分波器
【課題】設計を複雑化することなく減衰帯域の減衰量を満たしつつ分波器を構成する高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部の急峻性を高める。
【解決手段】共通端子に接続された異なる中心周波数を有する2つのSAWフィルタを含む分波器で、高域側フィルタが、複数のSAW共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含み、このラダー型回路部に含まれる少なくとも1つの並列腕共振器は、高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振及び反共振周波数が共に高く、且つ共振周波数が高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍にある。前記少なくとも1つの並列腕共振器は、共振抵抗を他の並列腕共振器の共振抵抗の3〜24倍とし、共通端子から遠い最終段位置に配することが好ましい。
【解決手段】共通端子に接続された異なる中心周波数を有する2つのSAWフィルタを含む分波器で、高域側フィルタが、複数のSAW共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含み、このラダー型回路部に含まれる少なくとも1つの並列腕共振器は、高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振及び反共振周波数が共に高く、且つ共振周波数が高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍にある。前記少なくとも1つの並列腕共振器は、共振抵抗を他の並列腕共振器の共振抵抗の3〜24倍とし、共通端子から遠い最終段位置に配することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分波器に係り、特に送受信用フィルタに弾性表面波フィルタを用いた分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの移動体通信機器では、小型かつ高機能化に適する点から、弾性表面波(Surface Acoustic Wave/以下、SAWという)フィルタを用いた分波器が近年広く使用されており、そのフィルタ構成として、所望の特性を得るために例えば多重結合型回路やラダー回路、もしくはこれらを混合した回路が用いられている。
【0003】
一方、近年の携帯電話機の高機能・高性能化の進展に伴い、通信システムによっては分波器を構成するフィルタ特性に関し、例えば通過帯域及び減衰帯域における各挿入損失量、減衰量(要求値/後述の図4符号110,112参照)に加えて通過帯域と減衰帯域間の遷移帯域(特に高域側フィルタの通過帯域と、当該高域側フィルタの低域側の減衰帯域との間)についても所定の減衰量(同図符号111参照)が求められることがあり、このような挿入損失量・減衰量(要求値)を満足させるには高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部の急峻性を高めて特性改善を図る必要がある。
【0004】
またこのようなSAWフィルタを開示するものとして下記特許文献1〜3があり、これら文献記載の発明では、多重結合型回路に並列もしくは直列にノッチフィルタを設けることによって通過帯域の低域側近傍の減衰特性を改善している。
【0005】
【特許文献1】特開平8−65095号公報
【特許文献2】特開平8−65096号公報
【特許文献3】特開平8−65097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記文献記載の方法では、ノッチフィルタを付加することによって遷移帯域の減衰を得ることは出来るものの、通過帯域における挿入損失は現状を維持するに留まり、これを改善することは出来ない。
【0007】
しかも通信システム(使用周波数帯)によっては送受信の遷移帯域は広いが比帯域幅が狭く且つ通過帯域の規格と遷移帯域の規格が非常に近接している場合があり、このような通信システムにおいてノッチフィルタを設ける上記文献記載の手法を適用すると、遷移帯域の減衰と通過帯域の挿入損失がトレードオフの関係にあるために通過帯域の挿入損失大きくなりフィルタ特性が劣化する問題が生じる。
【0008】
一方、結合係数の小さい基板を使用すれば、通過帯域のエッジ部の急峻性をある程度改善することは可能である。ところが、このような手法によると、通過帯域の近傍では比較的大きな減衰が得られるものの、通過帯域から離れるに従い所望の減衰が得られず、特に遷移帯域が広い場合には減衰帯域の減衰量が満たせなくことがあるうえ、フィルタ設計も非常に難しくなる。
【0009】
また、共振器自体のQ値(クオリティーファクター Q=fr/Δf fr:共振周波数、Δf:共振特性の半値幅)を改善することによっても本課題を解決できる場合があるが、その際、所望のQ値を得るために例えば、圧電体自体の物性改善、IDT(Interdigital Transducer/交差指状電極)構造の変更、IDTの物性改善等、さまざまな改善を要求されるため容易ではない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、フィルタ設計を複雑化することなくまた減衰帯域の減衰量を満足させつつ分波器を構成する高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部についてその急峻性を高めて特性を改善する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る分波器は、共通端子に並列に接続された異なる帯域中心周波数を有する2つの弾性表面波フィルタを備えた分波器であって、前記2つの弾性表面波フィルタのうちの高域側のフィルタが、複数の弾性表面波共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含み、当該ラダー型回路部に含まれる少なくとも1つの並列腕共振器は、当該高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振周波数および反共振周波数が共に高く、且つ共振周波数が当該高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍にある。
【0012】
本発明の分波器では、送信用および受信用の各フィルタとしてSAW(弾性表面波)フィルタを備えるが、高域側のフィルタ(中心周波数が高い高域側フィルタが送信側フィルタで中心周波数が低い低域側フィルタが受信側フィルタであっても、逆に中心周波数が高い高域側フィルタが受信側フィルタで中心周波数が低い低域側フィルタが送信側フィルタであってもどちらでも良い)が複数のSAW共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含む。そして、このラダー型回路部を構成する1以上の並列腕共振器について、高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振周波数および反共振周波数が共に高くなるように、且つ高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍に共振周波数が位置するように設定を行う。
【0013】
このような設定を上記ラダー型回路部を構成する1以上の並列腕共振器について行えば、分波器を構成する高域側フィルタについて、減衰帯域における減衰特性を殆ど劣化させることなく、通過帯域の低域側肩部についてその急峻性を高めることが可能となる。尚、この点については、後の実施形態の説明において図面を参照しつつ詳しく述べる。また、上記高域側フィルタは、複数の弾性表面波共振器の総てをラダー型に接続したラダー型フィルタであっても良いし、そのうちの一部をラダー型に接続した(ラダー型回路部を含む)ものであっても良い。
【0014】
上記高域側フィルタの並列腕共振器について共振周波数および反共振周波数を高くする具体的な方法としては、例えば当該共振器を構成するIDTの交差指のピッチを狭くすれば良い。
【0015】
また、かかる特性改善の効果をより良好に得るため、ラダー型回路部を構成する上記少なくとも1つの並列腕共振器について、その共振抵抗を上記他の並列腕共振器の共振抵抗より大きくなるように設定することが望ましく、特に上記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が、上記他の並列腕共振器の共振抵抗の3倍から24倍の大きさとすることが好ましい。上記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が上記他の並列腕共振器の共振抵抗の3倍未満であれば、高域側フィルタの通過帯域の低域側肩部の急峻性が劣化する一方、24倍より大きくすると当該高域側フィルタの減衰特性が劣化するからである。したがって、このような3倍から24倍の範囲内に上記共振抵抗を設定することが望ましい。
【0016】
共振抵抗を高くする具体的方法としては、例えば当該共振器を構成するIDTの交差長を小さくしても良いし、交差指の対数を減らすことによっても行うことが出来る。
【0017】
さらに、ラダー型回路部を構成する上記少なくとも1つの並列腕共振器は、共通端子から離れた(例えば最も遠い)最終段位置に接続された並列腕共振器であることが好ましい。
【0018】
上記少なくとも1つの並列腕共振器は、他の共振器に較べてインピーダンスを高いため、これを共通端子側に設けると共通端子側の入力インピーダンスが高くなり、低域側フィルタの特性に影響を及ぼすとともに、分波器全体の設計が複雑化するからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る分波器構造によれば、フィルタ設計を複雑化することなくまた減衰帯域の減衰量を満足させつつ分波器を構成する高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部についてその急峻性を高めて特性を改善することが出来る。
【0020】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る分波器を示すものである。同図に示すようにこの分波器は、送信側フィルタ11として中心周波数f1を有するSAWフィルタと、受信側フィルタ12として送信側フィルタの中心周波数f1より大きな中心周波数f2(f2>f1)を有するSAWフィルタとを有するもので、送信側フィルタ11は、この実施形態ではラダー型に4段に亘って接続した直列腕共振器41〜43と並列腕共振器51,52とを有する一方、受信側フィルタ12は、この実施形態ではラダー型に6段に亘って接続した直列腕共振器21〜23と並列腕共振器31〜34とを有する。
【0022】
送信側フィルタ11は、アンテナに接続される共通端子Cと、送信信号が入力される送信端子Tとの間に接続し、受信側フィルタ12は、前記共通端子Cと、受信信号が出力される受信端子Rとの間に接続してある。また、共通端子Cと受信側フィルタ12との間にはインピーダンス整合回路として位相線路1を挿入してある。
【0023】
また、共通端子Cから見たときの最終段(この例では第6段)の並列腕共振器34について、その共振周波数と反共振周波数を共に受信側フィルタ12を構成する他の並列腕共振器31〜33より高く、且つ当該他の並列腕共振器31〜33のインピーダンスと当該受信側フィルタ12に含まれる直列腕共振器21〜23のインピーダンスの大小が逆転する周波数の近傍にその共振周波数が位置するよう設定する。
【0024】
すなわち、図2は本実施形態と同様にラダー型フィルタによって従来の分波器を構成した場合の共振器の周波数特性を示す線図であり、図中符号Lsが直列腕共振器、Lp1が第1段から第5段までの並列腕共振器、Lp2が最終段(第6段)の並列腕共振器の周波数特性をそれぞれ示している。一方、図3は本実施形態において受信側フィルタを構成する各共振器の周波数特性を示すものであり、図中符号Lsは図2と同様に直列腕共振器を、Lp1は第1段から第5段までの並列腕共振器を、Lp2は最終段の並列腕共振器の周波数特性をそれぞれ示している。
【0025】
これらの図に示すように従来の分波器では、最終段の並列腕共振器と他の並列腕共振器とで共振および反共振周波数は共に略等しいのに対し、本実施形態では、受信側フィルタの上記最終段(第6段)の並列腕共振器の共振点P21における周波数(共振周波数)および反共振点P22における周波数(反共振周波数)をそれぞれ、受信側フィルタを構成する他の(第1〜5段の)並列腕共振器の共振点P11における周波数および反共振点P12における周波数より高く設定し、且つ他の並列腕共振器のインピーダンスと直列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する点Xの周波数付近に最終段の並列腕共振器の共振点P21(共振周波数)が位置するようにする。さらに、最終段の並列腕共振器の共振点P21における共振抵抗が、他の並列腕共振器の共振点における共振抵抗の3倍から24倍の大きさになるようにする。
【0026】
尚、上記共振周波数および反共振周波数を高くするには、既に述べたように、例えば共振器を構成するIDTの交差指のピッチを狭くすることにより行うことが出来る。また、共振抵抗を高くするには、例えばIDTの交差長を小さくし、あるいは交差指の対数を減らす等の方法によれば良い。
【0027】
図4は上記従来および本実施形態の各分波器(フィルタ全体として)の周波数特性を示すものであり、図5は受信側フィルタの通過帯域を拡大して示すものである。これらの図において破線100は上記従来の分波器の受信側フィルタを、実線101は本実施形態に係る分波器の受信側フィルタを、一点差線102は本実施形態に係る分波器の送信側フィルタをそれぞれ示し、例えば、符号110は受信側(高域側)フィルタの通過帯域に対する挿入損失量を、112は同フィルタの減衰帯域に対する減衰量を、111は同フィルタの遷移帯域に対する減衰量をそれぞれ示している。なお、上記の挿入損失量、減衰量は要求値に対する一例であり、本発明を限定する限りではない。
【0028】
これらの図に示すように(特に図5の拡大図参照)、従来の分波器に較べて本実施形態の分波器(101)は、受信側フィルタの通過帯域の低域側肩部の急峻性が向上され(肩部101aが張り出し且つ傾斜が急になっている)、通過帯域の挿入損失量110と遷移帯域の減衰量111とを同時に、より良好に(実際の使用にあたっては例えば温度変化等により通過帯域が高域側あるいは低域側にシフトすることがあるがこのような場合にも)満足させることが可能となる。また、減衰帯域についても従来の分波器と同等の特性が得られ、減衰帯域における減衰量112を満たすことが可能である。
【0029】
さらに、図6は本実施形態の分波器において上記受信側フィルタの最終段の並列腕共振器34の共振抵抗を変えた場合の周波数特性を示すものであり、図7は当該受信側フィルタの通過帯域を拡大して示すものである。これらの図において破線100は上記従来の分波器の受信側フィルタの特性を示し、また上記実施形態で最終段の並列腕共振器の共振抵抗をZp2、他の並列腕共振器の共振抵抗をZp1としたときに、細い実線105はZp2をZp1の2.95倍とした場合(Zp2=2.95Zp1)を、太い実線101はZp2をZp1の7.13倍とした場合(Zp2=7.13Zp1)を、細かい破線106はZp2をZp1の24.76倍とした場合(Zp2=24.76Zp1)を、荒い破線100は上記従来の分波器の受信側フィルタをそれぞれ示している。
【0030】
これらの図に示すように(特に図7の拡大図参照)、上記通過帯域の挿入損失量と遷移帯域の減衰量を良好に満たすため、最終段の並列腕共振器の共振抵抗Zp2を他の並列腕共振器の共振抵抗Zp1の約3倍から約24倍の範囲内(3Zp1≦Zp2≦24Zp1)の大きさ(例えばZp2がZp1の5〜10倍程度、もしくは7〜8倍程度)になるよう設定することが望ましい。
【0031】
さらに、図8は上記従来および実施形態に係る各分波器の受信側フィルタの周波数−VSWR(電圧定在波比)特性を示すものである。図中実線121は本実施形態を、破線122は上記従来の分波器の特性をそれぞれ示し、符号125は通過帯域における入力電力の反射に関し要求されるVSWR値の一例を示す。
【0032】
この図に示すように本実施形態によれば、受信側フィルタの通過帯域における入力電力の反射も小さく抑えることが可能となり、要求されるVSWR値もより良好に満足させることが出来る。また遷移帯域(図中通過帯域875〜885MHzの左側)では、従来の分波器より反射量が多くなり、減衰を大きくとることが可能となる。
【0033】
本実施形態の分波器の特徴を纏めて述べれば次のとおりである。
【0034】
本実施形態の分波器では、受信側フィルタの最終段の並列腕共振器の共振及び反共振周波数を上述のように調節することで、フィルタ全体の容量比Cp/Cs(Cp:並列腕共振器の容量,Cs:直列腕共振器の容量)を従来の受信側フィルタと同等にすることができ、これにより前記図4及び図5に示すように通過帯域外の減衰をそのまま維持しながら、通過帯域低周波側の肩部101aを持ち上げ且つ傾斜を改善し、結果として挿入損失並びに遷移帯域の減衰を改善することが可能となる。
【0035】
かかる改善効果が得られる理由は、上記最終段の並列腕共振器を本発明に特有の構造(共振周波数及び反共振周波数)とすることで、当該並列腕共振器の共振周波数が遷移帯域内に位置することから受信側フィルタの遷移帯域内にノッチが形成され、これに加えさらに、図8に示すように受信側フィルタの通過帯域内における入力インピーダンスが従来のフィルタに較べ整合が取れやすく、挿入損失が低減されることによる。
【0036】
また、図6及び図7に示すようにフィルタ全体の容量比Cp/Csを維持しつつ、上記最終段の並列腕共振器の共振抵抗を変えることで、遷移帯域の減衰と挿入損失を調節することが可能となる。このとき、遷移帯域の減衰と挿入損失は互いにトレードオフの関係にあるので、従来のフィルタ以上の特性を実現するため、上記最終段の並列腕共振器の共振抵抗Zp2を他の並列腕共振器の共振抵抗Zp1より大きくする。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0038】
例えば、各フィルタないしラダー型回路部における直列腕および並列腕の各共振器の接続数は、上記実施形態以外にも様々な接続数とすることが出来る。また、上記実施形態では送信側及び受信側の各フィルタを構成する共振器を総てラダー型に接続したが、例えば図9に示すように受信側フィルタ12の一部をラダー型以外の接続構造30(例えばDMS回路又はラティス型回路構成等)とすることも可能である。また送信側フィルタは、一部又は全部がラダー型以外の接続構造であっても良い。
【0039】
また本発明に基づいて共振及び反共振周波数を変更する上記並列腕共振器は、共通端子側から見た最終段に含まれる1つの並列腕共振器に限定されるものではなく、最終段から2段以上に含まれる2以上の並列腕共振器を対象としても良いし、最終段ではない(例えば中間位置の)並列腕共振器に対して本発明を適用しても構わない。また、本発明に基づいて共振及び反共振周波数を変更する上記並列腕共振器の共振抵抗値の範囲は、1つに纏めた共振器の共振抵抗値の範囲で示しており、少なくとも2つ以上に直列もしくは並列に分割することによって共振器の共振抵抗値を下げた場合でも、共振器を1つに纏めた際の共振器の共振抵抗値が本発明で定めた範囲に入っている場合にも該当する。さらに前記各線図において示した周波数の値は、一例として示したものであって、各種通信システムに対応して様々な他の値を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る分波器を示す回路図である。
【図2】従来の分波器における直列腕共振器および並列腕共振器の周波数−インピーダンス特性を示す線図である。
【図3】上記実施形態に係る分波器における直列腕共振器および並列腕共振器の周波数−インピーダンス特性を示す線図である。
【図4】上記従来および実施形態の各分波器の周波数特性を示す線図である。
【図5】上記図4(高域側フィルタの通過帯域の周波数特性)を拡大して示す線図である。
【図6】上記実施形態の分波器において高域側フィルタの並列腕共振器のインピーダンスを変えたときの周波数特性を示す線図である。
【図7】上記図6(高域側フィルタの通過帯域の周波数特性)を拡大して示す線図である。
【図8】上記従来および実施形態の各分波器の周波数−VSWR(電圧定在波比)特性を示す線図である。
【図9】上記実施形態の変形例に係る分波器を示す回路図である。
【符号の説明】
【0041】
1 位相線路(インピーダンス整合回路)
11 送信側フィルタ
12 受信側フィルタ
21,22,23,41,42,43 直列腕共振器
31,32,33,34,51,52 並列腕共振器
30 ラダー型以外の共振器接続構造(DMS回路,ラティス型回路等)
C 共通端子
T 送信信号端子
R 受信信号端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、分波器に係り、特に送受信用フィルタに弾性表面波フィルタを用いた分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの移動体通信機器では、小型かつ高機能化に適する点から、弾性表面波(Surface Acoustic Wave/以下、SAWという)フィルタを用いた分波器が近年広く使用されており、そのフィルタ構成として、所望の特性を得るために例えば多重結合型回路やラダー回路、もしくはこれらを混合した回路が用いられている。
【0003】
一方、近年の携帯電話機の高機能・高性能化の進展に伴い、通信システムによっては分波器を構成するフィルタ特性に関し、例えば通過帯域及び減衰帯域における各挿入損失量、減衰量(要求値/後述の図4符号110,112参照)に加えて通過帯域と減衰帯域間の遷移帯域(特に高域側フィルタの通過帯域と、当該高域側フィルタの低域側の減衰帯域との間)についても所定の減衰量(同図符号111参照)が求められることがあり、このような挿入損失量・減衰量(要求値)を満足させるには高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部の急峻性を高めて特性改善を図る必要がある。
【0004】
またこのようなSAWフィルタを開示するものとして下記特許文献1〜3があり、これら文献記載の発明では、多重結合型回路に並列もしくは直列にノッチフィルタを設けることによって通過帯域の低域側近傍の減衰特性を改善している。
【0005】
【特許文献1】特開平8−65095号公報
【特許文献2】特開平8−65096号公報
【特許文献3】特開平8−65097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記文献記載の方法では、ノッチフィルタを付加することによって遷移帯域の減衰を得ることは出来るものの、通過帯域における挿入損失は現状を維持するに留まり、これを改善することは出来ない。
【0007】
しかも通信システム(使用周波数帯)によっては送受信の遷移帯域は広いが比帯域幅が狭く且つ通過帯域の規格と遷移帯域の規格が非常に近接している場合があり、このような通信システムにおいてノッチフィルタを設ける上記文献記載の手法を適用すると、遷移帯域の減衰と通過帯域の挿入損失がトレードオフの関係にあるために通過帯域の挿入損失大きくなりフィルタ特性が劣化する問題が生じる。
【0008】
一方、結合係数の小さい基板を使用すれば、通過帯域のエッジ部の急峻性をある程度改善することは可能である。ところが、このような手法によると、通過帯域の近傍では比較的大きな減衰が得られるものの、通過帯域から離れるに従い所望の減衰が得られず、特に遷移帯域が広い場合には減衰帯域の減衰量が満たせなくことがあるうえ、フィルタ設計も非常に難しくなる。
【0009】
また、共振器自体のQ値(クオリティーファクター Q=fr/Δf fr:共振周波数、Δf:共振特性の半値幅)を改善することによっても本課題を解決できる場合があるが、その際、所望のQ値を得るために例えば、圧電体自体の物性改善、IDT(Interdigital Transducer/交差指状電極)構造の変更、IDTの物性改善等、さまざまな改善を要求されるため容易ではない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、フィルタ設計を複雑化することなくまた減衰帯域の減衰量を満足させつつ分波器を構成する高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部についてその急峻性を高めて特性を改善する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る分波器は、共通端子に並列に接続された異なる帯域中心周波数を有する2つの弾性表面波フィルタを備えた分波器であって、前記2つの弾性表面波フィルタのうちの高域側のフィルタが、複数の弾性表面波共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含み、当該ラダー型回路部に含まれる少なくとも1つの並列腕共振器は、当該高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振周波数および反共振周波数が共に高く、且つ共振周波数が当該高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍にある。
【0012】
本発明の分波器では、送信用および受信用の各フィルタとしてSAW(弾性表面波)フィルタを備えるが、高域側のフィルタ(中心周波数が高い高域側フィルタが送信側フィルタで中心周波数が低い低域側フィルタが受信側フィルタであっても、逆に中心周波数が高い高域側フィルタが受信側フィルタで中心周波数が低い低域側フィルタが送信側フィルタであってもどちらでも良い)が複数のSAW共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含む。そして、このラダー型回路部を構成する1以上の並列腕共振器について、高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振周波数および反共振周波数が共に高くなるように、且つ高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍に共振周波数が位置するように設定を行う。
【0013】
このような設定を上記ラダー型回路部を構成する1以上の並列腕共振器について行えば、分波器を構成する高域側フィルタについて、減衰帯域における減衰特性を殆ど劣化させることなく、通過帯域の低域側肩部についてその急峻性を高めることが可能となる。尚、この点については、後の実施形態の説明において図面を参照しつつ詳しく述べる。また、上記高域側フィルタは、複数の弾性表面波共振器の総てをラダー型に接続したラダー型フィルタであっても良いし、そのうちの一部をラダー型に接続した(ラダー型回路部を含む)ものであっても良い。
【0014】
上記高域側フィルタの並列腕共振器について共振周波数および反共振周波数を高くする具体的な方法としては、例えば当該共振器を構成するIDTの交差指のピッチを狭くすれば良い。
【0015】
また、かかる特性改善の効果をより良好に得るため、ラダー型回路部を構成する上記少なくとも1つの並列腕共振器について、その共振抵抗を上記他の並列腕共振器の共振抵抗より大きくなるように設定することが望ましく、特に上記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が、上記他の並列腕共振器の共振抵抗の3倍から24倍の大きさとすることが好ましい。上記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が上記他の並列腕共振器の共振抵抗の3倍未満であれば、高域側フィルタの通過帯域の低域側肩部の急峻性が劣化する一方、24倍より大きくすると当該高域側フィルタの減衰特性が劣化するからである。したがって、このような3倍から24倍の範囲内に上記共振抵抗を設定することが望ましい。
【0016】
共振抵抗を高くする具体的方法としては、例えば当該共振器を構成するIDTの交差長を小さくしても良いし、交差指の対数を減らすことによっても行うことが出来る。
【0017】
さらに、ラダー型回路部を構成する上記少なくとも1つの並列腕共振器は、共通端子から離れた(例えば最も遠い)最終段位置に接続された並列腕共振器であることが好ましい。
【0018】
上記少なくとも1つの並列腕共振器は、他の共振器に較べてインピーダンスを高いため、これを共通端子側に設けると共通端子側の入力インピーダンスが高くなり、低域側フィルタの特性に影響を及ぼすとともに、分波器全体の設計が複雑化するからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る分波器構造によれば、フィルタ設計を複雑化することなくまた減衰帯域の減衰量を満足させつつ分波器を構成する高域側フィルタについて、通過帯域の低域側肩部についてその急峻性を高めて特性を改善することが出来る。
【0020】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る分波器を示すものである。同図に示すようにこの分波器は、送信側フィルタ11として中心周波数f1を有するSAWフィルタと、受信側フィルタ12として送信側フィルタの中心周波数f1より大きな中心周波数f2(f2>f1)を有するSAWフィルタとを有するもので、送信側フィルタ11は、この実施形態ではラダー型に4段に亘って接続した直列腕共振器41〜43と並列腕共振器51,52とを有する一方、受信側フィルタ12は、この実施形態ではラダー型に6段に亘って接続した直列腕共振器21〜23と並列腕共振器31〜34とを有する。
【0022】
送信側フィルタ11は、アンテナに接続される共通端子Cと、送信信号が入力される送信端子Tとの間に接続し、受信側フィルタ12は、前記共通端子Cと、受信信号が出力される受信端子Rとの間に接続してある。また、共通端子Cと受信側フィルタ12との間にはインピーダンス整合回路として位相線路1を挿入してある。
【0023】
また、共通端子Cから見たときの最終段(この例では第6段)の並列腕共振器34について、その共振周波数と反共振周波数を共に受信側フィルタ12を構成する他の並列腕共振器31〜33より高く、且つ当該他の並列腕共振器31〜33のインピーダンスと当該受信側フィルタ12に含まれる直列腕共振器21〜23のインピーダンスの大小が逆転する周波数の近傍にその共振周波数が位置するよう設定する。
【0024】
すなわち、図2は本実施形態と同様にラダー型フィルタによって従来の分波器を構成した場合の共振器の周波数特性を示す線図であり、図中符号Lsが直列腕共振器、Lp1が第1段から第5段までの並列腕共振器、Lp2が最終段(第6段)の並列腕共振器の周波数特性をそれぞれ示している。一方、図3は本実施形態において受信側フィルタを構成する各共振器の周波数特性を示すものであり、図中符号Lsは図2と同様に直列腕共振器を、Lp1は第1段から第5段までの並列腕共振器を、Lp2は最終段の並列腕共振器の周波数特性をそれぞれ示している。
【0025】
これらの図に示すように従来の分波器では、最終段の並列腕共振器と他の並列腕共振器とで共振および反共振周波数は共に略等しいのに対し、本実施形態では、受信側フィルタの上記最終段(第6段)の並列腕共振器の共振点P21における周波数(共振周波数)および反共振点P22における周波数(反共振周波数)をそれぞれ、受信側フィルタを構成する他の(第1〜5段の)並列腕共振器の共振点P11における周波数および反共振点P12における周波数より高く設定し、且つ他の並列腕共振器のインピーダンスと直列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する点Xの周波数付近に最終段の並列腕共振器の共振点P21(共振周波数)が位置するようにする。さらに、最終段の並列腕共振器の共振点P21における共振抵抗が、他の並列腕共振器の共振点における共振抵抗の3倍から24倍の大きさになるようにする。
【0026】
尚、上記共振周波数および反共振周波数を高くするには、既に述べたように、例えば共振器を構成するIDTの交差指のピッチを狭くすることにより行うことが出来る。また、共振抵抗を高くするには、例えばIDTの交差長を小さくし、あるいは交差指の対数を減らす等の方法によれば良い。
【0027】
図4は上記従来および本実施形態の各分波器(フィルタ全体として)の周波数特性を示すものであり、図5は受信側フィルタの通過帯域を拡大して示すものである。これらの図において破線100は上記従来の分波器の受信側フィルタを、実線101は本実施形態に係る分波器の受信側フィルタを、一点差線102は本実施形態に係る分波器の送信側フィルタをそれぞれ示し、例えば、符号110は受信側(高域側)フィルタの通過帯域に対する挿入損失量を、112は同フィルタの減衰帯域に対する減衰量を、111は同フィルタの遷移帯域に対する減衰量をそれぞれ示している。なお、上記の挿入損失量、減衰量は要求値に対する一例であり、本発明を限定する限りではない。
【0028】
これらの図に示すように(特に図5の拡大図参照)、従来の分波器に較べて本実施形態の分波器(101)は、受信側フィルタの通過帯域の低域側肩部の急峻性が向上され(肩部101aが張り出し且つ傾斜が急になっている)、通過帯域の挿入損失量110と遷移帯域の減衰量111とを同時に、より良好に(実際の使用にあたっては例えば温度変化等により通過帯域が高域側あるいは低域側にシフトすることがあるがこのような場合にも)満足させることが可能となる。また、減衰帯域についても従来の分波器と同等の特性が得られ、減衰帯域における減衰量112を満たすことが可能である。
【0029】
さらに、図6は本実施形態の分波器において上記受信側フィルタの最終段の並列腕共振器34の共振抵抗を変えた場合の周波数特性を示すものであり、図7は当該受信側フィルタの通過帯域を拡大して示すものである。これらの図において破線100は上記従来の分波器の受信側フィルタの特性を示し、また上記実施形態で最終段の並列腕共振器の共振抵抗をZp2、他の並列腕共振器の共振抵抗をZp1としたときに、細い実線105はZp2をZp1の2.95倍とした場合(Zp2=2.95Zp1)を、太い実線101はZp2をZp1の7.13倍とした場合(Zp2=7.13Zp1)を、細かい破線106はZp2をZp1の24.76倍とした場合(Zp2=24.76Zp1)を、荒い破線100は上記従来の分波器の受信側フィルタをそれぞれ示している。
【0030】
これらの図に示すように(特に図7の拡大図参照)、上記通過帯域の挿入損失量と遷移帯域の減衰量を良好に満たすため、最終段の並列腕共振器の共振抵抗Zp2を他の並列腕共振器の共振抵抗Zp1の約3倍から約24倍の範囲内(3Zp1≦Zp2≦24Zp1)の大きさ(例えばZp2がZp1の5〜10倍程度、もしくは7〜8倍程度)になるよう設定することが望ましい。
【0031】
さらに、図8は上記従来および実施形態に係る各分波器の受信側フィルタの周波数−VSWR(電圧定在波比)特性を示すものである。図中実線121は本実施形態を、破線122は上記従来の分波器の特性をそれぞれ示し、符号125は通過帯域における入力電力の反射に関し要求されるVSWR値の一例を示す。
【0032】
この図に示すように本実施形態によれば、受信側フィルタの通過帯域における入力電力の反射も小さく抑えることが可能となり、要求されるVSWR値もより良好に満足させることが出来る。また遷移帯域(図中通過帯域875〜885MHzの左側)では、従来の分波器より反射量が多くなり、減衰を大きくとることが可能となる。
【0033】
本実施形態の分波器の特徴を纏めて述べれば次のとおりである。
【0034】
本実施形態の分波器では、受信側フィルタの最終段の並列腕共振器の共振及び反共振周波数を上述のように調節することで、フィルタ全体の容量比Cp/Cs(Cp:並列腕共振器の容量,Cs:直列腕共振器の容量)を従来の受信側フィルタと同等にすることができ、これにより前記図4及び図5に示すように通過帯域外の減衰をそのまま維持しながら、通過帯域低周波側の肩部101aを持ち上げ且つ傾斜を改善し、結果として挿入損失並びに遷移帯域の減衰を改善することが可能となる。
【0035】
かかる改善効果が得られる理由は、上記最終段の並列腕共振器を本発明に特有の構造(共振周波数及び反共振周波数)とすることで、当該並列腕共振器の共振周波数が遷移帯域内に位置することから受信側フィルタの遷移帯域内にノッチが形成され、これに加えさらに、図8に示すように受信側フィルタの通過帯域内における入力インピーダンスが従来のフィルタに較べ整合が取れやすく、挿入損失が低減されることによる。
【0036】
また、図6及び図7に示すようにフィルタ全体の容量比Cp/Csを維持しつつ、上記最終段の並列腕共振器の共振抵抗を変えることで、遷移帯域の減衰と挿入損失を調節することが可能となる。このとき、遷移帯域の減衰と挿入損失は互いにトレードオフの関係にあるので、従来のフィルタ以上の特性を実現するため、上記最終段の並列腕共振器の共振抵抗Zp2を他の並列腕共振器の共振抵抗Zp1より大きくする。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0038】
例えば、各フィルタないしラダー型回路部における直列腕および並列腕の各共振器の接続数は、上記実施形態以外にも様々な接続数とすることが出来る。また、上記実施形態では送信側及び受信側の各フィルタを構成する共振器を総てラダー型に接続したが、例えば図9に示すように受信側フィルタ12の一部をラダー型以外の接続構造30(例えばDMS回路又はラティス型回路構成等)とすることも可能である。また送信側フィルタは、一部又は全部がラダー型以外の接続構造であっても良い。
【0039】
また本発明に基づいて共振及び反共振周波数を変更する上記並列腕共振器は、共通端子側から見た最終段に含まれる1つの並列腕共振器に限定されるものではなく、最終段から2段以上に含まれる2以上の並列腕共振器を対象としても良いし、最終段ではない(例えば中間位置の)並列腕共振器に対して本発明を適用しても構わない。また、本発明に基づいて共振及び反共振周波数を変更する上記並列腕共振器の共振抵抗値の範囲は、1つに纏めた共振器の共振抵抗値の範囲で示しており、少なくとも2つ以上に直列もしくは並列に分割することによって共振器の共振抵抗値を下げた場合でも、共振器を1つに纏めた際の共振器の共振抵抗値が本発明で定めた範囲に入っている場合にも該当する。さらに前記各線図において示した周波数の値は、一例として示したものであって、各種通信システムに対応して様々な他の値を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る分波器を示す回路図である。
【図2】従来の分波器における直列腕共振器および並列腕共振器の周波数−インピーダンス特性を示す線図である。
【図3】上記実施形態に係る分波器における直列腕共振器および並列腕共振器の周波数−インピーダンス特性を示す線図である。
【図4】上記従来および実施形態の各分波器の周波数特性を示す線図である。
【図5】上記図4(高域側フィルタの通過帯域の周波数特性)を拡大して示す線図である。
【図6】上記実施形態の分波器において高域側フィルタの並列腕共振器のインピーダンスを変えたときの周波数特性を示す線図である。
【図7】上記図6(高域側フィルタの通過帯域の周波数特性)を拡大して示す線図である。
【図8】上記従来および実施形態の各分波器の周波数−VSWR(電圧定在波比)特性を示す線図である。
【図9】上記実施形態の変形例に係る分波器を示す回路図である。
【符号の説明】
【0041】
1 位相線路(インピーダンス整合回路)
11 送信側フィルタ
12 受信側フィルタ
21,22,23,41,42,43 直列腕共振器
31,32,33,34,51,52 並列腕共振器
30 ラダー型以外の共振器接続構造(DMS回路,ラティス型回路等)
C 共通端子
T 送信信号端子
R 受信信号端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子に並列に接続された異なる帯域中心周波数を有する2つの弾性表面波フィルタを備えた分波器であって、
前記2つの弾性表面波フィルタのうちの高域側のフィルタが、複数の弾性表面波共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含み、
当該ラダー型回路部に含まれる少なくとも1つの並列腕共振器は、
当該高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振周波数および反共振周波数が共に高く、且つ共振周波数が当該高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍にあることを特徴とする分波器。
【請求項2】
前記高域側フィルタが、複数の弾性表面波共振器をラダー型に接続したラダー型フィルタである
ことを特徴とする請求項1に記載の分波器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が、前記他の並列腕共振器の共振抵抗より大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の分波器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が、前記他の並列腕共振器の共振抵抗の3倍から24倍の大きさである
ことを特徴とする請求項3に記載の分波器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの並列腕共振器は、前記共通端子から離れた最終段位置に接続された並列腕共振器である
ことを特徴とする請求項3または4に記載の分波器。
【請求項1】
共通端子に並列に接続された異なる帯域中心周波数を有する2つの弾性表面波フィルタを備えた分波器であって、
前記2つの弾性表面波フィルタのうちの高域側のフィルタが、複数の弾性表面波共振器をラダー型に接続したラダー型回路部を少なくとも一部に含み、
当該ラダー型回路部に含まれる少なくとも1つの並列腕共振器は、
当該高域側フィルタに含まれる他の並列腕共振器より共振周波数および反共振周波数が共に高く、且つ共振周波数が当該高域側フィルタに含まれる直列腕共振器のインピーダンスと前記他の並列腕共振器のインピーダンスの大小が逆転する周波数位置近傍にあることを特徴とする分波器。
【請求項2】
前記高域側フィルタが、複数の弾性表面波共振器をラダー型に接続したラダー型フィルタである
ことを特徴とする請求項1に記載の分波器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が、前記他の並列腕共振器の共振抵抗より大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の分波器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの並列腕共振器の共振抵抗が、前記他の並列腕共振器の共振抵抗の3倍から24倍の大きさである
ことを特徴とする請求項3に記載の分波器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの並列腕共振器は、前記共通端子から離れた最終段位置に接続された並列腕共振器である
ことを特徴とする請求項3または4に記載の分波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−279602(P2006−279602A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96461(P2005−96461)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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