説明

分散染料、それらの調製法、及び使用

本発明は、一般式(I)の染料、
【化1】


[式中、D、R〜R、X、m、及びnはそれぞれ、請求項1において定義されたものである]、それらを調製するためのプロセス、及びそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、フェナシルエステルが発色団に結合されている分散アゾ染料に関する。この構造要素を含む染料は既に公知であり、たとえば特許文献1にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際公開第05/056690号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
フェナシルエステルがさらなるフェニル又はフェノキシラジカルによって置換されている分散アゾ染料が傑出した性質を有すること、及びそれを用いて得られた染色物が、良好な洗濯堅牢性及び傑出した昇華堅牢性を特色とすることが、今や見出された。より詳しくは、そのような染色物は、洗浄サイクルの後で織物が高温に暴露される、工業的洗濯方法における特殊な要件を満たす。
【0004】
本発明者らは、予想外のことに、本発明の染料は、それらの分子量が比較的大きいにもかかわらず、ポリエステル及びポリエステルブレンド物の布地に容易に移行することを見出した。
【0005】
本発明は、一般式(I)で表わされる染料を提供する。
【0006】
【化1】

[式中、
Dは、ジアゾ成分の残基であり;
は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、−NHCHO、−NHCO(C〜C)−アルキル、又は−NHSO(C〜C)−アルキルであり;
は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、又はハロゲンであり;
は、水素、(C〜C)−アルキル、置換(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルケニル又は置換(C〜C)−アルケニルであるか;又は
とRとが結合して、ラジカル−CH(CH)CHC(CH−(ここで印を付けた炭素原子がフェニル核に結合している)を形成し;
は、水素又は(C〜C)−アルキルであり;
は、水素又は(C〜C)−アルキルであり;
は、水素又は(C〜C)−アルキルであり;
Xは、フェニル、チオフェニル、スルホニルフェニル、又はフェノキシであり;
nは、0、1、又は2であり;そして
mは、0又は1である]
【0007】
ジアゾ成分の残基Dは、特に、分散染料の分野において慣用される残基であって、当業者には公知である。
【0008】
好ましくは、Dは、
式(IIa)の基を表すか、
【0009】
【化2】

[式中、
及びTは独立して、水素、ハロゲン、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、シアノ、−SO(C〜C)−アルキル、又はニトロであり;そして
及びTは独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、−SOCH、−SCN、又はニトロであるが;
但し、T、T、T及びTの内の少なくとも一つは水素ではない]
又は、式(IIb)の基を表すか、
【0010】
【化3】

[式中、
及びT’は独立して、水素、又はハロゲンであり;そして
は、水素、−SOCH、−SCN、(C〜C)−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、又はニトロであるが;
但し、T、T’及びTの内の少なくとも一つは水素ではない]
又は、式(IIc)の基を表すか、
【0011】
【化4】

[式中、
12は水素、又はハロゲンである]
又は、式(IId)の基を表すか、
【0012】
【化5】

[式中、
は、ニトロ、−CHO、−COCH、シアノ、又は次式の基であり、
【0013】
【化6】

[式中、T10は、水素、ハロゲン、ニトロ又はシアノである];
は、水素、(C〜C)−アルキル、又はハロゲンであり;そして
は、ニトロ、シアノ、−COCH、又は−COOT11である(ここでT11は(C〜C)−アルキルである)]
又は、式(IIe)の基を表すか、
【0014】
【化7】

[式中、T及びTは、それぞれ先に定義したものである]
又は、式(IIf)の基を表すか、
【0015】
【化8】

[式中、T13は、フェニル又は(C〜C)−アルキルチオである]
又は、式(IIg)の基を表すか、
【0016】
【化9】

[式中、T14は、シアノ、又は−COCH、又は−COOT11(ここで、T11は(C〜C)−アルキルである)であり、そしてT15は、フェニル又は(C〜C)−アルキルである]
又は、式(IIh)の基を表すか、
【0017】
【化10】

[式中、T14は先に定義されたものであり、T16は(C〜C)−アルキルである]
又は、式(IIi)の基を表すか、
【0018】
【化11】

[式中、T17は、シアノメチル、ベンジル、又はアリルである]
又は、式(IIj)の基を表す。
【0019】
【化12】

【0020】
〜Rの(C〜C)−アルキル基は、直鎖であっても分岐状であってもよく、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシルである。同様のことは(C〜C)−アルコキシ基にもあてはまる。
【0021】
の置換(C〜C)−アルキル基は、特に、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、(C〜C)−アルコキシ、−COO(C〜C)−アルキル、−OCOO(C〜C)−アルキル、及び−OCO(C〜C)−アルキル、からなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されている。
【0022】
の(C〜C)−アルケニル基は、特にアリルである。
【0023】
ハロゲンは、好ましくは塩素又は臭素である。
【0024】
は、好ましくは水素、塩素、メチル、エチル、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、又はエチルスルホニルアミノである。
【0025】
は、好ましくは水素、塩素、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシである。
【0026】
は、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシエチル、シアノエチル、COCOCH、COCOC、CCOOCH、CCOOC、又はアリルである。
【0027】
、R及びRはそれぞれ、好ましくはメチル又は水素であり、より好ましくは水素である。
【0028】
Xは、好ましくはフェニル又はフェノキシであり、より好ましくはフェニルである。
【0029】
nは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0030】
mは、好ましくは1である。
【0031】
m+nは、好ましくは1である。
【0032】
本発明の好ましい染料は、一般式(Ia)で表わされる。
【0033】
【化13】

[式中、T〜T、R〜R、m、及びnはそれぞれ、先に定義されたものである]
【0034】
本発明によるこのタイプの特に好ましい染料は、一般式(Iaa)で表わされる。
【0035】
【化14】

[式中、
は、ニトロであり;
は、水素、シアノ、塩素、又は臭素であり;
は、水素、シアノ、ニトロ、塩素、臭素、又はトリフルオロメチルであり;
は、水素、ヒドロキシル、メチル、アセチルアミノ、又はプロピオニルアミノであり;
は、水素、塩素、メチル、又はメトキシであり;
は、水素、メチル、エチル、ブチル、又はアリルである]
【0036】
本発明のさらに好ましい染料は、一般式(Ib)で表わされる。
【0037】
【化15】

[式中、T〜T、R〜R、m、及びnはそれぞれ、先に定義されたものである]
【0038】
本発明によるこのタイプの特に好ましい染料は、一般式(Iba)で表わされる。
【0039】
【化16】

[式中、
は、ニトロであり;
は、水素、シアノ、塩素、又は臭素であり;
は、水素、シアノ、ニトロ、塩素、臭素、又はトリフルオロメチルであり;
は、水素、ヒドロキシル、メチル、アセチルアミノ、又はプロピオニルアミノであり;
は、水素、塩素、メチル、又はメトキシであり;
は、水素、メチル、エチル、ブチル、又はアリルである]
【0040】
本発明による一般式(I)の染料は、当業者に公知の方法によって調製することができる。
たとえば、一般式(III)の化合物
D−NH (III)
[式中、Dは先に定義されたものである]を、ジアゾ化させ、一般式(IV)の化合物とカップリングさせる。
【0041】
【化17】

[式中、R〜R、X、m、及びnはそれぞれ、先に定義されたものである]
【0042】
一般式(III)の化合物は通常、公知の方法、たとえば、酸性の水性媒体、たとえば塩酸若しくは硫酸を用いて酸性にした水性媒体中で亜硝酸ナトリウムを用いるか、又は希硫酸、リン酸、若しくは酢酸とプロピオン酸との混合物中でニトロシル硫酸を用いて、ジアゾ化する。好適な温度範囲は、0℃〜15℃の間である。
【0043】
そのジアゾ化された化合物は一般的に、同様にして、公知の方法、たとえば、酸性、水性、水性有機若しくは有機媒体中、特に有利には10℃未満の温度で、一般式(IV)の化合物の上にカップリングされる。使用される酸は、特には、硫酸、酢酸又はプロピオン酸である。
【0044】
一般式(III)及び(IV)の化合物は公知であり、公知の方法により調製することができる。
【0045】
本発明による一般式(I)の染料は、疎水性の材料を染色及び捺染するためには極めて有用であり、得られる染色物及び染色物は、均質な色調と高い使用堅牢性を特徴としている。特筆すべきは、特に極めて良好な昇華堅牢性と組み合わさった良好な洗濯堅牢性である。
【0046】
本発明の分散染料が、たとえば作業服に使用されるようなポリエステル−綿ブレンド物を連続染色するのに特に有用であるということも、さらに見出された。特に、この用途に特に関連しており、染色した材料を温度190℃に5分間暴露させてからISO 105 C05試験にかける「ヘキスト組合せ試験」で達成される湿潤堅牢性は並はずれたものである。
【0047】
したがって、本発明はさらに、疎水性の材料を染色及び捺染するための一般式Iの染料の使用、及び慣用される手順においてそのような材料を染色及び捺染するためのプロセスも提供するが、その場合、本発明による一般式(I)の1種又は複数の染料を着色剤として使用する。
【0048】
上述の疎水性の材料は、合成由来のものであっても、セルロース系由来のものであってもよい。考慮の対象となる疎水性の材料としては、たとえば二級セルロースアセテート、セルローストリアセテート、ポリアミド、特に高分子量ポリエステルなどが挙げられる。高分子量ポリエステルからなる材料としては、特にポリエチレングリコールテレフタレートをベースとするものが挙げられる。
【0049】
上記の疎水性の合成材料は、シート形状又は糸の形状の構造であってよく、糸又は織物若しくは編物に加工されていてもよい。繊維質織物材料が好ましく、それはたとえばミクロ繊維の形態で存在していてもよい。
【0050】
本発明による用途における染色は、常法に従って、好ましくは水性分散体から、適切であればキャリヤーの存在下に、吸尽法によって80〜約110℃の間で、又はHT法によって染色オートクレーブ中110〜140℃で、さらには、染液を用いて布地をパジングし次いで約180〜230℃で固着/セットさせる、いわゆる熱固着法によって実施することができる。
【0051】
上記の材料の捺染は、本発明の一般式(I)の染料を捺染糊の中に組み入れ、それを用いて捺染すべき布地を、180〜230℃の間の温度でHTスチーム、高圧スチーム、又は乾熱を用い、適切であればキャリヤーの存在下に処理して染料を固着させることにより、自体公知の方法で実施することができる。
【0052】
本発明の一般式(I)の染料は、それらを染液、パジング液、又は捺染糊の中で使用する場合には、きわめて微細分散状態とするべきである。
【0053】
本発明の染料は常法に従って、加工されたままの染料を液状媒体中、好ましくは水中で分散剤とともにスラリー化させ、その混合物に剪断力の作用を与えて、元の染料粒子を機械的に微粉化させて、最適な比表面積が得られ染料の沈降が最小となるようにすることによって、微細分散状態とする。これは、適切なミル、たとえばボールミル又はサンドミル中で実施される。染料の粒径は一般に、0.5〜5μmの間、好ましくは約1μmに等しい。
【0054】
ミリング(milling)操作において使用される分散剤は、ノニオン性であってもアニオン性であってもよい。ノニオン性分散剤としてはたとえば、アルキレンオキシドたとえばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと、アルキル化可能な化合物たとえば脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、フェノール、アルキルフェノール及びカルボキサミドとの反応生成物が挙げられる。アニオン性分散剤としてはたとえば、リグノスルホネート、アルキル−又はアルキルアリールスルホネート、又はアルキルアリールポリグリコールエーテルスルフェートが挙げられる。
【0055】
そのようにして得られた染料調製物は、ほとんどの用途では、流し込みが可能であろう。したがって、染料と分散剤の含量は、それらの場合においては限定される。一般的には、分散体を調節して、染料含量が50重量パーセントまでとなるように、そして分散剤含量が約25重量パーセントまでとなるように調節する。経済的な理由から、染料含量は多くの場合、15重量パーセント以上である。
【0056】
分散体には、さらなる助剤が含まれていてもよいが、そのようなものとしてはたとえば、酸化剤として機能するものたとえばm−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は殺かび剤たとえばナトリウムo−フェニルフェノキシド及びナトリウムペンタクロロフェノキシド、特にいわゆる「酸供与体」たとえば、ブチロラクトン、モノクロロアセトアミド、クロロ酢酸ナトリウム、ジクロロ酢酸ナトリウム、3−クロロプロピオン酸のナトリウム塩、モノスルフェートエステルたとえば、ラウリルスルフェート、並びにエトキシル化及びプロポキシル化アルコールの硫酸エステルたとえば、ブチルグリコールスルフェートなどが挙げられる。
【0057】
このようにして得られた染料分散体は、染液及び捺染糊を製造するには極めて好適である。
【0058】
粉体の調製物が好ましいような、ある種の用途分野も存在する。そのような粉体には、染料、分散剤及びその他の助剤、たとえば、濡れ剤、酸化剤、保存剤及び防塵加工剤、並びに上述の「酸供与体」などが含まれる。
【0059】
染料の粉末状調製物を製造するための好適な方法は、上述の液状染料分散体から、それらの液をたとえば真空乾燥、凍結乾燥、又はドラム乾燥器の乾燥によってストリッピングさせることからなるが、噴霧乾燥によるのが好ましい。
【0060】
それらの染液は、必要量の上述の染料調製物を、染色媒体、好ましくは水を用いて希釈して、(5:1)から(50:1)までの染色のための液比が得られるようにすることによって製造される。さらに、一般的にはその液中に、さらなる染色助剤、たとえば分散剤、濡れ剤、及び固着助剤が含まれているのが普通である。有機酸及び無機酸、たとえば酢酸、コハク酸、ホウ酸又はリン酸を加えて、pHを4〜5、好ましくは4.5に設定する。pHの設定を緩衝化させるのが有利であり、充分な量の緩衝系を添加する。酢酸/酢酸ナトリウムの系が、有利な緩衝系の一例である。
【0061】
織物の捺染においてこれらの染料又は染料混合物を使用するために、必要量の上述の染料調製物を、増粘剤たとえばアルギン酸アルカリ金属など、及び適切であるならばさらなる添加物たとえば固着促進剤、濡れ剤、及び酸化剤と共に、常法に従って混練して捺染糊を得る。
【0062】
本発明はさらに、インクジェットプロセスによるデジタル織物捺染のための、本発明の一般式(I)の染料を含むインクもまた提供する。
【0063】
本発明のインクは水性であるのが好ましく、本発明の一般式(I)の染料の1種又は複数を、インクの全重量を基準にして、たとえば0.1%〜50重量%の量、好ましくは1%〜30重量%の量、より好ましくは1%〜15重量%の量で含む。それらには、特に0.1%〜20重量%の分散剤をさらに含む。好適な分散剤は当業者には公知であって、市場で入手することができ、たとえば以下のようなものが挙げられる:スルホン化若しくはスルホメチル化リグニン、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合反応生成物、置換若しくは非置換フェノールとホルムアルデヒドとの縮合反応生成物、ポリアクリレート及び対応するコポリマー、改質ポリウレタン、並びに、アルキレンオキシドと、アルキル化可能な化合物、たとえば脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、カルボキサミド及び置換若しくは非置換フェノールとの反応生成物。
【0064】
本発明のインクには、慣用される添加剤をさらに含んでいてもよく、たとえば粘度調整剤を用いて、温度範囲20〜50℃における粘度を1.5〜40.0mPasの範囲とする。好ましいインクは1.5〜20mPasの範囲の粘度を有し、特に好ましいインクは1.5〜15mPasの範囲の粘度を有する。
【0065】
有用な粘度調整剤としては、レオロジー添加物たとえば、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン及びさらにはそのコポリマー、ポリエーテルポリオール、連合増粘剤(associative thickener)、ポリウレア、アルギン酸ナトリウム、変性ガラクトマンナン、ポリエーテルウレア、ポリウレタン、及びノニオン性セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0066】
さらなる添加物としては、本発明のインクには、界面張力を20〜65mN/mの範囲に設定するための界面活性剤を含んでいてもよいが、それらは、適切であれば、使用されるプロセス(加熱式またはピエゾ式)に応じて合わせる。有用な界面活性剤としては、たとえば、各種の界面活性剤、好ましくはノニオン性界面活性剤のブチルジグリコール及び1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0067】
このインクにはさらに、通常使用される添加物たとえば真菌や細菌の成長を抑制するための化学種を、インクの全重量を基準にして0.01%〜1重量%の量で加えることができる。
【0068】
本発明のインクは、常法に従って、成分を水と混合させることによって調製することができる。
【実施例】
【0069】
実施例1
室温で、66.2gの6−ブロモ−2,4−ジニトロアニリンを185mL(リットル)の酢酸の中に懸濁させる。穏やかに冷却しながら、7.5mLの硫酸(96%)を添加する。15〜20℃で滴下により45mLのニトロシル硫酸(40%)を添加する。次いでその混合物を15〜20℃で1時間撹拌する。そのようにして得られたジアゾニウム塩溶液を、111.6gの3−(5−アセチルアミノ−2−メトキシフェニルアミノ)プロピオン酸2−ビフェニル−4−イル−2−オキソエチルと1Lのアセトンと10gの尿素との混合物に、5〜10℃で1時間かけて滴下により添加する。その後で1時間撹拌し、500mLの水を用いて希釈し、吸引濾過をし、水を用いて洗浄し、乾燥させると、86gの式(Iab)の染料が得られ、
【0070】
【化18】

(λmax[DMF]=594nm)、この染料は、ポリエステル上に良好な洗濯堅牢性と昇華堅牢性とを有するブルーの色調を与える。
【0071】
実施例2
51.6gの2−クロロ−4−ニトロアニリンを、100mLの水及び85mLの塩酸(30%)と共に室温で18時間撹拌する。160gの氷を加えてから、40mLの亜硝酸塩溶液(53g/L)を1〜2分間かけて添加する。次いでその混合物を5℃以下で2時間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸塩を、アミドスルホン酸を用いて分解させる。そのようにして得られたジアゾニウム塩溶液を、1.4Lのアセトン中の116.3gの3(エチルフェニルアミノ)プロピオン酸2−ビフェニル−4−イル−2−オキソエチルの溶液に、0〜5℃で1時間かけて滴下により添加する。次いでその混合物を5〜10℃で18時間撹拌し、6.5Lの水の上に注ぐ。沈殿物を吸引濾過し、水を用いて洗浄し、乾燥させると、167gの式(Iac)の染料が得られ、
【0072】
【化19】

(λmax[DMF]=514nm)、この染料は、ポリエステル上に良好な洗濯堅牢性と優れた昇華堅牢性とを有するレッドの色調を与える。
【0073】
実施例3
14.3gの3−{[3−アセチルアミノ−4−(2−ブロモ−4,6−ジニトロフェニルアゾ)フェニル]エチルアミノ}プロピオン酸2−ビフェニル−4−イル−2−オキソエチルと1.9gの銅(I)シアニドとを、80mLのN−メチルピロリドン中、100℃で2時間撹拌する。冷却してから、その反応バッチに250mLのメタノールを滴下により添加する。沈殿物を吸引濾過し、少量のメタノール及び水を用いて洗浄する。その水湿潤固形物を150mLの塩酸(10%)中で1時間撹拌し、吸引濾過し、水を用いて洗浄する。減圧下で乾燥させると、8.8gの式(Iad)の染料が得られ、
【0074】
【化20】

(λmax[DMF]=602nm)、この染料は、ポリエステルをブリリアントブルーの色調に染色し、良好な洗濯堅牢性と優れた昇華堅牢性とを有している。
【0075】
実施例1〜3に記載のプロセスと同様にして、表1の実施例4〜45の化合物を調製した。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
実施例46
6.5gの3−アミノ−5−ニトロベンズイソチアゾールを、16.6mLの硫酸(96%)と6mLのリン酸(85%)との混合物の中に導入する。次いで、6.9mLのニトロシル硫酸(40%)を10〜15℃で滴下により添加する。次いでその混合物を、10〜15℃で4時間撹拌する。そのようにして得られたジアゾニウム塩溶液を、12.9gの3−(エチルフェニルアミノ)プロピオン酸2−ビフェニル−4−イル−2−オキソエチルと、250mLのアセトンと1.7gの尿素との混合物に、0〜5℃で滴下により迅速に添加する。その後、室温で一夜撹拌し、吸引濾過し、メタノール次いで水を用いて洗浄し、乾燥させると、13.7gの式(Ibb)染料が得られ、
【0079】
【化21】

(λmax[DMF]=604nm)、この染料は、ポリエステルをブルーの色調に染色し、極めて良好な洗濯堅牢性と昇華堅牢性とを有している。
【0080】
実施例46に記載のプロセスと同様にして、表2の実施例47〜55の化合物を調製した。
【0081】
【表3】

【0082】
実施例56
ポリエステルからなる織布を、50g/Lの8%アルギン酸ナトリウムの溶液、100g/Lの8〜12%イナゴマメ粉エーテル溶液、及び5g/Lのリン酸一ナトリウム(水中)からなる液を用いてパジングしてから、乾燥させる。湿時ピックアップは70%である。
【0083】
次いで、そのようにして前処理された織物を、先に説明したようにして調製し、以下のものを含む水性インクを用い、ドロップ・オン・デマンド(ピエゾ)インクジェット印刷ヘッドを使用して染色する:
3.5%の実施例1の染料、
2.5%のディスパービク(Disperbyk)190分散剤、
30%の1,5−ペンタンジオール、
5%のジエチレングリコールモノメチルエーテル、
0.01%のマーガル(Mergal)K9N殺生剤、
58.99%の水。
捺染物は完全に乾燥させる。過熱水蒸気の手段を用い175℃で7分間の加熱により固着させる。次いでその染色物を、アルカリ性の還元洗浄にかけ、温水ですすいでから、乾燥させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表わされることを特徴とする染料。
【化1】

[式中、
Dは、ジアゾ成分の残基であり;
は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、−NHCHO、−NHCO(C〜C)−アルキル、又は−NHSO(C〜C)−アルキルであり;
は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、又はハロゲンであり;
は、水素、(C〜C)−アルキル、置換(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルケニル又は置換(C〜C)−アルケニルであるか;又は
とRとが結合して、ラジカル−CH(CH)CHC(CH−(ここで印を付けた炭素原子がフェニル核に結合している)を形成し;
は、水素又は(C〜C)−アルキルであり;
は、水素又は(C〜C)−アルキルであり;
は、水素又は(C〜C)−アルキルであり;
Xは、フェニル、チオフェニル、スルホニルフェニル、又はフェノキシであり;
nは、0、1、又は2であり;そして
mは、0又は1である]
【請求項2】
請求項1に記載の染料であって、
Dが、
式(IIa)の基を表すか、
【化2】

[式中、
及びTは独立して、水素、ハロゲン、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、シアノ、−SO(C〜C)−アルキル、又はニトロであり;そして
及びTは独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、−SOCH、−SCN、又はニトロであるが;
但し、T、T、T及びTの内の少なくとも一つは水素ではない]
又は、式(IIb)の基を表すか、
【化3】

[式中、
及びT’は独立して、水素、又はハロゲンであり;そして
は、水素、−SOCH、−SCN、(C〜C)−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、又はニトロであるが;
但し、T、T’及びTの内の少なくとも一つは水素ではない]
又は、式(IIc)の基を表すか、
【化4】

[式中、
12は水素、又はハロゲンである]
又は、式(IId)の基を表すか、
【化5】

[式中、
は、ニトロ、−CHO、−COCH、シアノ、又は次式の基であり、
【化6】

[式中、T10は、水素、ハロゲン、ニトロ、又はシアノである」;
は、水素、(C〜C)−アルキル、フェニル、又はハロゲンであり;そして
は、ニトロ、シアノ、−COCH又は−COOT11である(ここで、T11は(C〜C)−アルキルである)]
又は、式(IIe)の基を表すか、
【化7】

[式中、
及びTは、それぞれ先に定義したものである]
又は、式(IIf)の基を表すか、
【化8】

[式中、
13は、フェニル又は(C〜C)−アルキルチオである]
又は、式(IIg)の基を表すか、
【化9】

[式中、
14は、シアノ、又は−COCH、又は−COOT11(ここで、T11は(C〜C)−アルキルである)であり、そして
15は、フェニル又は(C〜C)−アルキルである]
又は、式(IIh)の基を表すか、
【化10】

[式中、
14は先に定義されたものであり、
16は(C〜C)−アルキルである]
又は、式(IIi)の基を表すか、
【化11】

[式中、
17は、シアノメチル、ベンジル、又はアリルである]
又は、式(IIj)の基を表す、
【化12】

請求項1に記載の染料。
【請求項3】
が、水素、塩素、メチル、エチル、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、又はエチルスルホニルアミノであり:
が、水素、塩素、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシであり;
が、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシエチル、シアノエチル、COCOCH、COCOC、CCOOCH、CCOOC、又はアリルであり;
、R及びRがそれぞれ、メチル、又は水素であり;
Xが、フェニル、又はフェノキシであり;そして
m及びnがそれぞれ0又は1である、
請求項1及び/又は2に記載の染料。
【請求項4】
一般式(Ia)で表わされる、請求項1及び/又は2に記載の染料。
【化13】

[式中、T〜T、R〜R、X、m、及びnはそれぞれ、請求項1において定義されたものである]
【請求項5】
一般式(Iaa)で表わされる請求項4に記載の染料。
【化14】

[式中、
は、ニトロであり;
は、水素、シアノ、塩素、又は臭素であり;
は、水素、シアノ、ニトロ、塩素、臭素、又はトリフルオロメチルであり;
は、水素、塩素、ヒドロキシル、メチル、アセチルアミノ、又はプロピオニルアミノであり;
は、水素、塩素、メチル、又はメトキシであり;
は、水素、メチル、エチル、ブチル、又はアリルであり:そして
Xは、フェニル又はフェノキシである]
【請求項6】
一般式(I)の染料を調製するためのプロセスであって、
一般式(III)の化合物
D−NH (III)
[式中、Dは請求項1において定義されたものである]
を、ジアゾ化させ、一般式(IV)の化合物
【化15】

[式中、R〜R、X、m、及びnはそれぞれ、請求項1において定義されたものである]
とカップリングさせる、プロセス。
【請求項7】
疎水性の材料を染色及び捺染するための、請求項1に記載の一般式Iの染料の使用。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式(I)の染料を含む、インクジェットプロセスによってデジタル織物捺染をするための、インク。

【公表番号】特表2010−535878(P2010−535878A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519440(P2010−519440)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060114
【国際公開番号】WO2009/019207
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】