導電性接触片12,14の間に挟んで一括で結合する構造としても良く、組立が容易となる。
【0026】
本発明において特徴的なことは、導電性接触片12,14の形状にあり、一端側には、凹凸なく形成された平板状の基部12a,14aを有し、この基部12a,14aの図における下方側に、互いに離間間隔を形成するように曲げられた離反部12b,14bを有し、更に、図における下側に互いに近接する方向に曲げられた曲がり部12c,14cを有し、更に、図における下側である他端部には、再度、互いに離間間隔を確保するように曲げられた離反部12d、14dが形成されている。
【0027】
上述のように、対向する2つの導電性接触片12,14は、基部12a,14aにて連結結合される。同図(B)には連結結合された状態が示されており、図示のように、分岐用接触子10は、連結側端部10aの反対側の端部に、2つの導電性接触片12,14が互いに所定間隔を空けて分離された状態の挿入側端部10bが形成されている。
【0028】
そして、この挿入側端部10bの連結側端部10a寄りの位置には、上記曲がり部12c、14cの存在により、対向する導電性接触片12,14が近接する絞り部10cが形成されている。そして、更に、この絞り部10cから連結側端部10bまでの所定領域に、対向する両導電性接触片12,14が所定間隔離間する状態の保たれた部分(以下、「付加離間部」10dと称する)が存在している。本実施の形態では、付加離間部10dの長手方向の長さαは、絞り部10cを介して反対側に存する挿入側端部10b側の長手方向の長さβよりも長く形成されている。
【0029】
また、バネ板部材16は、例えば、リン青銅等の弾性を有する材料で構成され、同図(A)に示したように、一端側に平板状の基部16aが、他端側に湾曲した形状の弾性部16bがそれぞれ形成され、他端側先端は、基部16aと略平行の先端部16cが形成されている。そして、同図(B)に示したように、この弾性部16bが、分岐用接触子10の挿入側端部10b側の内側位置に配されるように接着固定されている。
【0030】
なお、本実施の形態では、分岐用接触子10を構成する両導電性接触片12,14及びバネ板部材16はそれぞれ結合状態における共通位置に切り込み形のスリット(12e,14e,16e)が形成され、接続対象への追随変形のための柔軟性が確保され接触面積を増大させる効果を奏する。また、挿入側端部10bの先端部は先端側に細くなるようにカット面が形成されており、後述する導電部間への挿入を容易とする形状になっている。
【0031】
同図(B)に示したように、本実施の形態に係る分岐用接触子10の付加離間部10dの厚さ方向サイズAは、挿入側端部10b側の厚さ方向サイズBとほぼ同じサイズ(A=B)となっている。
【0032】
同図(C)は、上記のように形成された分岐用接触子10を例えばバスダクトの導体相互間を接続するための導電性接続部材などの導電部100相互間に挿入した状態が示されている。ここにおいて、導電部100の相互間の距離がB1が上記挿入側端部10b側の厚さより小さい場合(B>B1)、挿入側端部10bを導体相互間に挿入すると、図示のように、挿入側端部10b側は、BからB1の長さまで圧縮されると共に、内側の板バネ部材16の弾性部16bも同様に圧縮される。
【0033】
なお、この圧縮作用により、絞り部10cを構成している対向する導電性接触片の曲がり部12c,14cは、互いに板バネ部材16を介在させた状態で当接した状態となる。この時、付加離間部10dの厚さ方向サイズA1も絞り部10cが当接状態まで狭くなったことで、絞り部10c側の部分も同様に多少狭くなっている。
【0034】
以上のように、この状態では、導電部100相互間に挿入された挿入側端部10bにおける導電部100に対する接触方向の付勢力は、絞り部10cから挿入側端部10b側の対向する導電性接触片の離反力と介在する板バネ部材16の付勢力によって発揮されている。絞り部10cから先の挿入側端部10b側のコンパクトな構成部分での付勢力となり、不要な変形のおそれがなく接触圧力を長期に亘って維持することが可能となっている。
【0035】
次に、図1(D)は、分岐用接触子10に電流が流れた場合、すなわち、実際に分岐されたラインに電流供給がなされた状態では、対向する2つの導電性接触片12,14に同方向の電流が流れ、それら接触片は相互に引き合う力、すなわち、吸引力が生じる。この吸引力は挿入側端部10b側及び付加離間部10dの双方で生じるが、本実施の形態では、中間に絞り部10cが存在し、この電流供給時には、絞り部10cの2つの導電性接触片の曲がり部12c、14cは板バネ部材16を介して当接した状態にある。挿入側端部10b側及び付加離間部10dに生じる吸引力は、この絞り部10cを支点として、テコの作用として双方に働き、この力が挿入側端部10b側における離反力を向上させる。
【0036】
特に、本実施の形態では、上述のように、付加離間部10dの長手方向の長さαが挿入側端部10b側の長手方向の長さβよりも長く設定されている。更に、付加離間部10dの内側には板バネ部材は設けられていないので、吸引力は効果的に発揮され、図示のように、付加離間部10dの厚さ方向サイズA2は、A1より更に小さくなっている(A1>A2)。その結果、絞り部10cを支点とした付加離間部10dの吸引力によるテコの作用は、挿入側端部10bでの離反力として作用する。これにより、挿入側端部10bでの導電部との接触圧は更に良好に維持される。なお、導電部100相互間の間隔は変化しないので、図上、B1とB2は共通のサイズである。
【0037】
この様に、上記実施の形態の分岐用接触子10を使用することにより、構造が簡単で且つ安価な分岐用接触子により、電流が流れた状態での分岐用接触子の接触状態の長期的な安定化、更に、その接続状態維持の信頼性が高められる。
【0038】
また、特に短絡電流等の大電流が流れた場合であっても、挿入側端部10bによる接触力を良好に保つことが可能となる。
【0039】
次に、上記実施の形態に使用した分岐用接触子10を実際にバスダクトに使用する場合の例を示す。図2は、適用されるバスダクト200,400及びこれらバスダクトを接続するための接続部300を示す斜視説明図、図3はバスクト200,400の接続部300に、本発明に係る分岐用接触子10を備えた分岐装置を取り付ける状態を示す正面説明図、図4は同じく接続部300に分岐装置を取り付ける状態を示す断面説明図である。
【0040】
図2に示すように、バスダクト200及び400は3線からなる平板状の導体20−1〜20−3及び40−1〜40−3が収納されており、各導体は絶縁物で被覆され絶縁被覆導体として積層されている。これらをハウジング22,42内に収納することによりバスダクト200,400が形成されている。
【0041】
また、接続されるバスダクト200,400の端部においては、導体20,40はそれぞれ絶縁物が除去され、3本の導体間を拡開して対向配置される。ハウジング22,42は、この導体の拡開部近傍まで被覆してなり、導体20,40の拡開部より外方にはハウジング22,42の端部に取り付けられた接続側板24,44が被覆している。
【0042】
以上からなるバスダクト200,400を導体20、40の端部が互いに向き合うように対向配置し、これら導体端部相互を接続部300にて接続することにより電気幹線路が形成されている。
【0043】
図3及び図4から理解されるように、接続部300では、付き合わされた同相の導体20,40それぞれを導電性接続部材30で挟持して電気的に接続し、更に、それぞれを絶縁セパレータ32で仕切る基本構成が形成されている。これらをボルトナット等からなる締着具50にて締着することでバスダクトの接続が行われるように接続ユニットが形成されている。
【0044】
なお、図3(A)は、本発明に係る分岐用接触子を備えるバスダクトの分岐装置500が、バスダクトの接続部300近傍の分岐位置に配置された状態、同図(B)は、分岐装置500が接続部300の分岐位置に装填され、分岐接続が行われた状態が示されている。
【0045】
分岐装置500の構造は、図3及び図4に示すように、ケーブル52と分岐用接触子10とを接続する端子54及び底面を形成する基部56、この基部56を覆うカバー部材58の二分割体で形成されている。
【0046】
また、図4(A)は分岐装置500が接続部300に装着される前の内部構造を示す断面図、同図(B)は接続部300に装着された状態の内部構造を示す断面図である。図示のように、バスダクト200,400の導体3線のそれぞれ外側に位置し、導体と電気的に接続された導電性接続部材30と接触可能な3つの分岐用接触子10−1〜10−3は、上方側が絶縁物60で被覆された状態で基部56から図上下方に突出しており、それぞれの分岐用接触子10−1〜10−3の上端に関しては外側相の分岐用接触子10−1、10−3がそれぞれ外方に屈曲され、中相の分岐用接触子10−2が、外側相よりも上方へ突出して断面視デルタ配置状にケーブル52との接続端子54が形成されている。
【0047】
また、カバー部材58も上記端子54の配置に対応したデルタ形状に構成され、二次側ケーブル52を引出すためのケーブル引出し穴も端子54同様にデルタ形状に配置されており、カバーの凹部と基部の凹部を重ね合わせることにより円形の引出し穴が形成される。更に、基部56の下部にバスダクト200,400に係止するための係止部59を有し、この係止部により分岐装置500が、接続部300に係止固定される。
【0048】
なお、分岐装置500の基部56及びカバー部材58は、金属製又は樹脂製など適宜であるが、好適には絶縁性を有する素材、例えば樹脂製であり、カバー部材58或いは基部56と端子の間の空間距離或いは沿面距離を考慮する必要がなくなり分岐装置500自体の小型化を実現することが可能となっている。また、カバー部材58は透明なものを使用すること好適であり、目視にて端子54の状況を把握することが可能となる。
【0049】
以上の構成からなる分岐装置500をバスダクト200,400の接続部300にて分岐する場合、図3(B)及び図4(B)に示すように、各相の分岐用接触子10−1〜10−3が、各相の導電性接続部材30間に挿入されることにより、電気的に接続される。この状態で、分岐装置500の基部56に設けられた係止部59が接続部300側の対応箇所に係止され、確実な分岐接続状態が確保される。
【0050】
以上のようにバスダクト200,400の幹線路から分岐装置500によって分岐を行なった場合、例えばバスダクト200,400自体に短絡電流が流れた場合であっても、上述の実施の形態に係る構成の分岐用接触子10によれば、接触不良による分岐部の熱の発生等を未然に防止することができ、二次災害を防ぐことが可能となる。
【0051】
以上、図1に示した実施の形態に係る分岐用接触子10を用いてバスダクトからの分岐を行う場合を例として説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0052】
図5は、分岐用接触子の他の構成に係る実施の形態を示しており、同図(A)は分解斜視図であり、同図(B)は組み立てられた分岐用接触子の全体構成を示す正面図、同図(C)は導電部相互間に挿入した状態を示す正面図、同図(D)は、電流が流れた状態を示す正面図である。
【0053】
同図(A)に示すように本実施の形態に係る分岐用接触子70は、略長方形の平板状の2枚の導電性接触片72、74を対向させ、それらの一端部の平らな基部72a,74aでリベット又はボルトナット等からなる結合具18により結合して組み合わせている。同図(B)は、結合して組み立てられた状態の分岐用接触子70が示されており、図示のように、2枚の導電性接触片72、74は結合状態で、基部72a,74aから互いに離反量を増やすように反対方向に湾曲され、図示の結合状態で付加離間部70dが形成されている。
【0054】
そして、他端部の近傍位置に2枚の導電性接触片72、74が近接された(本実施の形態では、ほぼ当接されている)絞り部70cが形成され、絞り部70cの更に先端より位置には、2枚の導電性接触片72、74が離反する挿入側端部70aが形成されている。
【0055】
図5(B)に示したように、本実施の形態に係る分岐用接触子70の通常状態における挿入側端部70bの厚さ方向サイズBは、付加離間部70dの厚さ方向サイズAよりも、大きく確保されている(A<B)となっている。
【0056】
同図(C)は、上記のように形成された分岐用接触子70を導電部100相互間に挿入した状態が示されている。ここにおいて、導電部100の相互間の距離がB1が上記挿入側端部70bの厚さBより小さいので(B>B1)、挿入側端部70bを導体相互間に挿入すると、図示のように、挿入側端部70bは、厚さ方向サイズが、BからB1の長さまで圧縮される。
【0057】
なお、この圧縮作用により、絞り部70cを構成している導電性接触片72、74は、互いに当接した状態となっている。そして、挿入側端部70bでの圧縮作用は、絞り部70cを支点としたテコの作用により、付加離間部70dには離反力として働き、図示のように、付加離間部70bの厚さ方向のサイズA1は、通常状態の厚さ方向サイズAよりもやや広がって大きくなっている。
【0058】
この状態では、導電部100相互間に挿入された挿入側端部70bにおける導電部100に対する接触方向の付勢力は、絞り部70cから挿入側端部70b側の対向する導電性接触片72,74の離反力の付勢力のみによって発揮されている。この様に、図1の実施の形態と同様に、絞り部70cから先の挿入側端部70bのコンパクトな構成部分での付勢力による接触状態となり、不要な変形のおそれがなく接触圧力を長期に亘って維持することが可能となっている。
【0059】
また、本実施の形態では、付加離間部70dの長手方向の長さαは、挿入側端部70bの長手方向の長さβよりも長く形成しており、更に、付加離間部70dの厚さ方向サイズAよりも挿入側端部70bの厚さ方向サイズBを大きく形成している。すなわち、導電性接触片72、74の先端の湾曲部を付加離間部70dよりも大きく張り出すように形成している。すなわち、上述の長さはα>βであり、厚さ方向のサイズは、B>Aであり、この様に、挿入側端部70bの離反力を大きく取っているので、図1に示した実施の形態のように板バネ部材16を挿入側端部70b側に介在させる必要がない。したがって、製造費及び材料費に関してコストダウンが図られている。
【0060】
同図(D)は、分岐用接触子70に電流が流れた状態を示している。ここで、電流の導通時におけるテコの作用は、図1の実施例と同様に付加離間部70dの長手方向長さαが、挿入側端部70bの長手方向長さβよりも長く形成されていることから、電流が流れた際の付加離間部70dで発揮される相互吸引力は、挿入側端部70bよりも大きい。したがって、絞り部70cを支点とするテコの作用は、挿入側端部70b側の離反力として効果的に発揮される。
【0061】
図6は、更に他の実施の形態を示しており、同図(A)は分解斜視図、同図(B)は組み立てられた分岐用接触子の全体構成を示す正面図、同図(C)は導電部相互間に挿入された状態を示す正面図、同図(D)は、電流が流れた状態を示す正面図である。
【0062】
同図(A)に示すように本実施の形態に係る分岐用接触子80は、基本構成としては図5に示したものと同様であり、2枚の導電性接触片82、84を対向させ、それらの基部82a,84aで結合具18により結合して組み立てられる。
【0063】
同図(B)に示したように、図5に示した分岐用接触子70と異なる点は、付加離間部80dのほぼ中央位置に外方から締め付ける方向に付勢するバネ部材86を設けていることである。バネ部材86は、導電性接触片82、84のほぼ中央位置にそれぞれ形成された穴部83,85に芯材86aを通し、その芯材86aの両端にワッシャーを互い違いに複数重ね合わせて構成したバネ部86bを配し、これらを外方からボルトナット等の連結部にて締め付けて形成されている。これによりバネ部材86は、付加離間部80dの離間間隔を狭める方向に付勢している。
【0064】
同図(C)は、上記のように形成された分岐用接触子80を導電部100相互間に挿入した状態が示されている。ここにおいて、導電部100の相互間の距離B1が挿入側端部80bの厚さBより小さいので(B>B1)、挿入側端部80bを導体相互間に挿入すると、図示のように、挿入側端部80bは、厚さ方向サイズが、BからB1の長さまで圧縮される。
【0065】
なお、この圧縮作用は、絞り部80cを支点としたテコの作用により、付加離間部80dには離反力として働き、図示のように、付加離間部80bの厚さ方向のサイズA1は、やや広がって大きくなっている。すなわち、バネ部材86のバネ部86bは収縮して、付加離間部80bの離反動作を許容している。
【0066】
同図(D)は、分岐用接触子80に電流が流れた状態を示している。ここで、電流の導通時におけるテコの作用は、図1の実施例と同様に付加離間部80dの長手方向長さαが、挿入側端部80bの長手方向長さβよりも長く形成されていることから、付加離間部80dで発揮される相互吸引力は、挿入側端部80bよりも大きい。したがって、絞り部80cを支点とするテコの作用は、挿入側端部80側の離反力として効果的に発揮される。そして、本実施の形態ではバネ部材86により、付加離間部80dにおける対向する導電性接触片への引き付け力が付加されているので、付加離間部80dにおける吸引作用はより効果的なものとなり、より大きなテコの作用を奏することができる。
【0067】
なお、バネ部材86の構造は、ワッシャーの組合せに限られず、スプリング等の弾性部材を介在させるなどで構成することも可能である。以上の構成により、電流が流れた際の接触力をより安定化させることが可能となっている。
【0068】
次に、図7は、更に他の分岐用接触子90実施の形態を示しており、同図(A)は分解斜視図、同図(B)は組み立てられた分岐用接触子の全体構成を示す正面図、同図(C)は導電部相互間に挿入された状態を示す正面図、同図(D)は、電流が流れた状態を示す正面図である。
【0069】
図示のように、本実施の形態で特徴的なことは、導電性接触片92,94の基部92a,94aに続く下方部分にほぼ同じ長さの二つの湾曲部92c、92d、94c、94dを設けていることである。そして、同図(B)に示したように、組み立て状態においては、それら2つの湾曲部が、挿入側端部90bと付加離間部90dを構成している。また、本実施の形態では、挿入側端部90bと付加離間部90dの長手方向の長さαがほぼ共通となっており、2つの湾曲部の境目に絞り部90cが形成されている。
【0070】
また、導電性接触片92,94の間には、挿入側端部90bを外方へ付勢する弾性部96aを有する板バネ部材96を介在させる構造を取っている。板バネ部材96の取り付けは、導電性接触片92,94の間に板バネ部材96を配置し、導電性接触片92,94の基部92a,94aにて板バネ部材96の上端部を挟んで、結合具18にて結合して行われる。
【0071】
この様に挿入側端部90bと付加離間部90dの長さがほぼ同じであるが、図5の実施の形態と同様に、分岐用接触子90の通常状態における挿入側端部90bの厚さ方向サイズBは、付加離間部90dの厚さ方向サイズAよりも、大きく確保されている(A<B)となっている。したがって、大きな厚さ方向のサイズBによって大きな反発力を得ると共に板バネ部材96の付勢力による離反力も確保され、挿入側端部90bの導電部に対する接触方向の圧力も大きく確保される。
【0072】
なお、同図(C)は、上記のように形成された分岐用接触子90を導電部100相互間に挿入した状態が示されている。この状態では、上記図1の実施の形態と同様に、挿入側端部80bの厚さ方向のサイズBが導電部100の相互間の距離B1まで圧縮され、その反発力を発揮しており、この状態では、挿入側端部80b自体の離反力と、板バネ部材96の付勢力によって導電部を良好に押圧しつつ接触状態が保たれている。
【0073】
なお、上記他の実施の形態と同様に、この圧縮作用は、絞り部90cを支点としたテコの作用により、付加離間部90dの離反力として働き、図示のように、付加離間部90bの厚さ方向のサイズA1は、やや広がって大きくなっている。
【0074】
同図(D)は、分岐用接触子90に電流が流れた状態を示している。ここで、他の実施の形態と同様に、電流が流れた際の付加離間部90dでの吸引力によるテコの作用は、挿入側端部90bにおける離反力として働き、挿入側端部90bはより安定的且つ効果的に押圧接触状態を維持することができる。すなわち、挿入側端部90bは、それ自体の導電性接触片構造による離反力、内側の板バネ部材96の付勢力、更に、付加離間部90dからのテコの作用の総和の離反力を得ることが可能となっている。
【0075】
図8は、更に他の実施の形態を示しており、同図(A)は分解斜視図及び接続対象の導電部600の斜視図、同図(B)は組み立てられた分岐用接触子の全体構成を示す正面図、同図(C)は導電部相互間に挿入された状態を示す正面図、同図(D)は、電流が流れた状態を示す正面図である。
【0076】
同図(A)に示すように本実施の形態に係る分岐用接触子110は、導電性接触片の基本構成としては図7に示したものと同様であり、2枚の導電性接触片112、114を対向させ、それらの基部112a,114aで結合具18により結合して組み立てられる。なお、接続される対象は、平板状の導電部600であり、中央部に接続用穴部600aが形成されている。
【0077】
同図(B)の組み立てられた分岐用接触子110から理解されるように、図7に示した分岐用接触子90と異なる点は、バネ部材96を設けていないことであり、付加離間部110d、絞り部110c、挿入側端部110b等の主たる構成部分は共通するのでその説明を省略する。
【0078】
更に、同図(C)は、本実施の形態に係る分岐用接触子110を導電部600の接続用穴部600aに挿入した状態が示されており、同図(D)は、分岐用接触子110に電流が流れた状態を示している。そして、その付加離間部110d、絞り部110c、挿入側端部110bの作用は、上述の実施の形態において、導電部100間に挿入した状態及び電流が流れたときと沿うようであり、その説明を省略する。なお、図上、表示A,B,A1,A2、B1,B2は、上述の各実施の形態と同様の対象を示している。
【0079】
図9は、更に他の実施の形態を示しており、同図(A)は分解斜視図、同図(B)は組み立てられた分岐用接触子の全体構成を示す正面図である。図示のように、本実施の形態に係る分岐用接触子210は、上記各実施の形態の基本構成とは異なり、導電性接触片212と214はそれぞれ異なる形状を有している。すなわち、導電性接触片212の基部212aは屈曲しない平板状とし、導電性接触片214の基部214aだけに屈曲部214eを形成することで、付加離間部210dを構成するようにしている。
【0080】
絞り部210cを形成するための対向面側へ凸の湾曲部212c、214c、更に、挿入側端部210bを構成するための先端の離反部212b、214bは他の実施の形態とほぼ同様の構成を有している。
【0081】
また、本実施の形態では、導電性接触片212,214の間に、バネ部材216を介在させる構造を取っている。バネ部材216の構成は、板状体をほぼ中央部分で折り返し屈曲させて構成しており、屈曲端部216d側に離間部が形成され、非屈曲側端部に絞り対応部としてのバネ絞り部216c及び先端離反部216bを形成している。
【0082】
バネ部材216の取り付けは、導電性接触片212,214の間に介在するように行われ、分岐用接触子210の絞り部210cにバネ絞り部216cが位置し、付加離間部210dの部分に屈曲端部216dが位置し、挿入側端部210bに先端離反部216bが位置するように設置される。この取り付け構成によれば、先端に向かって離間間隔の拡げられた先端離反部216bが、挿入側端部210bのより先端近くで、且つ略同一高さ位置を内側から付勢することができ、より効果的に付勢力を伝えることができ、より安定した分岐接続状態を確保するができる。
【0083】
そして、各部材のそれぞれ対向する位置で、導電性接触片212,214には、対向面方向に突出する小突起212f、214fを形成し、バネ部材216には対向箇所に貫通孔216fを設け簡単に位置決め設置できるように構成され、バネ部材216の落下防止機能も有効に奏するものである。
【0084】
図10は、図9に示した分岐用接触子210を図2,図3に示したバスダクトの接続部とは異なる構成の接続部310の導電性接続部材31間に挿入する状況を示している。同図(A)は、挿入前の状態、同図(B)は挿入した状態が示されている。
【0085】
図示のように、分岐用接触子210は、分岐装置510内に設置され、挿入側端部210bが下方から突出している。分岐装置510は、図示していないケーブルと分岐用接触子210とを接続する端子512及び底面を形成する基部516、この基部516を覆うカバー部材518を有している。
【0086】
バスダクトの導体3線21−1〜21−3の両側に配置された導電性接続部材31と接触可能な3つの分岐用接触子210−1〜210−3は、それぞれの上端に関しては外側相の分岐用接触子210−1、210−3がそれぞれ外方に屈曲され、中相の分岐用接触子210−2が、外側相よりも上方へ突出して断面視デルタ配置状に形成されている。なお、分岐装置510の材質等は、図3,図4で説明したものと同様である。
【0087】
同図(B)は、以上の構成からなる分岐装置510を接続部310にて分岐接続した状態が示されている。図示のように、各相の分岐用接触子210−1〜210−3の挿入側端部210bが、各相の導電性接続部材31間に挿入されることにより、電気的に接続されている。
【0088】
この時、挿入側端部210bは、自らの弾性構成による離反力及び板バネ部材216による付勢力にて良好な押圧力で、導電性接続部材31に接触している。そして、他の実施の形態と同様に、この分岐用接触子210に電流が流れた際にも、付加離間部210dに生じる吸引力と絞り部210cを支点とするテコの作用による挿入側端部210bの先端の離反力の増強作用を得ることができる。更に特徴的なことは、本実施の形態では、バネ部材216にもバネ絞り部216cが形成されていることから、バネ部材216の屈曲側端部216dが、上記付加離間部210dに生じる吸引力によって両側から締め付けられることで、導電性接触片212、214と同様にバネ絞り部216cが支点となってテコの作用が生じ、バネ部材216の先端離反部216bは、このテコの作用によりより強い離反力を挿入側端部210bの先端に伝えることが可能となっている。
【0089】
また、例えば、バネ部材216自体を導電性を有する部材で構成すれば、バネ部材216の屈曲端部216d側自体にも離間部に電流が流れて吸引力が発生し、バネ絞り部216bが支点となってテコの作用が生じ、バネ部材216の先端離反部216bのより離反力を向上させることができるため、好適である。
【0090】
また、図10に示すように、分岐装置510の基部から下方に突出している絶縁物の下端位置近傍に分岐用接触子210−1〜210−3の絞り部210cが位置するように設計しているため、位相の分岐用接触子210−1〜210−3相互の沿面距離を長くすることが可能となっている。すなわち、絶縁物の下端が絞り部210cの存在により分岐用接触子210−1〜210−3に接していないため、その接していない分だけの距離の沿面距離を長くすることが可能となっている。
【0091】
なお、本発明は、上記種々の実施に形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、挿入側端部と付加離間部の長手方向の長さは、特に、限定されるものではなく、何れを長くするか、ほぼ同様の長さとするかなどは、バネ部材の使用の有無などに応じて種々設定することが可能である。更に、挿入側端部には内方から外方へ付勢するバネ部材を介在させ、一方、付加離間部には内方へ付勢するバネ部材を設ける構成など適宜採用可能であることも上記図6の実施の形態に示した通りである。
【0092】
また、接続の対象となる部位は、上記実施の形態では、バスダクトからの分岐を例にして示したが、これに限られるものではなく、他の部位からの分岐にも適用することが可能である。
【0093】
また、図1に示した分岐用接触子のスリットは、上記の各実施の形態全てにおいて、適宜採用することが可能である。更に、バネ部材を使用した実施の形態に関して、バネ部材にもスリットを設けても良く、更に、2本以上のスリットを設けても良く、より確実に接触することが可能となり、安定した分岐が可能となる。
【0094】
更に、各実施の形態全てに関して、接触片の端部のカット部はアール部形状であっても良く、挿入箇所である導電部を傷つける心配がなくなる。
【符号の説明】
【0095】
10,70,80,90,110,210 分岐用接触子
10b,70b,80b,90b,110b,210b 挿入側端部
10c,70c,80c,90c,110c,210c 絞り部
10d,70d,80d,90d,110d,210d 付加離間部
12,14 導電性接触片
16 板バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導電性接触片が互いに所定間隔離間して対向配置され、一端が前記導電性接触片が相互に非連結で分離した挿入側端部、他端が連結された連結側端部をそれぞれ構成し、前記挿入側端部を導電部間に接触挿入させて分岐用の接続が行われる分岐用接触子において、
前記挿入側端部と前記連結側端部との間に前記対向する導電性接触片の前記離間間隔を他の部分よりも小さくして近接させた絞り部を有することを特徴とする分岐用接触子。
【請求項2】
前記絞り部より前記挿入側端部側の部分で、且つ前記対向する導電性接触片の間に、当該導電性接触片を離間させる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の分岐用接触子。
【請求項3】
前記付勢手段は、
板状体で、且つ一端側に弾性力を有する曲がり部を有し、
該曲がり部が前記絞り部よりも前記挿入側端部側に位置するように、前記対向する導電性接触片の間に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の分岐用接触子。
【請求項4】
前記付勢手段は、
板状体をほぼ中央で折り返し屈曲させた屈曲端部と、
該屈曲端部から非屈曲端部までの途中位置に形成され離間間隔の狭くされた絞り対応部を有し、
前記非屈曲端部の先端は互いに離反する方向に屈曲させて形成された離反部とされ、
前記絞り対応部が前記対向する導電性接触片の前記絞り部に、前記屈曲端部が前記導電性接触片の前記連結側端部側に、前記離反部が前記導電性接触片の前記挿入側端部側に、それぞれ配置され、前記対向する導電性接触片の間に設置されたことを特徴とする請求項2に記載の分岐用接触子。
【請求項5】
前記絞り部から挿入側端部までの長さよりも前記絞り部から前記連結側端部までの長さを長く設定したことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の分岐用接触子。
【請求項6】
前記絞り部から前記挿入側端部側における前記対向する導電性接触片相互の離間間隔は、前記絞り部から前記連結側端部側における前記対向する導電性接触片相互の離間間隔よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の分岐用接触子。
【請求項7】
前記絞り部から前記連結側端部側への所定領域までの間に前記対向する導電性接触片相互を近接させる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の分岐用接触子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−193682(P2010−193682A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37868(P2009−37868)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000162135)共同カイテック株式会社 (66)
【Fターム(参考)】