説明

分析チップのプリズム部、このプリズム部を含む分析チップ、及び分析チップのプリズム部の製造方法

【課題】金膜が剥がれ難い分析チップのプリズム部、このプリズム部を含む分析チップ、及び分析チップのプリズム部の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において表面プラズモン共鳴が生じる分析チップ10に含まれ、且つ流路部材12と共同して検体を含む試料溶液が流れる流路13を形成するプリズム部20であって、プリズム本体部21と、プリズム本体部21の所定の面23の面上に形成される金膜25と、金膜25のプリズム本体部21と反対側の面である表面25aに固定されて検体を補足する生理活性物質26と、金膜25の表面25aに設けられて当該金膜25を保護する保護膜27と、を備え、保護膜27は、金膜25の表面25aにおいて生理活性物質26が固定される領域を除く領域に設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置、又は表面プラズモン共鳴によって生じたエバネッセント波を用いて検体又は検体に標識された蛍光物質を発光させ、この蛍光を測定することにより検体の分析を行う表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析チップのプリズム部、このプリズム部を含む分析チップ、及び分析チップのプリズム部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タンパク質やDNA等を検出するバイオ測定等のような試料溶液に含まれる極微量の検体等を定量分析する方法として、表面プラズモン共鳴を利用した様々な分析方法が開発されている。これらの分析方法では、その殆どがプリズム上に金膜を成膜したいわゆるクレッチマン配置の分析チップが用いられ、この分析チップにおける表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化や表面プラズモン共鳴に基づく金膜近傍の増強電場を利用することにより、試料溶液中の極微量の検体等の分析が高感度且つ高精度に行われる(特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、分析チップは、図10に示されるように、プリズム部111と、このプリズム部111と共同して試料溶液が流れる流路116を形成する流路部材117とを備える。プリズム部111は、ガラスや樹脂で形成されるプリズム本体部112と、このプリズム本体部112の所定の面112bの面上に成膜される金膜113と、を有する。
【0004】
この分析チップ110のプリズム本体部112に励起光を入射させて所定の面112bの面上の金膜113でこの励起光を全反射させると、ある入射角において金膜113の表面近傍の電場が大きく増強される。これは、励起光がある入射角(共鳴角)で金膜113に入射することにより、金膜113において表面プラズモン共鳴が生じ、これにより金膜113の表面近傍の電場が大きく増強されるからである。この現象が金膜113の表面における屈折率の変化に対して高感度に応答するため、これを利用することにより金膜113上を流れる試料溶液中に存在する極微量の物質の検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4370383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金膜113は、ガラスや樹脂に対する密着力が弱く且つ軟らかいため、プリズム本体部112から剥がれたり傷ついたりし易い。そのため、分析チップ110の組み立てや、検体の分析毎に分析チップ110の流路116等を洗浄する際に、金膜113の一部にプリズム本体部112からの剥がれや傷等が生じる場合があった。
【0007】
具体的には、プリズム本体部112の所定の面112bの面上に金膜113を形成した後、このプリズム部111と流路部材117とを接合するために当該プリズム部111の金膜113が形成された部位をピンセット等で挟んだときに、金膜113に剥がれや傷等が生じる場合があった。また、流路116等の洗浄等のためにプリズム部111と流路部材117とを離間させるときに、金膜113の流路部材117と当接していた部分にプリズム本体部112からの剥がれや傷等が生じる場合があった。このように、金膜113に剥がれや傷等が生じると、このプリズム部111を用いた分析チップ110を使用して検体の分析を行ったときに、検体を精度よく検出することができない場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、金膜が剥がれ難い分析チップのプリズム部、このプリズム部を含む分析チップ、及び分析チップのプリズム部の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において前記表面プラズモン共鳴が生じる分析チップに含まれ、且つ流路部材と共同して前記検体を含む試料溶液が流れる流路を形成するプリズム部であって、前記表面プラズモンを生じさせるための励行光が内部に入射するプリズム本体部と、前記プリズム本体部の所定の面の面上に形成される金膜と、前記金膜のプリズム本体部と反対側の面である表面に設けられて当該金膜を保護する保護膜と、を備える。そして、前記保護膜は、前記金膜の表面において前記検体を補足するための生理活性物質が固定される領域を除く領域に設けられることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、保護膜によって流路部材やピンセット等が金膜に直接接触することが防がれ、これにより、分析チップの組み立てや流路の洗浄等のためにプリズム部と流路部材とを離間させたときの金膜の剥がれや損傷等を防止することができる。しかも、生理活性物質が固定される領域には保護膜が無いため、当該領域では流路を流れる試料溶液が金膜と接しつつ流れることができ、これにより、検体の検出感度の低下を抑制することができる。即ち、表面プラズモン共鳴によって形成される増強電場が金膜の表面の極近傍にしか形成されないため、金膜における検体の検出可能な部位(生理活性物質が固定された領域)を試料溶液に対して露出させることで、前記増強電場を有効に利用して検体の検出を行うことができる。
【0011】
本発明に係る分析チップのプリズム部において、前記保護膜は、金膜の表面において、前記流路を形成するために前記流路部材を金膜側から前記プリズム部に当接させたときに前記流路部材が当接する位置に設けられることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、保護膜によって金膜と流路部材との直接の接触が防がれ、これにより、分析チップを組み立てるためにプリズム部に流路部材を当接させ、又は流路の洗浄等のためにプリズム部から流路部材を離間させたときの金膜の剥がれや損傷を効果的に防止することができる。
【0013】
また、前記保護膜は、前記金膜の表面において前記生理活性物質が固定される領域を除く領域全体を覆うように設けられるのがより好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、金膜の表面において検体の検出に必要な領域以外が全て保護膜によって覆われて保護されるため、金膜の剥がれや損傷がより生じ難くなる。
【0015】
前記保護膜が金属で形成されることで、例えば、真空成膜法等によって、プリズム本体部に金膜を形成した後に連続して保護膜を形成することが可能となり、これにより、プリズム部の製造時間を短縮することが可能となる。この場合、前記保護膜が、アルミ、銅、銀、白金、パラジウム、及び錫のいずれかで形成されることで、保護膜の膜応力によって金膜がプリズム本体部から剥がされることを防ぐことができる。即ち、クロムやチタン等の他の金属で保護膜が形成されると、この保護膜の膜応力によって金膜がプリズム本体部から剥がされる。
【0016】
また、前記保護膜では、金属層とこの金属層を構成する金属が酸化した酸化層とが積層され、前記金属層は、前記金膜と前記酸化層との間に位置することが好ましい。このように、保護膜に金属層よりも強固な酸化層が設けられることで、金属層のみで保護膜が形成される場合に比べて、より強固に金膜を保護することができる。しかも、保護膜が酸化層だけで構成されると膜応力によって金膜がプリズム本体部から剥がされるが、金属層が金膜と酸化層との間にあるため、この金属層が酸化層の膜応力を吸収して金膜がプリズム本体部から剥がされるのを防ぐことができる。
【0017】
尚、本発明に係るプリズム部において、前記金膜が30〜70nmの厚さを有することで、当該プリズム部を用いた分析チップにおいて金膜に表面プラズモン共鳴を生じさせると、金膜近傍に検体の検出に十分な強度の増強電場が形成される。
【0018】
また、本発明に係るプリズム部において、前記プリズム本体部が、プリズムとこのプリズムの所定の面の面上に配置される基板とを有し、前記基板が、厚さ方向の一方の面が前記金膜と対向し且つ他方の面がマッチングオイルを介して前記プリズムの所定の面と対向するように配置されてもよい。このようにプリズム本体部がプリズムと金膜の形成された基板とを有することで、剥がれや汚れ、損傷等によって金膜を交換する必要が生じたときに、基板のみを交換してプリズムを使い続けることができるため、コスト削減を図ることができる。
【0019】
また、上記課題を解消すべく、本発明は、表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において前記表面プラズモン共鳴が生じる分析チップであって、前記表面プラズモンを生じさせるための励行光が内部に入射するプリズム部と、前記プリズム部と共同して前記検体を含む試料溶液が流れる流路を形成する流路部材と、を備える。そして、前記プリズム部は、プリズム本体部と、前記プリズム本体部の所定の面の面上に形成される金膜と、前記金膜のプリズム本体部と反対側の面である表面に固定されて前記検体を補足する生理活性物質と、前記金膜の表面に設けられて当該金膜を保護する保護膜とを有し、前記保護膜は、前記金属膜の表面において前記生理活性物質が固定される領域を除く領域に設けられることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、保護膜によって流路部材やピンセット等が金膜に直接接触することが防がれ、これにより、分析チップの組み立てや、流路の洗浄等のためにプリズム部と流路部材とを離間させたときの金膜の剥がれや損傷等を防止することができる。しかも、生理活性物質が固定される領域には保護膜が無いため、当該領域では流路を流れる試料溶液が金膜と接しつつ流れることができ、これにより、検体の検出感度の低下を抑制することができる。即ち、表面プラズモン共鳴によって形成される増強電場が金膜の表面の極近傍にしか形成されないため、金膜において検体の検出可能な部位(生理活性物質が固定された領域)を試料溶液に対して露出させることで、前記増強電場を有効に利用して検体の検出を行うことができる。
【0021】
また、上記課題を解消すべく、本発明は、表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において前記表面プラズモン共鳴が生じる分析チップに含まれ、流路部材と共同して前記検体を含む試料液が流れる流路を形成するプリズム部の製造方法であって、予め準備しておいた前記表面プラズモンを生じさせるための励行光が内部に入射するプリズム本体部の所定の面の面上に金膜を形成する金膜形成工程と、前記金膜のプリズム本体部と反対側の面である表面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、を備え、前記保護膜形成工程では、前記金膜の表面において前記検体を補足するための生理活性物質が固定される領域を除く領域に保護膜を形成することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、金膜が保護膜によって保護され、これにより、分析チップの組み立てや流路の洗浄等のためにプリズム部と流路部材とを離間させたときの金膜の剥がれや損傷等を防ぐことができるプリズム部が得られる。しかも、この得られたプリズム部は、生理活性物質が固定される領域には保護膜が無いため、当該領域では流路を流れる試料溶液が金膜と接しつつ流れることができ、これにより、検体の検出感度の低下を抑制することができる。
【0023】
本発明に係る分析チップのプリズム部の製造方法においては、前記プリズム本体部を真空雰囲気下に配置した状態で、前記金膜形成工程の後に前記保護膜形成工程を連続して行うことが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、金膜と保護膜とが真空雰囲気下で連続して形成されることで金膜と保護膜との間の密着強度が向上する。この場合、前記金膜と前記保護膜とは、真空蒸着法、スパッタ法、又はイオンプレーティング法によってそれぞれ形成される。
【発明の効果】
【0025】
以上より、本発明によれば、金膜が剥がれ難い分析チップのプリズム部、このプリズム部を含む分析チップ、及び分析チップのプリズム部の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る分析チップの斜視図である。
【図2】図1のII−II端面図である。
【図3】前記分析チップの分解斜視図である。
【図4】他実施形態に係る分析チップのプリズム部の構造を説明するための端面図である。
【図5】本実施形態のプリズム部の金膜表面における保護膜を説明するための図であって、(A)は、流路部材のシール部材に対応する領域に設けられる保護膜の一例を示す図であり、(B)は、生理活性物質が固定される領域を除く領域全体に設けられる保護膜を示す図である。
【図6】他実施形態に係るシール部材を説明するための分析チップの分解斜視図である。
【図7】本実施形態に係る分析チップの製造方法のフローを示す図である。
【図8】他実施形態に係る金膜上の保護膜の配置位置の一例を説明するための図である。
【図9】実施例における分析チップの構造を説明するための模式図であって、(A)は金膜上に保護膜を備えた分析チップであり、(B)は金膜上に保護膜のない従来の分析チップである。
【図10】従来の分析素子チップの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0028】
本実施形態に係る分析チップは、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する分析装置や、検体若しくは検体に標識された蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づくエバネッセント波により励起されて発した蛍光を測定する分析装置等に用いられる、いわゆるクレッチマン配置のセンサーチップである。
【0029】
具体的に、分析チップは、図1乃至図3に示されるように、金膜25を有し、内部に入射した励起光が金膜25で反射することにより当該金膜25において表面プラズモン共鳴が生じるプリズム部20と、このプリズム部20と共同して検体を含む試料溶液が流れる流路13を形成する流路部材12とを備える。
【0030】
プリズム部20は、表面プラズモンを生じさせるための励起光が内部に入射するプリズム本体部21と、プリズム本体部21の所定の面23の面上に形成される金膜25と、金膜25の表面25aに設けられて当該金膜25を保護する保護膜27とを有する。ここで、金膜25の表面25aとは、プリズム本体部21と反対側の面のことをいう。
【0031】
プリズム本体部21は、当該分析チップ10が表面プラズモン共鳴蛍光分析装置等に設置されて検体の分析を行うときに、当該装置の光源(図示省略)からの励起光を内部に入射させる入射面22と、この内部に入射した励起光を当該面上に形成された金膜25で反射する反射面(所定の面)23と、反射面23(詳しくは、反射面23上の金膜25)で反射された励起光をプリズム本体部21の外部に出射する出射面とをその表面に含む。このプリズム本体部21は、透明なガラス又は樹脂により形成されている。
【0032】
本実施形態のプリズム本体部21は、プリズムのみで構成されているが、これに限定されない。例えば、プリズム本体部は、図4に示されるように、プリズム211と、金膜25が設けられる基板212とを有してもよい。この場合、プリズム211には金膜25が成膜されず、基板212に金膜25が成膜される。具体的に、基板212は、プリズム211と同じ屈折率を有し、表面(厚さ方向における一方の面)23の面上に金膜25が設けられる。この基板212は、裏面(厚さ方向における他方の面)212bをプリズム211に向けて当該プリズム211の所定の面211aの面上にマッチングオイル213を介して配置される。即ち、基板212は、表面23が金膜25と対向し且つ裏面212bがマッチングオイル213を介してプリズム211の所定の面211aと対向するように配置される。このようにプリズム本体部21Aがプリズム211と金膜25の形成された基板212とを有することで、剥がれや汚れ、損傷等によって金膜25を交換する必要が生じたときに、基板212のみを交換してプリズム211を使い続けることができるため、コスト削減を図ることができる。
【0033】
また、プリズム本体部21は、本実施形態のように断面形状が台形(図2参照)でなくてもよい。プリズム本体部21は、入射面22と反射面23と出射面24とをその表面に含み、入射面22から内部に入射した励起光が反射面23(詳しくは、反射面23上の金膜25)で全反射し、この全反射した励起光が内部で乱反射せずに出射面24から外部に出射されるような形状であればよい。
【0034】
金膜25は、プリズム本体部21の反射面23上に成膜(形成)された金製の薄膜である。この金膜25は、プリズム部20内において金膜25で励起光が全反射されることにより生じるエバネッセント波を増幅するための部材である。即ち、反射面23上に金膜25を設けて表面プラズモン共鳴を生じさせることにより、金膜25の設けられていない反射面において励起光を全反射させエバネッセント波を生じさせた場合に比べ、反射面23の表面近傍に形成される電場を増強させることができる。尚、金膜25は、表面プラズモン共鳴を生じさせることができるように膜厚が100nm以下の薄膜であり、好ましくは膜厚が30〜70nmとなるように反射面23上に成膜される。
【0035】
また、金膜25の表面(プリズム本体部21と反対側の面)25aには、試料溶液に含まれる検体(特定の抗原等)を捕捉するための生理活性物質26が固定されている。本実施形態では、生理活性物質26として抗体が用いられる。この生理活性物質26は、表面処理によって金膜25の表面25aに固定される。具体的に、生理活性物質26は、金膜25の表面25aにおいて、プリズム本体部21が流路部材12と共同して流路13を形成したときにこの流路13を流れる試料溶液と接する領域に固定される。
【0036】
以上のような金膜25は、電子ビーム加熱真空蒸着法、抵抗加熱真空蒸着法、マグネトロンスパッタ法、プラズマ支援型スパッタ法、イオンプレーティング法等の真空成膜法等により、反射面23の面上に成膜される。
【0037】
保護膜27は、金属性の薄膜であり、金膜25の表面において生理活性物質26が固定される領域を除く領域に設けられる。具体的に、保護膜27は、金膜25の表面25aにおいて、流路13を形成するために流路部材12を金膜25側からプリズム部20に当接させたときに流路部材12が当接するような位置に設けられる。本実施形態の保護膜27は、金膜25の表面25aにおいて少なくとも流路部材12に含まれるシール部材(例えば、Oリング)15と対応する位置に設けられ(例えば、図5(A)参照)、好ましくは、金膜25の表面25aにおいて生理活性物質26が固定される領域を除く領域全体を覆うように設けられる(図5(B)参照)。
【0038】
このような領域に設けられる保護膜27は、100nm〜500nmの厚さを有し、アルミ、銅、銀、白金、パラジウム、及び錫のいずれかで形成される。これにより、保護膜27の膜応力によって金膜25がプリズム本体部21から剥がされることを防ぐことができる。即ち、クロムやチタン等の他の金属で保護膜が形成されると、この保護膜の膜応力によって金膜25がプリズム本体部21から剥がされる場合がある。また、上記のアルミ等で保護膜27を形成しても、厚さが100nmより小さいと金膜25を十分に保護する強度が得られず、一方、500nmよりも大きいと当該保護膜27の膜応力によって金膜25がプリズム本体部21から剥がされる場合がある。
【0039】
尚、保護膜27は、表面側に酸化層を有してもよい。即ち、保護膜27は、金属層とこの金属層(例えば、アルミ層)を構成する金属が酸化した酸化層(例えば、酸化アルミ層)とが積層されることで形成されてもよい。このように、保護膜27に金属層よりも強固な酸化層が設けられることで、金属層のみで保護膜27が形成される場合に比べて、より強固に金膜25を保護することができる。しかも、保護膜27が酸化層だけで構成されると膜応力によって金膜25がプリズム本体部21から剥がされるが、金属層が金膜25と酸化層との間にあるため、この金属層が酸化層の膜応力を吸収して金膜25がプリズム本体部21から剥がされるのを防ぐことができる。
【0040】
以上のような保護膜27は、電子ビーム加熱真空蒸着法、抵抗加熱真空蒸着法、マグネトロンスパッタ法、プラズマ支援型スパッタ法、イオンプレーティング法等の真空成膜法等により、金膜25上に成膜される。また、金膜25上において保護膜27を所望の領域に設ける方法としては、フォトリソグラフィを用いたエッチングや、金膜25上にマスクを設けた状態で保護膜27を成膜する方法等が用いられる。
【0041】
尚、金膜25と保護膜27とを成膜するときに、プリズム本体部21を真空雰囲気下に配置した状態で、金膜25の成膜(金膜形成工程)の後に保護膜27の成膜(保護膜形成工程)を連続して行うことが好ましい。このように、金膜25と保護膜27とが真空雰囲気下で連続して形成されることによって、金膜25と保護膜27との間の密着強度が向上する。
【0042】
流路部材12は、プリズム本体部21の反射面23上(詳しくは、金膜25又は保護膜27上)に設けられ、プリズム本体部21と共同して流路13を形成する。この流路部材12は、透明な樹脂により形成される。本実施形態の流路部材12は、水平方向に拡がる板状の部材である。流路13は、抗原抗体反応が行われる検出部13aと、分析チップ10の外部から検出部13aへ試料溶液を案内し、又は検出部13aから外部へ試料溶液を案内する案内部13bとから成る。検出部13aは、流路部材12の裏面(図2において下側の面)12bに設けられた溝とプリズム本体部21上の金膜25とにより囲まれている。即ち、この検出部13aでは、試料溶液が金膜25の表面(生理活性物質26が固定されている面)25aと接しつつ流れる。各案内部13bは、一方の端部が流路部材12の表面(図1において上側の面)12aで開口し、他方の端部(前記一方の端部と反対側の端部)が検出部13aと接続されている。このように案内部13bと検出部13aと案内部13bとが順に繋がることで、一本の流路13が形成される。
【0043】
また、流路部材12は、流路13を構成する裏面12bの溝内にシール部材15を有する。このシール部材15は、流路部材12を金膜25(保護膜27)側からプリズム本体部21に接合させたときに、検出部13aを水平方向から囲み且つ流路部材12の裏面12bの溝内面とプリズム部20の保護膜27とに密着し、これにより、流路部材12とプリズム部20との接合部位からの試料溶液の漏れを防止する。本実施形態のシール部材15は、Oリングである。尚、シール部材15は、Oリングに限定されず、例えば、図6に示されるように、流路13の検出部13aに対応する形状にくり貫かれた両面粘着シート15A等を流路部材12とプリズム部20との間に介在させてもよい。
【0044】
流路部材12は、その裏面12bがプリズム部20の反射面23(詳しくは、金膜25又は保護膜27)に圧着された状態でクランプやねじ等の固定部材によってプリズム部20と接合されている。これにより、流路部材12とプリズム部20とを容易に離間させることができ、金膜25の汚れや損傷等によるプリズム部20の交換が可能になる。
【0045】
尚、流路部材12は、着脱可能にプリズム部20に接合されなくてもよい。即ち、流路部材12は、接着によりプリズム部20に接合されてもよく、レーザー溶着や超音波溶着等によって接合されてもよい。また、流路部材12とプリズム部20とが液密に接合されていれば、検出部13aを囲むシール部材15はなくてもよい。
【0046】
以上の分析チップ10は、以下のようにして製造される。
【0047】
<プリズム部の製造>
所定の形状のプリズム本体部(本実施形態では、プリズム)21を準備する(ステップS1)。このプリズム本体部21を真空雰囲気中に配置して反射面23の面上に金膜25を成膜する(ステップS2)。本実施形態では、反射面23の略全体に金膜25を成膜する。所定の厚さの金膜25が反射面23上に形成されると、この金膜25の上に連続して保護膜27を形成する(ステップS3)。このように真空雰囲気下に置かれた状態で反射面23の面上に金膜25と保護膜27とが連続して成膜されることで、金膜25と保護膜27との間に界面が生じないため、金膜25を成膜した後でその表面25aを一旦酸素に触れさせた後に保護膜27を成膜する場合に比べ、金膜25と保護膜27との密着強度が向上する。
【0048】
このとき、金膜25の表面25aにおいて、生理活性物質26が固定される領域(即ち、流路13の検出部13aに対応する領域)を除く領域に保護膜27を成膜する。本実施形態では、金膜25全体を覆うように保護膜(例えば、アルミ膜)27を形成し、その後、フォトリソグラフィによって生理活性物質26が固定される領域とそれ以外の領域とにパターニングし、保護膜27が不要な領域の保護膜をエッチング等によって除去する。
【0049】
これにより、金膜25上の所望位置に保護膜27が形成されたプリズム部20が完成する。
【0050】
<分析チップの製造>
プリズム部の製造においてエッチングにより保護膜27が除去されて外部に露出した金膜25の表面25aの部位(領域)に生理活性物質26を表面処理により固定する(ステップS4)。
【0051】
所定の形状の流路部材12を準備し(ステップS5)、この流路部材12を金膜25(保護膜27)側からプリズム部20に当接させる。この状態で、ねじ等により流路部材12をプリズム部20に固定することで(ステップS6)、分析チップ10が完成する。
【0052】
以上の分析チップ10によれば、保護膜27によって流路部材12やピンセット等が金膜25に直接接触することが防がれ、これにより、分析チップ10の組み立てや、流路13の洗浄等のためにプリズム部20と流路部材12とを離間させたときの金膜25の剥がれや損傷等を防止することができる。しかも、生理活性物質26が固定される領域には保護膜27が無いため、当該領域では流路13を流れる試料溶液が金膜25(生理活性物質26)と接しつつ流れることができ、これにより、検体の検出感度の低下を抑制することができる。即ち、表面プラズモン共鳴によって形成される増強電場が金膜25の表面の極近傍にしか形成されないため、金膜25における検体の検出可能な部位(生理活性物質26が固定された領域)を試料溶液に対して露出させることで、前記増強電場を有効に利用して検体の検出を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態の分析チップ10によれば、保護膜27によって金膜25と流路部材12(特に、シール部材15)との直接の接触が防がれ、これにより、分析チップ10を組み立てるためにプリズム部20に流路部材12を当接させ、又は流路13の洗浄等のためにプリズム部20から流路部材12を離間させたときの金膜25の剥がれや損傷を効果的に防止することができる。
【0054】
また、本実施形態の分析チップ10では、保護膜27が、金膜25の表面25aにおいて生理活性物質26が固定される領域(検体の検出に必要な領域)を除く領域全体を覆うように設けられているため、金膜25の一部(例えば、シール部材15と対応する部位)のみに保護膜27が設けられる場合に比べて、金膜25の剥がれや損傷がより生じ難くなる。
【0055】
尚、本発明のプリズム部20、このプリズム部20を含む分析チップ10、及び分析チップ10のプリズム部20の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
例えば、上記実施形態の分析チップ10では、保護膜27が金膜25の生理活性物質26が固定される領域を除く領域全体を覆うように設けられているが、これに限定されない。保護膜27は、生理活性物質26が固定される領域を除く領域の一部に設けられてもよい。この場合、上記のように、Oリング15と対応する位置全体に設けられてもよく、例えば、図8(A)に示されるように、Oリング15と対応する位置の一部に設けられてもよい。このように保護膜27Aが設けられても、保護膜27Aが設けられないプリズム部に比べて、分析チップ10の組み立てやプリズム部20への流路部材12の着脱による金膜25の剥がれや損傷等を抑制することができる。
【実施例1】
【0057】
ここで、上記実施形態の分析チップ10のプリズム部20における保護膜27を評価するために、上記実施形態の分析チップ10のプリズム部20と保護膜27を備えていない点以外は上記実施形態と同じ構成を有するプリズム部と比較する。
【0058】
本実施例のプリズム部は、以下のようにして作成(製造)された。
【0059】
E48R(シクロオレフィンポリマー樹脂)製のプリズム21の反射面23の面上に真空蒸着法によって金膜25を50nm形成した。この金膜25の上に同じ真空蒸着法によってアルミ膜(保護膜)27を300nm形成した。そして、フォトリソグラフィによって、金膜25上において生理活性物質が固定される領域とそれ以外の領域とにパターニングして生理活性物質が固定される領域のアルミ膜27を除去した(図5(B)及び図9(A)参照)。
【0060】
一方、比較例として、E48R製のプリズム21の反射面23の面上に真空蒸着法によって金膜25を50nm形成したプリズム部を作成(製造)した(図9(B)参照)。
【0061】
この2種類のプリズム部上にOリング(シール部材)15を介してE48R製の流路部材12をそれぞれセットした。そして、各流路13内に蛍光物質を標識した検体を含む試料溶液を流し、入射面から635nmのレーザーを励起光として入射させて金膜25表面近傍に増強電場(表面プラズモン共鳴に基づく電場)を形成し、この増強電場により励起された蛍光物質の蛍光を光電子倍増管によってそれぞれ測定した。蛍光の測定が終わると、プリズム部から流路部材12を取り外し、試料溶液が接した部位の洗浄をそれぞれ行った。
【0062】
この作業を10数回程度繰り返したところ、上記実施形態のプリズム部では、金膜25もアルミ膜27も破れることなく、これら金膜25とアルミ膜27との状態は良好であった。これに対し、比較例としたプリズム部では、流路部材12を外した時にOリング15に金膜25の一部が付着して剥がれた。この金膜25の一部が剥がれたプリズム部を用いて分析チップを構成し、検体の測定を行ったところ、前記の金膜25の剥がれた部分から試料溶液が流路13の外に染み出してしまい、光電子倍増管によって測定された光量は半分以下となった。また、当然のことながら、金膜25が剥がれたプリズム部は、液漏れ状態であることから、実際の検体の分析には用いることができない。
【実施例2】
【0063】
次に、BK7(ホウケイ酸ガラス)製のプリズム21の反射面23の面上にプラズマ支援型スパッタ法によって金膜25を45nm形成し、その上に、同じプラズマ支援型スパッタ法によって錫膜(保護膜)27を200nm形成した。このとき、マスクを介して金膜25上に錫膜27を成膜することにより、金膜25上の所望の領域に錫膜27を形成した(図8(A)参照)。そして、錫膜の成膜時の最後に酸素を供給して保護膜27の表面を酸化させて酸化層(酸化錫の層)を形成した。
【0064】
一方、比較例として、BK7製のプリズム21の反射面23の面上にプラズマ支援型スパッタ法によって金膜25を45nm形成したプリズム部を作成(製造)した。
【0065】
この2種類のプリズム部を10個ずつ使って、分析チップの組み立てを行った。その結果、比較例のプリズム部では、10個のうち8個のプリズム部の金膜25において、ピンセット等でのハンドリングによる剥がれや傷が生じた。これに対し、保護膜(錫膜(酸化層を含む))27を設けたプリズム部では、いずれの金膜25にもハンドリングによる剥がれや傷が生じなかった。また、保護膜27を設けたプリズム部によれば、金膜25の剥がれや傷等が生じ難いため、比較例のプリズム部を用いた場合に比べて、およそ半分の時間で分析チップの組み立てを行うことができた。
【実施例3】
【0066】
次に、APEL5514ML(シクロオレフィンポリマー樹脂)製のプリズム21の反射面23の面上にイオンプレーティング法によって金膜25を35nm形成し、その上に、同じイオンプレーティング法によって銀膜(保護膜)27を500nm形成した。そして、フォトリソグラフィによって、金膜25上において生理活性物質が固定される領域とそれ以外の領域とにパターニングして生理活性物質が固定される領域の銀膜27を除去した(図5(B)及び図9(A)参照)。
【0067】
一方、比較例として、APEL5514ML製のプリズム21の反射面23の面上にイオンプレーティング法によって金膜25を35nm形成したプリズム部を作成(製造)した(図9(B)参照)。
【0068】
この2種類のプリズム部上にOリング(シール部材)15を介してAPEL5514ML製の流路部材をそれぞれセットした。そして、各流路13内に蛍光物質を標識した検体を含む試料溶液を流し、入射面から635nmのレーザーを励起光として入射させて金膜25表面近傍に増強電場を形成し、この増強電場により励起された蛍光物質の蛍光を光電子倍増管によってそれぞれ測定した。蛍光の測定が終わると、プリズム部から流路部材12を取り外し、試料溶液が接した部位の洗浄をそれぞれ行った。
【0069】
この作業を10数回程度繰り返したところ、上記実施形態のプリズム部では、金膜25も銀膜27も破れることなく、これら金膜25と銀膜27の状態は良好であった。これに対し、比較例としたプリズム部では、流路部材12を外した時にOリング15に金膜25の一部が付着して剥がれた。この金膜25の剥がれたプリズム部を用いた分析チップを構成し、検体の測定を行ったところ、第1実施例と同様に、前記の金膜25の剥がれた部分から試料溶液が流路13の外に染み出してしまい、光電子倍増管によって測定された光量は半分以下となった。また、当然のことながら、金膜25が剥がれたプリズム部は、液漏れ状態であることから、実際の検体の分析には用いることができない。
【実施例4】
【0070】
次に、LaF71(ランタン含有クラウンガラス)製のプリズム21の反射面23の面上にマグネトロンスパッタ法によって金膜25を65nm形成し、その上に、同じマグネトロンスパッタ法によってパラジウム膜(保護膜)27を100nm形成した。このとき、マスクを介して金膜25上にパラジウム膜27を成膜することにより、金膜25上の所望の領域にパラジウム膜27を形成した。
【0071】
一方、比較例として、LaF71製のプリズム21の反射面23の面上にマグネトロンスパッタ法によって金膜25を65nm形成したプリズム部を作成(製造)した。
【0072】
この2種類のプリズム部を10個ずつ使って、分析チップの組み立てを行った。その結果、比較例のプリズム部では、10個のうち8個のプリズム部の金膜25において、ピンセット等でのハンドリングによる剥がれや傷が生じた。これに対し、保護膜(パラジウム膜)27を設けたプリズム部では、いずれの金膜25にもハンドリングによる剥がれや傷が生じなかった。また、保護膜27を設けたプリズム部によれば、金膜25の剥がれや傷等が生じ難いため、比較例のプリズム部を用いた場合に比べて、およそ半分の時間で分析チップの組み立てを行うことができた。
【符号の説明】
【0073】
10 分析チップ
12 流路部材
13 流路
15 シール部材
20 プリズム部
21,21A プリズム本体部
25 金膜
25a 金膜の表面(金膜のプリズム本体部と反対側の面)
26 生理活性物質
27,27A 保護膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において前記表面プラズモン共鳴が生じる分析チップに含まれ、且つ流路部材と共同して前記検体を含む試料溶液が流れる流路を形成するプリズム部であって、
前記表面プラズモンを生じさせるための励行光が内部に入射するプリズム本体部と、
前記プリズム本体部の所定の面の面上に形成される金膜と、
前記金膜のプリズム本体部と反対側の面である表面に設けられて当該金膜を保護する保護膜と、を備え、
前記保護膜は、前記金膜の表面において前記検体を補足するための生理活性物質が固定される領域を除く領域に設けられることを特徴とする分析チップのプリズム部。
【請求項2】
前記保護膜は、金膜の表面において、前記流路を形成するために前記流路部材を金膜側から前記プリズム部に当接させたときに前記流路部材が当接する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項3】
前記保護膜は、前記金膜の表面において前記生理活性物質が固定される領域を除く領域全体を覆うように設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項4】
前記保護膜は、金属で形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項5】
前記保護膜は、アルミ、銅、銀、白金、パラジウム、及び錫のいずれかで形成されることを特徴とする請求項4に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項6】
前記保護膜では、金属層とこの金属層を構成する金属が酸化した酸化層とが積層され、
前記金属層は、前記金膜と前記酸化層との間に位置することを特徴とする請求項4又は5に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項7】
前記金膜は、30〜70nmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項8】
前記プリズム本体部は、プリズムと、このプリズムの所定の面の面上に配置される基板とを有し、
前記基板は、厚さ方向の一方の面が前記金膜と対向し且つ他方の面がマッチングオイルを介して前記プリズムの所定の面と対向するように配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の分析チップのプリズム部。
【請求項9】
表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において前記表面プラズモン共鳴が生じる分析チップであって、
プリズム部と、前記プリズム部と共同して前記検体を含む試料溶液が流れる流路を形成する流路部材と、を備え、
前記プリズム部は、前記表面プラズモンを生じさせるための励行光が内部に入射するプリズム本体部と、前記プリズム本体部の所定の面の面上に形成される金膜と、前記金膜のプリズム本体部と反対側の面である表面に設けられて当該金膜を保護する保護膜とを有し、
前記保護膜は、前記金属膜の表面において前記検体を補足するための生理活性物質が固定される領域を除く領域に設けられることを特徴とする分析チップ。
【請求項10】
表面プラズモン共鳴を利用して検体を分析する分析装置において前記表面プラズモン共鳴が生じる分析チップに含まれ、流路部材と共同して前記検体を含む試料液が流れる流路を形成するプリズム部の製造方法であって、
予め準備しておいた前記表面プラズモンを生じさせるための励行光が内部に入射するプリズム本体部の所定の面の面上に金膜を形成する金膜形成工程と、
前記金膜のプリズム本体部と反対側の面である表面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、を備え、
前記保護膜形成工程では、前記金膜の表面において前記検体を補足するための生理活性物質が固定される領域を除く領域に保護膜を形成することを特徴とする分析チップのプリズム部の製造方法。
【請求項11】
前記プリズム本体部を真空雰囲気下に配置した状態で、前記金膜形成工程の後に前記保護膜形成工程を連続して行うことを特徴とする請求項10に記載の分析チップのプリズム部の製造方法。
【請求項12】
前記金膜と前記保護膜とは、真空蒸着法、スパッタ法、又はイオンプレーティング法によってそれぞれ形成されることを特徴とする請求項10又は11に記載の分析チップのプリズム部の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−112885(P2012−112885A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263855(P2010−263855)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】