説明

分析素子チップ、及びこれを用いた分析装置

【課題】流路が設けられる部位の面積が異なる分析素子チップであっても当該分析素子チップを用いて分析を行う分析装置の大型化を抑制できる分析素子チップ、及びこれを用いた分析装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、分析素子チップ10が板状に形成され、光導波路部12aと流路32と金属薄膜14とを備え、光導波路部12aは、照射された光が内部に入射する入射面16aと入射した光を金属薄膜14に案内する光導波路本体部と金属薄膜14で全反射された後の光を外部に射出する射出部18とを有し、射出部18は、入射面16aに対して金属薄膜14が露出した流路34を挟んで対向する位置に設けられた貫通部又は凹部で構成され、この貫通部又は凹部における前記流路34側の周側面20には、金属薄膜14での全反射後の光を外部に射出する射出面20aが設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する表面プラズモン共鳴分析装置、及び表面プラズモン共鳴によって生じたエバネッセント波を用い、検体に含まれる蛍光物質を発光させ、この蛍光を測定して検体に含まれる特定物質を分析する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SPRを利用して試料の屈折率や屈折率変化を検出し、検体の性状を分析するSPR分析装置として特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この分析装置は、金属薄膜が形成された分析素子ブロックと、この分析素子ブロックに光を照射するための光源と、前記金属薄膜で全反射した後、前記分析素子ブロックから射出される射出光を検出するための射出光検出手段と、を備える。
【0004】
前記分析素子ブロックは三角プリズムで構成されており、頂角に対向する面上に前記金属薄膜が形成されている。この金属薄膜の表面(前記プリズムと接している面と反対側の面)上には検体(試料溶液)が当該金属薄膜の表面と接しつつ流れる流路が設けられている。前記光源は、前記プリズムの一方の斜面(入射面)に向かって光を照射できるように当該入射面に対向する位置に配置され、前記射出光検出手段は、前記プリズムの他方の斜面(射出面)から射出される射出光を受光できるように当該射出面に対向する位置に配置されている。
【0005】
このような装置では、光源から照射した光を入射面からプリズム内部に入射させて金属薄膜の裏面(反射面)で全反射させ、その後、射出面から射出された射出光を射出光検出手段で検出する。その際、前記金属薄膜に対する前記光源からの光の入射角を変化させることで、前記射出光検出手段で検出される光の強度変化が生じ、この変化に基づいて表面プラズモン共鳴角を求めることができる。そして、流路に検体を流す前後における前記表面プラズモン共鳴角の変化を求め、この変化に基づいて検体の性状等の分析が行われる。
【0006】
一方、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置としては、特許文献2に記載されたものが知られている。
【0007】
この分析装置は、金属薄膜が形成された分析素子ブロックと、この分析素子ブロックに光を照射するための光源と、前記金属薄膜での光の全反射により生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段と、前記金属薄膜で全反射した後、前記分析素子ブロックから射出される射出光を検出するための射出光検出手段と、を備える。
【0008】
前記分析素子ブロックは、表面プラズモン共鳴分析装置同様、三角プリズムで構成されており、頂角に対向する面上に前記金属薄膜が形成され、この金属薄膜の表面上には検体が当該金属薄膜の表面と接しつつ流れる流路が設けられている。前記光源は、照射した光が前記プリズムの入射面から前記プリズム内に入射し、この入射した光が前記金属薄膜の反射面に表面プラズモン共鳴角で入射するように配置されている。また、前記蛍光検出手段は、前記金属薄膜に対して前記流路を挟んで対向する位置に配置され、前記射出光検出手段は、前記プリズムの他方の斜面(射出面)から射出される射出光を受光できるように当該射出面に対向する位置に配置されている。
【0009】
このような装置では、前記流路に蛍光物質を含む検体が流され、前記光源から前記金属薄膜の反射面に光が照射されることで前記金属薄膜に表面プラズモン共鳴が生じ、前記金属薄膜の表面側、即ち、流路側の面にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波によって前記金属薄膜表面近傍にある前記検体中の蛍光物質が励起されて蛍光を発し、この蛍光を前記蛍光検出手段によって検出することにより前記検体の定量分析等が行われる。その際、前記射出光検出手段によって、前記金属薄膜で全反射した後、射出面から射出される射出光を検出することで、前記金属薄膜に対して光源からの光が表面プラズモン共鳴角で入射しているか否かを容易に判断できる。この判断に基づき、光源の照射角の修正又はデータ上での補正を行うことで、より前記検体の定量分析等の精度が向上する。
【特許文献1】特開2007−263901号公報
【特許文献2】特開2006−208069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の表面プラズモン共鳴分析装置及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(以下、単に「両装置」とも称する。)においては、短い1本の流路が形成できればよいことから分析素子ブロックは非常に小さく、持ち運びや両装置における交換作業等において取り扱いが困難であった。
【0011】
また、近年、複数種の検体の混合等を行いながら分析を行うため、複数本の流路や枝分かれしている分岐流路等、種々の長さや形状の流路を有する分析素子ブロックに対する要請がある。
【0012】
そこで、上記問題点及び要請に鑑み、分析素子ブロックとして板状の分析素子ブロック(分析素子板)が考えられた。この分析素子板においては当該分析素子板を構成する平行な一対の面の面積を確保することで、金属薄膜が形成された一方の面に沿って複数の流路若しくは分岐流路を形成することができる。また、前記一対の面の面積を確保することで当該分析素子板が把持し易くなるため取り扱いも容易となる。また、分析素子ブロックとして大きな三角プリズムを用いるよりコンパクトで取り扱いも容易になる。
【0013】
しかし、このような分析素子板においては、前記一方の面に形成された金属薄膜の反射面に対して光を全反射条件且つ表面プラズモン共鳴角で入射させるためには、前記分析素子板の一方の側部端面から前記一方又は他方の面で全反射するように光を内部に入射させ、この光を前記一方の面と他方の面との間で繰り返し全反射させながら前記金属薄膜の形成された部位まで案内しなければならない。また、前記金属薄膜の反射面で全反射した後の光も前記一方の面と他方の面との間で繰り返し全反射させながら他方の側部端面まで案内し、この端面から外部に射出させなければならない。
【0014】
そのため、このような分析素子板を用いて分析を行う場合には、両装置における前記光源と射出光検出手段との位置が前記分析素子板の一方の側部端面と他方の側部端面との間隔によって規定される。即ち、前記一対の面の面積が異なる分析素子板を用いて分析を行うには、両装置において前記光源と射出光検出手段との間隔(相対位置)を変更しなければならない。
【0015】
このように前記間隔を変更するためには、前記光源と射出光検出手段との少なくとも一方にこれら光源と射出光検出手段との相対位置を変更するための駆動機構を設けなければならず装置が大型化するといった問題が生じる。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題点を解消すべく、検体が流れる流路が設けられる部位の面積が異なる分析素子チップであっても当該分析素子チップを用いて分析を行う表面プラズモン共鳴分析装置及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置の大型化を抑制できる分析素子チップ、並びにこの分析素子チップを用いた表面プラズモン共鳴分析装置及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る分析素子チップは、金属薄膜での表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を測定する表面プラズモン共鳴分析装置、又は検体に含まれる蛍光物質が金属薄膜で生じたエバネッセント波で励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップであって、この分析素子チップは表面と裏面とを有する板状に形成され、内部に入射した光を前記金属薄膜に案内する光導波路部と、前記検体が流れる流路と、一方の面が前記光導波路部に面し且つ他方の面が前記流路内に露出するように設けられた前記金属薄膜と、を備え、前記光導波路部は、当該分析素子チップの一つの端面に設けられ、外部且つ当該分析素子チップの表面に対して裏面側から照射された光が内部に入射する入射面と、内部に入射した光を前記金属薄膜の一方の面に案内する光導波路本体部と、前記金属薄膜の一方の面で全反射された後の光を外部に射出する射出部と、を有し、前記射出部は、当該分析素子チップにおける前記入射面に対して前記金属薄膜が露出した流路を挟んで対向する位置に設けられた貫通部又は前記裏面に凹設された凹部で構成され、前記貫通部又は凹部における前記金属薄膜が露出した流路側の周側面には、前記金属薄膜での全反射後の光を外部且つ前記表面に対して裏面側に射出する射出面が設けられることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、当該分析素子チップにおいて前記貫通部又は凹部及び前記金属薄膜が露出した流路が配置された部位以外の部位では、前記分析素子チップの表面(又は裏面)に沿って複数の流路や枝分かれした分岐流路等の種々の長さや形状の流路を形成することができる。しかも、これら種々の流路が形成されていても、前記入射面に対して光が照射されることで、内部に入射した光は、前記射出部を構成する貫通部又は凹部に設けられた射出面から外部に射出される。即ち、当該分析素子チップにおいて、前記種々の長さや形状の流路が形成される部位の面積に関わらず、入射した光は、前記入射面に対して前記金属薄膜が露出した流路を挟んで対向する位置に設けられた射出面(射出部)から外部に射出される。
【0019】
そのため、前記流路が設けられる部位の面積に関わらず、前記入射面と流路内に裏面を露出した金属薄膜と射出面(射出部)との相対位置が固定される。従って、当該分析素子チップを用いることで、前記表面プラズモン共鳴分析装置又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、光源や射出光を検出するための射出光検出手段といった光学系の相対位置を変更するための複雑な機構を備える必要がなく、即ち、前記光学系の相対位置の変更ができなくても、種々の大きさの分析素子チップを用いて検体の分析を行うことが可能となる。
【0020】
尚、本発明において、表面及び裏面は、分析素子チップにおける表面又は裏面を基準とする。また、表面及び裏面は、説明のために便宜的に用いる名称であって、本発明の分析素子チップが表面プラズモン共鳴分析装置又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に配置される際、表面が上方又は下方を向くように配置されてもよく、他の方向に向くように配置されてもよい。
【0021】
本発明に係る分析素子チップにおいては、前記光導波路本体部は、前記流路に対して前記分析素子チップの裏面側に配置され、前記入射面は、前記分析素子チップの裏面とのなす角を前記入射した光が前記金属薄膜に対して前記分析素子チップの裏面側から全反射条件で到達するような角度に形成され、前記射出面は、前記分析素子チップの裏面とのなす角を前記金属薄膜で全反射された後、当該射出面に到達した前記光が内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるような角度に形成されてもよい。この場合、前記入射面は、内部に入射した光が直接金属薄膜に到達し、前記射出面は、前記金属薄膜での全反射後の光が直接到達する位置に配置される構成が好ましい。
【0022】
かかる構成とすることで、入射した光は、前記光導波路本体部内では前記金属薄膜での全反射以外は反射することなく外部に射出される。そのため、前記種々の長さや形状の流路が設けられる部位の面積が大きな分析素子チップであっても、前記光導波路本体部内に前記入射した光に基づく乱反射が生じることがなく分析精度を維持することができる。
【0023】
また、前記構成によれば、前記同様、前記光学系の相対位置の変更ができなくても、種々の大きさの分析素子チップを用いて検体の分析を行うことも可能である。
【0024】
また、前記光導波路本体部は、前記流路に対して前記分析素子チップの表面側に板状に配置され、前記入射面は、前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角を、前記入射した光が前記分析素子チップの表面で全反射した後、前記金属薄膜に対して前記分析素子チップの表面側から全反射条件で到達するような角度に形成され、前記射出面は、前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角を、前記金属薄膜で全反射された光が前記分析素子チップの表面で全反射された後、当該射出面に到達して内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるような角度に形成されてもよい。
【0025】
かかる構成によれば、入射面から入射した光が前記分析素子チップの表面で全反射をした後、直接前記金属薄膜に、又は前記板状の光導波路本体部の流路側の面と分析素子チップの表側の面との間で全反射を繰り返しつつ前記金属薄膜に対して表面側から全反射条件且つ表面プラズモン共鳴角で入射するように案内される。
【0026】
このように前記光導波路本体部に入射した光が案内されることで、前記流路内部に露出した金属薄膜の裏面で表面プラズモン共鳴が生じ、当該金属薄膜の裏面近傍にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波により前記金属薄膜の裏面近傍の検体に含まれる蛍光物質が励起されて蛍光を発する。この蛍光は、前記金属薄膜に対して流路側、即ち、分析素子チップの裏面側から検出可能である。
【0027】
また、前記金属薄膜で全反射された光は、前記分析素子チップの表面で全反射された後、直接前記射出面に、又は前記板状の光導波路本体部の流路側の面と分析素子チップの表面との間で全反射を繰り返しつつ前記射出面に案内され、内部側に再度全反射されることなく外部に射出される。この射出光は、前記分析素子チップの表面に対して裏面側に射出されるため、分析素子チップの表面に対して裏面側から検出可能である。
【0028】
従って、前記構成の分析素子チップを用いることで、表面プラズモン共鳴分析装置又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、設置された当該分析素子チップの表面に対して裏面側に前記入射面に光を照射する光源やエバネッセント波により励起された蛍光を検出する蛍光検出手段、射出光を検出する射出光検出手段といった光学系を全て配置することが可能となる。
【0029】
その結果、前記構成の分析素子チップを用いることで、分析素子チップを挟んで両側に光学系を配置する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置よりも装置の小型化を図ることが可能となる。
【0030】
また、前記構成によれば、前記同様、前記光学系の相対位置の変更ができなくても、種々の大きさの分析素子チップを用いて検体の分析を行うことも可能である。
【0031】
また、前記光導波路部において、前記光導波路本体部が前記流路に対して前記分析素子チップの裏面側に配置される場合には、前記入射面と分析素子チップの裏面とのなす角及び前記射出面と分析素子チップの裏面とのなす角は、前記入射面に対して法線方向から光が入射した場合に、前記射出面に対して法線方向に前記光が射出されるような角度であることが好ましく、また、前記光導波路本体部が前記流路に対して前記分析素子チップの表面側に板状に配置される場合には、前記入射面と前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角及び前記射出面と前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角は、前記入射面に対して法線方向から光が入射した場合に、前記射出面に対して法線方向に前記光が射出されるような角度であることが好ましい。
【0032】
かかる構成によれば、光が前記光導波路部に入射する又は前記光導波路部から射出される際に、前記光の強度低下が抑制される。そのため、当該分析素子チップを用いることで、表面プラズモン共鳴分析装置又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置で検体を分析する際に、前記射出光検出手段又は蛍光を検出するための蛍光検出手段において十分な検出光強度が得やすくなる。尚、前記入射面と分析素子チップの裏面(又は前記板状の光導波路本体部における流路側の面)とのなす角及び前記射出面と分析素子チップの裏面(又は前記板状の導波路本体部における流路側の面)とのなす角がそれぞれ直角であってもよい。
【0033】
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る表面プラズモン共鳴分析装置及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、前記のいずれかの構成の分析素子チップを備えたことを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、前記種々の長さや形状の流路が設けられる部位の面積が大きな分析素子チップを用いて前記検体の分析を行っても、前記同様、前記光源と射出光検出手段との相対位置の変更をすることなく、種々の大きさの分析素子チップを用いて検体の分析を行うことができる。即ち、種々の大きさの分析素子チップを用いて検体の分析を行うことができる装置であっても、前記光源又は射出光検出手段の少なくとも一方の位置変更のための駆動機構を設ける必要がなく、その結果、分析装置の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上より、本発明によれば、検体が流れる流路が設けられる部位の面積が異なる分析素子チップであっても当該分析素子チップを用いて分析を行う表面プラズモン共鳴分析装置及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置の大型化を抑制できる分析素子チップ、並びにこの分析素子チップを用いた表面プラズモン共鳴分析装置及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0037】
本実施形態に係る表面プラズモン共鳴分析装置(以下、単に「SPR分析装置」とも称する。)は、図1に示されるように、分析素子チップ10と、分析素子チップ10に光を照射するための光源(第1の光学系)40と、分析素子チップ10から射出される光(射出光)を検出するための射出光検出手段(第2の光学系)50と、を備える。射出光検出手段50には、さらに当該射出光検出手段50で検出した検出光を分析するための演算部60が接続され、この演算部60には当該演算部60が演算した結果を示すための表示手段70が接続されている。
【0038】
分析素子チップ10は、図2乃至図3(b)にも示されるように、表面sと裏面rとを有する板状に形成され、光導波路板12と流路部30とを備える。光導波路板12は、分析素子チップ10の裏面r側に配置され、流路部30は、分析素子チップ10の表面s側に配置されている。光導波路板12は、一対の平行な面(表面と裏面)13a,13bを有する透明な板状に形成され、表面(図3(a)においては上側の面)13aに金属薄膜14が設けられている。
【0039】
具体的には、光導波路板12は、透明な矩形の板状に形成されている。本実施形態において、光導波路板12は、例えば、縦(図2における上下方向の長さ)が25mm、横(図2における左右方向の長さ)が25mm、厚さが2mmの板状に形成されている。光導波路板12は、透明な樹脂で形成されているがこれに限定されず光学系のガラス等であってもよい。この光導波路板12は、後述する流路32の流路測定部34を横断する方向の一方の端面(図2及び図3(a)においては右側端面)に、光源40によって外部から照射された光が内部に入射する入射面16aが設けられている。
【0040】
尚、光導波路板12は、射出部18を境に入射面16a側を光導波路部12a、その反対側を強度維持部12bとも称することがある。詳細には、光導波路部12aは、入射面16aと、射出部18と、内部に入射した光を前記金属薄膜14の裏面14bに案内する光導波路本体部と、で構成される。ここで、前記光導波路本体部とは、光導波路板12の射出部18を含む入射面16a側における射出部18の射出面20aと入射面16aとを繋ぐ部位をいう。
【0041】
入射面16aは、光導波路板12の裏面13b(分析素子チップ10の裏面r)とのなす角を光源40から入射面16aに照射された光が光導波路板12(光導波路部12a)の内部に入射し、この入射した光が金属薄膜14の反射面(裏面:図3(a)においては下側の面)14bに対して全反射条件で到達するような角度に形成されている。本実施形態においては、例えば、123°である。
【0042】
詳細には、入射面16aと光導波路板12の裏面13bとのなす角度は、入射面16aから光導波路板12(光導波路部12a)内部に入射した光が光導波路板12の表面13aの金属薄膜14が設けられた部位に対して全反射条件且つ金属薄膜14の反射面14bに対して表面プラズモン共鳴角θで入射するように設定された角度である。
【0043】
尚、表面プラズモン共鳴角θとは、光導波路板12の表面13aの金属薄膜14が設けられた前記部位で光が全反射した際に生じるエバネッセント波が金属薄膜14で表面プラズモン共鳴を起こすような前記光の入射角である。また、θは光導波路板12の屈折率をnとするとsinθ=1/nで規定される。この共鳴角のとき励起エネルギが強く効率的である。しかしながら角度の精度も要求される。従って、エネルギ効率は落ちるがプラズモン共鳴のピークを外す設定であってもエバネッセント波が出る角度であれば本件の目的は達成できる。
【0044】
射出部18は、本実施形態においては光導波路板12の裏面13bに凹設された凹部(射出用凹部)であり、この凹部を構成する周側面20には射出面20aが設けられている。この射出面20aは、入射面16aから光導波路板12(光導波路部12a)の内部に入射した光が金属薄膜14の反射面14bで全反射された後、この光を直接外部に射出するための面であり、周側面20における流路測定部34側に設けられている。
【0045】
射出面20aは、光導波路板12の裏面13b(分析素子チップ10の裏面r)とのなす角を金属薄膜14の反射面14bで全反射した後に直接当該射出面20aに到達した光が内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるような角度に形成されている。本実施形態においては、例えば、123°である。
【0046】
尚、射出部18は、本実施形態においては前記のように光導波路板12の裏面13bに凹設された凹部で構成されているが、分析素子チップ10の裏面r(光導波路板12の裏面13b)に凹設された凹部で構成されていればよい。即ち、図4(a)及び図4(b)で示されるように、凹部の深さが光導波路板12を貫通する深さであってもよい。また、射出面20aは、本実施形態のように光導波路板12の裏面13bに対して斜面である必要はなく、金属薄膜14の反射面14bで全反射された後に直接到達した光が光導波路板12の内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるのであれば、垂直面、即ち、射出面20aと光導波路板12の裏面13bとのなす角が直角であってもよい。さらに、射出部18は、後述するように分析素子チップ10の表面sと裏面rとを連通する貫通孔(貫通部)で構成されてもよい(図8(a)及び図8(b)参照)。即ち、射出部18は、射出面20aを有する構成であれば、凹部であってもよく、貫通部であってもよい。
【0047】
前記のように入射面16aと射出面20aとが形成されることで、光導波路部12aにおける流路測定部34を横断する方向の横断面は、下底が上底よりも短い等脚台形状となる(図3(a)参照)。本実施形態においては、この等脚台形の斜辺の下底(又は上底)に対する角度は、入射面16aに対して法線方向から光が入射した場合に、この光が金属薄膜14の反射面14bで全反射した後、射出面20aから外部に向けて当該射出面20aに対して法線方向に射出されるように設定されている。このような角度に設定されることで、光が光導波路板12(光導波路部12a)に入射する又は光導波路板12(光導波路部12a)から射出される際に前記光の強度低下が抑制され、後述する検体を分析する際に、射出光検出手段において十分な検出光強度が得やすくなる。
【0048】
また、分析素子チップ10において、光導波路板12の光導波路部12aの形状が前記の形状に固定される、即ち、光導波路部12aの入射面16aと金属薄膜14の反射面14bと射出面20aとの相対位置が前記の位置で固定されることで、入射面16aに光を照射する光源40及び射出面20aからの射出光を検出する射出光検出手段50の相対位置(間隔)が固定できる。
【0049】
従って、分析素子チップ10が光導波路部12aを有するように構成されることで、光導波路板12の強度維持部12b側の水平方向の面積の大きさに関わりなく、互いの間隔(相対位置)を変更することなく同一位置の光源40及び射出光検出手段50を用いて検体を測定(分析)することが可能となる。換言すると、光導波路部12aを有する分析素子チップ10を用いることで、当該チップを用いるSPR分析装置(又は表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(以下、単に「SPR蛍光分析装置」とも称する。))において、光源40と射出光検出手段50との相対位置(2つの光学系の相対位置)を変更するための複雑な機構を設けることなく、目的に合わせた種々の大きさの分析素子チップ10を用いて検体の分析が可能となる。
【0050】
尚、前記SPR(SPR蛍光)分析装置においては、種々の大きさの分析素子チップを固定するためのチップ固定手段(図示せず)が必要となるが、このチップ固定手段は、複数のレンズ等を組み合わせた光学系の位置を変更する機構に比べ極めて簡単な構成となるため、容易且つ安価に設置される。
【0051】
また、前記の光導波路部12aによれば、強度維持部12b側の水平方向の面積の大きさに関わらず、光導波路板12(光導波路部12a)内部においては、入射した光は、金属薄膜14の反射面14bで1回全反射しただけで外部に射出される。そのため、内部で複数回反射した後に外部に射出される光導波路板に比べ、光導波路板12内部に入射した光に基づく乱反射が生じることがなく、強度維持部12b側の水平方向の面積が大きな分析素子チップ10であっても分析精度を維持することができる。
【0052】
即ち、光導波路部12aを備えない板状の分析素子チップであって、一方の側端面から光が入射し、対向する面間で全反射を繰り返しながら金属薄膜に案内され、この金属薄膜で全反射後に同様の全反射を繰り返して他方の側端面から射出される板状の分析素子チップのように、分析素子チップ内部で入射した光の全反射が多数回繰り返されると、当該分析素子チップ内で前記光に基づく乱反射が生じる。この乱反射した光の影響で射出光検出手段又は蛍光検出手段における検出ノイズが増加して検体の正確な分析が行えない。
【0053】
これに対し、前記の光導波路部12aを備えた分析素子チップ10においては、強度維持部12b側の水平方向の面積を大きくすることで複数の流路や枝分かれした分岐流路等の種々の長さや形状の流路を形成することができるにも関わらず、内部に入射した光は、金属薄膜14の反射面14bでの1回の全反射だけで外部に射出され、その結果、乱反射による影響を受けずに精度よく検体の分析を行うことが可能となる。
【0054】
光導波路板12の強度維持部12bは、光導波路部12aと同一の厚さに形成されることで分析素子チップ10全体の強度を維持している。即ち、本実施形態において、前記のように光導波路板12の厚さは、2mmであるため、強度維持部12bがこの厚さより薄くなると分析素子チップ10全体の強度が低くなり、当該分析素子チップ10の製造及び取り扱いが困難になる。また、光導波路部12aと同一の厚さに形成されることで光導波路板12は、中央部に凹部又は貫通部が形成されているが、全体としては略平板状となり、流路部30も板状であるため、分析素子チップ10は板状となる。そのため、積み重ね易く、多数の分析素子チップ10を輸送する際や保管の際等に便利になる。
【0055】
金属薄膜14は、本実施形態においては、例えば金で形成されているが、銀、銅、アルミ等の金属(合金を含む)で形成されてもよい。この金属薄膜14は、前記のように、光導波路板12の表面13aにおいて、当該光導波路板12に入射した光が表面プラズモン共鳴角θで到達するような部位で、且つ流路測定部34と対応する部位に設けられ(形成され)ている。
【0056】
また、この金属薄膜14の表面(露出面)14aには、特定の抗原を捕捉するための捕捉体が固定されている。この捕捉体は、金属薄膜の露出面14aに表面処理によって固定されている。
【0057】
尚、前記のように、内部に入射した光が光導波路板12の内部で1回全反射しただけで外部に射出されるため、この光は、流路測定部34に対応する位置でのみ金属薄膜14に入射する。そのため、光導波路板12の表面13aに形成される金属薄膜14の位置は、前記流路測定部34に対応する位置のみに限定される必要はなく、当該位置を含んでいれば、より広い範囲でもよく、光導波路板12の表面13a全面でもよい。光導波路板12の表面13a全面に金属薄膜14を形成する場合には、形成する際に光導波路板12にマスク等を施す必要がなく、容易に且つ低コストで金属薄膜14を形成することが可能となる。
【0058】
流路部30は、分析素子チップ10の表面s側に配置、即ち、光導波路板12の表面13a側に設けられ、透明な樹脂で形成されており、検体が流れる流路32を有する。具体的には、流路部30は、矩形の板状に形成され、光導波路板12に取り付けられた際に光導波路板12の表面13aと対向する面に、この表面13aと共に流路32を形成する流路用溝32aが形成されている。この流路用溝32aは、光導波路板12側から反対側、即ち、裏面から表面に向けて凹設された溝であり、この流路用溝32aは、その一部に流路測定部用溝34aを含む。流路用溝32aの各端部には、光導波路板12の表面13a側から反対側に向かって貫通孔17a乃至17cが形成されている。尚、本実施形態に係る分析素子チップ10においては、SPR蛍光分析装置でも用いることができるよう流路部30は透明な樹脂で形成されているが、SPR分析装置のみに用いる場合は透明でなくてもよい。
【0059】
詳細には、本実施形態において、流路用溝32aは、中央部の流路測定部用溝34aと、その両端側の端部用溝36a,38aとで構成され、水平方向において、流路測定部用溝34aが入射面16aと射出面20aとの間に凹設され、端部用溝36a,38aが射出部18をその間に挟むように凹設されている。即ち、流路用溝32aは、流路部30の光導波路板12と対向する面(裏面)に平面視略コの字状となるように凹設されている。
【0060】
一方の端部用溝36aは中間部に楕円状の幅広部を有する。他方の端部用溝38aは中間部に楕円状の幅広部を有し、この幅広部から端に向かって(図2においては左側に向かって)2本の溝に分岐している。
【0061】
このように形成される流路用溝32aは、例えば、前記2つの幅広部間では、幅が500μm、深さが300μmの溝である。
【0062】
この流路用溝32aは、流路部30が光導波路板12に熱融着、接着剤、プラズマ接合等によって接合された際、当該流路用溝32aの上端が光導波路板12の表面13aによって塞がれることで流路32が形成される。このとき、流路測定部用溝34aは、光導波路板12の表面13aの金属薄膜14が設けられた部位で上端を塞がれるため、内部に金属薄膜14の露出面14aが露出した状態で流路測定部34を形成する。
【0063】
以上より、流路32は、射出部18を三方から囲うように形成され、且つ金属薄膜14の露出面14aが内部に露出した流路測定部34が水平方向において入射面16aと射出面20aとに挟まれた位置となるように形成される。このような位置に流路測定部34が形成されることで、入射面16aから入射した光が流路測定部34の金属薄膜14で全反射され、射出面20aから射出される。そして、この流路32は、前記のように、両端部が流路部30に形成された貫通孔17a,17b,17cを介して外部と連通している。
【0064】
光源(第1の光学系)40は、光導波路板12の入射面16aに対し、外部且つ分析素子チップ10の表面sに対して裏面r側から光を照射するためのものであり、半導体レーザやLED等の発光素子42と偏光板44と光学系46とで構成されている。偏光板44は、P偏光の偏光面が金属薄膜14の反射面14bで反射するように発光素子42から照射された光を偏光する。但し、発光素子42として半導体レーザを用いた場合、当該半導体レーザを自身のP偏光の偏光面が金属薄膜14の反射面14bで反射するように配置すれば偏光板44は設けなくてもよい(図4(b)参照)。光学系46は、発光素子42から照射された光を平行射出又は金属薄膜14の反射面14b上で集光するように構成された1又は複数のレンズやミラー等で構成されている。
【0065】
このように構成される光源40は、前記のように光導波路板12の入射面16aと対向するように配置されている。詳細には、光源40は、分析素子チップ10の斜め下方(分析素子チップ10の表面sに対して裏面r側から)から光導波路板12(光導波路部12a)の入射面16aに対して法線方向から光を照射し、且つ光導波路板12(光導波路部12a)内部に入射した前記光が裏面側斜め方向(表面プラズモン共鳴角θ)から金属薄膜14の反射面14bに入射するような位置及び照射角度で配置されている。また、光源40は、この金属薄膜14の反射面14bに対する光の入射角を所定の範囲内で変更可能な角度変更手段(図示せず)を備える。
【0066】
射出光検出手段(第2の光学系)50は、光導波路板12の射出面20aから外部且つ分析素子チップ10の表面sに対して裏面r側に射出される光を検出するためのものであり、CCDやフォトダイオード等の受光素子で構成されている。この射出光検出手段50は、分析素子チップ10の下方に配置され、射出された光を受光できるように光導波路板12の射出部18にその受光部が向くよう、詳細には、射出部18の周側面20に設けられた射出面20aと前記受光部が対向するように配置されている。
【0067】
このように本実施形態に係るSPR分析装置では、第1及び第2の光学系40,50の相対位置が前記の位置に固定され、水平方向において前記2つの光学系40,50の間に分析素子チップ10の光導波路部12aが位置するように分析素子チップ10が固定手段(図示せず)によって固定(配置)される。
【0068】
このように光導波路部12aを有する分析素子チップ10を用いることで、第1及び第2の光学系40,50の互いの相対位置(互いの間隔)を変更することなく、強度維持部12b側が種々の大きさの前記分析素子チップ10を用いて検体の分析を行うことができる。即ち、本実施形態に係る分析素子チップ10を用いることで、SPR分析装置において、光学系の相対位置を変更するための複雑な機構を備えることなく、種々の大きさの分析素子チップを用いて検体の分析が可能となる。
【0069】
また、このような光導波路部12aを有する分析素子チップ10を用いることで、水平方向の面積が大きな分析素子チップ10であっても、光源40から照射された光は、光導波路板12の内部で流路測定部34の金属薄膜14における1回だけの全反射で外部に射出される。そのため、光導波路板12の内部で入射した光の乱反射が生じることがなく、射出光に含まれるノイズが抑制され、分析精度の低下が抑制、即ち、分析精度の維持が可能となる。
【0070】
一方、分析素子チップ10においては、光導波路部12aの形状を前記の形状とした状態、即ち、入射面16a、金属薄膜14の反射面14b及び射出面20aの相対位置を前記の位置に固定した状態で強度維持部12b側の水平方向の面積を大きくすることができ、当該強度維持部12b側に複数の流路や分岐流路等の種々の長さや形状の流路を設けることが可能となる。さらに、分析素子チップ10において、前記水平方向の面積が大きくなることで、作業者等が当該分析素子チップ10を把持し易くなり、取り扱いが容易になる。
【0071】
演算部60は、射出光検出手段50から送られてきた出力信号を演算して射出光検出手段50で検出された検出光に関する分析を行うためのものである。具体的には、例えば、射出光検出手段50で検出した射出光の強度や強度変化を算出したりする。このようにして演算部60で演算された結果は、この演算部60に接続された表示手段70に出力され、当該表示手段70が表示する。尚、表示手段70は、モニター等のように結果を画面に表示するものだけでなく、プリンター等のように結果をプリントアウトするもの等であってもよい。
【0072】
本実施形態に係るSPR分析装置は、以上の構成からなり、次に、このSPR分析装置の動作及び作用について説明する。
【0073】
SPR分析装置に設置された分析素子チップ10に検体(試料溶液)が流される。この検体には抗原が含まれている。具体的には、分析素子チップ10は、流路部30を上側にして光導波路板12の表面13a(又は裏面13b)が水平となるようSPR分析装置に設置される。この分析素子チップ10は、検体毎に交換可能な交換チップとして使用される。
【0074】
交換チップとして使用される場合には、複数の分析素子チップ10を積み重ねることが可能なため持ち運びが容易である。即ち、前記のように、光導波路板12の光導波路部12aと強度維持部12bとが同一厚さに形成されることで、光導波路板12が略平板状となり、流路部30も板状であるため、分析素子チップ10が全体として板状となり、複数の分析素子チップ10を容易に積み重ねることが可能となる。
【0075】
次に、流路部30に形成された貫通孔17b及び17cから検体が注入され、流路32を経て貫通孔17aから排出される。このとき、貫通孔17b、17cからは異なる検体が注入され、分岐している流路が合流する幅広部でこれら2種類の検体が混合された後、流路測定部34を経て貫通孔17aから排出される。流路測定部34の内部には、表面(ひょうめん)に捕捉体が固定された金属薄膜14の露出面14aが露出しているため、混合された検体はこの露出面14aに接しつつ流路測定部34を流れる。その際、検体に含まれる特定の抗原が露出面14aに固定された捕捉体に捉えられて金属薄膜14上に留まる。
【0076】
一方、光源40から分析素子チップ10の光導波路板12(光導波路部12a)の入射面16aに対して光が照射される。この光は、入射面16aに対して法線方向から光導波路板12の内部に入射し、金属薄膜14の反射面14bで全反射された後、射出面20aから射出される。この射出光は、射出面20aに対して法線方向に射出される。
【0077】
この光源40からの光の照射は、前記検体を流路32に流す前後において行われる。検体を流す前に照射された光は、金属薄膜14の反射面14bに表面プラズモン共鳴角θで入射するが、露出面14aの捕捉体によって検体に含まれる特定の抗原が捕捉されると表面プラズモン共鳴角θが変化する。この変化を検出するために、光源40を前記角度変更手段(図示せず)によって動かして金属薄膜14の反射面14bに対する入射角を変えながら光を照射し、射出面20aから射出された光を射出光検出手段50によって検出する。尚、前記表面プラズモン共鳴角の変化は、本実施形態のように、光源40を前記角度変更手段によって動かし、金属薄膜14の反射面14bに対する照射光の入射角を変更することにより変化する射出光強度に基づいて検出してもよく、光源40を固定したままデータ上での演算により算出するようにしてもよい。
【0078】
この射出光検出手段50で検出した情報が演算部60に送信され、演算部60において各種演算が行われる。具体的には、演算部60に送られた信号(情報)に基づいて表面プラズモン共鳴角の変化を算出(検出)し、検体に含まれる特定の抗原の定量分析が行われる。
【0079】
そして、この演算結果が演算部60から表示手段70に送られ、当該表示手段70によって表示される。
【0080】
尚、この共鳴角の変化を検出する際、検体を流路32に流しながら光源40から光を照射し、時間の経過に伴う表面プラズモン共鳴角の変化や、検体を流す前後での表面プラズモン共鳴角の変化を測定してもよい。また、検体を流し終えた後、洗浄剤で流路32内を洗浄し、その後に光源40から光を照射して表面プラズモン共鳴角の変化を検出するようにしてもよい。
【0081】
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
【0082】
第2実施形態に係る装置は、SPR蛍光分析装置であり、分析素子チップ10と、分析素子チップ10に光を照射するための光源(第1の光学系)40と、分析素子チップ10から射出される光(射出光)を検出するための射出光検出手段(第2の光学系)50と、エバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段(第3の光学系)80と、を備える。射出光検出手段50と蛍光検出手段80とには、さらに各検出手段50,80で検出した検出光を分析するための演算部60が接続され、この演算部60には表示手段70が接続されている。
【0083】
蛍光検出手段(第3の光学系)80は、金属薄膜14の露出面14a側で生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するためのものであり、レンズ等の光学系82とCCD等の受光素子84とで構成されている。このように構成される蛍光検出手段80は、分析素子チップ10の金属薄膜14に対して流路32側、詳細には、流路測定部34を挟んで対向する位置に配置される。
【0084】
流路32に流される検体には抗原と蛍光標識とが含まれ、これら抗原と蛍光標識とは複合体を形成する。具体的には、例えば、光導波路板12の貫通孔17b,17cから流路32に抗原を含む検体と蛍光標識(蛍光物質)を含む検体とが注入され、流路32の幅広部で混合されて抗原と蛍光標識との複合体が形成された後、この混合後の検体が流路測定部34に流される。
【0085】
流路測定部34の内部には、表面(ひょうめん)に捕捉体が固定された金属薄膜14の露出面(表面)14aが露出しているため、検体はこの露出面14aに接しつつ流路測定部34を流れる。その際、蛍光標識と複合体を形成している抗原が露出面14aに固定された捕捉体に捉えられて金属薄膜14上に留まる。
【0086】
一方、光源40から光導波路板12の入射面16aに対して光が照射され、内部に入射した光は、金属薄膜14の反射面(裏面)14bに表面プラズモン共鳴角θで入射するように案内される。
【0087】
金属薄膜14の反射面14bに入射した光が表面プラズモン共鳴角条件で到達することで、流路測定部34内部に露出した金属薄膜14の露出面14aで表面プラズモン共鳴が生じ、当該金属薄膜14の露出面14a近傍にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波により金属薄膜14の露出面14aに固定された捕捉体により捉えられた前記複合体の蛍光標識(蛍光物質)が励起されて蛍光を発する。即ち、金属薄膜14において、光源40からの光が入射した面(反射面14b)と反対の面(露出面14a)側で蛍光が励起される。この蛍光は、流路部30が透明であるため金属薄膜14に対して流路測定部34を挟んで対向する位置に配置された蛍光検出手段80によって検出される。
【0088】
このとき、金属薄膜14の反射面14bで全反射された後、射出面20aから射出される光を射出光検出手段50で検出することで、入射面16aから入射した光が金属薄膜14の反射面14bに表面プラズモン共鳴角θで入射しているか否かが容易に判断される。この判断に基づいて、光源40の光軸や分析素子チップ10の設置角度を調整することで、金属薄膜14の反射面14bでの表面プラズモン共鳴状態を保つことができ、蛍光検出手段80において、検出に十分な蛍光の強度を保つことができる。若しくは、前記判断に基づき、演算部60において蛍光検出手段80からの検出光の情報に対して補正が行われ、検体の分析精度が向上する。
【0089】
蛍光検出手段80で検出された検出光の情報は、演算部60に送られ、各種演算が行われる。具体的には、例えば、蛍光検出手段80で検出した単位面積あたりの蛍光の数のカウントや時間の経過に伴う蛍光の増加量を算出し、これに基づき検体の定量分析等を行う。そして、その結果が表示手段70に送られ、当該表示手段70によって表示される。
【0090】
このように本実施形態に係るSPR蛍光分析装置においても、第1実施形態同様の分析素子チップ10を用いることで、前記同様、2つの光学系40,50の相対位置の変更をすることなく、種々の大きさの分析素子チップ10を用いて検体の分析を行うことができる。また、水平方向の面積が大きな分析素子チップ10を用いて検体の分析を行っても、前記同様、光導波路板12内部において入射した光による乱反射が生じることがなく、その結果、検体の分析精度が維持される。
【0091】
次に、本発明の第3実施形態について図6乃至図7(b)を参照しつつ説明するが、前記第1及び第2実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
【0092】
第3実施形態に係る装置は、SPR蛍光分析装置であり、分析素子チップ110と、分析素子チップ110に光を照射するための光源(第1の光学系)40と、分析素子チップ110から射出される光(射出光)を検出するための射出光検出手段(第2の光学系)50と、エバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段(第3の光学系)80と、を備える。射出光検出手段50と蛍光検出手段80とには、さらに各検出手段50,80で検出した検出光を分析するための演算部60が接続され、この演算部60には表示手段70が接続されている。
【0093】
分析素子チップ110は、表面sと裏面rとを有する板状に形成され、光導波路板12と流路部30とを備える。光導波路板12は、分析素子チップ110の表面s側に配置され、流路部30は、分析素子チップ10の裏面r側に配置されている。光導波路板12は、一対の平行な面(表面と裏面)13a,13bを有する透明な板状に形成され、裏面(図8(b)においては下側の面)13bに金属薄膜14が設けられている。
【0094】
尚、本実施形態においても、光導波路板12は、分析素子チップ110の中央側に設けられた射出部118を境に入射面16a側を光導波路部12a、その反対側を強度維持部12bとも称することがある。また、本実施形態においては、光導波路本体部は、内部に入射した光を前記金属薄膜14の表面14aに案内する。
【0095】
具体的には、光導波路板12は、透明な矩形の板状に形成され、本実施形態においては、例えば、縦(図7(a)における上下方向の長さ)が25mm、横(図7(a)における左右方向の長さ)が25mm、厚さが2mmの板状に形成されている。
【0096】
入射面16aは、光導波路板12における流路32の流路測定部34を横断する方向の一方の端面(図6乃至図7(b)においては右側端面)に設けられている。この入射面16aは、光導波路板12の裏面13bとのなす角を光源40から入射面16aに照射された光が光導波路板12(光導波路部12a)の内部に入射し、この入射した光が光導波路板12の表面13a(分析素子チップの表面s)で全反射した後、金属薄膜14の反射面(表面:図8(a)においては上側の面)14aに対して全反射条件で到達するような角度に形成されている。本実施形態においては、例えば、123°である。
【0097】
詳細には、本実施形態においても、入射面16aと裏面13bとのなす角度は、入射面16aから光導波路板12(光導波路部12a)内部に入射した光が光導波路板12の表面13aで全反射した後、光導波路板12の裏面13bの金属薄膜14が設けられた部位に対して全反射条件且つ金属薄膜14の反射面14aに対して表面プラズモン共鳴角θで入射するように設定された角度である。
【0098】
射出部118は、本実施形態においては分析素子チップ110の表面sと裏面rとを連通する貫通部で構成されている。そして、この貫通部を構成する周側面120の流路測定部34側には射出面120aが設けられている。
【0099】
射出面120aは、光導波路板12の裏面13bとのなす角を金属薄膜14の反射面14aで全反射された光が光導波路板12の表面13a(分析素子チップの表面s)で全反射された後、射出面120aに到達して内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるような角度に形成されている。本実施形態においては、例えば、120°である。
【0100】
入射面16aと光導波路板12の裏面13b及び射出面120aと光導波路板12の裏面13bとのなす角は、入射面16aに対して法線方向から光が入射した場合に、この光が金属薄膜14の反射面14aで全反射した後、射出面120aから外部に向けて当該射出面120aに対して法線方向に射出されるように設定されている。そのため、前記実施形態同様、光が光導波路板12(光導波路部12a)に入射する又は光導波路板12(光導波路部12a)から射出される際に前記光の強度低下が抑制され、検体を分析する際に、射出光検出手段50において十分な検出光強度が得やすくなる。
【0101】
このように、分析素子チップ110において、光導波路部12aの入射面16aと金属薄膜14の反射面14bと射出面120aとの相対位置が前記の位置で固定されることで、前記実施形態同様、当該分析素子チップ110を用いるSPR蛍光分析装置においても、入射面16aに光を照射する光源40及び射出面120aからの射出光を検出する射出光検出手段50の相対位置(間隔)を固定することができる。
【0102】
流路部30は、光導波路板12の表面13a側に設けられた透明な樹脂で形成されており、検体が流れる流路32を有する。この流路部30は、前記のように分析素子チップ110の裏面側に配置される。
【0103】
流路部30に凹設された流路用溝32aにおいて、一方の端部用溝36aは中間部に楕円状の幅広部を有し、他方の端部用溝38aは中間部に円形状の幅広部を有している。このように形成される流路用溝32aは、例えば、前記2つの幅広部間では、幅が500μm、深さが300μmの溝である。
【0104】
以上のように構成される分析素子チップ110が本実施形態に係るSPR蛍光分析装置に配置されて検体の分析が行われる。即ち、第2実施形態同様、分析素子チップ110の表面を上に向けて水平になるように配置されて流路32に検体が流される。一方、光源40からは射出面16aに向けて光が照射される。
【0105】
その際、入射面16aから入射した光が分析素子チップ110の表面sで全反射をした後、直接金属薄膜14に対して表面14a側から全反射条件且つ表面プラズモン共鳴角で入射するように案内される。
【0106】
このように光導波路部12aに入射した光が案内されることで、流路32内部に露出した金属薄膜14の露出面(裏面)14bで表面プラズモン共鳴が生じ、金属薄膜14の露出面14b近傍にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波により金属薄膜14の捕捉体に捉えられた前記複合体の蛍光物質が励起されて蛍光を発する。この蛍光は、金属薄膜14に対して流路32側、即ち、分析素子チップ110の裏面r側から検出可能である。
【0107】
また、金属薄膜14で全反射された光は、分析素子チップ110の表面sで全反射された後、直接射出面120aに案内され、内部側に再度全反射されることなく外部に射出される。この射出光は、分析素子チップ110の表面sに対して裏面r側に射出されるため、分析素子チップ110の表面sに対して裏面r側から検出される。
【0108】
従って、分析素子チップ110を用いることで、当該SPR蛍光分析装置においては、設置された当該分析素子チップ110の表面sに対して裏面r側に光源40や蛍光検出手段80、射出光検出手段50といった光学系を全て配置することが可能となる。
【0109】
その結果、本実施形態に係る分析素子チップ110を用いることで、分析素子チップを挟んで両側に光学系を配置するSPR蛍光分析装置よりも装置の小型化を図ることが可能となる。
【0110】
以上のような第3実施形態に係るSPR蛍光分析装置においても、光導波路部12aを有する分析素子チップ110を用いることで、前記実施形態同様、第1及び第2の光学系40,50の互いの相対位置を変更することなく、強度維持部12b側の大きさが種々の大きさの前記分析素子チップ110を用いて検体の分析を行うことができる。そのため、本実施形態に係る分析素子チップ110を用いることで、当該SPR蛍光分析装置において、光学系の相対位置を変更するための複雑な機構を備える必要がなく、装置の大型を抑制しつつ、種々の大きさの分析素子チップ110を用いて検体の分析が可能となる。
【0111】
一方、分析素子チップ110においても、前記実施形態同様、光導波路部12aの形状を前記の形状としたまま、強度維持部12b側の水平方向の面積を大きくすることができ、当該強度維持部12b側に複数の流路や分岐流路等の種々の長さや形状の流路を設けることが可能となる。また、分析素子チップ110において、前記水平方向の面積が大きくなることで、作業者等が当該分析素子チップ110を把持し易くなり、取り扱いが容易になる。
【0112】
尚、本発明の分析素子チップ、並びにSPR分析装置及びSPR蛍光分析装置は、上記第1乃至第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0113】
例えば、第1実施形態においては、光導波路部12aに入射した光は、直接金属薄膜14に到達し、当該金属薄膜14で1回だけ全反射をした後、直接射出面20aに到達して外部に射出されるが、これに限定される必要はない。即ち、光導波路板12の表面13aと裏面13bとの間で全反射を複数回繰り返した後、金属薄膜14に到達するように入射面16aが配置されてもよく、また、金属薄膜14での全反射後に前記同様に全反射を複数回繰り返した後、外部に光が射出されるように射出面20aが配置されてもよい。このように入射面16a及び射出面20aが配置されても、分析素子チップ10の一つの端面に設けられた入射面16aに対し、流路測定部34を挟んで対向する位置且つ分析素子チップ10の周縁部を除いた中央側に設けられた射出部18に射出面20aが設けられればよい。
【0114】
尚、第3実施形態に係る分析素子チップ110においても、光導波路部12aで入射した光が複数回全反射を繰り返した後、金属薄膜14に到達し又は射出面120aに到達するように入射面16aと射出面120aとの間隔が設定されてもよい。
【0115】
また、前記実施形態に係る分析素子チップにおいては、その形状の光学的特徴から当該分析素子チップの射出部(射出面)から光が入射しても、光導波路本体部内において入射面から光が入射した場合と同じ光路を通って入射面から射出されることは言うまでもなく、SPR分析装置及びSPR蛍光分析装置においてこのような使い方も可能である。即ち、前記分析素子チップを用いる場合、前記実施形態に係るSPR分析装置及びSPR蛍光分析装置において、光源40と射出光検出手段50との配置が入れ換えられてもよい。
【0116】
また、前記実施形態に係る分析素子チップ10(又は110)を用いて検体の分析等を行う場合、射出光検出手段を備えていないSPR蛍光分析装置において検体の分析等を行うことも可能である。
【0117】
例えば、このSPR蛍光分析装置は、図8に示されるように、分析素子チップ10と、分析素子チップ10に光を照射するための光源(第1の光学系)40と、エバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段(第3の光学系)80と、を備える。蛍光検出手段80には、さらに当該蛍光検出手段80で検出した検出光を分析するための演算部60が接続され、この演算部60には表示手段70が接続されている。
【0118】
このSPR蛍光分析装置においては、前記実施形態同様、配置される分析素子チップ10の入射面16aと金属薄膜14と射出面20aとの相対位置が固定されており、また、光源40が照射した光が金属薄膜14の反射面14bに対して表面プラズモン共鳴角θで入射するような位置及び照射角度で当該装置に配置されている。従って、分析素子チップ10が所定の位置に正確に配置されることで、射出面20aから射出される光(射出光)の強度を測定して金属薄膜14の反射面14bに入射する光が表面プラズモン共鳴角θで入射しているか否かの判断が不要となり、射出光検出手段が無くても検体の分析等を精度よく行うことが可能である。
【0119】
このようなSPR蛍光分析装置において、裏面sの中央側に射出部18が形成され、入射面16aから入射した光が光導波路板12(光導波路部)内で1回だけ全反射した後、外部に射出されるように構成される前記分析素子チップ10を用いることで、前記実施形態同様、前記光導波路板12(光導波路部)内で乱反射が生じることを抑制でき、蛍光検出手段80における蛍光の検出を精度よく行うことができる。
【0120】
尚、このSPR蛍光分析装置においても、前記同様、射出部18(射出面20a)から光導波路板12内へ光を入射させるように光源40が配置、具体的には、第1実施形態における射出光検出手段50が配置されている位置に光源40が配置されても検体の分析等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1実施形態に係る表面プラズモン共鳴分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る分析素子チップの平面図である。
【図3】同実施形態に係る分析素子チップの(a)は図2におけるA−A断面図であり、(b)は図2におけるB−B断面図である。
【図4】他実施形態に係る分析素子チップの(a)は平面図であり、(b)は図4(a)におけるC−C断面及び2つの光学系の配置を示す概略図である。
【図5】第2実施形態に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】同実施形態に係る分析素子チップの(a)は平面図であり、(b)は図7(a)におけるD−D断面図である。
【図8】他実施形態に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
10 分析素子チップ
12a 光導波路部
13a 表面
13b 裏面
14 金属薄膜
16a 入射面
18 射出部(凹部又は貫通部)
20 周側面
20a 射出面
32 流路
r 裏面
s 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄膜での表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を測定する表面プラズモン共鳴分析装置、又は検体に含まれる蛍光物質が金属薄膜で生じたエバネッセント波で励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に用いられる分析素子チップであって、
この分析素子チップは表面と裏面とを有する板状に形成され、内部に入射した光を前記金属薄膜に案内する光導波路部と、前記検体が流れる流路と、一方の面が前記光導波路部に面し且つ他方の面が前記流路内に露出するように設けられた前記金属薄膜と、を備え、
前記光導波路部は、当該分析素子チップの一つの端面に設けられ、外部且つ当該分析素子チップの表面に対して裏面側から照射された光が内部に入射する入射面と、内部に入射した光を前記金属薄膜の一方の面に案内する光導波路本体部と、前記金属薄膜の一方の面で全反射された後の光を外部に射出する射出部と、を有し、
前記射出部は、当該分析素子チップにおける前記入射面に対して前記金属薄膜が露出した流路を挟んで対向する位置に設けられた貫通部又は前記裏面に凹設された凹部で構成され、
前記貫通部又は凹部における前記金属薄膜が露出した流路側の周側面には、前記金属薄膜での全反射後の光を外部且つ前記表面に対して裏面側に射出する射出面が設けられることを特徴とする分析素子チップ。
【請求項2】
前記光導波路本体部は、前記流路に対して前記分析素子チップの裏面側に配置され、
前記入射面は、前記分析素子チップの裏面とのなす角を前記入射した光が前記金属薄膜に対して前記分析素子チップの裏面側から全反射条件で到達するような角度に形成され、
前記射出面は、前記分析素子チップの裏面とのなす角を前記金属薄膜で全反射された後、当該射出面に到達した前記光が内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるような角度に形成されることを特徴とする請求項1に記載の分析素子チップ。
【請求項3】
前記入射面は、内部に入射した光が直接金属薄膜に到達し、前記射出面は、前記金属薄膜での全反射後の光が直接到達する位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の分析素子チップ。
【請求項4】
前記入射面と分析素子チップの裏面とのなす角及び前記射出面と分析素子チップの裏面とのなす角は、前記入射面に対して法線方向から光が入射した場合に、前記射出面に対して法線方向に前記光が射出されるような角度であることを特徴とする請求項2又は3に記載の分析素子チップ。
【請求項5】
前記入射面と分析素子チップの裏面とのなす角及び前記射出面と分析素子チップの裏面とのなす角がそれぞれ直角であることを特徴とする請求項2又は3に記載の分析素子チップ。
【請求項6】
前記光導波路本体部は、前記流路に対して前記分析素子チップの表面側に板状に配置され、
前記入射面は、前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角を、前記入射した光が前記分析素子チップの表面で全反射した後、前記金属薄膜に対して前記分析素子チップの表面側から全反射条件で到達するような角度に形成され、
前記射出面は、前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角を、前記金属薄膜で全反射された光が前記分析素子チップの表面で全反射された後、当該射出面に到達して内部側に再度全反射されることなく外部に射出されるような角度に形成されることを特徴とする請求項1に記載の分析素子チップ。
【請求項7】
前記入射面と前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角及び前記射出面と前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角は、前記入射面に対して法線方向から光が入射した場合に、前記射出面に対して法線方向に前記光が射出されるような角度であることを特徴とする請求項6に記載の分析素子チップ。
【請求項8】
前記入射面と前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角及び前記射出面と前記板状の光導波路本体部における流路側の面とのなす角がそれぞれ直角であることを特徴とする請求項6に記載の分析素子チップ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分析素子チップを備えたことを特徴とする表面プラズモン共鳴分析装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分析素子チップを備えたことを特徴とする表面プラズモン共鳴蛍光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−133717(P2009−133717A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310031(P2007−310031)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】