説明

分離回収装置

【課題】使用済クーラントから各成分を再利用可能に分離するとともに、一次遠心処理工程及び二次遠心処理工程のそれぞれの処理時間を近似させ、生産効率の向上を図ることのできる分離回収装置の提供を課題とするものである。
【解決手段】分離回収装置1は、ボウル状の一次回転体7及び一次回転駆動部8を備える一次遠心分離部9と、使用済クーラント2を一時的に貯留する使用済クーラント貯留槽10と、一次回転体7の回転速度を変化させる一次回転速度制御部11と、回収砥粒3及び破砕砥粒4を分別する砥粒分別回収部12と、ボウル状の二次回転体13及び二次回転駆動部14を備える二次遠心分離部15と、一次遠心分離液16を吐出する一次遠心分離液貯留槽17と、二次回転体13の回転速度を変化させる二次回転速度制御部18とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離回収装置に関するものであり、特に遊離砥粒方式を採用したワイヤーソー切断装置を利用してシリコン材料を切断する際に発生する使用済クーラントから、砥粒、シリコンスラッジ、及びクーラントをそれぞれ分離して再利用可能に回収する分離回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種半導体素子や太陽電池パネルの太陽電池素子等に使用される多結晶性或いはアモルファス性のシリコン材料が製造されている。ここで、結晶成長した直後のシリコン材料は、一つの大きなブロック状の塊であり、上記各素子等として使用するために予め規定されたサイズにカットする必要がある。このとき、シリコン材料をカットする切断工程において、クーラントに砥粒を混入させた遊離砥粒方式のワイヤーソー切断装置が利用されることがあり、所定の張力で張設されたワイヤーを高速で稼動させた状態にし、シリコン材料を当該ワイヤーと接触させることにより、ワイヤー及びシリコン材料の接触した部分が切断される。このとき、高速で稼動するワイヤーがシリコン材料と接触することによって当該接触部位に摩擦熱が発生する。係る摩擦熱の発生は、その後のシリコン材料の切削性能に影響を及ぼすことがあり、さらにワイヤーの破損等のトラブルを発生させる要因ともなっている。そのため、摩擦熱の発生を抑え、良好な切断工程を行えるように、切断加工時の接触部位には有機液体からなるクーラントが連続的に供給されている。なお、遊離砥粒方式の場合、当該クーラントに予め規定された配合比率で硬質材料(炭化ケイ素系、アルミナ系(サファイア)等)からなる砥粒が規定量ずつ混入され、クーラントとともに供給されている。これにより、切断時の摩擦熱の発生を抑え、かつ砥粒の供給によって切断性能(シリコン材料の切れ味)を向上させることができる。
【0003】
上記切断工程で使用された使用済クーラントは、ワイヤーソー切断装置から回収され、クーラントとして再利用されている。このとき、使用済クーラントは、切断加工の際に発生するシリコン材料の微細な屑(シリコンスラッジまたはシリコン切削屑)が含まれている。さらに、遊離砥粒方式を採用の場合、予めクーラントと所定比率で混合された砥粒も当該使用済クーラント中に含まれている。そのため、有機液体からなるクーラント以外に、シリコンスラッジ及び砥粒等の固形成分が多く含有していることになり、回収された使用済クーラントをそのままクーラントとして利用することができなかった。したがって、シリコンスラッジ等の固形成分を分離する処理が必要となった。例えば、使用済クーラントからシリコンスラッジ等を遠心分離装置や膜分離フィルタ等の周知技術を用いて分離処理することにより、再利用可能なクーラントを生成する再生技術の開発が行われている(例えば、引用文献1及び引用文献2参照)。
【0004】
なお、混合された砥粒は、シリコンスラッジと比して比重が大であるため、上記シリコンスラッジの遠心分離処理等の前段階として、シリコンスラッジの分離よりも低い遠心力によって、クーラントと混合された砥粒を含む液から当該砥粒のみを容易に分離することができ、回収された砥粒と新しい砥粒(バージン砥粒)とを混ぜることで、砥粒として再利用することが行われている。一方、使用済クーラントから回収されたシリコンスラッジは、製鉄の際の還元剤として使用可能な素材である。そのため、回収された使用済クーラントは、砥粒、シリコンスラッジ、及びクーラントのそれぞれ三成分に分離された後、各成分が個々の用途に応じて再利用することができる。そのため、使用済クーラントに含まれる各成分を有効に活用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した使用済クーラントに含まれる各成分毎に分離し、再利用可能な素材として回収する場合、下記に掲げる問題点を生じることがあった。すなわち、使用済みクーラントに含まれる砥粒には、欠けのない非破砕砥粒(以下、回収砥粒と記載することがある。)と、欠けた破砕砥粒とが混在した。ここで、破砕砥粒とは、切断加工の際に加わる衝撃等によって、欠けや割れ等が生じた砥粒のことである。該非破砕砥粒は、周知の遠心分離装置によってそのほとんどを回収することができた。
【0006】
しかし、破砕砥粒は、混合した砥粒よりも粒径及び質量が小さくなり、周知の遠心分離装置を用いた分離では、シリコンスラッジと破砕砥粒とを分離することが困難であり、非破砕砥粒回収後の使用済クーラントから回収される固形成分は、シリコンスラッジと破砕砥粒とが混合されたものであった。したがって、シリコン純度が低いため、上述した還元剤等としての用途に再利用が限定され、高純度のシリコン材料(シリコンマテリアル)としての使用ができないことがあった。
【0007】
加えて、係る破砕砥粒によって、非破砕砥粒回収後の使用済クーラントを遠心分離する二次遠心処理側の遠心分離装置(特に、スクレーパ等)の磨耗が激しく、遠心分離装置自体及び部品の耐久性に影響を与え、当該部品等の交換頻度が高くなる等の問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、回収砥粒及び破砕砥粒を分離して回収することでシリコンスラッジを高純度のシリコンマテリアルとして再利用可能することともに、遠心分離装置の耐久性を向上させた分離回収装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の分離回収装置は、「遊離砥粒方式を採用してシリコン材料を切断する際に発生する使用済クーラントから砥粒、シリコンスラッジ、及びクーラントを分離し、それぞれ再利用可能に回収する分離回収装置であって、一次開口部を下方に向けて配設されたボウル状の一次回転体、及び、前記一次回転体と接続した一次回転軸及び前記一次回転軸を回転させる一次回転駆動部を有する一次回転機構部を備え、前記使用済クーラントから前記砥粒を除去する一次遠心分離部と、前記使用済クーラントを一時的に貯留する使用済クーラント貯留槽と、前記使用済クーラント貯留槽と配管によって接続され、前記一次開口部から前記一次回転体の内空間に先端が挿入された、貯留された前記使用済クーラントを一次回転体内壁に向けて吐出可能な一次吐出ノズルと、前記一次回転駆動部と電気的に接続され、前記一次回転体の回転速度を変化させる一次回転速度制御部と、前記一次回転速度制御部によって制御された前記回転速度の違いに応じて前記砥粒をそれぞれ前記砥粒としてそのまま再利用可能な回収砥粒及び破砕砥粒に分別して回収する砥粒分別回収部と、二次開口部を下方に向けて配設されたボウル状の二次回転体、及び、前記二次回転体と接続した二次回転軸及び前記二次回転軸を回転させる二次回転駆動部を有する二次回転機構部を備え、前記一次遠心分離部によって前記回収砥粒及び前記破砕砥粒の除去された一次遠心分離液から前記一次回転体の回転速度よりも高速で前記二次回転体を回転させてシリコン材料として再利用可能な前記シリコンスラッジ及び再利用可能な前記クーラントに遠心分離する二次遠心分離部と、前記一次遠心分離液を一時的に貯留する一次遠心分離液貯留槽と、前記一次遠心分離液貯留槽と配管によって接続され、前記二次開口部から前記二次回転体の内空間に先端が挿入された、貯留された前記一次遠心分離液を二次回転体内壁に向けて吐出可能な二次吐出ノズルと」を主に具備している。
【0010】
ここで、本発明の分離回収装置は、使用済クーラントを遠心分離する一次遠心分離部と、一次遠心分離液を遠心分離する二次遠心分離部とを主に具備し、一次遠心分離部よりも二次遠心分離部の方が大きな遠心力で遠心分離するように設計されている。すなわち、使用済クーラントを二段階の遠心分離処理によって分離することができる。さらに、一次遠心分離部の一次回転体の回転速度を制御することで、回収砥粒と破砕砥粒とを分別し、それぞれ回収することが可能となる。なお、砥粒分別回収部は、遠心分離処理によって分離された回収砥粒及び破砕砥粒をそれぞれ回収するものであり、例えば、回収砥粒用及び破砕砥粒用の経路を切り換え可能な分別シューター等として機能するものである。
【0011】
したがって、本発明の分離回収装置によれば、一次遠心分離部及び二次遠心分離部のそれぞれで異なる遠心力を作用させた遠心分離処理が行われ、一次遠心分離部側で回収砥粒及び破砕砥粒が分別して回収され、一方、二次遠心分離部側でシリコンスラッジ及びクーラントが分別して回収される。これにより、使用済クーラントに含まれる各成分を分離して回収し、再利用可能な素材として使用することができるようになる。特に、従来はシリコンスラッジに混在して回収されていた破砕砥粒を分離して回収することができ、破砕砥粒を製鉄の際の還元剤として使用し、一方、分離回収された高純度のシリコンスラッジは、シリコンマテリアルとしての利用が可能となる。これにより、再利用の用途を広げ、有効活用が図られる。なお、二次遠心分離部によって回収されたクーラントに対し、既存の膜分離フィルタを利用して膜分離処理を行うものであってもよい。これにより、さらに高純度に精製されたクーラントが回収され、再利用することができる。
【0012】
さらに、本発明の分離回収装置は、上記構成に加え、「前記二次回転駆動部と電気的に接続され、前記二次回転体の回転速度を変化させる二次回転速度制御部をさらに具備し、前記使用済クーラント貯留槽と電気的に接続され、前記一次回転体内壁に向けて吐出する前記使用済クーラントの吐出量及び吐出間隔を含む一次吐出条件を制御する使用済クーラント吐出条件制御部をさらに有し、前記一次遠心分離液貯留槽と電気的に接続され、前記二次回転体内壁に向けて吐出する前記一次遠心分離液の吐出量及び吐出間隔を含む二次吐出条件を制御する一次遠心分離液吐出条件制御部を」具備するものであっても構わない。
【0013】
したがって、このような構成をさらに具備する本発明の分離回収装置によれば、一次遠心分離部に加え、二次遠心分離部の二次回転体の回転速度を変化して制御する機能をさらに有し、使用済クーラント及び一次遠心分離液の吐出量や吐出間隔等の吐出条件を制御可能な機能を備えている。これにより、一次遠心分離部及び二次遠心分離部での各成分の分離性能をさらに高めることが可能となる。さらに、回転体の回転速度及び使用済クーラント等の吐出条件を調整することによって、一次遠心分離及び二次遠心分離の処理時間をコントロールすることが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の分離回収装置は、上記構成に加え、「前記一次遠心分離部による前記使用済クーラントの第一処理時間、及び、前記二次遠心分離部による前記一次遠心分離液の第二処理時間を生産性向上を目的として近似させる」ものであっても構わない。
【0015】
したがって、このような構成をさらに具備する本発明の分離回収装置によれば、一次遠心分離部による第一処理時間及び二次遠心分離部による第二処理時間を近似させることができる。これにより、一次遠心分離部で処理される使用済クーラントの処理時間(第一処理時間)と、二次遠心分離部で処理される一次遠心分離液の処理時間(第二処理時間)とをほぼ同じに設定することで、二次遠心分離で一次遠心分離液を処理する間に、新たな使用済クーラントを一次遠心分離部に供給し遠心分離処理をすることが可能となる。すなわち、第一処理時間及び第二処理時間を近似することで、各バッチ毎の処理時間をほぼ同じにすることができ、効率的な処理が可能となる。その結果、本発明の分離回収装置を利用したことで、全体としての処理効率(生産性)の向上が可能となる。
【0016】
さらに、本発明の分離回収装置は、上記構成に加え、「前記一次遠心分離部によって前記使用済クーラントから前記砥粒の除去された一次処理液を、前記使用済クーラント貯留槽に戻して、前記使用済クーラントと混合する一次処理液循環部をさらに具備し、前記一次処理液循環部によって循環時間を制御して生成された前記一次処理液は前記一次遠心分離液として前記二次回転体内壁に吐出されるものであり、前記二次遠心分離部によって前記シリコンスラッジの除去された二次処理液を、前記一次遠心分離液貯留槽に戻して、前記一次遠心分離液と混合する二次処理液循環部をさらに具備し、前記二次処理液循環部によって循環時間を制御して生成された前記二次処理液を前記クーラントとする」ものであっても構わない。
【0017】
したがって、このような構成をさらに具備する本発明の分離回収装置によれば、使用済クーラントを一次遠心分離部で遠心分離した後の一次処理液を使用済クーラントと混合し、再び、一次遠心分離部で遠心処理を繰返し、所定の時間(循環時間)循環させることが行われる。これにより、使用済クーラントに含まれる回収砥粒及び破砕砥粒を高い回収率で回収することができる。さらに、一次遠心分離液を二次遠心分離部で遠心分離した後の二次処理液を一次遠心分離液と混合し、再び、二次遠心分離部で遠心処理を繰返し、所定の時間(循環時間)循環させることが行われる。これにより、一次遠心分離液に含まれるシリコンスラッジを回収することができる。
【0018】
さらに、本発明の分離回収装置は、上記構成に加え、「前記使用済クーラント及び前記
一次遠心分離液のそれぞれの液温度を測定する液温度測定部を」具備するものであっても構わない。
【0019】
したがって、このような構成をさらに具備する本発明の分離回収装置によれば、使用済クーラント及び一次遠心分離液の液温度を測定することが行われる。ここで、それぞれの回転体に使用済クーラント等の液体が吐出された場合、発生した遠心力によって熱が生ずることがある。その結果、回収され使用済クーラント(または一次遠心分離液)と混合される一次処理液(または二次処理液)の液温度が高くなっていることがある。遠心分離対象の液体が高温となることによって遠心分離の効率が変化することが知られている。そのため、液温度を測定し、規定された液温度以下での遠心分離を継続するような調整が図られる。本調整は、具体的には吐出条件を制御することで行われる。これにより、分離性能及び分離効率が安定したものとなる。
【0020】
さらに、本発明の分離回収装置は、上記構成に加え、「使用済クーラント貯留槽と一次吐出ノズルとの間に、貯留された前記使用済クーラントの液比重を計測する液比重計測部をさらに具備し、計測された比重値に応じて前記回収砥粒及び前記破砕砥粒に分別する」ものであっても構わない。
【0021】
さらに、本発明の分離回収装置は、上記構成に加え、「前記一次遠心分離部と前記砥粒分別回収部との間に、前記一次遠心分離部によって遠心分離される前記砥粒の比重を計測する砥粒比重計測部をさらに具備し、計測された比重値に応じて前記回収砥粒及び前記破砕砥粒に分別する」ものであっても構わない。
【0022】
したがって、このような構成をさらに具備する本発明の分離回収装置によれば、回収された一次処理液及び使用済クーラント貯留槽に貯留された使用済クーラントが混合した液体、或いは遠心分離された砥粒の比重をそれぞれ計測する比重計(砥粒比重計測部、或いは液比重計測部)の測定値に基づいて砥粒分別回収部の回収先の経路を切換えることが行われる。これにより、回収砥粒及び破砕砥粒が完全に分離した状態で回収可能となる。なお、使用済クーラントの液比重を計測するために使用する比重計として特に制限はないが、例えばコリオリ比重計(オーバル製CA003)を使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の効果として、使用済クーラントに含まれる各成分を個別、かつ高純度で回収することができ、かつ遠心分離装置の耐久性を高め、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第一実施形態の分離回収装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】第一実施形態の分離回収装置を利用した各成分の分離及び回収の流れの一例を示す説明図である。
【図3】一次遠心分離部の構成を示す説明図である。
【図4】分離回収装置を利用した一次遠心処理工程及び二次遠心処理工程の処理時間を示す説明図である。
【図5】第二実施形態の分離回収装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【図6】第二実施形態の分離回収装置を利用した各成分の分離及び回収の流れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態(以下、「第一実施形態」と称す)の分離回収装置1について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は第一実施形態の分離回収装置1の概略構成の一例を示す模式図であり、図2は第一実施形態の分離回収装置1を利用した各成分の分離及び回収の流れの一例を示す説明図であり、図3は一次遠心分離部9の構成を示す説明図であり、図4は分離回収装置1を利用した一次遠心処理工程A及び二次遠心処理工程Bの処理時間を示す説明図である。ここで、第一実施形態の分離回収装置1は、遊離砥粒方式を採用したワイヤーソー切断装置を利用し、ブロック状のシリコンインゴットを予め規定されたサイズにカットするスライシング工程において発生する使用済クーラント2を回収し、当該使用済クーラント2に含まれ、そのまま砥粒として再利用可能なものとして回収される回収砥粒3、砥粒の一部に欠けや割れ等が生じ、還元剤として再利用される破砕砥粒4、スライシング工程の際に生じるシリコンの微細な切削屑からなるシリコンスラッジ5、及び有機液体からなるクーラント6の各成分毎に分離し、再利用可能に回収するものについて例示する。ここで、回収砥粒3及びクーラント6は、それぞれの回収量に応じて新たに補充砥粒及び補充クーラントを加え、所定の混合比率とすることにより遊離砥粒方式のクーラントとして再利用可能となる。一方、破砕砥粒4は、製鉄の際の還元剤としての使用が可能であり、高いシリコン純度で回収されるシリコンスラッジ5は、シリコンマテリアルとしての再利用が可能となる。
【0026】
第一実施形態の分離回収装置1は、図1乃至図4に示すように、ボウル状の一次回転体7及び一次回転体7を高速で回転駆動させる一次回転機構部8を備える一次遠心分離部9と、使用済クーラント2を一時的に貯留する使用済クーラント貯留槽10と、前記使用済クーラント貯留槽10と配管によって接続され、前記一次回転体7の内空間に先端が挿入された、貯留された前記使用済クーラント2を一次回転体7内壁に向けて吐出可能な一次吐出ノズル32と、一次回転機構部8と接続し一次回転体7の回転速度を段階的に変化させる一次回転速度制御部11と、一次遠心分離部9において回転速度の違いによって一次回転体7の発生する遠心力を変化させ、使用済クーラント2に含まれる回収砥粒3及び破砕砥粒4を比重の違いを利用して遠心分離した後に、砥粒を回収する砥粒分別回収部12と、ボウル状の二次回転体13及び二次回転体13を高速で回転させる二次回転機構部14を備える二次遠心分離部15と、一次遠心分離部9によって遠心分離された一次遠心分離液16を一時的に貯留する一次遠心分離液貯留槽17と、前記一次遠心分離液貯留槽17と配管によって接続され、前記二次回転体13の内空間に先端が挿入された、貯留された前記一次遠心分離液16を二次回転体13内壁に向けて吐出可能な二次吐出ノズル36と、二次回転機構部14と接続し二次回転体13の回転速度を変化させる二次回転速度制御部18とを主に具備している。ここで、使用済クーラント貯留槽10は一次回転体7に吐出する使用済クーラント2を貯留するタンク機能を有するとともに、一次吐出ノズル32から所定の圧力で使用済クーラント2を吐出する吐出ポンプ(図示しない)等の構成を含んで構成されている。
【0027】
さらに第一実施形態の分離回収装置1は、その他の構成として、一次遠心分離部9によって回収砥粒3及び破砕砥粒4が回収された一次処理液19を使用済クーラント2と混合し、再び一次回転体7に向けて吐出する一次循環サイクルを所定の循環時間で制御する一次処理液循環部20と、二次遠心分離部15によってシリコンスラッジ5が回収された二次処理液21を一次遠心分離液16と混合し、再び二次回転体13に向けて吐出す二次循環サイクルを所定の循環時間で制御する二次処理液循環部22とを具備している。これにより、使用済クーラント2及び一次遠心分離液16がそれぞれ一次遠心分離部9を使用する一次遠心処理工程A及び二次遠心分離部15を使用する二次遠心処理工程Bにおいて循環し、回転体7,13による遠心分離処理を繰返し受けることになる。
【0028】
さらに、第一実施形態の分離回収装置1には、前記使用済クーラント貯留槽10と電気的に接続され、吐出量及び吐出間隔等の一次吐出条件に基づいて使用済クーラント2の吐出を制御する使用済クーラント吐出条件制御部23の機能が包含され、また、前記一次遠心分離液貯留槽17と電気的に接続され、二次吐出条件に基づいて一次遠心分離液16の吐出を制御する一次遠心分離液吐出条件制御部24の機能も包含している。これにより、上述した回転速度をそれぞれ制御する回転速度制御部11,18及び吐出条件等を制御する吐出条件制御部23,24を利用することで、発生する遠心力の強弱及び吐出条件等によって、一次遠心分離部9及び二次遠心分離部15による分離性能及び処理時間等をコントロールすることができる。係る構成により、一次遠心処理工程A及び二次遠心処理工程Bの処理時間の近似を図ることができる。
【0029】
第一実施形態の分離回収装置1は、上記構成に加え、使用済クーラント2及び一次遠心分離液16のそれぞれの液温度を測定する液温度測定部25と、一次遠心分離部9によって遠心分離された砥粒(回収砥粒3及び破砕砥粒4)の比重を比重計によって測定し、計測された比重値に従って回収砥粒3及び破砕砥粒4をそれぞれ回収する砥粒分別回収部12を制御する砥粒比重計測部26とを具備している。なお、上述した液温度測定部25は、使用済クーラント貯留槽10及び一次遠心分離液貯留槽17の一機能として、本実施形態の分離回収装置1に備えられている。ここで、各液温度の測定は、周知の熱電対等の温度計測手段を利用することができ、一方、比重値の計測もアルキメデスの原理を応用した固体比重計等の周知の比重計測手段を利用することができる。そのため、係る構成についての詳細は省略するものとする。また、液温度測定部25は、上述した使用済クーラント貯留槽10及び一次遠心分離液貯留槽17と独立して設けられているものであっても構わない。
【0030】
さらに、一次遠心分離部9の構成について詳述すると、図3に示すように、ボウル状の一次回転体7は一次開口部27を下方に向けて配設され、一次回転体7の上面28と接続した一次回転軸29及び一次回転軸29を軸回転させるモータ等の一次回転駆動部30を有する一次回転機構部8を備えている。係る構成により、一次回転軸29に沿って高速で一次回転体7を回転させ、一次回転体7の内空間31に遠心力を発生させることができる。係る遠心力は、一次回転速度制御部11によって制御される一次回転体7の回転速度に応じてその強弱を変化させることができる。一次遠心分離部9の遠心力としては、粒径が3μmから50μm程度の粒子を含有する液を処理する場合には、200〜1500Gが好ましく、400〜1000Gがより好ましい。200Gより小さい遠心力の場合、粒径の大きな粒子の分離に時間がかかる可能性があり好ましくない。また、1500Gより大きい遠心力だと、3μm以下の微細な粒子まで分離してしまう可能性があり、含有粒子の分別の観点から好ましくない。さらに、使用済クーラント貯留槽10と接続した一次吐出ノズル32の先端32aが一次開口部27から内空間31に挿入されており、使用済クーラント2を一次回転体7の一次回転体内壁33に向けて吐出することができる。これにより、高速で回転する一次回転体7の内空間31に吐出された液体の使用済クーラント2は遠心力の作用を受け、比重の大きな成分(回収砥粒3及び破砕砥粒4)と、比重の小さな成分(シリコンスラッジ5及びクーラント6)とに分離することができる。なお、一次回転速度制御部11による一次回転体7の回転速度を段階的に制御することにより、発生する遠心力の強さに応じて回収砥粒3及び破砕砥粒4を遠心分離することができる。なお、一次遠心分離液16を二次遠心分離部15によって遠心分離する処理及び二次遠心分離部15の構成において二次遠心分離部15の遠心力としては、粒径がサブμmから数μm程度の粒子を含有する液を処理する場合には、2000〜5000Gが好ましく、2500〜4000Gがより好ましい。2000Gより小さい遠心力の場合、粒子の分離に時間がかかる可能性があり好ましくない。また、5000Gより大きい遠心力は、運転制御が難しいため、現時点の技術では適用するのが困難な可能性がある。その他の構成については、上述した一次遠心分離部9による処理及び構成と略同一であるため、ここでは説明を省略する。さらに、図1等において、使用済クーラント2及び一次遠心分離液16等を移送するポンプ等の移送手段、次工程のために一時的に貯留したり、分離回収後の各成分を貯留する回収槽(回収容器)等については図示を省略している。なお、遠心分離作用によって分離された回収砥粒3及び破砕砥粒4は、一次回転体内壁33に堆積した後、スクレーパ34によって掻取られ、一次開口部27の下方に設けられた砥粒分別回収部12(図3において図示を省略)に回収される。一方、シリコンスラッジ5及びクーラント6を含む一次遠心分離液16(または、一次処理液19)は回収され、一次処理液循環部20を介して循環または二次遠心分離部15に送出される。
【0031】
さらに、砥粒分別回収部12は、砥粒比重計測部26における比重値の計測結果に基づいて回収砥粒3及び破砕砥粒4を分離して回収するものであり、一次遠心分離部9からスクレーパ34を利用して内空間31から排出された砥粒を回収砥粒3及び破砕砥粒4のいずれかに分別するために、それぞれの導出経路を切換える機能を有している。具体的な構成について説明すると、一次回転体7から回収された砥粒の比重値を砥粒比重計測部26において計測し、比重値に基づいて回収砥粒3または破砕砥粒4のいずれかであるかを判断する。その後、当該比重値に基づいて回収砥粒3及び破砕砥粒4毎に導出経路が設けられた分離シューターによってそれぞれの砥粒が回収される。
【0032】
次に、第一実施形態の分離回収装置1を利用した使用済クーラント2の分離及び回収の流れの一例について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、本実施形態の分離回収装置1では、予めワイヤーソー切断装置で使用された使用済クーラント2が回収され、回収槽35に貯留されている。そして、貯留された使用済クーラント2を分離回収装置1で処理するための使用済クーラント貯留槽10に回収槽35から移送する。ここで、使用済クーラント貯留槽10の貯留量は500リットルに設定されている。係る使用済クーラント貯留槽10への使用済クーラント2への移送開始から一次遠心処理工程Aの第一処理時間T1のカウントが開始される。このとき、移送に用いる移送用ポンプ(図示しない)のポンプ性能は、毎分64リットルであり、500リットルの使用済クーラント貯留槽10への移送完了に約7.8分を要する。その後、使用済クーラント貯留槽10に移送された使用済クーラント2を一次吐出ノズル32から一次遠心分離部9の一次回転体7の内空間31に吐出する。
【0033】
このとき、一次遠心分離部9の一次回転体7は高速で軸回転した状態であり、一次回転速度制御部11によって500Gの遠心力が発生するように調整されている。さらに、使用済クーラント2の吐出量は、使用済クーラント貯留槽10に設けられた吐出ポンプ(図示しない)の吐出圧を調整し、毎分80リットルとなるように設定されている。これにより、使用済クーラント2に含まれる、最も比重の大きな成分(回収砥粒3)が一次回転体7の一次回転体内壁33に堆積し、その他の成分は一次処理液19として回収される。そして、回収された一次処理液19は、一次処理液循環部20を介して使用済クーラント貯留槽10で使用済クーラント2と混合され、再び一次回転体7に吐出される。係る循環処理によって、使用済クーラント2に含まれる回収砥粒3が遠心分離作用によって分離される。一次回転体内壁33に堆積した回収砥粒3は、所定時間毎にスクレーパ34によって掻落とされて回収される。このとき、回収砥粒3の判定は砥粒比重計測部26によって計測された比重値に基づいて砥粒分別回収部12を制御することによって行われる。これにより、回収されたままの状態で砥粒としてそのまま再利用可能な回収砥粒3が集積される。
【0034】
規定された循環時間によって制御され、上記回収砥粒3の回収を完了した後、一次遠心分離部9の一次回転体7の回転速度を変化させる。本実施形態の場合、一次回転体7によって発生する遠心力を800Gにする。係る状態で使用済クーラント2(一次処理液19)を一次回転体7に向けて吐出することにより、低速回転の遠心力(500G)では分離することのできなかった破砕砥粒4を一次処理液19から分離することができる。これにより、破砕砥粒4が一次回転体内壁33に堆積する。そして、上記回収砥粒3の処理と同様に規定された循環時間によって制御された後、破砕砥粒4が回収される。このとき、砥粒分別回収部12は破砕砥粒4を回収するための経路にシューター位置が切り換えられている。これにより、使用済クーラント2から比重の異なる二種類の砥粒(回収砥粒3及び破砕砥粒4)の除去が行われる。なお、高速で回転する一次回転体7と接触する使用済クーラント2は、当該接触による摩擦熱によって液温度が高くなることが予想される。係る液温度の上昇は遠心分離処理を安定して行うことができない場合があり、また分離後のクーラント6の改質(変質)のおそれがある。そのため、液温度を所定温度以下に保持すると好ましい場合がある。本実施形態の分離回収装置1では、吐出する使用済クーラント2(または一次処理液19)の液温度を計測し、吐出を制御することができる。
【0035】
すなわち、液温度の値によっては、吐出を間欠的に行うことなど、液温度の上昇を抑える処理を行うことができる。係る処理を経て一次遠心分離部9による遠心分離処理が完了する。ここで、一次遠心分離部9による使用済クーラント2の遠心処理に要する時間は、本実施形態の場合、150分に設定されている。その後、一次遠心処理の完了した一次遠心分離液16を二次遠心分離部15による遠心分離処理を行うための一次遠心分離液貯留槽17に移送する。また、個々に回収された回収砥粒3及び破砕砥粒4をそれぞれの回収容器から移送する。これにより、一次遠心処理側から使用済クーラント2等の排出が完了する。係る処理の完了までは発明における第一処理時間T1に相当し、本実施形態では160分に設定されている。上述した移送→遠心分離→移送に係る処理を1サイクルとして、一次遠心処理が連続的に行われる。すなわち、後述する二次遠心分離部15を用いた二次遠心処理が行われている間、新たに回収槽35から移送された別セットの500リットルの使用済クーラント2に一次遠心処理が並行して実施される。これにより、一次遠心分離部9及び二次遠心分離部15の稼動効率を高くすることができ、分離回収装置1によるクーラント6等の各成分の回収効率(生産効率)を向上させることができる。
【0036】
一方、一次遠心分離部9を経て、一次遠心分離液貯留槽17に移送された一次遠心分離液16は前工程の処理によって、砥粒が除去されたことによってその容積が約20%減の401リットルになっている。そして、係る一次遠心分離液16を二次遠心分離部15を利用して遠心分離処理をする。なお、遠心分離処理の具体的な流れは、一次遠心分離部9における処理と略同一であるため詳細な説明は省略するものとする。
【0037】
このとき、二次遠心分離部15では、比重の大きな砥粒(回収砥粒3及び破砕砥粒4)の除去が完了しているため、より高速の回転速度で二次回転体13を回転させ、シリコンスラッジ5とクーラント6との固液分離が行われる。二次回転体13による遠心力は、一次回転体7によりも高く設定され、本実施形態の場合、2000G〜3000Gの間になっている。また、必要に応じて一次遠心分離液16の液温度に基づいて吐出条件等を制御しても構わない。係る処理により、シリコンスラッジ5が二次回転体13の二次回転体内壁(図示しない)に堆積し、二次処理液21が回収され、さらに二次処理液21の循環を繰返すことにより、最終的にシリコンスラッジ5とクーラント6とに完全に分離することができる。なお、本実施形態の分離回収装置1の場合、二次遠心分離部15による一次遠心分離液16の遠心処理に要する時間は132.5分に設定されている。また、二次遠心分離部15による二次遠心処理の開始から回収されたシリコンスラッジ5及びクーラント6の移送処理の完了までに要する時間(第二処理時間T2)は、134分に設定されている。
【0038】
ここで、一般的には砥粒を遠心分離する一次遠心側の処理に対し、シリコンスラッジ等を一次遠心側よりも高い遠心力で遠心分離する二次遠心側の処理時間の方が一般的に長くなる傾向がある。しかしながら、上述したように、第一処理時間T1及び第二処理時間T2を揃えることで、一次遠心分離液16が二次遠心分離処理を受けるまでの待機時間を短くすることが可能となり、分離回収装置1全体の処理効率を向上させるために特に好適である。なお、上記二次遠心処理工程Bが完了した後は、新たに一次遠心処理工程Aを経た別セットの一次遠心分離液16が二次処理槽に移送され、上記と同様の処理が繰り替えされる。これにより、大量の使用済クーラント2を一次遠心処理工程A及び二次遠心処理工程Bを経て各成分毎に分離回収する処理が効率的となる。
【0039】
本実施形態の分離回収装置1によって分離されたクーラント6は、さらに既存の膜分離技術を利用して膜分離処理が行われる。これにより、クーラント6中に残存する微細な夾雑物等を除去し、高純度のものとすることができる。
【0040】
以上説明したように、第一実施形態の分離回収装置1によれば、一次遠心分離部9及び二次遠心分離部15を備え、回転体7,13で発生する遠心力を変化させることで比重差を利用して各成分をそれぞれ回収することができる。さらに、従来は破砕砥粒4及びシリコンスラッジ5が混在した状態で回収され、還元剤としての用途に限定されていたものを、いずれも高純度の破砕砥粒4及びシリコンスラッジ5として回収することができる。特に、シリコン純度の高いシリコンスラッジ5を回収することができるため、リサイクル可能なシリコンマテリアルとして各種用途に有効的に活用することができる。
【0041】
加えて、一次遠心分離部9で破砕砥粒4を回収したことにより、二次遠心分離部15の負荷を軽減することができ、二次遠心処理工程Bの処理を短縮化することができる。その結果、一次遠心処理及び二次遠心処理の各工程の処理時間T1,T2を近似化することができ、分離処理システム全体の効率化を図ることができる。さらに、二次遠心分離部15によって遠心分離処理をする一次遠心分離液16は、砥粒がほとんど残留していないため、硬質の物質(砥粒)によって二次回転体13及びその他の設備(スクレーパ34、吐出ノズル等)の磨耗や傷付きを防ぐことができる。そのため、分離回収装置1の全体としての耐久性を向上させることができる。
【0042】
次に、本発明の第二実施形態の分離回収装置40について、図5及び図6に基づいて主に説明する。ここで、図5は第二実施形態の分離回収装置40の概略構成の一例を示す模式図であり、図6は第二実施形態の分離回収装置40を利用した各成分の分離及び回収の流れの一例を示す説明図である。なお、第二実施形態の分離回収装置40において、説明を簡略化するため、第一実施形態の分離回収装置1との相違する構成及びこれに基づく作用効果について特に示し、その他の同一構成については同一符号を付し詳細な説明は省略するものとする。
【0043】
第二実施形態の分離回収装置40は、図5及び図6に示すように、第一実施形態の分離回収装置1と略同一の構成を具備するものであり、使用済クーラント41を一時的に貯留する使用済クーラント貯留槽42と一次吐出ノズル32との間に、貯留された使用済クーラント41の液比重を計測する液比重計測部43を具備している点において相違するものである。さらに、液比重計測部43は、計測された使用済クーラント41の液比重の値に応じて砥粒分別回収部12を制御し、回収砥粒3及び破砕砥粒4をそれぞれ回収することができる。なお、液比重の計測される使用済クーラント41は、使用済クーラント貯留槽42に回収槽から移送されたままの“使用済クーラント”と一次遠心分離部9を経て一次処理液19と混合された“混合済の使用済クーラント”の双方を含むものとして本明細書において定義する。
【0044】
次に、第二実施形態の分離回収装置40を利用した使用済クーラント41の分離及び回収の流れについて、特に使用済クーラント41の液比重を計測することにより、回収砥粒3及び破砕砥粒4を分別及び回収する一次遠心分離部44の処理の流れの一例について説明する。二次遠心分離部15による処理については第一実施形態と同一であるため説明は省略する。なお、使用済クーラント貯留槽42には、回収槽35から移送された使用済クーラント41が貯留されている。ここで、第二実施形態における使用済クーラント41に含まれる砥粒、シリコンスラッジ、及びクーラントの比重がそれぞれ、砥粒=3.2、シリコンスラッジ=2.3、及びクーラント=1.1であり、使用済クーラント41全体では、1.7の値を示すものを処理する例について説明する。
【0045】
一次回転体7により発生する遠心力(500G)及び吐出条件(毎分80リットル)等を同一に設定し、使用済クーラント貯留槽42に貯留された使用済クーラント41を吐出ノズルから吐出する。このとき、使用済クーラント貯留槽42と一次吐出ノズル32の間の位置に設けられた液比重計測部43によって、一次回転体7に吐出する直前の使用済クーラント41の液比重の計測が連続的に行われる。そして、計測された液比重値に基づいて、砥粒分別回収部12が制御され、回収砥粒3及び破砕砥粒4を分別した回収が行われる。前述したように、初期状態の使用済クーラント41の比重は、ここでは1.7である。そのため、一次回転体7による遠心分離を開始した直後は、液比重計測部43によって計測される比重値は1.7となる。そして、一次回転体7から回収された一次処理液19を循環させ、使用済クーラント貯留槽42に戻り、使用済クーラント41と混合された液の液比重は、初期に回収砥粒3が回収されたことにより、1.7から徐々に低下する。このとき、使用済クーラント41には、上記のとおり比重の異なる物質が複数含まれているため、液比重の減少率が変化する点(変曲点)が存在する。本変曲点は、予め測定されている(第二実施形態の場合、1.3)。すなわち、該変曲点に基づいて、一次遠心分離部44による遠心分離処理を繰返し、当初設定した比重値の変曲点に到達したら液比重計測部43から砥粒分別回収部12による回収を切換える制御がなされ、それ以後は破砕砥粒4が回収される。上記処理を設定した循環時間継続することにより、一次遠心分離部44による処理が完了する。その後、一次回転体7から回収された一次処理液19を一次遠心分離液16として、二次遠心分離部15に移送する。
【0046】
すなわち、第二実施形態の分離回収装置40によれば、一次回転体7への吐出直前の使用済クーラント41の液比重値を測定し、予め設定した液比重値の減少率が変化する変曲点の前後で回収砥粒3及び破砕砥粒4を切換えてそれぞれを分別して回収することができる。したがって、使用済クーラント41の液比重を連続的に計測することが可能であり、第一実施形態の分離回収装置1と比べてより簡便に比重による分別制御を行うことができる。したがって、使用済クーラント41の液比重を計測することが特に好適と考えられる。
【0047】
以上、本発明について、好適な第一及び第二実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
すなわち、第一及び第二実施形態の分離回収装置1,40において一次遠心処理工程A及び二次遠心処理工程Bにおいて、使用済クーラント2及び一次遠心分離液16をそれぞれ循環させるものを示したが、これに限定されるものではなく、分離対象の成分の比重差が著しく大きな場合には、上記循環処理を省略するものであっても構わない。さらに、処理時間T1,T2の近似を図るために、回転体7,13の回転速度、使用済クーラント2等の液温度及び吐出条件等の複数のパラメータに基づいてそれぞれを制御するものを示したがこれに限定されるものではなく、単一のパラメータで制御するものであっても構わない。さらに、一次遠心処理工程A及び二次遠心処理工程Bのいずれかの遠心処理工程のみ制御するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1,40 分離回収装置
2,41 使用済クーラント
3 回収砥粒
4 破砕砥粒
5 シリコンスラッジ
6 クーラント
7 一次回転体
8 一次回転機構部
9,44 一次遠心分離部
10,42 使用済クーラント貯留槽
11 一次回転速度制御部
12 砥粒分別回収部
13 二次回転体
14 二次回転機構部
15 二次遠心分離部
16 一次遠心分離液
17 一次遠心分離液貯留槽
18 二次回転速度制御部
19 一次処理液
20 一次処理液循環部
21 二次処理液
22 二次処理液循環部
23 使用済クーラント吐出条件制御部
24 一次遠心分離液吐出条件制御部
25 液温度制御部
26 砥粒比重計測部
27 一次開口部
29 一次回転軸
30 一次回転駆動部
31 内空間
32 一次吐出ノズル
36 二次吐出ノズル
43 液比重計測部
A 一次遠心処理工程
B 二次遠心処理工程
T1 第一処理時間
T2 第二処理時間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2010−253621号公報
【特許文献2】特開2010−253622号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離砥粒方式を採用してシリコン材料を切断する際に発生する使用済クーラントから砥粒、シリコンスラッジ、及びクーラントを分離し、それぞれ再利用可能に回収する分離回収装置であって、
一次開口部を下方に向けて配設されたボウル状の一次回転体、及び、前記一次回転体と接続した一次回転軸及び前記一次回転軸を回転させる一次回転駆動部を有する一次回転機構部を備え、前記使用済クーラントから前記砥粒を除去する一次遠心分離部と、
前記使用済クーラントを一時的に貯留する使用済クーラント貯留槽と、
前記使用済クーラント貯留槽と配管によって接続され、前記一次開口部から前記一次回転体の内空間に先端が挿入された、貯留された前記使用済クーラントを一次回転体内壁に向けて吐出可能な一次吐出ノズルと、
前記一次回転駆動部と電気的に接続され、前記一次回転体の回転速度を変化させる一次回転速度制御部と、
前記一次回転速度制御部によって制御された前記回転速度の違いに応じて前記砥粒をそれぞれ前記砥粒としてそのまま再利用可能な回収砥粒及び破砕砥粒に分別して回収する砥粒分別回収部と、
二次開口部を下方に向けて配設されたボウル状の二次回転体、及び、前記二次回転体と接続した二次回転軸及び前記二次回転軸を回転させる二次回転駆動部を有する二次回転機構部を備え、前記一次遠心分離部によって前記回収砥粒及び前記破砕砥粒の除去された一次遠心分離液から前記一次回転体の回転速度よりも高速で前記二次回転体を回転させてシリコン材料として再利用可能な前記シリコンスラッジ及び再利用可能な前記クーラントに遠心分離する二次遠心分離部と、
前記一次遠心分離液を一時的に貯留する一次遠心分離液貯留槽と、
前記一次遠心分離液貯留槽と配管によって接続され、前記二次開口部から前記二次回転体の内空間に先端が挿入された、貯留された前記一次遠心分離液を二次回転体内壁に向けて吐出可能な二次吐出ノズルと
を具備することを特徴とする分離回収装置。
【請求項2】
前記二次回転駆動部と電気的に接続され、前記二次回転体の回転速度を変化させる二次回転速度制御部をさらに具備し、
前記使用済クーラント貯留槽と電気的に接続され、
前記一次回転体内壁に向けて吐出する前記使用済クーラントの吐出量及び吐出間隔を含む一次吐出条件を制御する使用済クーラント吐出条件制御部をさらに有し、
前記一次遠心分離液貯留槽と電気的に接続され、
前記二次回転体内壁に向けて吐出する前記一次遠心分離液の吐出量及び吐出間隔を含む二次吐出条件を制御する一次遠心分離液吐出条件制御部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の分離回収装置。
【請求項3】
前記一次遠心分離部による前記使用済クーラントの第一処理時間、及び、前記二次遠心分離部による前記一次遠心分離液の第二処理時間を生産性向上を目的として近似させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分離回収装置。
【請求項4】
前記一次遠心分離部によって前記使用済クーラントから前記砥粒の除去された一次処理液を、前記使用済クーラント貯留槽に戻して、前記使用済クーラントと混合する一次処理液循環部をさらに具備し、
前記一次処理液循環部によって循環時間を制御して生成された前記一次処理液は前記一次遠心分離液として前記二次回転体内壁に吐出されるものであり、
前記二次遠心分離部によって前記シリコンスラッジの除去された二次処理液を、前記一次遠心分離液貯留槽に戻して、前記一次遠心分離液と混合する二次処理液循環部をさらに具備し、
前記二次処理液循環部によって循環時間を制御して生成された前記二次処理液を前記クーラントとすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の分離回収装置。
【請求項5】
前記使用済クーラント及び前記一次遠心分離液のそれぞれの液温度を測定する液温度測定部をさらに具備することを特徴とする請求項4に記載の分離回収装置。
【請求項6】
使用済クーラント貯留槽と一次吐出ノズルとの間に、
貯留された前記使用済クーラントの液比重を計測する液比重計測部をさらに具備し、
計測された比重値に応じて前記回収砥粒及び前記破砕砥粒に分別することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の分離回収装置。
【請求項7】
前記一次遠心分離部と前記砥粒分別回収部との間に、前記一次遠心分離部によって遠心分離される前記砥粒の比重を計測する砥粒比重計測部をさらに具備し、
計測された比重値に応じて前記回収砥粒及び前記破砕砥粒に分別することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の分離回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−66992(P2013−66992A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53150(P2012−53150)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(301035172)ジー・フォースジャパン株式会社 (6)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】