説明

切削刃の研磨装置および研磨方法

【課題】作業者が怪我をする可能性を低減させ、且つ、経験が浅い作業者であっても容易に切削刃の所定の研磨を行うことができる研磨装置または研磨方法を提供すること。
【解決手段】本発明の研磨装置は、切削刃を研磨する研磨装置1であって、回転駆動される円盤状の研磨部材2と、切削刃4を支持し、切削刃を研磨部材に接触させ切削刃を研磨部材で研磨させる切削刃支持機構6とを備え、切削刃支持機構が、先端が前記研磨部材の上方に位置するように配置されているアーム部材と、アーム部材の先端部に上下動可能に取付けられ下端に切削刃を支持する切削刃支持部と、切削刃支持部の上下動を制御する上下動制御部12とを、備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削刃の研磨装置に関し、詳細には、ロッドレンズアレイ等に組み込まれたロッドレンズ等の棒状光伝送体の端面(光伝送面)を切削する切削装置の切削刃を研磨するための研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッドレンズアレイに組み込まれたロッドレンズ等の棒状光伝送体の端面(光伝送面)を、優れた光学特性の平滑な状態に仕上げる鏡面処理方法として、直線状の刃先を有する切削刃をロッドレンズアレイに組み込まれた棒状光伝送体の端面(光伝送面)に当接させながら移動させて棒状光伝送体の端面(光伝送面)を切削し、棒状光伝送体の端面(光伝送面)を鏡面処理する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−156628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような棒状光伝送体の端面の鏡面処理または他の方法による棒状光伝送体の端面処理では、処理後の棒状光伝送体の端面が優れた光学特性を有する平滑状態となるように、切削に使用する切削刃を定期的に研磨する必要がある。
この切削刃の研磨作業は、作業者が、研磨する切削刃を、高速回転する円盤状の研磨部材に手で押しつけるという手作業で行われていたため、作業者が高速回転する円盤状の研磨部材で怪我をする危険性があるという問題があった。
また、この研磨作業は、手作業で行われるため、経験をつんだ作業者でなければ、切削刃を所望状態に研磨することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、作業者が怪我をする可能性を低減させ、且つ、経験が浅い作業者であっても容易に切削刃の所定の研磨を行うことができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
切削刃を研磨する研磨装置であって、
回転駆動される円盤状の研磨部材と、
前記切削刃を支持し、該切削刃を該研磨部材に接触させ該切削刃を該研磨部材で研磨させる切削刃支持機構とを備え、
該切削刃支持機構が、先端が前記研磨部材の上方に位置するように配置されているアーム部材と、該アーム部材の先端部に上下動可能に取付けられ下端に前記切削刃を支持する切削刃支持部と、該切削刃支持部の上下動を制御する上下動制御部とを、備えている、
ことを特徴とする研磨装置が提供される。
【0007】
このような構成によれば、切削刃を支持する切削刃支持部が、上下動制御部によって上下動させられるので、研磨作業中に、作業者は高速回転している円盤状の研磨部材に手を近づける必要が無く、したがって、高速回転している円盤状の研磨部材によって手を怪我する可能性が実質的にゼロになる。
さらに、切削刃を支持する切削刃支持部が、上下動制御部によって所定量だけ上下動させられるので、経験の浅い作業者であっても、所定量の研磨を行い、切削刃を所望の状態にする研磨作業を行うことができる。
【0008】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記上下動制御部が電動マイクロメータヘッドを備えている。
このような構成によれば、電動マイクロメータヘッドによって、切削刃を支持する切削刃支持部の上下動を極めて正確に制御し、切削刃の所定の研磨を高精度に制御することが可能となる。
又、該電動マイクロメーターヘッドを備えることにより遠隔操作により刃物の上下制御が可能なため、高速回転している研磨部材及び切削刃指示部をカバーで覆った状態で作業が可能となり、さらに安全性を高めることができる。
【0009】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上下動制御部が前記電動マイクロメータヘッドから下方に突出するロッドによって、該ロッドの上方に支持され、前記切削刃支持部は前記上下動制御部と連結部を介して連結されている。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
切削刃を研磨する方法であって、
回転駆動される円盤状の研磨部材と、
前記切削刃を支持し、該切削刃を該研磨部材に接触させ該切削刃を該研磨部材で研磨させる切削刃支持機構とを備え、
該切削刃支持機構が、先端が前記研磨部材の上方に位置するように配置されているアーム部材と、該アーム部材の先端部に上下動可能に取付けられ下端に前記切削刃を支持する切削刃支持部と、該切削刃支持部の上下動を制御する上下動制御部とを備えており、
上下動制御部が前記電動マイクロメータヘッドから下方に突出するロッドによって、該ロッドの上方に支持され、前記切削刃支持部は前記上下動制御部と連結部を介して連結されている研磨装置を用いて切削刃を研磨するであって、
前記研磨部材を回転させ、前記ロッドを引き込ませることにより、前記切削刃を下降させ、該切削刃が前記研磨部材と当接した前記ロッドの突出量を基準とし、研磨量の分だけ前記ロッドを引っ込め、該ロッド先端が前記アームの頂面に当接するまで前記切削刃の研磨を行う、
ことを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者が怪我をする可能性を低減させ、且つ、経験が浅い作業者であっても容易に切削刃の研磨を行うことができる研磨装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態の研磨装置1について説明する。図1は研磨装置1の正面図であり、図2は研磨装置1の側面図である。本実施形態の研磨装置は、上述した特開平11−156628号公報に記載されているような、ロッドレンズアレイに組み込まれた棒状光伝送体の端面(光伝送面)を鏡面処理する方法等に使用される切削刃を研磨するための装置である。
【0013】
図1及び図2に示されているように、研磨装置1は、回転駆動される円盤状の研磨部材2を備えている。この円盤状の研磨部材2は、モータによって回転駆動されるターンテーブル(図示せず)に取付けられることによって、回転駆動されるように構成されている。研磨部材2の表面には、切削刃4を研磨する研磨材(図示せず)が配置されている。
【0014】
研磨装置1は、さらに、切削刃4を支持し、切削刃4を研磨部材2に接触させ切削刃4を研磨部材2で研磨させる切削刃支持機構6を備えている。この切削刃支持機構6は、先端が研磨部材2の上方に位置するように配置されているアーム部材8と、アーム部材8の先端部に上下動可能に取付けられ下端に切削刃4を支持する切削刃支持部10と、切削刃支持部10に一体的に取付けられ切削刃支持部10の上下動を制御する上下動制御部12とを、備えている。本実施形態では、上下動制御部12は、電動マイクロメータヘッドを備えている。また、本実施形態では、切削刃指示部10は連結部17を介して上下動制御部12と連結されている。
【0015】
切削刃支持部10は、切削刃4が着脱自在に取付けられる刃保持部14を下端に備えている。また、切削刃支持部10は、アーム8の先端部に設けられたガイドレール(図示せず)に沿って上下方向に摺動可能な状態で、詳細には、アーム8に取り付けられたガイドレールに沿って自重で研磨部材2に向かって降下するようにアームに取付けられている。
【0016】
上下動制御部12の電動マイクロメータヘッドは、下方に向かって突出する部分の突出量を高い精度で調整可能なロッド部16を備えている。上下動制御部12の電動マイクロメータヘッドは、ロッド部16の先端面16aが、アーム8の先端部分の頂面8aに対向して、これに接触可能となるように、切削刃支持部10の上方に取付けられている。本実施形態は、上下動制御部12が電動マイクロメータヘッドを備え、ロッド部16の突出量を高精度に調整できるように構成されている。
【0017】
上述したように、自重でアーム8のガイドレールに沿って下方に降下するようにアームに取付けられている切削刃支持部10は、ロッド部16を介してアーチ8の頂面8aにおいてアーム8によって支持されており、ロッド部16の先端がアーム8の頂面8aに接触した高さ位置に配置される。すなわち、本実施形態では、ロッド部16の突出量によって、切削刃支持部10に取り付けられた切削刃4の高さ位置が規定される。
【0018】
次に、本実施形態の研磨装置1の動作を説明する。図3ないし図5は、本実施形態の研磨装置1による切削刃の研磨作業における切削刃支持部10、上下動制御部12の配置を示す図面であり、図3は研磨作業開始前の状態、図4は研磨作業開始時点および研磨作業中の状態、図5は、研磨作業終了時点の状態をそれぞれ示している。
【0019】
まず、電動マイクロメータヘッドを作動させてロッド部16の突出量を調整し、刃保持部14に研磨する切削刃4を取付けたとき、この切削刃4が研磨部材2から所定距離だけ上方に配置される高さ位置に切削刃支持部10を配置し、切削刃支持部10の刃保持部14に研磨する切削刃4を取付ける(図3)。
【0020】
次いで、電動マイクロメータヘッドを作動させてロッド部16の突出量を減少させていく。このロッド部16の突出量の減少に伴って、切削刃支持部10の先端の刃保持部14に取付けられた切削刃4は、切削刃支持部10とともに研磨部材2に向かって降下し、研磨部材2の表面に当接する。
【0021】
切削刃4が研磨部材2の表面に当接すると、切削刃支持部10の降下は停止する。このときのロッド部16の突出量を基準とし、この状態から、ロッド部16をさらに引込み、その突出量を所定量dだけ減少させる。上述したように下端に取付けられた切削刃4が研磨部材2の表面と当接しているので、所定量dの引込みによって、切削刃支持部10が降下することはなく、ロッド部16の先端面16aが上昇し、アーム8の頂面8aから距離dだけ上方に離れて位置することになる(図4)。
【0022】
この状態で研磨部材2を回転させ、研磨部材2の表面に接触している切削刃4を研磨する。この研磨によって切削刃4の寸法が減少するので、研磨作業が進むと、切削刃4を支持する切削刃支持部10が自重で、アーム8および研磨部材2に対して降下していく。降下は、切削刃支持部10に連結されている上下動制御部12のロッド部16の先端面16aがアーム8の先端の頂面8aに接触するまで距離dだけ続くことになる(図5)。したがって、切削刃4は、距離(量)dだけ研磨されることになるので、距離dを切削刃4を研磨したい量(研磨量)に設定することによって、切削刃4を所定量だけ研磨することが可能となる。
【0023】
なお、研磨部材2は、図5の矢印のように、研磨部材2と切削刃4のなす角度が広い方から狭い方へ研磨部材2を移動させる方向で回転させることが好ましい。このように研磨部材2を切削刃4に接触させることで、刃付を十分に行うことができる。
刃保持部14はヒンジ18を中心に回転が可能であり、研磨中に切削刃4が研磨部材2にひっかかった場合に回転して切削刃4の損傷を防ぐようになっている。
【0024】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好ましい態様の研磨装置の正面図である。
【図2】本発明の好ましい態様の研磨装置の側面図である。
【図3】図1及び図2の研磨装置の研磨作業開始前の状態を示す側面図である。
【図4】図1及び図2の研磨装置の研磨作業開始時点および研磨作業中の状態を示す側面図である。
【図5】図1及び図2の研磨装置の研磨作業終了時点の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1:研磨装置
2:研磨部材
4:切削刃
6:切削刃支持機構
8:アーム部材
10:切削刃支持部
12:上下動制御部
14:刃保持部
16:ロッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削刃を研磨する研磨装置であって、
回転駆動される円盤状の研磨部材と、
前記切削刃を支持し、該切削刃を該研磨部材に接触させ該切削刃を該研磨部材で研磨させる切削刃支持機構とを備え、
該切削刃支持機構が、先端が前記研磨部材の上方に位置するように配置されているアーム部材と、該アーム部材の先端部に上下動可能に取付けられ下端に前記切削刃を支持する切削刃支持部と、該切削刃支持部の上下動を制御する上下動制御部とを、備えている、
ことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記上下動制御部が電動マイクロメータヘッドを備えている、
請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記上下動制御部が前記電動マイクロメータヘッドから下方に突出するロッドによって、該ロッドの上方に支持され、前記切削刃支持部は前記上下動制御部と連結部を介して連結されている、
ことを特徴とする請求項2記載の研磨装置。
【請求項4】
切削刃を研磨する方法であって、
回転駆動される円盤状の研磨部材と、
前記切削刃を支持し、該切削刃を該研磨部材に接触させ該切削刃を該研磨部材で研磨させる切削刃支持機構とを備え、
該切削刃支持機構が、先端が前記研磨部材の上方に位置するように配置されているアーム部材と、該アーム部材の先端部に上下動可能に取付けられ下端に前記切削刃を支持する切削刃支持部と、該切削刃支持部の上下動を制御する上下動制御部とを備えており、
上下動制御部が前記電動マイクロメータヘッドから下方に突出するロッドによって、該ロッドの上方に支持され、前記切削刃支持部は前記上下動制御部と連結部を介して連結されている研磨装置を用いて切削刃を研磨するであって、
前記研磨部材を回転させ、前記ロッドを引き込ませることにより、前記切削刃を下降させ、該切削刃が前記研磨部材と当接した前記ロッドの突出量を基準とし、研磨量の分だけ前記ロッドを引っ込め、該ロッド先端が前記アームの頂面に当接するまで前記切削刃の研磨を行う、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−272905(P2008−272905A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121724(P2007−121724)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】