説明

分析物センサ及び製作方法

IC又はMEMsベースの製作技術を用いて分析物センサ・コンポーネントを製作するための方法と、これから用意されたセンサである。分析物センサ・コンポーネントの製作は、その上に剥離層が堆積された無機基板と、複数のセンサの電極及びコンタクトパッドを接続する電極、コンタクトパッド、及びトレースの間を絶縁する第1可撓性誘電体層及び第2可撓性誘電体層とを提供することを含む。関心ある分析物の検出のための分析物感知膜を受け入れるために及び外部電子装置との電気接続のための開口部が1つ又は複数の電極の上の誘電体層のうちの1つに設けられる。製作された複数のセンサ・コンポーネントは、無機基板からリフトオフされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に分析物測定システム及び方法に関し、より詳細には微細製造技術及びリフトオフ技術を用いる分析物センサの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病及び他の患者の血糖レベルの制御は、時間と的確さが重要な救命医療において、特に、集中治療室(ICU)、手術室(OR)、又は緊急処置室(ER)環境において、命にかかわる構成要素となることがある。現在、患者から非常に正確な血糖測定値を得るための最も信頼できる方法のうちの1つは、血液サンプルを抜き出し、それを実験室分析のために送り出すことに関係する侵襲的な方法である、直接時間点法(direct time−point method)によるものである。この時間のかかる方法は、しばしば、必要とされる結果を時宜を得た形でもたらすことができない。フィンガー・スティック法のような他の最小限に侵襲的な方法は、皮膚を穿刺して、テスト紙片に塗布されグルコースメータによって分析される小さな血液サンプルを得るために、ランセット又はピンを使用することに関係する。これらの最小限に侵襲的な方法は、血糖濃度の動向を判定するのに効果的な場合があるが、それらは一般に、グルコースを、集中インスリン療法に用いるのに十分なだけ正確に追跡せず、例えば、低血糖状態における不正確さは、患者に非常に高いリスクを課すことがある。
【0003】
グルコースのような物質中の種々の分析物を測定するための電気化学分析物センサが開発されている。分析物は、滴定のような分析手順で判定される物質又は化学成分である。例えば、免疫学的検定法において、分析物はリガンド又はバインダであってもよく、血糖試験において、分析物はグルコースである。電気化学分析物センサは、分析物を測定するのに用いられる電極を含む電解槽を備える。2つのタイプの電気化学分析物センサは、ポテンショメトリック分析物センサとアンペロメトリック分析物センサである。
【0004】
例えば、アンペロメトリック分析物センサは、血液化学を分析するための医療産業において公知である。これらのタイプのセンサは、典型的に、電極表面上の膜の背後に固定化されるグルコースオキシダーゼのようなオキシダーゼ酵素を含む酵素電極を有する。血液の存在下で、膜は、関心ある分析物、例えばグルコースをオキシダーゼ酵素に選択的に通し、そこで該分析物は酸化又は還元、例えば過酸化水素への酸素の還元を受ける。アンペロメトリック分析物センサは、反応物の存在下で2つの電極の間に反応を持続させるのに十分なだけの電位が印加されるとき電流を生じることによって機能する。例えば、グルコースとグルコースオキシダーゼとの反応において、過酸化水素反応生成物は、その後、電極への電子伝達によって酸化されることがある。結果として生じた、電極における電流の流れは、関心ある分析物の濃度を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析物センサの製造は問題のあるものとなることがある。正確な分析物測定を達成するために、製造中に精密許容差が達成されなければならない。例えば、第1及び第2作用電極の寸法の僅かな差異は、2つの電極の出力間に電気オフセットをもたらすことがある。このオフセットは、結果として、あまり正確でない分析物濃度測定をもたらす場合がある。多くの分析物製造技術は多数のステップを要求し、各ステップは、誤差及び/又は許容差変動を導入する場合がある。これは、次に、結果として、高い信頼性及び再現性をもつ多数の分析物センサの製造に難しさをもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、小型化されたバイオセンサ・コンポーネントの製造と、さらに小型化することができる分析物センサを用いて分析物濃度を測定するための方法を提供する。システム及び方法は、微小電気機械(microelectromechanical)(MEMs)及び/又は集積回路(IC)製作プロセスを用いて製造された分析物センサを含む。結果として得られた分析物センサは、分析物濃度を感知すること、及び分析物濃度に対応する信号を出力することが可能である。開示された態様では、機能性インビボセンサの組立体の生産ステップの数を減らすことができる。したがって、大量生産される、高密度の、コストが低下された、高い信頼性のあるセンサが達成されるであろう。
【0007】
MEMs及び/又はIC製作技術は、分析物検出、特にグルコース検出に適したアンペロメトリックセンサ・コンポーネントの製造を提供する。MEMs及び/又はIC製作技術は、他の電子装置と共に集積することができるサブミクロンからミクロンサイズの分析物センサ・コンポーネントを可能にする。そのうえ、MEMs及び/又はIC製作技術は、大量の分析物センサのバッチ製作を提供し、したがって、潜在的に品質を改善しながらコストを低下させる。MEMs/ICセンサは、予め設計されたレジストパターン(マスク)を用いて三次元構造体を提供する、リソグラフィを採用するバッチ生産プロセスを通じて製作される。出願人らは、アンペロメトリック分析物センサの製造は、関心ある分析物の検出のための正確な高品質のセンサを提供するためにMEMs/IC製作技術の中に有利に統合されてもよいことを突き止めた。
【0008】
本発明の一態様によれば、分析物センサ・コンポーネントのMEMs及び/又はIC製作のための方法が提供される。分析物センサ・コンポーネントは、半導体基板上に製作され、途切れなく接続された絶縁された参照電極、作用電極、及びブランク電極のうちの少なくとも1つを備える。
【0009】
第1の実施形態において、電気化学センサ・コンポーネントを製作するための方法が提供される。方法は、無機基板を提供すること、基板の実質的に全体の上に剥離層を堆積すること、剥離層の実質的に全体の上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、及び、第1可撓性誘電体層と第2可撓性誘電体層との間で、導電性材料からなる複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを絶縁することを含む。第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を露出する開口部を形成し、無機基板から電気化学センサ・コンポーネントを分離する。
【0010】
第1の実施形態の一態様において、剥離層は、(i)第1又は第2可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、(ii)第1可撓性誘電体層よりも速いエッチング速度(ウェット又はドライ)、又は(iii)第1誘電体材料と無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料を備える。
【0011】
第1の実施形態の他の態様において、方法は、電気化学センサ・コンポーネントの電極の上の開口部に分析物感知膜を堆積することをさらに含む。
【0012】
第2の実施形態において、電気化学センサ・コンポーネントを製作するための方法が提供される。方法は、(i)無機基板を提供すること、(ii)無機基板上に剥離層を堆積すること、(iii)剥離層上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、(iv)第1可撓性誘電体層に、複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドの周辺部を画定すること、(v)第1可撓性誘電体層に形成された周辺部の少なくとも一部に導電性材料を堆積すること、(vi)複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッド、並びに第1可撓性誘電体層の上に第2可撓性誘電体層を堆積すること、及び(vii)第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を露出する開口部を形成すること、並びに(ix)無機基板から第1電気化学センサ・コンポーネントを化学的に分離することを含む。
【0013】
第2の実施形態の一態様において、剥離層は、(i)第1又は第2可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、(ii)第1可撓性誘電体層よりも速いエッチング速度(ウェット又はドライ)、又は(iii)実質的にすべての第1誘電体材料と無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料を備える。
【0014】
第2の実施形態の別の態様において、方法は、電極の上の開口部に分析物感知膜を堆積することをさらに含む。
【0015】
第3の実施形態において、電気化学センサ・コンポーネントを製作するための方法が提供される。方法は、(i)無機基板を提供すること、(ii)無機基板上に剥離層を堆積すること、(iii)剥離層上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、(iv)第1可撓性誘電体材料上に導電性材料を堆積すること、(v)導電性材料上にマスク層を堆積すること、(vi)マスク層に、途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つのための周辺部を画定すること、(vii)マスク層の周辺部によって画定されたように導電性材料の複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを形成すること、(viii)複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッド、並びに第1可撓性誘電体層の上に第2可撓性誘電体層を堆積すること、(ix)第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を露出する少なくとも1つの開口部を形成すること、及び(x)基板から電気化学センサ・コンポーネントを化学的に分離することを含む。
【0016】
第3の実施形態の一態様において、剥離層は、(i)第1又は第2可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、(ii)第1可撓性誘電体層よりも速いエッチング速度(ウェット又はドライ)、又は(iii)実質的にすべての第1誘電体材料と無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料を備える。
【0017】
第3の実施形態の別の態様において、方法は、電極の上の開口部に分析物感知膜を堆積することをさらに含む。
【0018】
本明細書に記載の方法によって作製された電気化学分析物センサも提供される。
【0019】
以降、添付の図面及びその関連する本文の参照を行う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の幾つかの態様に用いられる4電極電気化学センサ・コンポーネントの概略図である。
【図2】本発明の幾つかの態様に用いられる電気化学センサ・コンポーネントの上部平面の概略図である。
【図3】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの横断面の概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に用いられる電気化学センサ・コンポーネントを製作する方法の流れ図である。
【図5】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第1の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図6】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第1の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図7】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第1の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図8】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第1の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図9】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第1の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図10】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第1の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に用いられる電気化学センサ・コンポーネントを製作する方法の流れ図である。
【図12】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図13】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図14】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図15】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図16】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図17】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図18】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図19】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図20】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第2の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に用いられる電気化学センサ・コンポーネントを製作する方法の流れ図である。
【図22】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図23】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図24】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図25】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図26】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図27】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図28】電気化学センサ・コンポーネントの製作プロセスの第3の実施形態を例証する横断面の概略図である。
【図29】分析物感知膜を例証する分解された横断面の概略図である。
【図30】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの電極、トレース、及びコンタクトパッドの製作の上部平面の概略図である。
【図31】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの電極、トレース、及びコンタクトパッドの製作の上部平面の概略図である。
【図32】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの電極、トレース、及びコンタクトパッドの製作の上部平面の概略図である。
【図33】図32のセンサを例証する横断面の概略図である。
【図34】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの電極、トレース、及びコンタクトパッドの構成の上部平面の概略図である。
【図35】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの電極、トレース、及びコンタクトパッドの構成の上部平面の概略図である。
【図36】本発明の幾つかの態様に用いられるセンサの電極、トレース、及びコンタクトパッドの構成の上部平面の概略図である。
【図37】本発明の幾つかの態様に用いられる場合の、作用電極を露出する開口部の上を分析物感知膜の個々の層が覆っている、分析物感知膜の概略図である。
【図38】グルコースの濃度に露出された後の本発明の態様に用いられる実験用センサの電流対時間のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、発明のすべてではなく幾つかの実施形態が示される付属の図面を参照しながら、以下により十分に説明される。実際には、これらの発明は、多くの異なる形態で具体化されても良く、本明細書に記載された実施形態を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。全体を通して同様の番号は同様の要素を指す。
【0022】
開示されるのは、IC又はMEMsベースの製作技術を用いてグルコースセンサのような分析物センサを製作するための方法である。分析物センサの製作は、無機基板を提供すること、無機基板上に堆積される第1可撓性誘電体層と、第2可撓性誘電体層との間で、導電性材料からなる複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを絶縁すること、および、第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドのうちの1つの少なくとも一部を露出する開口部を形成することを含む。関心ある分析物の検出のための分析物感知膜を受け入れるための及びコンタクトパッドとの電気接続のための、開口部が設けられる。一態様において、製作されたセンサ・コンポーネントは、半導体基板からリフトオフされ、且つフレキシブル回路(flex circuit)又は医療機器の中に組み入れられてもよい。
【0023】
無機基板は半導体であってもよい。適切な半導体基板は、シリコン、二酸化ケイ素、又はガリウムヒ素のような従来の半導体材料であってもよい。シリコン基板は、自然酸化物又はポリシリコン層を有してもよく、或いは窒化ケイ素層を有してもよい。基板として他の無機材料、半導電性材料、又は非導電性材料が用いられてもよい。一態様において、これらの材料としてホウケイ酸ガラスを除く無機基板は、一般にMEMs/IC処理に直ちに適合可能ではない。
【0024】
一態様において、分析物センサの製作は、製作されたセンサ・コンポーネントのその後の剥離を提供するために、基板上に剥離層を堆積することを含む。この態様において、複数の製作されたセンサ・コンポーネントは、基板から「リフトオフ」されてもよく、フレキシブル回路、医療機器、例えば、カテーテルなどの中に又は上に組み入れるのに十分な可撓性をセンサに提供する。
【0025】
好ましい態様において、剥離層は、好ましくは以下の特性、すなわち、後で形成される可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、センサの第1可撓性誘電体層よりも速い速度でのエッチング(ウェット又はドライ)、又は実質的にすべての第1誘電体材料と無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料であること、のうちの1つ又は複数を有する。
【0026】
好ましくは、剥離層は、基板からのセンサ・コンポーネントの分離を容易にするように、誘電体材料及び/又は基板とは異なる溶解性又はエッチング・プロフィールを有する組成物のものである。一態様において、剥離層は、化学線に露出されるとその溶解性が変化する感光性材料である。したがって、例えば、剥離層は、水性媒体又は水性ベース中に最初に不溶である(有機溶媒からのキャスト)が、化学線に露出されると、剥離層は水性媒体/ベース中に直ちに可溶となってもよい。有機溶媒と共にキャストされる剥離層の堆積後に、剥離層を有機溶媒に不溶にし、且つ水性媒体に可溶にするために層が投光露出される(flood exposed)。水性媒体に不溶の誘電体材料を用いることによって、剥離層の溶解と、製作されたセンサ・コンポーネントの誘電体層の基板からの分離を提供する。剥離層として適した材料の例は、例えば、MEMs/IC製造分野では一般に公知のポジ型ノボラック(novalak)/ジアゾナフタキノンレジスト、及び/又は化学的に増幅されたフォトレジスト(部分的にブロックされたビニルフェノールで化学的に増幅されたレジスト、ポリブテン−1−スルホンなど)を含むであろう。
【0027】
別の態様において、剥離層として無機薄膜が用いられてもよい。例えば、無機基板(例えばシリコンウェハ)のための剥離層としてシリコンオキサイド又は石英ガラスの薄膜が用いられてもよい。この態様において、製作されたセンサ・コンポーネントは、HF(フッ化水素酸)ウェットエッチングによって剥離されてもよい。HFは、露出された金属電極及びパッドを攻撃するであろうことから、HFウェットエッチング中にセンサ表面を保護するためにフォトレジスト保護層が用いられてもよい。無機薄膜の剥離層は、約10nm〜約500nmの厚さであってもよい。他の厚さが用いられてもよい。膜は、例えばスパッタリングによって堆積されてもよい。
【0028】
別の態様において、基板から電気化学センサ・コンポーネントを剥離するために金属犠牲層が用いられてもよい。例えば、シリコンウェハのような基板上にチタン又はクロム(100〜500nm)がスパッタリング又は蒸着技術によって堆積されてもよい。次いで、Ti又はCr層上にアルミニウムの薄層(300〜1000nm)が堆積されてもよい。ポリマーセンサの部分的な又は完全な製作の後で、センサを基板から剥離するためにアルミニウム層がエッチングで除去されてもよい。アルミニウムの薄層は、化学的に又は電気化学的にエッチングされてもよい。例えば、基板は、室温の1〜2Mの塩化カリウム又は塩化ナトリウムのような強電解質溶液中に浸漬することによって電気化学的にエッチングされてもよい。アノードの金属溶解は、より大きいPt又は炭素対電極に対してアルミニウム層上に0.5〜1.0VのアノードDC電圧を印加することによって行われる。アルミニウムが溶解した後で、より安定且つ不活性のクロム又はチタン層が基板上に残り、したがって、ポリマーセンサが剥離される。金属剥離層は、約10nm〜約500nmの厚さであってもよい。他の厚さが用いられてもよい。膜は、例えばスパッタリングによって堆積されてもよい。
【0029】
別の態様において、剥離層は、センサが基板から機械的に除去されてもよいように第1可撓性誘電体層と基板との間に配置された感圧接着剤(PSA)又はそれに類似のものである。好ましくは、感圧接着剤は、本質的に完全に第1可撓性誘電体層と基板との間に配置される。PSAにおいては、例えば、キャストすること、浸漬すること、又はスピンコートすることによって堆積されてもよい。
【0030】
分析物センサの製作は、基板上に形成された導電性材料上に誘電体材料を堆積すること、及び、途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトを絶縁するために、その中に周辺部を画定することを含む。例えば、誘電体材料は、1つ又は複数の絶縁された、途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドの形成を提供するためにパターン形成されてもよい。電極及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つの上に開口部を画定するために付加的な誘電体層が用いられる。誘電体材料のパターン形成は、公知のフォトレジスト/マスク技術を用いて行われてもよい。例えば、誘電体としてポリイミド又はポリエポキシドフォトレジスト材料が用いられてもよい。一態様において、誘電体材料は、適切な材料特徴及び特性の多数のポリマー層を備える。したがって、製作プロセスは、ポリイミド、パリレン、ポリジメチルシロキサン、又はポリエポキシドのような適切な誘電体材料で形成された第1ポリマー層を、センサ・コンポーネントの電気絶縁、及び/又は製作及び意図された使用の間の十分な可撓性及び耐久性を提供するのに適した厚さに堆積することを含んでもよい。誘電体ポリマー層は、約15μm、10μm、5um、1um以下の厚さに堆積されてもよい。他の厚さの誘電体ポリマー層が用いられてもよい。誘電体ポリマー層は、スピンコートすること、キャストすることなどのような公知の方法を用いて堆積されてもよい。好ましくは、誘電体ポリマーは、フォトリソグラフィ技術を用いて像形成されてもよいように感光性である。したがって、一態様において、1つ又は複数の誘電体ポリマー層は、感光性(ポジ型又はネガ型フォトレジスト)である。例えば、感光性ポリイミド又は感光性ポリエポキシドが用いられてもよく、フォトリソグラフィ法及びエッチング/現像を用いて、又は代替的にレーザ・アブレーションによって、その中に周辺部が形成されてもよい。誘電体に周辺部を形成するプロセスは、ポジ型フォトレジストを用いる像の反転を含んでもよい。
【0031】
したがって、一実施形態において、製作プロセスは、前述のようにその上に剥離層が配置された状態の半導体基板上に第1可撓性誘電体層をコーティングすることを含む。次いで、第1可撓性誘電体ポリマー層の上に(随意的に前もって塗布された接着剤層の上に)導電性材料が堆積される。次いで、適切なエッチング特性をもつ感光性マスク層が、導電性材料の上に堆積され、且つ個々の電極、トレース、及びコンタクトパッドの周辺部を画定するためにパターン形成される。感光性マスク層及び導電性材料のエッチングは、複数の絶縁された途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを提供する。代替的に、導電性層は、機能部を画定するためにレーザ・アブレーションされてもよい。導電性材料の表面に(随意的に接着剤層の上に)第2可撓性誘電体が塗布される。電極の上に開口部をもたらし且つコンタクトパッドを露出するために、フォトリソグラフィ又はレーザ・アブレーションが用いられてもよい。基板上に複数の電気化学センサ・コンポーネントを提供するために、電極の上の1つ又は複数の開口部の中に分析物感知膜が堆積されてもよい。電気化学センサ・コンポーネントを形成する誘電体層、電極、及び画定された開口部は、分析物感知膜の堆積のために基板からリフトオフされてもよく、及び/又はフレキシブル回路又は医療機器と結合してもよい。個々のセンサは、例えばレーザ切断法又はダイシング法を用いて互いから分離されてもよい。
【0032】
製作されたセンサ・コンポーネントの可撓性は、第1可撓性誘電体ポリマー層の厚さによって制御することができる。可撓性は、例えば被検者への蛇行路の導入に適応するように例えばカテーテルの中に導入するためなどの特定の用途のために調節されてもよい。
【0033】
別の実施形態において、製作プロセスは、その上に剥離層が堆積された状態の半導体基板上に第1可撓性誘電体ポリマー層をコーティングすることを含む。次いで、第1誘電体ポリマー層の上に感光性マスク層がコーティングされる。マスク層は、導電性材料を受け入れるための1つ又は複数の絶縁された開口部及び/又はトレンチを提供するために、リソグラフィでパターン形成されてもよい。例えば、ポジ型又はネガ型フォトレジスト材料が用いられてもよく、且つマスク層に1つ又は複数の開口部及び/又はトレンチを提供するために露出され/現像されてもよい。次いで、マスク層の上に(随意的に前もって塗布された接着剤層の上に)且つ複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを画定する開口部/トレンチの中に導電性材料が堆積される。マスクの表面上のあらゆる余分な導電性材料の除去は、エッチング又は化学研磨技術によって達成されてもよい。次いで、電極、トレース、及びコンタクトパッドを画定する絶縁された機能部を提供するために、マスク層が溶媒又はエッチングによって除去される。次いで、絶縁された導電性材料の上に、第2の、好ましくは感光性誘電体層が塗布され、フォトリソグラフィ法又はレーザ・アブレーションを用いて電極/コンタクトパッドのうちの1つ又は複数の上の感光性誘電体層の中に開口部が画定される。分析物感知膜は、基板上に複数の電気化学センサを提供するために電極の上の1つ又は複数の開口部の中に堆積されてもよく、及び/又は該膜で覆う又は封じ込めてもよい。電気化学センサを形成する誘電体層及び画定された開口部は、基板からリフトオフされてもよい。個々のセンサは、例えばレーザ切断法又はダイシング法を用いて互いから分離されてもよい。
【0034】
さらに別の実施形態において、製作プロセスは、第1可撓性誘電体材料を半導体基板上に直接堆積し、次いで、誘電体に(随意的に前もって塗布された接着剤層の上に)導電性材料をコーティングし、その後、感光性マスク層をコーティングすることを含む。前述のように感光性マスク層の途切れなく接続された導電性電極、コンタクトパッド、及びトレースの周辺部をもたらすために、フォトリソグラフィ又はレーザ・アブレーションが用いられてもよい。次いで、マスクと余分な導電性材料の現像及び/又はエッチングによって、複数の個々の電極、トレース、及びコンタクトパッドが形成される。次いで、第2可撓性誘電体層が塗布され、フォトリソグラフィ法又はレーザ・アブレーションを用いて、絶縁された途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドのうちの1つ又は複数の上に開口部が形成される。この態様において、製作されたセンサは、半導体基板の厚さに基づいて一定の剛性を有する。剛性は、所望の厚さが得られるまで半導体基板をエッチングすること又は研磨することなどによって特定の用途のために調節されてもよい。代替的に、製作プロセスは、基板上に第1可撓性誘電体材料をコーティングし、第1可撓性誘電体材料上に(随意的に前もって塗布された接着剤層の上に)第2感光性誘電体材料をコーティングすることを含んでもよい。第2ポリマー層は、前述のように導電性材料を受け入れるための1つ又は複数の絶縁された開口部、トレンチ、及び/又はバイアを提供するためにパターン形成されてもよい。
【0035】
センサの開口部、トレンチ、及び/又はバイアは、約1:100から約100:1までの間のアスペクト比(高さ対幅)で製作されてもよい。好ましくは、アスペクト比は1:10から10:1までの間であり、より好ましくは、アスペクト比は1:5から5:1までの間である。一態様において、アスペクト比は、分析物感知膜が開口部内に収容され又は他の方法で位置決めされ、且つ開口部を画定する誘電体材料の表面と同じ高さにされることを含むように、高くされる(例えば2:1以上)。他の態様において、アスペクト比は、分析物感知膜が開口部の上を覆い、且つ開口部に分析物感知膜を充填することを含むように、低くされる(例えば1:2以上)。
【0036】
電極とコンタクトパッドとを接続する誘電体材料絶縁トレースを有する半導体基板を提供するために、且つ1つ又は複数の電極の上に感知膜を受け入れるための開口部を画定するために、且つ1つ又は複数のコンタクトパッドの上にそれらとの電気接続のための開口部を画定するために、他のMEMs/IC製作技術が用いられてもよい。
【0037】
電極、トレース、及びコンタクトパッドの製作は、例えば、剥離層及び/又は接着剤層、誘電体材料、導電性材料、及び感光性材料を含む材料の薄膜の連続した堆積を含んでもよい。剥離層及び誘電体材料の堆積は、キャストすること又はスピンコートすることによってなされてもよい。基板又は誘電体材料上への接着剤層及び導電性材料の堆積は、従来の方法(例えば、化学気相成長、エピタキシー、電着、又は熱酸化)によって又は物理的反応ベースの手法(蒸着、スパッタリング、キャストすること、eビーム、無電解めっき、又は電気めっき)によって達成される。電極、トレース、及びコンタクトパッド導電性材料は、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、若しくは電気めっき又は無電解電気めっき法によって、第1ポリマー層及び随意的な金属接着剤層の上に形成される。電極、トレース、及びコンタクトパッド導電性材料は、約500nm以上の厚さに堆積されてもよい。電極、トレース、及びコンタクトパッド導電性材料は、所望のセンサ・アーキテクチャを提供するために、公知の技術を用いてパターン形成されてもよい。
【0038】
電極、トレース、及びコンタクトパッドは、異なる導電性材料で作製されてもよい。電極、トレース、及びコンタクトパッドの導電性材料は、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、若しくは電気めっき又は無電解めっき法によって堆積されてもよい。導電性材料は、約500nm以上の厚さに堆積されてもよい。導電性材料は、例えば、電極、トレース、及びコンタクトパッドを含む所望のセンサ・アーキテクチャを提供するために、公知の技術を用いてパターン形成されてもよい。一態様において、作用電極は、白金ベースの酵素電極、すなわち、その上に分析物感知膜が配置された状態の電極であってもよい。電極、トレース、及びコンタクトパッド構造体のいずれかのために同じ又は異なる導電性材料が用いられてもよい。例えば、コンタクトパッドは、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、炭素(C)、又は酸化に耐える他の材料のような材料で形成されてもよい。トレースは、金(Au)、白金(Pt)、又は銅(Cu)のようなあらゆる適切な導電性材料で形成されてもよい。電極材料は、あらゆる適切な材料であってもよく、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、炭素(C)、及びそれらの合金又は酸化物で形成されてもよい。電極、トレース、又はコンタクトパッドを形成するために、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANi)、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、又はそれらの誘導体のような導電性ポリマーを用いることもできる。
【0039】
アンペロメトリックセンサにバイアス信号を入力するために、参照電極が用いられてもよい。幾つかの実施形態において、参照電極は、製作された開口部のうちの1つに銀(Ag)を堆積し、次いで、化学的又は電気化学的のいずれかで銀を塩化銀(Ag/AgCl)に転換することによって形成される。異なる金属/材料を選択的に堆積して種々の電極(例えば、作用電極、対電極、及び参照電極)を形成するために、IC製造において一般に公知のマスキング技術が用いられてもよい。
【0040】
随意的に、結合を容易にする及び/又は隣接する層への接着を改善するために、誘電体材料及び/又は導電性材料の上に接着剤層が提供されてもよい。典型的に、接着剤層は、金属とポリマーとの間の接着を改善するために用いられる。接着剤層は、例えばスパッタリング法又はめっき法によって形成されてもよい。金属/ポリマー界面に対して、接着剤層は、好ましくは金属である。金属の接着剤層は、例えば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、又はこれらの金属の組合せ若しくは合金のようなあらゆる適切な材料とすることができ、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、若しくは電気めっき法又は無電解めっき法によって堆積されてもよい。一態様において、金属の接着剤層は、10〜100nmの範囲の厚さをもつチタン(Ti)であってもよいが、しかしながら、他の厚さが用いられてもよい。接着剤層は、導電性材料の選択的な堆積を提供するためにパターン形成されてもよい。
【0041】
電極、トレース、及びコンタクトパッドの配置、並びに導電性材料の堆積のようなセンサの種々のコンポーネントの製作は、MEMs/ICプロセスを用いて有利に実行される。マイクロメートルからミリメートルまでの範囲にわたる種々の寸法をもつ種々の形状にされたセンサをバッチで製造することができる。白金(Pt)のような純粋な金属で作製されたセンサ電極は、合金及び/又は導電性インクよりも高い感度を有する可能性があり、これにより、より高い信号対ノイズ比を提供する。センサを製作する従来のシルクスクリーニング法又は他の電極堆積法とは対照的なIC/MEMs製作技術の1つの利点は、電極から電極までの及びセンサのパネルからセンサのパネルまでのより高い再現性であってもよい。電極の再現性は、センサのこれらの2つの電極の構造上の正確な合致が電極間の電気出力オフセットを減少させるので、少なくとも作用電極及びブランク電極の製造に関しては重要である。
【0042】
マイクロメートルからミリメートルまでの範囲にわたる種々の寸法をもつ種々の形状にされたセンサをバッチで製造することができる。白金(Pt)のような純粋な金属で作製されたセンサ電極は、合金及び/又は導電性インクよりも高い感度を有する可能性があり、これにより、より高い信号対ノイズ比を提供し、したがって好ましい場合がある。センサを製作する従来のシルクスクリーニング法又は他の電極堆積法とは対照的なIC/MEMs製作技術の1つの利点は、電極から電極までの及びセンサのパネルからセンサのパネルまでのより高い再現性であってもよい。電極の再現性は、センサのこれらの2つの電極の構造上の正確な合致が電極間の電気出力オフセットを減少させるので、少なくとも作用電極及びブランク電極の製造に関しては重要である。
【0043】
センサ構造体の異なる構造上の実施形態、並びに、電極、トレース、及びコンタクトパッドの異なる空間配置が用いられてもよい。例えば、異なる形状及び異なる寸法の電極が採用されてもよい。より大きい単一の対電極とは対照的に、対電極と作用電極との間のより大きい表面積比を維持しながら、2つのより小さい対電極が用いられてもよい。作用電極(単数又は複数)は、対電極と参照電極との間に位置決めされてもよい。
【0044】
センサ要素(電極、トレース、コンタクト)の基本的なレイアウトは、多数の方法で構築されてもよく、その各々は、結果として、1つ又は複数のトレースによって少なくとも1つのコンタクトパッドに接続された少なくとも1つの絶縁された電極をもたらすことが理解される。以下で提供されるのは、結果として前述のアーキテクチャに至るセンサ・コンポーネントの配置をもたらす例示的なプロセスである。これらの例示的なプロセスは、このように提供され、本明細書で開示された実施形態を限定することを意図されない。
【0045】
例えば温度センサを提供するために、付加的な電極及び/又はトレースとコンタクトパッドが採用されてもよい。また、単一のセンサ上に多数の分析物を検出する「開口部」が用意されてもよい。電極の上に開口部を形成した後で、電気化学センサ・コンポーネントは、後述するように分析物感知膜を受け入れるための準備ができるであろう。
【0046】
電極及び誘電体表面の前処理
一態様において、製作プロセスは、その後の分析物感知膜の塗布の前に導電性材料の電気活性表面を処理することを含む。表面処理は、例えば、電気活性表面の少なくとも一部の化学処理、ガスプラズマ処理、又はレーザ処理を含んでもよい。単なる例として、電極は、1つ又は複数の接着増進剤と化学的に又は共有結合的に接触してもよい。接着増進剤は、例えば、アミノアルキルアルコキシルシラン、エポキシアルキルアルコキシルシランなどを含んでもよい。例えば、1つ又は複数の電極は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有する溶液と化学的に又は共有結合的に接触してもよい。代替的に、電極表面は、センサの電気応答を改善するのに十分な時間にわたる、濃度の、及び出力の、ガスプラズマ、例えば酸素プラズマと接触してもよい。空気、窒素、アンモニア、二酸化炭素、水、及びその組合せのような他のプラズマガスが用いられてもよい。
【0047】
別の態様において、製作プロセスは、その後の分析物感知膜の塗布の前に誘電体材料の表面を処理することを含む。表面処理は、例えば、物理的処理、化学処理、又は物理処理及び/又は共有結合/非共有結合処理の組合せ、及び/又はイオン結合処理を含んでもよい。単なる例として、物理的処理は、誘電体表面の少なくとも一部の表面積を増加させるために、研磨、研削、エッチング、又は他の粗面処理方法であってもよい。単なる例として、化学処理は、誘電体表面の少なくとも一部の化学露出、ガスプラズマ露出、又はレーザ露出を含んでもよい。したがって、誘電体材料の表面は、1つ又は複数の接着増進剤と化学的に又は共有結合的に接触してもよい。接着増進剤は、例えば、アミノアルキルアルコキシルシラン、エポキシアルキルアルコキシルシランなどを含んでもよい。例えば、1つ又は複数の電極は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有する溶液と化学的に又は共有結合的に接触してもよい。代替的に、誘電体材料の表面は、分析物感知膜の接着を改善するのに十分な時間にわたる、濃度の、及び出力の、ガスプラズマ、例えば酸素プラズマと接触させられてもよい。空気、窒素、アンモニア、二酸化炭素、水、及びその組合せのような他のプラズマガスが用いられてもよい。誘電体材料のプラズマ処理された表面への分析物感知膜の共有カップリングは、公知のカップリング法、例えば、1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC)、又はN−ヒドロキシスクシンイミド、或いは他の水可溶カルボジイミドを用いて行われてもよく、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)のようなエンハンサーが採用されてもよいが、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)のような他の適切なエンハンサーを代替的に用いることができる。したがって、一態様において、1つの誘電体材料の表面は、センサを製作するのに用いられる別の誘電体材料の表面とは異なっていてもよい。
【0048】
干渉層
一態様において、製作プロセスは、分析物感知膜を通る化学種の移動を防止し又は減少させるために干渉層を堆積することを含む。干渉物質は、偽陽性の分析物信号(例えば、分析物に関するものでない信号)をもたらすために、直接又は電子伝達剤を介してのいずれかで、センサの電気化学的反応表面で還元され又は酸化されてもよい分子又は他の化学種であってもよい。この偽陽性の信号は、一般に、被検者の分析物濃度を真の分析物濃度よりも高く見せかける。例えば、低血糖の状況において、被検者が干渉物質(例えばアセトアミノフェン)を摂取した場合、人為的に高いグルコース信号が、彼らが正常血糖である又は幾つかの場合においては高血糖であると被検者又は医療介護提供者を信じさせる可能性がある。結果として、被検者又は医療介護提供者が不適切な又は不適当な処置決定を下すことがある。
【0049】
一態様において、製作プロセスは、1つ又は複数の干渉種のそれらの通過を実質的に規制する又はなくす干渉層を堆積することを含む。グルコースセンサの干渉種は、例えば、アセトアミノフェン、アスコルビン酸、ビリルビン、コレステロール、クレアチニン、ドーパミン、エフェドリン、イブプロフェン、L−ドーパ、メチルドーパ、サリチル酸塩、テトラサイクリン、トラザミド、トルブタミド、トリグリセリド、尿素、及び尿酸を含む。干渉層は、対象分析物種よりも、1つ又は複数の干渉種の透過性が低くてもよい。
【0050】
一態様において、干渉層は、1つ又は複数のセルロース系誘導体から形成される。一態様において、混合されたエステルセルロース系誘導体、例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートトリメリテート、並びに上記の架橋された変形を含む他のセルロース系又は非セルロース系モノマーとのそれらのコポリマー及びターポリマーが用いられてもよい。干渉材料として又は上記のセルロース系誘導体と組み合わせて、セルロース系誘導体と類似の特性を有する高分子多糖類のような他のポリマーが用いられてもよい。混合されたエステルセルロース系誘導体にセルロースの他のエステルが混合されてもよい。
【0051】
一態様において、干渉層は、セルロースアセテートブチレートから形成される。セルロースアセテートブチレートは、アセチル基及びブチル基の両方とヒドロキシル基とを有するセルロース系ポリマーである。約35%以下のアセチル基と、約10%〜約25%のブチリル基と、残りを構成するヒドロキシル基とを有するセルロースアセテートブチレートが用いられてもよい。約25%から約34%までのアセチル基と約15から約20%までのブチリル基とを有するセルロースアセテートブチレートが用いられてもよいが、しかしながら、他の量のアセチル及びブチリル基が用いられてもよい。好ましいセルロースアセテートブチレートは、約28%から約30%までのアセチル基と約16から約18%までのブチリル基とを含有する。
【0052】
約10,000ダルトン〜約75,000ダルトンの分子量をもつセルロースアセテートブチレートが好ましく、好ましくは約15,000、20,000、又は25,000ダルトンから約50,000、55,000、60,000、65,000、又は70,000ダルトンまで、より好ましくは約65,000ダルトンが採用される。しかしながら、或る実施形態において、より高い又はより低い分子量が用いられてもよく、又は、異なる分子量を有する2つ以上のセルロースアセテートブチレートの混合物が用いられてもよい。
【0053】
セルロースアセテートブチレートの複数の層が組み合わされて干渉層を形成してもよく、幾つかの実施形態において、例えば、2つ以上の層が採用されてもよい。単一の溶液中の異なる分子量をもつセルロースアセテートブチレートの混合物を採用すること、又は異なる分子量、異なる濃度、及び/又は異なる化学(例えば、重量%官能基)のセルロースアセテートブチレートを含む異なる溶液からセルロースアセテートブチレートの多数の層を堆積することが望ましい場合がある。分与溶液又は分散液中の付加的な物質、例えば、分与助剤、消泡剤、表面張力改質剤(surface tension modifier)、官能基化剤(functionalizing agent)、架橋剤、他のポリマー物質、結果として得られる層の親水性/疎水性を改質することができる物質などが用いられてもよい。
【0054】
干渉材料の堆積は、あらゆる公知の薄膜技術を用いて行われてもよい。例えば、干渉材料は、電気活性表面(単数又は複数)に直接マイクロピペット操作すること、スプレーすること、キャストすること、コーティングすること、又は浸漬することによって電気化学センサ・コンポーネントのウェルの中に分与されてもよい。干渉材料の2つ、3つ、またはそれ以上の層は、キャスト溶液の順次の適用と硬化及び/又は乾燥によって形成されてもよい。
【0055】
キャスト溶液中の固体の濃度は、そうでなければセンサによって測定される測定種(例えばH)の電位にオーバーラップする、酸化又は還元電位との干渉物をブロックするのに十分な層を形成するために、電極上に一層の(例えば、1回の浸漬又はスプレーで)十分な量の固体又は膜を堆積するように調整されてもよい。例えば、キャスト溶液の固体の割合は、センサによって測定される干渉物の等価なグルコース信号を実質的に防ぎ又は減少させる機能性干渉層を形成するのに十分な量を堆積するために単一の層のみが要求されるように調整されてもよい。十分な量の干渉材料は、約30、20、又は10mg/dl未満の干渉物の等価なグルコース信号を実質的に防ぎ又は減少させる量となるであろう。単なる例として、干渉層は、好ましくは、そうでなければ干渉層なしのセンサによるアセトアミノフェンによって生じるであろう約30mg/dlの等価なグルコース信号応答を実質的にブロックするように構成される。こうしたアセトアミノフェンによって生じる等価なグルコース信号応答は、アセトアミノフェンの治療用量を含むであろう。あらゆる順番で形成されたあらゆる数のコーティング又は層が、本明細書で開示されたセンサの干渉層を形成するのに適する場合がある。
【0056】
一態様において、製作プロセスは、センサの電気活性表面上に直接、若しくは電極の表面と直接接触する材料又は層、例えば親水性ポリマー層上に、のいずれかで干渉層を堆積することを含む。
【0057】
干渉層は、約0.05ミクロン以下から約20ミクロン以上まで、より好ましくは約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1、1.5、2、2.5、3、又は3.5ミクロンから約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は19.5ミクロンまで、より好ましくはさらに約1、1.5、又は2ミクロンから約2.5又は3ミクロンまでの厚さを提供するように塗布されてもよい。より厚い膜は、或る実施形態において望ましい場合もあるが、より薄い膜は、それらが一般に酵素膜から電極への過酸化水素の拡散速度に対してより低い影響を有するので、一般に好ましい場合がある。
【0058】
酵素層
一態様において、製作プロセスは、酵素層を含む分析物感知膜を堆積することを含む。酵素層は、親水性ポリマーを含んでいてもよい。驚くことに、干渉層の少なくとも一部上に酵素層が直接堆積される構成は、分析物を表す信号を迅速且つ正確に依然として提供しながら、干渉層と酵素層との間の介在する層の必要性を実質的になくす可能性があることが見出されている。一態様において、酵素層は、干渉層の少なくとも一部上に直接堆積された酵素を含む。
【0059】
一態様において、酵素層は、酵素と、ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、イオン化できるペンダント基をもつポリマー(高分子電解質)、及びこれらのコポリマーから選択された親水性ポリマーとを含む。好ましくは、酵素層は、ポリ−N−ビニルピロリドンを含む。最も好ましくは、酵素層は、グルコースオキシダーゼ、ポリ−N−ビニルピロリドン、及び随意的に酵素を固定化するのに十分な量の架橋剤を含む。
【0060】
酵素層の親水性ポリマーの分子量は、一過性の化学種がセンサ環境に残ることを防ぎ又は実質的に抑制するようなものであることが好ましく、より詳細には、一過性の化学種は、センサが最初に留置されるときに酵素の環境に残ることを防がれ又は実質的に抑制される。
【0061】
酵素層の親水性ポリマーは、少なくとも1つのタンパク質及び/又は天然又は合成材料をさらに含んでいてもよい。例えば、酵素層は、例えば、血清アルブミン、ポリアリルアリン、ポリアミンなど、並びにこれらの組合せをさらに含んでもよい。
【0062】
酵素層の酵素は、好ましくはセンサに固定化される。酵素は、親水性ポリマー内に封じ込められてもよく、且つ架橋され又は他の方法でその中に固定化されてもよい。酵素は、随意的に少なくとも1つのタンパク質及び/又は天然材料又は合成材料と一緒に架橋され又は他の方法で固定化されてもよい。一態様において、親水性ポリマー−酵素組成物は、グルコースオキシダーゼ、ウシ血清アルブミン、及びポリ−N−ビニルピロリドンを含む。組成物は、組成物の成分を架橋する又は他の方法で固定化するために、架橋剤、例えば、グルタルアルデヒド(glutaraldehdye)のようなジアルデヒドをさらに含んでもよい。
【0063】
一態様において、他のタンパク質、若しくは、天然材料又は合成材料は、酵素層の親水性ポリマー−酵素組成物から実質的に除外されてもよい。例えば、親水性ポリマー−酵素組成物は、ウシ血清アルブミンを実質的に含まないものであってもよい。ウシのアルブミンを含まない組成物は、種々の政府規制要件を満たすために望ましい場合がある。したがって、一態様において、酵素層は、グルコースオキシダーゼと、酵素と架橋する又は他の方法で酵素を固定化するのに十分な量の架橋剤、例えばグルタルアルデヒドのようなジアルデヒドとを含む。他の態様において、酵素層は、グルコースオキシダーゼ、ポリ−N−ビニルピロリドン、及び酵素と架橋する又は他の方法で酵素を固定化するのに十分な量の架橋剤を含む。
【0064】
酵素層の厚さは、約0.05ミクロン以下から約20ミクロン以上まで、より好ましくは約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1、1.5、2、2.5、3、又は3.5ミクロンから約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は19.5ミクロンまでであってもよい。好ましくは、酵素層は、スプレー又は浸漬コーティングによって堆積されるが、しかしながら、酵素層を形成する他の方法が用いられてもよい。酵素層は、1つ又は複数の層を、所定のコーティング溶液濃度、挿入速度、滞留時間、引き上げ速度、及び/又は所望の厚さで、マイクロピペット操作すること、浸漬コーティングすること、及び/又はスプレーティングすることによって形成されてもよい。
【0065】
フラックス制限層
一態様において、製作プロセスは、前述の後続する層の上にフラックス制限層を配置することを含み、フラックス制限層は、関心ある分析物の1つ又は複数のフラックスの速度を変更し又は変化させる。以下の説明は、電気化学グルコースセンサのためのフラックス制限層に向けられるが、フラックス制限層は、他の分析物及び同時反応物のために同様に改質されてもよい。
【0066】
一態様において、フラックス制限層は、下にある酵素層への酸素及びグルコースのフラックスを制御する、好ましくは過度に律速しない酸素を提供する半透過性材料を含む。結果として、グルコース測定の直線性の上限は、フラックス制限層なしに達成される値よりもかなり高い値まで延長される。一実施形態において、フラックス制限層は、約50:1以下から約400:1以上まで、好ましくは約200:1の酸素対グルコース透過性比を呈する。分析物センサへの分析物及び随意的に共分析物の拡散を制御するために、親水性のポリマー領域と疎水性のポリマー領域との両方を備えた膜のような他のフラックス制限層が用いられ又は組み合わされてもよい。例えば、適切な膜は、ポリウレタン又はポリエーテルウレタンウレアのような疎水性のポリマーマトリクス成分を含んでもよい。一態様において、層の疎水性マトリクスの基礎をなす材料は、センサデバイスの膜として用いるのに適しているものとして、且つ該当する化合物がそれを通過することを可能にする、例えば、活性酵素又は電気化学電極に到達するために試験中のサンプルからの酸素分子が層を通過することを可能にするのに十分なだけの透過性を有するものとして当該技術分野では公知のもののいずれかとすることができる。例えば、ビニルポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン及びポリカルボシロキサンのような無機ポリマー、セルロースベースの材料及びタンパク質ベースの材料のような天然ポリマー、及びこれらの混合物又は組合せのような非ポリウレタン型の層が用いられてもよい。
【0067】
一態様において、フラックス制限層はポリエチレンオキシド成分を含む。例えば、ポリエチレンオキシドを含む疎水性−親水性コポリマーは、約20%の親水性ポリエチレンオキシドを含有するポリウレタンポリマーである。コポリマーのポリエチレンオキシド部分は、コポリマーの疎水性部分(例えばウレタン部分)及び疎水性のポリマー成分から分離するように熱力学的に動かされる。最終的な混合物を形成するのに用いられるコポリマーの20%のポリエチレンオキシドベースの軟質セグメント部分は、その後の膜の吸水とグルコース透過性に影響する。
【0068】
一態様において、フラックス制限層は、シリコン及びウレタンポリマー、及び/又はそのコポリマー又は混合物のような縮合重合体を実質的に除外する。こうした除外された縮合重合体は、典型的に、他の方法では浸出すると有毒な場合があり、及び/又は完全に除去するのが難しく、したがってこうしたセンサにおけるそれらの使用を安全性及び/又はコストのために望ましくないものにする、残留する重金属触媒材料を含有する。
【0069】
別の態様において、フラックス制限層を構成する材料は、該当する化合物が通過することを可能にする、例えば、活性酵素又は電気化学電極に到達するために酸素分子が通過することを可能にするのに十分なだけの透過性を有するセンサデバイスに用いるのに適したビニルポリマーであってもよい。フラックス制限層を作製するのに用いられてもよい材料の例は、ビニルエステルモノマー単位を有するビニルポリマーを含む。好ましい実施形態において、フラックス制限層は、ポリエチレン酢酸ビニル(EVAポリマー)を含む。他の態様において、フラックス制限層は、EVAポリマーと混合されたポリ(メチルメタクリレート−コ−ブチルメタクリレート)を含む。EVAポリマー又はその混合物は、例えばジグリシジルエーテルと架橋されてもよい。EVAの膜は、非常にエラストマー性であり、これは、蛇行路、例えば、静脈の解剖学的構造の中に案内するための弾力性をセンサに提供する可能性がある。
【0070】
EVAポリマーは、約9重量%の酢酸ビニル(EVA−9)から約40重量%の酢酸ビニル(EVA−40)までのいずれかの組成物を有する源(source)から提供されてもよい。EVAポリマーは、センサ又はセンサ組立体に形成されたウェルの中に分与するための溶媒中に溶解することが好ましい。溶媒は、EVAポリマーを溶解する、センサ基板及び酵素電極への接着を促進する、及び効果的に分与される(例えばマイクロピペット操作、スプレー、浸漬コーティング、スピンコーティング)可能性がある溶液を形成するその能力のために選択されるべきである。シクロヘキサノン、パラキシレン、及びテトラヒドロフランのような溶媒が、この目的のために適している可能性がある。溶液は、約0.5重量%〜約6.0重量%のEVAポリマーを含んでいてもよい。加えて、溶媒は、下にある酵素に伴う問題を防ぐために必要以上の撹拌なしに蒸発するのに十分なだけ揮発性であるが、分与プロセスに伴う問題をもたらすほど揮発性ではないべきである。好ましい実施形態において、フラックス制限層の酢酸ビニル成分は、約20%の酢酸ビニルを含む。好ましい実施形態において、フラックス制限層は、酵素層上に、約0.05ミクロン以下から約20ミクロン以上まで、より好ましくは約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1、1.5、2、2.5、3、又は3.5ミクロンから約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は19.5ミクロンまで、より好ましくはさらに約5、5.5、又は6ミクロンから約6.5、7、7.5、又は8ミクロンまでの層の厚さをもたらすように堆積される。フラックス制限層は、例えば、スプレー・コーティング又は浸漬コーティングによって酵素層上に堆積されてもよい。一態様において、フラックス制限層は、酵素層上に約1重量%から約5重量%までのEVAポリマーと約95重量%から約99重量%までの溶媒との溶液をコーティングすることによって堆積される。
【0071】
一態様において、無機基板上に形成された絶縁された電極を備える、前述のように製作された電気化学分析物センサが提供され、電極は、無機基板上に配置された第1及び第2ポリマー層の間で絶縁され、センサは、分析物感知膜層と下にある絶縁された電極とを被覆するフラックス制限層の中に封じ込められる。したがって、EVAポリマーから形成されたフラックス制限層は、電極の上部でフラックス制限部として働いてもよいが、酵素/電極の境界で及び電極/誘電体の境界でシーラント又は封じ込め材としても働く。
【0072】
付加的な層
本明細書に記載の電気化学センサの製作プロセスは、センサの性能を改善するために特定の機能を提供する付加的な層を堆積することをさらに含んでもよい。例えば、付加的な層は、被検者にインビボで用いられるときに種々の生物学的プロセスの操作を提供してもよい。付加的な層は、外部電界又は磁場(EMF又はRF)の遮蔽を提供してもよい。付加的な層は、フラックス制限層に隣接してもよく、又はフラックス制限層の少なくとも一部を被覆してもよい。付加的な層は、親水性ポリマー膜、イオン化できるペンダント基をもつポリマー(高分子電解質)、及びこれらのコポリマーを含んでもよい。
【0073】
一態様において、付加的な層は、本質的に水に不溶の親水性ポリマー膜である。本明細書で用いられる場合の「水に不溶の」という語句は、過剰の水に曝されたときに膨潤し又は他の方法で平衡体積まで水を吸収してもよいが、水性溶液中には溶解しない、親水性ポリマー膜のことを指す。したがって、水に不溶の材料は、一般に、水の吸収中にその元の物理的構造を維持し、したがって、流れとその環境から離れる又はその環境に伴う拡散に抵抗するのに十分な物理的一体性を有していなければならない。本明細書で用いられる場合の材料は、過剰の水中で溶解して溶液を形成すること及び/又はその最初の膜形態を失うことに実質的に抵抗する、且つ水溶液の全体にわたって本質的に分子状に分散することに抵抗するときに、水に不溶であると考えられるであろう。一態様において、親水性ポリマー膜は、フラックス制限層の上に被覆され、且つ使用の間、例えばインビボ使用の間、劣化しない又はフラックス制限層から拡散しないであろう。
【0074】
生物活性薬層及び活性薬
幾つかの代替的な実施形態において、生物活性薬層が用いられてもよい。生物活性薬層は、生物活性薬がセンサに隣接する生物学的環境中に拡散して出て行くように上述の層のいずれかの中に随意的に組み入れられてもよい。加えて又は代替的に、生物活性薬は、出口部位又は植込み部位で局所的に投与されてもよい。適切な生物活性薬は、センサ又はそのコンポーネントのいずれかに対する被検者の組織応答を変更する活性薬を含む。例えば、生物活性薬は、抗炎症薬、抗感染薬、麻酔薬、催炎物質、成長因子、免疫抑制薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗増殖薬、ACE阻害薬、細胞毒薬、抗細胞障壁(anti−barrier cell)化合物、抗血管新生誘導(anti−vascularization−inducing)化合物、アンチセンス分子、又はこれらの混合物から選択されてもよい。センサ内又はセンサ上の(例えば、カテーテル内又はカテーテル上の、若しくはセンサ内又はセンサ上の)凝固を防止するために、分析物センサに生物活性薬層が採用されてもよい。センサの中に又はセンサ上に組み入れられる抗凝固薬として機能する適切な生物活性薬は、ビタミンK拮抗薬(例えば、アセノクマロール(Acenocoumarol)、クロリンジオン(Clorindione)、ジクマロール(Dicoumarol)、ジフェナジオン(Diphenadione)、ビスクマ酢酸エチル、フェンプロクーモン(Phenprocoumon)、フェニンジオン(Phenindione)、チオクロマロール(Tioclomarol)、又はワルファリン(Warfarin)、ヘパリン類抗凝固薬(例えば、血小板凝集阻害薬、アンチトロンビンIII(Antithrombin III)、ベミパリン(Bemiparin)、ダルテパリン(Dalteparin)、ダナパロイド(Danaparoid)、エノキサパリン(Enoxaparin)、ヘパリン(Heparin)、ナドロパリン(Nadroparin)、パルナパリン(Parnaparin)、レビパリン(Reviparin)、スロデキシド(Sulodexide)、チンザパリン(Tinzaparin))、他の血小板凝集阻害薬(例えば、アブシキシマブ(Abciximab)、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アロキシプリン(Aloxiprin)、ベラプロスト(Beraprost)、ジタゾール(Ditazole)、カルバサラートカルシウム(Carbasalate calcium)、クロリクロメン(Cloricromen)、クロピドグレル(Clopidogrel)、ジピリダモール(Dipyridamole)、エポプロステノール(Epoprostenol)、エプチフィバチド(Eptifibatide)、インドブフェン(Indobufen)、イロプロスト(Iloprost)、ピコタミド(Picotamide)、チクロピジン(Ticlopidine)、チロフィバン(Tirofiban)、トレプロスチニル(Treprostinil)、トリフルサール(Triflusal))、酵素(例えば、アルテプラーゼ(Alteplase)、アンクロド(Ancrod)、アニストレプラーゼ(Anistreplase)、ブリナーゼ(Brinase)、ドロトレコギンアルファ(Drotrecogin alfa)、フィブリノリジン(Fibrinolysin)、プロテインC、レテプラーゼ(Reteplase)、サルプラーゼ(Saruplase)、ストレプトキナーゼ(streptokinase)、テネクテプラーゼ(Tenecteplase)、ウロキナーゼ(Urokinase))、直接トロンビン抑制物質(例えば、アルガトロバン(Argatroban)、ビバリルジン(Bivalirudin)、デシルジン(Desirudin)、レピルジン(Lepirudin)、メラガトラン(Melagatran)、キシメラガトラン(Ximelagatran)、他の抗血栓剤(例えば、ダビガトラン(Dabigatran)、デフィブロチド(Defibrotide)、デルマタン硫酸(Dermatan sulfate)、フォンダパリヌクス(Fondaparinux)、リバロキサバン(Rivaroxaban))などを含むがこれらに限定されない。一態様において、生物活性薬層は、ビタミンK拮抗薬、ヘパリン類抗凝固薬、血小板凝集阻害薬、酵素、直接トロンビン抑制物質、ダビガトラン(Dabigatran)、デフィブロチド(Defibrotide)、デルマタン硫酸(Dermatan sulfate)、フォンダパリヌクス(Fondaparinux)、及びリバロキサバン(Rivaroxaban)からなる群から選択された少なくとも1つの活性薬を含む。
【0075】
生物活性薬は、前述の好ましい実施形態の膜の中に組み入れられてもよい。幾つかの実施形態において、生物活性薬は、分析物感知膜の製造時に組み入れられる。例えば、生物活性薬は、例えば、分析物感知膜に生物活性薬をコーティングすること、浸染すること、溶媒キャストすること、又は吸着させることによる分析物感知膜の製造の前に又は製造の後で混合することができる。生物活性薬は、好ましくは分析物感知膜の中に組み入れられるが、幾つかの実施形態において、生物活性薬は、例えば、経口投与によって、又は、センサを備えるデバイスを(例えば脈管内に)挿入するのと同時に、挿入する前に、又は挿入した後で、例えば植込み部位の近くの皮下注入によって局所的に投与することができる。分析物感知膜における生物活性薬と、局所的及び/又は全身的な生物活性薬の投与との組合せが、或る態様において好ましい場合がある。
【0076】
生物活性薬は、デバイスの感知領域に隣接する分析物感知膜の一部の中又は一部の上にのみ、感知領域の上を除くデバイスの表面全体の上、又はこの任意の組合せで組み入れられ又は配置されてもよい。生物活性薬のこうした配置は、血栓形成の異なる機構及び/又は段階を制御する一助となる場合がある。しかしながら、生物活性薬は、生物活性薬が分析物感知膜を通してホスト循環系の中に拡散することができるように、分析物感知膜の中に組み入れられてもよい。生物活性薬は、例えば、コーティングすること、充填すること、又は溶媒キャストすることによって、分析物感知膜の中に又は分析物感知膜上に堆積することができる。生物活性薬は、前述のような技術を用いてポリマーの中に組み入れることができ、ポリマーは、分析物感知膜の層、分析物感知膜上のコーティング、分析物感知膜の一部、及び/又はセンサのあらゆる部分のうちの1つを形成するのに用いることができる。
【0077】
生物活性薬のためのキャリアが用いられてもよい。キャリアは、コラーゲン、粒子マトリクス、吸収性又は非吸収性マトリクス、徐放性マトリクス、及び/又はゲルのうちの1つ又は複数を含んでもよい。キャリアは、生物活性薬を含むマイクロカプセルを封じ込めるリザーバを含んでもよい。生物活性薬は、分析物感知膜と共に架橋されてもよく、或いは、吸着、吸収、又は浸染によって分析物感知膜の中に吸収されてもよい。
【0078】
生物活性薬は、例えばセンサ挿入の短期的な影響(例えば、急性の炎症及び/又は血栓症)に関連する因子を助ける又は克服するべく短期的放出のために選択することができる。生物活性薬は、長期的な影響、例えば、慢性の炎症又は線維性組織及び/又はプラーク物質の集積に関連する因子を助ける又は克服するべく長期的放出のために選択されてもよい。生物活性薬は、両方の恩恵を提供するために短期的放出と長期的放出とを組み合わせてもよい。したがって、生物活性薬は、制御された、持続した、又は徐放性の形態で提供されてもよく、「制御された」、「持続した」、又は「徐放性の」放出は、連続する又は不連続の、直線の又は非直線の放出プロフィールを含む。これは、所望の効果をもたらすために、1つ又は複数のタイプのポリマー組成物、薬剤負荷、賦形剤又は分解エンハンサーの選択、或いは他の修正、単独投与、組合せ投与、又は順次投与を用いて達成することができる。
【0079】
生物活性薬は、ヒドロゲルの中に組み入れて、分析物感知膜の中に又は分析物感知膜上にコーティングするか又は他の方法で堆積することができる。使用に適した幾つかのヒドロゲルは、生物活性薬を透過できる及び/又は外部刺激に基づいて生物活性薬を放出する、架橋された、親水性の、三次元ポリマー網目構造を含む。
【0080】
分析物感知膜への生物活性薬の量は、幾つかの外部変数に基づくことができる。例えば、生物活性薬の用量及び持続は、分析物感知膜の意図された使用、例えば、デバイスの使用の意図された長さ、生物活性薬の位置付け及び投与における患者間の生物活性薬の効果的用量の差異、並びに生物活性薬に関連する放出速度とともに、変化することがある。当業者は、少なくとも前述の理由のための生物活性薬の負荷レベルの変動性を理解するであろう。
【0081】
生物活性薬が、キャリアなしに分析物感知膜の中に組み入れられるとき、分析物感知膜の中への生物活性薬の負荷レベルは、生物活性薬の化学的性質及び/又は物理的性質に応じて変化することがある。生物活性薬の負荷レベルは、生物学的効果(例えば血栓症予防)が得られるように十分に高いことが好ましい。負荷レベル(存在する生物活性薬(単数又は複数)、分析物感知膜、及び他の物質の重量に基づく)は、約1ppm以下から約1000ppm以上まで、好ましくは約2、3、4、又は5ppmから約10、25、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、又は900ppmに至るまでである。特定の実施形態において、負荷レベルは、1重量%以下から約50重量%以上に至るまで、好ましくは約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20重量%から約25、30、35、40、又は45重量%に至るまでとすることができる。
【0082】
生物活性薬が、キャリアと共に分析物感知膜の中に組み入れられるとき、キャリア濃度は、生物活性薬の1つ又は複数のテスト負荷で負荷をかけることによって最適化することができる。キャリアは、約0.1以下から約50重量%以上の生物活性薬(単数又は複数)、好ましくは約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9重量%から約6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、又は45重量%以上までの生物活性薬(単数又は複数)、より好ましくは約1、2、又は3重量%から約4又は5重量%までの生物活性薬(単数又は複数)を含有してもよい。生物活性ではない物質及び/又は生物活性薬と共力的に働く物質を用いることもできる。
【0083】
フレキシブル基板センサ組立体
一態様において、本明細書で開示された方法は、センサ又はセンサ組立体のコンタクトをフレキシブル回路のようなフレキシブル基板に結合するステップを含む。一態様において、対応するコンタクト部分を備えたフレキシブル回路は、センサのコンタクトパッドを介してセンサをコントローラに電気的に結合する。
【0084】
一態様において、電気化学分析物センサ組立体は、被検者の脈管系への静脈内挿入のために構成されてもよい。センサを静脈内挿入に適したデバイスの限られたスペース内に収容するために、センサ組立体はフレキシブル回路上に組み立てられる。
【0085】
前述のようにセンサ組立体に適合可能な医療機器は、中心静脈カテーテル(CVC)、肺動脈カテーテル(PAC)、CVC又はPACを通した若しくは末梢IVカテーテルを通した挿入のためのプローブ、末梢挿入カテーテル(PICC)、スワン−ガンツカテーテル、静動脈血液管理保護(Venous Arterial blood Management Protection)(VAMP)システムへの導入器又は取付具を含むがこれらに限定されない。あらゆるサイズ/タイプの中心静脈カテーテル(CVC)又は静脈内デバイスが用いられてもよく、又はセンサ組立体と共に用いるために適合されてもよい。
【0086】
上記の記載では、センサ又はセンサ組立体の実装は、カテーテル内に位置付けられるものとして開示されるが、しかしながら、前述のように他のデバイスが想起され、且つ本明細書で開示された実施形態の態様に組み入れられる。センサ組立体は、好ましくはカテーテルチューブのODと同じ高さになるようにカテーテルに適用されるであろう。これは、例えば、センサのための凹部を提供するためにチューブのODを熱で変形することによって達成されてもよい。センサ組立体は、定位置に結合され、且つ曲げ/剥脱に抵抗するであろう接着剤(例えば、ウレタン、2液性エポキシ、アクリルなど)で密封され、且つウレタンCVCチューブ並びにセンサの材料に接着されてもよい。はんだ付け、抵抗溶接、又は導電性エポキシによって、小直径の電気ワイヤがセンサ組立体に取り付けられてもよい。これらのワイヤは、センサの近位端から、カテーテル管腔のうちの1つを通って、カテーテルの近位端まで移動してもよい。この時点で、ワイヤは、電気コネクタにはんだ付けされてもよい。
【0087】
本明細書で開示されたようなセンサ組立体は、種々の方法でカテーテルに付加することができる。例えば、カテーテル本体に開口部が提供されてもよく、センサ又はセンサ組立体は、センサが血液と直接接触するように開口部における管腔内部に設置されてもよい。一態様において、センサ又はセンサ組立体は、カテーテルのすべての輸液ポートの近位に位置決めされてもよい。この構成において、センサは、そうでなければ分析物の血中濃度の代わりに検出可能な注入剤濃度を測定することを防止され又は最小にされるであろう。別の態様では、取付け方法は、センサを窪みの内部に固定するために、カテーテル本体の外側上の窪みであってもよい。これは、あらゆる付加的な注入剤の温度の影響からセンサを部分的に絶縁する付加的な利点を有してもよい。凹部の各端部は、1)センサの遠位端を固定するため、及び2)管腔がセンサワイヤをカテーテルの近位端のコネクタに搬送することを可能にするために、スカイビングされた開口部を有してもよい。
【0088】
好ましくは、カテーテルにおけるセンサ組立体の位置は、IV溶液が分析物測定に影響することを防止する又は最小にするためにあらゆる輸液ポートの近位(上流)となるであろう。一態様において、センサ組立体は、カテーテルの輸液ポートのいずれかに対して約2.0mm以上、近位であってもよい。
【0089】
別の態様において、センサ組立体は、その機能を妨害する可能性のあるあらゆる材料がセンサ組立体から取り除かれることを可能にするために、カテーテルのフラッシング(例えば食塩水)が採用されてもよいように構成されてもよい。
【0090】
センサ又はセンサ組立体の滅菌
一般に、センサ又はセンサ組立体、並びに、センサが適合されるデバイスは、使用前に滅菌される。一態様において、製作プロセスは、センサの滅菌を含む。滅菌は、無菌製造、放射線(例えば、電子ビーム又はガンマ放射線)、エチレンオキシド、又はフラッシュ−UV滅菌、或いは当該技術分野では公知の他の手段を用いて達成されてもよい。
【0091】
もしあるとすれば、センサ、センサ組立体、又はセンサを受け入れ且つ収容するように適合されたデバイスの使い捨て部分は、例えば、eビーム、又はガンマ放射線、或いは他の公知の方法を用いて滅菌されることが好ましいであろう。十分に組み立てられたデバイス又は使い捨てコンポーネントのいずれかは、密封されたコンテナ又はパウチ内に包装されてもよい。
【0092】
セントラルラインカテーテルは、当該技術分野では公知であり、典型的には、カテーテルの1つ又は複数の管腔(異なる薬剤に対して異なる管腔)を通して患者に薬剤を送達するために病院の集中治療室(ICU)/緊急処置室で用いられる場合がある。セントラルラインカテーテルは、典型的には、薬剤を送達するために一方の端部が輸液デバイス(例えば、輸液ポンプ、IV点滴、又はシリンジポート)に接続され、他方の端部が患者の心臓の近くの大動脈又は大静脈のうちの1つの中に挿入される。輸液デバイスは、患者に必要とされる場合に、限定されないが生理食塩水、薬物、ビタミン、薬剤、タンパク質、ペプチド、インスリン、神経伝達物質などのような薬剤を送達する。代替的な実施形態において、セントラルラインカテーテルは、腹腔内の領域、リンパ腺、皮下、肺、消化管などのようなあらゆる身体の空間又は容器の中に用いられてもよく、且つ血液以外の体液中の分析物又は療法を判定してもよい。セントラルラインカテーテルは、二管腔カテーテルであってもよい。一態様において、分析物センサは、セントラルラインカテーテルの1つの管腔の中に組み込まれ、ユーザの血液及び/又は体液中の特徴的レベルを判定するのに用いられる。しかしながら、ホルモン、コレステロール、薬剤、濃度、ウィルス負荷(例えばHIV)などのような他の薬、特徴、又は組成物のレベルを判定するために、さらなる実施形態が用いられてもよいことが認識されるであろう。したがって、本明細書で開示された態様は、主として糖尿病/糖尿病の症状の処置に用いられるグルコースセンサとの関連で説明される場合があるが、開示された態様は、脈管系内の血液ガス、pH、温度、及び他の関心ある分析物を含むがこれらに限定されない生理的特徴がICUで監視される、多様な患者の処置プログラムに適用可能であってもよい。
【0093】
別の態様において、被検者における分析物を静脈から測定する方法が提供される。方法は、本明細書に記載されたようなセンサ組立体を備えるカテーテルを提供することと、被検者の脈管系の中にカテーテルを導入することとを含む。方法は、関心ある分析物を測定することをさらに含む。
【0094】
上記の説明は、幾つかの方法及び材料を開示する。これらの説明は、方法及び材料の修正、並びに製作方法及び装置の変形の余地がある。こうした修正は、本開示の考察又は開示の実施から当業者には明らかとなるであろう。したがって、本開示は、本明細書で開示された特定の実施形態に限定されることは意図されないが、請求項の真の範囲及び精神内に入るすべての修正及び変形を包含することを意図される。
【0095】
ここで図面を参照すると、図1は、例示的な電気化学分析物センサ、特に、基本的なアンペロメトリック分析物センサの概略図である。図示された分析物センサは、第1作用電極12と第2作用電極14(第2作用電極は、ブランク電極と呼ばれることもある)との2つの作用電極を備える。幾つかの実施形態において、分析物センサはグルコースセンサであり、その場合、第1作用電極12は、グルコースオキシダーゼ酵素を固定化してもよい。第1作用電極12は、典型的には、酵素膜を含有するか又は固定化するかのいずれかの酵素電極である。第2作用電極14は、典型的には、酵素を含有しないか又は不活化された酵素を含有するかのいずれかであること以外は、すべての点で第1作用電極12と同一である。分析物センサはまた、参照電極16と対電極18とを含む。参照電極16は、固定された電位を確立し、それから作用電極12及び14の電位が確立される。参照電極16が適正に機能するようにするために、電流が参照電極を通して流れてはならない。対電極18は、作用電極によって発生した電流のバランスがとれるように分析物センサの中に又は分析物センサの外に電流を伝導するのに用いられる。対電極18はまた、酸化化学から生じた電子の大部分が血液溶液に戻るように伝導するための作用領域を提供する。そうでなければ、過大な電流が参照電極16を通過し、その耐用年数を減少させる可能性がある。4つの電極は、まとめて、典型的にはセルと呼ばれる。作動中に、血中の関心ある分析物の量を判定するために作用電極からの出力が監視される。ポテンショメトリック分析物センサは、物質中の分析物の量を検出するために同様の様式で作動する。
【0096】
図2は、本発明の態様に従って製作された例示的な電気化学センサ・コンポーネントを例証する。例証されるように、センサ48は、第1作用電極12及び第2作用(ブランク)電極14、参照電極16、並びに対電極18を含む。各電極は、誘電体材料内で絶縁され、且つ絶縁されたコンタクトパッド(単数又は複数)46をもたらす絶縁されたトレース(単数又は複数)に接続される。この例証された実施形態において、対電極18は、第1作用電極及び第2作用電極よりも大きい寸法にされる。対電極の面積は、一般に、対電極上の反応が律速段階とならないように、作用電極の面積よりも大きく作製される。この例証された実施形態において、作用電極は、出力信号を最適化するために対電極と参照電極との間に位置決めされる。センサは、この実施形態においては電極40a及び40bを備えるサーミスタである、絶縁された温度センサ40をさらに備える。サーミスタ電極はまた、トレースを介して対応するコンタクトパッド46に接続される。
【0097】
図3は、本発明の態様に従って製作された例示的な電気化学センサ・コンポーネントの横断面図を例証する。例証されるように、部分的に製作されたセンサは、それぞれ第1誘電体ポリマー層52a及び第2誘電体ポリマー層52b、随意的に接着剤層56a及び56bの間に挟まれた導電性材料で形成された絶縁された電極54の上に位置決めされた開口部60と、コンタクトパッド46の上に位置決めされた開口部62とを含む。剥離層30は、製作後のセンサ・コンポーネントのリフトオフを提供するために、無機基板50と誘電体材料層との間に位置決めされる。
【0098】
図4を参照すると、図5〜図10に対応しているセンサ・コンポーネントの製作の第1の実施形態を図示するブロック図が提供される。したがって、シリコンのような半導体材料の基板50が提供される(ブロック100参照)。基板上に剥離層30が堆積される(ブロック110参照)。剥離層上に第1誘電体ポリマー層52aが堆積される(ブロック120参照、且つ図5に示すように)。第1ポリマー・コーティング上に、例えばスピンコートすることによってフォトレジストのようなマスク層39が堆積される(ブロック130参照、且つ図6Aに示すように)。マスク層は、電極及びコンタクトパッド、並びに電極をコンタクトパッドに接続するトレースを形成する導電性材料の堆積のための周辺部を提供するべくパターン形成され/現像される(ブロック140参照)。したがって、図6Bに示すように、化学線33(例えば、X線、ガンマ線、eビーム、DUV、UV、Iライン、Gラインなど)が、マスク層39を露出するパターン形成されたレチクル32を通過する。この例ではポジ型フォトレジストによる露出された領域の現像が、図6Cに示すように周辺部37を提供する。次いで、電極、トレース、及びコンタクトパッドを画定する周辺部の中に、化学気相成長(CVD)又はめっき(電気めっき又は無電解めっき)などによって導電性材料54a(及び随意的に接着剤層56a)が堆積される(ブロック150参照、且つ図7に示すように)。余分な導電性材料が(例えば、化学研磨、リフトオフ、又はエッチング技術を用いて)、絶縁された機能部(電極54、トレース(図示せず)、及びコンタクトパッド46)を提供するマスク層と共に除去される(ブロック160参照、且つ図8に示すように)。絶縁された導電性機能部の上に且つ第1可撓性誘電体層上に感光性材料(例えば、ポリイミド又はポリエポキシド)の第2誘電体層52bが堆積される(ブロック170参照、且つ図9Aに示すように)。第2可撓性誘電体層は、導電性電極54及びコンタクトパッド46の上の開口部60及び62をそれぞれ提供するためにパターン形成され/現像される(ブロック180参照、且つ図9B及び図9Cに示すように)。基板からの第1ポリマー層の分離を提供する剥離層30を介して、基板からのセンサのリフトオフが達成され、結果として電気化学センサ・コンポーネントがもたらされる(ブロック190参照、且つ図10に示すように)。この時点で又は随意的に基板を剥離する前に、1つ又は複数の作用電極の上の開口部(図示せず)の中にセンシング化学が導入されてもよい。
【0099】
一態様において、図4〜図10を参照しながら説明されたようなプロセスは、剥離層30の使用又は基板50からの第1ポリマー層52aの剥離なしに行われる(図示せず)。この態様において、製作されたセンサは、公知のMEMS/IC製造技術を用いて無機基板から打ち抜かれてもよい。
【0100】
ここで図11を参照すると、図12〜図20に対応しているセンサ製作の第2の実施形態を図示するブロック図が提供される。したがって、シリコンのような半導体材料の基板50が提供される(ブロック200参照)。基板上に剥離層30が堆積される(ブロック210参照)。次いで、剥離層上に、コーティング又は堆積などによって第1ポリマー層52aが塗布される(ブロック220参照)。第1ポリマー層上に導電性材料54a(及び随意的に接着剤層56a)が堆積される(ブロック230参照、且つ図12に示すように)。導電性材料54の上に(随意的な接着剤層56の上に)マスク層39が堆積される(ブロック240参照、且つ図13に示すように)。導電性材料の周辺部39a’がマスク層39’にパターン形成される(ブロック250参照、且つ図14〜図15に示すように)。絶縁された(独立している)導電性電極(46、54)を第1ポリマー層52a上に提供するために、マスク層が余分な導電性材料と共にエッチングされる(ブロック260参照、且つ図16に示すように)。絶縁された導電性材料及び第1ポリマー・コーティング上に、例えばスピンコートすることによって感光性誘電体材料のような第2ポリマー層52bが堆積される(ブロック270参照、且つ図17に示すように)。第2ポリマー層は、電極及びコンタクトパッドの上の開口部を提供するためにパターン形成され/現像されてもよい(ブロック280参照)。したがって、図18に示すように、化学線33(例えば、X線、ガンマ線、eビーム、DUV、UV、Iライン、Gラインなど)が、第2誘電体層52bを露出するパターン形成されたレチクル32を通過する。この例ではポジ型フォトレジストによる露出された領域の現像が、図19に示すように開口部60及び62を提供する。周辺部/開口部は、代替的に、レーザ・アブレーション技術(レチクル有り又は無し)を用いて形成されてもよい。基板からの第1誘電体層の分離を提供する剥離層30を介して、基板からのセンサのリフトオフが達成され、結果として電気化学センサ・コンポーネントがもたらされる(ブロック290参照、且つ図20に示すように)。作用電極の上の開口部の中にセンシング化学が導入されてもよい。
【0101】
一態様において、図11〜図20を参照しながら説明されたようなプロセスは、剥離層30の使用又は基板50からの第1誘電体層52aの剥離なしに行われる。この態様において、製作されたセンサは、公知のMEMS/IC製造技術、例えば打ち抜き又はスタンピングを用いて、無機基板から個々に分離されてもよい。
【0102】
ここで図21を参照すると、図22〜図28に対応しているセンサ製作の第3の実施形態を図示するブロック図が提供される。したがって、シリコンのような半導体材料の基板50が提供される(ブロック300参照)。基板上に剥離層30が堆積される(ブロック310参照)。スピンコートすることなどによって基板50上に第1誘電体層52aが塗布される(ブロック320参照)。次いで、コーティング又は堆積などによって剥離層上に感光性マスク層39’が塗布される(ブロック330参照)。マスク層は、電極、トレース、及びコンタクトパッドのための周辺部を提供するためにパターン形成され且つ現像される(ブロック340参照)。したがって、図22に示すように、化学線33(例えば、X線、ガンマ線、eビーム、DUV、UV、Iライン、Gライン、レーザなど)が、感光性マスク層39’を露出するパターン形成されたレチクル32を通過する。この例においてはネガ型フォトレジストマスク層39’による露出されていない領域の現像が、図23に示すように機能部39a’の間の周辺部37を提供する。随意的に、露出された第1ポリマー層に第1接着剤層56aが塗布されてもよい。マスク層39’の上に且つ第1誘電体層上に形成された周辺部の中に、導電性材料54aが堆積される(ブロック350参照、且つ図24に示すように)。第1ポリマー層52a上に絶縁された(独立している)導電性構造体(46、54)を提供するために、リフトオフ技術を用いてマスク層と余分な導電性材料が除去される(ブロック360参照、且つ図25に示すように)。絶縁された導電性材料及び第1ポリマー層52aの上に、感光性第2誘電体層52b(及び随意的な第2接着剤層56b)が、堆積される(ブロック370参照、且つ図26に示すように)。化学線33への感光性誘電体層52bの露出と現像が、絶縁された導電性材料54の一部を露出する第2誘電体層52b(および随意的な第2接着剤層56b)に形成された開口部60及び62を提供する(ブロック380参照、且つ図27A〜図27Bに示すように)。周辺部/開口部は、代替的に、レーザ・アブレーション技術(レチクル有り又は無し)を用いて形成されてもよい。基板からの第1ポリマー層の分離を提供する剥離層30を介して、基板からのセンサのリフトオフが達成され、結果として電気化学センサ・コンポーネントがもたらされる(ブロック390参照、且つ図28に示すように)。ここで説明されるように1つ又は複数の作用電極の上の開口部の中にセンシング化学が導入されてもよい。
【0103】
図29は、図28の電極(例えば作用電極)の上に位置決めされた例示的なウェルの分解された横断面図である。電極の機能性に応じて、ウェルにおける露出された電極に分析物感知膜が塗布される。例えば、分解図29zに示すように、電極が作用電極である場合、親水性層20、干渉層22、酵素層24、及びフラックス制限層26を備える分析物感知膜が塗布されてもよく、分析物感知膜の層(及び生物活性層のような随意的な付加的な層)の各々は上記で説明されている。分析物感知膜の層を堆積する方法は、例えば、(マイクロ)ピペット操作、キャストすること、浸漬コーティング、(マイクロ)スプレー・コーティング、インクジェットスプレー・コーティング、蒸気コーティングなどを含む。
【0104】
図30〜図32は、図6Aのセンサ・アーキテクチャに類似のサンプルセンサ70のアーキテクチャの詳細な図を例証する。したがって、例示的な製作プロセス・ステップの上部平面図が本明細書に記載されている。図30は、第1作用電極12及び第2作用(ブランク)電極14、参照電極16、対電極18、並びにコンタクトパッド46を備える絶縁された導電性機能部の上部平面図を図示する。同じく提供されるのは、温度センサのための電極40a、40bである。図31は、コンタクトパッドと電極との間のトレースを介する電気接続を例証する。図32は、電極、コンタクトパッド46、及びサーミスタ40a、40bの上に位置決めされた絶縁された開口部の上部平面図を図示する。図33は、図32に図示されたセンサの開口部の横断面図である。コンタクトパッド46もまた例証される。図30〜図32は、センサの電極、トレース、及びコンタクトパッドのみを例証することが注目される。種々の電極の上の膜層は例証されない。
【0105】
ここで図34〜図36を参照すると、例証されるのは、センサ構造体の異なる構造的/幾何学的実施形態である。他の設計及びレイアウトが用いられてもよい。したがって、図2に図示されたようなより大きい単一の対電極とは対照的に、対電極と作用電極との間のより大きい表面積比を維持しながら、より小さい2つの対電極18が、センサ64、66、及び68に図示される。これらのセンサ構造体は、前述の技術を用いて製作されてもよい。図37は、膜の個々の層が開口部の上を覆う、分析物感知膜の態様を表す。一態様において、(図示されない)層のうちの幾つか又は1つ(例えば、フラックス制限層)は、開口部と下にある層の上を覆ってもよく、及び/又は分析物感知膜で誘電体層を封じ込めてもよい。
【0106】
温度電極が採用されなかったこと以外は図35に図示されたものに類似のアーキテクチャを有するシリコンウェハ基板上に、微細加工/IC処理によって薄膜センサ・コンポーネントを製作した。したがって、シリコンウェハ上に剥離層としてシリコンオキサイド(500nmの厚さ)をスパッタリングした。シリコンオキサイドの上部上に10μmの第1誘電体材料(ポリイミド前駆体PI−2611、HD Microsystems)の層をスピンコートすることによって塗布し、300℃で40分間、窒素雰囲気で硬化させた。チタン(〜500Å)−白金(〜500nm)−チタン(〜500Å)の層を順次スパッタリングし、金属電極、パッド、及び導電性トレースのためにパターン形成した。チタン層は、ポリイミド層と白金層との間の接着を強化した。パターン形成された金属層上にポリイミドの第2誘電体層(5μmの厚さ)をスピンコートし、硬化させた。ポリイミド上にシリコンオキサイド(〜500nmの厚さ)エッチング止め部をスパッタリングし、フォトレジスト層を用いて、電極、コンタクトパッド、及びセンサ外形のための開口部を画定するためにパターン形成した。酸素プラズマRIEでパターン形成されたSiOエッチング止め部を備えた第2誘電体層のエッチングが、電極及びコンタクトパッドを露出する開口部を提供した。最後に、HF溶液(80%DI水中20%HF)でのウェットエッチングによってシリコンウェハからセンサ構造体を剥離した。参照電極16上に銀(Ag)の薄層を電気めっきした。次いで、銀を銀/塩化銀(Ag/AgCl)に電気化学的に転換した。参照電極に塗布される塩化鉄又は硝酸銀は存在しなかった。最初のステップとして、分析物感知膜の塗布の前に電極上の過酸化水素挙動を評価した。CAB/GOx−PVP層を備える分析物感知膜を作用電極に堆積した。分析物感知膜を誘電体層に封じ込めるために、キシレン中2重量%EVAの溶液の4つのパス(passes)を用いてEVA層をスプレー塗布した。
【0107】
図38に例証されるように、センサは、溶液のグルコース濃度レベルを判定するために良好に応答した。図38は、650mVの作用電位を用いる異なるグルコース濃度レベルでのセンサからの電流出力を例証する。各ステップ応答は、PBS中50mg/dLグルコースの増分投与の結果である。センサは、グルコース濃度の変化への良好な応答を示した。出力ドリフトが認められたが、こうしたドリフトは、おそらくグルコースに伴う酵素層の過飽和及び/又は参照電極におけるドリフトによるものである。
【0108】
公開された及び公開されていない出願、特許、及び参考文献を含むがこれらに限定されない、本明細書で挙げられたすべての引用は、それらの全体が引用により本明細書に組み入れられ、この明細書の一部をなす。引用により組み入れられる公開及び特許又は特許出願が、明細書に含まれた開示に矛盾する程度まで、明細書は、あらゆるこうした矛盾した題材に取って代わる及び/又は優先することを意図される。
【0109】
明細書で用いられる成分、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての場合に「約」という用語によって修正されるものと理解されてもよい。したがって、これに反する記載がない限り、本明細書に記載された数値パラメータは、得られるように努めた所望の特性に応じて変化する可能性がある概算であってもよい。最低限でも、各数値パラメータは、有効数字の数及び通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0110】
或る例示的な実施形態が説明され付属の図面に示されているが、こうした実施形態は、広い発明の単なる例証であって限定するものではなく、且つ、上記のパラグラフに記載されたものに加えて、種々の他の変化、組合せ、省略、修正、及び置換が可能であるので、この発明は、図示され及び説明された特定の構成及び配置に限定されないことが理解される。したがって、付属の請求項の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されたもの以外で実施されてもよいことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性電気化学センサ・コンポーネントを製作するための方法であって、
基板を提供すること、
前記基板の実質的に全体の上に剥離層を堆積すること、
前記剥離層の実質的に全体の上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、
前記第1可撓性誘電体層と第2可撓性誘電体層との間で、導電性材料からなる複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを絶縁すること、
前記第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された前記電極及び前記コンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を露出する開口部を形成すること、及び、
前記第1可撓性誘電体材料と前記基板との間の前記剥離層を除去し、これにより可撓性電気化学センサ・コンポーネントが基板から剥離されること、
を含む方法。
【請求項2】
前記剥離層が、(i)前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、(ii)前記第1可撓性誘電体層よりも速いエッチング速度(ウェット又はドライ)、又は(iii)前記第1誘電体材料と前記無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記剥離層が、二酸化ケイ素、石英ガラス、又はアルミニウムである、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記剥離層が化学的に除去される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記剥離層を化学的に除去することが、ウェットエッチング又はドライエッチングを含む、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1可撓性誘電体材料の少なくとも一部と前記導電性材料との間に第1接着剤層を堆積することをさらに含み、随意的に、前記導電性材料と前記第2可撓性誘電体材料の少なくとも一部との間に第2接着剤層を堆積することをさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド、パリレン、ポリエポキシド、及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド又はこれらの誘導体である、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層がフォトレジストである、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記開口部が、フォトリソグラフィ、プラズマエッチング、又はレーザ・アブレーションによって形成される、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性材料の堆積が、スパッタリング、蒸着、化学気相成長、電気めっき、又は無電解めっきを含む、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2可撓性誘電体層の表面を改質することをさらに含む、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2可撓性誘電体層の表面を改質することが、物理的又は化学的手段によるものである、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電極の上に位置決めされた前記開口部に分析物感知膜を堆積することをさらに含む、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記分析物感知膜が、前記第2可撓性誘電体層の前記改質された表面の少なくとも一部上に堆積される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電極の上の前記開口部を前記分析物感知膜で封じ込める、請求項14又は請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
電気化学センサ・コンポーネントを製作するための方法であって、
無機基板を提供すること、
前記無機基板及び第1可撓性誘電体材料上に剥離層を堆積すること、
前記剥離層上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、
前記第1可撓性誘電体層に、複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドの周辺部を画定すること、
前記第1可撓性誘電体層に形成された前記周辺部の少なくとも一部に導電性材料を堆積すること、
複数の個々の途切れなく接続された前記電極、前記トレース、及び前記コンタクトパッドと前記第1可撓性誘電体層との上に第2可撓性誘電体層を堆積すること、
前記第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された前記電極及び前記コンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を露出する開口部を形成すること、及び、
前記第1可撓性誘電体材料と前記基板との間の前記剥離層を化学的に除去し、これにより可撓性電気化学センサ・コンポーネントが基板から剥離されること、
を含む方法。
【請求項18】
前記剥離層が、(i)前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、(ii)前記第1可撓性誘電体層よりも速いエッチング速度(ウェット又はドライ)、又は(iii)実質的にすべての前記第1誘電体材料と前記無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記剥離層が、二酸化ケイ素、石英ガラス、又はアルミニウムである、請求項17又は請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記剥離層を化学的に除去することが、ウェットエッチング又はドライエッチングを含む、請求項17から請求項19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1可撓性誘電体材料の少なくとも一部と前記導電性材料との間に第1接着剤層を堆積することをさらに含み、随意的に、前記導電性材料と前記第2可撓性誘電体材料の少なくとも一部との間に第2接着剤層を堆積することをさらに含む、請求項17から請求項20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド、パリレン、ポリエポキシド、及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項17から請求項21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド又はこれらの誘導体である、請求項17から請求項22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層がフォトレジストである、請求項17から請求項23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記開口部が、フォトリソグラフィ、プラズマエッチング、又はレーザ・アブレーションによって形成される、請求項17から請求項24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記導電性材料の堆積が、スパッタリング、蒸着、化学気相成長、電気めっき、又は無電解めっきを含む、請求項17から請求項25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2可撓性誘電体層の表面を改質することをさらに含む、請求項17から請求項26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2可撓性誘電体層の表面を改質することが、物理的又は化学的手段によるものである、請求項17から請求項27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記電極の上に位置決めされた前記開口部に分析物感知膜を堆積することをさらに含む、請求項14から請求項28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記分析物感知膜が、前記第2可撓性誘電体層の前記改質された表面の少なくとも一部上に堆積される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電極の上の前記開口部を前記分析物感知膜で封じ込める、請求項29又は請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
電気化学センサ・コンポーネントを製作するための方法であって、
無機基板を提供すること、
前記無機基板上に剥離層を堆積すること、
前記剥離層上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、
前記第1可撓性誘電体材料上に導電性材料を堆積すること、
前記導電性材料上にマスク層を堆積すること、
前記マスク層に、途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つのための周辺部を画定すること、
前記マスク層の周辺部によって画定されたように導電性材料の複数の個々の途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドを形成すること、
複数の個々の途切れなく接続された前記電極、前記トレース、及び前記コンタクトパッド、並びに前記第1可撓性誘電体層の上に第2可撓性誘電体層を堆積すること、
前記第2可撓性誘電体層に、個々の途切れなく接続された前記電極及び前記コンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を露出する少なくとも1つの開口部を形成すること、
前記第1可撓性誘電体材料と前記基板との間の前記剥離層を化学的に除去し、これにより可撓性電気化学センサ・コンポーネントが基板から剥離されること、
を含む方法。
【請求項33】
前記剥離層が、(i)前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層を溶解しない溶媒への溶解性、(ii)前記第1可撓性誘電体層よりも速いエッチング速度(ウェット又はドライ)、又は(iii)実質的にすべての前記第1誘電体材料と前記無機基板との間に置かれた感圧接着剤材料を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記剥離層が、二酸化ケイ素、石英ガラス、又はアルミニウムである、請求項32又は請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記剥離層を化学的に除去することが、ウェットエッチング又はドライエッチングを含む、請求項32から請求項34までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1可撓性誘電体材料の少なくとも一部と前記導電性材料との間に第1接着剤層を堆積することをさらに含み、随意的に、前記導電性材料と前記第2可撓性誘電体材料の少なくとも一部との間に第2接着剤層を堆積することをさらに含む、請求項32から請求項35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド、パリレン、ポリエポキシド、及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項32から請求項36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド又はこれらの誘導体である、請求項32から請求項37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層がフォトレジストである、請求項32から請求項38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記開口部が、フォトリソグラフィ、プラズマエッチング、又はレーザ・アブレーションによって形成される、請求項32から請求項39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記導電性材料の堆積が、スパッタリング、蒸着、化学気相成長、電気めっき、又は無電解めっきを含む、請求項32から請求項40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2可撓性誘電体層の表面を改質することをさらに含む、請求項32から請求項41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第2可撓性誘電体層の表面を改質することが、物理的又は化学的手段によるものである、請求項32から請求項42までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
電極の上に位置決めされた開口部に分析物感知膜を堆積することをさらに含む、請求項32から請求項43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記分析物感知膜が、前記第2可撓性誘電体層の前記改質された表面の少なくとも一部上に堆積される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記電極の上の前記開口部を前記分析物感知膜で封じ込める、請求項44又は請求項45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
電気化学センサであって、
第1可撓性誘電体層と、途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドの少なくとも一部を露出する開口部を備えた第2可撓性誘電体層との間で絶縁された、少なくとも1つの途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドと、
少なくとも1つの作用電極の上の開口部に位置決めされた分析物感知膜と、
を備え、前記分析物感知膜が、
前記作用電極の少なくとも一部上に堆積された親水性ポリマー層と、
前記親水性ポリマー層の少なくとも一部上に堆積された干渉層と、
前記干渉層の少なくとも一部上に堆積された酵素層と、
フラックス制限層と、
を備える、電気化学センサ。
【請求項48】
前記第1可撓性誘電体材料の少なくとも一部と途切れなく接続された前記電極、前記トレース、及び前記コンタクトパッドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部との間の第1接着剤層をさらに含み、随意的に、途切れなく接続された前記電極、前記トレース、及び前記コンタクトパッドのうちの少なくとも1つと前記第2可撓性誘電体材料の少なくとも一部との間の第2接着剤層とをさらに含む、請求項47に記載の電気化学センサ。
【請求項49】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド、パリレン、ポリエポキシド、及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項47又は請求項48のいずれかに記載の電気化学センサ。
【請求項50】
前記第1可撓性誘電体層又は前記第2可撓性誘電体層が、ポリイミド又はこれらの誘導体である、請求項47から請求項49までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項51】
前記第2可撓性誘電体層の表面が物理的に又は化学的に改質される、請求項47から請求項50までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項52】
前記電極の上の前記開口部を前記分析物感知膜で封じ込める、請求項47又は請求項51のいずれかに記載の電気化学センサ。
【請求項53】
生物活性層をさらに備える、請求項47から請求項52までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項54】
前記親水性ポリマー層が、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、高分子電解質、及びこれらのコポリマーからなる群から選択された材料を含む、請求項47から請求項53までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項55】
前記干渉層がセルロース系の誘導体を含む、請求項47から請求項54までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項56】
前記セルロース系の誘導体がセルロースアセテートブチレートである、請求項47から請求項55までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項57】
前記フラックス制限層が、前記第2誘電体層への前記分析物感知膜のシーラント又は封じ込め材である、請求項47から請求項56までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項58】
前記フラックスを制限する膜が、ビニルポリマー、ポリシリコン、ポリウレタン、及びこれらのコポリマー又は混合物からなる群から選択される、請求項47から請求項57までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項59】
前記フラックスを制限する膜がポリ(エチレン−酢酸ビニル)である、請求項47から請求項58までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項60】
前記生物活性薬層が、ビタミンK拮抗薬、ヘパリン類抗凝固薬、血小板凝集阻害薬、酵素、直接トロンビン抑制物質、ダビガトラン(Dabigatran)、デフィブロチド(Defibrotide)、デルマタン硫酸(Dermatan sulfate)、フォンダパリヌクス(Fondaparinux)、及びリバロキサバン(Rivaroxaban)からなる群から選択された少なくとも1つの活性薬を含む、請求項47から請求項59までのいずれか一項に記載の電気化学センサ。
【請求項61】
(i)基板を提供すること、
(ii)前記基板上に剥離層を堆積すること、
(iii)前記剥離層の実質的に全体の上に第1可撓性誘電体層を堆積すること、
(iv)前記第1可撓性誘電体層と第2可撓性誘電体層との間で、導電性材料からなる途切れなく接続された電極、トレース、及びコンタクトパッドのうちの少なくとも1つを絶縁すること、
(v)前記第2可撓性誘電体層に、途切れなく接続された電極及びコンタクトパッドの少なくとも一部を露出する開口部を形成すること、
(vi)前記第1可撓性誘電体材料と前記基板との間の前記剥離層を除去し、これにより可撓性電気化学センサ・コンポーネントが基板から剥離されること、及び、
(vii)前記作用電極の上に位置決めされた前記開口部に分析物感知膜を堆積すること、
を含む方法によって製作された電気化学センサであって、前記分析物感知膜が、
前記作用電極の少なくとも一部上に堆積された親水性ポリマー層と、
前記親水性ポリマー層の少なくとも一部上に堆積された干渉層と、
前記干渉層の少なくとも一部上に堆積された酵素層と、
前記分析物感知膜を第2の誘電体材料に封じ込める及び/又は密封するフラックス制限層と、
を備える、電気化学センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B−6C.7】
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【図8.9A−9C.10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−16】
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【図17】
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【図18−20】
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【図21】
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【図22−26】
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【図27A−27B.28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2012−517597(P2012−517597A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549305(P2011−549305)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/023446
【国際公開番号】WO2010/091334
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】