説明

分離およびダイアフィルトレーションによる赤血球の精製

赤血球は、赤血球画分および液体画分を形成するために、遠心分離などによる全血の分離によって精製される。全血は、分離前に繊維素を除かれるか、または凝固を妨げるために処理される。好ましくは、全血はウシ血液である。赤血球を精製するために、赤血球画分は次いでダイアフィルトレートされる。次いで精製された赤血球の溶解産物を形成するために、精製された赤血球は溶解され得る。この精製された赤血球および赤血球の溶解産物は、ヘモグロビン代用血液の製造における使用に適する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
ヘモグロビンベース酸素担体の開発は、輸血などの医学的治療における使用のための酸素送達および血液製剤の製造に焦点をあてている。ヘモグロビンベース酸素担体は、血液減少 (例えば、急性出血による、または外科手術間の)、貧血 (例えば、悪性貧血または鎌型赤血球貧血)、またはショック (例えば、容積欠乏性ショック、アナフィラキシーショック、敗血性ショックまたはアレルギーショック) に起因する低酸素症を予防するためまたは治療するために使用され得る。
【0002】
存在しているヘモグロビンベース酸素担体としては、ペルフルオロ化学物質、合成ヘモグロビンアナログ、リポソーム被包性ヘモグロビン、化学的修正ヘモグロビン、およびヘモグロビン分子が架橋しているヘモグロビンベース酸素担体が挙げられる。ヘモグロビンベース酸素担体の調製は、いくつかの精製工程を含む。全血から血漿タンパク質を除去する目的で、精密濾過法のプロセスを使用して全血の細胞を洗浄する。細胞洗浄操作は、等張のクエン酸塩/生理食塩水バッファーと共に0.2μmの精密濾過膜を通すダイアフィルトレーションを使用して、ウシ全血から血漿タンパク質を除去する。ダイアフィルトレーションは、再循環タンクにおける容積を維持するためにクエン酸塩/生理食塩水バッファーがフィルター残留物に加えられる、継続的な濾過操作である。血液溶液はフィルターを通して再循環され、血漿タンパク質を含む濾液は廃棄される。
【0003】
濾過を使用した血液溶液の洗浄は、産物スループットに有害に影響を与える非常に様々な処理回数を生じる。更に、細胞洗浄処理回数の延長は非許容レベルのバイオバーデンの増大および細胞溶解を導き得、それにより更に処理産物が減少する。
【0004】
発明の概要
本発明は一般に、代用血液の製造における使用のための赤血球の精製方法に関する。本方法は赤血球画分および液体画分を形成するための全血の分離工程を含む。赤血球画分は精製した赤血球を形成するためにダイアフィルトレートされる。精製した赤血球は次いで、更にヘモグロビン分子を単離するために処理され得る。
【0005】
1つの態様において、本発明はヘモグロビン代用血液において使用するための精製した赤血球の溶解産物の形成に関する。本方法は、赤血球画分および液体画分を形成するための全血の分離工程を含む。赤血球画分は精製した赤血球を形成するためにダイアフィルトレートされる。精製された赤血球は精製した赤血球の溶解産物を形成するために溶解される。
【0006】
別の態様において、本方法は赤血球画分および液体画分を形成するために線維素を除去したウシ全血を遠心分離により分離する工程を含む。赤血球画分は精製した赤血球を形成するためにダイアフィルトレートされる。精製された赤血球は次いで機械的に溶解される。
【0007】
本発明は多くの利点を有する。例えば、全血の赤血球画分および液体画分への分離は、得られた赤血球画分から多くの潜在的なメンブレンの汚れ (foulant) を除去し、赤血球画分のより効率の良い処理を可能にする。特に、赤血球画分および液体画分を形成するための全血の分離およびそれに続く赤血球画分のダイアフィルトレートは、精製された赤血球を得るために必要な期間をダイアフィルトレーションまたは遠心分離単独よりも短縮し得る。通常、赤血球画分をダイアフィルトレートして精製した赤血球を形成するのに必要な期間が標準化される;赤血球画分のダイアフィルトレーション期間は、懸濁された赤血球の相対的に純粋な試料をダイアフィルトレートするために必要な期間におそらくより近い。全血および脱線維素全血を用いて、精製された血球を得るために必要な期間の減少が得られる。減少したまたは標準の細胞洗浄処理回数は、非許容レベルのバイオバーデンの増大および細胞分解の可能性を減少させる。次いで、非許容レベルのバイオバーデン (bioburden) の増大および細胞分解における減少は、処理産物を増加させる。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明の前述のならびにその他の目的、特性および利点を、添付図に示される通り、以下の本発明の好ましい態様のより詳細な説明から明らかにする。この図は、縮尺図である必要は無く、本発明の原理を説明するために強調がなされる。
【0009】
本発明は通常、全血を赤血球画分および液体画分に分離することにより赤血球を精製する方法に関する。潜在的なメンブレンの汚れは、生じた赤血球画分から分割されると考えられる。汚れの実質的な部分を含み、全血の分画により形成される液体画分は赤血球画分から分離され、次いで赤血球画分はダイアフィルトレートされる。
【0010】
図には、本発明の方法を実施するための適切な装置の一態様である装置10が示される。全血は容器12に集められる。本発明における使用に適した全血は、新たに採取されるか、または血液バンクからの期限の過ぎたヒト血液などの古い供給源から集められ得る。更に、全血は凍結状態および/または液体状態で保存され得るが、全血は本発明における使用前に凍結されないことが好ましい。適切な全血の供給源は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、他の脊椎動物およびBIO/TECHNOLOGY, 12:55-59 (1994) (その教示は全体が参照により本明細書に援用される) に記載されるトランスジェニックHbなどの遺伝子組換え的に産生されたヘモグロビンを含む。全血は、生きた、または新しく屠殺した動物ドナーから採取され得る。ウシ血液を採取する1つの方法は、Rauschらに付与された米国特許第5,084,558号および第5,296,465号 (その教示は全体が参照により援用される) に記載されている。
【0011】
1つの態様において、全血は容器12において適切な方法により線維素を除去される。線維素の除去は、2001年2月28日に出願されたGawrylらによる米国出願第09/795,821号 (その教示は全体が本明細書に援用される) に記載されている通りに行われ得る。血液の線維素の除去は、凝固カスケード開始させ、血塊形成に伴うフィブリン分子を人為的に除去する。線維素の除去は、化学的または機械的手段により誘導され得る。化学的凝固薬剤は、本明細書中では凝固を誘導する物質として定義される。例えば、コラーゲンは凝固を誘導し、その結果、外部の損傷がある場合は、フィブリンの塊が血液の流れを停止させる。人為的に血液をコラーゲンに暴露させると、フィブリン塊の形成を引き起こし、それは脱線維素血液を生産するために除去され得る。他の凝固薬剤の例は、組織抽出物、組織因子、組織トロンボプラスチン、陰イオン性リン脂質、カルシウム、負荷電物質 (例えば、ガラス、カオリン、いくつかの合成プラスチック、ファブリック (fabric)) である。好ましい凝固薬剤はコラーゲンである。脱線維素全血から血球を分離して得られた液体画分は、通常「血清」と呼ばれる。
【0012】
全血は凝固薬剤に、血液中の全てのフィブリンのフィブリン塊への変換が本質的におこるのに充分な期間暴露され得る。適切な期間は、フィブリン分子が明らかに重合を停止する時点により決定される。化学的な線維素除去 (本明細書中では化学的凝固薬剤への暴露により誘導される線維素の除去として定義される) は、適切な温度、好ましくは約4℃〜約40℃の範囲の温度で実施される。
【0013】
別の態様において、撹拌などの、機械的混合が凝固カスケードの開始のために使用され得る。全血は、フィブリン重合が明らかに終わるまで撹拌され得る。蓄積したフィブリンは線維素除去を完了させるために除去された。機械的な線維素除去 (本明細書中では血液溶液の混合により誘導される線維素の除去として定義される) は適切な温度で、好ましくは約4℃〜約40℃の範囲の温度で実施される。
【0014】
代替の態様において、全血は凝固を妨げるために処理され得る。例えば、全血の凝固を阻害するために十分な濃度で使用される、クエン酸ナトリウム、へパリン、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) およびオキシル酸ナトリウム (sodium oxylate) などの抗凝固薬剤で処理され得る。1つの態様において、5 Lのクエン酸ナトリウム (34 g/l) を15 Lの新たに採取した全血に添加し、全血溶液において8.5 g/lのクエン酸塩の最終濃度となるようにした。別の態様において、EDTAを新たに単離された全血に添加し、0.18%の最終濃度になるようにした。通常、抗凝固剤で処理された全血から血球を分離して得られた液体画分は、「血漿」と呼ばれる。
【0015】
二価陽イオンを有するクエン酸塩添加血液を飽和させ、次いでクエン酸塩非添加血液を処理する手段に類似して溶液の線維素を除去することにより、既にクエン酸塩添加された血液の線維素を除去することもまた可能である。好ましい二価陽イオンはカルシウムである。
【0016】
血液が凝固を誘導するために処理されている場合、フィブリンの塊は適切な手段で全血から除去される。適切な手段の例は図面に示されている。フィブリンおよびフィブリンの塊を含む全血は、容器12から、ライン14および濾過器16を通って導かれる。60メッシュのふるいが適切な濾過器の例である。任意に、または濾過器の使用に替えて、フィブリンの塊を含む大きな残屑を除去するためにチーズクロスまたはポリプロピレンフィルターが採用され得る。フィブリンの塊は濾過器16で回収され、全血の残りは容器18に導かれる。
【0017】
血液が抗凝固剤で処理される際、処理血液は遠心機27、バイパスライン14、濾過器16、容器18、ライン20、ポンプ22、フィルター24およびフィルター26に導かれ得る。しかしながら、処理血液はまた、ライン14、濾過器16、容器18、ライン20、ポンプ22、フィルター16、およびフィルター26を通して導かれ得る。濾過器16ならびにフィルター24および26を通しての抗凝固処理全血の誘導は、処理全血に存在する任意の大きな残屑を除去するために有用である。
【0018】
図に示されるように、全血 (凝固を誘導するために処理されたものか、または処理されていないものいずれか) は、容器18から、ポンプ22によりライン20を通して、および第1フィルター24および第2フィルター26を通して、遠心機27に導かれる。1つの態様において、第1フィルター24および第2フィルター26はポリプロピレンフィルターである。特に好ましい態様において、第1フィルター24は、約800μmの透過性であり、第2フィルター26は約50μmの透過性である。全血が凝固カスケードを開始するように処理されている場合、第1フィルター24および第2フィルター26による実質的に全てのフィブリンの除去が、線維素除去工程を完了させる。
【0019】
フィルター26後、全血 (線維素除去された、またはされないものいずれか) は、赤血球画分および液体画分を形成するために分離に供される。「分離」は、本明細書中ではまた「分画」ともよばれ、赤血球を血清または血漿から、好ましくは、血清または血漿それぞれに分離した液体分画を形成するように分割することを含む。本明細書中で一般的に使用される分離技術は、遠心分離などによる、密度による分離に基づいており、ダイアフィルトレーションなどによる、サイズに基づく分離とは区別される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「液体画分」は全血の分離から生じた液体および線維素が除去されている全血の分離から生じた液体を含む。1つの態様において、液体画分は「血清」、例えば脱線維素全血の分離から生じた液体画分である。別の態様において、液体画分は「血漿」、例えば凝固を妨げるために処理されている全血の分離から生じた液体画分である。1つの態様において、全血はクエン酸ナトリウムまたはヘパリンなどの抗凝固剤で処理されている。
【0021】
1つの態様において、フィルター26後、全血 (線維素除去された、またはされないものいずれか) は遠心機27において分離に供される。典型的に、全血を分離して赤血球画分 (血球成分) および液体画分を形成するために、遠心分離の間、全血は約1000〜約12000×Gの範囲のG力に暴露される。典型的に、遠心分離は約30秒〜約4分間実施される。好ましくは、遠心分離は約8000〜10000×Gで約3分間行われる。通常、分離工程の間の全血の温度は、約4℃〜約15℃の範囲である。
【0022】
1つの態様において、赤血球画分は全血の赤血球および白血球を含み、液体画分は全血の血小板を含む。また、好ましくは、赤血球画分は全血の赤血球 (RBC) の大部分を含む (例えば、少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%)。
【0023】
液体画分は実質的に赤血球画分から除去される。典型的に、液体画分は、遠心分離と同時に赤血球画分から除去される。1つの態様において、液体画分は遠心分離の間、例えば、継続供給様式における管状ボウル遠心機を使用して、継続して除去される。別の態様において、管状ボウル遠心機はバッチ様式で使用され得る。別の態様において、液体画分は、赤血球画分および液体画分の分離後、赤血球画分から液体画分をデカントすることにより赤血球画分から除去される。
【0024】
赤血球画分は、図の遠心機27から容器28に導かれる。赤血球は、容器28中で適切な溶液 (例えばダイアフィルトレーションバッファー) に懸濁される。許容され得る等張溶液は、当該分野で公知であり、赤血球の細胞膜を破裂させずに、全血の液体部分を置換するpHおよび容量オスモル濃度を有するクエン酸塩/生理食塩水、などを含む。好ましい等張溶液は中性pHおよび約285〜315 mOsmの間の容量オスモル濃度を有する。適切な溶液の例は、等張のクエン酸塩/生理食塩水バッファー (無水クエン酸ナトリウム - 6.0 g/L、塩化ナトリウム - 8.0 g/L) である。代替の態様において、赤血球画分は任意の適切な等張溶液、例えば、5%デキストロース中で再懸濁され得る。赤血球画分は約20〜約200 g/lの濃度で再懸濁され得る。
【0025】
ある態様では、赤血球画分は、赤血球画分を得た全血の元の体積が復元されるような体積の等張液に、懸濁される。再懸濁された血球画分を、以後「血液溶液」と呼ぶ。
【0026】
血液溶液は、容器28中、適切な温度で維持される。好ましくは、血液溶液は約4℃〜約15℃の範囲の温度で維持される。容器28中の血液溶液の温度は、適切な媒体、例えばエチレングリコールのような媒体を、容器28でジャケット30を通して再循環させることによって維持される。ジャケット30を通した媒体の再循環は、ライン32、貯蔵槽34、ポンプ36、38および冷却装置、すなわち冷蔵装置40によって維持される。
【0027】
その後、血液溶液は濾過され、それによって赤血球を精製する。好ましくは、血液溶液はダイアフィルトレーションによって濾過される。ある態様では、ダイアフィルトレーションは、血液溶液を、容器28から、ライン42およびポンプ44を通してダイアフィルトレーション装置46へ送ることによって行なわれる。ダイアフィルトレーション装置46は、注入口48、残渣出口50および透過物出口52を含有する。膜54は、ダイアフィルトレーション装置46の残渣部56とダイアフィルトレーション装置46の透過物部58を仕切る。好ましくは、膜54は、約0.01μm〜約5μmの範囲の浸透限界を有する。ある態様では、血液溶液は、0.2μm〜約2.0μmの範囲の浸透限界を有する膜を通してダイアフィルトレーションされる。他の適切なダイアフィルターには、0.1μm〜0.5μmのフィルター(例えば0.2μm孔ファイバーフィルター、Microgon Krosflo II精密濾過カートリッジ、Laguna Hills, CA)のような、RBCを実質上より小さい血液溶液成分と分離する孔サイズを有する微孔性膜が含まれる。特に好ましい態様では、膜54は、約0.1〜約2μmの範囲の浸透限界を有する。
【0028】
ダイアフィルトレーション装置46中の血液溶液の液体成分の一部は、膜54を通って、残渣部56から透過物部58まで通過し、それによって残渣部56の赤血球を精製する。血漿のような血液溶液の成分、または直径がRBCよりも十分小さい成分は、ダイアフィルターの壁を通過し、濾液を形成する。
【0029】
精製された、血液溶液の赤血球は、残渣出口50およびライン60を通って、容器28へと送り戻される。精製された赤血球は、さらなる処理のために、容器28からバルブ62を通ってライン64へと集められ得る。膜透過性の液体成分は、残存する全血の任意の液体画分(例えば血漿または血清)およびダイアフィルトレーションバッファーを含む。膜54を透過した液体成分は、ダイアフィルトレーション装置46の透過物部58からライン66を通って送られ得、容器68から採集され得る。容器28およびダイアフィルトレーション装置46を通って再循環する血液溶液は、ライン42またはライン60中のサンプリングポート(示されず)でサンプリングされ得る。
【0030】
好ましくは、血液溶液をダイアフィルトレーションして赤血球を洗浄する間に、等張液のような液体が、容器70から、ライン72を通って容器28中の血液溶液まで送られ、血液溶液の濃度を薄める。ある態様では、血液溶液は、赤血球の初めの懸濁濃度の、約25体積%〜約75体積%の範囲の濃度まで希釈される。ダイアフィルトレーションの間の濃縮によって、体積が減少し、元の、またはより高い濃度に戻る。一般的に、懸濁された赤血球に液体を加え、そして液体の少なくとも一部を除去する過程を、「細胞の洗浄」と呼ぶ。好ましくは、等張液は、イオン化した溶質を含有するか、水性である。適切な等張液は、上に記してある。他の態様では、血液は一連の連続的な(または逆の連続的な)希釈および濃縮工程を通して洗浄され、そこで血液溶液は、等張液を少なくとも1回加えることによって希釈され、フィルターを通過することで濃縮され、それにより、透析された血液溶液を形成する。
【0031】
血液溶液の赤血球は、一般的に、上述のように洗浄され、赤血球を、赤血球画分に残された血清アルブミンまたは抗体(例えば免疫グロブリン(IgG))のような、残りの細胞外の血漿タンパク質と分離する。その結果、血液溶液中の、精密濾過の膜透過性の種類のもの(膜透過性血漿タンパク質を含む)の量が減少する。
【0032】
細胞の洗浄は、一般的に、赤血球に混入している血漿または血清タンパク質のレベルが実質的に(一般的には、洗浄前の赤血球画分に存在する血漿または血清タンパク質の少なくとも約90%までに)減少したときに完了すると考えられる。さらに洗浄すると、細胞外の血漿タンパク質をRBCからさらに分離し得る。例えば、6倍の体積の等張液を用いたダイアフィルトレーションは、血液溶液から少なくとも約99%のIgGを除去するのに十分であり得る。
【0033】
本発明の方法は、製造作業を遅らせ得る潜在的な膜の汚れの存在を減少させる。例えば、小さいフィブリン分子は、透過性が0.1〜5μmの膜の表面に蓄積すると問題となり得、かつ膜フィルターを汚し得、したがって孔を塞ぐ。汚れが問題となり得るより狭い範囲は、0.2〜0.4μmである。しかし、実施例4に示されるように、フィブリンだけが、潜在的な膜の汚れの全てを占めるのではない。実施例4に示されるように、3つの実験のうち2つでは、脱線維素された全血の細胞の洗浄処理の時間は、100分より長かった。しかし、同体積の脱線維素された全血から得られ、等張の緩衝液中で元の量まで希釈された赤血球画分の細胞の洗浄時間は45分以下であった。
【0034】
さらに、脱線維素は、ある種の赤血球溶解を引き起こす。破れて開いた赤血球、白血球または血小板は、フィルターに粘着し得る。全血の分画、および液体画分からの赤血球画分の分離によって、このような潜在的な汚れのかなりの部分が除去され、それによって、赤血球をダイアフィルトレーションまたは「洗浄」して、代用血液の製造に使用するための精製に要する時間が正常化される。
【0035】
精製された赤血球からヘモグロビン代用血液を調整するために、洗浄された血液溶液の、精製された赤血球は、ヘモグロビン分子を単離するために更に処理され得る。得られた、洗浄された血液溶液は、洗浄された血液溶液中の赤血球を白血球および血小板と分離するための手段、遠心分離法等を施され得る。当技術分野で一般的に公知の、赤血球を他の血球成分から分離する他の方法が用いられ得ることがわかる。例えば、本発明のある態様では、赤血球を沈降によって分離し、この分離方法では、赤血球を他の血液成分から分離する前に、あまり多くのRBCの細胞膜を破らず、その程度はRBCの約5%未満程度である。
【0036】
赤血球の、洗浄された赤血球画分の他の成分からの分離に続いて、RBCは溶解され、ヘモグロビン(Hb)溶液を生成する。溶解の方法には、機械的溶解、化学的溶解、低張性もしくは浸透性溶解、または、Hbの酸素を運搬および放出する能力をあまり損なわずにヘモグロビンを放出する、他の公知の溶解方法が含まれる。
【0037】
溶解に続いて、溶解された赤血球相は、分子量が約100,000ダルトンを超えるタンパク質のような、より大きい細胞残屑を除去するために、限外濾過される。そしてヘモグロビンは、透過物の非Hb成分と分離される。
【0038】
限外濾過の方法、ならびにpH勾配およびクロマトグラフィーによる、Hbの、非Hb成分との分離方法は、米国特許第5,691,452号にさらに記されており、これは参照により全体が組み込まれている。
【0039】
好ましくは、Hb溶出液は重合する前に酸素を除去され、さらに処理してヘモグロビンベース酸素担体にするために、脱酸素化Hb溶液(以後はデオキシHb)を形成する。好ましい態様において、脱酸素は、酸素ヘモグロビン(metHb)の形成では起こるような、Hb溶出液中のHbの、酸素を運搬および放出する能力の明らかな減少無しに、Hbから酸素を実質的に除去する。あるいは、ヘモグロビン溶液は、N-アセチル-L-システイン(NAC)、システイン、亜ジチオン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸塩からなるグループから選択される還元剤を用いた化学的排除によって酸素を除去され得る。脱酸素の適切な方法は、1995年6月7日に出願された米国特許第5,895,810号に記されており、これは本明細書中に、参照により全体が組み込まれている。
【0040】
脱酸素化ヘモグロビン溶液は、さらに処理されてヘモグロビンベース酸素担体にされ得る。本明細書中に定義されるように、「ヘモグロビンベース酸素担体」は、ヒト、哺乳類および他の脊椎動物での使用に適切な、ヘモグロビンベースの組成物であり、少なくとも酸素を生命に必須の器官および組織へ運搬および送致することができ、血管内の充分なコロイド浸透圧を維持することができ、その中のヘモグロビンは赤血球から単離されたものである。「脊椎動物」は、ヒト、または、酸素を組織へ運搬するために循環器系で血液を用いる他のあらゆる脊椎動物を含む。
【0041】
「安定な重合ヘモグロビン」は、本明細書中で定義されるように、適切な保存温度における、約2年以上の期間に渡る保存期間中に、分子量の分布および/またはメトヘモグロビン含量が実質的に増加または減少しない、ヘモグロビンベース酸素担体組成物の成分である。1年以上の保存のための適切な保存温度は、約0℃〜約40℃である。好ましい保存温度範囲は、約0℃〜約25℃である。
【0042】
適切な低酸素環境、または実質的に無酸素の環境は、ヘモグロビンベース酸素担体と接触する酸素の、少なくとも約2箇月の保存期間、好ましくは少なくとも約1年、さらに好ましくは少なくとも約2年に渡る累計量として定義され、その環境下ではヘモグロビンベース酸素担体中でメトヘモグロビン濃度が約15重量%未満になる。酸素の累計量には、ヘモグロビンベース酸素担体パッケージングへの酸素の漏出による酸素に加え、ヘモグロビンベース酸素担体およびパッケージングの元の酸素含量を含む。
【0043】
この方法を通して、RBCの採集からヘモグロビンの重合まで、血液溶液、RBCおよびヘモグロビンは、約20℃未満で0℃を超える温度を維持するなど、微生物の成長、またはバイオバーデンを最小化するのに十分な条件下で維持される。好ましくは、温度は約15℃以下に維持される。さらに好ましくは、温度は10±2℃に維持される。
【0044】
この方法では、安定な重合ヘモグロビンベース酸素担体を調整する処置のための成分の一部は、無菌の製品を生産するために十分衛生的にされる。「無菌の」とは、当技術分野で、特にアメリカ薬局方のUSP XXII、Section 71、1483〜1488ページに規定されている無菌状態に関する要件で、定義されている。さらに、プロセスの流れを施された成分の一部は、通常加工されるか、プロセスの流れと反応しない、またはこれと混入しない物質で覆われる。このような物質には、ステンレス鋼、およびハステロイのような他の合金が含まれ得る。
【0045】
ある態様では、重合はHbの分子内架橋によって起こる。デオキシHbと混合されたメルカプト化合物の量は、重合の間、Hbの分子内架橋を増加させるために十分多く、高いイオン強度によって、Hb分子の分子間架橋をあまり減少させないために十分に少ない。一般的に、約0.25モル〜約5モルのデオキシHbを酸化安定化するには、約1モルのメルカプト官能基(-SH)が必要である。
【0046】
任意に、酸化安定化されたデオキシHbを重合する前に、適切な量の水が、重合反応装置に加えられる。ある態様では、適切な量の水は、酸化安定化されたデオキシHbが重合反応装置に加えられたときに、濃度が約10〜約100 g/lの溶液になるような量である。好ましくは、その水は低酸素である。
【0047】
重合反応装置中の、酸化安定化されたデオキシHb溶液の温度は、酸化安定化されたデオキシHbの重合が、架橋剤と接触させたときに最適になる温度まで上げられる。一般的には、酸化安定化されたデオキシHbの温度は、約25〜約45℃であり、好ましくは重合を通じて約41〜約43℃である。重合反応装置を温めるための、容認できる熱伝導手段の一例は、ジャケットを通して熱いエチレングリコールを送ることによって温められる、ジャケット付き暖房装置である。
【0048】
酸化安定化されたデオキシHbは、次に、酸化安定化したデオキシHbを重合させて重合ヘモグロビン(ポリ(Hb))の溶液を形成するのに十分な温度で、約2時間〜約6時間の間、適切な架橋剤にさらされる。適切な量の架橋剤は、分子内架橋がHbを安定化するのを可能にし、また分子間架橋がHbの多量体を形成するのを可能にし、それによって血管内の保持力を高めるような量である。一般的に、適切な量の架橋剤は、架橋剤のHbに対するモル比が約2:1より多い量である。好ましくは、架橋剤のHbに対するモル比は、約20:1〜40:1の間である。
【0049】
適切な架橋剤の例には、Hbタンパク質を架橋する、グルタルアルデヒド、スクシンジアルデヒド、活性化型のポリオキシエチレンおよびデキストランのような多官能基の薬剤、グリコールアルデヒド、N-マレイミド-6-アミノカプロイル-(2'-ニトロ,4'-スルホン酸)-フェニルエステル、m-マレイミド安息香酸-N-ヒドロキシコハク酸エステル、スクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホスクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシコハク酸エステル、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホコハク酸エステル、N-スクシニミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、スルホスクシニミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、スクシニミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチラート、スルホスクシニミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチラート、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)塩酸カルボジイミド、N,N'-フェニレンジマレイミドのようなα-ヒドロキシアルデヒド、および、特にビス-イミド酸類、アシルジアジド類またはアリールジハロゲン類に属する化合物が含まれる。
【0050】
ポリ(Hb)は、Hb分子の実質的な部分(例えば、少なくとも約50%)がポリ(Hb)中で化学結合している場合、有意な分子内架橋を有すると規定される。
【0051】
好ましい態様では、グルタルアルデヒドは架橋剤として使用される。典型的には、1kgの酸化安定化デオキシ-Hb当たりに約10〜約70 gのグルタルアルデヒドが使用される。より好ましくは、1kgの酸化安定化デオキシ-Hb当たりに約29〜31 gのグルタルアルデヒドが添加されるまで、グルタルアルデヒドは5時間をかけて添加される。
【0052】
使用される架橋剤がアルデヒドでない場合、形成されるポリ(Hb)は一般に安定なポリ(Hb)である。使用される架橋剤がアルデヒドである場合、形成されるポリ(Hb)は、ポリ(Hb)の不安定な結合を低減するための安定な還元剤と混合して、安定な結合が形成されるまで一般的に安定ではない。適切な還元剤の例としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、トリメチルアミン、t-ブチルアミン、モルホリンボランおよびピリジンボランが挙げられる。ポリ(Hb)溶液は、任意に、ポリ(Hb)溶液の濃度が約75〜約85g/lに増大するまで限外濾過により濃縮される。例えば、適切な限外濾過膜は30,000ダルトン濾過膜(例えば、Millipore(登録商標) HeliconTM Cat # CDUF050LT; Amicon(登録商標)Cat# 540430, Bedford, MA)である。
【0053】
次いで、還元剤を保存し、水素ガス形成(続く還元の間にHbを変性しうる)を防止するために、ポリ(Hb)溶液のpHはアルカリpH範囲に調整される。ポリ(Hb)は、典型的には精製され、非重合ヘモグロビンが除去される。これは、ダイアフィルトレーションまたはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(例えば、1995年6月7日に出願された米国特許第5,691,453号参照、これはその全体が参考として本明細書中に援用される)により達成されうる。pH調整後、少なくとも1つの還元剤、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム溶液が重合工程に添加される。次いで、安定なポリ(Hb)のpHおよび電解質は、適切なpHおよび生理的電解質レベルを有するダイアフィルトレーション溶液を用いる安定なポリ(Hb)のダイアフィルトレーションにより生理的レベルに回復し、安定な重合ヘモグロブリンベース酸素担体が形成される。
【0054】
ヘモグロビンの適切な架橋法およびヘモログロビンベース酸素担体の適切な保存法は、1997年11月25日に発行された米国特許第5,691,452号に詳細に考察されている。これはその全体が参考として本明細書中に援用される。
【0055】
本発明の方法により形成される、ヘモグロビンベース酸素担体を受容しうる脊椎動物としては、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、ウマ、またはヒツジ等の哺乳動物が挙げられる。さらに、上記ヘモグロビンベース酸素担体を受容しうる脊椎動物としては、胎仔(出生前の脊椎動物)、出生後の脊椎動物、または出生時の脊椎動物が挙げられる。
【0056】
本発明のヘモグロビンベース酸素担体は、1つ以上の注射法により、脊椎動物の循環系にヘモグロビンベース酸素担体を直接的および/または間接的に注射することにより循環系に投与されうる。直接的注射法の例としては、静脈内および動脈内注射等の血管内注射、および心臓内注射が挙げられる。間接的な注射法の例としては、ヘモグロビンベース酸素担体がリンパ系により循環系に輸送される腹腔内注射、皮下注射、または外套針もしくはカテーテルによる骨髄への注射が挙げられる。好ましくは、ヘモグロビンベース酸素担体は静脈内に投与される。
【0057】
処置される脊椎動物は、ヘモグロビンベース酸素担体の注入前、注入中、および/または注入後に、正常血液量、血液量過多または循環血液量減少でありうる。ヘモグロビンベース酸素担体は、トップローディング等の方法および交換法により循環系に入れられる。
【0058】
ヘモグロビンベース酸素担体は、貧血、ショック、および循環系の一部または全体のRBC流量の減少を含む多くの異なる原因により生じる脊椎動物内の低酸素組織を処置するために治療的に投与されうる。さらに、ヘモグロビンベース酸素担体は、脊椎動物の組織または循環系全体へのRBC流量の考えられる、または予期される減少から生じうる脊椎動物の組織の酸素欠乏を防止するために予防的に投与されうる。特に部分的な動脈閉塞または微小循環の部分的な封鎖に由来する低酸素血症を治療的または予防的に処置するためのヘモグロビン投与のさらなる考察、およびそこで使用される投与量は、1995年3月23日に出願された米国特許第5,854,209号に提供されており、これはその全体が参考として本明細書中に援用される。
【0059】
典型的には、ヘモグロビンベース酸素担体の適切な用量または用量の組み合わせは、血漿に含まれたときに脊椎動物の血液中で約0.1〜約10g Hb/dlの総ヘモグロビン濃度を生じる量であり、大容積の血液減少を補う必要がある場合にはそれよりも高い総ヘモグロビン濃度を生じる量である。
【0060】
本発明は、以下の実施例によってさらにかつ詳細に記載される。
【実施例】
【0061】
実施例1−ベンチスケール実験
図面を参照することにより、ウシの全血を抗凝固剤(EDTA)を有するコンテナに収集し、遠心機27(JA-10ローターを用いたBeckman J2-21)において2,600rpm(1,200×G)で4℃にて30分間遠心分離に供し、全血を重相(赤血球画分、または細胞成分)および軽相(液体画分)に分離した。血液の出発容積は200mlであった。赤血球画分および液体画分を分離し、各相をベンチスケール細胞洗浄システムにおいて処理した。液体画分を直接処理した。赤血球画分を再循環容器28に入れ、等張性クエン酸塩/生理食塩水バッファー(無水クエン酸ナトリウム6.0g/L、塩化ナトリウム8g/L)で元の容積に希釈した。再循環容器を取り囲む再循環ジャケット30中の適切な媒体の再循環により、再循環容器を適切な温度で維持した。希釈した赤血球画分(例えば、血液溶液)をフィルター装置46(Microgon Minikrosサンプラー)に通し、血液溶液を透過物および残渣に分離した。透過物を目盛り付きシリンダーに収集した。残渣をライン60により再循環容器に戻した。圧力をライン42の圧力投入圧力ゲージ(0〜30PSI)および出口圧力ゲージ(0〜15PSI)によりモニターした。400mlの膜透過物(2残渣容積)が得られるまで、細胞成分をベンチスケールシステムにおいて等張性クエン酸塩/生理食塩水バッファーで洗浄した。データを表1に要約する。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から理解されうるように、液体画分は、微量濾過膜の汚れを含む。なぜならば、液体画分の処理が赤血球画分の処理よりも遅かったからである。
【0064】
実施例2−ベンチスケール実験II
ウシ血液を、クエン酸ナトリウム抗凝固剤を含む消毒したステンレススチールコンテナに収集し、第2の遠心機タイプ、CEPA Tubular Bowl Centrifuge (New Brunswick Scientific Co, Edison, NJ)においてバッチ遠心分離に供し、赤血球画分および液体画分を生成した。遠心機を2つのフィード構成で操作した。第1の構成では、フィードを蠕動ポンプでポンピングし、第2の構成では血液をサイフォンを用いて添加した。各構成から得られた赤血球画分を、ウシ血液の本来の容積に希釈し、等張性クエン酸塩/生理食塩水バッファーを有する血液溶液を生成した。対照として、遠心分離をしていないクエン酸塩添加全血を独立したサンプルとして含ませた。3残渣容積の透過物(約600ml)が得られるまで、サンプルをベンチスケール洗浄装置で洗浄し、浸透液を得た。データを表2に要約する。
【0065】
【表2】

【0066】
表2から理解されうるように、赤血球画分からの液体画分の除去を生じた遠心分離は、細胞洗浄の速度を増大させた。
【0067】
実施例3−パイロットスケール実験
血液を3頭の動物からプールし、実施例2に記載される抗凝固剤で処理した。処理したプール血液をWestfalia(Northvale, NJ)SA-1またはSB-7遠心機において遠心分離して赤血球画分および液体画分を作製するか、対照として直接洗浄した。赤血球画分をパイロットスケール洗浄システムを用いて洗浄した。
【0068】
赤血球画分を、ポンプ(Watson-Marlowポンプ、Wilmington, MA)を用いて濾過器に通した。濾過器を通過後、赤血球画分を再循環容器に入れ、等張性クエン酸塩/生理食塩水バッファーで希釈した。再循環容器の容積は9.6リットルであった。再循環容器を取り囲む再循環ジャケットを通るエチレングリコールの再循環により、再循環容器を適切な温度で維持した。赤血球画分/バッファー混合物を、ポンプ(Waukesha, Delavan, WI)を用いて濾過膜(Microgon)に通し、赤血球画分/バッファー混合物を透過物および残渣に分離した。透過物をフロアスケールで透過物収集コンテナに入れた。残渣を再循環容器に戻した。圧力を、フィード圧ゲージおよび残渣圧ゲージを用いてモニターした。3ダイアフィルトレーション容積の全てを保持細胞上に通した。データを表3に要約する。
【0069】
【表3】

【0070】
表3から理解されうるように、SA-1またはSB-7遠心機のいずれかで遠心分離した血液由来の赤血球画分は、クエン酸塩添加全血と比べて処理時間が大いに減少した。理論に束縛されることを望まないが、全血をSA-1遠心機で遠心分離した場合、 SB-7と比べて細胞洗浄時間は大いに減少した。なぜなら、SB-7は、細胞の有意な溶解を生じ、その間質が微小濾過膜に堆積しうるからであった。
【0071】
実施例4−遠心分離有り無しでの処理時間に対する脱線維素の影響
2頭のウシ由来の約4リットルの血液をプールし、機械的撹拌により脱線維素を行った。血液は、約400gのヘモグロビンを含有していた。得られた脱線維素血液は、12g/Lのヘモグロビンを含有していた。脱線維素血液を遠心分離して、残留した約5〜10%の血漿を有する赤血球画分を得るか、または遠心分離しなかった。脱線維素赤血球画分および脱線維素全血を、5ダイアフィルトレーション容積を収集した以外は実施例3に記載のように洗浄した。両方のサンプルの出発容積は7リットルであった。
【0072】
【表4】

【0073】
表4に示される第1の実験では、脱線維素赤血球画分および脱線維素全血の細胞洗浄の速度は両方とも非常に速く、遠心分離は処理時間を改善しなかった。しかし、実験2および3では、細胞洗浄の速度は、脱線維素全血と比べて脱線維素赤血球画分について改善され、膜の汚れは、脱線維素によって除去されなかったことを示した。それゆえ、遠心分離は、全血および脱線維素血液の両方について細胞洗浄能力を改善する。
【0074】
均等物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様の多くの均等物を認識するか、または過度の実験を要することなく確認することができる。これらおよび他の全てのかかる均等物は、以下の特許請求の範囲により包囲されると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図は本発明の方法を実施するために適切な装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 赤血球画分および液体画分が形成される、全血の分離工程;および
b) 精製された赤血球を形成するために赤血球画分をダイアフィルトレートする工程;
を含む、赤血球の精製方法。
【請求項2】
全血が、全血における赤血球の沈降により分離される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
赤血球の沈降が全血を遠心分離することにより得られる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
全血の遠心分離が本質的に赤血球からなる赤血球画分を生じる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
全血が約10×G〜約12,000×Gの範囲のG力に曝されることにより分画される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
液体画分が、工程a)後にデカントにより赤血球画分から除去される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
液体画分が、液体画分と赤血球画分の分離と同時に赤血球画分から除去される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
全血が線維素を除去される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
全血が機械的に線維素を除去される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
全血が抗凝固剤で処理される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
抗凝固剤が、クエン酸ナトリウム、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) およびオキシル酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗凝固剤がクエン酸ナトリウムである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗凝固剤がヘパリンである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
精製した赤血球を溶解する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
精製した赤血球が機械的に溶解される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
精製した赤血球が浸透圧的に溶解される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
液体画分が全血の赤血球の大部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
赤血球画分が全血の白血球および血小板の大部分を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
赤血球画分が、約0.1μm〜約5μmの範囲の浸透性を有するメンブレンでダイアフィルトレートされる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
全血がウシ全血である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
a) 赤血球画分および液体画分が形成される、全血の分離工程;
b) 精製された赤血球を形成するために赤血球画分をダイアフィルトレートする工程;および
c) 精製された赤血球の溶解産物を形成する、精製された赤血球の溶解工程
を含む、ヘモグロビン代用血液における使用のための精製された赤血球の溶解産物を形成する方法。
【請求項22】
全血が機械的に線維素を除去される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
全血が、クエン酸ナトリウム、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) およびオキシル酸ナトリウムからなる群より選ばれる抗凝固剤で処理される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
全血が全血を遠心分離することにより分画される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
精製された赤血球が機械的に溶解される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
全血がウシ全血である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
a) 赤血球画分および液体画分が形成される、遠心分離による脱線維素ウシ全血の分離工程;
b) 精製された赤血球を形成するために赤血球画分をダイアフィルトレートする工程;および
c) 精製された赤血球の溶解産物を形成する、精製された赤血球の機械的な溶解工程
を含む、ヘモグロビン代用血液における使用のための精製された赤血球の溶解産物を形成する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−500317(P2006−500317A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−572593(P2003−572593)
【出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2002/006799
【国際公開番号】WO2003/074077
【国際公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(501013592)バイオピュア コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】