説明

分析装置

【課題】 気体を供給する部位から供給された気体を効率良く分析する。
【解決手段】 気体を捕獲する捕獲膜3(例えば、多孔質性のポリマーなど。)を含み、該捕獲膜3に捕獲された気体(例えば、人体から発生した皮膚ガス。)と前記発生部8から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光とが相互作用するように該捕獲膜3を配置可能な捕獲部(捕獲膜3と捕集容器2とで構成される部材。)を備える。前記捕獲部は、前記気体を供給する部位1(例えば、腕や手などの人体。)に接触可能な構造体(捕集容器2)を含む。そして、前記構造体2は、前記捕獲膜と前記部位1とを非接触状態として維持するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波もしくは赤外光を用いて気体を分析するための分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、30GHz以上100THz以下の周波数帯域の少なくとも一部を含む電磁波(ミリ波からテラヘルツ波の電磁波のこと。以後、単にテラヘルツ波とも呼ぶ。)を用いて、非破壊的にセンシングする技術が開発されている。また、100THz(波長3μm)以上430THz(波長0.7μm)以下の周波数帯域の少なくとも一部を含む電磁波(以降、赤外光とも呼ぶ。)を用いて、分析する分析装置も開発されている。
【0003】
ここで、テラヘルツ波によるセンシング技術の応用として、人の呼気(吐く息に含まれる気体)を分光計測することが、特許文献1に開示されている。これは、テラヘルツ波が伝搬する中空ファイバー内に、呼気に含まれる物質(エタノールなど)を吸引し、該物質にテラヘルツ波を透過させることで、該物質の測定を行う技術である。このとき、吸引するのは、中空ファイバー内の気体の濃度を増大させるためである。
【0004】
一方で、光を使ってガスの濃度を測定する装置が、特許文献2に開示されている。これは、腕の皮膚から発生するガスをセル内に捕集し、セルに設置された鏡によって多重反射させられた透過光を検出する。この場合、セル内のガスの濃度を増大させるために、腕の皮膚からのガスを吸着剤に吸着させ、発熱体によって吸着剤からガスを脱着する機構を備えている。これにより、検出感度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−241340号公報
【特許文献2】特開2005−147962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、上述したように、吸引が必要なので、測定に時間がかかる。また、検出感度を向上させるために、中空ファイバーの長さがある程度必要となる。また、特許文献2は、上述したように、発熱体によって吸着剤からガスを脱着することが必要なため、測定に時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るテラヘルツ波もしくは赤外光を用いて気体を分析するための分析装置は、
テラヘルツ波もしくは赤外光を発生させる発生部と、
気体を捕獲する捕獲膜を含み、該捕獲膜に捕獲された気体と前記発生部から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光とが相互作用するように該捕獲膜を配置可能な捕獲部と、
前記相互作用したテラヘルツ波もしくは赤外光を検出する検出部と、を備え、
前記捕獲部は、前記気体を供給する部位に接触可能な構造体を含み、
前記構造体は、前記捕獲膜と前記部位とを非接触状態として維持するように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気体を捕獲する捕獲膜を、気体を供給する部位(皮膚など)から離隔して、該捕獲膜に捕獲される気体と発生部から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光とを相互作用される。これにより、気体を供給する部位から供給された気体を効率良く分析することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施例を説明するための模式図である。
【図3】本発明の実施例を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施例を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係るテラヘルツ波もしくは赤外光を用いて気体を分析するための分析装置について、図1を用いて説明する。
【0011】
まず、テラヘルツ波もしくは赤外光を発生させる発生部8を備える。次に、気体を捕獲する捕獲膜3(あるいは4。あるいは媒体とも呼ぶ。例えば、多孔質性のポリマーなど。)を含み、該捕獲膜3に捕獲された気体(例えば、人体から発生した皮膚ガス。)と前記発生部8から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光とが相互作用するように配置可能な捕獲部(捕獲膜3と捕集容器2とで構成される部材。)を備える。また、前記相互作用したテラヘルツ波もしくは赤外光を検出する検出部10を備える。さらに、前記捕獲部は、前記気体を供給する部位1(例えば、腕や手などの人体。)に接触可能な構造体(捕集容器2)を含む。そして、前記構造体2は、前記捕獲膜と前記部位1とを非接触状態として維持するように該捕獲膜3を設ける。これにより、前記部位1から供給された気体を効率良く(短時間で)分析することが可能になる。
【0012】
なお、前記構造体2は、スペーサーとも呼び、前記捕獲膜3と前記部位1との間に所定の空隙を設ける役割を果たす。ここで、構造体の材料は、樹脂などが好ましい。また、構造体の形状は、図1(a)のようなキャップ型や、図1(b)のような袋型が好ましい。ただし、本発明の構造体はこれらに限定されるものではない。
【0013】
ここで、複数の前記捕獲膜3と4それぞれにより、複数の前記気体(例えば、前記皮膚ガスに含まれるアンモニアやアセトンなど。)を選択的に捕獲するように構成することが好ましい。また、複数の前記捕獲膜3と4は、積層することが好ましい(図3の説明を参照)。
【0014】
また、前記捕獲膜は、分析したい気体を捕獲する捕獲膜とは別に、撥水機能を持つ多孔質材料を含むことが好ましい。あるいは、前記捕獲膜は、水蒸気を捕獲する吸湿材(例えば、シリカゲルなど。)を含むことが好ましい。テラヘルツ波は、水に対する吸収が大きい。そのため、前記捕獲膜で捕獲された気体に分析したい気体以外に水蒸気が含まれていると、テラヘルツ波の損失が大きく、効率良く分析できないからである。
【0015】
また、前記構造体2は、前記捕獲膜3に捕獲される気体を集める空間を、該捕獲膜3と前記部位1との間に形成可能に構成されることが好ましい。このとき、前記発生部8から発生したテラヘルツ波は、前記空間の外部を伝搬することが好ましい。ここで、次の本実施形態に係る装置及び方法は、次のようにも表現できる。
【0016】
すなわち、気体分子を捕獲する媒体が、気体分子供給部位(例えば、人体の皮膚)と接する捕集部で形成される空間内において、気体分子供給部位より離隔し、かつ伝搬するテラヘルツ波の電場の及ぶ領域に配置される。そして、前記媒体を備える捕集部の少なくとも一部を経て伝搬して来るテラヘルツ波を検出することである。
【0017】
上記考え方に基づき、本発明の装置及び方法の基本的な実施形態は、次の様な構成を有する。気体分子の情報(種類や濃度など)を検出するための検出装置は、容器などの形態をなす捕集部と、検出すべき気体分子を捕獲する平板状などの媒体と、テラヘルツ波を発生する発生手段と、検出手段と、を備える。捕集部は、前記検出すべき気体分子が供給される人体の一部などの部位と少なくとも一部を接して前記気体分子を捕集する空間を形成する。検出手段は、前記発生手段から前記捕集部内の媒体の少なくとも一部を経て伝搬して来るテラヘルツ波を検出する。更に、前記媒体は、前記捕集部の空間内において、前記気体分子が供給される部位より離隔し、かつ伝搬するテラヘルツ波の電場の及ぶ領域に配置される。
【0018】
これにより、前記媒体が配置される捕集部の空間を比較的小さくすることができ、比較的小型な構成で、ガスが発生する部位の気体分子の成分の種類や濃度などの情報を検出できる。また、捕集部の空間に配置された前記媒体の部分を経て来たテラヘルツ波を検出して気体分子の情報を検出するので、比較的高速に検出することができる。従って、例えば、人の呼気ガスや皮膚ガスの成分を高速に検出することにより、人の健康状態などを非侵襲で診断することができる。
【0019】
また、人体の皮膚からの気体分子の情報を検出するための皮膚ガス検出装置は、上記構成要素に加えて、前記捕集部内に水分子を捕獲する吸湿材を備える。ここでも、捕集部は、検出すべき気体分子を放出する人体の皮膚と少なくとも一部を接して気体分子を捕集する空間を形成する。検出手段は、発生手段から前記捕集部内の媒体の少なくとも一部を経て伝搬して来るテラヘルツ波を検出する。更に、前記媒体は、前記吸湿材を備える捕集部の空間内において、人体の皮膚より離隔し、かつ伝搬するテラヘルツ波の電場の及ぶ領域に配置される。
【0020】
前記基本的な実施形態において、以下に述べる様な具体的な実施形態が可能である。前記捕集部は、前記発生手段と前記検出手段の間のテラヘルツ波が伝搬している領域の一部に位置させることができる。また、前記気体分子を捕獲する媒体は、複数種類のものを前記テラヘルツ波の電場の及ぶ領域に配置することができる。この場合、複数種類の媒体は積層された形態を採り得る(例えば、図1の捕獲膜3と4)。
【0021】
また、前記捕集部の空間内には、水分子を捕獲する吸湿材を更に備えることができる。この場合、前記吸湿材は、前記積層された媒体の一部を成す形態を採り得る(例えば、図4(a)の捕獲膜51)。こうした構成は、皮膚ガス検出装置として好適に使用することができる。前記気体分子を捕獲する媒体は、撥水機能を持つ多孔質材料などで構成することができる。
【0022】
また、前記気体分子を捕獲する媒体は、検出したい気体分子を選択的に捕獲する部材で構成することができる。この場合、前記選択的に捕獲する部材は、複数種類のものを前記テラヘルツ波の電場の及ぶ領域に配置することができる。このとき、複数種類の媒体にそれぞれ選択的に捕獲された気体分子の情報を前記気体分子毎に独立に検出することができる。
【0023】
また、前記テラヘルツ波を複数回反射させるメタルメッシュなどの反射手段を更に持ち、前記気体を捕獲する媒体の少なくとも一部を複数回経て伝搬してくるテラヘルツ波を検出する形態にもできる(例えば、図4(b)のミラー62と65や、図5(c)のミラー94と95)。この場合、好適には、前記反射手段は、メタルメッシュなどのように開口部を持ち、検出したい気体分子が透過可能である。
【0024】
また、前記発生部から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光を伝搬させる導波路を備えることが好ましい。このとき、前記捕獲膜は、前記導波路を伝搬するテラヘルツ波もしくは赤外光の電場の及ぶ領域に配置されることが好ましい。例えば、図5(a)の導波路70や、図5(c)の導波路90である。もちろん、本発明に係る分析装置は、前記発生部から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光が空間中を伝搬するように構成されても良い。
【0025】
さらに、前記導波路は、該導波路を伝搬するテラヘルツ波もしくは赤外光を反射させる反射部(例えば、上述のメタルメッシュなど。)を含むことが好ましい。このとき、前記反射部は、前記導波路を伝搬するテラヘルツ波もしくは赤外光が前記捕獲膜を複数回経て伝搬するように配置されることが好ましい。
【0026】
また、前記捕集部の空間内をパージするための手段を更に備えることもできる。これは、例えば図4(b)において、前記構造体に設けられ、該構造体の外部から気体を導入するための第1の流路66のことである。また、前記第1の流路66を用いて導入された気体により、前記構造体と前記部位との間に集まる気体を排出する第2の流路67のことである。
【0027】
(反射型の分析装置)
以下、本実施形態について、図1(a)を用いて説明する。
【0028】
まず、気体分子の発生部位1は、例えば人の腕である。次に、気体分子発生部位1から発生した気体分子を捕集するための捕集部を構成する容器2は、例えば樹脂等で成形されている。なお、図1(a)は、容器2内の構造を分かり易くするために、透視図で描いてある。
【0029】
また、捕集容器2の上面近傍に積層された気体分子を捕獲する膜状の媒体3と4は、気体分子発生部位1とは離隔して配置されている。捕獲膜3と4は、例えば多孔質性のポリマーであって、テラヘルツ波での損失の小さいものが望ましい。例えば、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスルホン、テフロン(登録商標)、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、四フッ化エチレンなどが挙げられる。また、捕獲膜3と4中の孔の平均径はテラヘルツ波の波長より十分小さい数10μm以下が望ましく、更に望ましくは数μm以下であればよい。こうした構造の膜は、従来のセンシング手段の1つである光では通常は散乱体になり、センシングの用途に使用することは困難である。なお、本発明における捕獲膜は、少なくとも3と4のどちらかがあれば良い。
【0030】
捕集容器2は気体分子発生部位1側(下面)が開口しており、上面はテラヘルツ波6が伝搬する経路5と密着している。気体発生部位1からの気体分子は、該気体分子にとってほぼ閉じた空間を形成する捕集容器2に集められて容器の外部より濃度の高い状態にされると共に、捕獲膜3と4に捕獲される。捕集容器2内で捕獲膜を気体分子発生部位1とは離隔して保持することで、発生部位1からの意図しない分子、例えば水蒸気や汗に含まれる成分、皮膚に付着した物質などの直接の付着を低減できるようになっている。また、捕獲膜3,4自体も、気体分子が捕集容器2から漏れ難くするように、上述した小さい平均孔径を持つ多孔質ポリマーで構成されている。
【0031】
テラヘルツ波6は、発生部8よりハーフミラー7、伝搬経路5を通って捕獲膜3と4に照射されると共に、捕獲膜3と4からの反射波は再び伝搬経路5、ハーフミラー7を介して検出部10に入射する。ハーフミラー7としては、高抵抗のシリコン基板や金属メッシュ構造などが好適に用いられる。
【0032】
制御部あるいは処理部9を用いて発生部8、検出部10を制御し、捕獲膜3と4に捕獲された気体分子の種類や濃度などの性状ないし物性の情報を分析する。なお、制御部あるいは処理部は、それぞれ別々の構成しても良いし、一体に構成しても良い。この2種類の膜3と4はそれぞれ異なる気体分子を選択的に捕獲するようにできる。検出すべき気体分子としては、例えばアルコール、アセトアルデヒド、アセトン、アンモニアなどがあるが、これらに限るものではない。
【0033】
(テラヘルツ時間領域分光装置)
次に、一般的なテラヘルツ波の分析装置であるテラヘルツ時間領域分光装置(THz−TDS)について、図2を用いて説明する。
【0034】
まず、100fsec程度以下のパルス幅をもつフェムト秒レーザ20のレーザ光をハーフミラー23で分岐し、1つはレンズ27により集光して発生部を成す光伝導素子29に照射する。この光伝導素子29のバイアス電圧は電源18により変調されており、変調されたテラヘルツ波が放物面鏡11,13によってテラヘルツ導波路21に入射される。導波路を用いずに、テラヘルツ波を、直接、捕獲膜に照射する形態でもよい。
【0035】
一方、分岐されたもう1つのレーザ光は、ミラー25を経て、遅延ステージ15に搭載されたミラー対16によって遅延制御されたのちミラー25,24、レンズ28を介して検出側の検出部を成す光伝導素子17に照射される。
【0036】
テラヘルツ波の導波路21としては、中空で内部に金属コーティングがなされたHollowファイバーや、周期的な孔構造を設けたフォトニック結晶ファイバーなどが用いられる。また、金属の単一ワイヤ、導波管、同軸線路や平衡線路のような2導体ワイヤ、それらに樹脂をコーティングしたものでもよい。また、硬い筒状のファイバーでテラヘルツ波をそのままビーム状に伝搬させる方式のものでもよい。ファイバー21の先端部には、前述した捕獲膜を内蔵した捕集部を成す捕集容器22が備えられており、聴診器のように必要部位に押し付けるなどして、発生する気体分子を捕集する空間を形成する。必要部位とは、気体分子発生部であって、人体の任意個所の皮膚、口、鼻などのガスの発生する個所であったり、人体以外でも、地表や生産現場などにおける気体分子発生個所であったりする。ファイバー21により伝搬したテラヘルツ波は捕集容器22内の捕獲膜(図2では不図示)に照射され、反射波が再びファイバー21を伝搬して放物面鏡14,12を介して光伝導素子17で検出される。ここでは、テラヘルツ波の入出射をハーフミラーでなく2つの放物面鏡13,14で空間的に行っている。また、ハーフミラー7(例えば、メタルワイヤ)により分岐してもよい。このテラヘルツ波による信号は、アンプ19、ロックインアンプ26を通して同期検波方式で検出され、処理部9によって分析される。
【0037】
分析された時間波形の一例を図3(a)に示す。積層された複数の捕獲膜の各界面からの反射パルスが観測されており、30、31は1枚目(図1の捕獲膜4)の表面と裏面、32、33は2枚目(図1の捕獲膜3)の表面と裏面からの反射パルスの時間波形をそれぞれ示している。これらの時間波形を持つテラヘルツパルスの透過した捕獲膜のパスの場所や長さから、各捕獲膜で捕獲されている気体分子の情報を取得することができる。これは、本例で用いている捕獲膜がテラヘルツ波に対して透過性を有し、界面で反射するテラヘルツ波の信号から反射部位を特定して検出できる特性を持つからである。
【0038】
例えば、図3(b)はアンモニアの分光スペクトルを表しており、一方の膜の表面と裏面からの反射パルスの時間波形の吸収量や吸収周波数の位置により、気体分子の発生部位からのアンモニアの性状や濃度などを分析することができる。もう一方の膜には、例えばアセトンを捕獲するなどして、同時に複数の気体分子の情報を取得することもできる。このような多層構造にすれば同時に複数の情報を取得することができるが、もちろん1枚の捕獲膜で1種の気体分子を検出するようにしてもよい。
【0039】
(溶解パラメータ)
本実施形態において、捕獲膜に所望のガスを選択的に捕獲するための性質を付与することが好ましい。このとき、捕獲膜の溶解パラメータと、捕獲したいガスの溶解パラメータとをほぼ同じにすると、互いの親和性が良いと言える。なお、溶解パラメータは、物質間の親和性の目安を表すパラメータのことである。各物質の溶解パラメータが近い程、両者の親和性が大きい。従って、捕獲膜の溶解パラメータがガスのそれに近い場合、ガスは捕獲膜に選択的に捕獲されることになる。
【0040】
例えば、溶解パラメータが10.0〔(cal/cm1/2〕のアセトンのガスは、溶解パラメータが10.9〔(cal/cm1/2〕の酢酸セルロースや、溶解パラメータが9.7〔(cal/cm1/2〕のポリエーテルスルホンからなる捕獲膜に捕獲され易い。これに対して、溶解パラメータが9.0〔(cal/cm1/2〕のポリスチレンからなる捕獲膜には、アセトンガスは捕獲され難い。溶解パラメータが凡そ15〔(cal/cm1/2〕のアンモニアのガスは、溶解パラメータが15.8〔(cal/cm1/2〕のカルボン酸ビニルエステルや、溶解パラメータが15.8〔(cal/cm1/2〕のポリビニルピロリドンからなる捕獲膜に捕獲され易い。溶解パラメータが12.9〔(cal/cm1/2〕のエタノールのガスは、溶解パラメータが12.5〔(cal/cm1/2〕のポリエステルや、溶解パラメータが12.8〔(cal/cm1/2〕のAS樹脂(アクリロニトリルとスチレンとの共重合体)からなる捕獲膜に捕獲され易い。
【0041】
なお、所望の溶解パラメータが得られるのであれば、捕獲膜の準備方法に特に制限はない。例えば、捕獲膜表面にオゾン処理や表面修飾処理等を施して、捕獲膜表面の溶解パラメータを変化させても構わない。また、捕獲膜に何らかの液体や気体を染み込ませて付着させておいてもよい。また本発明では、捕獲膜に捕獲されたガスと捕獲膜とが反応し、該反応物をガス検出用の分光計測の対象としても構わない。
【0042】
本検出装置においては、捕獲膜にガスを捕獲させると同時にテラヘルツ波でその状態をセンシングするため、気体分子の情報の取得時間としては例えば数分あれば十分である。よって、例えば、人に負荷をかけずに、発生気体分子の情報により健康状態などを高速に診断することが可能となる。また、その高速診断性からリアルタイム計測を行えば、計測結果の時間的な変動や複数箇所からの同時取得が可能となり、新しい気体分子の検出方法や、それを用いた新しい診断方法を提供することができる。
【0043】
(透過型の分析装置)
次に、図5(a)を用いて他の実施形態を説明する。本実施形態は、テラヘルツ波の発生・検出に対して反射配置でなく、透過配置としたものである。図5(a)において、70はテラヘルツ波の導波路であり、前述したような樹脂製の中空ファイバーである。捕集容器71,72はそれぞれ捕獲膜73,74を持ち、かつファイバー導波路70に固着されている。各捕集容器が固着された部分のファイバー導波路70の樹脂の肉厚は他の部分より薄くなっており、導波路70を伝搬するテラヘルツ波が染み出してテラヘルツ波が通過しながら捕獲膜73,74と相互作用する位置に捕集容器71,72が設置してある。
【0044】
本実施形態では透過配置であるため、例えばハーフミラー7は必要ない。図5(a)の矢印の向きにテラヘルツ波が伝搬する場合には、左側に発生部を、右側に検出部を配置(いずれも図5(a)では不図示)すればよい。
【0045】
本実施形態では、上記実施形態のように捕獲膜を多層にする構成は難しいが、逆にテラヘルツ波の伝搬方向に複数の捕集容器を配置することができる。この場合に、検出すべき気体分子を同じものにしてもよいし、それぞれを別の気体分子にしてもよい。気体分子によって吸収スペクトルの周波数が異なる場合には、それぞれを分離して検出することができる。時間領域分光法の場合には、各気体分子の重ね合わせの信号が取得できるため、フーリエ変換後のスペクトル分析で同時に複数の気体分子の情報を取得できる。
【0046】
一方、それぞれの気体分子の吸収波長に合わせた単一周波数光源を複数台用意して、同一の導波路に複数の周波数のテラヘルツ波を伝搬させ、検出側でフィルタ分離してそれぞれの検出すべき気体分子の情報を取得するようにもできる。
【0047】
更に、捕獲膜とテラヘルツ波の相互作用を大きくするために、後述する図4(b)に示したような反射手段であるメタルメッシュを導波路70内に2枚配置して共振器を構成してもよい。テラヘルツパルスの場合は、複数パルス列から気体分子の情報を取得することで感度を向上できる。
【0048】
テラヘルツ波の導波路ファイバーが、曲げられる屈曲可能な材料で作製されていれば、図5(b)に示すように、気体分子発生部位が腕80のような筒状のものに対してファイバー導波路81を巻きつけて計測することも可能である。なお、図5(b)の矢印は、テラヘルツ波の伝搬方向を表している。この方向は逆でも勿論よい。その他の点は、上記実施形態と同様である。
【0049】
(分析方法)
また、テラヘルツ波もしくは赤外光を用いて気体を分析するための分析方法は、以下のa)からc)の工程を含む。
a)気体を捕獲する捕獲工程。
b)テラヘルツ波もしくは赤外光を発生させる発生工程。
c)前記捕獲された気体と前記発生したテラヘルツ波もしくは赤外光とを相互作用させ、該相互作用したテラヘルツ波もしくは赤外光を検出する検出工程。
【0050】
また、検出すべき気体分子が供給される人体の一部などの部位と少なくとも一部を接して、前記検出すべき気体分子を捕獲する媒体を備えて前記気体分子を捕集する空間を形成する捕集部を配置する配置工程を含むこともある。また、前記捕集部内の媒体の少なくとも一部を経てテラヘルツ波を伝搬させる伝搬工程を含むこともある。また、前記捕集部内の媒体の少なくとも一部を経て伝搬して来るテラヘルツ波を検出する検出工程を含むこともある。また、配置工程においては、前記媒体は、前記捕集部の空間内において、前記気体分子が供給される部位より離隔し、かつ前記テラヘルツ波の電場の及ぶ領域に配置される。
【0051】
また、上述の分析方法において、例えば、前記検出すべき気体分子が供給される部位は人体であり、人体の一部に前記捕集部を接触させて人体から発生する気体分子の情報を検出することができる。光ファイバーなどの屈曲可能な導波路を皮膚などの人体の測定個所に巻きつけて、人体から発生する気体分子の情報を検出することもできる。こうして検出した気体分子の情報から人体の疾病を診断することができる。
【0052】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。なお、記憶媒体は、コンピュータに実行させるためのプログラムを格納できるものであれば何でも良い。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0054】
(第1の実施例)
本実施例について、図1(a)と図2を用いて説明する。フェムト秒レーザ20としては、波長1.55μm、パルス幅20fsecのファイバーレーザを用いた。テラヘルツ波の発生素子及び検出素子としては、Beドープの低温成長InGaAsにダイポールアンテナを形成したものを用いた。発生側には10mW、検出側には5mWのレーザ光を照射した。
【0055】
更に、発生側にはバイアス電圧として±10Vを矩形波状に50kHzの変調信号として与え、10の利得を持つ電流電圧変換アンプ19の出力をロックインアンプ26により同期検波を行って高S/N比の検出信号を得た。検出側の光伝導素子は、InGaAsではS/N比が十分ではない場合があり、より暗電流が少ない低温成長GaAsによる光伝導素子を用いるとS/N比の向上につながった。その場合には、検出器側に照射するレーザ光の波長はGaAsのバンドギャップ以上の光が望ましい。よって、この場合は、周期ポーリング・ニオブ酸リチウム(PPLN)などの第2次高調波発生素子(不図示)によって倍波の780nmに変換して、GaAs光伝導素子に照射すればよい。この場合第2次高調波を発生させずに1.55μmのパルス光で直接GaAsを励起する構成も可能である。また、発生側には有機非線形結晶(たとえばDSAT:4−dimethylamino−N−methyl−4−stilbazoliumTosylate)を用いて100THzまでの帯域で計測することも可能である。
【0056】
本実施例では、テラヘルツ導波路21は中空導波路を用いた。中空導波路21の先端部には樹脂製の捕集容器22を装着し、テラヘルツ反射型時間領域分光装置として動作させた。この捕集容器22は導波路21から脱着可能としてもよい。
【0057】
本実施例で用いた捕集容器の構造を図4(a)に示す。本実施例で装着した捕獲膜は51、52、53の3枚としたが、これに限るものではない。すなわち、図1(a)に示すように2枚にしたり、あるいは1枚のみにしたりしてもよい。本実施例では、1枚目の設けられる第1の捕獲膜51は、人から発生される検出したい気体分子以外の水分子を吸着させるためのシリカゲルなどからなる吸湿膜とした。これは、捕集容器50内の水蒸気圧が上昇して結露したり、捕獲膜52,53に水蒸気が付着したりするのを防ぐ。更には、テラヘルツ波導波用の導波路に水蒸気が充満してテラヘルツ伝搬の損失につながるのを防いだり、ノイズとなる水分子スペクトルを除去したりする役割を持っている。第1の捕獲膜51は、吸湿膜以外に、撥水性の多孔質剤として、水分子は上方に通さないが、他の気体分子は透過させる役割を持つ膜でもよい。また、吸湿剤は捕集容器50内の任意の個所に置くことが可能である。
【0058】
一方、第2の捕獲膜52はアセトンの選択捕獲用にポリエーテルスルホンを構成材料にした多孔質材料、第3の捕獲膜53はアンモニア捕獲用にポリビニルピロリドンを構成材料にした多孔質材料とすることができる。その場合、図3(a)の反射エコーパルスで、30は第3の捕獲膜53の表面の反射パルス、31は第3の捕獲膜53の裏面(気体分子発生側)の反射パルスを示している。また、32は第2の捕獲膜52の表面の反射パルスであり、31および32のパルスは第3の捕獲膜53中を通過したTHz波なので、捕獲膜53で吸着されたアンモニアの吸着量などを知ることができる。同様に、33の第2の捕獲膜52の裏面からの反射パルスからは、アンモニアの情報を考慮することで、アセトンの情報について取得することができる。更に、その後に発生するエコーパルスは、吸湿膜51の情報もあるが、複数の膜を透過するためにそれぞれの膜の情報も含んでおり、複数のパルス波形から各膜内の情報を演算で求めるようにできる。これらの演算は、デコンボリューションやウェーブレット変換などを用いた信号処理技術を用いて、S/N比を向上させて行うことができる。
【0059】
ここで、皮膚から発生するアンモニアに関しては癌、肝硬変、ピロリ菌、尿毒症などとの関連性、アセトンに関しては糖尿病、自家中毒症、肥満などとの関連性が指摘されており、本発明の装置及び方法により人の健康状態の診断を行うことができる。しかも、従来の技術のように、気体分子を吸引したり吸着したりしてから一定時間経過後に測定するステップを経ることなく、発生する気体分子を捕獲膜に捕集させながら随時その情報を取得でき、被験者の苦痛を伴うことなく高速に情報を検出することができる。
【0060】
気体分子は上記のものに限るものではなく、病気に関連する気体分子などを、検出すべき対象とすることができる。例えば、メタン、エタン、エチレン、アルデヒド、エタノール、一酸化窒素なども皮膚から発生しており、一酸化窒素は血圧等の循環器病疾患との相関が見られている。その他の点は、図1(a)と図2を用いて説明した前記実施形態と同様である。
【0061】
(第2の実施例)
本実施例は、テラヘルツパルスを用いた広帯域スペクトル分析を行った第1の実施例の変形例である。特定分子による特定周波数での吸収量等が測定できればよい場合に、単一周波数の発振器を発生手段ないし光源とすることができる。
【0062】
本実施例では、図1(a)の発生部8は、半導体レーザ、量子カスケードレーザ、共鳴トンネルダイオード発振器などの電流注入型の発振器を用いた。半導体レーザでは近赤外の0.7μm以上2μm以下の周波数帯域の電磁波を発生させることができる。また、量子カスケードレーザは凡そ1THz以上150THz以下の範囲、共鳴トンネルダイオードは0.1THz以上1THz以下の範囲を断片的にではあるがカバーすることができる。検出したい気体分子の特性スペクトルに合わせて、1つ若しくは複数の素子を発生装置として使用し、捕集部の捕獲膜に照射する。捕獲膜として近赤外光の場合には散乱を避けるために微細構造をもつフィルターとする必要があるが、ポリテトラフルオロエチレン膜(細孔径:0.1μm)やポリカーボネート膜(細孔径:0.05μm、0.1μm)などを用いて対応可能である。テラヘルツ発生手段としては、単一キャリアホトダイオードに2つのレーザダイオードからの光を照射してこれら2つのレーザの差周波に相当するテラヘルツ波を発生させるものや、ジョセフソン素子、ガスレーザなども使用可能である。その反射波を、ボロメータ、パイロ素子、ショットキーバリアダイオード、量子効果素子(QWIP)などのテラヘルツ検出装置10で検出した。近赤外光の場合には光通信などに用いられるpinホトダイオード、アバランシェホトダイオード、MSM型検出器などを用いることかできる。
【0063】
テラヘルツ発生装置の発振周波数を変化させながら測定する場合には、制御部あるいは処理部9で可変制御しながらそのときのテラヘルツ検出装置10の検出信号を取得する構成が可能である。この場合、数10GHz幅など特定範囲のスペクトル情報としてデータ処理して、気体分子の情報を取得することができる。
【0064】
このような狭い周波数範囲の光源を用いる場合には、導波路として狭帯域のテラヘルツファイバーを用いることができる。例えば、ポリビニリデンフロライド(PBDF)製のポーラスファイバーを用いることができる。導波路の材料としては、テフロン(登録商標)、ポリオレフィン、ポリエチレン、PMMAなどのテラヘルツ波での損失の少ないものであればよく、構造としてはフォトニック結晶ファイバーなどでもよい。また、広帯域な中空ファイバーを用いても良いし、通信波長帯では汎用の石英もしくはプラスティック光ファイバーを用いることができる。
【0065】
本実施例では、検出信号の特定周波数での変化を高感度で検出し、予め吸収スペクトルが既知の気体分子の場合に、その微量の検出が可能となる。また、電流注入型のテラヘルツ発生器を用いれば、装置全体を第1の実施例の場合より更に小型にすることができる。
【0066】
(第3の実施例)
これまでの実施例では、捕獲膜から反射するテラヘルツ波のみを信号成分として検出していた。第3の実施例は、捕獲膜で反射しきれずに透過したテラヘルツ波も有効に活用しようというものである。テラヘルツ波はメタルワイヤを用いたメッシュによって反射させることができる。そこで、図4(b)に示すように、捕獲膜63と捕集容器60の気体分子取り込み口61との間にメタルメッシュミラー62を挿入すれば、捕獲膜63を透過したテラヘルツ波を反射して再び捕獲膜63を通過させて検出器で検出することができる。
【0067】
この場合、テラヘルツ波がパルスの場合には、図3(a)のようなエコーパルス列が33以降も複数続くが(不図示)、メタルメッシュ62の位置により、時間位置から、捕獲膜63からの情報を含むパルスを複数検出して積算するなどして感度を向上することができる。
【0068】
メタルメッシュミラー62としては、例えばタングステンワイヤーで250μmの正方メッシュであれば0.8THz以上でほぼ100%の反射率となり、テラヘルツ波と捕獲膜63の相互作用長を向上させることができる。開口部を持つメタルメッシュであれば、捕獲したい気体分子は透過して捕獲膜63に吸着させることができる。若干の気体分子がメタルメッシュに付着する場合もあるが、コーティングをしたり、加熱できるような手段を設けたりしてメタルメッシュへの気体分子の付着を防ぐ機構を入れてもよい。なお、テラヘルツ波が偏光していれば、ワイヤーグリッドを用いて反射ミラーを構成してもよい。
【0069】
もう1つのメタルメッシュミラー65をテラヘルツ導波路64側の点線部分にも装着して共振器を構成してもよい。導波路64側のミラー65は、反射率をメタルメッシュ62よりは小さく設定して検出器側の信号量を増加させるとよい。このミラー65からの反射パルスを、デコンボリューションなどの信号処理を行う場合のリファレンス波形としてもよい。また、(開口部)のあるメッシュでなくて、気体分子が上方に漏れないように穴のないミラー、例えばナノメートルオーダーで金コーティングした樹脂基板や誘電体多層膜ミラーなどをミラー65に適用して、捕集容器60内の気密性を向上させることもできる。
【0070】
この場合、メタルメッシュ62とミラー65で構成される共振器長が1.5mmであれば、テラヘルツ波が往復する時間は2×1.5mm/3×10m=10psec(捕獲膜63の屈折率を1と仮定)である。これより、テラヘルツパルスのパルス幅が300fsecの場合に10psec毎にパルスが観測されることになる。実際には、捕獲膜63の屈折率が1以上のためにその厚さに応じて往復時間が大きくなるとともに、捕獲膜63の表裏の反射パルスがミラー62,65面からの反射パルスの中間の位置に観測される。検出された複数のパルスから、例えば前述と同様に積算することで、捕獲膜63に吸着された気体分子の情報を高感度で検出することができる。
【0071】
なお、捕獲膜63とメタルミラー62、65とを離して配置しても良いし、密着させて配置してもよい。
【0072】
更に、本実施例では、捕集容器60内を他の気体分子でパージさせる機構を備えてもよい。具体的には、バルブ付きの気体を導入あるいは排出するための第1の流路66と第2の流路67を用いる。これにより、捕集容器60を所定の位置に配置したのちに残留気体を置換するために窒素などを導入することができる。または、捕集容器60内の減圧を行ってもよい。このような窒素導入や減圧による捕集容器60内の置換により、検出したい分子の検出感度を高めることができる。窒素パージや減圧によって、メタルメッシュミラー62に付着した不要物質を除去する効果を持たせることも可能である。
【0073】
(第4の実施例)
本発明による第4の実施例は、図5(a)の変形例である。本実施例では、図5(c)のように、中空のテラヘルツ波導波路90内部に捕獲膜92,93を装着し、第3の実施例で述べたようなミラー対94,95で共振器を形成して捕獲膜92,93を透過させたテラヘルツ波を検出する。ただし、検出する気体分子が十分濃度の高い場合などは共振器を作製しなくてもよい。
【0074】
気体分子の取り込み口91は、導波路90の一部をくり抜いて形成され、取り込み口91を介して導波路90内に気体分子が導入できるようになっている。ミラー94,95は、固体ミラーで気体分子が透過できないもので構成すれば、共振器内の機密性を保った捕集容器とすることができる。ミラー94,95は、メタルメッシュで目の細かいもので構成してもよい。
【0075】
全体の測定装置構成や方法については、これまで述べてきた実施形態や実施例と同様である。導波路90が曲げ易いファイバーであれば、図5(b)に示したように、気体分子発生部位に巻きつけることで計測してもよい。
【0076】
なお、共振器の長さと取り込み口91の長さが一致させる必要はない。また、反射ミラー94,95と捕獲膜92,93は密着させてもよい。その場合、捕集容器の気密性を確保しつつテラヘルツ波を透過させる樹脂膜などで隔壁を構成することもできる。
【0077】
本実施例では、捕集容器、捕獲膜92,93を導波路90内部に収める(すなわち、導波路90の一部を用いて捕集部を構成する)ことにより、より小型の検出装置を提供することができる。
【0078】
(第5の実施例)
本実施例は、テラヘルツ波の分光システムである実施例1の変形例である。本実施例は、図1(b)のように、手首から先を収容するものに拡張した捕集部を用いたものである。手首と捕集容器101の接触面100は、外部から環境大気が捕集容器101の内部に大量に流入しないように密閉されている。なお、捕集容器101の材質や形状に特に制限はない。捕集容器101の内壁面としては、テフロン(登録商標)のようなフッ素化合物やステンレスやアルミニウムのような金属で覆われていても構わない。
【0079】
また、外部から捕集容器101に窒素ガス等のキャリアガスを注入するための注入口と、排出するための排出口を設けても構わない(例えば、図4(b)の気体の流路66と67)。これにより、気体を捕集する時における捕集容器101の内壁面への水分の付着や結露を防ぐことができる。本実施例の捕集容器101を用いた場合には、より広い部位よりガスを収集することで分析の精度や種類などを向上させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 気体を供給する部位
2 捕集容器
3 捕獲膜
5 導波路
6 テラヘルツ波
8 発生部
9 制御部あるいは処理部
10 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波もしくは赤外光を用いて気体を分析するための分析装置であって、
テラヘルツ波もしくは赤外光を発生させる発生部と、
気体を捕獲する捕獲膜を含み、該捕獲膜に捕獲された気体と前記発生部から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光とが相互作用するように該捕獲膜を配置可能な捕獲部と、
前記相互作用したテラヘルツ波もしくは赤外光を検出する検出部と、を備え、
前記捕獲部は、前記気体を供給する部位に接触可能な構造体を含み、
前記構造体は、前記捕獲膜と前記部位とを非接触状態として維持するように設けられることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
複数の前記捕獲膜それぞれにより、複数の前記気体を選択的に捕獲するように構成することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記捕獲膜は、撥水機能を持つ多孔質材料、あるいは水蒸気を捕獲する吸湿材を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記構造体は、前記捕獲膜に捕獲される気体を集める空間を、該捕獲膜と前記部位との間に形成可能に構成され、
前記発生部から発生したテラヘルツ波は、前記空間の外部を伝搬することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記発生部から発生したテラヘルツ波もしくは赤外光を伝搬させる導波路を備え、
前記捕獲膜は、前記導波路を伝搬するテラヘルツ波もしくは赤外光の電場の及ぶ領域に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記伝搬するテラヘルツ波もしくは赤外光を反射させる反射部を含み、
前記反射部は、前記伝搬するテラヘルツ波もしくは赤外光が前記捕獲膜を複数回経て伝搬するように配置されることを特徴とする請求項4あるいは5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記構造体に設けられ、該構造体の外部から気体を導入するための第1の流路と、
前記第1の流路を用いて導入された気体により、前記構造体と前記部位との間に集まる気体を排出する第2の流路と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169658(P2010−169658A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265226(P2009−265226)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】