説明

分波器

【課題】 小型でアイソレーション特性の良好な分波器を提供する。
【解決手段】 本発明の分波器は、送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22がパッケージ1の表面にフリップチップ実装されるとともに、パッケージ1の裏面に、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221が接続される共通接地パターン12とは分離されて、受信信号出力端子13が設けられてなる分波器であって、パッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221から略等距離の位置に受信信号出力端子13が配置されたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波フィルタを搭載してなる分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴い、携帯電話、携帯型情報端末等の移動体通信機器が急速に普及し、これらの機器の小型・高性能化の要求から、これらに使用される部品についても小型化・高性能化が要求されている。
【0003】
携帯電話においては、アナログとデジタルの2つの方式の無線通信システムが利用されており、使用する周波数も800〜1000MHz帯、1.5〜2.0GHz帯と多岐に亘っている。これらの移動体通信機器では、アンテナを通して送受信される信号の分岐・生成を行うRF部における部品として分波器が用いられる。
【0004】
従来、異なる周波数の通過帯域を持つ2つの弾性表面波フィルタを備えた分波器の一例として、セラミックス基板などからなるパッケージのキャビティ部に弾性表面波フィルタを搭載し、弾性表面波フィルタの電極端子とパッケージの電極パッドとが金などのボンディングワイヤで電気的に接続された構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、別の分波器としては、電極端子上に金などのバンプを形成した弾性表面波フィルタを、IDT電極が形成され弾性表面波が伝播する面を下側にして、セラミック基板などからなるパッケージにフリップチップ実装法により載置固定し、キャップをパッケージに被せて封止したフリップチップ実装構造の分波器が知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−237739号公報
【特許文献2】WO2002/005424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記のような分波器の重要な特性として、送信端子と受信端子とのアイソレーション特性がある。これは、送信周波数帯域において受信端子側に漏洩する信号強度、或いは、受信周波数帯域において送信端子側へ漏洩する信号強度として評価され、これら漏洩信号の強度が所定の水準よりも小さくなければならず、一般には、送信周波数帯域で要求される水準の方が厳しい。
【0007】
アイソレーション特性を改善するには、弾性表面波フィルタの帯域外減衰量を充分に設ける事が不可欠であり、特に要求水準の厳しい受信用弾性表面波フィルタの送信周波数帯域における減衰量を増大させる必要がある。これは、弾性表面波フィルタを構成する共振器の特性によって調整されるとともに、弾性表面波フィルタを搭載するパッケージに形成され、弾性表面波フィルタの接地端子とグランド(共通接地パターン)とを接続する導体パターン(ビア導体)などのインダクタンス成分によって調整される。
【0008】
しかしながら、上記以外にもアイソレーション特性に影響を与える因子がある。
上記のような分波器においては、パッケージの内部または裏面に、電位の基準面としての共通接地パターンが形成されると同時に、この共通接地パターンは信号を安定させることを目的として受信信号出力端子の周囲に設けられる。ここで、分波器の動作状態においては、送信用弾性表面波フィルタ及び受信用弾性表面波フィルタの接地端子に電流が多く流れる為、弾性表面波フィルタの接地端子付近の電位が上がる。これにより、弾性表面波フィルタの接地端子に接続される共通接地パターンは、パッケージの表面に対し垂直な方向から見て弾性表面波フィルタの接地端子の付近を中心として電位の変動が起こる。共通接地パターンの電位が変動した場合、その変動が受信信号出力端子にも伝播してしまい、受信信号出力端子の電位も変動することとなってしまう。受信信号出力端子の電位が変動するということはエネルギーが伝播しているということであるから、このことがアイソレーション特性の劣化に繋がる結果となる。
【0009】
このような共通接地パターンの電位の変動は、入力の信号と比較すると微弱なものであるが、分波器に要求される減衰レベルでは、このような微弱な電位の変動が影響を及ぼしてしまうのである。
【0010】
そこで、パッケージの受信信号出力端子を、弾性表面波フィルタから遠ざけて配置する事で前述の電位変動の影響は軽減できるが、その為にはパッケージの面積を大きくする必要が出てくるため、小型化の要求を満たすことができない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小型でアイソレーション特性の良好な分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、送信用弾性表面波フィルタの接地端子からパッケージの受信信号出力端子までの距離と受信用弾性表面波フィルタの接地端子からパッケージの受信信号出力端子までの距離とが略等距離のとき、アイソレーション特性が良好となることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち本発明は、圧電基板の表面にIDT電極と入力端子と出力端子と接地端子とが形成されてなる送信用弾性表面波フィルタおよび受信用弾性表面波フィルタが、パッケージの表面にフリップチップ実装されるとともに、前記パッケージの裏面に、前記受信用弾性表面波フィルタの前記出力端子に接続された受信信号出力端子が設けられてなる分波器であって、前記パッケージの表面に対し垂直な方向から見て、前記送信用弾性表面波フィルタの接地端子および前記受信用弾性表面波フィルタの接地端子から略等距離の位置に前記受信信号出力端子が配置されたことを特徴とする分波器である。
【0014】
また本発明は、圧電基板の表面にIDT電極と入力端子と出力端子と接地端子とが形成されてなる送信用弾性表面波フィルタおよび受信用弾性表面波フィルタがパッケージの表面に搭載され、前記送信用弾性表面波フィルタの接地端子と該送信用弾性表面波フィルタの接地端子に対応して前記パッケージの表面に設けられた第一の接地パッドとがボンディングワイヤにより接続されるとともに、前記受信用弾性表面波フィルタの接地端子と該受信用弾性表面波フィルタの接地端子に対応して前記パッケージの表面に設けられた第二の接地パッドとがボンディングワイヤにより接続され、前記パッケージの裏面に、前記受信用弾性表面波フィルタの前記出力端子に接続された受信信号出力端子が設けられてなる分波器であって、前記パッケージの表面に対し垂直な方向から見て、前記第一の接地パッドおよび前記第二の接地パッドから略等距離の位置に前記受信信号出力端子が配置されたことを特徴とする分波器である。
【0015】
送信用弾性表面波フィルタおよび受信用弾性表面波フィルタの接地端子付近は電位の変動が激しいが、これらから略等距離の位置は電位の変動が比較的弱い位置となるため、この位置に受信信号出力端子を配置することでアイソレーション特性の劣化を抑制することができる。
【0016】
ここで、前記分波器において、少なくとも前記送信用弾性表面波フィルタの通過周波数帯域内において、前記送信用弾性表面波フィルタの接地端子へ流れる電流と前記受信用弾性表面波フィルタの接地端子へ流れる電流とが略逆位相になる周波数を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、限られた範囲内で、電位の変動の弱い箇所に受信信号出力端子を配置できる為、小型化された構成でありながら、アイソレーション特性の劣化を抑えた分波器を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の分波器の一実施形態を示す説明図であり、図2は図1に示す分波器の平面透視図である。
【0019】
図1に示す分波器は、送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22がパッケージ1の表面にフリップチップ実装されるとともに、パッケージ1の裏面に、受信用弾性表面波フィルタ22の出力端子に接続された受信信号出力端子13が設けられてなる分波器であって、パッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221から略等距離の位置に受信信号出力端子13が配置されたことを特徴とするものである。
【0020】
送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22は、例えばタンタル酸リチウム単結晶、ランガサイト型結晶構造を有するランタン−ガリウム−ニオブ系単結晶、四ホウ酸リチウム単結晶等で形成される圧電基板の表面に、銀、銅等でIDT電極、入力端子、出力端子および接地端子211、221が形成された弾性表面波(SAW)素子である。なお、この実施形態では送信用弾性表面波フィルタ21と受信用弾性表面波フィルタ22とは別体に形成されているが、これらは一体に形成されていてもよい。
【0021】
パッケージ1は、LTCC等の誘電体からなる複数の誘電体層と、表面および内部に位相整合用回路やインダクタンス調整用のパターンとして形成された銀や銅からなる導体パターン(ビア導体)14などで構成される。パッケージ1の表面には、送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22の入力端子および出力端子(図示しない)に対応して入力パッドおよび出力パッド(図示しない)が形成されるとともに、接地端子211に対応して第一の接地パッド111が形成され、接地端子221に対応して第二の接地パッド112が形成されている。またパッケージ1の裏面には、表面の第一の接地パッド111および第二の接地パッド112に導体パターン(ビア導体)を介して接続された共通接地パターン12が形成されるとともに、スリットでこの共通接地パターン12とは分離されて受信信号出力端子13が形成されている。受信信号出力端子13は、パッケージ1内部の導体パターン(図示しない)を介して受信用弾性表面波フィルタ22の出力端子(図示しない)と電気的に接続されている。また、受信信号出力端子13は、分波器1が実装される配線基板に形成された受信系回路と接続され、パッケージ1からこの受信系回路に受信信号を送るための端子であり、この端子と接続される線路とこの線路に近接するグランドとで構成される伝送線路を経て受信系回路へ信号が送られるようになっている。
【0022】
図1および図2においては、共通接地パターン12が受信信号出力端子13を取り囲むように、これらはスリットによって分離され、同一平面上(パッケージ1の裏面)に形成されている。一般に、パッケージに設けられる送信信号入力端子や受信信号出力端子には比較的大きな電流が流れる為、それらの干渉を防ぐ目的で、入出力端子の周囲には共通接地パターンが配置され、入出力端子を流れる電流が作る電磁界が広がらないようにしている。ここで、共通接地パターン12と受信信号出力端子13とは必ずしも同一平面上に形成されていなくてもよく、例えば図3に示すように、パッケージ1の裏面に受信信号出力端子13を設け、この裏面よりも上層の略全面に共通接地パターン12を設けてもよい。なお、図3において、受信用弾性表面波フィルタ22の出力端子と受信信号出力端子13とを接続する経路は、共通接地パターン12の一部をくり抜いてこの部分にビア導体を設けることにより、確保されている。さらに、図4に示すように、パッケージ1の内部または裏面には共通接地パターン12が形成されずに、本発明の分波器が実装される配線基板3上に共通接地パターン31が形成されてもよい。
【0023】
送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22は、フェイスダウン状態でパッケージ1の表面にフリップチップ実装されており、送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22の信号入出力端子とパッケージ1表面の入出力パッド(図示しない)とが半田バンプ5により接続されるとともに、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子221および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221とこれらに対応してパッケージ1表面に形成された接地パッド111、112とが半田バンプ5により接続されている。その他、本発明に直接関係しない構造は省略している。
【0024】
そして、図1および図2に示すように、送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性波フィルタ22は、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211と受信用弾性波フィルタ22の接地端子221とが結ぶ線分に対して、パッケージ1に形成された受信信号出力端子13の中心位置から下ろした垂線との交点が前記線分の略中間に位置するように配置されていることが重要である。換言すれば、パッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221から略等距離の位置に、受信信号出力端子13が配置されている。なお、端子間の距離は、それぞれの端子の中心(重心)をもって測定される。そして、送信用弾性表面波フィルタ21が複数の接地端子211を有する場合には、回路的に送信用弾性表面波フィルタ21における出力端子に近接する位置にある接地端子211を対象とし、受信用弾性表面波フィルタ22が複数の接地端子221を有する場合には、回路的に受信用弾性表面波フィルタ22における入力端子に近接する位置にある接地端子221を対象とする。さらに、入力端子または出力端子に近い位置にある接地端子が複数ある場合(端子から同距離にある接地端子が複数ある場合)には、これらの接地端子を含むような最小な領域を考え、その領域の中心を対象とする。
【0025】
送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221付近は電位の変動が激しいが、これらから略等距離の位置は電位の変動が比較的弱い位置となるため、この位置に受信信号出力端子13を配置することでアイソレーション特性の劣化を抑制することができる。詳細について、図5に示す形態について、図6および図7に示すPEEC(Partial Element Equivalent Circuits)法によって共通接地パターン12の電位を計算した結果に基づいて説明する。
【0026】
送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211、受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221、受信信号出力端子13の積層方向から見た位置関係は図5に示す通りである。なお、図5においては、受信信号出力端子13の配置される位置は、パッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221から略等距離の位置からは外れた位置となっている。また、図5において、受信信号出力端子13の他にこれと同様に共通接地パターン12とはスリットで分離されて形成された端子があるが、これらは本発明に影響しない端子であり、その説明は省略する。
【0027】
送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221の電位の変動に伴って、共通接地パターン12の電位は時間的に変動しており、図6に示す等高線はその振幅の程度を示したものである。電位高の表示部分が電位変動の振幅が大きく、電位低の表示部分に向かって小さくなっていることを示している。また、図7におけるグラフは、送信用弾性表面波フィルタ21の通過帯域(1.85GHz〜1.91GHz)において、パッケージ1の受信信号出力端子13に漏れる信号の強度を計算している。
【0028】
図6から、送信用弾性表面波フィルタ21および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子211、221の直下にある共通接地パターン12において電位が高くなり、また周波数によって電位の大きさが変化していることがわかる。この周波数に対する変化は、弾性表面波フィルタの特性に依るところが大きい。このように、共通接地パターン12の電位が変動する事により、受信側出力端子13の電位も周囲の影響を受けて変動している。したがって、受信信号出力端子13は共通接地パターン12の電位の高い位置、すなわち接地端子211、221から極力遠ざけることが好ましい。しかしながら、一層の小型化が要求されている現在、パッケージ1の受信信号出力端子13は、パッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て弾性表面波フィルタの直ぐ近くに配置する必要が出てくる。そこで、パッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211および受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221から略等距離となる位置(電位の変動が比較的弱い位置)に受信信号出力端子13を配置することで、通過帯域内で安定したアイソレーション特性を確保できる。
【0029】
図8は、パッケージ1の受信側出力端子13を、図5に示す位置よりも偏った位置である受信用弾性表面波フィルタ22の直下に配置した場合のアイソレーション特性を計算したものである。図6の結果と比較すると、送信用弾性表面波フィルタ21の通過帯域内でのアイソレーション特性が劣化していることが分かる。
【0030】
一方、図9は、図7における送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211の位置を、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211からパッケージ1の受信側出力端子13までの距離と受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221から受信側出力端子13までの距離とがパッケージ1の表面に対し垂直な方向から見て略等距離となる方向へ移動させた場合のアイソレーション特性である。図6に示す特性に比べ、より安定した特性が得られていることがわかる。
【0031】
なお、図5〜図9においては、共通接地パターン12の電位の変動状態について説明しているが、この共通接地パターン12の変動は、接地端子211および接地端子221の電位の変動が空間を伝わって直下の共通接地パターン12に影響を及ぼしたものである。したがって、接地端子211および接地端子221と受信信号出力端子13との関係が重要なのであって、受信信号出力端子13をスリットにより隔てられた共通接地パターン12で取り囲むようになっていなくても、受信信号出力端子13は接地端子211および接地端子221の影響を受け得る。すなわち、受信信号出力端子13と共通接地パターン12との間にスリット以上の大きな間隙が設けられている構造に対しても効果が得られる。
【0032】
このような効果は、弾性表面波フィルタをフリップチップ実装した場合に限られず、ワイヤボンディングによる実装の場合にも得ることができる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態を図面に基づいて説明する。
図10は、ワイヤボンディングによる接続方法で弾性表面波フィルタがパッケージに実装される場合の例を示している。
【0034】
この分波器は、パッケージ1の表面に、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211に対応して第一の接地パッド141が設けられるとともに、受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221に対応して第二の接地パッド142が設けられている。そして、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211と第一の接地パッド141とがボンディングワイヤ4により接続されるとともに、受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221と第二の接地パッド142とがボンディングワイヤ4により接続されている。さらに、パッケージ1の裏面には、第一の接地パッド141および第二の接地パッド142が接続される共通接地パターン12とは分離されて、受信信号出力端子13が設けられており、この受信信号出力端子13は、積層方向から見て、第一の接地パッド141および第二の接地パッド142から略等距離の位置に配置された構成になっている。
【0035】
このような接続形態を採用する場合、フリップチップ接続の場合よりもパッケージの面積が大きくする必要がある為、パッケージ1の受信信号出力端子13は積層方向から見て送信用および受信用弾性表面波フィルタ21、22の接地端子211、221から遠ざけ易い。しかしながら、他の設計要因から受信信号出力端子13と送信用または受信用弾性表面波フィルタ21、22とが近付いてしまう場合には、アイソレーション特性の劣化という問題を考慮しなければならない。そこで、積層方向から見て、第一の接地パッド141および第二の接地パッド142から略等距離の位置に受信信号出力端子13を配置することで、前記のフリップチップ実装による実施形態と同様の効果が得られる。
【0036】
このボンディングワイヤ4による接続形態においても、図3および図4に示すような位置に共通接地パターン12が設けられてもよく、図5に示すようにパッケージ1の内部または裏面には共通接地パターン12が形成されず、分波器が実装される配線基板上に共通接地パターンが形成されてもよい。
【0037】
さらに本発明においては、少なくとも送信用弾性表面波フィルタ21の通過周波数帯域内において、送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211へ流れる電流と受信用弾性表面波フィルタ22の接地端子221へ流れる電流とが略逆位相になる周波数を有するのが好ましい。受信信号出力端子13をそれぞれの弾性表面波フィルタの接地端子から略等距離となる位置に配置して、送信用弾性波フィルタ21の接地端子211へ流れる電流と受信用弾性波フィルタ22の接地端子221へ流れる電流とが逆位相になる周波数を帯域内で少なくとも1つ以上作ることによって、より高い効果が得られるからである。すなわち、このように逆位相になるようなところでは、送信用弾性表面波フィルタの接地端子からの距離と受信用弾性表面波フィルタの接地端子からの距離が略等しい位置に電位の低い周波数が現れる。これは、それぞれの電位の振動が逆位相である為に、互いに打ち消しあう為である。したがって、特に漏洩信号の強度について、要求される水準が厳しい送信周波数帯域で略逆位相になる周波数を有することによって、より良好なアイソレーション特性を得る事が出来る。送信周波数帯域で略逆位相になる周波数を有するためには、送信用弾性表面波フィルタ21と受信用弾性表面波フィルタ22の位相特性を調整することにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の分波器の一実施形態の概略断面説明図である。
【図2】図1に示す分波器の平面透視図である。
【図3】図1に示す共通接地パターン12の形成位置を変更した他の実施形態の概略断面説明図である。
【図4】図1に示す共通接地パターン12の形成位置を変更したさらに他の実施形態の概略断面説明図である。
【図5】電位変動の説明のために用意した分波器の説明図であり、(a)は平面透視図であり、(b)は概略断面図である。
【図6】図5に示す分波器のシミュレーションによる共通接地パターンの電位分布を示す図である。
【図7】図5に示す分波器のシミュレーションによるアイソレーション特性を示す図である。
【図8】(a)は図5に示す分波器の受信信号出力端子13の位置を変更した形態の平面透視図であり、(b)は(a)の形態におけるシミュレーションによるアイソレーション特性を示す図である。
【図9】(a)は図5に示す分波器の送信用弾性表面波フィルタ21の接地端子211の位置を変更した形態の平面透視図であり、(b)は(a)の形態におけるシミュレーションによるアイソレーション特性を示す図である。
【図10】本発明の分波器の他の実施形態の説明図であって、(a)は概略断面図、(b)は平面透視図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・・・・・・パッケージ
111、141・・第一の接地パッド
112、142・・第二の接地パッド
12、31・・・・共通接地パターン
13・・・・・・・受信信号出力端子
21・・・・・・・送信用弾性表面波フィルタ
22・・・・・・・受信用弾性表面波フィルタ
211、221・・接地端子
3・・・・・・・・配線基板
4・・・・・・・・ボンディングワイヤ
5・・・・・・・・半田バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の表面にIDT電極と入力端子と出力端子と接地端子とが形成されてなる送信用弾性表面波フィルタおよび受信用弾性表面波フィルタが、パッケージの表面にフリップチップ実装されるとともに、
前記パッケージの裏面に、前記受信用弾性表面波フィルタの前記出力端子に接続された受信信号出力端子が設けられてなる分波器であって、
前記パッケージの表面に対し垂直な方向から見て、前記送信用弾性表面波フィルタの接地端子および前記受信用弾性表面波フィルタの接地端子から略等距離の位置に前記受信信号出力端子が配置されたことを特徴とする分波器。
【請求項2】
圧電基板の表面にIDT電極と入力端子と出力端子と接地端子とが形成されてなる送信用弾性表面波フィルタおよび受信用弾性表面波フィルタがパッケージの表面に搭載され、
前記送信用弾性表面波フィルタの接地端子と該送信用弾性表面波フィルタの接地端子に対応して前記パッケージの表面に設けられた第一の接地パッドとがボンディングワイヤにより接続されるとともに、前記受信用弾性表面波フィルタの接地端子と該受信用弾性表面波フィルタの接地端子に対応して前記パッケージの表面に設けられた第二の接地パッドとがボンディングワイヤにより接続され、
前記パッケージの裏面に、前記受信用弾性表面波フィルタの前記出力端子に接続された受信信号出力端子が設けられてなる分波器であって、
前記パッケージの表面に対し垂直な方向から見て、前記第一の接地パッドおよび前記第二の接地パッドから略等距離の位置に前記受信信号出力端子が配置されたことを特徴とする分波器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分波器であって、
少なくとも前記送信用弾性表面波フィルタの通過周波数帯域内において、前記送信用弾性表面波フィルタの接地端子へ流れる電流と前記受信用弾性表面波フィルタの接地端子へ流れる電流とが略逆位相になる周波数を有することを特徴とする分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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