説明

分散させるスパイクパイプを用いた蒸気土壌消毒方法

【課題】土壌に蒸気を供給し、蒸気の熱で病原菌、害虫及び雑草の種子を殺菌駆除する蒸気土壌消毒において、50mを超える長い畝であっても、土壌の温度上昇の均一化と、消毒準備や撤去の作業性を向上させるスパイクパイプを用いた蒸気土壌消毒方法を提供する。
【解決手段】 全てのスパイクパイプ、若しくは複数連結させたスパイクパイプ(1)に蒸気ホース(3)から直接蒸気を供給するようにし、蒸気ホース(3)の流路断面積を適切にすることで、全長に亘り蒸気圧力をほぼ均等にし、各スパイクパイプへの蒸気の供給量を等しくする。スパイクパイプ(1)は蒸気ホース(3)より軽量小型化し、複数のスパイクパイプ(1)の、畝(5)への分散設置を容易にする。蒸気ホース(3)や分配ホース(2)は土壌の起伏に追従可能な軟質樹脂製とし、各々の部材の結合を着脱可能にすることにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気の潜熱により土壌を加熱し、土壌病原菌や害虫及び雑草の種などを死滅させるための蒸気土壌消毒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸気土壌消毒方法は、圃場内を耕運して形成する畝上に、細孔を有するホースを敷設し、畝上部のマルチシートで被覆した空間にホースから噴出させる蒸気を供給して、畝の上部から土壌を加熱する方法(特許文献1)、土壌の中にパイプやホースを埋設し蒸気を噴出させ、土中から加熱する方法(特許文献2)、蒸気を通すスパイクパイプを土中に差し込み、土中に蒸気を噴出して加熱する方法(特許文献3、非特許文献1)が利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−111550公報
【特許文献2】特開2003−259743公報
【特許文献3】特開2005−65574公報
【非特許文献1】社団法人農山漁村文化協会 農業技術大系 花卉編2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の蒸気消毒方法のうち、畝の上部にホースを敷設する方法は、蒸気消毒が普及し始めた初期の段階から利用されているもので、帆布状の繊維や軟質プラスチックで成形されたホースの細孔から蒸気を噴出させるようにしている(特許文献1)。当初は布製が主流であったためキャンバスホース法と呼ばれ、比較的作業が容易なため現在でも蒸気消毒方法の主流になっている。しかしながら、キャンバスホース法は畝とマルチシートの間の空間に供給した蒸気の潜熱が、マルチシートを介して大気中に放散するため熱損失が大きく、消毒時間が長くなると言う問題点があった。
【0005】
畝の内部に蒸気放出ホースを埋設する方法は、蒸気を全て土中に供給するため熱効率が高くなり、短時間での消毒を可能とした(特許文献2)。しかしながら、埋設や消毒後の蒸気ホースの撤去など作業量が多くなり、全体的な消毒作業能率は改善されないと言う問題点があった。
【0006】
従来のスパイクパイプを用いる方法は、蒸気を全て土壌に供給するため熱効率は高く、消毒後は畝から容易に引き抜くことで撤去できるため、従来に比べ作業性が向上した。しかしながら、蒸気の流量が100リッター/秒を超える消毒条件では、蒸気の圧力低下を防ぐため、大径の管を用いており、作業性面から比較的狭い範囲の消毒にしか適用されていなかった(非特許文献1)。このスパイクパイプを使う方法として、蒸気供給管を軟質樹脂材の蒸気ホースとし、蒸気ホースに一定の間隔でスパイクパイプを1本毎に着脱可能な状態で結合する方法が開発された(特許文献3)。しかしながら、平均40cmの間隔で1本毎にスパイクパイプを差し込む作業は、50mから100mにも及ぶ畝に適用させるには、手間がかかり過ぎるため、30m程度での範囲で使用されてきた。
※※※メモ(後で削除)現行ではホースの径が小さいため、蒸気量を均等にするため30m程度で使用中、径を大きくすれば性能面の改善が出来るが、これは当たり前。よってここでは作業性のみ改善点とした。
【0007】
本発明は、上記に示す従来のスパイクパイプ法の問題点を解消させるものであり、100mの長い畝でも、手前と先端の蒸気の供給量をほぼ均等にして温度上昇のバラツキを小さくし、スパイクパイプの差込や引き抜きも容易にして作業能率を高める蒸気土壌消毒技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の蒸気土壌消毒方法(請求項1)は、スパイクパイプ(1)と蒸気ホース(3)を分離し、蒸気ホース(3)はボイラ(4)で発生した蒸気をほぼ一定条件で各スパイクパイプ(1)に供給すること、スパイクパイプ(1)は土壌に直接蒸気を供給することに役割分担する構成とした。蒸気ホース(3)の流路の断面積は、蒸気の圧力損失が小さく、各スパイクパイプ(1)に一定した蒸気を供給できる大きさとし、スパイクパイ(1)は設置作業の簡便化のため軽量且つ短小にした。
【0008】
また、本発明の蒸気土壌消毒方法(請求項2)は、土中に差し込む複数のスパイク管(1a)を有するスパイクパイプ(1)を、土壌表面に直列や並列に分散設置した後、敷設や撤去が容易な軟質樹脂の如き素材で形成する蒸気ホース(3)に、着脱可能な分配ホース(2)を接続して、スパイクパイプ(1)に蒸気を供給する構成とした。
また、本発明の蒸気土壌消毒方法(請求項3)は、スパイクパイプ(1)複数結合させ、まとめて蒸気ホース(3)から蒸気を供給する構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、分散させた各スパイクパイプに、内部の圧力がほぼ均一なる比較的大径の蒸気ホースより個別に蒸気を供給するため、すべての消毒土壌を同じ時間で均一に温度上昇させることができる。スパイクパイプは軽量且つ短小であるため、持ち運びや土壌への設置が容易になる。蒸気ホースは畝と畝の間に敷設し、軟質樹脂製の枝管を通して蒸気放出管に設続するため、蒸気ホースとスパイクパイプの細かい位置併せの必要が無く作業の単純化が図れる。従って、敷設の作業時間を大幅に短縮できる。また、複数のスパイクパイプを結合させて、蒸気ホースからまとめて蒸気を供給することで、分配ホースの着脱回数が減り、敷設や撤去の作業時間を大幅に短縮できる。
また、消毒時間の短縮により、ボイラの重油や灯油などの燃料費の削減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【00010】
【00011】
以下、図1、図2、図3、図4及び図5を参照して、本発明に係る蒸気土壌消毒法の実施例を説明する。
【実施例】
【00011】
図1は、本発明に係わる土壌消毒方法の機材構成を示す平面図である。この消毒法は、ボイラ4で発生させた蒸気を、蒸気ホース3からを分配ホース2通して、分散させたスパイクパイプ1に供給している。
【00012】
図2はスパイクパイプ1の斜視図であり、本実施例では、スパイクパイプ1の長さは2m、外径は25.4mmであり、40cm間隔で5本のスパイク1aをスパイクパイプ1に結合している。スパイク管1aの先端近くには、孔径が2mmの蒸気の噴射孔1bを有している。1cは分配ホースの接続パイプを示している。
【00013】
図3は二列の畝5に、本考案の適用状態を示す部分横断面図である。畝5の間には、蒸気ホース3を敷設し、分配ホース2を経由しスパイクパイプ1より矢印A方向に蒸気を噴射させている。畝5の表面から気中に上昇する蒸気を封じ込めるため、畝の上部をマルチシート6で被覆し、重し7で保持している。
【00014】
図4及び図5は、消毒状況を示す畝の部分断面を含む斜視図である。図4の消毒状況では、スパイクパイプ1の各々に分配管2を接続し、全てのスパイクパイプに蒸気供給ホースから蒸気を供給している。図5の消毒状況では、スパイクパイプ3本を連結し、各スパイクパイプ間を連通させ、1箇所から蒸気を供給するようにしている。
【00015】
本発明に係る土壌消毒法については、40cm間隔でスパイク1aを畝の上部から土中に差込実際に蒸気を流したところ、土壌の温度上昇はキャンパス法による土壌消毒より30%以上早くなり、消毒性能とボイラ4の燃料消費の軽減を確認した。耐熱性があり、蒸気に対しても透過性が小さいポリプレピレン製のスパイクパイプ1について、土中への差し込み中の変形や蒸気噴射によるダメージを調べたが、異常の発生はなく軽量且つ短小のスパイクパイプ1としての適正を確認した。また、作業性も良く短時間で消毒準備が出来ることを確認した。蒸気ホース3については、市販の高密度ポリエチレン樹脂製で内径が9cmのホースで、長さ50mの畝に均等に蒸気を放出できることを確認した。分配ホース2については、伸縮性のあるシリコンホース用いた。長さが100mの畝などの適用に際しては、蒸気ホース2の内径を大きくすることで対応が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【00016】
以上のように、本発明に係る分散したスパイクパイプを用いた蒸気土壌消毒方法は、消毒準備の手間が短縮され、消毒時間も短縮されるため、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【00017】
【図1】図1は、本発明の蒸気消毒法を示す平面図で、軟質樹脂製の蒸気ホースにスパイクパイプを分散して接続した様子を示している。
【図2】図2は、分散させるスパイクパイプの斜視図である。
【図3】図3は、畝に設置したスパイクパイプと蒸気ホースを、分配ホースで接続した状況を示す横断面図である。
【図4】図4は、本発明の蒸気消毒法を示す部分横断面を含む斜視図で、畝に設置したスパイクパイプと蒸気ホースを分配ホースで接続した様子を示している。
【図5】図5は、本発明の蒸気消毒法を示すもう一つの横断面を含む斜視図で、畝に設置したスパイクパイプを三本連結し、分配ホースで接続した様子を示している。
【符号の説明】
【00018】
1 スパイクパイプ
1c スパイク
1b 蒸気噴射孔
2 分配ホース
3 蒸気ホース
4 ボイラ
5 畝
6 重し
7 マルチシート
8 スパイクパイプ連結ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ(4)で発生させた蒸気を、土壌中に放出して蒸気の熱で土壌を消毒する蒸気土壌消毒法にあって、消毒する畝(5)の上部に、複数のスパイク(1a)を有するスパイクパイプ(1)を分散させて設置し、畝(5)に沿って敷設する蒸気ホース(3)から、分配ホース(2)を通して各スパイクパイプ(1)に蒸気を供給するようにした蒸気土壌消毒方法。
【請求項2】
スパイクパイプ(1)は蒸気ホース(3)よりは十分軽量で短小なものとし、蒸気ホース(3)や分配ホース(2)を、土壌の起伏に追従可能な軟質樹脂製とし、各々の部材の結合を着脱可能にしてスパイクパイプ(1)を結合させるようにしたことを特徴とする蒸気土壌消毒方法。
【請求項3】
スパイクパイプ(1)を複数連結させ、連結部分の一箇所に分配ホース(2)を結合したことを特徴とする蒸気土壌消毒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−92928(P2008−92928A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302114(P2006−302114)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(598141671)
【出願人】(506372748)
【Fターム(参考)】