説明

分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置

【課題】十分な洗浄効率が得られ、振動発生部の構造が簡単、かつ、小型な分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】検体または試薬を含む液体試料を分注ノズルによって吸引し、吸引した液体試料を反応容器に吐出して分注を行う分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置。分注装置10の分注ノズル10bは、液体試料の吸引時に液体試料と接触する内壁領域に対応する外壁に表面弾性波素子11を備え、表面弾性波素子11は、液体試料の分注後、洗浄水を吐出して分注ノズルを洗浄する際に駆動され、分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の生体試料を分析する自動分析装置は、分注装置を用いて検体や試薬等の液体試料を反応容器に分注している。このとき、自動分析装置は、検体や試薬のキャリーオーバーを回避して高精度な分析結果を維持するため、分注ノズルから洗浄水を吐出して洗浄するだけはなく、洗浄水中に超音波振動を発生させることによって分注ノズルを積極的に洗浄するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された自動分析装置は、超音波振動によって洗浄水中にキャビテーションを発生させ、このキャビテーションに伴う衝撃波によって分注ノズルに付着した汚れを粉砕することによって洗浄を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−9670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、汚れが付着し易い部分は分注ノズルの先端部であるが、特許文献1の自動分析装置は、超音波振動を発生する振動発生部が反対方向の分注ノズルの支持部に位置しているため十分な洗浄効率が得られないうえ、振動発生部の構造が複雑で大型になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、十分な洗浄効率が得られ、振動発生部の構造が簡単、かつ、小型な分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、検体または試薬を含む液体試料を分注ノズルによって吸引し、吸引した前記液体試料を反応容器に吐出して分注を行う分注装置であって、前記分注ノズルは、前記液体試料の吸引時に前記液体試料と接触する内壁領域に対応する外壁に表面弾性波素子を備え、前記表面弾性波素子は、前記液体試料の分注後、洗浄水を吐出して当該分注ノズルを洗浄する際に駆動され、当該分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記分注ノズルは、前記液体試料を吐出する少なくとも先端側に前記表面弾性波素子を設けることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記分注ノズルは、直管部の先端にテーパ部を有し、前記テーパ部及び前記テーパ部に隣接する直管部の外壁に前記表面弾性波素子を設けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記表面弾性波素子は、複数設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記表面弾性波素子は、外面に平面を有するブロック部材を介して前記分注ノズルに取り付けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記表面弾性波素子は、圧電基板の表面に形成される複数の櫛歯状電極が前記分注ノズルの略長手方向に沿って配列されていることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置の分注ノズル洗浄方法は、検体または試薬を含む液体試料を分注ノズルによって吸引し、吸引した前記液体試料を反応容器に吐出して分注を行う分注装置の分注ノズル洗浄方法であって、前記分注ノズルから洗浄水を吐出して前記分注ノズルを洗浄する洗浄時に前記表面弾性波素子を駆動し、当該分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射することを特徴とする。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬とを攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、前記分注装置を用いて前記検体又は前記試薬を分注することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の分注装置は、分注ノズルが、液体試料の吸引時に液体試料と接触する内壁領域に対応する外壁に表面弾性波素子を備え、表面弾性波素子は、液体試料の分注後、洗浄水を吐出して分注ノズルを洗浄する際に駆動され、分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射し、分注装置の分注ノズル洗浄方法は、分注ノズルから洗浄水を吐出して分注ノズルを洗浄する洗浄時に表面弾性波素子を駆動し、分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射する。また、本発明の自動分析装置は、前記分注装置を用いて検体又は試薬を分注するので、十分な洗浄効率が得られ、振動発生部の構造が簡単、かつ、小型な分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の分注装置の概略構成を示す斜視図である。図3は、図2のA部拡大図である。図4は、図3に示す分注ノズルの正面図である。
【0016】
自動分析装置1は、図1に示すように、第1試薬テーブル2、第2試薬テーブル3、反応テーブル5、第1試薬分注装置7、第2試薬分注装置8、検体容器移送部9、検体分注装置10、攪拌部21、測光部22、洗浄部23、制御部25、入力部26及び表示部27等を備えている。
【0017】
第1試薬テーブル2及び第2試薬テーブル3は、それぞれ構造が同一であるので、第1試薬テーブル2について説明し、第2試薬テーブル3については、対応する構成要素に対応する符号を使用する。
【0018】
第1試薬テーブル2は、図1に示すように、駆動手段に回転されて保持した複数の試薬容器2aを周方向に搬送する。このとき、第1試薬テーブル2は、外周に第1読取部2bが配置されている。第1読取部2bは、複数の試薬容器2aに添付されたバーコードラベル等の情報記録媒体の情報を読み取る。
【0019】
反応テーブル5は、図1に示すように、複数の反応容器6が周方向に沿って配列され、試薬テーブル2,3の駆動手段とは異なる駆動手段によって正転或いは逆転されて反応容器6を搬送する。反応テーブル5は、例えば、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4回転し、四周期で(1周−1反応容器)回転する。
【0020】
反応容器6は、四角筒形状の容量が数nL〜数百μLと微量なキュベットであり、測光部22が出射する分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器6は、反応テーブル5の近傍に設けた第1試薬分注装置7や第2試薬分注装置8によって第1試薬テーブル2や第2試薬テーブル3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。
【0021】
ここで、第1試薬分注装置7及び第2試薬分注装置8は、それぞれ構造が同一であるので、第1試薬分注装置7について説明し、第2試薬分注装置8については、対応する構成要素に対応する符号を使用する。
【0022】
第1試薬分注装置7は、図1に示すように、試薬容器2aと反応容器6との間の水平面内を矢印方向に回動されると共に、上下方向に昇降されるアーム7aと、試薬を分注する分注ノズル7bとを有しており、アーム7aの一端は図示しない支柱の上部に支持されている。第1試薬分注装置7は、洗浄水によって分注ノズル7bを洗浄する洗浄槽7cが分注ノズル7bの移動軌跡上に配置されている。洗浄槽7cは、分注ノズル7bから吐出させて分注ノズル7bの内側を洗浄した洗浄水を廃棄すると共に、槽内に噴出する洗浄水によって分注ノズル7bの外側を洗浄する。
【0023】
検体容器移送部9は、図1に示すように、複数のラック9aを矢印方向に沿って移送する移送手段であり、ラック9aを歩進させながら移送する。ラック9aは、検体を収容した複数の検体容器9bを保持している。ここで、検体容器移送部9は、中央に緊急検体を収容する保冷庫9cが設けられている。そして、検体容器9bは、検体容器移送部9によって移送されるラック9aの歩進が停止するごとに、検体分注装置10によって検体が各反応容器6へ分注される。
【0024】
検体分注装置10は、検体を検体容器9bから吸引し、吸引した検体を反応容器6に吐出して分注を行う本発明の分注装置であって、図1及び図2に示すように、反応容器5と検体容器9bとの間を水平方向に回動すると共に、上下方向に昇降する駆動アーム10aと、駆動アーム10aに支持された分注ノズル10bと、駆動アーム10aを支持する支柱10cと、分注ノズル10bを洗浄する洗浄槽10dを有している。分注ノズル10bは、ステンレス等の金属から作られ、吸引した検体を反応容器6に吐出した後、配管15から供給される洗浄水W(図5,図6参照)を洗浄槽10dへ吐出することによって内部が洗浄される。洗浄槽10dは、洗浄水を槽内に噴出する配管と、槽内に噴出して分注ノズル10bの外面を洗浄した洗浄水を排出する配管とが接続され、第1試薬分注装置7の洗浄槽7cと同様に、分注ノズル10bの移動軌跡上に配置されている。
【0025】
そして、分注ノズル10bは、図3及び図4に示すように、直管部Psの先端にテーパ部Ptが形成され、テーパ部Pt及びテーパ部Ptに隣接する直管部Psの外壁のそれぞれに互いに対向配置した表面弾性波素子11が設けられている。表面弾性波素子11は、検体の吸引時に検体と接触する内壁領域に対応する分注ノズル10bの外壁に、具体的には汚れが付着し易い部分の外壁に設ける。検体分注装置10は、駆動アーム10aの回動と昇降を行わせるノズル駆動機構12を備えている。
【0026】
ここで、分注ノズル10bの検体の吸引時に検体と接触する内壁領域とは、検体の吸引時に検体が先端から分注ノズル10b内へ浸入する分注ノズル10bの長手方向に沿った内壁領域をいい、最大で分注ノズル10bの先端から全長の1/2の内壁領域であり、通常は分注ノズル10bの先端から全長の3/10〜7/20の内壁領域である。従って、表面弾性波素子11は、分注ノズル10bの先端から全長の1/2の範囲に設ける。
【0027】
表面弾性波素子11は、図3乃至図6に示すように、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等からなる圧電基板11aの一方の面に複数の櫛歯状電極(IDT)からなる振動子11bが設けられると共に、バスバー11cの端部に受電手段となる電気端子11dが設けられた構造が簡単で、1辺が数mmの四角形からなる音波発生手段である。表面弾性波素子11は、分注ノズル10b内の洗浄水に向けて音波(バルク波)が出射されるように、振動子11b及び電気端子11dを外側に向け、複数の櫛歯状電極が分注ノズル10bの略長手方向に沿って配列されるようにして接着剤Adを介して分注ノズル10bの外壁に取り付ける。振動子11bは、一端が電気端子11dに接続された接続ケーブルを介して電源から送電された電力によって音波(バルク波)を発生する。このため、分注ノズル10bは、前記電源ケーブルと共に覆うカバーが被着されている。
【0028】
なお、接着剤Adは、表面弾性波素子11を分注ノズル10bに接着する他に、音響整合層としての機能も有する必要があり、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂等を使用する。また、表面弾性波素子11は、電源ケーブルが接続される電気端子11dの部分を含めて振動子11bを形成した面に絶縁皮膜が形成され、試薬や検体等の液体試料と電気的に絶縁されている。
【0029】
ノズル駆動機構12は、分注ノズル10bを昇降させると共に回動させるものであり、図2に示すように、回動モータ13と昇降モータ14を有している。回動モータ13は、回転軸13aに取り付けたホイール13bと支柱10cに取り付けたホイール10eとの間にタイミンベルト13cが巻き掛けられている。昇降モータ14は、タイミンベルト14aによってねじ軸14bを回転し、昇降ブロック14dをねじ軸14bに沿って上下動させる。タイミンベルト14aは、回転軸に取り付けたホイールとねじ軸14bの下端に取り付けたホイール14cとの間に巻き掛けられている。ここで、昇降ブロック14dは、支柱10cの下端に取り付けて支柱10cを支持しており、ねじ軸14bと共にボールねじを構成している。
【0030】
攪拌部21は、図1に示すように、反応テーブル5外周の第2試薬分注装置8近傍に配置され、反応容器6に分注された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌する。攪拌部21は、例えば、表面弾性波素子によって液体試料を非接触で攪拌する攪拌装置や、攪拌棒によって液体試料を攪拌する攪拌装置が使用される。
【0031】
測光部22は、図1に示すように、反応テーブル5外周の攪拌部21と洗浄部23との間に配置され、試薬と検体とが反応した反応容器6内の反応液を分析するための分析光を出射する。測光部22は、反応容器6内の反応液を透過した分析光の光量に関する光信号を制御部25へ出力する。
【0032】
洗浄部23は、図1に示すように、反応テーブル5外周の検体分注装置10近傍に配置され、ノズルによって反応容器6内の反応液を吸引して排出した後、前記ノズルから洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入し、吸引する動作を複数回繰り返すことにより、測光部22による測光が終了した反応容器6内を洗浄する。
【0033】
制御部25は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用され、図1に示すように自動分析装置1と接続され、自動分析装置1の各構成部の作動を制御すると共に、測光部22が出力した光信号に基づく反応液の吸光度から検体の成分濃度等を分析する。また、制御部25は、キーボード等の入力部26から入力される分析指令に基づいて自動分析装置1の各構成部の作動を制御しながら分析動作を実行させると共に、分析結果や警告情報の他、入力部26から入力される表示指令に基づく各種情報等をディスプレイパネル等の表示部27に表示する。
【0034】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部25の制御の下に作動し、回転する反応テーブル5によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器6に検体分注装置10によってラック9aに保持された複数の検体容器9bから検体が順次分注される。検体が順次分注された反応容器6には、試薬分注機構7,8が試薬容器2a,3aから順次試薬が分注される。
【0035】
このようにして、試薬と検体が分注された反応容器6は、反応テーブル5が停止する都度、攪拌部21によって順次攪拌されて試薬と検体とが反応し、反応テーブル5が再び回転したときに測光部22を通過する。このとき、反応容器6内の試薬と検体とが反応した反応液は、測光部22で測光され、制御部25によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測光が終了した反応容器6は、洗浄部23に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0036】
このとき、実施の形態1の検体分注装置10は、振動子11b及び電気端子11dを外側に向けて表面弾性波素子11が分注ノズル10bの外壁に設けられている。このため、検体分注装置10は、分注ノズル10bから洗浄水を吐出して分注ノズル10bを洗浄する洗浄時に表面弾性波素子11を駆動する。すると、表面弾性波素子11の振動子11bが発生したバルク波は、接着剤Ad及び分注ノズル10bの壁内を伝搬し、図6に矢印で示すように、洗浄水W中へ出射される。このようにして洗浄水W中へ出射されるバルク波によって、分注ノズル10bは、壁面付近に洗浄水の流れが惹起されて汚れの付着が妨げられると共に、付着した汚れが積極的に剥離され、吐出する洗浄水Wによって洗浄槽10dへと排出される。この場合、表面弾性波素子11を駆動せずに洗浄水を吐出すると、分注ノズル10bは、ノズル中心付近で洗浄水の流れの流速は最大となるが、壁面付近では壁面との摩擦抵抗によって流速は殆どゼロになる。このため、洗浄時に表面弾性波素子11を駆動する意義がある。
【0037】
このとき、本発明の分注装置の分注ノズル洗浄方法は、分注ノズル10bから洗浄水を吐出して分注ノズル10bを洗浄する洗浄時に表面弾性波素子11を駆動する。このため、分注ノズル10bから洗浄水を吐出するタイミングと、表面弾性波素子11を駆動するタイミングとを示す図7に示すように、洗浄水の吐出開始と同時に表面弾性波素子11の駆動を開始する。但し、洗浄時に表面弾性波素子11が駆動されれば、即ち、分注ノズル10bから洗浄水を吐出している際に表面弾性波素子11が駆動されれば、必ずしも洗浄水の吐出開始と同時に表面弾性波素子11の駆動を開始する必要はない。例えば、吐出開始からの洗浄水の吐出時間Twと表面弾性波素子11の駆動時間Tsが同じか、吐出時間Twよりも駆動時間Ts(<TW)が短ければよい。例えば、洗浄水の吐出時間Twは1秒前後であり、その間の吐出水量は1〜3mLである。吐出時間Twよりも駆動時間Tsが長いと、剥離した汚れを分注ノズル10bから排出することができないので、好ましくない。
【0038】
ここで、表面弾性波素子11を駆動する場合、図8の一段目に示すように、一定の駆動電力、駆動周波数(例えば、1W,100MHz)で駆動してもよいが、二段目に示すような間欠駆動や、三段目に示す振幅変調の下に駆動してもよい。このような駆動方式にすると、検体分注装置10は、バルク波によって洗浄水中に発生する流れに強弱が発生し、汚れの分注ノズル10bへの付着を妨げ、或いは汚れを剥離する効果が増し、分注ノズル10bを洗浄する際の洗浄効率が向上する。
【0039】
以上の説明で明らかなように、本実施の形態によれば、十分な洗浄効率が得られ、特許文献1に比べて振動発生部である表面弾性波素子11の構造が簡単、かつ、小型な検体分注装置10、検体分注装置10の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置1が提供される。
【0040】
ここで、検体分注装置10の分注ノズル10bは、検体を吐出する少なくとも先端側であって、汚れが付着し易い部分の外壁に表面弾性波素子11を設けてあれば、図9に示すように、テーパ部Ptに2つの表面弾性波素子11を設けてもよいし、テーパ部Ptに隣接した直管部Psの下部に2つの表面弾性波素子11を設けてもよい。また、図10に示すように、対向配置すべき2つの表面弾性波素子11を上下方向に位置をずらして配置し、一方の表面弾性波素子11を直管部Psに設け、他方の表面弾性波素子11をテーパ部Ptに設けてもよい。
【0041】
更に、分注ノズル10bは、図11に示すように、先端にテーパ部Ptを有さない直管部Psからなるノズルであってもよい。この場合4つの表面弾性波素子11は、検体を吐出する少なくとも直管部Psの先端側の外壁に2つずつ対向させて音響整合層としても機能する接着剤Adによって取り付ける。また、表面弾性波素子11は、振動子11b及び電気端子11dを内側に向けて分注ノズル10bに取り付け、分注ノズル10b内の洗浄水に向けて表面弾性波を出射するようにしてもよい。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注装置、分注装置の分注ノズル洗浄方法及び自動分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1の分注装置は表面弾性波素子を接着剤によって分注ノズルに取り付けたのに対し、実施の形態2の分注装置は外面に平面を有するブロック部材を介して表面弾性波素子を分注ノズルに取り付けている。
【0043】
ここで、実施の形態2の自動分析装置は、検体分注装置の構成が僅かに異なることを除き、実施の形態1の分注装置と構成が同じである。このため、自動分析装置は、図面を省略し、実施の形態1の自動分析装置と同一の構成部分に同一符号を使用して説明する。図12は、実施の形態2の分注装置の概略構成を示す正面図である。図13は、図12に示すカバーを外した分注ノズルの先端近傍の拡大斜視図である。図14は、図13に示す分注ノズルの正面図である。
【0044】
検体分注装置10Aは、図12に示すように、高周波電源16、切替スイッチ17及び分注ノズル10bに取り付けた各表面弾性波素子11に電力を送電する接続線18を有しており、分注ノズル10bが複数の接続線18と共にカバー10gに収容されている。ここで、検体分注装置10Aは、複数の接続線18及び洗浄水の配管15は、支柱10c内を通って配線されている。
【0045】
このとき、実施の形態2の検体分注装置10Aは、図13及び図14に示すように、ブロック部材19を介して表面弾性波素子11を分注ノズル10bに取り付けている。
【0046】
ブロック部材19は、図13及び図14に示すように、表面弾性波素子11を取り付ける取付平面を外周に有する四角形のブロックに成型され、ハンダ付けやろう付け等によって分注ノズル10bに取り付けられる。但し、ブロック部材19は、表面弾性波素子11を取り付ける取付平面を有していれば、四角形に限定されるものではない。一方、表面弾性波素子11は、振動子11b及び電気端子11dを内側に向けてブロック部材19の4つの外面に取り付けられている。ここで、表面弾性波素子11からのエネルギーのロスが少なくなるので、ブロック部材19は、音響インピーダンスが分注ノズル10bと圧電基板11aとの間にある素材であることが好ましく、音響インピーダンスが分注ノズル10bと同じ素材であることがより好ましい。
【0047】
高周波電源16は、各表面弾性波素子11に電力を送電する接続線18の中間に切替スイッチ17を設け、切替スイッチ17によって電力を送電する表面弾性波素子11を切り替えている。このとき、切替スイッチ17の切替は、制御部25によって行うが、4つの表面弾性波素子11を同時に駆動し、或いは右回り又は左回りに順番に駆動することができる。
【0048】
以上のように構成される検体分注装置10Aは、分注ノズル10bから洗浄水を吐出して分注ノズル10bを洗浄する洗浄時に表面弾性波素子11を駆動する。すると、表面弾性波素子11の振動子11bは、表面弾性波を発生する。但し、この表面弾性波は、ブロック部材19との間の表面弾性波素子11の圧電基板11a表面に沿って進むだけで、図15に矢印で示すように、ブロック部材19中にはバルク波に変換されて伝搬し、洗浄水W中へ出射される。このようにして洗浄水W中へ出射されるバルク波によって、分注ノズル10bは、壁面付近に洗浄水の流れが惹起されて汚れの付着が妨げられると共に、付着した汚れが積極的に剥離され、吐出する洗浄水Wによって洗浄槽10dへと排出される。
【0049】
このとき、検体分注装置10Aは、図15に示す4つの表面弾性波素子11を右回り又は左回りに順番に駆動すると、4つの表面弾性波素子11を同時に駆動する場合に比べて、壁面付近に惹起される洗浄水の流れの向きが同じになって流速が増すため、分注ノズル10bを洗浄する際の洗浄効率が向上する。
【0050】
ここで、検体分注装置10Aは、例えば、駆動周波数が100MHz,110MHz,120MHz,130MHzである4つの表面弾性波素子11を右回り又は左回りにブロック部材19に取り付け、図16に示すように、高周波電源16と4つの表面弾性波素子11との間を1本の接続線18で並列接続してもよい。この場合、高周波電源16は、制御部25によって発生する電力の周波数を100MHz,110MHz,120MHz,130MHzの順に切り替えると、対応する表面弾性波素子11を順番に右回り又は左回りに駆動することができる。このようにすると、検体分注装置10Aは、切替スイッチ17が不要となるうえ、接続線18が1本で済むので、構成を単純にして小型化することができる利点がある。
【0051】
なお、検体分注装置10及び検体分注装置10Aは、表面弾性波素子11に有線給電によって電力を送電したが、無線給電によって電力を送電してもよい。
【0052】
また、分注装置は、検体分注装置の場合について説明したが、本発明の分注装置は、試薬分注装置にも適用可能である。更に、自動分析装置1は、試薬テーブル2,3を有するものについて説明したが、試薬テーブルは1つであってもよく、自動分析装置1を1ユニットとして複数ユニット連結されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の分注装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図3に示す分注ノズルの正面図である。
【図5】図4のC1−C1線に沿った断面図である。
【図6】図4のC2−C2線に沿った断面図である。
【図7】実施の形態1の分注装置における分注ノズルから洗浄水を吐出するタイミングと、表面弾性波素子を駆動するタイミングとを示す図である。
【図8】分注ノズルに取り付けた表面弾性波素子を駆動する場合の駆動電圧、駆動周波数の関係の一例を示す図である。
【図9】分注ノズルに取り付ける表面弾性波素子の配置に関する第1の変形例を示す拡大斜視図である。
【図10】分注ノズルに取り付ける表面弾性波素子の配置に関する第2の変形例を示す拡大斜視図である。
【図11】分注ノズルに取り付ける表面弾性波素子の配置と、分注ノズルの形状に関する第3の変形例を示す拡大斜視図である。
【図12】実施の形態2の分注装置の概略構成を示す正面図である。
【図13】図12に示すカバーを外した分注ノズルの先端近傍の拡大斜視図である。
【図14】図13に示す分注ノズルの正面図である。
【図15】図14に示す分注ノズルのC3−C3線に沿った断面図である。
【図16】実施の形態2の分注装置の変形例に係る概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動分析装置
2 第1試薬テーブル
3 第2試薬テーブル
5 反応テーブル
6 反応容器
7 第1試薬分注装置
8 第2試薬分注装置
9 検体容器移送部
10 検体分注装置
10b 分注ノズル
10A 検体分注装置
11 表面弾性波素子
12 ノズル駆動機構
13 回動モータ
14 昇降モータ
15 配管
16 高周波電源
17 切替スイッチ
18 接続線
19 ブロック部材
21 攪拌部
22 測光部
23 洗浄部
25 制御部
26 入力部
27 表示部
Ps 直管部
Pt テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体または試薬を含む液体試料を分注ノズルによって吸引し、吸引した前記液体試料を反応容器に吐出して分注を行う分注装置であって、
前記分注ノズルは、前記液体試料の吸引時に前記液体試料と接触する内壁領域に対応する外壁に表面弾性波素子を備え、
前記表面弾性波素子は、前記液体試料の分注後、洗浄水を吐出して当該分注ノズルを洗浄する際に駆動され、当該分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射することを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分注ノズルは、前記液体試料を吐出する少なくとも先端側に前記表面弾性波素子を設けることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記分注ノズルは、直管部の先端にテーパ部を有し、前記テーパ部及び前記テーパ部に隣接する直管部の外壁に前記表面弾性波素子を設けることを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記表面弾性波素子は、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分注装置。
【請求項5】
前記表面弾性波素子は、外面に平面を有するブロック部材を介して前記分注ノズルに取り付けられることを特徴とする請求項4に記載の分注装置。
【請求項6】
前記表面弾性波素子は、圧電基板の表面に形成される複数の櫛歯状電極が前記分注ノズルの略長手方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項5に記載の分注装置。
【請求項7】
検体または試薬を含む液体試料を分注ノズルによって吸引し、吸引した前記液体試料を反応容器に吐出して分注を行う分注装置の分注ノズル洗浄方法であって、
前記分注ノズルから洗浄水を吐出して前記分注ノズルを洗浄する洗浄時に前記表面弾性波素子を駆動し、当該分注ノズル内の洗浄水に向けて音波を出射することを特徴とする分注装置の分注ノズル洗浄方法。
【請求項8】
検体と試薬とを攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、請求項1〜6のいずれか一つに記載の分注装置を用いて前記検体又は前記試薬を分注することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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