説明

切換弁

【課題】複数の各圧縮部ごとに設けられた冷媒回路において、構造物のコンパクト化を図る。
【解決手段】複数のポート部の連通状態を第1状態と第2状態とに切換可能な複数の切換部20a,20b,20c,20dを備え、複数の切換部は、各々に3つのポート部が形成された第1から第3の主切換部20b,20c,20dの第1ポート部P4,P7,P10に第2から第4の圧縮部の吐出流路が連通され、第2ポート部に第1から第3の内部熱交換器の流入流路が連通され、第3ポート部に第1から第3の圧縮部の吸入流路が連通され、第1状態のときに第1ポート部P4,P7,P10及び第2ポート部が接続し、第2状態のときに第1ポート部P4,P7,P10及び第3ポート部が接続し、これらを1つケーシング11に収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路における冷媒の流路を切り換える切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧縮機構と放熱器(あるいは凝縮器)と膨張機構と蒸発器とが順に接続された冷媒回路を備えた空気調和装置が知られている。この冷媒回路に封入された冷媒が、圧縮行程、放熱(あるいは凝縮)行程、膨張行程、及び蒸発行程を繰り返すことにより冷凍サイクルが行われる。
【0003】
特許文献1には、従来よりも圧縮動力を低減することが可能な圧縮機構が接続された冷媒回路が開示されている。この圧縮機構は、吸入した低圧ガスを高圧ガスとして吐出するまでの間、圧縮動作と冷却動作とを交互に繰り返すように構成されている。
【0004】
具体的に、上記圧縮機構は、複数の圧縮部と複数のインタークーラ部とを備えている。各圧縮部は、吸入した低圧ガスを多段圧縮できるように直列に配置されている。一方、各インタークーラ部は、隣り合う圧縮部と圧縮部との間に設けられている。このように各圧縮部と各インタークーラ部とを交互に直列に配置することにより、圧縮と冷却とを交互に繰り返すことができる。
【0005】
これにより、圧縮中の冷媒の温度がほとんど上昇せず、等温圧縮に近い状態で冷媒が圧縮される。従って、この圧縮機の圧縮行程では、一般的な圧縮機の圧縮行程(断熱変化に近い状態での圧縮行程)と比較して圧縮機の動力を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平06−505330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した冷媒回路が冷暖切換可能に構成されている場合、冷房運転又は暖房運転に応じて、各圧縮部と各インタークーラ部との間の連通状態を切り換えることが望ましい。これにより、各運転時における運転効率の向上を図ることができる。
【0008】
しかしながら、上述した連通状態の切換を行うためには、各圧縮部ごとに切換弁を設けなければならない。そして、この切換弁が、上記冷媒回路を構成する構造物に散在してしまうと、この構造物のコンパクト化に支障を来すことが考えられる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、各圧縮部ごとに切換弁が設けられた冷媒回路において、その冷媒回路を構成する構造物のコンパクト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、第1から第4の圧縮部(70,80,90,100)と第1から第3の内部熱交換部(85,95,105)と熱源側熱交換部(75)と少なくとも1つの利用側熱交換部(63)とを有する冷媒回路(61)に接続された切換弁を前提としている。
【0011】
上記切換弁において、各々に形成された複数のポートの連通状態を第1状態と第2状態とに切換可能な複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を備え、上記複数の切換部(20a,20b,20c,20d)は、各々に3つのポートが形成された第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)を含み、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)の第1ポート(P4,P7,P10)に第2から第4の圧縮部(80,90,100)の吐出流路(82,92,102)がそれぞれ連通され、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)の第2ポート(P5,P8,P11)に第1から第3の内部熱交換器(85,95,105)の流入流路(87,97,107)がそれぞれ連通され、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)の第3ポート(P6,P9,P12)に第1から第3の圧縮部(70,80,90)の吸入流路(71,81,91)がそれぞれ連通され、上記第1状態のときに上記第1ポート(P4,P7,P10)及び上記第2ポート(P5,P8,P11)が接続し、上記第2状態のときに上記第1ポート(P4,P7,P10)及び上記第3ポート(P6,P9,P12)が接続する一方、上記複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を収容する1つケーシング(11)をさらに備えていることを特徴としている。
【0012】
第1の発明では、上記ケーシング(11)内に複数の切換部(20a,20b,20c,20d)が収容されている。これにより、複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を上記冷媒回路(61)に係る構造物に散在させることなく、該複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を1つのケーシング(11)に集約できるようになる。
【0013】
又、複数の切換部(20a,20b,20c,20d)に含まれる第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)は、各圧縮部(70,80,90,100)と各内部熱交換器(85,95,105)との間の接続状態を切り換える。各切換部(20a,20b,20c,20d)が第1状態のときには、各圧縮部(70,80,90,100)と各内部熱交換器(85,95,105)とを交互に直列に接続することが可能となる。一方、各切換部(20a,20b,20c,20d)が第2状態のときには、各圧縮部(70,80,90,100)が直列に直結される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記複数の切換部(20a,20b,20c,20d)は、4つのポート(P1,P2,P3,PP1)が形成された副切換部(20a)を含み、上記副切換部(20a)の第1ポート(P1)に上記第1圧縮部(70)の吐出流路(72)が連通され、上記副切換部(20a)の第2ポート(P2)に上記熱源側熱交換器(75)が連通され、上記副切換部(20a)の第3ポート(P3)に上記利用側熱交換器(63)が連通され、上記副切換部(20a)の第4ポート(PP1)に上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)が連通され、上記第1状態のときに上記第1ポート(P1)及び第2ポート(P2)が接続し且つ第3ポート(P3)及び第4ポート(PP1)が接続し、上記第2状態のときに第1ポート(P1)及び第3ポート(P3)が接続し且つ第2ポート(P2)及び第4ポート(PP1)が接続することを特徴としている。
【0015】
第2の発明では、複数の切換部(20a,20b,20c,20d)が副切換部(20a)を含んでいる。この副切換部(20a)は、第1圧縮部(70)と第4圧縮部(100)と熱源側熱交換部(75)と利用側熱交換部(63)との間の接続状態を切り換える。このように、上記主切換部(20b,20c,20d)と該主切換部(20b,20c,20d)に対して機能の異なる副切換部(20a)とを1つのケーシング(11)に集約できるようになる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)は、第1から第3のポート((P4,P7,P10),(P5,P8,P11),(P6,P9,P12))が開口する弁室(17b,17c,17d)と、上記各弁室(17b,17c,17d)を第1室(IS)と第2室(OS)に区画するとともに、その区画位置を上記第1状態に対応する第1位置と上記第2状態に対応する第2位置との間で変位可能な弁体(50)とを備え、上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の各弁体(50)が第1位置のときに、第1ポート(P4,P7,P10)及び第2ポート(P5,P8,P11)が第1室(IS)で連通し且つ第3ポート(P6,P9,P12)が第2室(OS)に開口し、上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の各弁体(50)が第2位置のときに、第1ポート(P4,P7,P10)及び第3ポート(P6,P9,P12)が第1室(IS)で連通し且つ第2ポート(P5,P8,P11)が第2室(OS)に開口する一方、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)に係る弁室(17b,17c,17d)の第2室(OS)を連通する主連通路(PP2,PP3,PP4)をさらに備えていることを特徴としている。
【0017】
第3の発明では、上記主連通路(PP2,PP3,PP4)を介して上記各主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)同士が連通する。これにより、上記第2室(OS)が全て同じ圧力になる。このように、各第2室(OS)の圧力を同一にすることにより、上記ケーシング(11)内で仕切られた第2室(OS)と第2室(OS)との間のシール構造を簡素化できるようになる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の少なくとも1つの第2室(OS)が、上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)に連通していることを特徴としている。
【0019】
第4の発明では、上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)に係る第2室(OS)の圧力を上記第4圧縮部(100)に係る吸入流路(101)の圧力、つまり上記冷媒回路(61)に係る低圧圧力にすることができるようになる。
【0020】
第5の発明は、第3の発明において、上記副切換部(20a)は、第1から第3のポート(P1,P2,P3)が開口する弁室(17a)と、該弁室(17a)を第1室(IS)と第2室(OS)に区画するとともに、その区画位置を上記第1状態に対応する第1位置と上記第2状態に対応する第2位置との間で変位可能な弁体(50)とを備え、上記副切換部(20a)の弁体(50)が第1位置のときに、上記第1ポート(P1)及び第2ポート(P2)が第1室(IS)で連通し且つ第3ポート(P3)及び第4ポート(PP1)が第2室(OS)で連通し、上記副切換部(20a)の弁体(50)が第2位置のときに、第1ポート(P1)及び第3ポート(P3)が第1室(IS)で連通し且つ第2ポート(P2)及び第4ポート(PP1)が第2室(OS)で連通するとともに、上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の少なくとも1つの第2室(OS)と上記副切換部(20a)の第2室(OS)とが連通していることを特徴としている。
【0021】
第5の発明では、上記主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)と上記副切換部(20a)の第2室(OS)とが連通する。
【0022】
ここで、上記副切換部(20a)における弁体(50)の位置に拘わらず、上記副切換部(20a)の第4ポート(PP1)は常に第2室(OS)に連通する。この第4ポート(PP1)は上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)に連通されている。つまり、上記副切換部(20a)の第2室(OS)の圧力は、常に上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)の圧力、即ち冷媒回路(61)の低圧圧力になっている。
【0023】
このように、上記副切換部(20a)の第2室(OS)を通じて上記主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)と上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)とを連通させることにより、上記主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)を低圧圧力にすることができるようになる。
【0024】
第6の発明は、第3から第5の何れか1つの発明において、上記各弁体(50)は1つの駆動軸(40)に取り付けられ、上記駆動軸(40)の回転によって各弁体(50)が第1位置と第2位置との間で変位することを特徴としている。
【0025】
第6の発明では、1つの駆動軸(40)で複数の切換部(20a,20b,20c,20d)に係る各弁体(50)の位置を変位させることができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を1つのケーシング(11)に集約できる。これにより、各切換部(20a,20b,20c,20d)が、上記冷媒回路(61)を構成する構造物に散在することがなくなる。この結果、この冷媒回路(61)に係る構造物のコンパクト化を図ることができる。
【0027】
また、上記第2の発明によれば、上記主切換部(20b,20c,20d)と該主切換部(20b,20c,20d)に対して機能の異なる副切換部(20a)とを1つのケーシング(11)に集約できる。このように、互いに機能の異なる切換部(20a,20b,20c,20d)を集約させることにより、上記冷媒回路(61)に係る構造物をさらにコンパクト化することができる。
【0028】
また、上記第3の発明によれば、上記各主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)同士を連通させることにより、上記ケーシング(11)内で仕切られた第2室(OS)と第2室(OS)との間のシール構造を簡素化することができる。これにより、上記切換弁(10)の低コスト化を図ることができる。
【0029】
また、上記第4の発明によれば、上記各主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)同士を低圧の圧力で連通させることにより、上記ケーシング(11)内で仕切られた第2室(OS)と第2室(OS)との間のシール構造をさらに簡素化することができる。これにより、上記切換弁(10)の低コスト化を図ることができる。
【0030】
また、上記第5の発明によれば、上記副切換部(20a)及び上記主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)同士を連通させることにより、上記副切換部(20a)の第2室(OS)を介して上記主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)と上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)とを連通させることができる。これにより、上記各主切換部(20b,20c,20d)の第2室(OS)を低圧の圧力にすることができ、上記ケーシング(11)内で仕切られた第2室(OS)と第2室(OS)との間のシール構造をさらに簡素化することができる。これにより、上記切換弁(10)の低コスト化を図ることができる。
【0031】
また、上記第6の発明によれば、1つの駆動軸(40)で複数の切換部(20a,20b,20c,20d)に係る各弁体(50)の位置を変位させることができる。これにより、上記切換弁(10)の構造をさらに簡素化することができ、上記切換弁(10)の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本実施形態に係る複合弁の外形図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る複合弁の縦断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る複合弁の横断面図であり、(A)が弁体のない場合の図2のA−A断面を示し、(B)が弁体のない場合の図2のB−B断面を示す。
【図4】図4は、本実施形態に係る複合弁の横断面図であり、(A)が弁体のある場合の図2のA−A断面を示し、(B)が弁体のある場合の図2のB−B断面を示す。
【図5】図5は、複合弁における弁体付近の縦断面図である。
【図6】図6は、複合弁のパッキンの外形図である。
【図7】図7は、弁体が第1位置にあるときの複合弁の横断面図であり、(A)が第1流路切換部を示し、(B)が第2から第4の流路切換部を示す。
【図8】図8は、弁体が第2位置にあるときの複合弁の横断面図であり、(A)が第1流路切換部を示し、(B)が第2から第4の流路切換部を示す。
【図9】図9は、複合弁が接続された冷媒回路の回路図である。
【図10】図10は、冷房運転時の冷媒回路の冷媒流れを示す図である。
【図11】図11は、冷房運転時の複合弁の冷媒流れを示す図であり、第1から第4の流路切換部を示す。
【図12】図12は、暖房運転時の冷媒回路の冷媒流れを示す図である。
【図13】図13は、暖房運転時の複合弁の冷媒流れを示す図であり、第1から第4の流路切換部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、本実施形態に係る複合弁(10)の構造について説明した後で、この複合弁(10)が接続される冷媒回路(61)の構造について説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0034】
−複合弁の構造−
本実施形態に係る複合弁(10)は、図1及び図2に示すように、弁ケース(ケーシング)(11)、駆動機構(30)及び第1から第4の流路切換部(20a,20b,20c,20d)を備えている。尚、第1流路切換部(20a)が副切換部を構成し、第2から第4の流路切換部(20b,20c,20d)が第1から第3の主切換部を構成する。
【0035】
〈弁ケース〉
弁ケース(11)は、略円筒状の胴体部(12)と、該胴体部(12)の上端を閉塞する略円柱状の上側閉塞部(13)と、該胴体部(12)の下端を閉塞する略円柱状の下側閉塞部(14)とを備えている。又、この弁ケース(11)には、上側から下側へ向かって、略円柱状の第1から第4の仕切部(15a,15b,15c,15d)が互いに軸方向に間隔を空けて配置されている。各仕切部(15a,15b,15c,15d)と各仕切部(15a,15b,15c,15d)との間には、上記胴体部(12)の内壁に沿うようにリング状のスペーサ(19)が介在している。これらのスペーサ(19)によって、各仕切部(15a,15b,15c,15d)と各仕切部(15a,15b,15c,15d)との間がいずれも等間隔に保たれる。
【0036】
上側閉塞部(13)と第1仕切部(15a)との間には、上記駆動機構(30)が有する変速ギア(32)を収容する収容室(16)が形成されている。又、第1仕切部(15a)と第2仕切部(15b)との間には第1流路切換部(20a)が配置され、第2仕切部(15b)と第3仕切部(15c)との間には第2流路切換部(20b)が配置され、第3仕切部(15c)と第4仕切部(15d)との間には第3流路切換部(20c)が配置され、第4仕切部(15d)と下側閉塞部(14)との間には第4流路切換部(20d)が配置されている。尚、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)は、弁室(17a,17b,17c,17d)と該弁室(17a,17b,17c,17d)に変位自在に収容された弁体(50)とを有している。尚、流路切換部(20a,20b,20c,20d)については詳しく後述する。
【0037】
上記上側閉塞部(13)には、該上側閉塞部(13)の中心部を軸方向へ貫通する軸孔(24)が形成されている。この軸孔(24)には、上記駆動機構(30)が有するステッピングモータ(31)の回転軸(31a)が摺動自在に内嵌している。
【0038】
上記第1仕切部(15a)には、該第1仕切部(15a)を貫通する第1から第3のポート(第1から第3のポート部)(P1,P2,P3)が形成されている。各ポート(P1,P2,P3)は、その一端が上記第1仕切部(15a)の下面に開口して他端が上記第1仕切部(15a)の側面に開口している。各ポート(P1,P2,P3)の一端は上記第1弁室(17a)に開口している。これらの開口は、図3(A)に示すように、軸直角断面が互いに同一径となる円形状に形成されている。又、これらの開口位置は上記駆動軸(40)の軸心を中心とする仮想円周上に配置されている。又、各ポート(P1,P2,P3)の他端には、上記胴体部(12)を貫通する第1から第3の短管(T1,T2,T3)がそれぞれ接続されている。
【0039】
上記第2仕切部(15b)には、該第2仕切部(15b)を貫通する第4から第6のポート(第1から第3のポート部)(P4,P5,P6)が形成されている。各ポート(P4,P5,P6)は、その一端が上記第2仕切部(15b)の下面に開口して他端が上記第2仕切部(15b)の側面に開口している。各ポート(P4,P5,P6)の一端は上記第2弁室(17b)に開口している。これらの開口は、図3(B)に示すように、軸直角断面が互いに同一径となる円形状に形成されている。又、これらの開口位置は上記駆動軸(40)の軸心を中心とする仮想円周上に配置されている。又、各ポート(P4,P5,P6)の他端には、上記胴体部(12)を貫通する第4から第6の短管(T4,T5,T6)がそれぞれ接続されている。
【0040】
又、上記第2仕切部(15b)には、上記第4から第6のポート(P4,P5,P6)とは別に、該第2仕切部(15b)を軸方向に貫通する第1連通ポート(第4ポート部)(PP1)が形成されている。この第1連通ポート(PP1)の開口は、軸直角断面が第4から第6のポート(P4,P5,P6)よりも大径となる円形状に形成されている。そして、この第1連通ポート(PP1)は、上記第1弁室(17a)と上記第2弁室(17b)とを連通している。
【0041】
上記第3仕切部(15c)には、該第3仕切部(15c)を貫通する第7から第9のポート(第1から第3のポート部)(P7,P8,P9)が形成されている。各ポート(P7,P8,P9)は、その一端が上記第3仕切部(15c)の下面に開口して他端が上記第3仕切部(15c)の側面に開口している。各ポート(P7,P8,P9)の一端は上記第3弁室(17c)に開口している。これらの開口は、図3(B)に示すように、軸直角断面が互いに同一径となる円形状に形成されている。又、これらの開口位置は上記駆動軸(40)の軸心を中心とする仮想円周上に配置されている。又、各ポート(P7,P8,P9)の他端には、上記胴体部(12)を貫通する第7から第9の短管(T7,T8,T9)がそれぞれ接続されている。
【0042】
又、上記第3仕切部(15c)には、上記第7から第9のポート(P7,P8,P9)とは別に、該第3仕切部(15c)を軸方向に貫通する第2連通ポート(主連通路)(PP2)が形成されている。この第2連通ポート(PP2)の開口は、軸直角断面が第7から第9のポート(P7,P8,P9)よりも大径となる円形状に形成されている。又、この第2連通ポート(PP2)は、上記第2弁室(17b)と上記第3弁室(17c)とを連通している。
【0043】
上記第4仕切部(15d)には、該第4仕切部(15d)を貫通する第10から第12のポート(第1から第3のポート部)(P10,P11,P12)が形成されている。各ポート(P10,P11,P12)は、その一端が上記第4仕切部(15d)の下面に開口して他端が上記第4仕切部(15d)の側面に開口している。各ポート(P10,P11,P12)の一端は上記第4弁室(17d)に開口している。これらの開口は、図3(B)に示すように、軸直角断面が互いに同一径となる円形状に形成されている。又、これらの開口位置は上記駆動軸(40)の軸心を中心とする仮想円周上に配置されている。又、各ポート(P10,P11,P12)の他端には、上記胴体部(12)を貫通する第10から第12の短管(T10,T11,T12)がそれぞれ接続されている。
【0044】
又、上記第4仕切部(15d)には、上記第10から第12のポート(P10,P11,P12)とは別に、該第4仕切部(15d)を軸方向に貫通する第3連通ポート(主連通路)(PP3)が形成されている。この第3連通ポート(PP3)の開口は、軸直角断面が第10から第12のポート(P10,P11,P12)よりも大径となる円形状に形成されている。又、この第3連通ポート(PP3)は、上記第3弁室(17c)と上記第4弁室(17d)とを連通している。
【0045】
又、上記下側閉塞部(14)には、該下側閉塞部(14)を軸方向に貫通する第4連通ポート(PP4)が形成されている。この第4連通ポート(PP4)の一端は第4弁室(17d)に連通して他端には第13短管(T13)が接続されている。
【0046】
又、各仕切部(15a,15b,15c,15d)には、該各仕切部(15a,15b,15c,15d)の中心部を軸方向へ貫通する軸孔部(18a,18b,18c,18d)が形成されている。各軸孔部(18a,18b,18c,18d)には、上記駆動機構(30)が有する駆動軸(40)が摺動自在に内嵌している。
【0047】
〈駆動機構〉
駆動機構(30)は、図2に示すように、ステッピングモータ(31)、略円柱状の変速ギア(32)及び駆動軸(40)を有している。
【0048】
上記ステッピングモータ(31)は、上記弁ケース(11)における上側閉塞部(13)の上面に取り付けられている。このステッピングモータ(31)の回転軸(31a)は、上述したように上側閉塞部(13)の軸孔に摺動自在に内嵌している。そして、この回転軸(31a)の端部が、上記弁ケース(11)の収容部(16)にある変速ギア(32)に連結されている。この変速ギア(32)の下端面から駆動軸(40)が延びている。この駆動軸(40)は、上述したように、上記各仕切部(15a,15b,15c,15d)の軸孔部(18a,18b,18c,18d)に摺動自在に内嵌している。
【0049】
又、この駆動軸(40)には、各弁室(17a,17b,17c,17d)に収容された弁体(50)が固定されている。上記ステッピングモータ(31)の回転力は、該ステッピングモータ(31)の回転軸(31a)を介して変速ギア(32)へ伝達されて該変速ギア(32)で変速された後に、上記駆動軸(40)を介して上記各弁体(50)へ伝達される。
【0050】
〈流路切換部〉
上記第1から第4の流路切換部(20a,20b,20c,20d)は、上述したように、第1から第4の弁室(17a,17b,17c,17d)と該各弁室(17a,17b,17c,17d)に収容された弁体(50)とを備えている。これらの弁体(50)は、各弁体(50)ごとに設けられたキー(51)を介して1つの駆動軸(40)に連結されている(図4を参照)。この駆動軸(40)の回転によって、全ての弁体(50)が同期して変位する。
【0051】
上記弁体(50)は、図4及び図5に示すように、駆動軸(40)の軸周りに沿うように形成された筒状部(55)と、該筒状部(55)と駆動軸(40)とを一体的に結合する連接部(56)とを有している。
【0052】
筒状部(55)は、軸直角方向の大まかな外形が、駆動軸(40)に沿うような円弧状、ないし繭状、ないし扇状に形成されている。この筒状部(55)によって、上記各弁室(17a,17b,17c,17d)内が、該筒状部(55)の内側の内側室(IS)と該筒状部(55)の外側の外側室(OS)とに区画される。
【0053】
この筒状部(55)は、駆動軸(40)の軸心を中心として、周方向に約120°の範囲に亘って形成されている。この筒状部(55)の内部には、軸方向の中間部位に上記筒状部(55)の内面から径方向内方へ突出する環状凸部(57)が形成されている。環状凸部(57)は、筒状部(55)の内周の全域に亘って形成されている。これにより、筒状部(55)の環状凸部(57)の軸方向の両側には、それぞれ大径開口部(58,58)が形成される。つまり、大径開口部(58,58)は、環状凸部(57)の内側よりも開口幅が広くなっている。
【0054】
上記弁体(50)には、一対の大径開口部(58,58)の内部に、環状凸部(57)と当接するようにそれぞれオーリング(53,53)が嵌め込まれている。オーリング(53,53)は、環状凸部(57)の各段差面に沿うような環状に形成されている。各オーリング(53,53)は、各弁室(17a,17b,17c,17d)の内側室(IS)と外側室(0S)との隙間をシールしている。
【0055】
上記弁体(50)には、一対の大径開口部(58,58)の内部に、オーリング(53,53)に重なるようにそれぞれパッキン(54,54)が嵌め込まれている。パッキン(54,54)は、図6に示すように、オーリング(53,53)に沿うような環状に形成されている。このパッキン(54,54)における上端面の外周縁には、互い に対向する一対の段差部(54a)が形成されている。このパッキン(54)は、各弁室(17a,17b,17c,17d)の内側室(IS)と外側室(0S)との隙間をシールするためのシール部材を構成している。
【0056】
各パッキン(54,54)の先端部は、弁体(50)の軸方向端面よりも外側へ突出しており、各弁室(17a,17b,17c,17d)の軸方向の両端面(下面及び上面)と当接する。これにより、下側のパッキン(54)の外周には、弁体(50)の軸方向の一端面と、各弁室(17a,17b,17c,17d)の下面との間に、筒状の隙間(G1)が形成されている。つまり、この隙間(G1)は、下側のパッキン(54)の全周を囲むように形成されている。同様に、上側のパッキン(54)の外周には、弁体(50)の軸方向の他端面(上端面)と、各弁室(17a,17b,17c,17d)の上面との間に、筒状の隙間(G2)が形成されている。つまり、この隙間(G2)は、上側のパッキン(54)の全周を囲むように形成されている。
【0057】
以上のように、本実施形態では、各弁体(50)の軸方向両端側に、それぞれ同じ圧力が作用する背圧空間(G1,G2)が形成される。これにより、各弁体(50)では、軸方向端面に作用する押し付け力が互いに相殺される。例えば仮に、各弁体(50)の一方の軸方向端面にのみ隙間が形成されて、この端面に押し付け力が作用すると、各弁体(50)が片側に押し付けられる。その結果、各弁体(50)を駆動する際の摺動抵抗が増大してしまう。しかしながら、本実施形態では、各弁体(50)に作用する軸方向の両側の押し付け力が互いにキャンセルされるため、このような摺動抵抗の増大を防止できる。
【0058】
各弁室(17a,17b,17c,17d)の弁体(50)は、上記駆動軸(40)が回転駆動されることに伴い、図7の第1位置と図8の第2位置との間で同時に変位する。尚、4つの弁体(50)が第1位置にあるときが上記第複合弁(10)の第1状態である。又、4つの弁体(50)が第2位置にあるときが上記第複合弁(10)の第2状態である。
【0059】
図7及び図8からわかるように、第1流路切換部(20a)において、弁体(50)が第1位置のときに第1ポート(P1)及び第2ポート(P2)が連通し且つ第3ポート(P1)及び第1連通ポート(PP1)が連通して、弁体(50)が第2位置のときに第1ポート(P1)及び第3ポート(P3)が連通し且つ第2ポート(P2)及び第1連通ポート(PP1)が連通する。
【0060】
又、第2流路切換部(20b)において、弁体(50)が第1位置のときに第4ポート(P4)及び第5ポート(P5)が連通し且つ第6ポート(P6)及び第2連通ポート(PP2)が連通して、弁体(50)が第2位置のときに第4ポート(P4)及び第6ポート(P6)が連通し且つ第5ポート(P5)及び第2連通ポート(PP2)が連通する。
【0061】
又、第3流路切換部(20c)において、弁体(50)が第1位置のときに第7ポート(P7)及び第8ポート(P8)が連通し且つ第9ポート(P9)及び第3連通ポート(PP3)が連通して、弁体(50)が第2位置のときに第7ポート(P7)及び第9ポート(P9)が連通し且つ第8ポート(P8)及び第3連通ポート(PP3)が連通する。
【0062】
又、第4流路切換部(20d)において、弁体(50)が第1位置のときに第10ポート(P10)及び第11ポート(P11)が連通し且つ第12ポート(P12)及び第4連通ポート(PP4)が連通して、弁体(50)が第2位置のときに第10ポート(P10)及び第12ポート(P12)が連通し且つ第11ポート(P11)及び第4連通ポート(PP4)が連通する。
【0063】
−空気調和装置の冷媒回路−
次に、この複合弁(10)が接続される冷媒回路(61)について説明する。この冷媒回路(61)は、例えば冷暖切換可能な空気調和装置に備えられている。この冷媒回路(61)には二酸化炭素(以下、冷媒という。)が封入され、この冷媒が冷媒回路(61)を循環することにより、多段圧縮式の超臨界冷凍サイクルを行うことが可能に構成されている。
【0064】
上記冷媒回路(61)には、図9に示すように、四段圧縮機(62)と第1から第4の室外熱交換器(75,85,95,105)と室内膨張弁(64)と室外膨張弁(111)と室内熱交換器(63)が接続されている。尚、本実施形態では、第1室外熱交換器(75)が熱源側熱交換器を構成し、第2から第4の室外熱交換器(85,95,105)が第1から第3の内部熱交換器をそれぞれ構成する。
【0065】
又、これらの主な構成要素の他に、第1から第4の油分離器(73,83,93,103)、レシーバ(130)、分流器(120)、ブリッジ回路(110)、及び逆止弁(CV1〜CV10)等が接続されている。そして、この冷媒回路(61)には、上述した複合弁(10)が接続されている。尚、この複合弁(10)では、上述したように、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)が上下に積層されてなるが、図9では、便宜上のため、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)が分離した状態で示されている。又、この空気調和装置には、この冷媒回路(61)の運転を制御するコントローラ(図示なし)が設けられている。
【0066】
上記四段圧縮機(62)は、第1から第4の圧縮部(70,80,90,100)を備えている。第1から第4の圧縮部(70,80,90,100)の吐出側に第1から第4の吐出管(72,82,92,102)が接続され、第1から第4の圧縮部(70,80,90,100)の吸入側に第1から第4の吸入管(71,81,91,101)が接続されている。各圧縮部(70,80,90,100)では、各吸入管(71,81,91,101)を通じて吸入された低圧ガス冷媒を所定の圧力まで圧縮して高圧ガス冷媒とし、この高圧ガス冷媒を各吐出管(72,82,92,102)から吐出する。
【0067】
上記第4圧縮部(100)の第4吸入管(101)は上記複合弁(10)の第13短管(T13)に、上記第3圧縮部(90)の第3吸入管(91)は上記複合弁(10)の第12短管(T12)に、上記第2圧縮部(80)の第2吸入管(81)は上記複合弁(10)の第9短管(T9)に、上記第1圧縮部(70)の第1吸入管(71)は上記複合弁(10)の第6短管(T6)にそれぞれ接続されている。
【0068】
ここで、第1から第3の吸入管(71,81,91)の途中には逆止弁(CV1,CV2,CV3)が接続されている。各逆止弁(CV1,CV2,CV3)は、上記複合弁(10)から上記四段圧縮機(62)へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。
【0069】
又、上記第4圧縮部(100)の第4吐出管(102)は上記複合弁(10)の第10短管(T10)に、上記第3圧縮部(90)の第3吐出管(92)は上記複合弁(10)の第7短管(T7)に、上記第2圧縮部(80)の第2吐出管(82)は上記複合弁(10)の第4短管(T4)に、上記第1圧縮部(70)の第1吐出管(72)は上記複合弁(10)の第1短管(T1)にそれぞれ接続されている。
【0070】
ここで、第1から第4の吐出管(72,82,92,102)の途中には、それぞれ第1から第4の油分離器(73,83,93,103)が接続されている。各油分離器(73,83,93,103)は、該吐出管(72,82,92,102)を流れる高圧ガス冷媒に含まれる潤滑油を該高圧ガス冷媒から分離するためのものである。この油分離器(73,83,93,103)には、該油分離器(73,83,93,103)内で分離した潤滑油を該油分離器(73,83,93,103)の外側へ流出する第1から第4の油流出管(74,84,94,104)が接続されている。
【0071】
上記第4油流出管(104)は上記第3吸入管(91)に接続されている。上記第3油流出管(94)は上記第2吸入管(81)に接続されている。上記第2油流出管(84)は上記第1吸入管(71)に接続されている。上記第1油流出管(74)は上記第4吸入管(101)に接続されている。
【0072】
第4油分離器(103)で分離した潤滑油は上記第4油流出管(104)を通じて上記第3吸入管(91)へ送られ、第3油分離器(93)で分離した潤滑油は上記第3油流出管(94)を通じて上記第2吸入管(81)へ送られ、第2油分離器(83)で分離した潤滑油は上記第2油流出管(84)を通じて上記第1吸入管(71)へ送られ、第1油分離器(73)で分離した潤滑油は上記第1油流出管(74)を通じて上記第4吸入管(101)へ送られる。上記第1から第4の室外熱交換器(75,85,95,105)はフィン・アンド・チューブ型のものである。これらの室外熱交換器(75,85,95,105)の近傍には室外ファン(図示なし)が設けられている。これらの室外熱交換器(75,85,95,105)では、上記室外ファンによって送られた屋外の空気と各室外熱交換器(75,85,95,105)の伝熱管を流れる冷媒とを熱交換するように構成されている。
【0073】
ここで、上記第1室外熱交換器(75)に係る伝熱管の一端には、第9から第12の冷媒配管(77,87,97,107)の一端がそれぞれ接続されている。そして、上記第9冷媒配管(77)の他端が上記複合弁(10)の第2短管(T2)に、上記第10冷媒配管(87)の他端がが上記複合弁(10)の第5短管(T5)に、上記第11冷媒配管(97)の他端が上記複合弁(10)の第8短管(T8)に、上記第12冷媒配管(107)の他端が上記複合弁(10)の第11短管(T11)にそれぞれ接続されている。一方、上記第1から第4の室外熱交換器(75,85,95,105)に係る伝熱管の他端には、第1から第4の冷媒配管(76,86,96,106)の一端がそれぞれ接続されている。
【0074】
上記第1冷媒配管(76)の他端は分岐して、一方が上記ブリッジ回路(110)が有する第1逆止弁(CV11)に接続されて他方が上記分流器(120)の第1流出口(121)に接続されている。尚、上記第1冷媒配管(76)の分岐部と上記分流器(120)の第1流出口(121)との間には逆止弁(CV4)が設けられている。この逆止弁(CV4)は、上記分流器(120)から上記第1冷媒配管(76)の分岐部へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。
【0075】
上記第2から第4の冷媒配管(86,96,106)の各他端は分岐して、一方が上記第1から第3の吸入管(71,81,91)の途中(逆止弁(CV1,CV2,CV3)と圧縮部(70,80,90)との間)にそれぞれ接続され、他方が上記分流器(120)の第2から第4の流出口(122,123,124)にそれぞれ接続されている。
【0076】
尚、上記第2から第4の冷媒配管(86,96,106)の各分岐部と上記分流器(120)の第2から第4の流出口(122,123,124)との間には逆止弁(CV5,CV6,CV7)が設けられている。これらの逆止弁(CV5,CV6,CV7)は、上記分流器(120)側から上記第2から第4の冷媒配管(86,96,106)の分岐部側へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。
【0077】
又、上記第2から第4の冷媒配管(86,96,106)の各分岐部と上記第1から第3の吸入管(71,81,91)の各接続部との間に逆止弁(CV8,CV9,CV10)が設けられている。これらの逆止弁(CV8,CV9,CV10)は、上記第2から第4の冷媒配管(86,96,106)の各分岐部から上記第1から第3の吸入管(71,81,91)の各接続部へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。
【0078】
上記分流器(120)は、1つの流入口(125)と第1から第4の流出口(122〜124)とを備えている。この分流器(120)は、上記流入口(125)から流入した冷媒を4つに分流させた後で、分流後の各冷媒を各流出口(122〜124)から流出させるものである。上述したように、上記第1から第4の流出口(122〜124)は上記第1から第4の冷媒配管(76,86,96,106)の他端にそれぞれ接続されている。
【0079】
上記ブリッジ回路(110)は、第1から第3の逆止弁(CV11〜CV13)と室外膨張弁(111)と第1から第3の配管(112〜114)とを備えている。第1逆止弁(CV11)の一端と第2逆止弁(CV12)の一端との間が第1配管(112)で接続され、第2逆止弁(CV12)の他端と第3逆止弁(CV13)の一端との間が第2配管(113)で接続され、第3逆止弁(CV13)の他端と室外膨張弁(111)の一端との間が第3配管(114)で接続されている。尚、上述したように、上記第1逆止弁(CV11)の他端は上記第1冷媒配管(76)の他端に接続されている。又、上記室外膨張弁(111)の他端は上記分流器(120)の流入口(125)に接続されている。この室外膨張弁(111)によって、暖房運転時に該室外膨張弁(111)を通過する冷媒の圧力が調整される。
【0080】
ここで、上記第1逆止弁(CV11)は上記第1冷媒配管(76)側から第1配管(112)側へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。上記第2逆止弁(CV12)は上記第2配管(113)側から上記第1配管(112)側へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。上記第3逆止弁(CV13)は上記第3配管(114)側から上記第2配管(113)側へ向かう冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を阻止する。
【0081】
上記レシーバ(130)は、略円筒状の本体部(133)と流入管(131)と流出管(132)とを備えている。この流入管(131)及び流出管(132)は、上記本体部(133)の頂部を貫通して設けられている。上記流入管(131)の一端は上記本体部(133)内の上部空間に開口している。又、上記流出管(132)の一端は上記本体部(133)内の下部空間に開口している。このレシーバ(130)では、上記流入管(131)を通じて上記本体部(133)へ流入した高圧冷媒が該本体部(133)に一時的に貯留された後で、該本体部(133)の高圧冷媒が上記流出管(132)を通じて該本体部(133)の外側へ流出する。
【0082】
そして、上記ブリッジ回路(110)の第1配管(112)から分岐した第5冷媒配管(107)が上記レシーバ(130)の流入管(131)に接続され、上記レシーバ(130)の流出管(132)に接続された第6冷媒配管(108)が上記ブリッジ回路(110)の第3配管(114)の途中に接続されている。ここで、上記第5冷媒配管(107)には第2流量調整弁(115)が設けられている。この第2流量調整弁(115)によって、上記第5冷媒配管(107)を流れる冷媒の流量が調節される。
【0083】
又、上記ブリッジ回路(110)の第2配管(113)から分岐した第7冷媒配管(109)が上記室内膨張弁(64)を介して上記室内熱交換器(63)の一端に接続されている。この室内膨張弁(64)によって、上記室内熱交換器(63)へ向かう冷媒が所定の圧力まで減圧される。
【0084】
上記室内熱交換器(63)は、フィン・アンド・チューブ型の熱交換器である。この室内熱交換器(63)は室内に配置されており、この室内熱交換器(63)の近傍に、室内に配置された室内ファン(図示なし)が設けられている。この室内熱交換器(63)では、室内ファンから送られる室内空気と室内熱交換器(63)内を流れる冷媒とを熱交換するように構成されている。そして、この室内熱交換器(63)の他端から延びる第8冷媒配管(116)が上記複合弁(10)の第3短管(T3)に接続されている。
【0085】
〈コントローラ〉
コントローラには、上記冷媒回路(61)に設けられた温度センサ(図示省略)及び圧力センサ(図示省略)の検出値が入力される。そして、これら検出値に基づいて、上記コントローラは、四段圧縮機(62)、室内ファン及び室外ファンの駆動制御、複合弁(10)、室内膨張弁(64)及び室外膨張弁(111)の切換や開度調節を行いながら、上記冷媒回路(61)の運転制御を行う。
【0086】
−運転動作−
本実施形態の空気調和装置は、冷暖房運転が可能に構成されている。そして、上述したコントローラの指令により、冷房運転と暖房運転の切換が行われる。
【0087】
〈冷房運転〉
この空気調和装置の冷房運転について、図10、図11を参照しながら説明する。図10では、この冷房運転時の冷媒の流れを実線の矢印で示している。この冷房運転では、第1室外熱交換器(75)が放熱器として動作し、室内熱交換器(63)が蒸発器として動作することにより4段圧縮式の超臨界冷凍サイクルが行われる。第2から第4の室外熱交換器(85,95,105)は、各圧縮部(70,80,90,100)から吐出された高圧冷媒を冷却する冷却器として動作する。
【0088】
又、この冷房運転では、上記四段圧縮機(62)の第1圧縮部(70)から上記室内膨張弁(64)へ至るラインが高圧ラインとなり、上記室内膨張弁(64)から上記四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)へ至るラインが低圧ラインとなる。尚、高圧ラインとは、上記第1圧縮部(70)で超臨界の圧力まで圧縮された高圧の冷媒が流れるラインであり、低圧ラインは、上記室内熱交換器(63)で減圧された低圧の冷媒が流れるラインである。
【0089】
この冷房運転では、上述したコントローラの指令により、上記複合弁(10)が第1状態に設定される。上述したように、上記複合弁(10)が第1状態のとき、該複合弁(10)の全ての弁体(50)は第1位置にある。
【0090】
又、室外膨張弁(111)が全閉となり、第2流量調整弁(115)及び室内膨張弁(64)の開度が適宜調節される。又、第1から第3の吸入管(71,81,91)の逆止弁(CV1,CV2,CV3)は、その下流側の冷媒圧力が上流側の冷媒圧力よりも高くなるため、各逆止弁(CV1,CV2,CV3)の弁体が開かない。従って、各逆止弁(CV1,CV2,CV3)は閉状態となる。これにより、上記複合弁(10)の第6ポート(P6)、第9ポート(P9)及び第12ポート(P12)のみが閉鎖される。
【0091】
(複合弁に係る高圧側の冷媒の流れ)
上記四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第1圧縮である。上記第1圧縮された冷媒は、上記第4圧縮部(100)から吐出された後第4吐出管(102)及び第4油分離器(103)を通って上記複合弁(10)の第4流路切換部(20d)へ流入する。この冷媒は、上記第4流路切換部(20d)の第10ポート(P10)から第4弁室(17d)の内側室(IS)へ流入した後、第11ポート(P11)を通じて第4弁室(17d)の内側室(IS)から流出する(図11を参照)。そして、この冷媒は上記第4室外熱交換器(105)へ流入する。上記第4室外熱交換器(105)において、この冷媒は室外ファンから送られる屋外の空気へ放熱して冷却される。この冷却が第1冷却である。第1冷却された冷媒は、第4冷媒配管(106)と第3吸入管(91)を通って上記第3圧縮部(90)へ吸入される。
【0092】
上記第3圧縮部(90)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第2圧縮である。上記第2圧縮された冷媒は、上記第3圧縮部(90)から吐出された後で第3吐出管(92)及び第3油分離器(93)を通って上記複合弁(10)の第3流路切換部(20c)へ流入する。この冷媒は、上記第3流路切換部(20c)の第7ポート(P7)から第3弁室(17c)の内側室(IS)へ流入した後、第8ポート(P8)を通じて第3弁室(17c)の内側室(IS)から流出する(図11を参照)。そして、この冷媒は上記第3室外熱交換器(95)へ流入する。上記第3室外熱交換器(95)において、この冷媒は室外ファンから送られる屋外の空気へ放熱して冷却される。この冷却が第2冷却である。第2冷却された冷媒は、第3冷媒配管(96)と第2吸入管(81)を通って上記第2圧縮部(80)へ吸入される。
【0093】
上記第2圧縮部(80)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第3圧縮である。上記第3圧縮された冷媒は、上記第2圧縮部(80)から吐出された後で第2吐出管(82)及び第2油分離器(83)を通って上記複合弁(10)の第2流路切換部(20b)へ流入する。この冷媒は、上記第2流路切換部(20b)の第4ポート(P4)から第2弁室(17b)の内側室(IS)へ流入した後、第5ポート(P5)を通じて第2弁室(17b)の内側室(IS)から流出する(図11を参照)。そして、この冷媒は上記第2室外熱交換器(85)へ流入する。上記第2室外熱交換器(85)において、この冷媒は室外ファンから送られる屋外の空気へ放熱して冷却される。この冷却が第3冷却である。第3冷却された冷媒は、第2冷媒配管(86)と第1吸入管(71)を通って上記第1圧縮部(70)へ吸入される。
【0094】
上記第1圧縮部(70)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第4圧縮である。このように、冷房運転の場合には、圧縮と冷却とを交互に繰り返しながら四段圧縮を行う。これにより、上記四段圧縮機(62)の圧縮行程を等温圧縮にできるだけへ近づけて、上記四段圧縮機(62)に必要な圧縮動力の低減を図っている。尚、この四段圧縮機(62)の四段圧縮によって、該四段圧縮機(62)から吐出される冷媒の圧力は、該冷媒の臨界圧力よりも高くなっている。
【0095】
第4圧縮された冷媒は、上記第1圧縮部(70)から吐出された後で第1吐出管(72)を通って上記複合弁(10)の第1流路切換部(20a)へ流入する。この冷媒は、上記第1流路切換部(20a)の第1ポート(P1)から第1弁室(17a)の内側室(IS)へ流入した後、第2ポート(P2)を通じて第1弁室(17a)の内側室(IS)から流出する(図11を参照)。そして、この冷媒は上記第1室外熱交換器(75)へ流入する。上記第1室外熱交換器(75)において、この冷媒は室外ファンから送られる屋外の空気へ放熱して冷却される。
【0096】
(複合弁を通過した後の冷媒の流れ)
上記第1室外熱交換器(75)を流出した冷媒は、第1冷媒配管(76)を通って上記ブリッジ回路(110)へ流入する。この冷媒は、上記ブリッジ回路(110)の第1逆止弁(CV11)及び第1配管(112)を通過した後、さらに第5冷媒配管(107)を通過する。尚、この冷媒は、第5冷媒配管(107)を通過する際に第2流量調整弁(115)によって、その流量が適宜調整される。そして、第2流量調整弁(115)で流量調整された冷媒が、レシーバ(130)へ流入する。
【0097】
上記レシーバ(130)へ流入した冷媒は、その一部がレシーバ(130)に貯留されて残りがレシーバ(130)を流出する。上記レシーバ(130)を流出した冷媒は、上記第6冷媒配管(108)を通って、再び上記ブリッジ回路(110)へ流入する。この冷媒は、上記ブリッジ回路(110)の第3配管(114)及び第3逆止弁(CV13)を通過した後、さらに第7冷媒配管(109)を通過する。
【0098】
尚、この冷媒は、第7冷媒配管(109)を通過する際に室内膨張弁(64)によって、その圧力が所望の値まで減圧される。そして、室内膨張弁(64)で減圧された冷媒が、室内熱交換器(63)へ流入する。ここで、この室内膨張弁(64)の開度は、室内熱交換器(63)から流出する冷媒の過熱度が一定になるように調整可能である。
【0099】
上記室内熱交換器(63)へ流入した冷媒は、上記室内ファンから送られる室内の空気を吸熱して蒸発した後で上記室内熱交換器(63)を流出する。この冷媒の蒸発によって、室内の空気は熱を奪われて冷却される。そして、この冷却された空気が室内へ送られ、室内の冷房が行われる。そして、この蒸発した冷媒が室内熱交換器(63)から流出する。
【0100】
(複合弁に係る低圧側の冷媒の流れ)
図2、図13からわかるように、上記室内熱交換器(63)から流出した冷媒は、上記複合弁(10)の第1流路切換部(20a)へ流入する。この冷媒は、第1流路切換部(20a)の第3ポート(P3)から第1弁室(17a)の外側室(0S)へ流入した後で上記第1連通ポート(PP1)を通じて、第2流路切換部(20b)に係る第2弁室(17b)の外側室(0S)へ流出する。
【0101】
この第2弁室(17b)の外側室(0S)において、第2流路切換部(20b)の第6ポート(P6)に連通する逆止弁(CV1)が閉状態であるため、上記第6ポート(P6)が閉鎖されている。このことから、上記第2弁室(17b)の外側室(0S)へ流出した冷媒は、上記第6ポート(P6)から流出できず、上記第2連通ポート(PP2)を通じて、第3流路切換部(20c)に係る第3弁室(17c)の外側室(0S)へ流出する。
【0102】
この第3弁室(17c)の外側室(0S)において、第3流路切換部(20c)の第9ポート(P9)に連通する逆止弁(CV2)が閉状態であるため、上記第9ポート(P9)が閉鎖されている。このことから、上記第3弁室(17c)の外側室(0S)へ流出した冷媒は、上記第9ポート(P9)から流出できず、上記第3連通ポート(PP3)を通じて、第4流路切換部(20d)に係る第4弁室(17d)の外側室(0S)へ流出する。
【0103】
この第4弁室(17d)の外側室(0S)において、第4流路切換部(20d)の第12ポート(P12)に連通する逆止弁(CV1)が閉状態であるため、上記第12ポート(P12)が閉鎖されている。このことから、上記第4弁室(17d)の外側室(0S)へ流出した冷媒は、上記第12ポート(P12)から流出できないまま、第4弁室(17d)に留まることになる。
【0104】
このように、上記複合弁(10)に第1から第4の連通ポート(PP1〜PP4)を設け、さらに冷房運転時に上記逆止弁(CV1,CV2,CV3)で上記複合弁(10)のポート(P6,P9,P12)を閉鎖することにより、上記複合弁(10)に係る各弁室(17a,17b,17c,17d)の外側室(0S)の圧力を全て同一の低圧圧力にすることができるようになる。
【0105】
上記複合弁(10)から流出した冷媒は、上記第4吸入配管(101)を通過した後で上記四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)へ吸入される。そして、この第4圧縮部(100)で圧縮された冷媒が第4吐出管(102)及び第4油分離器(103)を通って上記複合弁(10)の第4流路切換部(20d)の第11ポート(P11)へ再び流入する。このように、上記冷媒回路(61)内を冷媒が循環することにより、室内の冷房が行われる。
【0106】
〈暖房運転〉
次に、この空気調和装置の暖房運転について、図12、図13を参照しながら説明する。図12では、この暖房運転時の冷媒の流れを破線の矢印で示している。この暖房運転では、室内熱交換器(63)が放熱器として動作し、第1から第4室外熱交換器(75,85,95,105)が蒸発器として動作することにより4段圧縮式の超臨界冷凍サイクルが行われる。
【0107】
又、この暖房運転では、上記四段圧縮機(62)の第1圧縮部(70)から上記室外膨張弁(111)へ至るラインが高圧ラインとなり、上記室外膨張弁(101)から上記四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)へ至るラインが低圧ラインとなる。
【0108】
この暖房運転では、上述したコントローラの指令により、上記複合弁(10)が第2状態に設定される。又、室外膨張弁(111)、第2流量調整弁(115)及び室内膨張弁(64)の開度が適宜調節される。
【0109】
(複合弁に係る高圧側の冷媒の流れ)
上記四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第1圧縮である。上記第1圧縮された冷媒は、上記第4圧縮部(100)から吐出された後で第4吐出管(102)及び第4油分離器(103)を通って上記複合弁(10)の第4流路切換部(20d)へ流入する。この冷媒は、上記第4流路切換部(20d)の第10ポート(P10)から第4弁室(17d)の内側室(IS)へ流入した後、第12ポート(P12)を通じて第4弁室(17d)の内側室(IS)から流出する(図13を参照)。そして、この冷媒は、第3吸入管(91)と逆止弁(CV3)とを通過した後で上記第3圧縮部(90)へ吸入される。
【0110】
上記第3圧縮部(90)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第2圧縮である。上記第2圧縮された冷媒は、上記第3圧縮部(90)から吐出された後で第3吐出管(92)及び第3油分離器(93)を通って上記複合弁(10)の第3流路切換部(20c)へ流入する。この冷媒は、上記第3流路切換部(20c)の第7ポート(P7)から第3弁室(17c)の内側室(IS)へ流入した後、第9ポート(P9)を通じて第3弁室(17c)の内側室(IS)から流出する(図13を参照)。そして、この冷媒は、第2吸入管(81)と逆止弁(CV2)とを通過した後で上記第2圧縮部(80)へ吸入される。
【0111】
上記第2圧縮部(80)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第3圧縮である。上記第3圧縮された冷媒は、上記第2圧縮部(80)から吐出された後で第2吐出管(82)及び第2油分離器(83)を通って上記複合弁(10)の第2流路切換部(20b)へ流入する。この冷媒は、上記第2流路切換部(20b)の第4ポート(P4)から第2弁室(17b)の内側室(IS)へ流入した後、第6ポート(P6)を通じて第2弁室(17b)の内側室(IS)から流出する(図13を参照)。そして、この冷媒は、第1吸入管(71)と逆止弁(CV1)とを通過した後で上記第1圧縮部(70)へ吸入される。
【0112】
上記第1圧縮部(70)に吸入された冷媒は所定の圧力まで圧縮される。この圧縮が第4圧縮である。このように、暖房運転の場合には、冷房運転とは違って第2から第4の室外熱交換器(85〜105)での冷却を伴わずに四段圧縮が行われる。これにより、冷却を伴いながら四段圧縮する場合に比べて、四段圧縮機(62)から吐出される冷媒の温度が下がらず、暖房運転時の暖房能力が低くならない。
【0113】
尚、この四段圧縮機(62)の四段圧縮によって、冷房運転時と同様に、該四段圧縮機(62)から吐出される冷媒の圧力は、該冷媒の臨界圧力よりも高くなっている。
【0114】
第4圧縮された冷媒は、上記第1圧縮部(70)から吐出された後で第1吐出管(72)及び第1油分離器(73)を通って上記複合弁(10)の第1流路切換部(20a)へ流入する。この冷媒は、上記第1流路切換部(20a)の第1ポート(P1)から第1弁室(17a)の内側室(IS)へ流入した後、第3ポート(P3)を通じて第1弁室(17a)の内側室(IS)から流出する(図13を参照)。そして、この冷媒は、第8冷媒配管(116)を通過して上記室内熱交換器(63)へ流入する。
【0115】
(複合弁を通過した後の冷媒の流れ)
この室内熱交換器(63)へ流入した冷媒は、上記室内ファンから送られる室内の空気へ放熱して冷却した後で上記室内熱交換器(63)を流出する。この冷媒の放熱によって、室内の空気は加熱される。そして、この加熱された空気が室内へ送られ、室内の暖房が行われる。
【0116】
上記室内熱交換器(63)を流出した冷媒は、室内膨張弁(64)及び第7冷媒配管(109)を通って上記ブリッジ回路(110)へ流入する。この冷媒は、上記ブリッジ回路(110)の第2配管(113)及び第2逆止弁(CV12)を通過した後、さらに第5冷媒配管(107)を通過する。尚、この冷媒は、第5冷媒配管(107)を通過する際に第2流量調整弁(115)によって、その流量が適宜調整される。そして、第2流量調整弁(115)で流量調整された冷媒が、レシーバ(130)へ流入する。
【0117】
上記レシーバ(130)へ流入した冷媒は、その一部がレシーバ(130)に貯留されて残りがレシーバ(130)を流出する。上記レシーバ(130)を流出した冷媒は、上記第6冷媒配管(108)を通って、再び上記ブリッジ回路(110)へ流入する。この冷媒は、上記ブリッジ回路(110)の第3配管(114)及び室外膨張弁(111)を通過した後で、上記分流器(120)へ流入する。尚、この冷媒は、室外膨張弁(111)を通過する際に、その圧力が所望の値まで減圧される。ここで、室外膨張弁(111)の開度は、四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)へ吸入される冷媒の過熱度が一定になるように調整可能である。
【0118】
上記分流器(120)へ流入した冷媒は4つに分流した後、第1から第4の冷媒配管(76,86,96,106)を通過して第1から第4の室外熱交換器(75,85,95,105)へそれぞれ流入する。各室外熱交換器(75,85,95,105)において、この冷媒は室外ファンから送られる室外の空気から吸熱して蒸発する。そして、この蒸発した冷媒が各室外熱交換器(75,85,95,105)から流出する。
【0119】
(複合弁に係る低圧側の冷媒の流れ)
図2、図13からわかるように、上記第1室外熱交換器(75)から流出した冷媒は、上記複合弁(10)の第1流路切換部(20a)へ流入する。この冷媒は、第1流路切換部(20a)の第2ポート(P2)から第1弁室(17a)の外側室(0S)へ流入した後で上記第1連通ポート(PP1)を通じて第2弁室(17b)の外側室(0S)へ流出する。
【0120】
上記第2室外熱交換器(85)から流出した冷媒は上記複合弁(10)の第2流路切換部(20b)へ流入する。この冷媒は、第2流路切換部(20b)の第5ポート(P5)から第2弁室(17b)の外側室(0S)へ流入した後、上述した上記第1連通ポート(PP1)からの冷媒と合流する。この合流した冷媒が上記第2連通ポート(PP2)を通じて第2弁室(17b)の外側室(0S)から第3弁室(17c)の外側室(0S)へ流出する。
【0121】
上記第3室外熱交換器(95)から流出した冷媒は上記複合弁(10)の第3流路切換部(20c)へ流入する。この冷媒は、第3流路切換部(20c)の第8ポート(P8)から第3弁室(17c)の外側室(0S)へ流入した後、上述した上記第2連通ポート(PP2)からの冷媒と合流する。この合流した冷媒が上記第3連通ポート(PP3)を通じて第3弁室(17c)の外側室(0S)から第4弁室(17d)の外側室(0S)へ流出する。
【0122】
上記第4室外熱交換器(105)から流出した冷媒は上記複合弁(10)の第4流路切換部(20d)へ流入する。この冷媒は、第4流路切換部(20d)の第11ポート(P11)から第4弁室(17d)の外側室(0S)へ流入した後、上述した上記第3連通ポート(PP3)からの冷媒と合流する。この合流した冷媒が上記第4連通ポート(PP4)及び第13短管(T13)を通じて上記複合弁(10)から流出する。
【0123】
このように、上記複合弁(10)に第1から第4の連通ポート(PP1〜PP4)を設けることにより、各室外熱交換器(75,85,95,105)から複合弁(10)へ流出した冷媒を該複合弁(10)の内部で合流した後で該複合弁(10)から流出させることができるようになる。又、上記複合弁(10)に第1から第4の連通ポート(PP1〜PP4)を設けることにより、上記複合弁(10)に係る各弁室(17a,17b,17c,17d)の外側室(0S)の圧力を全て同一の低圧圧力にすることができるようになる。
【0124】
上記複合弁(10)から流出した冷媒は、上記第4冷媒配管(101)を通過した後で上記四段圧縮機(62)の第4圧縮部(100)へ吸入される。そして、この第4圧縮部(100)で圧縮された冷媒が第4吐出管(102)及び第4油分離器(103)を通って上記複合弁(10)の第4流路切換部(20d)の第11ポート(P11)へ再び流入する。このように、上記冷媒回路(61)内を冷媒が循環することにより、室内の暖房が行われる。
【0125】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、第1から第4の流路切換部(20a,20b,20c,20d)を1つのケーシング(11)に集約できる。これにより、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)が、上記冷媒回路(61)を構成する構造物に散在することがなくなる。この結果、この冷媒回路(61)に係る構造物のコンパクト化を図ることができる。尚、本実施形態の複合弁(10)では、上記各流路切換部(20a,20b,20c,20d)と上記各仕切部(15a,15b,15c,15d)とを交互に軸方向へ積層することによって、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)の集約化を図っている。
【0126】
また、本実施形態によれば、互いに機能の異なる第1流路切換部(20a)と第2から第4の流路切換部(20b,20c,20d)とを1つのケーシング(11)に集約できる。第1流路切換部(20a)は冷媒回路(61)の冷暖切換を行うものであり、第2から第4の流路切換部(20b,20c,20d)は圧縮部(70,80,90,100)及び第2から第4の室外熱交換器(85,95,105)の接続状態の切り換えを行うものである。
【0127】
このように、第1流路切換部(20a)と第2から第4の流路切換部(20b,20c,20d)とは互いに機能が異なるが、本実施形態では、同一構造の弁室(17a,17b,17c,17d)と弁体(50)を用いることで、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)の構造を共通化することができる。この共通化を図ることにより、各流路切換部(20a,20b,20c,20d)を1つのケーシング(11)に集約することができる。
【0128】
また、本実施形態によれば、上記第1から第4の流路切換部(20a,20b,20c,20d)の第2室(OS)同士を連通させて、各外側室(OS)を同一の圧力とすることにより、外側室(OS)と外側室(OS)との間のシール構造を簡素化することができる。これにより、上記複合弁(10)の低コスト化を図ることができる。又、外側室(OS)の容積を内側室(IS)の容積よりも大きくすることで、シール構造を簡素化できる部分を広くすることができる。
【0129】
尚、本実施形態の複合弁(10)では、上記仕切部(15b,15c,15d)に連通ポート(PP1,PP2,PP3)を設けることによって、外側室(OS)同士を連通させている。このように、弁ケース(11)の内部で外側室(OS)同士を連通することにより、外側室(OS)同士を連通するための接続管を弁ケース(11)の外側に設ける必要がない。したがって、外側室(OS)同士を連通ポート(PP1,PP2,PP3)で連通しない場合に比べて、複合弁(10)に接続される接続管を減少させることができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、上記第1から第4の流路切換部(20a,20b,20c,20d)の外側室(OS)同士を低圧の圧力で連通させることにより、外側室(OS)同士のシール構造をさらに簡略化できる。
【0131】
また、本実施形態によれば、1つの駆動軸(40)で上記第1から第4の流路切換部(20a,20b,20c,20d)に係る各弁体(50)の位置を変位させることができる。これにより、上記複合弁(10)の構造をさらに簡素化することができる。
【0132】
尚、本実施形態の複合弁(10)では、上記各仕切部(15b,15c,15d)に軸孔部(18a,18b,18c,18d)を設け、これらの軸孔部(18a,18b,18c,18d)で上記駆動軸(40)を回転支持している。このように、上記駆動軸(40)を複数箇所で回転支持することにより、該駆動軸(40)を確実に保持することができる。
【0133】
又、これらの軸孔部(18a,18b,18c,18d)は、各弁室(17a,17b,17c,17d)の外側室(OS)に位置しているので、軸孔部(18a,18b,18c,18d)と駆動軸(40)とのシール構造を簡素化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、本発明は、冷媒回路における冷媒の流路を切り換える切換弁について有用である。
【符号の説明】
【0135】
10 複合弁
11 弁ケース(ケーシング)
15a〜15d 第1〜第4仕切部
17a〜17d 第1〜第4弁室
10 複合弁
20a 第1流路切換部(副切換部)
20b〜20c 第2〜第4流路切換部(第1〜第3主切換部)
30 駆動機構
40 駆動軸
50 弁体
61 冷媒回路
62 四段圧縮機
63 室内熱交換器(利用側熱交換部)
64 室内膨張弁
75 第1室外熱交換器(熱源側熱交換部)
85,95,105 第2〜第4室外熱交換器(第1〜第3内部熱交換部)
IS 内側室(第1室)
OS 外側室(第2室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1から第4の圧縮部(70,80,90,100)と第1から第3の内部熱交換部(85,95,105)と熱源側熱交換部(75)と少なくとも1つの利用側熱交換部(63)とを有する冷媒回路(61)に接続された切換弁であって、
各々に形成された複数のポート部の連通状態を第1状態と第2状態とに切換可能な複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を備え、
上記複数の切換部(20a,20b,20c,20d)は、各々に3つのポート部が形成された第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)を含み、
上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)の第1ポート部(P4,P7,P10)に第2から第4の圧縮部(80,90,100)の吐出流路(82,92,102)がそれぞれ連通され、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)の第2ポート部(P5,P8,P11)に第1から第3の内部熱交換器(85,95,105)の流入流路(87,97,107)がそれぞれ連通され、上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)の第3ポート部(P6,P9,P12)に第1から第3の圧縮部(70,80,90)の吸入流路(71,81,91)がそれぞれ連通され、
上記第1状態のときに上記第1ポート部(P4,P7,P10)及び上記第2ポート部(P5,P8,P11)が接続し、上記第2状態のときに上記第1ポート部(P4,P7,P10)及び上記第3ポート部(P6,P9,P12)が接続する一方、
上記複数の切換部(20a,20b,20c,20d)を収容する1つケーシング(11)をさらに備えていることを特徴とする切換弁。
【請求項2】
請求項1において、
上記複数の切換部(20a,20b,20c,20d)は、4つのポート部(P1,P2,P3,PP1)が形成された副切換部(20a)を含み、
上記副切換部(20a)の第1ポート部(P1)に上記第1圧縮部(70)の吐出流路(72)が連通され、上記副切換部(20a)の第2ポート部(P2)に上記熱源側熱交換器(75)が連通され、上記副切換部(20a)の第3ポート部(P3)に上記利用側熱交換器(63)が連通され、上記副切換部(20a)の第4ポート部(PP1)に上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)が連通され、
上記第1状態のときに上記第1ポート部(P1)及び第2ポート部(P2)が接続し且つ第3ポート部(P3)及び第4ポート部(PP1)が接続し、上記第2状態のときに第1ポート部(P1)及び第3ポート部(P3)が接続し且つ第2ポート部(P2)及び第4ポート部(PP1)が接続することを特徴とする切換弁。
【請求項3】
請求項2において、
上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)は、第1から第3のポート部((P4,P7,P10),(P5,P8,P11),(P6,P9,P12))が開口する弁室(17b,17c,17d)と、
上記各弁室(17b,17c,17d)を第1室(IS)と第2室(OS)に区画するとともに、その区画位置を上記第1状態に対応する第1位置と上記第2状態に対応する第2位置との間で変位可能な弁体(50)とを備え、
上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の各弁体(50)が第1位置のときに、第1ポート部(P4,P7,P10)及び第2ポート部(P5,P8,P11)が第1室(IS)で連通し且つ第3ポート部(P6,P9,P12)が第2室(OS)に開口し、
上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の各弁体(50)が第2位置のときに、第1ポート部(P4,P7,P10)及び第3ポート部(P6,P9,P12)が第1室(IS)で連通し且つ第2ポート部(P5,P8,P11)が第2室(OS)に開口する一方、
上記第1から第3の各主切換部(20b,20c,20d)に係る弁室(17b,17c,17d)の第2室(OS)同士を連通する主連通路(PP2,PP3)をさらに備えていることを特徴とする切換弁。
【請求項4】
請求項3において、
上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の少なくとも1つの第2室(OS)が、上記第4圧縮部(100)の吸入流路(101)に連通していることを特徴とする切換弁。
【請求項5】
請求項3において、
上記副切換部(20a)は、第1から第3のポート部(P1,P2,P3)が開口する弁室(17a)と、該弁室(17a)を第1室(IS)と第2室(OS)に区画するとともに、その区画位置を上記第1状態に対応する第1位置と上記第2状態に対応する第2位置との間で変位可能な弁体(50)とを備え、
上記副切換部(20a)の弁体(50)が第1位置のときに、上記第1ポート部(P1)及び第2ポート部(P2)が第1室(IS)で連通し且つ第3ポート部(P3)及び第4ポート部(PP1)が第2室(OS)で連通し、上記副切換部(20a)の弁体(50)が第2位置のときに、第1ポート部(P1)及び第3ポート部(P3)が第1室(IS)で連通し且つ第2ポート部(P2)及び第4ポート部(PP1)が第2室(OS)で連通するとともに、
上記第1から第3の主切換部(20b,20c,20d)の少なくとも1つの第2室(OS)と上記副切換部(20a)の第2室(OS)とが連通していることを特徴とする切換弁。
【請求項6】
請求項3から5の何れか1つにおいて、
上記各弁体(50)は1つの駆動軸(40)に取り付けられ、
上記駆動軸(40)の回転によって各弁体(50)が第1位置と第2位置との間で変位することを特徴とする切換弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−15227(P2013−15227A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146239(P2011−146239)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】