説明

切換制御弁

【課題】 アクチュエータAの負荷圧に応じてスプールSの位置制御を可能にする。
【解決手段】 バルブ本体Hに摺動自在に組み込んだスプールSの両端をメインパイロット室7,8に臨ませている。そして、このメインパイロット室7,8よりも外側に補助パイロット室11,19を設けるとともに、この補助パイロット室11,19に補助ピストン10,18を摺動自在に組み込んでいる。この補助ピストン10,18には、アクチュエータAの負荷圧を導くとともに、当該補助ピストン10,18の推力をスプールSの推力対向させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スプールのストロークを規制する補助ピストンを備えた切換制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして特許文献1に記載された切換制御弁が従来から知られている。
この従来から知られている切換制御弁は、アクチュエータの負荷圧を検出する検出ピストンの移動量で制御手段であるスプリングのばね力を調整して、スプールに対する推力を減殺させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−81803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにした特許文献1に記載した従来の切換制御弁では、検出ピストンによって制御手段であるスプリングのばね力を調整してスプールの推力を減殺するようにしているので、部品としてスプリングを必要とし、その分、部品点数が多くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、バルブ本体にスプールを摺動自在に組み込み、このスプールにはセンタリングスプリングを作用させるとともに、スプールの両端をメインパイロット室に臨ませ、このメインパイロット室に導いたパイロット圧の作用でスプールを左右いずれか一方に切り換えて、バルブ本体に設けた一方のアクチュエータポートをポンプに連通する供給通路に接続し、他方のアクチュエータポートをタンクに連通したタンク通路に連通させる。一方、上記メインパイロット室に導かれるパイロット圧に応じてスプールの移動量が制御されるとともに、上記アクチュエータポートと供給流路との連通開度が制御される構成にしている。
【0006】
そして、上記スプールの両端を臨ませたパイロット室よりも外方におけるスプールの軸線上に補助ピストンを備え、この補助ピストンの一端を補助パイロット室に臨ませるとともに、この補助ピストンは、補助パイロット室に設けたストッパーに規制されてストロークし、スプール端との間の対向間隔を基準にして規制位置と非規制位置との間で移動可能にする。一方、上記補助パイロット室には、上記メインパイロット室に作用するスプールに対するパイロット圧の作用力に対向する作用力を補助ピストンに作用させる圧力を導く構成にし、補助パイロット室にパイロット圧が作用したとき、補助ピストンが規制位置を保って、補助パイロット室に対向する側のメインパイロット室の圧力によるスプールに対する作用力を減殺させる。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上記のように構成したので、補助ピストンは、規制位置と非規制位置との間で移動するだけで、そこにおいてはスプリング等の部品を必要とせず、その分、部品点数を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図示の実施形態は、両端にサブブロック1,2を設けたバルブ本体Hには、一対のアクチュエータポート3,4と、図示していないポンプに連通した供給ポート5と、図示していないタンクに連通するタンク通路6とを形成している。
上記のようにしたバルブ本体Hには、スプールSを摺動自在に組み込むとともに、このスプールSの両端を、上記サブブロック1,2に形成したメインパイロット室7,8に臨ませている。
【0010】
上記一方のサブブロック1には、メインパイロット室7に連通するパイロット圧導入ポート9を形成するとともに、補助ピストン10を摺動自在に組み込んでいる。この補助ピストン10は、その一端にフランジ部10aを設けるとともに、このフランジ部10aとは反対側にプランジャ部10bを設けている。そして、上記フランジ部10aをサブブロック1に形成した補助パイロット室11内に位置させるとともに、プランジャ部10bの先端をメインパイロット室7に臨ませている。
【0011】
また、上記補助パイロット室11におけるバルブ本体H側の壁面をストッパー12とし、上記補助ピストン10のフランジ部10aとストッパー12とを対向させるとともに、この補助ピストン10がフランジ部10aと上記ストッパー12との対向間隔分をストロークできるようにしている。そして、補助ピストン10のフランジ部10aが上記ストッパー12に当たったとき、補助ピストン10が規制位置を保ち、補助ピストン10がストッパー12とは反対側に設けたプラグ13に接する図示の位置にあるとき補助ピストン10が非規制位置を保つことになる。
なお、図中符号14は上記プラグ13に設けた圧力導入ポートで、補助パイロット室11にパイロット圧を導くものである。
【0012】
他方のサブブロック2には、上記パイロット室8よりもバルブ本体H側にスプリング室15を形成するとともに、このスプリング室15にセンタリングスプリング16を設け、ノーマル状態でスプールSが図示の中立位置を保つようにしている。
なお、図中符号17は、メインパイロット室8にパイロット圧を導くパイロット圧導入ポートである。
【0013】
また、上記サブブロック2であって、上記メインパイロット室8の外方には、補助ピストン18を摺動自在に組み込むとともに、この補助ピストン18は、その一端にフランジ部18aを設け、このフランジ部18aとは反対側にプランジャ部18bを設けている。そして、上記フランジ部18aをサブブロック2に形成した補助パイロット室19内に位置させるとともに、プランジャ部18bの先端をメインパイロット室8に臨ませている。
【0014】
また、上記補助パイロット室19におけるバルブ本体H側の壁面をストッパー20とし、上記補助ピストン18のフランジ部18aとストッパー20とを対向させるとともに、この補助ピストン18がフランジ部18aと上記ストッパー20との対向間隔分をストロークできるようにしている。そして、補助ピストン18のフランジ部18aが上記ストッパー20に当たったとき、補助ピストン18が規制位置を保ち、補助ピストン18がストッパー20とは反対側に設けたプラグ21に接する図示の位置にあるとき補助ピストン18が非規制位置を保つことになる。
なお、図中符号22は上記プラグ21に設けた圧力導入ポートで、補助パイロット室19にパイロット圧を導くものである。
【0015】
さらに、上記アクチュエータポート3,4にはアクチュエータAを接続するとともに、このアクチュエータAの一方のポートに接続した通路23を、導入通路24を介して他方の補助パイロット室19に連通する圧力導入ポート22に接続している。また、アクチュエータAの他方のポートに接続した通路25を、導入通路26を介して一方の補助パイロット室11に連通する圧力導入ポート14に連通している。
【0016】
次にこの実施形態の作用を説明する。
スプールSが図示の中立位置にあるとき供給ポート5が閉じた状態を維持するが、例えば、メインパイロット室7にパイロット圧を導くと、スプールSはセンタリングスプリング16に抗して図面右方向に移動し、一方のアクチュエータポート3とバルブ本体Hに形成した供給通路27とが、スプールSに形成した第1環状溝28を介して連通する。
このときに、他方のアクチュエータポート4は、第2環状溝29を介してタンク通路6に連通する。
【0017】
したがって、供給ポート5に導かれた圧油は、圧力補償弁30を介して供給通路27に導かれるとともに、この供給通路27から、上記のように第1環状溝28、アクチュエータポート3および通路23を経由してアクチュエータAに供給される。また、アクチュエータAからの戻り油は、通路25から、アクチュエータポート4、第2環状溝29およびタンク通路6を経由してタンクに戻される。
【0018】
一方、通路23側の負荷圧は導入通路24を経由して補助パイロット室19に導かれる。このように補助パイロット室19に負荷圧が導かれれば、補助ピストン18が規制位置方向に移動し、そのプランジャ部18bをメインパイロット室8内に突出させる。このときのプランジャ部18bの突出方向の推力は、メインパイロット室7の圧力に応じて移動するスプールSの推力と対向することになり、スプールSの推力を減殺させることになる。
【0019】
また、メインパイロット室8にパイロット圧を導くと、スプールSはセンタリングスプリング16に抗して図面左方向に移動し、他方のアクチュエータポート4と供給通路27とが第2環状溝29を介して連通する。このときに、一方のアクチュエータポート3は、第1環状溝28を介してタンク通路6に連通する。
【0020】
したがって、供給通路27に導かれた圧油は、第2環状溝29、アクチュエータポート4および通路25を経由してアクチュエータAに供給される。また、アクチュエータAからの戻り油は、通路23から、アクチュエータポート3、第1環状溝28およびタンク通路6を経由してタンクに戻される。
【0021】
一方、通路25側の負荷圧は導入通路26を経由して補助パイロット室11に導かれる。このように補助パイロット室11に負荷圧が導かれれば、補助ピストン10が規制位置方向に移動し、そのプランジャ部10bをメインパイロット室7内に突出させる。このときのプランジャ部10bの突出方向の推力は、メインパイロット室8の圧力に応じて移動するスプールSの推力と対向することになり、スプールSの推力を減殺させることになる。
以上のことからも明らかなように補助パイロット室11,19には、メインパイロット室7,8に導かれるパイロット圧と対向する圧力が導入されるように、導入通路24,26が交差状態を維持している。
【0022】
そして、上記のようにして補助ピストン10あるいは18のプランジャ部10bあるいは18bがメインパイロット室7あるいは8に突出すれば、スプールSは、その推力と補助ピストン10あるいは18の推力とがバランスする位置で停止し、そのときの供給通路27とアクチュエータポート3あるいは4との連通開度が制御されることになる。
【0023】
上記のようにした実施形態は、例えば、アクチュエータAが特定の位置で停止しながら負荷を保持しているときに、その保持している負荷が小さくなるような状況において効果を発揮する。すなわち、上記のように負荷を保持しているときには、その負荷に相当する圧力が補助ピストン10あるいは18に作用し、供給通路27とアクチュエータポート3あるいは4との連通開度を制限する。この状態で負荷が小さくなれば、補助ピストン10あるいは18の推力が小さくなるので、スプールSの推力が打ち勝って、上記供給通路27とアクチュエータポート3あるいは4との連通開度を大きくする方向に移動することになる。このようにしてアクチュエータAの負荷の大きさに応じて、自動的にスプールSの移動位置を制御することができる。
【0024】
なお、スプールSが中立位置にあるときと、上記補助ピストン10,18が規制位置にあるときとの位置関係は、スプールSと補助ピストン10,18との間に多少の間隔が保たれるようにして、その間隔の範囲内で、スプールSのインチング制御を可能にしている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
パワーショベル等の建設機械に最適である。
【符号の説明】
【0026】
H バルブ本体
S スプール
3,4 アクチュエータポート
6 タンク通路
7,8 メインパイロット室
10,18 補助ピストン
11,19 補助パイロット室
16 センタリングスプリング
27 供給通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体にスプールを摺動自在に組み込み、このスプールにはセンタリングスプリングを作用させるとともに、スプールの両端をメインパイロット室に臨ませ、このメインパイロット室に導いたパイロット圧の作用でスプールを左右いずれか一方に切り換えて、バルブ本体に設けた一方のアクチュエータポートをポンプに連通する供給通路に接続し、他方のアクチュエータポートをタンクに連通したタンク通路に連通させる一方、上記メインパイロット室に導かれるパイロット圧に応じてスプールの移動量が制御されるとともに、上記アクチュエータポートと供給流路との連通開度が制御される構成にした切換制御弁において、上記スプールの両端を臨ませたパイロット室よりも外方におけるスプールの軸線上に補助ピストンを備え、この補助ピストンの一端を補助パイロット室に臨ませるとともに、この補助ピストンは、補助パイロット室に設けたストッパーに規制されてストロークし、スプール端との間の対向間隔を基準にして規制位置と非規制位置との間で移動可能にする一方、上記補助パイロット室には、上記メインパイロット室に作用するスプールに対するパイロット圧の作用力に対向する作用力を補助ピストンに作用させる圧力を導く構成にし、補助パイロット室にパイロット圧が作用したとき、補助ピストンが規制位置を保って、補助パイロット室に対向する側のメインパイロット室の圧力によるスプールに対する作用力を減殺させる切換制御弁。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−180869(P2012−180869A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43021(P2011−43021)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】