切削工具及びホルダ
【課題】最新のNC旋盤(数値制御旋盤)に使用するのに適する金属加工用の切削工具及びホルダを提供し、複数の従来工具を置き換えることのできる切削工具を提供し、安定したホルダを提供する。
【解決手段】切削工具10は、ホルダ11と、少なくとも二つのフライス削りインサート12A〜12Dとを備える。ホルダ11は、フライス削りインサート12A〜12Dを受容するために、複数のインサートポケット17を備える。フライス削りインサートは、ホルダの中心軸線(CL)に対する切削インサートの最外周部が概ね円(C)上に位置するように、ホルダ11に取り付けられる。円(C)は、切削工具10の直径を構成している。切削工具10は、フライス削りインサート以外に、他の加工をするために設けられた少なくとも一つの旋削インサート13〜16をさらに備え、旋削インサートは円(C)の半径方向内側に設けられる。
【解決手段】切削工具10は、ホルダ11と、少なくとも二つのフライス削りインサート12A〜12Dとを備える。ホルダ11は、フライス削りインサート12A〜12Dを受容するために、複数のインサートポケット17を備える。フライス削りインサートは、ホルダの中心軸線(CL)に対する切削インサートの最外周部が概ね円(C)上に位置するように、ホルダ11に取り付けられる。円(C)は、切削工具10の直径を構成している。切削工具10は、フライス削りインサート以外に、他の加工をするために設けられた少なくとも一つの旋削インサート13〜16をさらに備え、旋削インサートは円(C)の半径方向内側に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の序文に従った切削工具及びホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
全ての数値制御旋盤は、様々な機械加工作業を行うために様々な工具を装備しており、回転式工具交換装置内で新しい工具を前方に割出し位置決めするか、旋盤に接続された工具マガジンから新しい工具を取ってくるかすることを要求する。工具交換のための時間は、機械の大きさに依存して大きく変化するが、基準としては1秒から10秒の間となる。複数の短時間且つ高回転数の加工で出力として複雑な細部を作るときには、多くの工具が使用され、機械の非生産時間が長くなる。作業の中には、非生産時間について、50%以上になるものもある。
【0003】
開発により、原理上作業範囲内で自由に動くことができ且ついわゆるB軸を有した多機能の機械において全ての方向から被加工物に到達することができるX軸方向のフライス主軸が、最新のNC旋盤(数値制御旋盤)に設けられるようになった。現在、問題は、工具がこの新しい機械に使用するのに適するように最適化されていないことにある。
【0004】
特許文献1は、ヘッドに接続されたシャンクを備えた切削工具を示している。ヘッドは軸線方向に向けられた三つの切刃を担持しており、これら切刃は、前に使用の切刃が摩耗したときに有効位置に割出し位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第2122124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、上述した欠点を克服する金属加工用の切削工具及びホルダを提供することにある。
本発明の一つの目的は、複数の従来工具を置き換えることのできる切削工具を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、安定したホルダを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】本発明による切削工具の実施形態を底面図で示している。
【図1B】切削工具を図1Aの線I−Iに沿った断面で示している。
【図1C】切削工具を斜視図で示している。
【図2A】被加工物の丸フライス削り時における切削工具を平面図で示している。
【図2B】被加工物の丸フライス削り時における切削工具を斜視図で示している。
【図2C】被加工物の丸フライス削り時における切削工具を側面図で示している。
【図3】被加工物の角フライス削り時における切削工具を斜視図で示している。
【図4】被加工物の長手方向旋削の際の切削工具を側面図で示している。
【図5A】被加工物の面削りの際の切削工具を斜視図で示している。
【図5B】本発明によるホルダを図5Aと同じように斜視図で示している。
【図6】被加工物の溝削りの際の切削工具を斜視図で示している。
【図7】被加工物のねじ切り加工の際の切削工具を斜視図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のこれらの目的及び利点は、添付図面に関する本発明による切削工具及びホルダの好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0009】
図1A〜図7には、フライス工具の基本的形状で開発された本発明による切削工具10が示されている。切削工具10は、好ましくは鋼鉄からなる硬い工具本体又はホルダ11と、好ましくは焼結超硬合金からなる幾つかの切削インサート12,13,14,15,16,36とを備える。工具本体11は、切削インサート12〜16,36を受容するために、幾つかのインサートポケット(インサート受容凹部)17,18,19,20,21,38を備えている。各切削インサートポケット17〜21,38は、切削インサートの幾何学的形状に適合するように構成されており、主として平坦なベース表面22と、少なくとも一つの肩部23,24とを備えている(図5B)。図1〜図7に示されているような切削工具10の切削インサート12〜16,36は、フライス削り(切削インサート12A〜12D)、旋削(切削インサート13,14)、ねじ切り(切削インサート15)、溝削り(切削インサート16)、及びねじフライス削り(切削インサート36,36A,36B)のためのものである。最新機械の切削工具10の目的は、実質的に一回の段取りで被加工物34を機械加工して最終コンポーネントを得ることができることである。ドリル刃を代替の切削工具に接続することやロッドの外側加工のために切削工具の中央穴37の周りに他の切刃を設けることも可能である。
【0010】
単数又は複数の肩部23,24は、切削インサートの一つの縁端表面又は各縁端表面に当接するためのものである。公知のようにして切削インサートをホルダ11に固定するべく締結ねじ43を受容するために、好ましくはねじ切りされている貫通穴がホルダに設けられる。あるいはまた、ホルダに固定された単数又は複数のカセット上に単数又は複数の切削インサートを取り付けることもできる。
【0011】
このため、ホルダ11は、四つのフライス削りインサート12A,12B,12C,12Dをそれぞれ受容するために、幾つかのフライス削りインサートポケット17A,17B,17C,17Dを備える。フライス削りインサートポケットは、ホルダの中心軸線CLに対するインサートポケットの最外周部が概ね円C1(図1)上に位置するように、ホルダ11に設けられている。円C1は、ホルダ11の最大直径すなわち有効直径を構成する。ホルダ11は、フライス削りインサート以外に、他の加工を行うための旋削インサートを保持するために設けられた少なくとも一つの旋削インサートポケット18〜21,38をさらに備え、該旋削インサートポケット18〜21、38は円C1の半径方向内側に設けられる。フライス削りインサート12A〜12Dのためのフライス削りインサートポケット17A〜17Dの数は、好ましくは、4個から10個の範囲である。フライス削りインサート12のための各インサートポケットと関連して、切屑空間25A,25B,25C,25Dが設けられている。旋削インサートポケット18〜21は、各々、一つの旋削インサート13〜16を保持するためのものである。旋削インサートのための各切削インサートポケット18〜21と関連して、切屑空間26,27,28,29が設けられている。フライス削りインサートポケット17の少なくとも一つと旋削インサートポケットの一つとはホルダの共通の切屑空間25C,27に接続している。すなわち、フライス削りの際に切削インサート12Cによって切削された切屑と旋削の際に切削インサート14によって切削された切屑は、加工領域からの除去のために同じ設備を利用している。ただし、同時にこれを使用するわけではない。
【0012】
ホルダ11は、中間部32を介してヘッド31に接続するシャンク30を有した締結手段を備える。中間部は平坦な端部表面33を有しており、その中央部においてシャンク30が突出している。シャンクは三角形状をしている。締結手段の特徴は米国特許第4,834,597号明細書、同第4,934,883号明細書、及び同第5,026,224号明細書にさらに詳細に記載されており、これら明細書は本願の記載と一体のものとして参照される。締結手段は、”Coromant Capto(登録商標)”としても公知となっている。シャンク30は軸線方向長さL1を有し、切削インサートを除いた中間部32及びヘッド31は長さL2を有している。長さL2は、特に旋削で正確な公差を得るための必要条件である非常に硬い工具を得るために、好ましくは1.5〜3の区間内で長さL1に相関している。あるいはまた、締結手段は、円筒状シャンク、ISO円錐、Morse円錐などのような他のタイプのものとすることもできる。
【0013】
フライス削りインサート12A〜12Dは、本願説明と一体のものとして参照される米国特許第6,142,716号明細書にさらに詳しく記載されている。切削インサート12Aは、概略平行な二つの長側面と、それと結合している短い側面並びに上側面及び下側面とを備える。少なくとも一対の切刃が切削インサートの上側面と長側面及び短側面の両方との間の遷移部に形成されている。上側面はすくい面を構成し、長側面並びに短側面は逃げ面を構成する。各切刃対は、長側面の主切刃と、短側面の副切刃とから形成されており、主切刃と副切刃とは切削コーナの領域で交わっている。切削コーナは、短側面の主要部の仮想延長線の内側に設けられる。副切刃は、フライス削り時に被加工物34の表面を生成させるために設けられる。主切刃は、下側面と鋭角をなすように傾斜している。各切刃対は、下側面に向かう方向に、第1の逃げ面に接続している。第1の逃げ面は、短側面及び長側面の主要部が位置する面に対して突出している。工具10において他の幾何学的形状を有したフライス削りインサート及びインサートポケットを使用することもできることは理解されるであろう。フライス削りインサート12A〜12Dは、ホルダの中心軸線CLに対するインサートの最外周部が概略円Cに位置するように、ホルダ11に設けられる。円Cは、また、切削工具10の最大直径すなわち有効直径を構成する。フライス削りインサート12A〜12Dの軸線方向最前部は平面P内に位置する(図2C)。
【0014】
旋削用の旋削インサート13〜16は、円Cの半径方向内側に設けられる。旋削インサート13〜16の最外周部がホルダの最大直径すなわち有効直径C1の半径方向外側に設けられることが好ましい。旋削インサート13〜16は、また、平面Pの軸線方向内側に設けられている。後者は、旋削インサートのためのインサートポケットが平面Pと平行な平面の軸線方向内側に位置することが好ましいことを意味している。
【0015】
切削インサート13又は14は、四つのコーナ(角)を有すると共に、ポジティブ(正)の幾何学的基本形状を有している。切削インサートは、平坦なすくい面を有しているが、代わりに、ある種のチップブレーカを備えて形成されてもよい。工具は、例えば図4及び図5Aに示されているように長手方向旋削又は面削りに関して、切削インサート13又は14が被加工物34を切削する間、回転させられない。ねじ切りインサート15は、三角形状であり、例えば米国特許第6,138,540号明細書に示されているようなねじ切り用切刃を備えた少なくとも一つの切削コーナを有している(図7)。溝削りインサート16は、被加工物34に溝35を切削するために、少なくとも一つの突出部を有した長方形状を有している(図6)。
【0016】
旋削の間中、フライス削りインサートは被加工物34との接触を避けることを意図する位置をとる。したがって、フライス削りインサート12A〜12Dは、中心軸線CL周りに少なくとも切削工具を回転させる際に被加工物のフライス削りを行うように設けられ、旋削インサート13〜16は、中心軸線CLに対して切削工具が静止位置にある際に被加工物34を旋削するように設けられている。さらに、旋削インサート13〜16は、被加工物のフライス削りの際には無効となるように(すなわち、機能しなくなるように)設けられる一方、フライス削りインサート12A〜12Dは、被加工物の旋削の際には無効となるように設けられる。
【0017】
ロッドの外側ねじ切りのために、切削工具10の中央穴37の周りに設けられたインサートポケット38内に、切削インサート36A,36B,36Cが設けられる。ねじ切りインサート36は、切削インサートについて本願説明と一体のものとして参照されるWO01/00362にさらに詳しく記載されている。切削インサート36は、概略平行六面体基本形状を有すると共に、切屑除去部並びに取り付け部を有している。ねじフライス削りインサート36は超硬合金から形成されることが好ましい。切屑除去部は二つの切刃を装備しており、各切刃は複数の歯から構成されている。これは、ねじ切りインサート36を割り出し可能にすることを可能とさせる。すなわち、本発明による切削工具10において、両方の切刃を利用することができる。切削インサート上には、各切刃の内側にこれと関連して、正のすくい面が形成されている。図1A〜図1Cから、各ねじ切りインサート36A,36B,36Cが、ねじ穴39内の三つのねじによって、切削工具10の長細い切削インサートポケット38に留められることが明らかである。これらねじは一部が各切削インサートの凹部と協働し且つ一部がヘッド31のねじ穴39と協働する。ねじは、図示されていないキーで、外側から半径方向に調整される。切削インサート36は、円補間の際にフライス削りをするためのものである。切削インサート36の軸線方向最前部は、平面Pの軸線方向内側に設けられている。切削インサート36は、円C及びC1の半径方向内側に設けられている。
【0018】
フライス主軸を有した従来技術の数値制御旋盤の現状では、工具は、回転しながら並びに静止状態で機能を果たし得る一方で、非常に高い位置決め精度を有している。多機能加工特性を有した本発明による工具の場合、最小の「工具交換(chip to chip)」時間で、より多くの加工作業を行うことができる。工具は、有効に作動している主軸に常時設置されており且つ工具交換の時間がそれによりほとんど完全に削除され得る点で異なっているが、原理上、工具交換器として機能する。工具は、設計に応じて、旋削、フライス削り、ねじ切り、ドリル加工、リーマ加工、形削りなどを行うことができる。生産性の増加に加えて、工具は、例えば無人作業時に、機械に多数の切削インサートを具備させる安価な手法を提供する。
【0019】
工具についての利点は、切削インサートが、一つの同じ工具だけを使って、作動している主軸の位置及び動きに依存して、フライス削り、旋削フライス削り、形状フライス削り、リーマ加工、長手方向旋削、倣い旋削、面削り、内側加工、形状旋削、面取り、ねじ切りを行うことができるように配置されていることである。
工具は、同様に、溝削りフライスカッタや円盤フライスカッタの形状をとることもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の序文に従った切削工具及びホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
全ての数値制御旋盤は、様々な機械加工作業を行うために様々な工具を装備しており、回転式工具交換装置内で新しい工具を前方に割出し位置決めするか、旋盤に接続された工具マガジンから新しい工具を取ってくるかすることを要求する。工具交換のための時間は、機械の大きさに依存して大きく変化するが、基準としては1秒から10秒の間となる。複数の短時間且つ高回転数の加工で出力として複雑な細部を作るときには、多くの工具が使用され、機械の非生産時間が長くなる。作業の中には、非生産時間について、50%以上になるものもある。
【0003】
開発により、原理上作業範囲内で自由に動くことができ且ついわゆるB軸を有した多機能の機械において全ての方向から被加工物に到達することができるX軸方向のフライス主軸が、最新のNC旋盤(数値制御旋盤)に設けられるようになった。現在、問題は、工具がこの新しい機械に使用するのに適するように最適化されていないことにある。
【0004】
特許文献1は、ヘッドに接続されたシャンクを備えた切削工具を示している。ヘッドは軸線方向に向けられた三つの切刃を担持しており、これら切刃は、前に使用の切刃が摩耗したときに有効位置に割出し位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第2122124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、上述した欠点を克服する金属加工用の切削工具及びホルダを提供することにある。
本発明の一つの目的は、複数の従来工具を置き換えることのできる切削工具を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、安定したホルダを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】本発明による切削工具の実施形態を底面図で示している。
【図1B】切削工具を図1Aの線I−Iに沿った断面で示している。
【図1C】切削工具を斜視図で示している。
【図2A】被加工物の丸フライス削り時における切削工具を平面図で示している。
【図2B】被加工物の丸フライス削り時における切削工具を斜視図で示している。
【図2C】被加工物の丸フライス削り時における切削工具を側面図で示している。
【図3】被加工物の角フライス削り時における切削工具を斜視図で示している。
【図4】被加工物の長手方向旋削の際の切削工具を側面図で示している。
【図5A】被加工物の面削りの際の切削工具を斜視図で示している。
【図5B】本発明によるホルダを図5Aと同じように斜視図で示している。
【図6】被加工物の溝削りの際の切削工具を斜視図で示している。
【図7】被加工物のねじ切り加工の際の切削工具を斜視図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のこれらの目的及び利点は、添付図面に関する本発明による切削工具及びホルダの好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0009】
図1A〜図7には、フライス工具の基本的形状で開発された本発明による切削工具10が示されている。切削工具10は、好ましくは鋼鉄からなる硬い工具本体又はホルダ11と、好ましくは焼結超硬合金からなる幾つかの切削インサート12,13,14,15,16,36とを備える。工具本体11は、切削インサート12〜16,36を受容するために、幾つかのインサートポケット(インサート受容凹部)17,18,19,20,21,38を備えている。各切削インサートポケット17〜21,38は、切削インサートの幾何学的形状に適合するように構成されており、主として平坦なベース表面22と、少なくとも一つの肩部23,24とを備えている(図5B)。図1〜図7に示されているような切削工具10の切削インサート12〜16,36は、フライス削り(切削インサート12A〜12D)、旋削(切削インサート13,14)、ねじ切り(切削インサート15)、溝削り(切削インサート16)、及びねじフライス削り(切削インサート36,36A,36B)のためのものである。最新機械の切削工具10の目的は、実質的に一回の段取りで被加工物34を機械加工して最終コンポーネントを得ることができることである。ドリル刃を代替の切削工具に接続することやロッドの外側加工のために切削工具の中央穴37の周りに他の切刃を設けることも可能である。
【0010】
単数又は複数の肩部23,24は、切削インサートの一つの縁端表面又は各縁端表面に当接するためのものである。公知のようにして切削インサートをホルダ11に固定するべく締結ねじ43を受容するために、好ましくはねじ切りされている貫通穴がホルダに設けられる。あるいはまた、ホルダに固定された単数又は複数のカセット上に単数又は複数の切削インサートを取り付けることもできる。
【0011】
このため、ホルダ11は、四つのフライス削りインサート12A,12B,12C,12Dをそれぞれ受容するために、幾つかのフライス削りインサートポケット17A,17B,17C,17Dを備える。フライス削りインサートポケットは、ホルダの中心軸線CLに対するインサートポケットの最外周部が概ね円C1(図1)上に位置するように、ホルダ11に設けられている。円C1は、ホルダ11の最大直径すなわち有効直径を構成する。ホルダ11は、フライス削りインサート以外に、他の加工を行うための旋削インサートを保持するために設けられた少なくとも一つの旋削インサートポケット18〜21,38をさらに備え、該旋削インサートポケット18〜21、38は円C1の半径方向内側に設けられる。フライス削りインサート12A〜12Dのためのフライス削りインサートポケット17A〜17Dの数は、好ましくは、4個から10個の範囲である。フライス削りインサート12のための各インサートポケットと関連して、切屑空間25A,25B,25C,25Dが設けられている。旋削インサートポケット18〜21は、各々、一つの旋削インサート13〜16を保持するためのものである。旋削インサートのための各切削インサートポケット18〜21と関連して、切屑空間26,27,28,29が設けられている。フライス削りインサートポケット17の少なくとも一つと旋削インサートポケットの一つとはホルダの共通の切屑空間25C,27に接続している。すなわち、フライス削りの際に切削インサート12Cによって切削された切屑と旋削の際に切削インサート14によって切削された切屑は、加工領域からの除去のために同じ設備を利用している。ただし、同時にこれを使用するわけではない。
【0012】
ホルダ11は、中間部32を介してヘッド31に接続するシャンク30を有した締結手段を備える。中間部は平坦な端部表面33を有しており、その中央部においてシャンク30が突出している。シャンクは三角形状をしている。締結手段の特徴は米国特許第4,834,597号明細書、同第4,934,883号明細書、及び同第5,026,224号明細書にさらに詳細に記載されており、これら明細書は本願の記載と一体のものとして参照される。締結手段は、”Coromant Capto(登録商標)”としても公知となっている。シャンク30は軸線方向長さL1を有し、切削インサートを除いた中間部32及びヘッド31は長さL2を有している。長さL2は、特に旋削で正確な公差を得るための必要条件である非常に硬い工具を得るために、好ましくは1.5〜3の区間内で長さL1に相関している。あるいはまた、締結手段は、円筒状シャンク、ISO円錐、Morse円錐などのような他のタイプのものとすることもできる。
【0013】
フライス削りインサート12A〜12Dは、本願説明と一体のものとして参照される米国特許第6,142,716号明細書にさらに詳しく記載されている。切削インサート12Aは、概略平行な二つの長側面と、それと結合している短い側面並びに上側面及び下側面とを備える。少なくとも一対の切刃が切削インサートの上側面と長側面及び短側面の両方との間の遷移部に形成されている。上側面はすくい面を構成し、長側面並びに短側面は逃げ面を構成する。各切刃対は、長側面の主切刃と、短側面の副切刃とから形成されており、主切刃と副切刃とは切削コーナの領域で交わっている。切削コーナは、短側面の主要部の仮想延長線の内側に設けられる。副切刃は、フライス削り時に被加工物34の表面を生成させるために設けられる。主切刃は、下側面と鋭角をなすように傾斜している。各切刃対は、下側面に向かう方向に、第1の逃げ面に接続している。第1の逃げ面は、短側面及び長側面の主要部が位置する面に対して突出している。工具10において他の幾何学的形状を有したフライス削りインサート及びインサートポケットを使用することもできることは理解されるであろう。フライス削りインサート12A〜12Dは、ホルダの中心軸線CLに対するインサートの最外周部が概略円Cに位置するように、ホルダ11に設けられる。円Cは、また、切削工具10の最大直径すなわち有効直径を構成する。フライス削りインサート12A〜12Dの軸線方向最前部は平面P内に位置する(図2C)。
【0014】
旋削用の旋削インサート13〜16は、円Cの半径方向内側に設けられる。旋削インサート13〜16の最外周部がホルダの最大直径すなわち有効直径C1の半径方向外側に設けられることが好ましい。旋削インサート13〜16は、また、平面Pの軸線方向内側に設けられている。後者は、旋削インサートのためのインサートポケットが平面Pと平行な平面の軸線方向内側に位置することが好ましいことを意味している。
【0015】
切削インサート13又は14は、四つのコーナ(角)を有すると共に、ポジティブ(正)の幾何学的基本形状を有している。切削インサートは、平坦なすくい面を有しているが、代わりに、ある種のチップブレーカを備えて形成されてもよい。工具は、例えば図4及び図5Aに示されているように長手方向旋削又は面削りに関して、切削インサート13又は14が被加工物34を切削する間、回転させられない。ねじ切りインサート15は、三角形状であり、例えば米国特許第6,138,540号明細書に示されているようなねじ切り用切刃を備えた少なくとも一つの切削コーナを有している(図7)。溝削りインサート16は、被加工物34に溝35を切削するために、少なくとも一つの突出部を有した長方形状を有している(図6)。
【0016】
旋削の間中、フライス削りインサートは被加工物34との接触を避けることを意図する位置をとる。したがって、フライス削りインサート12A〜12Dは、中心軸線CL周りに少なくとも切削工具を回転させる際に被加工物のフライス削りを行うように設けられ、旋削インサート13〜16は、中心軸線CLに対して切削工具が静止位置にある際に被加工物34を旋削するように設けられている。さらに、旋削インサート13〜16は、被加工物のフライス削りの際には無効となるように(すなわち、機能しなくなるように)設けられる一方、フライス削りインサート12A〜12Dは、被加工物の旋削の際には無効となるように設けられる。
【0017】
ロッドの外側ねじ切りのために、切削工具10の中央穴37の周りに設けられたインサートポケット38内に、切削インサート36A,36B,36Cが設けられる。ねじ切りインサート36は、切削インサートについて本願説明と一体のものとして参照されるWO01/00362にさらに詳しく記載されている。切削インサート36は、概略平行六面体基本形状を有すると共に、切屑除去部並びに取り付け部を有している。ねじフライス削りインサート36は超硬合金から形成されることが好ましい。切屑除去部は二つの切刃を装備しており、各切刃は複数の歯から構成されている。これは、ねじ切りインサート36を割り出し可能にすることを可能とさせる。すなわち、本発明による切削工具10において、両方の切刃を利用することができる。切削インサート上には、各切刃の内側にこれと関連して、正のすくい面が形成されている。図1A〜図1Cから、各ねじ切りインサート36A,36B,36Cが、ねじ穴39内の三つのねじによって、切削工具10の長細い切削インサートポケット38に留められることが明らかである。これらねじは一部が各切削インサートの凹部と協働し且つ一部がヘッド31のねじ穴39と協働する。ねじは、図示されていないキーで、外側から半径方向に調整される。切削インサート36は、円補間の際にフライス削りをするためのものである。切削インサート36の軸線方向最前部は、平面Pの軸線方向内側に設けられている。切削インサート36は、円C及びC1の半径方向内側に設けられている。
【0018】
フライス主軸を有した従来技術の数値制御旋盤の現状では、工具は、回転しながら並びに静止状態で機能を果たし得る一方で、非常に高い位置決め精度を有している。多機能加工特性を有した本発明による工具の場合、最小の「工具交換(chip to chip)」時間で、より多くの加工作業を行うことができる。工具は、有効に作動している主軸に常時設置されており且つ工具交換の時間がそれによりほとんど完全に削除され得る点で異なっているが、原理上、工具交換器として機能する。工具は、設計に応じて、旋削、フライス削り、ねじ切り、ドリル加工、リーマ加工、形削りなどを行うことができる。生産性の増加に加えて、工具は、例えば無人作業時に、機械に多数の切削インサートを具備させる安価な手法を提供する。
【0019】
工具についての利点は、切削インサートが、一つの同じ工具だけを使って、作動している主軸の位置及び動きに依存して、フライス削り、旋削フライス削り、形状フライス削り、リーマ加工、長手方向旋削、倣い旋削、面削り、内側加工、形状旋削、面取り、ねじ切りを行うことができるように配置されていることである。
工具は、同様に、溝削りフライスカッタや円盤フライスカッタの形状をとることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ(11)と、少なくとも二つのフライス削りインサート(12A〜12D)とを備え、前記ホルダ(11)が前記フライス削りインサート(12A〜12D)を受容するための複数のインサートポケット(17)を備える金属加工のための切屑除去加工用切削工具(10)において、
前記ホルダの中心軸線(CL)に対する前記フライス削りインサートの最外周部が、前記切削工具(10)の直径を構成している円(C)上に概ね位置するように、前記フライス削りインサートが前記ホルダ(11)に取り付けられており、
前記切削工具(10)が、前記フライス削りインサート以外に、他の加工のために設けられた少なくとも一つの旋削インサート(13〜16,36)をさらに備え、
前記旋削インサート(13〜16,36)が、前記円(C)の半径方向内側に設けられると共に、前記フライス削りインサート(12A〜12D)による被加工物の加工の際に無効状態となるように設けられており、
前記旋削インサート(13〜16,36)は、前記フライス削りインサート(12A〜12D)による被加工物のフライス削りの際に無効状態となるように設けられ、
前記フライス削りインサート(12A〜12D)は、前記旋削インサート(13〜16,36)による被加工物の旋削の際に無効状態となるように設けられており、
前記フライス削りインサートの少なくとも一つ(12C)と前記旋削インサート(14)とは前記ホルダ(11)の共通の切屑空間(25C,27)に接続しており、
前記ホルダ(11)は、中間部(32)を介してヘッド(31)に接続するシャンク(30)を有した締結手段を備え、
前記中間部(32)は、平坦な端部表面(33)を有しており、その中央部においてシャンク(30)が突出し、前記旋削インサート(13〜16)は、前記円(C)の半径方向内側に設けられ、前記フライス削りインサート(12A〜12D)は、全て同一であることを特徴とする、切削工具。
【請求項2】
前記旋削インサート(13〜16,36)は、長手方向旋削、溝削り、ねじ旋削、倣い旋削、面削り、又は内側加工に適する幾何学的形状を有している、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記フライス削りインサート(12A〜12D)は、少なくとも前記中心軸線(CL)周りの前記切削工具の回転の際に被加工物のフライス削りをするように設けられており、前記旋削インサート(13〜16,36)は、前記中心軸線(CL)に対して前記切削工具が静止位置にある際に被加工物の旋削をするように設けられている、又は静止状態の被加工物のフライス削りをするように設けられている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
ロッドの外側加工のために、前記切削工具(10)の中央穴(37)の周りに、ねじフライス削り用の切削インサート(36A〜36C)が設けられている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項5】
少なくとも二つのフライス削りインサートを受容するために複数のフライス削りインサートポケット(17)を備える金属加工のための切屑除去加工用切削工具のためのホルダ(11)において、前記ホルダの中心軸線(CL)に対する前記フライス削りインサートポケットの最外周部が、前記ホルダ(11)の直径を構成する円(C1)に概ね位置するように、前記フライス削りインサートポケットが前記ホルダ(11)に設けられており、前記ホルダ(11)が、前記フライス削りインサート以外に、他の加工を行うための旋削インサートを受容するために設けられた少なくとも一つの旋削インサートポケット(18〜21,38)をさらに備え、前記旋削インサートポケット(18〜21,38)は、前記円(C1)の半径方向内側に設けられていると共に、前記旋削インサート(13〜16,36)は、前記フライス削りインサート(12A〜12D)による被加工物の加工の際に無効状態となるように設けられており、前記フライス削りインサートポケット(17)はフライス削りインサート(12A〜12D)を受容することを目的とし、前記旋削インサートポケット(18〜21,38)は旋削インサート(13〜16)又はフライス削りインサート(36A〜36C)を受容することを目的としており、前記フライス削りインサートポケット(17C)の少なくとも一つと旋削インサートポケット(19)とは前記ホルダの共通の切屑空間(25C,27)に接続しており、前記ホルダ(11)は、中間部(32)を介してヘッド(31)に接続するシャンク(30)を有した締結手段を備え、前記中間部(32)は、平坦な端部表面(33)を有しており、その中央部においてシャンク(30)が突出し、前記旋削インサート(13〜16)は、前記円(C1)の半径方向内側に設けられ、前記フライス削りインサートポケット(17)は、全て同一であることを特徴とするホルダ。
【請求項6】
ねじフライス削りインサート(36)のための少なくとも一つのインサートポケット(38)が前記ホルダ(11)の中央穴(37)の周りに設けられている、請求項5に記載のホルダ。
【請求項1】
ホルダ(11)と、少なくとも二つのフライス削りインサート(12A〜12D)とを備え、前記ホルダ(11)が前記フライス削りインサート(12A〜12D)を受容するための複数のインサートポケット(17)を備える金属加工のための切屑除去加工用切削工具(10)において、
前記ホルダの中心軸線(CL)に対する前記フライス削りインサートの最外周部が、前記切削工具(10)の直径を構成している円(C)上に概ね位置するように、前記フライス削りインサートが前記ホルダ(11)に取り付けられており、
前記切削工具(10)が、前記フライス削りインサート以外に、他の加工のために設けられた少なくとも一つの旋削インサート(13〜16,36)をさらに備え、
前記旋削インサート(13〜16,36)が、前記円(C)の半径方向内側に設けられると共に、前記フライス削りインサート(12A〜12D)による被加工物の加工の際に無効状態となるように設けられており、
前記旋削インサート(13〜16,36)は、前記フライス削りインサート(12A〜12D)による被加工物のフライス削りの際に無効状態となるように設けられ、
前記フライス削りインサート(12A〜12D)は、前記旋削インサート(13〜16,36)による被加工物の旋削の際に無効状態となるように設けられており、
前記フライス削りインサートの少なくとも一つ(12C)と前記旋削インサート(14)とは前記ホルダ(11)の共通の切屑空間(25C,27)に接続しており、
前記ホルダ(11)は、中間部(32)を介してヘッド(31)に接続するシャンク(30)を有した締結手段を備え、
前記中間部(32)は、平坦な端部表面(33)を有しており、その中央部においてシャンク(30)が突出し、前記旋削インサート(13〜16)は、前記円(C)の半径方向内側に設けられ、前記フライス削りインサート(12A〜12D)は、全て同一であることを特徴とする、切削工具。
【請求項2】
前記旋削インサート(13〜16,36)は、長手方向旋削、溝削り、ねじ旋削、倣い旋削、面削り、又は内側加工に適する幾何学的形状を有している、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記フライス削りインサート(12A〜12D)は、少なくとも前記中心軸線(CL)周りの前記切削工具の回転の際に被加工物のフライス削りをするように設けられており、前記旋削インサート(13〜16,36)は、前記中心軸線(CL)に対して前記切削工具が静止位置にある際に被加工物の旋削をするように設けられている、又は静止状態の被加工物のフライス削りをするように設けられている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
ロッドの外側加工のために、前記切削工具(10)の中央穴(37)の周りに、ねじフライス削り用の切削インサート(36A〜36C)が設けられている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項5】
少なくとも二つのフライス削りインサートを受容するために複数のフライス削りインサートポケット(17)を備える金属加工のための切屑除去加工用切削工具のためのホルダ(11)において、前記ホルダの中心軸線(CL)に対する前記フライス削りインサートポケットの最外周部が、前記ホルダ(11)の直径を構成する円(C1)に概ね位置するように、前記フライス削りインサートポケットが前記ホルダ(11)に設けられており、前記ホルダ(11)が、前記フライス削りインサート以外に、他の加工を行うための旋削インサートを受容するために設けられた少なくとも一つの旋削インサートポケット(18〜21,38)をさらに備え、前記旋削インサートポケット(18〜21,38)は、前記円(C1)の半径方向内側に設けられていると共に、前記旋削インサート(13〜16,36)は、前記フライス削りインサート(12A〜12D)による被加工物の加工の際に無効状態となるように設けられており、前記フライス削りインサートポケット(17)はフライス削りインサート(12A〜12D)を受容することを目的とし、前記旋削インサートポケット(18〜21,38)は旋削インサート(13〜16)又はフライス削りインサート(36A〜36C)を受容することを目的としており、前記フライス削りインサートポケット(17C)の少なくとも一つと旋削インサートポケット(19)とは前記ホルダの共通の切屑空間(25C,27)に接続しており、前記ホルダ(11)は、中間部(32)を介してヘッド(31)に接続するシャンク(30)を有した締結手段を備え、前記中間部(32)は、平坦な端部表面(33)を有しており、その中央部においてシャンク(30)が突出し、前記旋削インサート(13〜16)は、前記円(C1)の半径方向内側に設けられ、前記フライス削りインサートポケット(17)は、全て同一であることを特徴とするホルダ。
【請求項6】
ねじフライス削りインサート(36)のための少なくとも一つのインサートポケット(38)が前記ホルダ(11)の中央穴(37)の周りに設けられている、請求項5に記載のホルダ。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−31393(P2011−31393A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243916(P2010−243916)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2003−569352(P2003−569352)の分割
【原出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(591106875)セコ ツールズ アクティエボラーグ (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2003−569352(P2003−569352)の分割
【原出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(591106875)セコ ツールズ アクティエボラーグ (28)
【Fターム(参考)】
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