説明

分離装置

【課題】設置場所やスペース等に制約を受けることなく、施工が容易な分離装置を提供する。
【解決手段】雨水が流下する排水管2に設置され、雨水に含まれている固形物を分離する分離装置10において、分離容器11と、分離容器の内部を縦方向に仕切って流入室12と流出室13を形成する仕切板14と、仕切板14に形成されたスクリーン15(16)と、流入室12の上部に形成された雨水の流入部17と、流出室13に形成された雨水の排出部18と、流入室12に設けた開閉自在な固形物排出用の蓋部19とを備え、流入室12の下部には流入部17から下方に流入する雨水に上下方向の旋回流を生成させる誘導部22が形成され、流入室の雨水が旋回しながらスクリーン15(16)を通過して流出室13の排出部18から排出されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の屋根や屋上、高速道路や高架橋などに降った雨水を流下させる排水管に設置された状態で、雨水に含まれる固形物を分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化に伴い山野や田畑が激減する反面、道路が舗装整備されると共に河川整備や雨水用下水道管等の雨水排水施設も整備され、さらに住宅が密集したことにより、保水性を有する土地が減少し雨水の地下浸透量も減少している。このため集中豪雨時には大量の雨水が道路や下水溝に一挙に流れ出し、浸水事故の発生原因となる。一方、近代化や人口増加に伴い、水消費量の増大に応じて地下水の揚水量も増加しているため、地下水の枯渇化が深刻になっている。
【0003】
その対策として雨水を出来るだけ下水溝に流さず有効利用する方法が進められている。具体的には、建物の屋根や屋上などに降った雨水を貯留し、それを植木の散水、トイレ水、災害時用水などに利用する方法と、地下に浸透させる方法が推奨されている。通常、建物の屋根や屋上などの高い場所に降った雨水は、水平な雨樋から下方に分岐する縦樋などの排水管で貯水槽に導入して利用することができる。しかし排水管から貯水槽や雨水浸透用施設に流入する雨水には屋根などに溜まった土砂などの固形物が混入しているので、それを予め分離する必要がある。
【0004】
比較的大きな落ち葉や紙類などの固形物は、縦樋の入口に設けた円形の目の粗いゴミスクリーンで予め分離できるが、土砂などの粒径の小さい固形物はゴミスクリーンを通過してしまう。そこで縦樋の途中に細かい固形物を分離する分離集水装置を装着する方法が特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の装置は、縦樋の途中に傾斜配管部分を設け、その傾斜部分に筒状の集水器を斜めに挿入するようになっている。集水器は円筒状のウェッジワイヤスクリーンで作られたフィルター部と、フィルター部の外側に形成した円筒状の集水空間を有する二重筒型になっており、フィルター部の上側を縦樋の上流側に接続し、下側を縦樋の下流側に接続し、外筒の集水空間と貯留水槽を配管で接続する。そしてフィルター部に流入した雨水の一部はウェッジワイヤスクリーンを通過して貯留水槽に導かれ、固形物を含む残りの雨水が下流側の縦樋を経て下水溝に排出される。
【0006】
【特許文献1】特開2006−104851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の装置は、雨水の一部のみしか回収できず、大部分は下水溝に流出するという問題がある。また垂直に配置される縦樋の一部に傾斜部分を設け、そこに集水器を挿入する必要があるので設置場所やスペース等に制約を受け、施工に手間がかかる。さらにウェッジワイヤスクリーンに付着する固形物は斜めに緩やかに流下する雨水で剥離するようになっているが、その剥離能力には限界があり、流れによるウェッジワイヤスクリーンの固形物剥離作用(洗浄作用)は充分とはいえない。
【0008】
そこで本発明はこれらの問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の分離装置は、雨水が流下する排水管に設置され、雨水に含まれている固形物を分離する分離装置において、分離容器と、分離容器の内部を縦方向に仕切って流入室と流出室を形成する仕切板と、仕切板に形成されたスクリーンと、流入室の上部に形成された雨水の流入部と、流出室に形成された雨水の排出部と、流入室に設けた開閉自在な固形物排出用の蓋部とを備え、流入室の下部には流入部から下方に流入する雨水に上下方向の旋回流を生成させる誘導部が形成され、流入室の雨水が旋回しながらスクリーンを通過して流出室の排出部から排出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また第2の分離装置は、上記第1の分離装置において、分離容器の上下方向に流入部と流出部が同軸的に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また第3の分離装置は、上記第1または第2の分離装置において、前記仕切板は分離容器の上部から縦方向に延長する縦部とそこから横方向に延長する横部で構成され、前記流入室が縦部と横部の内側領域に形成され、前記流出室が縦部と横部の外側領域に形成され、前記スクリーンが縦部に形成され、前記誘導部が横部に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また第4の分離装置は上記第1または第2の分離装置において、前記分離容器はその上部から縦方向に延長する2枚の仕切板で仕切られ、前記流入室が2枚の仕切板の内側領域に形成され、前記流出室が2枚の仕切板の外側領域に形成され、前記スクリーンが2枚の仕切板にそれぞれ形成され、前記誘導部が2枚の仕切板の下端部を横方向に連結する連結部に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また第5の分離装置は、上記第1ないし第4のいずれかの分離装置において、前記スクリーンは断面楔状の複数のウェッジワイヤを互いに平行に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また第6の分離装置は、上記第5の分離装置において、前記ウェッジワイヤスクリーンの分離面に上下方向の旋回流の外周面が沿うように、前記ウェッジワイヤスクリーンが仕切り板に形成され、各ウェッジワイヤの軸方向が前記旋回流の流れ方向と直交していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の分離装置は、雨水が流下する排水管に設置され、雨水に含まれている固形物を分離する分離容器と、分離容器の内部を縦方向に仕切って流入室と流出室を形成する仕切板と、仕切板に形成されたスクリーンと、流入室の上部に形成された雨水の流入部と、流出室に形成された雨水の排出部と、流入室に設けた開閉自在な固形物排出用の蓋部とを備えた分離装置を備えている。そして流入室の下部に流入部から下方に流入する雨水に上下方向の旋回流を生成させる誘導部が形成され、流入室の雨水が旋回しながらスクリーンを通過して流出室の排出部から排出されるように構成されている。
【0016】
上記分離装置によれば、流入室に流入する雨水は全て流出室に導かれ、貯留水槽などに回収することができるので、排水管に流入する雨水を100%有効利用できる。また縦樋などの垂直に敷設される排水管にそのまま接続できるので、施工やスペース等の制約が少ない。
【0017】
さらに、流入室の雨水が旋回しながら何回もスクリーンの分離面を通過しながら流出室の排出部から排出されるので、スクリーンに固形物が一時的に付着したとしても、旋回流による剥離力により容易に剥離され、スクリーンに目詰まりが生じる恐れがない。
【0018】
そして長期間使用することにより流入室に堆積した固形物は、適当な時期に蓋部を空けて取り出すことができる。通常、排水管の入口部には前記のように目の粗いゴミスクリーンが設置され、粒径の大きな固形物はそこで除去されるので、流入室内部における固形物の堆積量増加は非常に遅い。そのため分離装置の固形物取り出し間隔を長くできるので、日常的なメンテナンス上の問題は生じない。
【0019】
また第2の分離装置では、上記第1の分離装置において、分離容器の上下方向に流入部と流出部を同軸的に形成することができる。このように構成すると、垂直方向に敷設される排水管を所定長切断し、そこに分離装置を挿入することができるので、施工が極めて簡単である上に、既存の垂直に延長する排水管に分離装置を容易に設置することができる。
【0020】
また第3の分離装置では、上記第1または第2の分離装置において、前記仕切板を分離容器の上部から縦方向に延長する縦部とそこから横方向に延長する横部で構成し、前記流入室を縦部と横部の内側領域に形成し、前記流出室を縦部と横部の外側領域に形成し、前記スクリーンを縦部に形成し、前記誘導部を横部に形成することができる。
【0021】
このように構成すると、分離容器内で流入室を流出室より大きくできるので、流入室の内部の固形物堆積に利用可能なスペースも増加する。
【0022】
また第4の分離装置では、上記第1または第2の分離装置において、前記分離容器の上部から縦方向に延長する2枚の仕切板で分離容器の内部を仕切り、流入室を2枚の仕切板の内側領域に形成し、流出室を2枚の仕切板の外側領域に形成し、各仕切板にそれぞれスクリーンを形成し、2枚の仕切板の下端部を横方向に連結する連結部に誘導部を形成することができる。このように構成すると、同じ内容積の分離容器で2倍の有効濾過面積が得られるので、同じ内容積でも分離容器の雨水処理能力を大きくできる。
【0023】
また第5の分離装置では、上記第1ないし第4のいずれかの分離装置において、前記スクリーンは断面楔状の複数のウェッジワイヤを互いに平行に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成することができる。ウェッジワイヤスクリーンを用いることにより、雨水に含まれている微細な固形物も効率よく分離できるので、回収される雨水の清純度が高くなり利用分野が拡大する。
【0024】
上記ウェッジワイヤスクリーンを用いた第5の分離装置において、前記ウェッジワイヤスクリーンの分離面に上下方向の旋回流の外周面が沿うように、前記ウェッジワイヤスクリーンを仕切り板に形成し、各ウェッジワイヤの軸方向を前記旋回流の流れ方向と直交するように配置することができる。このように構成すると、ウェッジワイヤスクリーンの通水率が高くなるので、雨水の処理能力が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に図面に基づいて本発明の最良の実施の形態を説明する。図1は本発明の分離装置を雨水の排水管に装着した状態を示す図である。
【0026】
建物の屋根や屋上、高速道路や高架橋などに降った雨水を集水するため、水平方向に敷設された雨樋や取水溝などの集水路1が敷設され、集水路1から縦樋や配管等の排水管2が下方に分岐され、その排水管2の入口に目の粗いルーバで形成される半円状のゴミスクリーン3が設けられる。
【0027】
排水管2の下端部に本発明に係る分離装置10の流入側が接続され、分離装置10の排出側に配管4が接続され、配管4の下端部は貯留水槽5の上部に開口する。なお点線は貯留水槽10が排出管2の位置より横方向に離れている場合などにおいて、分離装置10の排出部を横方向に設け、それに横方向の配管4aを接続した例である。なお貯留水槽5の貯留水はポンプ6を設けた配管7で図示しない雨水利用設備に供給される。
【実施例1】
【0028】
図2は本発明に係る分離装置10の1例であり、図2(a)は分離装置10の側断面図、図2(b)は図1(a)のA−A断面図、図2(c)は図2(a)のB−B断面図である。分離装置10は直方体に形成された分離容器11を備えている。ここで直法体とは、分離容器11を構成する6辺が互いに直交する形状を意味するが、図2(a)に示すような6辺の一部の直交部分が円弧状になっているものも含まれる。
【0029】
分離容器11にはその内部を縦方向に仕切って流入室12と流出室13を形成する仕切板14と、仕切板14に形成されたスクリーン15と、流入室12の上部に形成された雨水の流入部17と、流出室13の底部に形成された雨水の排出部18と、流入室12側の側部12aに設けた開閉自在な固形物排出用の蓋部19とを有する。
【0030】
仕切板14は分離容器11の上部(本実施例では分離容器11の頂部)から縦方向に直線状に延長する縦部20と、そこから横方向に円弧状に延長する横部21とで構成される。そして前記流入室12は縦部20と横部21の内側領域に形成され、前記流出室13は縦部20と横部21の外側領域に形成される。また縦部20にはスクリーン15が縦方向に形成され、流入室12の下部を構成する円弧状の横部21が形成される。
【0031】
円弧状に形成された横部21は、流入室12の内部に流入した雨水に旋回流を生成させる誘導部22を兼ねている。誘導部22は流入部17から下方に流入する雨水の水流を横方向に転換してから上昇するように誘導する。上昇した水流は流入室12の上部で矢印のように流入部17の方向に戻り、結果として流入室12の内部に上下方向の旋回流が生成される。そして上下方向の旋回流の外周面に沿うように前記スクリーン15が形成されている。
【0032】
流入室12の側部12aに設けられた蓋部19は、その下部の2箇所にヒンジ部19aを有し、上部に回転自在な係止部19bを有する。そして係止部19bに対応して流入室12の側部12aに突起からなる受部12bが設けられ、係止部19bを回転することにより、係止部19bを受部12bに着脱できるようになっている。蓋部19を開けるには係止部19bを矢印のように回転して受部12bから離脱し、蓋部19を図2の左側に引くと、蓋部19はヒンジ部19aを回転軸として開けることができる。
【0033】
仕切板14に形成されるスクリーン15として、パンチングメタルスクリーンやウェッジワイヤスクリーンを使用することができる。パンチングメタルスクリーンは安価であるが分離できる固形物の粒径に限界があり、微細な固形物の分離は制限される。
【0034】
一方、ウェッジワイヤスクリーンは、断面楔状の複数のウェッジワイヤを互いに平行に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成され、各ウェッジワイヤの軸方向を上下方向の旋回流の流れ方向と直交させるように配置することが望ましい。ウェッジワイヤスクリーンで分離できる固形物の最小径は各ウェッジワイヤの間隙の大きさにより決まるが、設定できる最小間隙は10ミクロン程度まで可能である。そのためウェッジワイヤスクリーンを使用することにより、10ミクロン程度までの微細な固形物を効率よく分離できる。
【0035】
図8にスクリーン15としてのウェッジワイヤスクリーン16を示す。図8(a)はウェッジワイヤスクリーン16を前方から見た斜視図であり、図8(b)はそれを斜め上方から見た斜視図である。ウェッジワイヤスクリーン16は断面楔状の複数のウェッジワイヤ16aを平行に配列して構成され、各ウェッジワイヤ16a間に10μm〜1mm程度の範囲に設定された微小なスリット16bが形成されている。
【0036】
各ウェッジワイヤ16aは複数の支持棒16cに点溶接等により固定され、各ウェッジワイヤ16aや支持棒16cは例えばステンレス等の耐食性の金属材料で作られる。ウェッジワイヤスクリーン16に形成される各スリット16bは、例えば10μm〜1mm程度の固形物の通過を阻止し、スリット幅よりも小さい固形物を含む雨水だけを通過させる。
【0037】
図9は図8に示すウェッジワイヤスクリーン16を構成するウェッジワイヤ16aとスリット16bの部分拡大断面図である。断面が楔状のウェッジワイヤ16aは所定間隔で互いに平行に配列され、本実施例ではその頭部16dの面から垂直方向に延長する楔の軸線Sは、矢印Lで示す方向の下流側に傾斜している。そして矢印方向Lと頭部16dの面との角度αは3度〜8度、通常5度程度である。
【0038】
このように各ウェッジワイヤ16aの軸線Sが傾斜していると、例えば旋回流の流れ方向を矢印L方向にすると、その上流側における頭部16dの端部16eが下流側における頭部16dの端部16fより旋回流側に突出する。そのため旋回流が各ウェッジワイヤ16aの突出した端部16eに衝突し、コアンダ効果によりスリット16bに効率よく引き込まれる。
【0039】
従って、ミクロン単位の固形物を分離すためにスリット幅を小さくとするとウェジワイヤスクリーンの開口率が非常に小さくはなるが、コアンダ効果により通水性が向上してウェジワイヤスクリーンの開口率を実質的に増大させる効果を発揮する。このように通水性を向上させることが可能になると、微細な固形物を分離するためにスリット間隔を極めて小さくしても、分離処理能力をかなりのレベルに維持することができる。
【0040】
そこで、図2に示すスクリーン15としてウェジワイヤスクリーン16を使用する場合、そのウェッジワイヤ16a軸方向を上下方向の旋回流に直交する方向とし、その旋回流の流れ方向を図9に示す矢印L方向に一致させることが望ましい。
【0041】
次に図2の分離装置10により排水管2を流下する雨水に含まれている固形物を分離する方法を説明する。分離装置10の流入部17を図1のように排水管2に連結し、排出部18を配管4に接続する。配管4の下端部は貯留水槽5に開口する。
【0042】
屋根等に降った雨水は雨樋や排水溝などの集水路1に集まり、その集水路1から下方に分岐する縦樋や配管等の排水管2を流下し、分離装置10を構成する分離容器11の流入部17から流入室12に流入する。その際、集水路1には雨水とともに落ち葉や土砂などの固形物も流入するが、比較的粒径(または外形寸法))が大きい固形物は排水管12の入口に設けたゴミスクリーン3で分離され、粒径の小さい固形物を含む雨水のみが流入室12に流入する。
【0043】
流入部17から下方に流入した雨水は矢印のように流入室12内部を下降し、仕切板14の横部21で構成される誘導部22でその流れ方向が横方向に転換され、次いで仕切板14の縦部20に沿って上昇する。その結果、雨水に矢印方向の上下方向の旋回流を生成させる。
【0044】
ウェッジワイヤスクリーン16はその分離面(流入室12側の面)に旋回流の外周面が沿うように仕切板14の縦部20に形成されている。すなわち、上下方向の旋回流を流れの束としてみた場合、ウェッジワイヤスクリーン16の分離面がその流れの束の外周面に沿うように縦部20に形成されている。雨水は旋回しながらその外周領域の部分からウェッジワイヤスクリーン16を通して流出室13に流出し、固形物はウェッジワイヤスクリーン16で阻止される。ウェッジワイヤスクリーン16で阻止された固形物は、ウェッジワイヤスクリーン16に一時的に付着するが、雨水の旋回流によって効率よく剥離され、比重の大きいものから先に流入室12の下方に沈降していく。
【0045】
その際、ウェッジワイヤスクリーン16が旋回流の流速が最も大きい外周面に接しているので、ウェッジワイヤスクリーン16に付着した固形物の旋回流による剥離効率が大きくなり、ウェッジワイヤスクリーン16の目詰まり防止効果も極めて高い。
【0046】
排水管2から流入する雨水の流入量が大きいと旋回流の流速も大きくなり、流出室13に流出する雨水の流量もそれに応じて多くなる。一方、排水管2から流入する雨水の流入量が極端に少なくなると、流入室12の内部に充分な旋回流の生成ができない場合もあるが、そのような場合にはウェッジワイヤスクリーン16を通過する雨水の流れが小さいので、ウェッジワイヤスクリーン16に付着する固形物の量も極端に少なくなる。仮にウェッジワイヤスクリーン16に僅かな固形物が付着したとしても、次に大量の雨水が流入室12に流入したときに、その付着固形物は生成する旋回流の強い剥離力で剥離される。
【0047】
分離装置10を長期間使用することにより流入室12固形物が堆積するが、堆積した固形物は適当な時期に蓋部19を空けて取り出すことができる。
【実施例2】
【0048】
図3は図2の分離装置10の変形例であり、図3(a)は分離装置10の側断面図、図3(b)は図3(a)のC−C断面図、図3(c)は図3(a)のD−D断面図である。本実施例が図2の例と異なる部分は、スクリーン15が緩やかに傾斜した状態で分離容器11を縦方向に仕切る仕切板14に形成されている点であり、そのほかの主要部は図1の例と同じような構成になっている。従って、図2の例と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図3(a)において、仕切板14は分離容器11の中央部より左側の上部から、分離容器11の底部中央より右側に向かうように縦方向に配置され、その仕切板14の右側が流入部17を形成した流入室12、左側が排出部18を形成した流出室13になっている。そして仕切板14にはスクリーン15としてのウェッジワイヤスクリーン16が分離容器11の左上側から右下側に向かう傾斜状態で形成されている。なお図3(a)のウェッジワイヤスクリーン16はほぼ直線状に形成されているが、流出室13側に膨らむような円弧状に形成してもよい。
【0050】
分離容器11の下部(本実施例では底部)は円弧状に形成された部分を有し、該部分は誘導部22を構成する。さらに本実施例では分離容器11の流入室12側の側部12aに蓋部19が図2の例と同様な構成で開閉自在に設けられ、さらに、その蓋部19より上側の側部12aから流入室12の上部12cにかけては円弧状に形成された部分を有し、該部分は第2の誘導部22を構成する。
【0051】
次に図3の分離装置10により排水管2を流下する雨水に含まれている固形物を分離する方法を説明する。図2の例と同様に分離装置10の流入部17を排水管2に連結し、排出部18を配管4に接続する。
【0052】
流入部17から下方に流入した雨水は矢印のように流入室12内部をウェッジワイヤスクリーン16に沿って下降し、流入室12の下部に形成した誘導部22でその流れ方向が転換され、蓋部19を設けた側部12aに沿って上昇し、次いで上方に設けた誘導部22で横方向に方向転換され、その結果、雨水に流入室12の内部に矢印方向の上下方向の旋回流が生成される。
【0053】
本実施例もウェッジワイヤスクリーン16はその分離面に上下方向の旋回流の外周面が沿うように仕切板14に形成されており、雨水は旋回しながらウェッジワイヤスクリーン16を通して流出室13に流出し、固形物はウェッジワイヤスクリーン16で阻止される。ウェッジワイヤスクリーン16で阻止された固形物は、ウェッジワイヤスクリーン16に一時的に付着するが、雨水の旋回流によって効率よく剥離され、比重の大きいものから先に流入室12の下方に沈降していく。
【実施例3】
【0054】
図4は図2の分離装置10の別の変形例であり、図4(a)は分離装置10の側断面図、図4(b)は図4(a)のE−E断面図、図4(c)は図4(a)のF−F断面図である。本実施例が図2の例と異なる部分は、仕切板14と誘導部の形状、および流出室13に形成される排出部18の位置であり、そのほかは図2の例と同様に構成される。従って、図2の例と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
本実施例では分離容器11を縦方向に仕切る仕切板14が垂直に形成され、その仕切板14にスクリーン15としてウェッジワイヤスクリーン16が垂直に形成されている。図4(a)において、仕切板14の左側に流入室12が形成され、右側に流出室13が形成される。
【0056】
流入室12の上部に流入部17が形成され、流入室12の下部(底部)の両側に2つの平坦な板状の誘導部22が互いに向き合うように傾斜状態で設けられる。なおこれら誘導部22は円弧状のものでもよい。また流出室13の側部13aの上方には排出部18が形成され、流入室12の側部12aには開閉自在な蓋部19が設けられる。
【0057】
次に図4の分離装置10により排水管2を流下する雨水に含まれている固形物を分離する方法を説明する。図2の例と同様に分離装置10の流入部17を排水管2に連結し、排出部18を図1に点線で示す配管4aに接続する。
【0058】
流入部17から下方に流入した雨水は矢印のように流入室12内部を下降し、下部に設けた左側の誘導部22により横方向に方向転換され、次いで右側の誘導部22により上昇方向に方向転換され、その結果、雨水に矢印のような上下方向の旋回流を生成させる。
【0059】
本実施例もウェッジワイヤスクリーン16はその分離面に上下方向の旋回流の外周面が沿うように仕切板14に形成されている。雨水は旋回しながらウェッジワイヤスクリーン16を通して流出室13に流出し、固形物はウェッジワイヤスクリーン16で阻止される。ウェッジワイヤスクリーン16で阻止された固形物は、ウェッジワイヤスクリーン16に一時的に付着するが、雨水の旋回流によって効率よく剥離され、比重の大きいものから先に流入室12の下方に沈降していく。
【実施例4】
【0060】
図5は本発明の分離装置10の他の実施の形態であり、図5(a)は分離装置10の側断面図で図5(b)のH−H断面図、図5(b)は図5(a)のG−G断面図、図5(c)は図5(a)のI−I断面図である。本実施例が図4の例と異なる部分は、仕切板14と旋回流の関係と誘導部22の形状であり、そのほかは図4の例と同様に構成される。従って、図4の例と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
本実施例では分離容器11を縦方向に仕切る仕切板14が垂直に形成され、その仕切板14にスクリーン15としてウェッジワイヤスクリーン16が垂直に形成されている。図5(b)において、仕切板14の右側に流入室12が形成され、その上部に流入部17が形成される。仕切板14の左側に流出室13が形成され、その下部(底部)には排出部18が形成されると共に円弧状の誘導部22が設けられる。さらに流入室12の側部12aに開閉自在な蓋部19が設けられる。
【0062】
次に図5の分離装置10により排水管2を流下する雨水に含まれている固形物を分離する方法を説明する。図4の例と同様に分離装置10の流入部17を排水管2に連結し、排出部18を配管4に接続する。
【0063】
流入部17から下方に流入した雨水は矢印のように流入室12内部を下降し、下部に設けた誘導部22により横方向から上昇方向に方向転換され、その結果、雨水に矢印のような上下方向の旋回流が生成される。本実施例ではウェッジワイヤスクリーン16の分離面が上下方向の旋回流の側面に沿うように仕切板14に形成されている。すなわち、上下方向の旋回流を流れの束としてみた場合、ウェッジワイヤスクリーン16はその流れの束の外周面ではなく側面に沿うように仕切板14に形成されている。
【0064】
そして流入室12の雨水は旋回しながらウェッジワイヤスクリーン16を通して流出室13に流出し、固形物はウェッジワイヤスクリーン16で阻止される。ウェッジワイヤスクリーン16で阻止された固形物は、ウェッジワイヤスクリーン16に一時的に付着するが、雨水の旋回流によって効率よく剥離され、比重の大きいものから先に流入室12の下方に沈降していく。
【実施例5】
【0065】
図6は図5の分離装置10の変形例で、図6(a)は分離装置10の側断面図、図6(b)は図6(a)のJ−J断面図、図6(c)は図6(a)のK−K断面図である。本実施例が図5の例と異なる部分は、下部が互いに連結された2枚の仕切板14の内側領域に流入室12が形成され、外側領域に流出室13が形成される点であり、そのほかは図5の例と同様に構成される。従って、図5の例と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】
本実施例では分離容器11の上部から2枚の仕切板14が互いに平行に且つ所定の間隔を有して垂直に延長され、それらの下端部は連結部14aで互いに連結される。そして連結部14aは円弧状に形成され、その円弧部分が誘導部22を構成している。2枚の仕切板14の内側領域の流入室12の上部に流入部17が形成され、外側領域の流出室13の下部(本実施例では底部)に排出部18が形成され、各仕切板14にスクリーン15としてウェッジワイヤスクリーン16がそれぞれ形成されている。
【0067】
次に図6の分離装置10により排水管2を流下する雨水に含まれている固形物を分離する方法を説明する。図5の例と同様に分離装置10の流入部17を排水管2に連結し、排出部18を配管4に接続する。
【0068】
図6(a)において、流入部17から下方に流入した雨水は矢印のように流入室12内部を下降し、下部に設けた誘導部22により横方向から上昇方向に方向転換され、その結果、雨水に矢印のような上下方向の旋回流が生成される。本実施例では2枚のウェッジワイヤスクリーン16が上下方向の旋回流の両側面に沿うように仕切板14に形成されている。
【0069】
そして流入室12の雨水は旋回しながら2枚のウェッジワイヤスクリーン16を通して流出室13に流出し、固形物はウェッジワイヤスクリーン16で阻止される。ウェッジワイヤスクリーン16で阻止された固形物は、ウェッジワイヤスクリーン16に一時的に付着するが、雨水の旋回流によって効率よく剥離され、比重の大きいものから先に流入室12の下方に沈降していく。
【0070】
図6の分離装置10のように、2枚のウェッジワイヤスクリーン16を分散して形成することにより、分離容器11を大きくしなくてもウェッジワイヤスクリーン16の有効面積を大きくできるので、雨水の処理能力あたりの分離容器10の寸法を小さくできる。
【実施例6】
【0071】
図7は図6の変形例であり、図7(a)は分離装置10の側断面図、図7(b)は図7(a)のL−L断面図、図7(c)は図7(a)のM−M断面図である。本実施例が図6の例と異なる部分は、流出室13に形成される排出部18の位置のみで、そのほかは同様に構成される。従って、図6の例と同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
本実施例でも図6の例と同様に、分離容器11の上部から2枚の仕切板14が互いに平行に且つ所定の間隔を有して垂直に延長され、それらの下端部が円弧状の連結部14aで互いに連結され、その円弧部分が誘導部22を構成している。2枚の仕切板14の内側領域の流入室12の上部には流入部17が形成され、外側領域の流出室13の下部には排出部18が形成され、各仕切板14にスクリーン15としてウェッジワイヤスクリーン16がそれぞれ形成されている。
【0073】
次に図7の分離装置10により排水管2を流下する雨水に含まれている固形物を分離する方法を説明する。図6の例と同様に分離装置10の流入部17を排水管2に連結し、排出部18を図1の点線で示す配管4aに接続する。図7における上下方向の旋回流の生成およびウェッジワイヤスクリーン16による固形物の分離作用は図6の例と同様である。なお、流出室13の雨水はその上部に形成した排出部から配管4aに排出される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の分離装置は、雨水から固形物を分離するための装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の分離装置を雨水の排水管に装着した状態を示す図である。
【図2】第1実施例に係る分離装置であり、(a)は分離装置の側断面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図3】第2実施例に係る分離装置であり、(a)は分離装置の側断面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図である。
【図4】第3実施例に係る分離装置であり、(a)は分離装置の側断面図、(b)は(a)のE−E断面図、(c)は(a)のF−F断面図である。
【図5】第4実施例に係る分離装置であり、(a)は分離装置の側断面図、(b)は(a)のG−G断面図、図5(c)は図5(a)のI−I断面図である。
【図6】第5実施例に係る分離装置であり、(a)は分離装置の側断面図、(b)は(a)のJ−J断面図、図6(c)は図6(a)のK−K断面図である。
【図7】第6実施例に係る分離装置であり、(a)は分離装置の側断面図、(b)は(a)のL−L断面図、図7(c)は図7(a)のM−M断面図である。
【図8】(a)はウェッジワイヤスクリーンを前方から見た斜視図であり、(b)はそれを斜め上方から見た斜視図である。
【図9】ウェッジワイヤスクリーンを構成するウェッジワイヤとスリットの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 :集水路
2 :排水管
3 :ゴミスクリーン
4 :配管
4a:配管
5 :貯留水槽
6 :ポンプ
10 :分離装置
11 :分離容器
12 :流入室
12a:側部
13 :流出室
14 :仕切板
15 :スクリーン
16 :ウェッジワイヤスクリーン
16a:ウェッジワイヤ
16b:スリット
16c:支持棒
16d:頭部
16e:端部
16f:端部
17 :流入部
18 :排出部
19 :蓋部
19a:ヒンジ部
20 :縦部
21 :横部
22 :誘導部
α :角度
L :矢印方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水が流下する排水管に設置され、雨水に含まれている固形物を分離する分離装置において、分離容器と、分離容器の内部を縦方向に仕切って流入室と流出室を形成する仕切板と、仕切板に形成されたスクリーンと、流入室の上部に形成された雨水の流入部と、流出室に形成された雨水の排出部と、流入室に設けた開閉自在な固形物排出用の蓋部とを備え、流入室の下部には流入部から下方に流入する雨水に上下方向の旋回流を生成させる誘導部が形成され、流入室の雨水が旋回しながらスクリーンを通過して流出室の排出部から排出されるように構成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
請求項1において、分離容器の上下方向に流入部と流出部が同軸的に形成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記仕切板は分離容器の上部から縦方向に延長する縦部とそこから横方向に延長する横部で構成され、前記流入室が縦部と横部の内側領域に形成され、前記流出室が縦部と横部の外側領域に形成され、前記スクリーンが縦部に形成され、前記誘導部が横部に形成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記分離容器はその上部から縦方向に延長する2枚の仕切板で仕切られ、前記流入室が2枚の仕切板の内側領域に形成され、前記流出室が2枚の仕切板の外側領域に形成され、前記スクリーンが2枚の仕切板にそれぞれ形成され、前記誘導部が2枚の仕切板の下端部を横方向に連結する連結部に形成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、前記スクリーンは断面楔状の複数のウェッジワイヤを互いに平行に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項6】
請求項5において、前記ウェッジワイヤスクリーンの分離面に上下方向の旋回流の外周面が沿うように、前記ウェッジワイヤスクリーンが仕切り板に形成され、各ウェッジワイヤの軸方向が前記旋回流の流れ方向と直交していることを特徴とする分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−95953(P2010−95953A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269326(P2008−269326)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】